学校の組織運営の在り方について(作業部会の審議のまとめ)

 これからの学校は、それぞれの実情に応じて自ら工夫し、特色ある教育活動を展開することが求められる。このため、主体的な学校づくりが行われるよう、学校の裁量を広げその権限を強化する取組が進められているところである。それとともに、学校の自主性、自律性を確立するためには、校長のリーダーシップのもと、教職員が一致協力し、組織的、機動的な学校運営が行われなければならない。このような観点から、学校の組織運営の在り方について検討する必要があると考える。
 学校が真に自主的、自律的に運営されるためには、裁量権限の拡大と同時に、これに見合った学校の運営体制を整えることが必要である。すなわち、学校の権限拡大を進めるのであれば、学校が自らの判断と責任においてその権限を活用できるよう、組織的な学校運営が行われなければならない。このため、いわば権限移譲の受け皿となる運営体制の整備が必要であると考える。例えば、学校裁量経費が措置されれば、学校自らが説明責任を果たしながらこれを適切に執行しなければならず、これを可能とする学校運営が求められるのである。それがないまま権限移譲が進めば、その権限の責任ある行使が行われず、かえって混乱と不信を招くだけであろう。
 これまで、ややもすると学校の運営体制が未整備のまま権限移譲が進められ、かえってその権限を持て余し、管理職も含め教職員の理解が必ずしも十分ではなく、所期の効果が上がらないことがあったのではなかろうか。
 また、学校については、地域に根ざした特色ある教育を行うため、保護者や地域住民の信頼を得ながら、これらと一体となって学校づくりを進めることが求められる。そのためには、地域との十分な連携を図りながら学校運営が行われるよう、これに応じた組織運営体制を整えることが必要となる。

 もとより、国民の期待に応える学校とは、特色のある優れた教育を行う学校であり、そのためには資質能力のある教職員がいて、それぞれの力を十分に発揮することが何よりも大切である。このため、学校の権限が拡大し自主的、自律的な学校運営が行われるなかで、教職員が生き生きと業務を遂行することができる環境づくりとして、学校の組織運営体制が整えられる必要があると考える。このことを踏まえ、学校の組織を簡潔で機動的なものとし、そのフットワークをよくすることが、本作業部会の意図するところである。

 中央教育審議会としても、学校の自主性、自律性の確立やそのための学校の裁量の拡大について提言を行ってきたところである。
 とりわけ、平成10年の「今後の地方教育行政の在り方について」の答申においては、第3章を「学校の自主性・自律性の確立について」として一章を当てている。そのなかで、学校の自主性・自律性を確立するためには、それに対応した学校の運営体制と責任の明確化が必要であることから、校長をはじめとする教職員一人一人が、その持てる力を最大限に発揮し、組織的、一体的に教育課題に取り組める体制を作る必要があるとして、そのような観点から、学校運営組織の見直しについて提言を行ったものである。具体的には、校長・教頭の適材確保と教職員の資質向上、学校運営組織の見直し、学校の事務・業務の効率化などについて、その方策を提言した。
 これを受けて、政府においては、校長・教頭の資格要件の緩和や職員会議の位置付けの明確化に関し制度改正が行われたほか、各教育委員会において様々な取組が進められてきたところである。
 さらに、平成12年の教育改革国民会議報告では、学校運営を改善するには、現行体制のまま校長の権限を強くしても大きな効果は期待できないとの認識のもと、校長が独自性とリーダーシップを発揮できるよう、学校に組織マネジメントの発想を導入することを提言している。これを受けて、学校組織マネジメントの研修の実施などの取組が進められているところである。
 政府や地方公共団体において、今後とも、これらの取組を一層推進していくことが求められるところである。それとともに、これら提言を踏まえた上で、学校の権限が拡大されていくなかで今回改めて、組織的な学校運営を実現するための組織運営体制の在り方について検討するものである。その際、有機的な連携によりチームワークとして機能を発揮するなど学校の特質も考慮する必要があると考える。また、学校全体で目的を共有し学校が組織として力を発揮できるよう、目的意識の共有化や組織体制の整備、評価などの在り方で学校に応用できるものを取り入れるなど、必要に応じ学校運営に組織マネジメントの考え方も取り入れることも必要であると考えられる。

 なお、学校の組織運営を財政的に支えるものとして義務教育費国庫負担制度がある。この制度においては、総額裁量制の導入など、必要な財源を確実に保障しつつ、地方の自由度を拡大する改革が実施されている。学校の組織運営の改善を進めるに当たっては、このような枠組みにより、国において必要な財源を確保しつつ、各教育委員会や学校においてそれぞれの学校や地域の実情に合った取組が行われるようにすることも求められていると考える。

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