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中央教育審議会 「大学等における社会人受入れの推進方策について」答申概要

1  基本的考え方

2  大学等における社会人受入れの推進のための具体的な方策

1  長期履修学生制度の導入

  • ◇  職業等に従事しながら学習を希望する人々の学習機会を一層拡大する観点から,個人の事情に応じて柔軟に修業年限を超えて履修を行うことで学位等の取得が可能となる,できる限り弾力的な仕組みを導入することが必要。

(1)  対象となる学生の位置付け

  • ◇  職業等との兼ね合いで,通常の修業年限在学する学生よりも1年間又は1学期間に修得可能な単位数が限定されるため,修業年限を超えた在学を各大学等があらかじめ認めた上で在学し,卒業・修了により学位等を取得する正規の学生(長期履修学生)。

(2)  長期履修学生を受け入れる高等教育機関

  • ◇  大学学部,大学院,短期大学,高等専門学校(専攻科)及び専門学校それぞれの特性を踏まえつつ,それぞれの機関の判断により長期履修学生を柔軟に受け入れることができることとすべき。

(3)  在学年限及び年間修得単位数

  • ◇  長期履修学生が在学できる最長年限については,各大学等において学則等で定め,各学生の在学期間はその範囲内で,学生の希望を考慮しつつ定めることが適当。
  • ◇  長期履修学生の年間修得単位数については,各大学等が定める上限の範囲内において学生が毎年自由に登録できることとすることが適当。
  • ◇  通常の修業年限在学することを予定する学生と長期履修学生の履修形態の切替を可能とすべき。

(4)  配慮事項

  • ◇  授業料については,学生の負担軽減を図る観点から,修業年限分の授業料総額の在学年限に応じた分割納入や単位制授業料制度の導入など,設置者の判断により適切な方法による徴収が求められる。
  • ◇  設置基準の適用上や私学助成の算定上の収容定員の取扱いについては,長期履修学生の受入れを促進する観点から,その実員に一定係数(例えば,修業年限を長期履修学生の在学期間で除して得られた数)を乗じて算定する等の適切な対応が必要。

2  専門大学院1年制コースの制度化

  • ◇  現行制度上,専門大学院(高度専門職業人の養成に特化した大学院修士課程)については1年制コースの設置は認められていない。
  • ◇  今後,社会人の再学習の需要に適切にこたえるとともに,国際的にも社会の各分野においても指導的な役割を担う高度専門職業人を養成するためには,短期で集中して高度な専門職業教育を提供する専門大学院1年制コースの制度化が必要。

(1)  対象者

  • ◇  大学院修士課程1年制コースと同様,主として実務の経験を有する者を対象とすることが適当。

(2)  分野等

  • ◇  平成10年の大学審議会答申では,例えば,経営管理,ファイナンス,国際開発・協力,公共政策,公衆衛生などの分野において,専門大学院の設置が期待されており,1年制コースにおいても,基本的には同様の分野において設置が考えられる。
  • ◇  各大学院においては,国際的通用性にも配慮しつつ,分野ごとに学生に身に付けさせるべき能力や修得させるべき教育内容を考慮し,カリキュラム,履修形態,学期や学習期間の設定等の工夫により,1年以上2年未満の範囲内で教育を行うことが可能かどうかを十分慎重に判断した上で1年制コースを導入することが適当。

(3)  教育方法,修了要件

  • ◇  現状では専門大学院における「特定の課題についての研究」指導が論文作成指導と同じような形態で行われている例も見られる。専門大学院1年制コースの導入に当たっては,特に学習が短期間に集中して行われることにかんがみ,教育方法や修了要件が適切なものとなるよう,工夫することが必要。
  • ◇  なお,専門大学院は,研究者養成ではなく高度の専門性を要する職業等に求められる知識や能力を専ら養うことを目的としていることから,法科大学院の在り方も視野に入れつつ,高度専門職業人養成を目的とする大学院制度全般について,修了要件,教育方法,教員組織及び学位の在り方等について今後検討が必要。

(4)  教育研究水準の確保,評価制度

  • ◇  専門大学院の教育研究の質の向上には自己点検・評価とともに,第三者による客観的な評価が重要であるため,各分野ごとのアクレディテーション(適格認定)・システムの導入の在り方について今後検討が必要。

(5)  教育研究環境等の整備

  • ◇  専門大学院1年制コースの導入にあたっては,社会人学生が多いことに配慮した教育研究環境や事務体制の積極的な整備が必要。
  • ◇  その他,昼間の学部の運営を基本としている学事暦の見直しや今後増加が予想される外国人学生の履修に配慮したカリキュラム,事務体制等の整備も必要。

3  通信制博士課程の制度化

  • ◇  今後,我が国の大学院においては,情報通信技術の活用等により,社会人の多様な学習需要への積極的な対応が必要。このため,社会人が,修士課程修了後に継続してより高度な研究を行う機会を拡大し,社会の多様な方面で活躍し得る高度の能力と豊かな学識を有する人材を養成する観点から,通信制博士課程の制度化が適当。

(1)  分野

  • ◇  各大学院が専攻分野ごとにその学習内容を考慮し,主に通信手段を活用しながら,必要に応じて実験・実習等を併せ行うことにより,十分な教育効果が得られると判断される場合に設置することが適当。

(2)  教育方法,研究指導

  • ◇  通信制博士課程においては,研究課題に即した適切な研究指導と学生自身の自発的な研究活動が中心であることにかんがみ,情報通信技術の積極的な活用と併せ,面接指導の機会の設定等により,学生に対する十分な指導体制を築くことが不可欠。
  • ◇  個々の学生の多様な研究需要に対応するため,研究活動に当たっての指導・助言を行うティーチング・アシスタント,チューター,アドバイザー等の適切な配置に努めることが必要。
  • ◇  学習過程において,学生が交流できるような配慮を積極的に行うことも必要。

(3)  教育研究水準の確保,評価制度

  • ◇  きめの細かい入学者選抜や情報通信技術の積極的活用などによる教育研究指導方法の工夫などにより,各大学院は様々な工夫により博士課程にふさわしい教育研究水準の確保に努めることが必要。
  • ◇  国際的通用性に配慮しながら教育研究の質を高めていくためには,第三者による客観的な評価の実施が重要であり,アクレディテーション(適格認定)・システムの導入について今後検討が必要。

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