5.採用、研修及び人事管理等の改善・充実

(1)採用の改善・充実-確かな資質能力を前提とした採用の一層の改善・工夫-

 今後、教員の採用においては、養成段階において育成される確かな資質能力を前提として、求める教員像をより明確かつ具体的に示すとともに、それに合致する者を採用するのに適した選考方法を工夫するなど、採用選考の一層の改善・工夫を図ることが必要である。
 中長期的な視野から退職者数の推移等を的確に分析・把握した上で、計画的な採用・人事を行うことが重要である。また、採用スケジュール全体の早期化を検討するとともに、採用選考の受験年齢制限の緩和・撤廃、社会人経験者の登用促進、退職教員を含む教職経験者の積極的な活用等、多様な人材を登用するための一層の改善・工夫を図ることが必要である。

○ 現在、教員の採用については、都道府県・指定都市の教育委員会において、人物評価を重視する方向で、採用選考の改善が進められている。今回、1.で述べたような教職課程の質的水準の向上を図るための取組を行うことにより、今後、養成段階で教員として必要な資質能力がこれまで以上に確実に育成されることとなる。このため、教員の採用においては、このような確かな資質能力を前提として、任命権者が求める教員像に照らして、より優れた資質能力を備えた人材を確保するための一層の改善・工夫を図ることが必要である。

○ 具体的には、現在、都道府県・指定都市の教育委員会においては、平成11年の教養審第三次答申を踏まえ、採用選考に当たり、求める教員像を示すなどの取組が行われているが、今後は、より明確かつ具体的な形で求める教員像を示すことが必要である。また、こうした教員像に合致する者を採用するのに適した選考方法を工夫することが必要である。このため、面接試験や模擬授業、場面指導の実施等により、多面的な人物評価を一層充実することや、ボランティアやインターンシップ等の諸活動の実績を積極的に評価すること、教育実習や教職実践演習(仮称)をはじめとする教職課程の履修状況を適切に評価すること等について検討する必要がある。

○ 今後、教員の大量採用時代を迎えることが見込まれることから、都道府県・指定都市の教育委員会においては、中長期的な視野から退職者数や子どもの数の推移等を的確に分析・把握した上で、計画的な採用・人事を行うよう努めることが重要である。また、量及び質の両面で優れた教員を確保するため、募集から採用内定に至る採用スケジュール全体の早期化を図るとともに、採用選考の受験年齢制限の緩和・撤廃、特別免許状や特別非常勤講師制度の活用による社会人経験者の登用促進、退職教員を含む教職経験者の積極的な活用、任期付任用制度の活用等、多様な人材を登用するための一層の改善・工夫を図ることが必要である。

(2)現職研修の改善・充実-現職研修の体系化の検証や10年経験者研修の今後の在り方等-

 今後の現職研修は、個々の教員の能力、適性等に応じた多様な研修を行い、その成果を適切に反映していくという性格を強めていくことが必要であり、個々の研修の目的、内容、評価等の検証を行い、必要な改善・充実を図ることが必要である。
 10年経験者研修については、法定研修としての位置付けは引き続き存続させることが適当であるが、更新制の導入との関係で、更なる指導力の向上や、得意分野づくりに重点を置いた研修としての性格をより明確にするとともに、実施時期や研修内容については、柔軟化の方向で見直しを行うことが必要である。

○ 現在、現職研修については、都道府県・指定都市・中核市の教育委員会(以下「各教育委員会」という。)において体系化が図られているが、研修成果を適切に評価し、その後の指導や処遇に反映するシステムを構築することが課題となっている。また、今回、更新制の導入により、生涯にわたり教員の資質能力を保証するという制度的基盤が確立されることから、今後の現職研修は、基本的に個々の教員の能力、適性等に応じた多様な研修を行い、その成果を適切に評価していくという性格を一層強めていくことが必要である。
 こうした観点に立ち、今後、各教育委員会においては、現在実施されている現職研修の体系化の考え方や、個々の研修の目的、内容、成果等の検証を行い、必要な改善・充実を図ることが必要である。

○ また、各教育委員会における研修が多様化する中で、国においては、研修の成果の把握や評価方法等についてモデルを作成するなど、全国的な水準を確保するための方策について検討することが必要である。併せて、国や各教育委員会においては、非常勤講師や民間企業の経験者など、多様な経歴を有する教員が増加している状況を踏まえ、個々の教員のキャリアに応じた柔軟な研修体系や研修内容について検討することが必要である。

○ 更新制を導入することとする場合、平成14年の本審議会の答申に基づき制度化された10年経験者研修との関係が課題となる。この点については、10年経験者研修は、平成14年の答申において、当時検討していた更新制の導入目的のうちの専門性の向上を図るための方策として提言したという経緯はあるが、平成15年度の実施以来、各教育委員会においては、制度の趣旨を踏まえた多様で特色ある研修が実施・工夫され、教員の専門性の向上や、体系的な研修の整備に寄与してきたところである。

○ こうした現状を考慮すると、10年経験者研修については、教育公務員特例法上の法定研修としての位置付けは引き続き存続させることが適当であるが、更新制の導入との関係で、中堅教員としての更なる指導力の向上や、得意分野づくりに重点を置いた研修としての性格をより明確にするとともに、その実施時期や研修内容については、柔軟化の方向で見直しを行うことが必要である。

○ 平成11年の教養審第三次答申で指摘したように、今後は、各教育委員会が実施する研修や校内研修に加えて、教員の自主性・主体性を重視した自己研修が一層重要である。各学校や各教育委員会においては、大学や、民間も含めた教育研究団体等における教員の研修活動を奨励・支援するとともに、教員の自己研修への取組を適切に評価し、処遇に反映していくことが必要である。

○ 学校教育を取り巻く課題や教員をめぐる状況が大きく変化する中で、独立行政法人教員研修センターについては、全国的な教員の資質能力の向上を担うナショナルセンターとしての役割・機能を、これまで以上に発揮していくことが求められる。このため、各地域において中核的な役割を担う教員等を一堂に集めて行う研修や、各教育委員会に先行して実施する喫緊の重要課題に関する研修について、今後とも、一層の充実を図ることが必要である。
 また、同センターにおいては、今後、全国の優れた実践事例を収集するとともに、各教育委員会や大学等との連携により、10年経験者研修等のモデルカリキュラムの開発や、研修の効果的な実施手法の開発を行い、情報提供するなど、各教育委員会に対する指導・助言・援助の機能をより一層、充実・強化することが必要である。

○ 各教育委員会が所管する教育センターにおいては、研修の実施のみならず、学校現場や大学、独立行政法人教員研修センター等と密接に連携・協力して、地域に根ざした教材やカリキュラム等の開発研究を行うとともに、優れた指導実践を蓄積し、学校現場に提供していくなど、その機能の充実・強化を図ることが必要である。

○ 今後は、現職研修の面でも、大学と教育委員会や学校との一層の連携を図ることが重要である。このため、大学においては、研修プログラムの開発研究や現職教員を対象とした研修講座の開設、教育センター等との共同による研修事業の実施等について、検討することが必要である。

○ 今後、信頼される学校づくりを進めていくためには、校長や教頭等の管理職に優れた人材を得ることが極めて重要である。これからの校長等には、保護者や地域住民の意向を十分把握し、関係機関等と連携しながら組織的・機動的に学校運営を行うマネジメント能力や、学校の教育目標の実現に向けて、個々の教員の意欲を引き出す観点から、教員評価を行う評価者としての能力の向上等が求められている。このため、各教育委員会においては、管理職や管理職候補者を対象として、これらの能力向上のための研修を一層充実することが必要である。この際、大学や民間における先導的・意欲的な取組が活用されることが期待される。

(3)人事管理及び教員評価の改善・充実-分限制度の厳格な適用や教員評価の処遇への反映等-

 問題のある教員は教壇に立つことのないよう、引き続き、条件附採用期間制度の厳格な運用や、指導力不足教員に対する人事管理システムの活用による分限制度の厳格な適用等に努めていくことが必要である。
 学校教育や教員に対する信頼を確保するためには、教員評価の取組が重要であり、新しい教員評価システムの構築を一層推進していくことが必要である。また、評価の結果を、任用や給与上の措置などの処遇に適切に反映することが重要である。

○ 大多数の教員は、教育活動や自己研鑽に熱心に取り組んでいるが、その一方で、教員の中には、教職に対する情熱や使命感が低下したり、教員として必要な資質能力が欠如しているなど、問題を抱える者が少なからず存在することも事実である。信頼される学校づくりを進めていくためには、このような問題のある教員は教壇に立つことのないよう、毅然とした対応をすることが重要である。このため、都道府県・指定都市の教育委員会においては、引き続き、条件附採用期間制度の厳格な運用や、指導力不足教員に対する人事管理システムの活用による分限制度の厳格な適用等に努めていくことが必要である。

○ 学校教育や教員に対する信頼を確保するためには、教員評価の取組が重要である。教員評価については、単に査定のための評価ではなく、一人一人の能力や業績を適正に評価し、教員に意欲と自信を持たせ、育てていく評価とする必要がある。また、主観性や恣意性を排除し、客観性を持たせるよう、評価要素や項目の基準を明確にすることも大切である。現在、すべての都道府県・指定都市の教育委員会において、新しい教員評価システムの構築が進められているが、今後、上述のような視点に留意しつつ、これらの取組を一層推進していくことが必要である。また、評価の結果を、任用や給与上の措置などの処遇に適切に反映するとともに、優れた実践や高い指導力のある教員を顕彰するなどの取組を進め、社会全体に教員に対する尊敬と信頼が醸成されるような環境を培うことが重要である。

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