大学院の教育研究を通じた国際貢献・協調
我が国の大学院が教育研究を通じた国際貢献・交流を推進することは,教育研究水準の向上等を通じて,大学院の国際的な通用性,信頼性を確保し,世界規模での競争力の強化を促進する上で大きな意義があるものである。
また,国境を越えて展開される教育の提供によるアクセスの拡大を推進するに当たっては,我が国の学位の国際的な通用性の確保に十分留意することが必要であるとともに,国際的な大学の質保証システムの構築が必要であり,それに向け,我が国は積極的に貢献すべきである。
【具体的取組】
- 各大学院における国際化戦略支援
- 国際的な大学の質保証に関する協議への参加・貢献
近年,我が国の大学院では留学生が急増している。これは,諸外国との相互理解の増進と人的ネットワークの形成に効果的であるほか,留学生との交流を通じて国際的な視野を持った日本人学生の育成と開かれた活力ある社会の実現や,我が国の大学の国際化,国際競争力の強化,国際社会に対する知的貢献といった点において意義があることである。その一方で,留学生への学位授与率の低下などに見られる質の低下が懸念されており,「新たな留学生政策の展開について」(平成15年12月中央教育審議会答申)等を踏まえて,外国人学生が学ぶための環境整備を進め,留学生の質の確保と受入れ体制の充実を図っていく必要がある。
また,我が国の大学院においても,海外分校・拠点の設置,外国の教育研究機関との連携,e-ラーニング(情報通信技術を利用した履修形態)等を通じた国境を越えた教育の提供や研究の展開を行うなど,国際的な大学間の競争と協働が進展している。
我が国の大学院が,その果たすべき役割や個性・特色に応じて,海外の教育研究機関との教育研究面での連携体制を構築することにより,教育研究を通じた国際貢献・交流を推進することは,
- 国際社会における競争と協働を通じた我が国の大学教育の魅力の向上
- 国際的に通用する教育研究水準の確立
- 国際的な幅広い視野を持った人材の養成
- 我が国の知的国際貢献
等を促し,大学院の国際的な通用性,信頼性を確保し,世界規模での競争力の強化を促進する上で意義があるものであり,国としても,各大学院における国際化戦略を支援していくことが重要である。
国境を越えて展開される教育の提供によるアクセスの拡大を推進するに当たっては,我が国の学位の国際的な通用性の確保に十分留意することが必要であるとともに,各国の大学制度,各大学の適格認定を含めた評価,教育内容,学位の通用性などについて学習者が判断できるように国際的な大学の質の保証に関する情報ネットワークを構築することが急務である。こうした国際的協議に我が国は積極的に参加・貢献すべきである。
我が国の大学と外国の大学の双方で学位を得られるようなプログラムの開発も期待されるが,各大学院におけるこのようなプログラムの検討に当たっては,我が国の課程制大学院制度の趣旨,学位制度等の在り方を踏まえ,我が国の大学院が授与する学位としてふさわしいものとなるよう留意する必要がある。また,我が国の大学院に,世界各国から優秀な留学生が集う条件の一つとして,我が国の大学院に関する情報が海外からも一元的に把握できるような積極的な情報発信を行っていくことが挙げられる。さらに,一つの授業をセメスター(学期)ごとに完結させる制度であるセメスター制の導入や秋期入学など,留学生を円滑に受け入れるための工夫を行うことも必要である。留学生が学ぶための環境を整備し,積極的に受け入れることは,今後の知識基盤社会の中でますます重要となる我が国と諸外国との間の親密な人的ネットワークを形成することとなり,相互理解の増進や友好関係の深化を図る上で重要である。