第5章 中期的な施策の方向性
- 本章では、第2章~第4章に述べたような、中長期的観点で想定される我が国の高等教育の将来像(言わば「グランドデザイン」とも呼ぶべきもの)を念頭に、そこに至るまでの中期的な施策の方向性(言わば「ロードマップ」とも呼ぶべきもの)を示すこととする。
1 将来像に向けた施策の主要な柱と方向性
- 既に述べたように、今回の将来像においては、
- 高等教育の量的変化の動向
- 高等教育の多様な機能と個性・特色の明確化
- 高等教育の質の保証
- 1~3を踏まえた各高等教育機関の在り方
- 大学(学士課程、修士・博士・専門職学位課程、短期大学の課程)
- 高等専門学校
- 専門学校
- 高等教育の発展を目指した社会の役割
等が内容となっている。以下では、これらを主要な柱として関連施策についての考え方を整理することとする。
2 具体的に取り組むべき施策
1.高等教育の量的変化の動向
- 各高等教育機関が自ら行う経営改善のための努力への支援や、経営状況の悪化した機関への対応策の充実を図る。
- 学問分野ごとの人材養成に関する需要を的確に把握するとともに、人材養成に関する高等教育機関側と産業界側等との対話・協議の場の設定や意欲的な取組の評価・顕彰等を通じて、社会のニーズと高等教育のマッチングを図る。
2.高等教育の多様な機能と個性・特色の明確化
- 大学・短期大学への進学率が約50%に達し、高等専門学校や専門学校を加えた進学率が約75%に達している状況を踏まえ、各高等教育機関の個性・特色の明確化を通じた機能別分化を促進する。特に、各機関ごとのアドミッション・ポリシー(入学者選抜の改善)、カリキュラム・ポリシー(教育課程の改善)、ディプロマ・ポリシー(「出口管理」の強化)の明確化を支援する。
- 履修形態の弾力化を一層進めるとともに、学位以外の履修証明の方法の普及・定着を促進するなど、学習者の多様なニーズに対応した教育サービスの提供を支援する。
- 通学制・通信制の区分の在り方の検討を含め、新時代のキャンパス像(教育・研究環境)の構築を目指す。
- 設置形態の枠組みを超えた高等教育機関間の連携協力による教育・研究・社会貢献機能の充実・強化を一層促進する。
- 研究活動の中核を担う人材、教育活動の中核を担う人材、経営を支える人材それぞれの資質向上とそれに相応しい処遇の確保を図る。
- 法務・財務、労務管理、病院経営、入学者選抜、学生生活支援、産学官連携・技術移転等の分野で活躍する専門的人材(教員や事務職員の別を問わない。)の内部育成や外部登用を支援し、大学運営に関して幅広く厚みのある人材層の形成を図る。
3.高等教育の質の保証
- 事前・事後の評価の適切な役割分担と協調による質の保証を推進する。
- 大学等の設置認可や認証評価等における審査の内容や視点の明確化
(例えば、学位授与機関たる大学に相応しい教員組織、学問分野に応じた十分な学問的経歴等を有する教員(研究者教員)の配置、「専任教員」の教育研究・管理運営上の責任、「実務家教員」の実績評価方法、教養教育の実施方針の明示、設置後の学校法人の経営状況など)
- 認証評価の円滑な導入と充実
- 国際的な質保証システムの構築への貢献
- 自己点検・評価の充実及び情報公開の一層の促進
- 認証評価以外の各種の評価活動の支援
- 評価する側の適正さの担保
4.1~3を踏まえた各高等教育機関の在り方
- 助教授・助手の位置づけを含めた教員組織の見直しにより、教育・研究の組織的な展開とともに若手教員の養成を図る。
- 体系的な教育課程の実施による充実した大学院教育の実現を支援する。また、大学院教育の実質化のための将来計画を策定するなどにより、大学院における教育の課程の組織的展開の強化を図る。
- 機能別分化の一環として、世界的研究・教育拠点の形成を支援し、世界最高水準の大学院を目指す。
- 機能別分化の一環として、各種の職能団体との連携など分野の特性に応じた設計の下での専門職大学院の創設・拡充を図る。
- 「21世紀型市民」の育成を目指し、多様で質の高い学士課程教育を実現するため、充実した教養教育の実施や学問分野ごとのコア・カリキュラムの策定等を支援する。また、「21世紀型市民」の高度な学習需要に対応する修士課程教育等を促進する。
- 各学校種ごとの個性・特色の違いを明確にし、国際的通用性の確保に留意しつつ、相互の連携・接続の円滑化を図る。
- 短期大学・高等専門学校・専門学校等の各学校種ごとの位置づけや役割に応じた多様で質の高い教育の展開を支援する。
- 国立大学の法人化、公立大学法人制度の創設、私立学校法改正による学校法人制度の管理運営面の改善の趣旨を生かして、国公私立大学それぞれが、組織運営体制の充実、学長のリーダーシップの強化、学内組織の役割分担の明確化等を図れるよう支援する。
5.高等教育の発展を目指した社会の役割
- 高等教育への財政的支援は、国内的のみならず国際的な競争的環境の中で高等教育機関が持つ多様な機能に応じた形にシフトし、機関補助と個人補助の適切なバランス、基盤的経費助成と競争的資源配分を有効に組み合わせること(デュアル・サポート)により、多元的できめ細やかなファンディング・システムの構築を図る。このことにより、国公私それぞれの特色ある発展と緩やかな役割分担、適切な競争条件の確保を目指す。
- 国立大学支援
- 私立大学支援
- 公立大学支援
- 国公私を通じた競争的
- 重点的支援
- 競争的資源配分
- 学生支援
- 高等教育への公財政支出の拡充と民間資金の積極的導入を図る。特に、教育基本法及び教育振興の在り方の検討を見据えつつ、欧米並みの公的支出に近づける努力や、寄附金・委託費や附属病院収入・事業収入等の自主財源確保の支援など、多様で安定的な財源の確保を図る。
- 高等教育を受ける機会を実質的に保障して「ユニバーサル・アクセス」を実現する見地から、学生の多様な需要や社会的要請を踏まえつつ、学生に対する効果的な経済的支援のための関連施策の充実・体系化を図る。特に、大学院レベルでの国際的に有為な人材の育成に留意する。
- 人材養成に関する高等教育機関側と産業界側等との対話・協議の場の設定や意欲的な取組の評価・顕彰等を通じて、社会のニーズと高等教育のマッチングを図る。(再掲)
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