戻る

2  教育課程を適切に実施するために必要な指導時間の確保

(1)現状と課題

(授業時数の「標準」の趣旨等)

  各教科等それぞれの年間授業時数やこれらの年間総授業時数について、国は学校教育法施行規則において「標準」を定めているが、「標準」の幅は具体的に示しておらず、学習指導要領の解説(総則編)において、授業時数の下限は学習指導要領に定められた各教科等の目標を実現し必要な内容を指導できる限度であり、上限は児童生徒の負担過重にならない限度であるとしている。各学校においては、この「標準」を踏まえつつ、学校行事等を含んだ教育課程全体のバランスを図りながら、学習指導要領に基づいて各教科、道徳、特別活動及び「総合的な学習の時間」など全体の教育活動を適切に実施するために必要な指導時間を確保することが求められている。すなわち、単に指導時間を確保すれば足りるということではなく、個に応じた指導などの指導方法、教材等の工夫を行うといった指導の質を高めるという観点から授業等の改善を図りつつ、指導に必要な時間を確保することがその趣旨である。

(各学校における年間総授業時数の現状と課題)

  すべての公立小・中学校を対象に実施した教育課程編成・実施状況調査によれば、平成14年度の年間総授業時数の実績は、小学校で9割以上の学校が、中学校で5割以上の学校が国の定める「標準」を上回っている一方で、中学校においては、第1・2学年は約2割の学校が、第3学年で3割以上の学校が「標準」を下回っている状況にある。
  また、同調査によれば、学校行事の時間数について、平成6年度には中学校で平均83.1単位時間であったものが、平成15年度には69単位時間以下の中学校が74.1%となるなど、全体として見れば大きく減少していると考えられ、学校行事等の意義を十分踏まえられない過度の削減が行われている場合もあるのではないかと思われる状況にある。
  この調査の結果のみから、各学校において指導に必要な時間が確保されているかどうかということについて一概に判断することはできないが、特に中学校第3学年では、約2割の学校が標準授業時数を30単位時間以上下回っている状況にあることを踏まえれば、各教科等の指導に必要な時間の確保がなされていない事例もあるのではないかと推測される。

(2)当面の充実・改善方策

  必要な指導時間の確保とは、形式的に各教科等それぞれの年間授業時数やこれらの年間総授業時数の「標準」を確保することを意味するものではなく、新学習指導要領の基本的なねらいを実現するために、指導方法、指導体制の質的な改善を図りつつ、実質的に指導に必要な時間を確保することを意味するものであり、各学校における取組も、この視点から進めることが重要である。以下に必要な指導時間を確保するための当面の充実・改善方策を提案する。

(各学校における必要な指導時間の確保の状況把握及び説明責任)

  指導に必要な時間が確保されているかどうかを客観的に判断するためには、各学校において、学年や学期、月ごと等に授業時数の実績の管理や学習の状況の把握を行うなど、様々な観点から教育課程の実施状況等について自己評価を実施し、改善を図ることが求められる。また、各学校においては、年間の行事予定や各教科の年間指導計画やそれぞれの実施状況を積極的に公表し、保護者や地域住民等へ説明を行うなど、保護者や地域住民等に十分に説明責任を果たすようにすることが大切である。

(必要な指導時間を確保するための工夫)

  各学校においては、各教科等の指導に必要な時間を適切に確保するために行う工夫として、既に週時程・時間割の見直し、短縮授業の見直し、国で定める基準としての35週以上にわたる授業の計画、長期休業期間中の家庭訪問やそれぞれの時期にふさわしい学校行事の実施等の創意工夫を生かした教育課程編成の様々な取組が行われているが、今後とも、これらを参考としつつ、学校の実態に応じた教育課程の編成を行うことが望まれる。
  また、長期休業日の増減や二学期制等の学期区分の工夫等については、全国一律に実施する性格のものではなく、各教育委員会等の取組に委ねるべき事柄である。各教育委員会がこれらの工夫を検討する場合であっても、地域や学校の実態等を踏まえた教育課程の編成を行う観点から、それらの工夫等について既に導入している地域や学校の実施状況等を参考にしつつ、それぞれの教育方針に基づいてその教育的効果等を十分研究することが重要である。
  その際、検討に当たっては、長期休業期間が、地域社会における子どもたちの体験活動や家庭教育の充実に果たしている役割、長期休業期間中に学校部活動の各種大会等が数多く行われている実態、児童生徒へ過度の負担を与えないための環境整備等の状況等についても考慮することが大切である。

ページの先頭へ