1.障害種別を超えた学校制度について

(1)基本的な考え方

 今後、障害のある幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導及び必要な支援を行う特別支援教育を進めていく上で、現在の盲・聾・養護学校の制度を様々な教育的ニーズに適切に対応し得るものとする必要がある。

 特に、第1章で述べたように、現在、盲・聾・養護学校(小・中学部)に在籍する児童生徒のうち、半数近く(肢体不自由養護学校においては約4分の3)の児童生徒が重複障害学級に在籍するなど、障害の重度・重複化への対応が喫緊の課題となっている。

 このような課題に対応するため、各都道府県等では、複数の障害に対応する併設型養護学校の設置や、幼児児童生徒数の推移等を踏まえた盲・聾・養護学校の配置見直しなどに関する検討が進められている。現在推進されている地方分権の進展も踏まえれば、国の制度をより柔軟なものとすることによって、こうした工夫や努力を促進することも重要である。

 このため、協力者会議最終報告で提言されているとおり、現在の盲・聾・養護学校を、障害種別を超えた学校制度(「特別支援学校(仮称)」)とすることが適当である。

 これにより、各都道府県等において、複数の障害に対応した学校を効果的に設置することが容易となることから、地域の実情に応じたきめ細かい教育の一層の充実に資することが期待される。

(2)特別支援学校(仮称)の内容

1.対象となる障害種別について

 特別支援学校(仮称)は、基本的には現在の盲・聾・養護学校の対象となっている5種類の障害種別(盲・聾・知的障害・肢体不自由・病弱)及びこれらの重複障害に対応した教育を行う学校制度とすることが適当である。

 特別支援学校(仮称)の制度は、各都道府県等において、複数の障害に対応した教育を行う学校の設置を可能とするものであるが、これまでのように特定の障害に対応した学校を設けることも可能である。具体的にいかなる障害に対応した教育を行う学校とするかについては、地域における教育に対するニーズ等に応じて弾力的に判断されることとなる。

 これに関連し、協力者会議最終報告では、特別支援学校(仮称)において、例えば、「視覚障害部門」、「知的障害部門」等の「教育部門」を設けることが提言されている。この「教育部門」は、各障害種別ごとの指導の専門性を確保する観点から、これを設けることが有効であると考えられる。複数の障害に対応した併設型養護学校の中には、固定的組織としての部門を設けることなく柔軟な運営を行っている例があり、特別支援学校(仮称)では幼児児童生徒の障害の状態に応じた弾力的な教育課程や指導方法による教育の実施が求められることも踏まえると、その具体的内容はできる限り設置者等に委ねるような形で制度的位置付けを検討すべきである。

 対象とする障害種別に関し、LD・ADHD・高機能自閉症等については、小・中学校等(「等」は幼稚園、中等教育学校及び高等学校を指す。以下、同じ。)における特別な指導内容・方法が十分に確立されていない現状にかんがみ、これらの幼児児童生徒に対する適切な指導及び必要な支援の在り方についても、特別支援学校(仮称)が、後述のセンター的機能の発揮等を通じて先導的役割を果たすことが期待される。

 なお、自閉症については、その特別な指導内容・方法に着目し、知的障害養護学校において自閉症を併せ有する幼児児童生徒の学級を設ける運用も行われており、また、平成16年度から筑波大学附属久里浜養護学校が自閉症のある幼児児童を受け入れる学校に転換したところである。今後、これらの実績も踏まえ、知的障害と自閉症を併せ有する幼児児童生徒に対し、この2つの障害の違いを考慮しつつ、障害の特性に応じた対応について、引き続き研究を進める必要がある。

2.配置について

 いかなる形態の特別支援学校(仮称)をどのように配置していくかについては、都道府県等において、地理的な状況や各障害種別ごとの教育的ニーズの状況など、それぞれの地域の実情に応じたきめ細かい検討に基づいて判断されることになるが、その際、次のような視点についても十分考慮される必要がある。

  • ア.一人一人の教育的ニーズに対応する特別支援教育の理念や、障害の重度・重複化に対応するという特別支援学校(仮称)の趣旨に照らし、特別支援学校(仮称)は、可能な限り複数の障害に対応できるようにするべきとの視点
  • イ.障害のある幼児児童生徒が、できる限り地域の身近な場で教育を受けられるようにするべきとの視点
  • ウ.障害の特性に応じて、同一障害の幼児児童生徒による一定規模の集団が学校教育の中で確保される必要があるとの視点
  • エ.学校の形態に応じて、各障害種別ごとの専門性が確保され、専門的指導により幼児児童生徒の能力を可能な限り発揮できるようにする視点
  • オ.特別支援教育のセンター的機能が効果的に発揮されるようにする視点

3.名称について

 特別支援学校(仮称)が制度として発足した場合、特別支援学校(仮称)の名称が普及・定着するまでには一定の期間を要すると考えられる。一方、これまでの各障害種別における専門的指導の蓄積や、私立の学校が建学の精神に基づく特色ある教育活動を展開していることなども踏まえれば、主として特定の障害に対応する形態の特別支援学校(仮称)については、引き続き「盲学校」、「聾学校」又は「養護学校」と称することができるよう検討することが適当である。

4.教育課程について

 特別支援学校(仮称)においては、障害のある幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応した効果的かつ弾力的な教育課程編成が期待される。特別支援学校(仮称)の学習指導要領等は、現在の盲・聾・養護学校の学習指導要領等の内容を見直して定められることとなるが、障害種別を超えたグループ別の教育課程編成の可能性や、平成17年度までに策定することとされている「個別の教育支援計画」との関係を検討することも必要であり、引き続き検討を行うことが適当である。

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初等中等教育局特別支援教育課

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