(5)文部科学大臣挨拶概要(平成19年2月6日第58回中央教育審議会総会)

 今日は中教審の新しいメンバーの先生方の初会合でございます。突然の呼びかけにも関わらずご出席いただきありがとうございました。まず最初に、引き続き委員をしていただきます先生方に、大変ご苦労おかけしますが宜しくと申し上げます。また、先ほどご協議が整いまして、山崎会長をご選任いただきましたが、山崎会長を始め、新たに委員をお願いした先生には、どうぞ宜しくご協力のほどお願いします。
 申すまでもなく、教育の問題は誰でも論じられる問題でして、各々の人生観、その人の人生哲学や政治理念によって、理想の人間像はみな違うだけに、まとめていくのが非常に難しい仕事です。しかし、私たちは民主主義という崇高な価値観のもとに、国家の意思を代表いたしておりますが、政権与党の意向だけで物事がきまってはまずい分野でもありますので、広く先生方のご意見を拝聴して、国民的な視野から決定をしていただく。それが法律で設置が決まっており、法律で審議内容が決まっている中教審の重みであり、その目指すところです。どうぞよろしくご協力をお願い致します。
 そこで、是非ご協力をお願いしたいことがございます。鳥居前会長のお骨折りがあり、旧メンバーの先生方のお力添えがあって、60年ぶりに教育基本法が改正されました。教育基本法が改正されたという新しい条件の下で、これから関係の諸法を改正し、教育に携わる方々、父兄、地域社会の方、教師、われわれ自身も、あるいは地方の教育委員会の方も含めて、意識改革をして、予算で裏づけをしながら、新しい教育の幕を開かねばならない。教育は国家100年の計でございますので、ここにいる中では一番若い小渕政務官も死んじゃった後に、あの時こういうことをやってくれたから、日本は国際社会の中で侮りを受けることなく生きていけると言われるほど息の長いものです。すぐの効果を狙うよりも、己を空しゅうして、将来のためにやらなければならない分野です。
 教育基本法の改正を受けて変えなければならない法律は10本以上あると思います。しかし当面、一番早くやらねばならないのは、新しい教育の理念を受け、学校で何を教えるか、指導要領を変えていかなければなりません。その基本になる学校教育法を改正しなければなりません。それから、教育基本法の国会審議の際に、実にいろいろな問題が出てきました。学習指導要領どおりのことが、私立を含めて、公立の学校でも行われていない。それを教育行政のどこが責任をもって押さえていくのか、という問題が露呈しました。日本人は何か起こるとすぐに制度を変える傾向がありますが、制度を変えるとそれに伴い新たな欠点がでてきます。本来は、それに携わる人の規範意識、遵法精神のようなものが一番大切だと思いますが、ラスト・リゾートとして、教育の責任をどこが最後に負うのか。もし間違ったことがあれば、文部科学大臣が辞表を提出すればいいのか、それとも教育委員長が辞表を提出するのか、そのへんが非常に不明確です。ここを含めて、地教行法の改正により、教育の責任の所在を明確にすることが、当面急がれると思います。また、何よりも、良き教育は良き教師を以て始まる。ですから、学校の先生方が時代に合った資質を持っていただくのが基本です。従って、教員の資質を担保するために免許法を変えていかなければなりません。しかし同時に、いじめがあったり、自殺があったり、学校現場が荒れたりすると、すぐに大きな報道となって現れますが、そういうことを起こさないように、学校現場で黙々と努力している大多数の教師がいることも忘れてはなりません。そうした方々の処遇などとあわせて、この問題は考えねばなりません。昨年末の予算編成では、2.76パーセントという人材確保法に決められている教師の上乗せ分を削減するということを経済財政諮問会議で決めておりましたが、私がお願いをして、免許法とあわせて考えていくため、それを一年間、安倍内閣の意思としてストップしました。両様相まってですね、良い教師を作っていきたい。この三つの法律は、すでに鳥居先生の時代に一応の御答申を頂戴いたしております。閣議決定でできました教育再生会議でも、いろいろな有意義な御提言をいただいております。それから、教育基本法の審議の中で起こってきた諸々の問題、あるいは状況の変化を念頭に置きながら、鳥居先生の時代にいただいた答申を補足をしていただき、お答えをいただいて、これを法律化していきたい。中教審にお諮りすることは法律で決まっており、これを端折ることはできません。ただ、安倍首相は、教育再生を内閣の最優先課題として強い意思をもっておられる。教育現場に子どもさんを安心して預けられる、一つは学力をつけるという意味、二つはいじめや学校現場の荒れがないという意味、三つは、地震などによるハードの危険がないという意味、この三つの安全を確保したいという強い意思をもっています。国会の都合を申し上げると大変恐縮ですが、すでに頂いた答申に、私が申し上げましたような追加の事情をご勘案いただいて、御答申をできれば2月中か3月早々くらいまでにおまとめいただきたい。そして法制局での法案審査や、関係の諸団体、あるいは関係省庁と調整があります。実務とはそういうものでございまして、言い放しだけでできるという簡単なものではございません。かなり時間がかかります。そういうことをご勘案いただいて、山崎会長には大変ご迷惑でございますが、一つ、梶田先生にも引き続きご迷惑をおかけしますが、よろしくおまとめをいただけないかというのが、第一のお願いです。
 もう一つは、教育基本法の中にすでに明記されており、先生方からも御答申をいただいております振興計画について、もちろん予算の制約がございますので、財務当局とはかなり厳しいやりとりをしなければなりません。敢えて、文部科学省として申し上げると、予算編成の際の強い後ろ盾になる計画をぜひ作っていただきたい、これをお願いしたいと思います。
 最後に、いろいろな障害があった中で、ご苦労をいただき、教育基本法をおまとめいただいた鳥居前会長に、私は心から敬意を表したいと思います。安倍首相も、鳥居先生に、それから前回まで委員を務めていただいた中教審の先生方に、厚くお礼を申し上げてくれとの伝言をお預かりしております。教育基本法関連の審議をこれから10本程度はお願いしなければなりませんので、鳥居先生がお忙しいのは分かっておりますが、無理をお願いをいたしまして、文部科学省の顧問をお引き受けいただきました。従来の継続性がございますので、山崎会長の御判断で、適宜お見えいただいて、従来の経緯などのアドバイスもぜひいただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。
 私も、政治家として生きている間にはほめられることはないと思いますが、安倍内閣の下で再生会議というのがあって野依先生が座長をされた、中教審は鳥居先生と山崎先生が会長をされた、あの百年前のことがやっぱり日本にとってよかったといわれるように、先生方と一緒に力を合わせてがんばらせていただきます。よろしくご指導をお願いいたしまして、私の挨拶といたします。ありがとうございました。

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