学校の組織運営の在り方について(作業部会の審議のまとめ)<要旨>

 
学校の組織運営に関する作業部会

 学校の自主性、自律性の確立のためには、学校の裁量拡大が進められるなかで、権限移譲の受け皿となる学校の運営体制を整え、校長のリーダーシップのもと教職員が一致協力し組織的、機動的な学校運営が行われるようにする必要がある。
 このため、平成10年の中教審答申や12年の教育改革国民会議報告も踏まえ、必要に応じ組織マネジメントの考え方も取り入れながら、学校が組織として力を発揮できるよう、その組織を簡潔で機動的なものとし、フットワークをよくすることを意図するものである。
 なお、改善に当たっては、国において必要な財源を確保しつつ、各教育委員会や学校でその実情に合った取組が行われるようにすることが求められる。

(1)学校運営をめぐる現状と課題

 主体的な学校づくりの観点から学校の権限が拡大されるなか、学校がその権限を責任を持って適切に行使するよう、各教職員の活動を有機的に結び付け組織的な学校運営を行う体制の整備と透明性の高い運営が必要である。
 また、学校の特質であるチームとしての力を生かし組織全体の総合力を高めるよう、個々人の知識や経験など「知の共有化」を図ることも大切である。
 これらを踏まえ、学校の組織体制の再編整備について検討する必要がある。また、学校運営を担う教職員の資質能力と意欲の向上の観点から教職員の評価と処遇の在り方について、さらに、管理職の一層の適材確保について検討する必要がある。

(2)学校の組織体制の再編整備

 学校については、「なべぶた」組織といわれ、また、「一人一役」の考え方で校務分掌が細かく分けられ、責任をあいまいにしている。各教職員の適切な役割分担と連携によりチームとして機能を発揮し、組織力を向上する簡潔で機能的な校内組織の在り方について検討する。

1校務分掌など校内組織の整備

(ア)校務分掌の整理合理化

  •  校務分掌などについて整理合理化を行い、これを簡潔なものとする必要がある。
  •  柔軟に組織を見直し、組織の統廃合、非効率な業務や慣行の見直しを行うことも大切である。

(イ)会議のスリム化

  •  組織を整理し、会議をできる限り少なくする必要がある。

(ウ)渉外・広報の位置付け

  •  渉外の業務や情報発信の機能を明確に位置付けることが重要である。

2学校運営を支える機能の充実

(ア)学校運営を支える体制の整備

  •  主任が機能するよう更にその定着を図り、あるいは、必要に応じ、管理職を補佐して担当する校務をつかさどるなど、一定の権限を持つ主幹などの職を置くことができるようにする仕組みについて、更に検討する必要があると考える。

(イ)職員間の連携

  •  研修の成果を他の職員も共有できるよう校内研修を行うなど「知の共有化」が図られる体制を作ることが必要である。

3事務処理体制の整備

  •  特に小・中学校について事務の共同実施を推進する必要がある。
  •  共同実施組織に事務長を置くことができるようにするなど、その制度化についても更に検討し、学校への権限委譲を更に進めることが必要である。
  •  事務処理も含め学校運営面のIT化を進める必要がある。

(3)教職員の評価と処遇

 教職員が意欲を持ち自らの役割を果たすよう、教職員の能力や業績を適正に評価するとともに、適切に人事や処遇に反映することが極めて重要である。また、優れた実績や高い指導力のある教職員の評価も重要である。一方で、教員の公募制やFA制など適材適所の配置や資質向上の取組を更に進めることが求められる。
 その際、人事管理に関するシステムすべてを人材育成の観点から見直し、総合的に推進していくことが大切である。

1教職員の評価の改善とその処遇への反映

(ア)評価の改善充実

  •  教育委員会で進められている教職員の新たな評価システムの構築の一層の推進が求められる。
  •  評価は公正で透明性の高いものとすることが重要であり、評価者とのコミュニケーションを促進することも大切である。
  •  評価システムについて、教職員の十分な理解や評価者の十分な研修などが重要となる。さらに、評価システム自体の評価、改善も大切である。
  •  個人の評価に加え、組織単位で評価する仕組みについても検討する必要がある。

(イ)処遇などへの反映

  •  評価結果の適切な処遇などへの反映について検討する必要がある。
  •  地方公共団体の裁量の拡大を踏まえ、給与体系の見直しについて検討する必要がある。その際、必要な財源の確保にも留意する必要がある。

(ウ)評価に基づく体系的な人材育成

  •  人材育成システムの中に評価を明確に位置付け、評価結果を人材育成の視点から人事配置や研修などにも活用することが適当である。

2優秀な教職員の評価と処遇

  •  高い指導力のある優れた教員を位置付けるものとして、スーパーティーチャーなどのような職種を設けることについて、更に検討する必要があると考える。
  •  これらの優れた教員について、他の教員の指導助言や研修などに活用し、地域全体の水準向上のための指導的役割を担うようにすることも考えられる。
  •  優秀教員の表彰に関する取組をさらに推進し、処遇への適切な反映を図るとともに、その成果の普及も併せて考慮する必要がある。

(4)管理職の一層の適材確保

 組織的な学校運営のためには管理職に人を得ることが肝要であり、幅広い人材登用など管理職の一層の適材確保について検討する必要があると考える。

1管理職の一層の適材確保

(ア)管理職の育成と登用

  •  管理職候補者について研修などを行い、その育成を図りながら登用を行う管理職候補者登録制などの仕組みについて検討する必要がある。
  •  管理職の人材育成のため、研修センターの一層の活用や大学院と連携した育成の在り方について検討することも考えられる。
  •  教員の年齢構成や今後の退職者数の推移を踏まえ、計画的な人事を行うことも重要な視点である。

(イ)幅広い人材登用

  •  教頭について、校長と同様、民間人などを登用できるよう、その資格要件を緩和することについて検討する必要がある。
  •  キャリアの複線化のなかで、教頭としてまっとうする人、教員としてまっとうする人など、教職員のキャリアの在り方も様々な形があってよいのではないか。

(ウ)組織全体の総合力の向上

  •  学校組織全体の総合力を高めるため、有機的な運営態勢となることが求められる。
  •  全教職員がマネジメントの発想やリーガル・マインドをもつことが大切である。

2教育委員会の学校支援

 組織的な学校運営を進めるには、教育委員会が学校を支援する機能を強化することが不可欠である。

  •  教育委員会の行政評価の中で、教育委員会の学校への支援についてチェックすることも重要な視点である。
  •  学校評価について、学校現場自らや住民が評価することが重要になるとともに、学校現場からのフィードバックのシステムについても検討する必要がある。

(初等中等教育局初等中等教育企画課)