1.総合的な体制整備に関する課題について

 障害者基本計画においては、障害者の社会への参加や参画に向けた施策の一層の推進を図ることを目的に、障害者一人一人のニーズに対応して総合的かつ適切な支援を行うことを基本方針としつつ、乳幼児期から学校卒業後まで一貫して計画的に教育や療育を行うこと等が示されている。

 これを踏まえ、協力者会議最終報告では、学校教育における体制整備の方向性として、関係機関の有機的な連携と協力、「個別の教育支援計画」(注4)、「特別支援教育コーディネーター」(注5)などの具体的な内容が提言された。

 文部科学省においては、全都道府県教育委員会に対する委嘱事業(注6)等を通じ、平成19年度を目標として、すべての小・中学校において総合的な支援体制を整備することを目指している。

 この委嘱事業においては、各都道府県等のレベルで、「特別支援連携協議会」や「専門家チーム」の設置、「巡回相談員」による小・中学校への指導・助言などが推進されており、また、各学校のレベルでは、「校内委員会」の設置、「特別支援教育コーディネーター」の指名、「個別の教育支援計画」の策定などが推進されている。

 引き続き、こうした体制整備を推進するとともに、その進捗状況を踏まえつつ、以下のような課題についても検討する必要がある。

  1. 個別の教育支援計画及び個別の指導計画について
     個別の教育支援計画については、今後、小・中学校も含めた策定の推進を検討するとともに、関係機関と連携した効果的な運用方法を確立する必要がある。また、今後の運用状況を踏まえつつ、「個別の指導計画」と併せて学習指導要領等への位置付けを行うことや、就学相談・指導や卒業後の就労支援における活用などを検討する必要がある。
  2. 特別支援教育コーディネーターについて
     協力者会議最終報告及び平成16年1月に文部科学省より公表された「小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」においては、すべての盲・聾・養護学校及び小・中学校において、特別支援教育コーディネーターを指名し、校務分掌に明確に位置付けることが求められている。今後は、引き続き研修等を通じた人材養成を推進しつつ、可能な限りコーディネーターとしての校務に専念できるよう必要な配慮が行われるようにすることや、いじめや不登校等に対応する小・中学校の生徒指導体制の整備と関連付けた活用も含め、一層の効果的・効率的運用を促す必要がある。また、盲・聾・養護学校(特別支援学校(仮称))においては、センター的機能を担う中核的存在としてコーディネーターが適切に位置付けられるようにすることも重要である。
     なお、特別支援教育コーディネーターの指名に関しては、校務分掌における位置付け、必要とされる研修や一定の経験等をどの程度求めていくのかについて様々な意見があるところであり、これらを含め、今後の各学校における運用状況を踏まえつつ、その在り方について引き続き検討する必要がある。
  3. 学校内外の人材の活用と関係機関との連携協力
     総合的な支援体制整備に当たっては、生徒指導主事、養護教諭、スクールカウンセラー、学校医などの学校内の人材はもとより医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等の外部の専門家の総合的な活用を図ることや福祉、医療、労働など関係機関等との連携協力を進める必要がある。さらに、親の会やNPO等との連携を図り、全体として有機的なネットワークを構築する必要がある。

(注4)「個別の教育支援計画」とは、障害のある幼児児童生徒の一人一人のニーズを正確に把握し、教育の視点から適切に対応していくという考えの下、長期的な視点で乳幼児期から学校卒業後までを通じて一貫して的確な支援を行うことを目的として策定されるもので、教育のみならず、福祉、医療、労働等の様々な側面からの取組を含め関係機関、関係部局の密接な連携協力を確保することが不可欠であり、教育的支援を行うに当たり同計画を活用することが意図されている。なお、「新障害者プラン」(障害者基本計画の重点施策実施5か年計画)の中では、盲・聾・養護学校において「個別の支援計画」を平成17年度までに策定することとされている。この「個別の支援計画」と「個別の教育支援計画」の関係については、「個別の支援計画」を関係機関等が連携協力して策定するときに、学校や教育委員会などの教育機関等が中心になる場合に、「個別の教育支援計画」と呼称しているもので、概念としては同じものである。

(注5)特別支援教育コーディネーターについて、協力者会議最終報告では、小・中学校又は盲・聾・養護学校において関係機関との連携協力の体制整備を図るために、各学校において、障害のある児童生徒の発達や障害全般に関する一般的な知識及びカウンセリングマインドを有する学校内及び関係機関や保護者との連絡調整役としてのコーディネーター的な役割を担う者として提言されている。

(注6)文部科学省では、平成15年度から「特別支援教育推進体制モデル事業(平成17年度からは「特別支援教育体制推進事業」とし、厚生労働省の「発達障害者支援体制整備事業」と連携協働して実施している。)」を全都道府県に委嘱して推進している。本事業においては、各都道府県において推進地域を設定し、推進地域内の小・中学校等においては、幼児児童生徒の実態把握や適切な支援方法等について検討を行うための「校内委員会」の設置や、「特別支援教育コーディネーター」の指名、「個別の教育支援計画」の策定を行うこととしている。また、各都道府県教育委員会等においては、教育委員会の職員、教員、心理学の専門家、医師等により構成され、小・中学校等からの申し出に応じ、LD、ADHD、高機能自閉症か否かの判断や望ましい教育的対応等の専門的な意見を示すための「専門家チーム」の設置、小・中学校等を定期的に巡回し、LD・ADHD・高機能自閉症等の幼児児童生徒に対する指導内容・方法に関する指導や助言を行う「巡回相談」の実施及び障害のある幼児児童生徒に対する総合的な支援体制の整備を促進するため、教育、福祉、医療、労働等の関係部局や、大学、親の会、NPO等の関係者からなる「特別支援連携協議会」を設置することとしている。

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初等中等教育局特別支援教育課

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