(1)学校運営をめぐる現状と課題

 学校運営については、従来から、日常的な具体の学校運営は学校に委ねられていたものの、教育委員会の関与が強く、その細かな指示を受けて行われていた。このように学校の権限が限られ、教育委員会の指示のもとに学校が運営されるのであれば、学校自体の組織運営能力は必ずしも求められるものではない。そのなかで、とりわけ学校本来の目的である教育活動の実施は、教職員の個々具体の活動に収れんされる側面が強く、他の組織よりも組織的な運営を難しくしていると考えられる。学校に組織マネジメントの発想が余りないとの指摘があるが、このような状況にあってはむしろ当然の指摘とも言えるものであり、その結果として、組織や業務がうまく整理されておらず、学校の運営は積み上げ方式となっている(したがって業務を「捨てる」ということがなかなかない)のではないか。
 しかし、主体的な特色ある学校づくりが求められ、そのための学校の権限の拡大が図られているなかでは、学校が自らその権限を責任を持って適切に行使していかなければならない。それを実現するには、個々の教職員の活動をより有機的に結び付け、組織的な学校運営を行う体制を整えることが必要である。さらに、学校については、その組織が分かりにくく責任の所在が不明確であるとの指摘があるが、より多くの権限を移譲するのであれば、より透明性の高い組織運営を行うことも大切である。このことは、開かれた、信頼される学校づくりを進める上でも求められるものである。

 また、他の組織と異なる学校の特質として、例えば一人の児童生徒の指導について多くの教職員がかかわっているなど、教育活動の成果について一人一人の業務に分けてこれをとらえることが難しく、集団としての活動としてとらえる必要があるという点が挙げられる。学校の組織運営体制について検討する場合、このような特質に留意し、個々の教職員が自らの職責を自覚しながら能力や個性を発揮するとともに、チームとしての力を生かしつつ学校組織全体の総合力を高めるよう、組織全体として有機的な運営が行われる態勢を作ることが必要である。その際、従来の学校においては、例えば特徴的な教育実践や研修の成果など、個々人の知識や経験が学校全体で共有化されにくく、その結果として教職員の思考の幅が狭くなりがちであったとの指摘もある。学校組織の集団としての総合力を高めるには、こうした「知の共有化」が図られるようにすることも視野に入れる必要がある。

 これらのことを踏まえ、学校が組織的に機能し、新たな課題にも機動的に対応できるよう、学校の組織体制の再編整備について検討する必要があると考える。その際、地域に開かれた学校づくりの観点から、学校が自ら地域との連携を進められる体制に留意することも大切であると考える。
 また、個々具体の学校運営を担うのは教職員であることから、学校組織がその機能を十分に果たし、機動的な学校運営が行われるには、一人一人の教職員が、組織的な連携のもと、自らの役割をきちんと果たすことが不可欠である。そのためには、教職員の資質能力を高めつつ、教職員が意欲を持って学校運営に参画するようにすることが重要であることから、教職員の評価と処遇の在り方について検討する必要があると考える。
 さらに、自主的、自律的な学校運営が行われるには、その責任者である校長やこれを補佐する教頭などの管理職に適任者を得ることが重要である。これからの管理職は、教育者としても学校という組織の責任者としてもその資質能力を他の教職員以上に高め、「卓越性に基づくリーダーシップ」を発揮することが求められるであろう。このため、管理職のより一層の適材確保について検討する必要があると考える。

 なお、学校の組織体制を検討するに当たっては、学校種や各学校の規模あるいはそれぞれの子どもや地域の状況など様々であり、必ずしもこれを一律のものとすることは適当でないと考える。したがって、具体的な取組を進める際には、各教育委員会や学校においてそれぞれの実情に応じたものとなるよう工夫することが必要である。
 また、制度改正に係る事項について検討する場合においても、国の法令、あるいは地方公共団体の条例や教育委員会規則など様々なものが考えられるところであるが、その制度化に当たっては、各学校や教育委員会においてそれぞれの実情に応じた取組を工夫できるよう、弾力的な仕組みとすることが求められるものと考える。

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