2.特別支援教育のセンター的機能について

(1)基本的な考え方

 今後、地域において特別支援教育を推進する体制を整備していく上で、特別支援学校(仮称)は中核的な役割を担うことが期待される。特に、小・中学校に在籍する障害のある児童生徒について、通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒を含め、その教育的ニーズに応じた適切な教育を提供していくためには、特別支援学校(仮称)が、教育上の高い専門性を生かしながら地域の小・中学校を積極的に支援していくことが求められる。

 これまでも、盲・聾・養護学校の学習指導要領等において、盲・聾・養護学校は、「地域の実態や家庭の要請等により、障害のある児童生徒等又はその保護者に対して教育相談を行うなど、各学校の教師の専門性や施設・設備を生かした地域における特殊教育に関する相談のセンターとしての役割を果たすよう努めること」と規定されており、すでに様々な形で、地域の小・中学校教員や保護者に対する教育相談等の取組が進められている。

 今後、特別支援学校(仮称)の機能として、小・中学校等に対する支援などを行う地域の特別支援教育のセンター的機能を、関係法令等において明確に位置付けることを検討する必要がある。

(2)センター的機能の具体的内容

 いかなる形態の特別支援学校(仮称)をどのように配置していくかについては、各都道府県等において検討されるべきものであるため、センター的機能についても、すべての特別支援学校(仮称)が制度的に一律の機能を担うこととするのは現実的ではなく、各学校の実情に応じて弾力的に対応できるようにすることが適当である。

 なお、盲・聾・養護学校における先進的な事例を踏まえ、特別支援学校(仮称)に期待されるセンター的機能を例示すれば、以下のとおりである。

  1. 小・中学校等の教員への支援機能
  2. 特別支援教育等に関する相談・情報提供機能
  3. 障害のある幼児児童生徒への指導・支援機能
  4. 福祉、医療、労働などの関係機関等との連絡・調整機能
  5. 小・中学校等の教員に対する研修協力機能
  6. 障害のある幼児児童生徒への施設設備等の提供機能

 このうち、小・中学校等の教員への支援機能、特別支援教育等に関する相談・情報提供機能、障害のある幼児児童生徒への指導機能、福祉、医療、労働などの関係機関等との連絡・調整機能については、具体的には以下のような内容が考えられる。

 小・中学校等の教員への支援機能については、個々の幼児児童生徒の指導に関する助言・相談のほか、個別の教育支援計画の策定に当たっての支援などが考えられる。

 特別支援教育等に関する相談・情報提供機能については、地域の小・中学校等に在籍する幼児児童生徒や保護者への相談・情報提供のほか、幼稚園等における障害のある幼児への教育相談が考えられる。これまでにも、盲学校及び聾学校の幼稚部では、乳幼児期の子どもを対象とした早期からの教育相談を実施している場合があるが、障害者基本計画において乳幼児期からの一貫した相談支援体制の構築を図ることとされていることも踏まえ、今後、それぞれの地域の実情に応じて、こうした取組を広げていくことが期待される。

 障害のある幼児児童生徒への指導・支援機能については、小・中学校の児童生徒を対象とする通級による指導や『いわゆる「巡回による指導」(後述)』のほか、盲・聾学校を中心に就学前の幼児や乳幼児に対して行われてきた指導及び支援が考えられる。これらの実施に当たっては、小・中学校等との十分な連携が必要であり、今後、それぞれの地域の実情に応じて、こうした取組を広げていくことが考えられる。

 福祉、医療、労働などの関係機関等との連絡・調整機能については、個別の教育支援計画の策定に当たり、福祉、医療、労働などの関係機関等との連絡・調整を行うことなどが考えられる。

 なお、障害者基本法において、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習を積極的に進める旨が規定されたことを踏まえ、今後、盲・聾・養護学校(特別支援学校(仮称))に在籍する児童生徒と、地域の小・中・高等学校等(「等」は中等教育学校を指す。以下、同じ。)の児童生徒との交流及び共同学習の機会が適切に設けられることを促進するべきである。

(3)センター的機能が有効に発揮されるための体制整備

 特別支援学校(仮称)がセンター的機能を発揮するためには、特別支援学校(仮称)間での適切な連携が行われるとともに、多くの特別支援学校(仮称)の管理運営を担う都道府県教育委員会と、小・中学校の管理運営を担う市町村教育委員会とが十分に連携し、小・中学校が円滑に支援を受けられるような環境を醸成していくことが重要である。その際、地域の実情に応じて、小・中学校の特殊学級等が特別支援学校(仮称)と連携協力して、センター的機能の一翼を担う場合もあり得ることに留意する必要がある。
 障害のある幼児児童生徒への支援については、福祉、医療、労働などの関係機関等との適切な連携も重要であるが、このためには、関係行政機関等の相互連携の下で広域的な地域支援のための有機的なネットワークが形成されることが有効である。すでに各都道府県レベルで「障害保健福祉圏域」や教育事務所単位での支援地域の設定などが行われているが、この中に特別支援学校(仮称)のセンター的機能が適切に位置付けられる必要がある。その際、「新障害者プラン」(障害者基本計画の重点施策実施5か年計画)において、策定することとされている「地域において一貫して効果的な相談支援を行う体制を整備するためのガイドライン」の内容にも留意する必要がある。

 特別支援学校(仮称)がセンター的機能を有効に発揮するためには、高い専門性を有する教員が適切に養成・配置されることが必要であり、任命権者である各都道府県教育委員会等においては、人事上の配慮が望まれる。また、各学校においては、校長のリーダーシップの下に、それぞれに求められる役割に応じて目的・目標を明確にして、組織や運営の在り方を再構築し、その成果を定期的に評価するなど一層効果的な学校経営が求められる。さらに、センター的機能のための分掌や組織(例えば「地域支援部」など)を設けて校内の組織体制を明確にすることが望ましい。

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