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2  子どもたちに求められる学力についての基本的な考え方

(子どもたちに求められる学力=[確かな学力])

  1では、新学習指導要領のねらいの一層の実現を図ることが重要であり、そのために、まずは[確かな学力]の育成を進めるべきであるとの考え方を示したが、それは、以下のような理由による。
  これからの未曾有(みぞう)の激しい変化が予想される社会においては、一人一人が困難な状況に立ち向かうことが求められるが、そのために、教育は、個性を発揮し、主体的、創造的に生き、未来を切り拓(ひら)くたくましい人間の育成を目指し、直面する課題を乗り越えて、生涯にわたり学び続ける力をはぐくむことが必要である。
  このために子どもたちに求められる学力としての[確かな学力]とは、知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や、自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力等までを含めたものであり、これを個性を生かす教育の中ではぐくむことが肝要である。
  また、昨今の学力低下に関する論議は、学力を単に知識の量としてとらえる立場、あるいは思考力・判断力・表現力や学ぶ意欲などまでも含めて総合的にとらえる立場など、学力をどのようにとらえるかの立場の違いにより議論がかみ合っていないと思われる場合もある。本部会としては、これからの学校教育では、[生きる力]という生涯学習の基礎的な資質や能力を育成する観点から、上記の[確かな学力]を重視すべきであると考える。
  さらに新学習指導要領の下での学力の状況については平成16年1月、2月に教育課程実施状況調査が行われることとなるが、平成13年度教育課程実施状況調査や国際数学・理科教育調査(国際教育到達度評価学会(IEA)調査)、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)等の近年の全国的・国際的な調査結果などからは、それぞれの分野における達成状況とは別に、我が国の子どもたちには判断力や表現力が十分身に付いていないこと、学習意欲が必ずしも高くないこと、学習習慣が十分身に付いていないこと、また、学力に関連して、自然体験、社会体験、生活体験など子どもたちの学びを支える体験が不足し、人やものとかかわる力が低下していることなどの点で課題等が明らかになっている。また、若者の勤労観、職業観についても各方面から課題が指摘されている。
  それゆえ、本部会は、[確かな学力]、豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力までを含めて構成する[生きる力]がこれからの子どもたちに求められる力であることを前提とし、その育成を行っていくために、まずは[生きる力]を知の側面からとらえた[確かな学力]の確実な育成を、新学習指導要領のねらいの一層の充実のための課題として考えたのである。

([確かな学力]をはぐくむ上で重要な視点)

  言うまでもなく、[確かな学力]をはぐくむ上で、知識や技能と思考力・判断力・表現力や学ぶ意欲などは本来相互にかかわりながら補強し合っていくものであり、両者を総合的かつ全体的にバランスよく身に付けさせ、子どもたちの学力の質を高めていくという視点が重要である。また、[生きる力]が生涯にわたり実社会を主体的に生きていくための力であることにかんがみ、子どもたちが、1知識や技能を剥落(はくらく)させることなく自分の身に付いたものとする、2それを実生活で生きて働く力とする、3思考力・判断力・表現力や学ぶ意欲などを高める等の観点から、知識や技能と生活の結び付きや、知識や技能と思考力・判断力・表現力の相互の関連付け、深化、総合化を図ること等も[確かな学力]の育成に当たっての重要な視点であろう。その際、子どもたちと実社会とのかかわりという観点から、社会の仕組みと個人のかかわりに関する理解を深めさせ、勤労観、職業観を育成し、生き方、在り方を考えさせることも重要となろう。

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