(4)「特別支援教室(仮称)」に向けた当面の方策

 以上を踏まえ、「特別支援教室(仮称)」の実現に向けた第一段階として、まず、小・中学校における総合的な体制整備(後述)を着実に進めつつ、以下のような現行制度等の見直しを行うことが適当である。これにより、小・中学校の通常の学級に在籍するLD等の児童生徒に対する特別の場での指導及び支援が可能となる。また、引き続き研究開発学校やモデル校などを活用し、制度化に向けた事例・課題等の情報の収集に努めることとともに、その優れた実践を全国に発信することも重要である。
 「特別支援教室(仮称)」の構想が目指しているシステムの法令上の位置付けの明確化等のさらなる制度改正については、これらの取組の実施状況も踏まえ、検討することが適当である。

ア.特殊学級における交流及び共同学習の促進と担当教員の活用

 小・中学校の学習指導要領では、「特殊学級又は通級による指導については、教師間の連携に努め、効果的な指導を行うこと」や、障害のない児童生徒と障害のある児童生徒との「交流の機会を設けること」が定められているが、その趣旨が徹底されていない場合もみられる。

 障害者基本法において、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習を積極的に進める旨が規定されたことも踏まえ、特殊学級を担当する教員と通常の学級を担当する教員の連携の下で、特殊学級に在籍する児童生徒が通常の学級で学ぶ機会が適切に設けられることを一層促進するとともに、その際の教育内容の充実に努めるべきである。

 また、交流及び共同学習の機会が充実されるとともに、特別支援学校(仮称)のセンター的機能が発揮されることを前提とすれば、特殊学級を担当する教員が、通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒への指導及び支援も含め、これまで以上に特別支援教育に関する多様な役割を担うことも可能となると考えられる。

 以上を踏まえ、小・中学校において障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導及び必要な支援が効果的に行われるようにするため、特殊学級を担当する教員の一層の活用を進めることが必要である。

 また、特殊学級や通級による指導を担当する教員について、高い専門性を有する者が適切に養成・配置されることが必要であり、任命権者である各都道府県教育委員会等において、人事上の配慮が望まれる。

イ.通級による指導の見直し

 通級による指導については、現在でも、必要に応じ、高機能自閉症等を対象とすることが可能であるが、これに加え、LD・ADHDもその対象とすべきである。これに併せて、指導時間数の制限を緩和することや担当教員の専門性を踏まえた指導の対象となる児童生徒の障害種別についても特別支援教育の観点から弾力的な運用が可能となる方向で見直しを行う必要がある。

 通級による指導の形態には、学校内での実施だけでなく、児童生徒が他の小・中学校や盲・聾・養護学校に出向く形態や、教員が他の学校を巡回訪問する形態もみられる。今後、特別支援学校(仮称)のセンター的機能が発揮されるとともに、特殊学級担当教員の活用が促進されることによって、各地域の実情に応じて、こうした多様な形態による運用が広がることが期待される。

ウ.いわゆる「巡回による指導」について

 障害のある児童生徒に対する指導及び支援の一つとして、小・中学校や盲・聾・養護学校の教員が複数の学校を巡回訪問して指導を行う形態がみられる。このいわゆる「巡回による指導」については、LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する教育課程外の個別指導として、週に1回未満程度の頻度で行われている例がある。

 いわゆる「巡回による指導」のうち、定期的に実施されており、かつ、教育課程の一部として位置付けることができる内容であるものについては、その制度的な位置付けを明確化する必要がある。その際、いわゆる「巡回による指導」を受け入れる学校における授業時間の調整、指導に当たる教員の身分、円滑な実施を確保するための仕組みについても併せて検討を行う必要がある。

 また、実施形態については、通級による指導と同様に、特別支援学校(仮称)のセンター的機能や特殊学級担当教員の活用も含め、多様な形態による弾力的運用を可能とすることが適当である。

エ.その他

 いわゆる院内学級については、現行制度の維持を前提としつつ、短期間の在籍であっても学籍移動の手続が必要となることや、児童生徒数の変動を適切に反映した学級編制を行うことが困難であるなどの課題が指摘されていることから、制度の運用実態を見きわめつつ、その在り方について調査研究を行う必要がある。

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初等中等教育局特別支援教育課

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