2.「教職大学院」制度の創設-教職課程改善のモデルとしての教員養成教育-

(1)「教職大学院」制度の創設の基本的な考え方

 近年の社会の大きな変動の中、様々な専門的職種や領域において、大学院段階で養成されるより高度な専門的職業能力を備えた人材が求められている。
 教員養成の分野についても、研究者養成と高度専門職業人養成の機能が不分明だった大学院の諸機能を整理し、専門職大学院制度を活用した教員養成教育の改善・充実を図るため、教員養成に特化した専門職大学院としての枠組み、すなわち「教職大学院」制度を創設することが必要である。
 このような改善・充実を図り、力量ある教員の養成のためのモデルを制度的に提示することにより、学部段階をはじめとする教員養成に対してより効果的な教員養成のための取組を促すことが期待される。
 教職大学院は、当面、1)学部段階での資質能力を修得した者の中から、さらにより実践的な指導力・展開力を備え、新しい学校づくりの有力な一員となり得る新人教員の養成、2)現職教員を対象に、地域や学校における指導的役割を果たし得る教員等として不可欠な確かな指導理論と優れた実践力・応用力を備えたスクールリーダーの養成の2つの目的・機能とする。
 これ以外の幅広く教員の資質能力の向上に関連する目的・機能については、各個別大学の主体的な検討により、一般の専門職大学院として設置することも含め、先導的・意欲的な取組の推進が期待される。

1.「教職大学院」制度の必要性及び意義

○ 1.5.で述べたように、教育を取り巻く社会状況の変化等の中で、この変化や諸課題に対応し得るより高度な専門性と豊かな人間性・社会性を備えた力量ある教員が求められるようになってきている。
 このため、今後の教員養成の在り方としては、学部以下の段階で、教科指導や生徒指導など教員としての基礎的・基本的な資質能力を確実に育成することに加え、大学院段階で、現職教員の再教育も含め、特定分野に関する深い学問的知識・能力を有する教員や、教職としての高度の実践力・応用力を備えた教員を幅広く養成していくことが重要である。

○ 大学院段階における教員養成についてはこれまで、昭和50年代以降、いわゆる新教育大学が現職教員の再教育に道筋を付け、既存大学にも同様の目的の修士課程が整備されたが、我が国の大学院制度が研究者養成と高度専門職業人養成との機能区分を曖昧にしてきたこともあり、また実態面でも、高度専門職業人養成の役割を果たす教育の展開が不十分であったことから、教員養成分野でも、ともすれば個別分野の学問的知識・能力が過度に重視される一方、学校現場での実践力・応用力など教職としての高度の専門性の育成がおろそかになっており、本来期待された機能を十分に果たしていない。

○ このような教員養成の課題を踏まえ、教員養成システム全体の充実・強化を図っていくためには、学部段階における教員養成の着実な改善・充実を図ることとあわせ、とりわけ大学院段階における養成・再教育の在り方を見直し、制度的な検討を含め、その格段の充実を図ることが必要である。

○ 近年の様々な専門的職種や領域における高度専門的職業人材に対する社会的要請を踏まえ、従来、研究者養成と高度専門職業人養成の機能が渾然一体で不分明だった我が国の大学院制度について、諸機能を明確に区分し、各機能にふさわしい教員組織、教育内容・方法等を整えることにより、全体としての機能強化を図る方向で制度の見直しが進められている。
 その見直しの一環として、平成15年度に、従来の大学院制度とは異なり、目的、教育内容、指導方法、指導教員、修了要件、学位等を高度専門職業人の養成に特化した「専門職大学院」制度が創設された。これを契機に、各分野における既設の大学院の機能や組織体制の見直しが始まっており、法曹、ビジネス、会計、知的財産、公共政策、公衆衛生など様々な分野で、既設の専攻からの改組転換や新設も含め専門職大学院の整備が急速に進んでいる。

○ 教員養成の分野についても、1.4.で指摘した大学院段階も含めた課題を克服するためには、大学院の諸機能を整理し、

 1) 研究者養成・学術研究コースとして各分野における深い学問的知識・能力の育成等に重点を置くもの
 2) 専門職大学院制度を活用して高度専門職業人養成コースとして学校現場における実践力・応用力など教職としての高度な専門性の育成に重点を置くもの等に区分し、その上で、各大学の方針に基づきコースの選択と必要な教育体制が整備されることが必要である。
 このため、専門職大学院制度の中に教員養成の専門職大学院として必要な枠組み、すなわち「教職大学院」制度を創設することにより、専門職大学院制度を活用した教員養成教育の改善・充実を図ることとすることが必要である。

○ この教職大学院制度の創設に当たっては、我が国の教員養成が「開放制の教員養成」の原則の下に、一般大学・学部と教員養成系大学・学部とがそれぞれ特色を発揮して行われ、人材を幅広く教育界に送り出してきた実績を踏まえ、
 1) 引き続き「開放制の教員養成」の原則の下、教員としての基礎的・基本的な資質能力の育成は学部段階で行うことを基本としつつ
 2) 大学院段階の教員養成・再教育の格段の充実を図るための有力な方策の一つとして、
各大学の判断により教職大学院制度が活用されることが適当である。

○ 教職大学院制度の創設により、学部段階及び修士課程など他の教職課程に対して、この大学院が、後に述べるように、実践的指導力の育成に特化した教育内容、事例研究や模擬授業など効果的な教育方法、これらの指導を行うのにふさわしい指導体制など、力量ある教員の養成のためのモデルを制度的に提示することにより、より効果的な教員養成のための取組を促すことが期待される。
 また、この大学院は、学部段階において養成される教員としての基礎的・基本的な資質能力を基盤として、その上に、高度専門職業人としての教員に求められる高度な実践力・応用力を育成することとなる。このことから、入学段階において学生に求められる資質能力が明確に示されることにより、学部修了段階において養成されていることが求められる到達基準がより明確に学部段階に対し示されることとなる。

○ また、教職大学院制度の創設により、実務家教員(教職等としての実務経験を有する教員)も含め、高度専門職業人としての教員の養成を目的とする課程としての意識を共有した指導教員が確保されることが期待される。

○ なお、教職大学院制度が創設された場合、修士課程との関係は各大学における修士課程の現在の位置付けや役割、専攻等の構成や特色・得意分野、設置目的等により異なる。しかしながら、教員養成を行う研究科として、修士課程においても、高度の専門的知識・技能を背景に優れた指導力を有する高度専門職業人としての教員を養成するとともに、教員が優れた指導力を発揮する上でその背景となる高度の知識・技能や、教員が広い視野を持ち複雑な現状を的確に分析し理解する上で必要となる理論等の研究や指導を行うことが期待される。
 また、修士課程におけるこのような教育研究を通じて、教育学分野において実践的視野を兼ね備えた大学教員の養成の一段階としての機能を果たすことが期待される。

○ さらに、学校現場において教職としての高度の専門性を発揮するためには、その背景としての十分な学問的知識・能力に基づく授業の展開力等を伴うことが重要であることはいうまでもない。教職大学院制度の創設に当たって、現在の学校現場が直面する課題に対応し得る実践力・応用力の育成という観点から、いわゆる「教科専門」としての専門性が教職としての高度な専門性の育成に資することが期待される。

2.目的・機能

【「教職大学院」の目的・機能】

○ 近年の少子化により、一部の都市部を除いて学校が小規模化し、1学年1学級の学校も珍しくなくなっており、学年主任等が他の教員を指導する機能が低下し、また同じ教科を専門とする教員も同一学校内に少なくなっている。このような状況の下で、教員が互いに指導力を向上させ、教員全体としての指導力の維持・向上を図るためには、学校内のみならず広く地域単位で中核的な役割を果たし得る教員が求められている。

○ また、現在の教員の年齢構成を見ると、大量採用期の40歳代から50歳代前半の層が多く、いわゆる中堅層以下の世代が少ないことから、今後、大量採用期の世代が退職期を迎えていく中で、量及び質の両面から、優れた教員を養成・確保することが極めて重要な課題となっている。

○ さらに、教科等における指導力を見ても、これまでの学級単位の指導から、グループ指導や、少人数指導、習熟度別指導など学級の枠を超えた多様な学習集団に対応した指導方法に関する理解や、総合的な学習の時間の実施、選択教科の拡充など既存の教科の枠を超えた教科指導に関する理解が必要になっており、こうした多様な指導形態・指導方法を円滑かつ効果的に実践できる教員が求められている。

○ このような教員に対する様々な要請や、各大学における大学院段階での取組の実績等を考慮すると、教職大学院は、当面、
 1) 学部段階で教員としての基礎的・基本的な資質能力を修得した者の中から、さらにより実践的な指導力・展開力を備え、新しい学校づくりの有力な一員となり得る新人教員の養成
 2) 一定の教職経験を有する現職教員を対象に、地域や学校における指導的役割を果たし得る教員として、不可欠な確かな指導理論と優れた実践力・応用力を備えた「スクールリーダー(中核的中堅教員)」(注2)の養成
の2つの目的・機能とする。

○ また、こうした機能の一環として、教員免許状を持たないまま大学を卒業し様々な社会経験を経た者等が、改めて教職を目指す場合の一つの有力な養成機関としての機能についても、学部の機能を活用しつつ各大学の判断・工夫により対応することが期待される。
 このため、現時点においては、こうした機能も視野に入れつつ、1)及び2)の目的・機能を担う専門職大学院を「教職大学院」とし、これに共通的に必要な要件等を検討することが必要である。

【教職大学院以外の、教員や学校教育関係職員の養成に関する専門職大学院について】

○ 上記の目的・機能とは別に、隣接するものとして、例えば、
 3) 小学校・中学校・高等学校等の管理者等に必要な高度なマネジメント能力に特化した養成機能
 4) 特別支援教育コーディネーター等教育施策の進展に対応して新たに設けられたり、教職員に付加されることとなる専門的職務に必要な知識・技能に特化した養成機能
 5) 大学等高等教育機関の管理者や高等教育政策担当者の養成機能
 6) 国際的な開発教育協力の専門家など幅広い教育分野の高度専門職業人の養成機能
等が考えられ、今後、その重要性が高まることも予想される。

○ こうした目的・機能については、当面、社会的な要請を踏まえた個別大学の主体的な検討により、一般の専門職大学院として設置することも含め、先導的で、意欲的な取組が多様に展開され、一定の実績が蓄積されることがまず重要であり、今後、そうした実績の蓄積を見ながら、必要に応じて共通的に必要な要件等を整理することが適当である。

(注2)本答申における「スクールリーダー(中核的中堅教員)」とは、例えば校長・教頭等の管理職など特定の職位を指すものではなく、上記のような社会的背景の中で、将来管理職となる者も含め、学校単位や地域単位の教員組織・集団の中で、中核的・指導的な役割を果たすことが期待される教員である。

(2)制度設計の基本方針

○ 教職大学院制度の創設に当たっての、具体的な制度設計については、以下の5つの方針を基本とすることが適当である。

1.教職に求められる高度な専門性の育成への特化

○ 学部段階で養成される教員としての基礎的・基本的な資質能力を前提に、今後の学校教育の在り方を踏まえた新しい教育形態・指導方法等にも対応し得る知識・技能や、様々な事象を構造的・体系的に捉えることのできる能力など、教職に求められる高度な専門性を育成することを目的として特化する。

2.「理論と実践の融合」の実現

○ 高度専門職業人の養成を目的とする大学院段階の課程として、綿密なコースワーク(学修課題と複数の科目等を通して体系的に履修することをいう。)と成績評価を前提に、理論・学説の講義に偏ることなく実践的指導力を育成する体系的で効果的なカリキュラムを編成するとともに、実践的な新しい教育方法を積極的に開発・導入することにより、「理論と実践の融合」を強く意識した教員養成教育の実現を目指す。

3.確かな「授業力」と豊かな「人間力」の育成

○ 学級運営・学校運営の基本とも言うべき確かな授業力を徹底して育成するため、理論とともに、従来の学部・大学院教育が軽視しがちであった教育技術面を重視するとともに、その前提として、課外活動など教育課程外活動の指導も含めた豊かな指導力とともに、子どもや保護者、地域住民等とのコミュニケーション能力をはじめとする教職に求められる豊かな人間力の育成を目指す。

4.学校現場など養成された教員を受け入れる側(デマンド・サイド)との連携の重視

○ 保護者や学校現場、地域、教育行政など、養成された教員を受け入れる側(デマンド・サイド)の要請を踏まえ、特に学校現場との意思疎通を重視し、カリキュラムや教育方法、履修形態、指導教員、修了者の処遇、情報公開、第三者評価など大学院の運営全般にわたって、大学院と学校現場との強い連携関係を確立する。

5.第三者評価等による不断の検証・改善システムの確立

○ 教育内容・方法や指導体制をはじめ大学院運営の全般にわたり、大学関係者や、学校関係者、地方教育行政担当者等から構成される専門の認証評価機関による5年ごとの第三者評価(認証評価)を実施することなどを通じ、不断の検証・改善システムを構築し、優れた教員養成の質の保証を図る。

(3)具体的な制度設計(主として設置基準に関連する事項について)

○ 課程の目的:「専ら教員の養成又は研修のための教育を行うことを目的とする」などの共通的な目的規定を整理することが適当である。

○ 標準修業年限:一般の専門職大学院と同様、2年とすることが適当である。

○ 必要修得単位数:45単位以上とすることが適当である。また、そのうち10単位以上は学校における実習によることとし、10単位の範囲内で、大学の判断により教職経験をもって当該実習とみなすことができるようにすることが適当である。

○ 入学者選抜:各教職大学院の責任において、入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)を明確にし、将来の中核的・指導的な教員に相応しい資質能力を適確に判断し得るような入学者選抜の工夫等を行うことが重要である。

○ 教育課程:学校現場における中核的・指導的な教員として必要な資質能力の育成を目指し、理論と実践の融合を強く意識した体系的な教育課程を編成すべきことを明確にする必要がある。具体的には、体系的に開設すべき授業科目の領域として、1)教育課程の編成・実施に関する領域、2)教科等の実践的な指導方法に関する領域、3)生徒指導、教育相談に関する領域、4)学級経営、学校経営に関する領域、5)学校教育と教員の在り方に関する領域のすべての領域にわたり授業科目を開設することが適当である。

○ 教育方法・授業形態:少人数で密度の濃い授業を基本としつつ、理論と実践との融合を強く意識した新しい教育方法を積極的に開発・導入することが必要である(例えば、事例研究、模擬授業、授業観察・分析、ロールプレーイング等)。授業形態として、単なる講義にとどまらず、これらの新しい教育方法を中心としたものとして展開される必要がある。

○ 履修形態:特に現職教員が職務に従事しながら履修できるよう、昼夜開講制、夜間大学院等の弾力的な履修形態を可能とすることが適当である。

○ 免許状未取得者:教職大学院在学中に所定履修単位のほか、一種免許状の取得に必要な所要単位を修得することが必要である。この履修に当たって、学部での開設科目の履修のほか、教職特別課程(教職に関する科目の単位を修得させるために大学が設置する修業年限を一年とする課程)において履修することも可能である。

○ 専任教員:最低限必要な専任教員数は11人とするとともに、うち実務家教員の比率はおおむね4割以上とすることが適当である。実務家教員の範囲は学校教育関係者・経験者を中心に想定されるが、そのほか医療機関や福祉施設など教育隣接分野の関係者、また民間企業関係者など、幅広く考えられる。実務家教員の要件としては、学校教育関係者の場合、一定の勤務経験を有することにより優れた教育実践を有する者であるとともに、実践的・実証的研究成果の発表記録等などから、専門分野に関する高度の教育上の指導能力を有すると認められる者とすることが必要である。

○ 連携協力校:教職大学院の場合は、附属学校の積極的活用は当然の前提としつつ、附属学校以外の一般校の中から連携協力校を設定することを義務付けることが適当である。

○ 大学院の形態:教職大学院においても、連合大学院制度や連携大学院制度などの仕組みを活用することが考えられる。教職大学院の授業形態はワークショップやフィールドワーク等新しい教育方法を中心に展開されることから、いわゆる通信制の課程は想定されない。

○ 学位:「教職修士(専門職)」等の専門職学位を学位規則において定めることが適当である。

○ 認証評価等:中核的・指導的な教員の養成・研修の場としての水準の維持・向上を図るため、大学としての自己点検・評価や認証評価が重要である。大学関係者、学校関係者、地方教育行政担当者等により構成される認証評価機関を速やかに創設し、不断の改善を促すシステムを構築するよう関係者の努力を促すとともに、国として必要な支援を行うことが必要である。

1.課程の目的

○ 専門職大学院の課程の目的は、専門職大学院設置基準上、「高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とする」とされている。ただし、法科大学院については、同設置基準上、「専ら法曹養成のための教育を行うことを目的とする」と特に規定されている。

○ 教職大学院については、(1)2で述べた目的・機能を前提とすれば、設置基準上は、「専ら教員の養成又は研修のための教育を行うことを目的とする」などの共通的な目的規定を整理することが適当である。
 その上で、各大学院の責任において、大学院としての特色や得意領域等を考慮し、また、学校関係者等の意向を十分踏まえ、対象とする学生層や養成しようとする教員像など当該課程の具体的な教育目標・方針等を明確に設定することが重要である。

2.標準修業年限

○ 専門職大学院の標準修業年限は、専門職大学院設置基準において2年とされている。ただし、学生の履修コース等として1年の短期履修コースや長期在学コースの設定が可能であり、また、専攻分野の特性により特に必要があると認められる場合に限り、1年以上2年未満の標準修業年限を設定することができるとされている(ただし、現在まで具体の事例はない)。なお、法科大学院については、専門職大学院設置基準において特に3年と規定されているが、法学既修者については、各大学院の判断で1年を超えない範囲で在学したとみなすことができるとする規定も置かれているため、実際には、各法科大学院において、未修者を対象とする3年の履修コースと、既修者を対象とする2年の履修コースが設定されている。

○ 教職大学院については、従来の修士課程における現職教員の再教育や学部新卒者の受入れ実績等を考慮し、標準修業年限としては、一般の専門職大学院と同様、2年とすることが適当である。

○ その上で、各大学院の判断・工夫により、現行の設置基準を活用して、現職教員の履修の便宜等に配慮した短期履修コース(例えば1年コース)や長期在学コース(例えば3年コース)の開設、さらには、学部での免許状未取得者を対象に、教職大学院に在学しつつ、その履修と併行して学部の教職科目を履修できる長期在学コースの開設などが期待される。

3.修了要件

○ 専門職大学院の修了要件は、専門職大学院設置基準において、2年以上在学し、当該専門職大学院が定める30単位以上の修得その他の教育課程を修了することとされており、研究指導を受けることや、論文審査の合格は必須とされていない。
 なお、特に法科大学院については、3年以上在学し、93単位以上を修得することとされている。ただし、法学既修者は、各大学院の判断で、在学期間は1年を超えない範囲内で、また、単位数は30単位を超えない範囲内で軽減することができるとされており、その結果、法学未修者は3年、法学既修者は2年の修了要件が一般化している。

○ 教職大学院については、研究者養成を目的とせず、高度専門職業人としての教員の養成・研修に特化した教育を行うという課程の目的に鑑み、修了要件としては、研究指導等を要しないこととし、一定期間の在学及び必要単位数の修得のみで足りるとすることが適当である。
 その場合、必要修得単位数については、後述の5「教育課程」で示すカリキュラムの構成を踏まえ、また、既設の専門職大学院が履修単位を40単位~50単位程度としている例が多いこと等も考慮し、専門職大学院設置基準において45単位以上と規定することが適当である。

○ また、特に実践的な指導力の強化を図る観点から、修了要件として必要な単位数のうち10単位以上は、学校における実習によることとするとともに、一定の教職経験のある学生については、入学前の教職経験を考慮し、大学の判断で、10単位の範囲内で、教職経験をもって当該実習とみなすこともできるようにすることが適当である。

4.入学者選抜

○ 専門職大学院の入学者選抜については、専門職大学院設置基準上、一般的な規定は設けられていないが、特に法科大学院については、入学者選抜に当たって、1)入学者のうち法学部以外の出身者又は実務経験者の割合が3割以上になるよう努めること、2)同割合が2割に満たない場合、選抜の実施状況を公表すること、と規定され、これらにより多様な知識又は経験を有する者を入学させるよう努めなければならないとの努力義務規定が定められている。また、このため、入学者の適性を適確かつ客観的に評価するよう特に規定されている。

○ 教職大学院については、各大学院の判断により、教員免許状を持たないまま大学を卒業し様々な社会経験等を経た者が、改めて教職を目指す場合の一つの有力な養成機関としての機能を併せ持つことも期待される。他方、我が国の教員養成制度が、専門職大学院制度の活用後も引き続き「開放制の教員養成」の原則を維持し、学部段階で幅広く教職への道が用意されること、さらには、教員免許状は持たないものの優れた知識・経験や技能を有する社会人を教職に受け入れるための特別免許状制度や特別非常勤講師制度が既に導入されており、今後ともその積極的な活用が期待されていること等を考慮すれば、教職大学院に対し、教員免許状を持たない者など多様な学生の受入れを法令で義務付けるような対応は適当ではないと考える。

○ このため、入学者選抜については、設置基準上は特段の制限規定を定めないこととし、各大学院の責任において、課程の具体的な教育目標に基づく入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)を明確にし、将来の中核的・指導的な教員に相応しい資質能力を適確に判断し得るよう入学者選抜を工夫するとともに、各大学院による自己点検・評価、さらには大学関係者、学校関係者、地方教育行政担当者等により構成される専門の認証評価機関による事後的な第三者評価を通じて、その検証と改善を促していくことが重要である。

5.教育課程

○ 専門職大学院の教育課程については、専門職大学院設置基準上、「教育上の目的を達成するために専攻分野に応じ必要な授業科目を開設し、体系的に教育課程を編成する」と定められている。
 ただし、法科大学院については、専門職大学院設置基準に基づく告示において、1)法律基本科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法に関する分野の科目)、2)法律実務基礎科目(法曹としての技能・責任その他の法律実務に関する基礎的な分野の科目)、3)基礎法学・隣接科目(基礎法学に関する分野又は法学と関連を有する分野の科目)、4)発展・先端科目(先端的な法領域に関する科目、法律基本科目以外の実定法に関する多様な分野の科目)のすべてにわたって授業科目を開設するとともに、学生の履修がいずれかに過度に偏ることのないよう配慮すると定められている。

○ 教職大学院については、学校現場における中核的・指導的な教員として必要な資質能力の育成を目指し、学校教育に関する理論と実践との融合を強く意識した体系的な教育課程を編成すべきことを設置基準等で明確にすることが必要である。具体的には、各教職大学院において共通的に開設すべき授業科目の領域として、1)教育課程の編成・実施に関する領域、2)教科等の実践的な指導方法に関する領域、3)生徒指導、教育相談に関する領域、4)学級経営、学校経営に関する領域、5)学校教育と教員の在り方に関する領域を専門職大学院設置基準に基づく告示において定め、教職大学院はそのすべての領域にわたり授業科目を開設し、体系的に教育課程を編成することとすることが適当である。また、上記各領域の履修について、学校の小規模化等の中で、スクールリーダーたる教員は幅広い分野において指導性を発揮することが求められることから、学生はすべての領域にわたり履修することとすることが適当である。

○ 教職大学院においては、この共通的に開設される科目のほか、各コースや学生の専攻等に応じて選択的に履修される科目が開設されることとなる。(カリキュラムの基本的な在り方については、このほか、別添2「教職大学院におけるカリキュラムについて(補論)」参照。)

○ さらに、学部段階における教育実習をさらに充実・発展し、特に実践的な指導力の強化を図る観点から、10単位以上の学校における実習を含めるとともに、一定の教職経験のある学生については、入学前の教職経験を考慮し、大学の判断により、10単位の範囲内で、教職経験をもって当該実習とみなすこともできるようにすることが適当である。

○ 各教職大学院における具体的な教育課程は、専門職大学院設置基準等により規定される上記教育課程の基準に基づき、各大学院の特色や得意領域、教育目標により編成されることとなるが、教職大学院制度の創設に当たり、高度専門職業人養成の観点から、各大学院・教員間において教員養成に関する共通的な認識を醸成し、教員の質を高めていくためには、教員養成を行う大学等関係者において、モデル的な教員養成カリキュラムを作成することが効果的であり、関係者の努力を促すとともに、国として適切な支援を行うことが必要である。

6.教育方法・授業形態

○ 専門職大学院の教育方法については、専門職大学院設置基準上、1)事例研究、現地調査、双方向・多方向の討論、質疑応答等の適切な方法により授業を行うこと、2)学生に対し、授業の方法、内容、年間授業計画、学修評価・修了認定基準をあらかじめ明示すること、3)学生が1年間又は1学期に科目登録できる単位数の上限を定めること、4)授業を行う学生数は、授業の方法、施設設備等諸条件を考慮し、効果が十分にあがる適当な人数とすることなどが定められている。
 なお、法科大学院については、1)学生が科目登録できる単位数の上限は、1年に36単位を標準とすること、2)授業を行う学生数を少人数とすることを基本とし、法律基本科目においては50人を標準とすることが特に定められている。

○ 教職大学院については、少人数で密度の濃い授業を基本としつつ、理論と実践との融合を強く意識した新しい教育方法を積極的に開発・導入することが必要である。
 具体的には、例えば、事例研究、模擬授業、授業観察・分析、ロールプレーイング等の教育方法を積極的に開発・導入することが必要である。
 なお、設置基準上は、基本的に、一般の専門職大学院に適用されている基準を適用することが適当である。

○ 授業形態としては、単なる講義にとどまることなく、上記のような従来とは異なる新しい教育方法を含めたものとして展開されることにより、高度な専門性を備えた実践的力量を育成するものである必要がある。すなわち、授業においては、教育現場における課題を中心に据え、こうした課題について教員・学生がともに調査・検討を行い、その解決を図る条件・方法を探る実践研究(ワークショップ、事例研究、模擬授業等)や、実際にその仮説をもとに実地に調査・試行を行い、その成果等を発表・討議すること(フィールドワーク等)などが、教職大学院における授業として適当である。

7.履修形態

○ 専門職大学院の履修形態は、一般の大学院と同様に、昼夜開講制、夜間大学院、長期休業期間中の集中コース、サテライト教室の利用、科目等履修制度等の弾力的な履修形態が可能となっている。

○ 教職大学院の場合も、例えば小学校・中学校等の空き教室を活用したサテライト教室の利用など、特に現職教員が職務に従事しながら履修できるよう、履修形態について特段の配慮・工夫を行うことが望ましく、設置基準上は、一般の大学院、専門職大学院と同様の基準を適用することが適当である。

8.教員免許状を保有しないで入学する学生の扱い

○ 学部での免許状未取得者については、教職大学院在学中に、所定履修単位のほか、一種免許状の取得に必要な所要単位を修得することが必要である。この履修に当たっては、学部での開設科目の履修のほか、教職特別課程(教職に関する科目の単位を修得させるために大学が設置する修業年限一年の課程)において履修することも可能である。この履修については、各大学院の判断・工夫により、大学院の履修と併行して履修することとしたり、あるいは当該履修と教職大学院の課程とを合わせて長期在学コースを設けたりすることも可能である。

9.教員組織

(ア)専任教員

○ 専門職大学院の教員組織については、専門職大学院設置基準等において、専門分野に関し高度の教育上の指導能力がある専任教員を一定数以上置くこととされ、分野・規模に応じて具体的な算出基準が設けられている。なお、専門職大学院の必要専任教員(設置基準等で示される最低必要数分)は、原則として学士課程・修士課程の必要専任教員数に算入することができないこととされている。

○ 教職大学院については、大学院設置基準により定められる修士課程(教員養成系)の学校教育専攻の研究指導教員及び研究指導補助教員の数を基礎として上記算出基準により算定し、最低限必要な専任教員数は11人とすることが適当である。

○ なお、専門職大学院設置基準において、制度発足当初における学部教育等との関連性や優秀な教員の確保の必要性等の観点から、平成25年度までの間、専任教員のうち3分の1を超えない範囲で、学士課程・修士課程の必要専任教員数に算入することができるものとされており、教職大学院においても同様の基準を適用することが適当である。

(イ)実務家教員

○ 専門職大学院設置基準では、専門職大学院の必要専任教員のうち3割以上は、専攻分野に関し5年以上の実務経験を有し、高度の実務能力を有する者とされている。
 なお、法科大学院の場合は、課程修了後、司法試験を経てさらに司法修習が予定されており、法科大学院が直ちに法曹として活動するために必要なすべての教育を行うものではないこと等を踏まえ、実務経験者の比率をおおむね2割以上と定めている。また、実務経験者は、法曹としての実務経験を有する者を中心に構成すると特に規定されている。

○ 教職大学院についても、1.4.で指摘したような現行の教員養成システムの課題を踏まえ、学校教育に関する理論と実践との融合を図るためには、専任教員のうちの相当割合の者については、教職等としての実務経験を有する実務家教員とすることが重要である。
 特に、教職大学院については、一般的に学部段階において教員としての基礎的・基本的な資質能力が養成されるという我が国の教員養成システムを前提に、より実践的な内容を教授する必要があることから、実務経験を有する者の役割がより重要となる。このため、教職大学院においては、必要専任教員に占める実務家教員の比率をおおむね4割以上とすることが適当である。

○ 実務家教員の範囲については、優れた指導力を有する教員や指導主事、教育センター職員等学校教育関係者や校長等管理職などの経験者が中心になることが想定されるが、それのみならず、医療機関、家庭裁判所や福祉施設など教育隣接分野の関係者、また例えばマネジメントやリーダーシップなどに関する指導については民間企業関係者など、幅広く考えられる。
 各大学院においては、各授業科目に応じ、実務の専門的識見・経験をもとに、知見を理論化し適切に教授できる実務経験者を採用することが求められる。
 また、実務家教員の採用に当たっては、例えば教育委員会等関係機関との密接な連携や、任期制の活用などの工夫により、円滑かつ適切な人材の確保が求められる。

○ 実務家教員の要件としては、教員等学校教育関係者については、指導主事や校長等管理職経験も含め教員としての一定の勤務経験を有することにより、優れた教育実践経験を有する者であることが必要である。また、従来の研究者教員の場合と同様の研究論文を求められるものではないが、例えば教科研究会等における実践的・実証的研究成果の発表記録や著作等から、担当する専門分野に関する高度の教育上の指導能力を有するものと認められる者とすることが必要である。
 他方、学校教育関係者以外の者の場合についても、担当する専門分野に対応し、上記の場合と同等と評価し得る経験と指導能力を有する者であることが必要である。

○ なお、専任教員以外の教員についても、授業科目・内容により、例えば非常勤の教員として実務経験者を積極的に活用することが重要である。

(ウ)大学教員の教育内容・方法の改善のための組織的研修・研究

○ 専門職大学院の教育水準を確保する上で、直接の教育活動を担う教員の質の確保が重要であり、専門職大学院設置基準では、各専門職大学院は、授業の内容・方法の改善のための組織的な研修・研究を実施する旨定められている。

○ 教職大学院でも、具体的には、例えば、学生による授業評価、教員相互の授業評価(ピアレビュー)、教員グループによる教材の選定・開発、教育委員会等と協力した研修など、大学教員の教育内容・方法の改善のための組織的研修・研究を積極的に行うことが必要であり、専門職大学院設置基準上は、一般の大学院や専門職大学院と同様の基準を適用することが適当である。

10.連携学校等

○ 現在の専門職大学院設置基準には、関連機関との連携に関する特段の規定は置かれていないが、教職大学院の場合、長期にわたる実習や現地調査など学校現場を重視した実践的な教育を進める上で、一般の小学校・中学校等との間で連携協力関係を結ぶこと(連携協力校の設定)が重要である。

○ 現在、大学設置基準では、教員養成系学部は附属学校の設置が義務付けられているが、教職大学院の場合は、大学・学部が附属学校を設置している場合、その積極的な活用は当然の前提としつつ、附属学校以外の一般校の中から、連携協力校を設定することを専門職大学院設置基準上、義務付けることが適当である。また、連携協力校以外にも、民間企業、関係行政機関、教育センターなど様々な関係機関と連携することにより、教育内容・方法の改善や指導体制の充実を図ることが望ましい。

11.大学院の形態

○ 大学院について、既に大学間の協力による連合大学院制度や、大学以外の専門的試験調査研究機関の職員を大学院の基幹的教員として活用する連携大学院制度が導入され、成果を挙げており、教職大学院についても、このような仕組みを活用することが考えられる。

○ 特に、各都道府県・指定都市には教育センターが設けられ、学校教育の実践に係る実証的な調査研究や教員研修において大きな役割を果たし、研究主事・研修主事等の専門的職員も育成してきていることを踏まえ、これらの専門的職員を教職大学院の基幹的教員として活用することも、理論と実践との融合を目指す教育を実現する方策の一つとして考えられる。
 このため、設置基準上の実務家教員の取扱いにおいても、このような教育センターの専門的職員の活用も念頭に置いた運用が考えられる。
 なお、このような形態での大学院の運営に当たっては、責任体制が損なわれることのないよう連携体制などに十分な配慮が必要である。

○ 6で述べたように、教職大学院の授業形態は、学校における実習のほかにおいても、単なる講義にとどまることなく、ワークショップ、事例研究、模擬授業、フィールドワークなど、従来とは異なる新しい教育方法を中心に展開される必要がある。したがって、いわゆる通信制の課程とすることは想定されない。

12.学位の種類

○ 専門職大学院の修了者に授与される学位は、学位規則上、「修士(専門職)」とされている。
 ただし、特に法科大学院については、学位の国際的な通用性等も考慮し、米国の「J.D」に相当する学位として、「法務博士(専門職)」と定められている。

○ また、米国の大学の教育大学院(スクール・オブ・エデュケーション)では、教育課程・コースを、研究者養成向きのPh.D取得教育課程と高度専門職業人向けの専門職学位取得教育課程に分けて設定していることが多い。このうち、後者では、主に教員を対象に修士レベルの教育課程とその履修コースを、また、学校管理者や行政担当者を対象に博士レベルの教育課程とその履修コースを置き、前者の修了者にM.Ed(修士レベル)を、後者の修了者に対しては、Ed.D(博士レベル)を授与している。

○ 教職大学院の場合、学位の国際的な通用性等も考慮し、上記「M.Ed」に相当するものとして、「教職修士(専門職)」等の特定の専門職学位を学位規則において定めることが適当である。

13.認証評価等

○ 現在、国立・公立・私立の大学は、大学設置基準において、教育研究等の状況について自己点検・評価を行い、その結果を公表することが義務付けられるとともに、7年ごとに大学の教育研究等の総合的状況について、国が認証した評価機関(認証評価機関)による外部評価(認証評価)を受けることが義務付けられている。さらに、専門職大学院の場合は、これらに加えて、5年ごとに分野ごとの認証評価を受けることも義務付けられている。

○ 教職大学院においても、中核的・指導的な教員の養成・研修の場としての水準の維持・向上を図るため、大学としての自己点検・評価や認証評価が重要であり、一般の専門職大学院に適用されている基準を適用することが適当である。
 また、教職大学院制度の発足と同時に認証評価が発足・機能するよう、大学関係者、学校関係者、地方教育行政担当者等により構成される専門の認証評価機関を速やかに創設し、その評価等を踏まえた不断の改善を促すシステムを構築するよう関係者の努力を促すとともに、国として必要な支援を行うことが必要である。

14.名称

○ 上記の諸要件を備えた大学院については、法科大学院と同様に、共通の名称として「教職大学院」と称することができるよう、専門職大学院設置基準に規定することが適当である。

(4)その他(設置基準以外の関連事項等について)

1.整備の方針

○ 教職大学院制度の創設については、現在の学校教育をめぐる状況、特に力量ある教員の養成に対する社会的要請に鑑み、早期の開設が可能となるよう、専門職大学院設置基準等関係規程の改正を行う方向で準備を進めることが適当である。

○ 教職大学院の整備に当たっては、国立・公立・私立を通じ、各大学において主体的に設置構想が検討されることが前提となるが、このうち国立大学については、財政基盤が国からの財政支出に依存していることを踏まえ、実践的指導力を有する教員の養成について、特に優れた実績を有するとともに、意欲的で、かつ、真に他の大学のモデルとなる設置構想と計画を実現し得る大学から整備を行うこととする必要がある。

2.管理運営

○ 教職大学院においては、学校現場など養成された教員を受け入れる側(デマンド・サイド)との連携を重視する観点から適正な運営を確保するため、従来の運営体制にこだわらず、学校関係者等との密接な連携関係を管理運営体制の中に組み込むとともに、学校教育の実態や社会の変化等に柔軟に対応し得る機動的な管理運営システムを大学院として確立することが重要である。

3.支援方策

○ 教職大学院制度を活用した教員養成システムの充実、発展を目指すためには、各大学における積極的な取組とともに、国においても、現行の学部・大学院制度における教員養成システムの更なる改善を強力に促進するための検証・支援の方策を強化することが必要である。同時に、質の高い教職大学院の設置を促進するための方策、教職大学院の前提となる専門職大学院制度の基盤づくりを推進するための方策、さらには、実際に設置された教職大学院のうち他大学のモデルとなり得る特色ある優れた取組を促すための方策など、各般にわたる強力な支援策を講じていくことが不可欠である。

4.教員免許状の種類

○ 教職大学院の修了者に授与する教員免許状については、
 1) 現在の教員免許制度は、取得した学位の種類(水準)を基礎資格として免許状の種類を設定しているが、専門職大学院の学位は従来の学位と異なる種類である一方、入学要件等に鑑みれば、課程の水準・位置付けは修士課程相当であること
 2) 教職大学院における履修内容について、設置基準上一定の枠組みが設けられるが、その内容は、専修免許状の取得要件とされている「教科又は教職に関する科目」の概念の範囲内であると考えられること
 3) 専門職大学院については、現在でも、修士課程相当の課程として、専修免許状を取得することが可能な教職課程として取り扱われていること
等を考慮すると、現行の専修免許状を授与することが適当である。

5.初任者研修等との関係

○ 公立学校の教員の初任者研修との関係については、教職大学院は共通的に開設すべき科目領域を設定するとともに、修了要件のうち一定の単位(例えば10単位=300~450時間の実習時間に相当)以上は学校における実習によることとする旨を専門職大学院設置基準等で規定するなど、全体として学校教育に関する理論と実践の融合を強く意識した教育課程とされており、これにより、実践的指導力や使命感等の育成が期待されることを踏まえれば、修了者については、任命権者の判断により初任者研修の一部又は全部を免除することができることとすることが適当である。

○ 公立学校の教員の10年経験者研修との関係については、個々の教員の能力、適性等に応じて多様な研修が実施されており、任命権者の判断により修士課程も活用されているが、教職大学院の課程についても、個々の教員の能力、適性等に応じた研修の場として積極的に活用することが期待される。

6.修了者の処遇

○ 教職大学院の修了者の処遇については、具体的には、校長・教頭等学校における一定の職務・位置付け、給与面での処遇その他の取扱いが考えられる。
 学校における一定の職務・位置付けについて、特に修了者が現職教員の場合には、地域や学校における指導的役割を果たす教員として活躍することが期待されるが、これらの役割について、制度的に措置を講ずることは適当ではなく、修了者の実績等を踏まえ、都道府県教育委員会等において主体的に対応することが適当である。

○ 給与面の処遇については、現在、新任の教員については採用学歴に応じて換算され、現職教員については基本的にその経験年数に応じた扱いとされている。この点については、個々の教員の能力や業績を適正に評価するとともに、これを適切に処遇に反映することが重要であり、現在、このような新たな教員評価システムの検討がすべての都道府県・指定都市の教育委員会において進められている。教職大学院の修了者についても、新たな教員評価システムに係る取組を進める中で、修了者の実績等を勘案しつつ、各任命権者において検討していくことになるものと考えられる。

○ 修了者のうち新人教員については、例えば教員採用選考試験において、教職大学院における履修実態等を考慮し、選考の公平性に留意しつつ、通常の採用選考方法とは異なる観点・方法で選考することなどの工夫も考えられるが、教員採用選考の在り方については、都道府県教育委員会等の責任において適切に検討していくことが期待される。

7.隣接する目的・機能を担う専門職大学院の整備方策

○ 教職大学院以外にも専門職大学院が果たすことが期待される隣接する目的・機能については、(1)2目的・機能で述べたとおり、当面、先導的で、意欲的な取組が展開され、一定の実績が蓄積されることが重要であるが、これらの専門職大学院において行われる教育内容・方法の開発・充実等の優れた取組については、国として適切な支援を行うことが必要である。

○ また、教員養成分野におけるさらに上位の専門職学位(前述のEd.D相当)の課程の制度化については、専門職学位課程における制度の定着や取組の動向等を踏まえながら検討する必要がある。

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初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成21年以前 --