我が国の高等教育の将来像<中央教育審議会 中間報告ポイント>

趣旨

 2015~2020年頃までを想定した我が国の高等教育の将来像(言わば「グランドデザイン」)とそこに至るまでの中期的な施策の方向性(言わば「ロードマップ」)を示す。

基本的考え方

 21世紀は「知識基盤社会」(knowledge-based society)の時代
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 高等教育は、個人の人格形成上も国家戦略上も極めて重要。

  • 世界各国(特にアジア近隣諸国)での高等教育改革の急速な進展。
  • 明治以来の我が国の教育は、今日の繁栄・発展の基礎として大きな成功。
  • しかし、戦後久しく、高等教育(特にその経済的基盤)に関する社会全体での議論が必ずしも活発だったとは言えない。
    • → これまでは、国全体の経済発展と個人所得の動向へ依存。
    • → 今日では、高等教育の量と質について根本的な議論が不可避。

 国の高等教育システムや高等教育政策そのものの総合力が問われる時代
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 国は、将来にわたって高等教育につき責任を負うべき。

  • 高等教育の危機は社会の危機。
  • 新時代の高等教育による我が国社会の持続的な発展。

 2007(平成19)年には大学・短大の収容力(入学者数/志願者数)が100%に(従来の試算より2年前倒し)。

 18歳人口は約120万人規模で推移。
 大学や学部等の設置に関する抑制方針が基本的に撤廃。
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 「高等教育計画の策定と各種規制」の時代から「将来像の提示と政策誘導」の時代への移行
 国の今後の役割は、1.高等教育のあるべき姿や方向性等の提示、2.制度的枠組みの設定・修正、3.質の保証システムの整備、4.高等教育機関・社会・学習者に対する各種の情報提供、5.財政支援等が中心。

将来像の主な内容

1:高等教育の量的変化の動向

  • 全体規模の面のみからすると、高等教育の量的側面での需要はほぼ充足。
    → ユニバーサル段階の高等教育が既に実現しつつある。
  • 今後は、分野や水準の面においても、誰もがいつでも自らの選択で学ぶことのできる高等教育の整備(「ユニバーサル・アクセス」の実現)が重要な課題。
  • 経営状況の悪化した機関への対応策の検討が必要。

2:高等教育の多様な機能と個性・特色の明確化

 新時代の高等教育は、全体として多様化して学習者の様々な需要に的確に対応するため、学校種(大学・短大、高専、専門学校)ごとの役割・機能を踏まえた教育や研究を展開し、各学校ごとの個性・特色を一層明確化
 各大学は、自らの選択により、緩やかに機能別に分化(個性・特色の表れ)。

 1.世界的研究・教育拠点、2.高度専門職業人養成、3.幅広い職業人養成、4.総合的教養教育、5.特定の専門的分野(芸術、体育等)の教育・研究、6.地域の生涯学習機会の拠点、7.社会貢献機能(地域貢献、産学官連携等)等

3:高等教育の質の保証

 高等教育の量的側面での需要の充足、大学設置に関する抑制方針の撤廃や準則主義化等による大学等の新設や量的拡大、高等教育の多様化の一層の進展につれて、学習者の保護や国際的通用性の保持のため、高等教育の質の保証が重要な課題
 国による質の保証の仕組みと各機関の自主的努力が相まって信頼確保。
 事前・事後の評価の適切な役割分担と協調の確保による質の保証。
 (設置認可、認証機関による第三者評価、自己点検・評価
 評価結果等に関する情報の積極的な開示と活用。

4:高等教育機関の在り方

 大学は自主性・自律性とともに公共的役割・社会的責任を担う。
 教育の充実のため、学位を与える「課程」中心の考え方への再整理が必要。
 大学が人材育成と学術研究の両面で使命・役割をより積極的・効果的に果たすため、大学の教員組織の在り方について見直しを行う必要。

大学

 学士課程…教養教育や専門教育等の在り方を総合的に見直して再構築。

 また、多様で質の高い教育の展開のため、教養教育と専門基礎教育を中心に主専攻・副専攻を組み合わせた総合的教養教育型や専門教育完成型など様々な個性・特色を持つものに分化。

大学院

 大学院全体…課程制大学院制度の趣旨を踏まえた大学院教育の実質化。
 修士課程・博士課程…体系的な教育課程の実施による充実。
 専門職学位課程…各種の専門職大学院の創設・拡充。

短期大学

 短期大学の課程…課程の修了を学位取得に結びつけるよう制度改正。

高等専門学校

 単位計算方法の改善。

専門学校

 一定の要件を満たす専門学校の卒業者への大学院入学資格の付与。

 国公私立大学それぞれの特色ある発展と高等教育全体の活性化が重要。

5:高等教育の発展を目指した社会の役割

 高等教育への公財政支出の拡充と民間資金の積極的導入に努める必要。
 高等教育への公的支出を欧米諸国並みに近づけていくよう、最大限の努力が必要。その際、厳しい財政状況や高等教育への社会の負託をも踏まえつつ、国民(=納税者)の理解を得られるよう説明責任を十分果たしていく必要。
 今後の財政的支援は、国内的・国際的な競争的環境の中で、各高等教育機関が持つ多様な機能(個性・特色)に応じた形にシフト。
 機関補助と個人補助の適切なバランス
 基盤的経費助成と競争的資源配分の有効な組み合わせ
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 多様な機能に応じた多元的できめ細やかなファンディング・システムの構築
 → 国公私の特色ある発展、質の高い教育・研究に向けた適切な競争
 国、地方公共団体や産業界等を含めた社会全体での取組の重要性

中期的な施策の方向性

 将来像の主な内容(1~5)を柱として、関連施策についての考え方を整理。

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

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(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)