中央教育審議会(第139回) 議事録

1.日時

令和6年8月27日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧庁舎6階) ※ハイブリッド会議

3.議題

  1. 「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(答申案)」について
  2. 急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方に関する中間まとめについて

4.出席者

委員

荒瀬会長、永田副会長、橋本副会長、青海委員、秋田委員、安孫子委員、植村委員、内田隆志委員、内田由紀子委員、金田委員、清原委員、熊平委員、後藤委員、貞広委員、戸ヶ﨑委員、奈須委員、萩原委員、日比谷委員、古沢委員、湊委員、村田委員、吉岡委員、吉田委員、渡辺委員

文部科学省

盛山文部科学大臣、あべ文部科学副大臣、藤原事務次官、茂里総合教育政策局長、望月初等中等教育局長、伊藤高等教育局長、江﨑大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、平野社会教育振興総括官、神山総合教育政策局政策課長、池田国立教育政策研究所長 他

5.議事録

【荒瀬会長】  それでは、ただいまから中央教育審議会を開催いたします。本日は御多忙の中御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日、盛山大臣に御出席いただいております。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 初めに、文部科学省におきまして、人事異動があったということであります。御紹介をよろしくお願いいたします。
【神山政策課長】  事務局に異動がございましたので、御紹介をさせていただきたいと思います。まず、初等中等教育局長の望月でございます。
【望月初等中等教育局長】  よろしくお願いいたします。
【神山政策課長】  続きまして、高等教育局長の伊藤でございます。
【伊藤高等教育局長】  よろしくお願いいたします。
【神山政策課長】  続きまして、総合教育政策局長の茂里でございます。
【茂里総合教育政策局長】  よろしくお願いいたします。
【神山政策課長】  それから、大臣官房審議官(総合教育政策局担当)の江﨑でございます。
【江﨑大臣官房審議官】  江﨑と申します。よろしくお願いします。
【神山政策課長】  国立教育政策研究所長の池田でございます。
【池田国立教育政策研究所長】  よろしくお願いいたします。
【神山政策課長】  最後に、総合教育政策局政策課長として私、神山が就任しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして、本日の会議の開催方式及び配付資料につきまして、引き続き御説明をよろしくお願いいたします。
【神山政策課長】  本日もハイブリッド形式での会議開催とさせていただいておりますので、傍聴につきましては、ユーチューブにて配信しておりますので、御承知おきを頂きたいと思います。
 また、各議題の質疑・意見交換の際、御意見がございます場合は、会場で参加の委員の皆様、ウェブ参加の委員の皆様、どちらも挙手ボタンを押していただくようにお願いをいたします。
 御発言は会長の御指名の後にお願いいたします。会場で参加の委員の皆様は、会長から御指名があった後、事務局がマイクをお持ちいたしますので、机上の端末にお顔を写しながら御発言をお願いいたします。
 続きまして、本日の資料でございますが、議事次第にございますとおり、資料1-1から資料3でございます。御不明な点等ございましたら事務局までお申しつけいただければと思います。なお、資料の3につきましては、中央教育審議会の運営規則等に基づき、総会を経ないで行われた諮問について御報告するものとなってございます。
 最後に、本日の御出席につきまして、全体29名の委員の皆様のうち、11名にウェブ参加、また、14名が会場参加ということでございまして、合計25名の委員の皆様に御出席を頂いておりますことを御報告申し上げます。なお、本日途中退室、途中参加予定の委員の方々もおられますので、御承知おきをいただければと思います。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  それでは、本日の議事に入りたいと思います。議事は2件ございます。
 議題の1といたしまして、「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(答申案)」でございます。
 議題の2といたしましては、「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方に関する中間まとめについて」でございます。
 それでは、議題の1から入りたいと思います。「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(答申案)につきまして、事務局から御説明の後、質の高い教師の確保特別部会の部会長をお務めいただいております、貞広委員から御発言いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【望月初等中等教育局長】  それでは、議題1につきまして、初等中等教育局の方から御説明をさせていただきます。失礼いたします。
 前回6月の総会におきまして、初等中等教育分科会、質の高い教師の確保特別部会の審議のまとめに関しまして、御説明をさせていただきまして、御意見を頂戴したところでございます。
 その後、資料1-1にありますように、幅広く多くの方々から、国民の皆様方からの御意見を頂きまして、1万8,354件、御意見を頂いたものを少しまとめて掲載をさせていただいてございます。大変多くの御意見を注目していただいたことに感謝を申し上げたいと思っております。
 そして、資料1-2につきましては、今回、前回の総会あるいはその後の初中分科会等でも頂いた意見を踏まえまして、答申案としてまとめておりますけれども、1-3の方で、前回6月の答申の際から変更した箇所を中心としまして、簡単に御説明をさせていただきたいと思っております。1-3の方でよろしくお願いします。1-4につきましては、その答申案の概要でございますので、併せて必要に応じて御覧いただければと思っております。
 まず、1-3の表紙、赤が入ってございますけれども、この表紙の方で全ての目的として、なぜ、こうした大きな改革を行うかという目的を記してございます。全ての子供たちへのよりよい教育の実現を目指していくというものが、この審議のまとめ、特別委員会での大きな目的でございます。そして、学校教育の要であります学びの専門職としての教師の「働きやすさ」や「働きがい」の両立に向けましてということをサブタイトルとして掲示をして、はっきりこの答申案、あるいは審議のまとめの趣旨をしたところでございます。
 2ページ、3ページは、これまでの意見募集や骨太の方針の策定といった事柄などを追記しまして、答申案に盛り込まれた様々な施策につきまして、速やか、確実な実現に向けた取組を強く期待するという行政に対する委員の皆様方のお考えも追記をしているところでございます。
 少し飛びまして、19ページでございますけれども、第3章、学校における働き方改革の更なる加速化における業務適正化の一層の推進の項目に追記をしているところでございます。新聞等で少し出てございましたけれども、学校のプールの管理につきまして、給水の停止ができなかったことによって水道料金の賠償事例が発生していることを背景としまして、プールをはじめとする学校施設の管理につきまして、教師の過度な負担につながっている、そういうお声もあります。
 教師の過度な負担という観点のみならず、学校のプールの管理につきましては、学校・教師が担う業務の適正化に係る3分類の考え方に照らした場合に、学校の業務だが必ずしも教師が担う必要ない業務と分類されると考えられること。また、自治体において、指定管理者制度の活用あるいは民間事業者の管理委託などの方法、工夫によりまして、負担軽減を図っている事例も増えていることなどをお示ししますとともに、今後更に学校施設の管理に関する有効な方策についても引き続き検討を行っていく必要があるということを追記しているところでございます。
 続きまして、22ページ、お願いいたします。勤務時間管理の責務を負っております服務監督権者の教育委員会との記載をしていましたところ、学校現場では、校長先生に具体的な責任、役割を果たしていただくことになりますため、この主体としての校長を明記してございます。また、併せまして、学校あるいは校長の安全配慮義務の注意義務に関する判例についても詳しく説明をさせていただいたところでございます。
 23ページ、続けてまいりまして、脚注の51のところでございますけれど、令和元年の給特法の改正によりまして、業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が、教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針、いわゆる上限指針が法的に位置づけられたという経緯を今回の答申案にも明記をさせていただいてございます。
 さらに25ページでございます。ここでは総会、分科会で頂いた御意見を踏まえまして、教育委員会が定める働き方改革の目標としまして、在校等時間に関する目標だけではなくて、働く教師のメンタルヘルスの状況、例えば精神疾患などにより病気休職されている教職員の状況などを含めた多面的な目標設定の必要性を追記しているところでございます。
 26ページ、学校における働き方改革を進めていく際には、校長をサポートする副校長、教頭あるいは主幹教諭が役割分担を果たしながら取組を進めるという記述がございますけれど、分科会の御指摘を含めまして、事務長も追記しているところでございます。
 27ページに参りまして、校長等の管理職が学校において実際に時間外在校等時間を把握した上で、改善を具体的に行っていく措置が必要であるということを想定してございます。時間外在校等時間が特に長時間になっている教師に対しましては、目に見える形で働き方改革を改善していく具体的な手立てを講じることも必要であるということ。服務監督権者の市町村教育委員会等においても、こういった校長の取組が学校現場で着実に行われていくように取り組んでいく必要があるということをより明確に記載をしているところでございます。
 続きまして、36ページに参りますけれども、学校の指導運営体制の充実に関しまして、教科担任制の重要性について意見募集でも多数意見を頂きました。審議のまとめにおいても提言を頂いたところですが、これまでの取組状況についてより詳細に記載をしているところでございます。
 続きまして、40ページでございますけれども、平成29年に特別支援が必要な子供たちの通級指導の基礎定数化の法律改正を行ったところでございますが、併せて、日本語指導の体制整備についても改正をされております。今後も日本語指導が必要な児童生徒の増加が考えられるというところでございまして、日本語指導について追記をしているところでございます。
 飛びまして、57ページでございますけれども、これまでの審議のまとめの議論のプロセスの中でも、こうした全体の改革の工程をしっかり一覧にして表すとともに、これをフォローアップしていくべきという非常に強い御意見ございました。そのため、改革の工程表をこの答申の後の別添としてつけまして、そのことを記載させていただいたところでございます。
 58ページでございますけれども、部活動の在り方の見直しにつきまして、意見募集の中でも御意見を頂いているところでございます。スポーツ庁、文化庁におきましても今後の地域連携・地域移行をはじめとした部活動改革の在り方につきまして、更に検討を深める場が新しく設けられ、今後更にこの問題について専門的に議論されることになったことを踏まえた記述でございます。
 先ほど申し上げました資料の別添といたしまして、答申案の60ページの次のページに、改革の工程表を示してございます。答申に書かれたことをざっと並べているものでございますけれども、青色が国の取組、緑が自治体の取組でございまして、答申案の3つの柱、働き方改革、学校の指導・運営体制の充実、そして教師の処遇改善を基に整理をしたものでございます。
 働き方改革の加速化の関連では、働き方改革の取組事例、見える化というものを進めていくこと。国において仕組みを検討した上で、自治体において目標設定の充実を含め取り組んでいくことが必要であることを示してございます。また、法律に基づきまして、国が策定する、校長の資質向上に関する指針に、働き方改革のマネジメントを位置づけることを記載してございます。また、3分類に基づく業務適正化の徹底という真ん中に書いたのがございますけれども、その適正化、標準授業時数を大きく上回る授業時数の見直し、学校行事の精選、校務DXの推進といった取組を推進するとともに、勤務間インターバルの推進のために、留意事項あるいは好事例の整理ということを取り組むことを示してございます。
 次のページ、2ページ目では、指導・運営体制の充実につきまして記載してございますけれども、教科担任制の拡大、若手支援、生徒指導担当教師の配置の充実、高校、特別支援学校を含む様々な教育課題の対応についての定数改善や、学校に今なくてはならない支援スタッフの充実につきまして、検討を取り組んでいくこと、また、学校の新たな職の設置につきまして、仕組みの検討を行ったことを示しているところでございます。
 また、教師の処遇改善につきましては、来年の通常国会、半世紀ぶりの大きな改正の法案提出に向けまして検討を進めるとともに、併せて手当等の改善についても、めり張りある給与の改善という中で、手当の改正についてもしっかりと取り組んでいくことを示してございます。本答申案を予算あるいは法律改正の形で具体化しまして、学校の指導・運営体制の充実や、あるいは学びの専門職としての教師の人材確保に結びつけて、よりよい教育の充実に向けて努力を続けていきたいと思っております。
 以上、私の方から御説明をさせていただきました。
【荒瀬会長】  望月局長、ありがとうございました。先ほど、望月局長の御説明が始まった時点で、あべ副大臣が御到着になっておられます。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、先ほども申しましたが、この答申案をまとめるに当たって大変な御尽力を頂きました貞広部会長から御発言いただきたいと思います。
【貞広委員】  貞広でございます。
 まずは審議まとめの後、1万8,000件を超える多くの御意見を頂きました方々に心よりお礼を申し上げたいと思います。また、それに先立ちまして、御意見を取りまとめた上でお寄せくださいました各団体の方々にもお礼を申し上げます。更に、審議のまとめの段階では初中分科会、そして、こちらの総会でも委員の皆様から御意見を頂きました。これについても心よりお礼を申し上げたいと思います。事務局の方々の御尽力にも感謝申し上げたいと思います。
 今、望月局長から御説明ございましたので、内容については踏み込みませんけれども、本特別部会では、教師を学びの専門職と捉えて、そうした先生方を取り囲む環境をその裁量を維持しながらいかによくできるかということを出発点として、皆様のお知恵を頂戴しながら議論をしてきたところでございます。
 そのベースの考え方が副題、学びの専門職としての「働きやすさ」と「働きがい」の両立に向けてとなっております。また、その考え方は、特に答申案の「おわりに」のところにも書き込まれておりますので、お目通しをいただければと存じます。
 本日、答申の案をお出ししておりますけれども、むしろここからが本番であろうと考えております。予算の問題ももちろんです。また、制度改正の問題ももちろんですけれども、制度ができたとしても、それが実際に駆動するか否かは、関わりのある全ての方々が当事者となっていただけるか否かということにかかっていると思います。万能薬はありません。どうせ変わらない、どうせ変わりっこない、今まで先生がやってくださったこと、全部やってもらわないと困るので変わってもらっては困りますというのではなくて、皆で少しずつでも変え、変化を実感、体感し、次はさらによくできるという見通しが持てるように、小さなことを愚直に積み重ねられるように、学校関係者だけではなく社会全ての方々のお力添えを頂きたいと願っているところでございます。
 また、今後フォローアップもしっかり行い、必ずしも効果が上がっていない部分については、絶えず見直すことも徹底していただきたいと存じます。こちらにいらっしゃる委員の方々におかれましても、それぞれのお立場からこの答申、今日、案がとれるのかもしれませんが、誤解のない周知と制度政策の実装、駆動にそれぞれのお立場から御協力を頂きたいと切に願っております。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 それでは、前回の総会でも御意見を頂戴したところであります。それらが反映された形で、先ほど望月局長から御説明を頂きました。この件につきまして、委員の皆様から御意見、御質問を頂戴したいと思いますが、いかがでしょうか。
 それでは、渡辺委員、まずお願いいたします。
【渡辺委員】  日本医師会、日本学校保健会の渡辺でございます。この答申案の活用について、意見を申し上げたいと思います。
 パブコメの総数1万8,354件という多くの意見を頂いておりますし、この中には妥当かつ重要な指摘がたくさんあると思いますが、それを十分反映した、すばらしいものができたと思います。また、工程表まで示されたことも大変よいと思います。
 先ほどおっしゃられたとおり、このたびの議論の中心となりました教師の働き方改革は学校内だけの問題ではないと思います。パブコメでも指摘されていますけれども、教師の業務負担というのは部活や保護者対応、不登校の児童生徒の対応など、学校外の地域と連携する課題が非常に多くあるように思います。文部科学省が進めているコミュニティ・スクールと学校運営協議会の関係者のみならず、先ほど貞広先生もおっしゃったように地域の方々、それから国民に広くこのたびの答申案を理解していただき、地域と協力して改善を図る必要があるのではないかと思います。
 文部科学省におかれましては、答申をホームページに掲載し、教育委員会に通知するだけではなくて、国民に広く広報と啓発を積極的に努めていただきたいと思っております。また、教師の勤務体系に児童生徒に対する時間的余裕を持たせるためには、やはり現行の学習指導要領を再検討していただきたいと思います。今の学習指導要領は社会的要請によって何となく雪だるま式に膨らんだ感があるように思います。できれば、今後はスクラップビルドの方針で、やはり教師が余裕を持って児童生徒に接する時間を得られるように、対応していただくように御配慮いただきたいと思います。
 私の方からは以上2点でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。今後につきまして御提言を頂戴しました。
 それでは、今から申し上げる順番で御発言をお願いしたいと思います。戸ヶ﨑委員、安孫子委員、清原委員、内田隆志委員、後藤委員、この順でよろしくお願いいたします。
 では、戸ヶ﨑委員、どうぞ。
【戸ヶ﨑委員】  これまで何度か申し上げてきましたが、この本答申案の実動には見届けとオーナーシップが不可欠であろうと考えます。
 本案、この前の貞広座長を中心に渾身の力を込めた「審議のまとめ」について、これまでの文科省の様々な手段を講じた情報発信や多くの行政説明などには敬意を表したいと思います。一方で正直なところ、教育委員会や学校現場にはまだまだ十分に届いていないように感じています。というのはこの夏休み中、僭越ながら県内外の教育委員会や様々な職種の研修会等で、この審議のまとめについてお話をする機会を頂きました。
 その中で、教師を取り巻く環境整備の基本的な方向性として働き方改革のさらなる加速化や、処遇改善、指導・運営体制の充実を一体的・総合的に推進すべきであるという考え方を強調するとともに、まとめの本文、A4、2枚の考え方と、荒瀬会長御自身による渾身の解説の動画を提示しながら、「既に視聴されましたか」とお伺いをしましたが、本文はおろか、トータルで6分の荒瀬会長の動画もなかなか視聴されていなかったというのが現状でした。趣旨の浸透や政策の波及は容易ではなくて、この中教審とのギャップを常に意識する必要があると思っています。届いてほしいところにこそ届くように、「インサイト」を刺激して答申等に込められた真髄あるいは魂が、教育委員会や学校に腹落ちして実践に結びつくように、引き続き戦略的広報に取り組んで、かつ、その浸透をしっかりと見届けていく必要があると思っています。
 また、国と自治体がその権限と責任に基づいて示された施策を着実に展開していく必要があるため、工程表の作成は大変すばらしいと思います。ただ、この工程表を見て「国の動きを待ってから動けばよい」と捉えられることを危惧しています。
 誰かが何かをしてくれるというのを待っているのではなく、まさに先ほど貞広座長からもありましたように、それぞれの主体がオーナーシップをしっかりと持って何ができるのかを自ら問い続けて、「変えられない」という諦念を乗り越え「変えられる」という実感を体得することが大事であると思っています。
 さらに、働き方改革については、高度専門職としての教師の仕事の強みや矜持まで手放されないように、目の前の子供たちのために何をなすべきなのかと、何を捨ててはいけないのかということも議論していく必要があると思っています。働き方改革という御旗の下に、仕事を減らして学校や教師の魅力をなくしてしまうことにならないようにしなければならないだろうと思っています。この答申の副題にもありますけれども、学びの専門職としての働きがいと働きやすさを両立させて、教職人生を豊かにすること、加えて、教職の魅力向上を図り優れた教師人材の確保をすること、この好循環を創り出すように国だけでなく各主体が努めていく必要があると思っています。
 そしてこの答申に基づく環境整備というのは、未来を切り拓く次期の教育課程や学習指導の在り方の前提、すなわち、これからの学びの具現化をするための「土俵」となることを強く認識する必要があると思っています。教育行政を牽引するバトンをこれまでの「管理」から「指導」に渡るときの分水嶺になるのが、この環境整備の成否だろうと思っております。
 結びに、かつて昭和46年にこの中教審は、「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」といういわゆる46答申を出しました。この答申は、エポックメーキング的な答申として有名であります。46答申を踏まえて人材確保法が成立して、3次、4回にわたる給与改善が実現したことで、教員採用試験の受験者数は大きく増加し、現在の学校教育の礎が築かれました。
 今回のこの答申案もそのような、歴史的転換の端緒となる答申となることを心から期待して、また、国には是非文科省のみならず政府全体として予算上・法制上の措置を行って、不退転の決意で改革の断行に取り組んでいただくということを強くお願い申し上げたいと思います。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、続きまして、安孫子委員、お願いいたします。
【安孫子委員】  ニトリの安孫子でございます。採用されました若手の先生方が全員人的資本として、これから教育のスペシャリストとして育成されるために、企業の立場から意見を申し上げたいと思います。25ページにあります教師のメンタルヘルスの状況についてです。
 企業におきましても、このメンタル疾患と離職というのはかなり強い相関が表れます。そのために、対策として、カウンセラー人員を増やして対応しています。抜本的な改革としては、やはり組織の再編が必要と企業は捉えます。別添の工程表の裏の方に、指導・運営体制の充実の中に組織的・機動的マネジメント体制の構築があり、この中で「新たな職」の検討とありますが、企業ならば自分と上司との縦の組織図を見直すところから始めます。理由は、メンタルの疾患は、上司の関係性によるところが大きいと、分かっているからです。
 我々の中の原理原則としては、自分の直属の部下は、5人から6人という上限があります。それを超えて直属の部下を持つとその関係性が希薄になったり、コミュニケーションが薄くなって、この辺の問題が浮上してくるというふうに捉えています。したがって、新たな職位の設置だけではなく、この学校教育における、縦の組織図の再構築も念頭に入れて、抜本的な改革に取り組んでいただきたいと思います。
 私からは以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。清原です。
 本日、資料の1-3にお示しいただきましたように、副題がつきました。「全ての子供たちへのよりよい教育の実現を目指した、学びの専門職としての『働きやすさ』と『働きがい』の両立に向けて」というように。これについては「おわりに」という部分にも同様の趣旨が書かれています。
 59ページですが、「これらの改革を通して、多くの有為な人材が、教師として、教職生涯を通じて学び続け、子供一人一人の学びを最大限に引き出し、主体的な学びを支援する伴走者として教育に携わることができる環境を整え、働きやすさと働きがいの両立を実現していくことが必要である」と。
 このような副題等の表現に象徴されているように、今回、特別部会での熱心な御審議、そして多くのパブリックコメントを頂いて、それを反映したこの答申案につきましては、重要な「児童・生徒を中心に置いた視点」に基づいて教員の在り方についてまとめられている内容であり、私はこの案に賛同いたします。その上で、1点だけお願いがございます。
 それは、先ほど渡辺委員も戸ヶ﨑委員も提案されたことと重なります。戸ヶ﨑委員は、「戦略的広報」という表現をされましたが、私はこの内容につきまして、答申についてもあるいは答申を反映したこれから工程表に基づいてつくられていく政策、その内容についても、是非、教育委員会だけではなくて、自治体の首長部局、すなわち知事部局と市町村長の部局にもしっかりと周知をしていただくことをお願いします。と申しますのは、先ほど安孫子委員も御指摘されましたメンタルヘルスの点、心身の健康管理については、市長部局でも職員に対して多くの実践を重ねています。教育委員会としっかりと連携をしていただければと思います。
 また、渡辺委員が御指摘された「コミュニティ・スクール」につきましても、総合教育会議で検討が重ねられるケースも多く、しかも、地域社会と結びついた学校の在り方を実践していく上で、市長部局の子供政策の取組との連携も不可欠です。福祉部門であるとかあるいは母子保健も含めてです。そうであるならば、是非、この内容について通知を出されるときには、教育長、教育委員会だけではなくて首長部局にも通知をしていただけるとありがたいなとお願いします。そして、自治体が総合教育会議を通じて、全庁的に、この「令和の日本型学校教育を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策」の、まさに担い手となっていただければと思います。そして、市民、保護者の皆様の賛同を得て支援をしていただければ、工程表が工程どおりに着実に進むのではないかなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、内田隆志委員、お願いいたします。
【内田(隆)委員】  ありがとうございます。審議のまとめから、さらに解決すべき課題と、それに対する方策を加えていただいて、答申案としていただいたことに感謝申し上げます。
 学校に対する社会からの様々な要請というところは、さらに増えている傾向があります。こういった現状から、国民の皆様の理解と協力が不可欠というふうに思っております。この答申案が答申として出たときに、様々な方の理解を促進するということは改めて必要だというふうに考えております。今回、工程表をまとめていただきましたけれども、この工程表の中の、特に高等学校や特別支援学校に係る内容につい補足をしていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、後藤委員、お願いいたします。
【後藤委員】  多岐にわたる方策のまとめ、ありがとうございます。フォローアップとも関係した評価につきまして、一言申し上げます。
 この評価というのは、日本の学校の風土と文化にはまだまだ十分なじんでいないという側面があるかと思いますが、人事評価を実質化していくということが必要かと思います。環境整備の方向性と教員のあるべき姿をメッセージとして伝えるために、今回の方策を人事評価の指標として盛り込み、意欲向上と主体的な取組につなげ、処遇などに反映をし、教員の働きがいにつなげる。それが質の高い教師の確保や質の高い教職員集団、チーム学校の構築につながっていくことを期待しています。教員個人の評価に加えまして、チーム学校の評価についても、今後検討していただきたいと思います。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。それでは、この後、熊平委員、金田委員、古沢委員の順でお願いしたいと思います。熊平委員、お願いいたします。
【熊平委員】  ありがとうございます。答申取りまとめ、本当に御苦労さまでございました。私も、この内容については大変すばらしいと思っておりますし、広報もこれまでもかなり御尽力いただいていると思っておりますので、まだまだこれからというところもあるかもしれませんが、私としては、非常にすばらしいところまで来ているというふうに感じております。その上でコメントさせていただきます。
 一つは校長先生の役割についてです。やはりこの中で一つは働き方改革というのはどうしても現場に左右されるところがございます。教員の職務はこれまで大変属人性の高いものになっており、学級王国みたいなところもあって、先生方の働き方というのが、まだ、こういうものがスタンダードであるというようなところにまで確立されていない状況もあります。
 同時にまた、子供の状態ですとか地域の状態、保護者の状態などによって、先生方の仕事の在り方も変わってくるということで、非常に個々の学校で先生方が働きやすい状況になるためには、校長先生の裁量というのが非常に重要な役割を持つと思います。ですので、この答申を本当に理解していただかなければならないのは全校長先生ということになりますので、是非校長先生には、まず、最優先で御理解いただくというふうにしていただきたいなと思います。
 また、この状態の中でどうしても先生の魅力というのが少し見えにくくなってきている中で、採用がなかなか難しいという現実を乗り越えるためにも、今、先生になっていただいている人たちが、忙しくても気持ちよく働ける環境をつくるためにも校長先生の役割は非常に大きいのではないかと思っています。
 子供の成長や子供のことについて対話が多い職員室は、みんなも気持ちよくやりがいを持って働けるチームになっているというお話も伺ったりしますけれども、必ずしも全ての学校がそういうふうになっていないというふうに聞いています。ですので、先生を目指してこられた先生が少なくともなった後に、先生が魅力のない仕事だというふうに思わないように是非するためにも、校長先生にしっかりと頑張っていただくということを是非応援していくことができればと思いますので、現場での取組をしっかりと支えていくということも我々の使命ではないかと思いますので、現場任せではないですけれども、校長先生には大変頑張っていただきたいということで、その流れを御一緒につくっていければと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
 私からは以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、金田委員、お願いいたします。
【金田委員】  ありがとうございます。金田です。まずは取りまとめ本当にお疲れさまでした。ありがとうございます。
 私の方からは、働きやすさ、又は働き方改革、負担の軽減ということが質の高い教師の確保につながるということになっているかと思いますが、やはりそれだけではなくて、それにプラスして教師の社会的地位の向上であったり、戸ヶ﨑委員が言われたように教師の魅力の向上というようなところも両方併せ持ってやるべきなのだろうなと思っております。
 今回の手段として考えると、働き方改革というところが大きなポイントになっているのかなと思うのですが、特にこの59ページの最後の「おわりに」のところで、また、パブリックコメントでもありました通り「おわりに」のところの2段目になると思いますが「強い使命感や責任感の下で、時に自らを省みることなく、子供たちのために尽力している教師には、まずもって謝意を伝え、心から敬意をしたい」と書いてあると思いますがポイントはここにあると思っています。
 働き方改革という実質の部分は当然やっていくべきだと思いますが、学校の中、そして学校外、保護者、地域の人たち、また、国民全員がやはりしっかりと教師はすばらしい職業であるということをしっかりと皆に伝えていくことが質の高い教師の確保につながっていくのではないのかと思います。教師という職業はすばらしい職業だという事をしっかりとアナウンスしていくということが質の高い教師の確保には重要かなと思っております。広報の中で、是非進めていってもらいと思っています。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。それでは、古沢委員、お願いいたします。
【古沢委員】  ありがとうございます。今回の答申案は、具体的な提言が多数盛り込まれて、しかも工程表がつけられたということで、とても分かりやすいものになったと思っています。その内容が現場の先生方はもちろん、教師の志望者、これから教師になる人たちにも届いて、それらの人を支援するものでなければならないと思います。
 特にこの答申にある教科担任の増員であるとか、新卒はまず教科担任から始めて、支援に当たる新たな職を創設すると、非常に重要なことで速やかに進めていただきたいと思います。そうした体制を多忙な現場でつくっていくためには、パブコメにも多数あったようですけれども、やはり着実な定数改善を進めることが求められると思います。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。それでは、手を挙げていただいている植村委員で今のところ手を挙げていらっしゃる方、最後かと思いますが、よろしいですか。
 では、植村委員、お願いいたします。
【植村委員】  全連小の植村でございます。ありがとうございます。
 まず、この答申案については、異論はございません。ここでは貞広部会長のお言葉をお借りして、私が全国の小学校長に話していることを4点に絞って申し上げます。1、働きやすさと働きがいの両立が大事。2、今できることをすぐやる。3、これがゴールではなく、むしろここがスタートであり、これからが本番。4、3つの柱の一体的・総合的な推進が大事。まだまだあるのですが、4点お話をさせていただきました。是非学校を元気にするために、この答申案の確実な実現をお願いしたく思います。
 以上でございます。ありがとうございました。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。それでは、青海委員も手を挙げてくださいました。青海委員、お願いいたします。
【青海委員】  全日本中学校校長会、青海でございます。
 答申案については、数多くの意見を反映させた形で大変よいものにまとめていただきました。それからスケジュールも示していただいたこと、大変ありがたいと思っております。お話を聞いていて、環境整備に関する方策がスタートラインに立ったなという感じで、身が引き締まる思いでございます。全日本中学校校長会でできること、加えて、各委員から指摘されているような課題などについて、解決に向けて極力いい形に持っていけるよう進めていきたいと思っています。素敵で優秀な人材に先生になってもらいたい。できるだけ指導に専念できる環境をつくっていきたい。そのために多くの方のお力添えを頂いた形でまとめられましたので、教育予算を拡充して教育環境を充実させ、ここに示された施策を進めていけるよう、全日本中学校長会でもしっかり取り組んでいきたいと思っています。以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。ほかには御意見ございませんでしょうか。
 ありがとうございます。総会でも引き続き御議論を頂いたということで、前回の御指摘を頂きましたことも、答申案の方に盛り込まれているということで、皆さんから頂戴いたしましたのは今後の展開に向けての工夫であるとか、あるいは応援であるとかそういった御意見をたくさん頂戴いたしました。
 とりわけ広報ということについて言うと、具体的には学校関係者はもちろんのこと、自治体に対しても、あるいは現場任せではないというお断りもつけていらっしゃいましたけれども、校長の理解というのをしっかりと進めていく必要があるだろう。また、教師になろうとしている人、あるいは教師について考えている人、そういった人にもちゃんと届くようにしてほしいという御要望を頂戴いたしました。そのほか工程表を実質化していくという意味でも、人事評価の実質化といった大変今の学校教育の場には必ずしもなじみやすくはないものかとは思いますけれども、そういったことも考えていく必要があるし、学習指導要領の在り方についても、御意見を頂戴いたしました。
 様々今後に向けた御意見いただきましたけれども、いずれも答申案につきましては、御支持いただいたものというふうに判断させていただきます。よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【荒瀬会長】  ありがとうございます。
 今期の中教審の総会、正にこの会場でございましたけれども、全高長の前会長がおっしゃっていらっしゃった言葉で、教育へのリスペクトという言葉を私、就任の挨拶で使わせていただきました。人が学んで成長するというその場が学校であるわけであります。あるいはまた、学校外のところでも様々な場でそういったことが行われるわけですけれども、学んで成長するということをしっかりと支えていく営みである教育に対するリスペクトというのが大変重要で、その教育に対するリスペクトを実質的に日々支えている集団であるところの教師が本当に元気で、しっかりと仕事に専念できるようにということを心から願って答申を大臣にお渡ししたいと思います。
 つきましては、私がお渡しさせていただきますけれども、この取りまとめに大変御尽力いただきました貞広特別部会長にも御一緒に、この場に来ていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、大臣、中教審といたしまして、令和5年5月に諮問いただきました令和の日本型学校教育を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について、答申をいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【盛山大臣】  承りました。誠にありがとうございました。
(答申手交)
【荒瀬会長】  ありがとうございました。それでは今、答申を盛山大臣にお渡しいたしました。盛山大臣から御発言をよろしくお願いいたします。
【盛山大臣】  荒瀬会長をはじめとする中央教育審議会の先生方、本当にどうもありがとうございました。先ほど荒瀬会長の方からこの答申を頂戴するときにもございましたが、昨年の5月に諮問させていただいて、1年3か月ということでございますけれども、大変精力的に御審議を賜りました。本当にありがとうございます。そしてまた、貞広特別部会長におかれましても、その具体的な御審議を本当にじっくり賜ったことに心から感謝申し上げます。
 この答申、前回、貞広部会長から「審議のまとめ」を頂いたときもそうでございますけれども、教師に優れた人材を確保するため、あるいは教師の方々のモチベーションを高めて、教育に子供への学びに力を入れていただくためにどうするかということで、学校における働き方改革の更なる加速化、学校の指導・運営体制の充実、そして教師の処遇改善、この3本柱、これを一体的にやっていくことが必要であると、こういうようなポイントであったかと思います。
 今、予算要求をするちょうどそういうタイミングでございます。今日は27日の火曜日でございますが、これから3日後、30日の金曜日には、これは例年のことでございますけれども、毎年各省が文科省も含めまして、財務省その他へ予算の要求をするというタイミングでございます。このタイミングで、この答申を頂戴したものでございますので、盛り込めるものはできるだけ盛り込んでと考えているわけでございます。
 ここのところ、私も通常国会あるいは昨年の臨時国会でも答弁をさせていただきましたが、教師の方々の働き方、これを取り巻く環境をどのようにして改善することができるのかというのは大変、国会の場でも私だけではなく、総理に対しても何度も質問があるような、そういう大変大きな今の政府に突きつけられている大変重大なテーマの一つであると、そんなふうに考えます。
 そういったことでございますので、私は就任をさせていただいた昨年の9月の直後のインタビューで、いや、なかなか名案がありませんと言って大変お叱りをかったこともあるのでございますが、簡単にできる問題ではないという意味を私は申し上げたかったわけでございまして、今日こうやって答申を頂戴しましたが、この内容をどのように具体的に実現をしていくのかというのは、我々にとっても大きな課題であり続けていると、そんなふうに思います。
 そして今回の答申の中には、今後の国会におきましての法律改正、あるいは特に処遇の改善というところで大きな予算措置をどのように講じて確保していくことができるか、そういったこともございます。答申の内容をしっかり踏まえ、そして法律の改正も含めて施策の実現に向けて、我々文部科学省を挙げまして最大限取り組んでいきたい、そんなふうに考えているところでございまして、中央教育審議会の委員の皆様方におかれましては、これまでもお世話になりましたが、今後とも引き続き、それぞれの皆様方のお立場から我が国の教育のために、あるいは子供の学びを一層改善していくために、さらなるお力添えを賜りますよう心からお願い申し上げまして、私からの感謝の御挨拶をさせていただきます。
 本日は誠にありがとうございました。
【荒瀬会長】  大臣、ありがとうございました。
 それでは、公務の関係で盛山大臣が御退室になります。大臣、本当にありがとうございました。
(盛山大臣退室)
【荒瀬会長】  では、次に進みたいと思います。2番目の議題でございます。
 急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方に関する中間まとめにつきまして、大学分科会長の永田委員から御説明を頂きました後、事務局から御説明を加えていただきたいというふうに思います。
 永田先生、お願いいたします。
【永田副会長】  ありがとうございます。大学分科会の会長、永田です。
 今月の8日に今おっしゃられました急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方についての中間まとめが、大学分科会高等教育の在り方に関する特別部会から出ました。
 諮問は、昨年の9月に盛山文部科学大臣からなされていまして、大学分科会との合同の会議も含めて都合8回、特別部会を開催いたしまして、議論を進め、今回取りまとめられたということでございます。
 中間まとめの詳細については、担当の局長等から御説明いたしますが、先立ちまして、概要だけ述べさせていただきます。背景を短く申し上げます。新型コロナウイルス感染症の蔓延を奇貨として、遠隔授業、遠隔教育の普及、その後生成AIが台頭してきました。一方、我が国の研究力が相対的に低下しましたし、国際情勢も不安定化しました。一番大きな問題は、急速な少子化が進んでいるということであります。
 こうした大きな変化が起こっている中で、今後高等教育どうしたらいいのだろうということで話合いを進めています。当然のことながら、我が国の未来を担う若者が価値創造に向けて、とりわけて人類が直面する多様な課題解決に貢献する、あるいは地域社会の背骨を担っていくということは大変重要なことだと思っております。
 その中で、先ほど述べた課題を考えると、人が若干減りつつあっても、何とか我が国を支える知の総和を保ちたい、できれば向上させていきたいという思いで議論をさせていただきました。そのためには一人一人の能力を今以上に発揮させる手立てが必要である。それから、教育を受ける方についてもクラシカルな18歳の子だけを対象にしない、もっと広い人材を求めていかなければならないだろうと思っています。
 一方、教育を受ける側のみならず、高等教育を施す方の大学にとっても、これまで以上に研究や教育の機能を強化していかないと、この知の総和を向上させるということにはなかなかならないだろうと考えてきました。
 大きく絞りまして政策的に言えば、3つの柱を立てて考えてきました。その一つは、高等教育機関の質を更に高度化することを実現しよう。2つ目は、この少子化の中で、大学全体の規模を適正化していく努力も必要である。それから3つ目は、その一方で減らし過ぎれば、アクセスという問題があるため、社会的な地理的なあるいは社会経済的な意味で、アクセスを確保していかなければいけない。一部二律背反的なところもあるのですが、これを何とかまとめていこうということでありました。
 その上で、具体的な方策は完全に出来上がっているとは申し上げられませんが、具体的な方策を立て、その前提となる機関を機関別あるいは設置者別で役割や、役割を超えた連携の在り方についても議論を重ねてきたということであります。これはまだ中間まとめですので、自ら申し上げたとおり、具体的な方策についてまだまだ検討しなければいけない点はあるとしても、高等教育改革を支える支援の在り方についても議論を深めていきたいと考えています。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、続きまして、伊藤局長、よろしくお願いいたします。
【伊藤高等教育局長】  それでは、事務局の方から中間まとめ概要について簡単に説明をさせていただきます。資料2-1の方が中間まとめの本体でございますが、お時間の関係もございますので、資料2-2に基づいて、御説明をさせていただきたいと思います。
 ただいま永田部会長の方からも御説明を頂きましたが、今回の中間まとめに当たってはまず高等教育を取り巻く状況を整理させていただきました。(1)近年の社会を取り巻く変化といたしまして、18歳人口の大幅な減少による急速な少子化の進行、また、生産年齢人口の減少に伴う労働供給の不足、DX・GX等の進展に伴う人材需要の変化、人口減少、東京への一極集中を踏まえて地方創生の現状を示してございます。特にただいまも御言及いただきましたが、少子化につきましては、昨年生まれた子供の数が72.7万人と、前年度に比較いたしまして4.3万人減少してございます。このような急速な少子化は、中間的な規模の大学、短期大学が毎年90校程度減少していく、こういう大変大きな規模の減少でございます。
 もちろん少子化というのは今に始まった話ではございませんが、18歳人口、1966年の250万をピークに現在約110万人と減少してきているわけでございますが、実はこの間、大学進学率は右肩上がりに上昇をし続けましたので、大学進学者は1966年の約30万人から現在約60万人と倍増してきてございまして、大学は少子化にもかかわらず規模が拡大という時期が続いてまいりました。
 しかしながら、大学、短期大学、専門学校等への進学率は既に8割を超えてございますので、今後さらなる進学率の上昇というのはあまり大きな上昇は見込めないのではないか。こうした中で、高等教育機関が現在の規模を維持していくということは、これは大変困難である。こういう厳しい状況の中で、将来を見据えた規模の適正化が避けられない状況にあるという御審議を頂きました。
 次に、(2)高等教育を取り巻く変化といたしましては、初等中等教育段階におきます「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実、また、GIGAスクール構想、探求学習の充実など、初等中等教育段階で学びが変化をしている。それを受けて進学してくる学生に対して、どういう高等教育を提供していくのかという問題が一つ大きな変化でございます。
 また、進学率における地域間格差、依然として短い学生の学修時間、また、国際的な留学生獲得競争の激化、リカレント教育・リスキリングの必要性の高まり、あるいは障害のある学生の増加、我が国の研究力の相対的な低下等、高等教育を取り巻く変化があるわけでございます。こうした大きな変化の中で、これまでの高等教育の教育内容、方法を今一度見直す必要があるであろうと、このように御審議を頂きました。
 その上で(3)これまでの高等教育政策として、この二、三十年の政策を振り返りながら、量や質、修学支援、大学運営に関するこれまでの政策に分類した上で、今後に向けて全体規模の適正化や高等教育機関間の連携、また、再編・統合等の取組、地方の高等教育機関が果たす多面的な役割も考慮したアクセス確保を行っていくことが必要と御議論を頂きました。
 次のページを御覧いただきたいと思います。そうした前提を踏まえまして、今後の高等教育の目指すべき姿をお示しいただきました。
 まず、(1)我が国の「知の総和」の維持・向上でございます。ただいま永田部会長の方からもお話を頂きましたが、我が国において未来を担う若者が新しい価値を創造し、人類が直面する課題の解決に貢献するとともに、地域社会の持続的な発展を担っていくためには、「知の総和」(数×能力)、これを維持・向上することが必須としてございます。
 そして、(2)高等教育政策の目的として、教育研究の質の向上、社会的に適切な規模の高等教育機会の供給、地理的、社会経済的な観点からのアクセス確保による高等教育の機会均等の実現を掲げてございます。
 その際もございましたが、これら3つの目的は常に調和をするわけではなく、トレードオフ、二律背反、こうした関係になることもあり得るために、この3つの目的をバランスよく、かつ効果的に達成するための制度及び資源配分の在り方を検討することが重要であるとしてございます。
 さらに、(3)今後の高等教育を考える上で重視すべき観点といたしまして、文理横断・文理融合教育の推進、成長分野を創出・けん引する人材の育成などの新たな時代に対応した教育内容の改善。また、外国人留学生や社会人の受入れをはじめとする学生や教員等の多様性・流動性の確保、高等教育の国際化の推進、国際競争の中での研究力の強化、学生への経済的支援の充実、デジタル化の推進、高等教育機関の運営基盤の確立、初等中等教育や社会との接続の強化、地域との連携の推進などを示してございます。
 その上で、次の3ページを御覧いただきたいと思います。これらを踏まえ、今後の高等教育政策の方向性と具体的方策を掲げていただきました。
 1つ目の柱は教育研究の「質」のさらなる高度化でございます。「知識基盤社会」において、学生一人一人の能力を最大限高めることが必要であることとした上で、学修者本位の教育のさらなる推進、多様な学生の受入れ促進、大学院教育の改革、情報公表の推進を掲げてございます。
 このうち、1.学修者本位の教育のさらなる推進につきましては、さらなる教育内容・方法の改善を進めるとともに、遠隔・オンライン教育の推進、また、「出口における質保証」の推進、認証評価制度の見直しなどの具体的方策を講じていくこととしてございます。
 また、2.外国人留学生や社会人をはじめとした多様な学生の受入れ促進につきましては、多面的・総合的な入試の推進、転編入学の柔軟化、外国人留学生の受入れ及び日本人学生の派遣推進、社会人受入れの促進、障害のある学生への支援、通信教育課程の質の維持向上等を掲げてございます。
 さらに3.大学院教育の改革といたしまして、質の高い大学院教育の推進、修士・博士号取得者数の増加に向けた取組の推進、学士課程から博士課程までの教育課程の体系化と連続性の確保等が必要としてございます。
 加えて、4.情報公表の推進として、高等教育機関間の多様な比較分析が可能となるような情報の可視化などの情報公表のさらなる促進を講じていくことをお示しいただいてございます。
 2つ目の柱は、高等教育全体の「規模」の適正化でございます。学生数の不足等からの経営悪化による教育研究の「質」低下の回避のために、「規模」の適正化が必要とした上で、18歳で入学する日本人学生以外の受入れの拡大、高等教育全体の規模の適正化などに向けた支援を掲げてございます。このうち、1.18歳で入学する日本人学生以外の受入れ拡大といたしましては、外国人留学生、社会人の受入れ促進を図るとともに、遠隔教育やオンライン授業等の進展を踏まえた取組の推進を図ることを御提言いただきました。
 また、2.高等教育全体の規模の適正化に向けた支援といたしましては、厳格な設置認可審査の実施を行うとともに、改革やチャレンジに取り組む大学への支援強化、高等教育機関間の連携の推進、再編・統合の推進、さらに縮小・撤退への支援などについて進めていくこととしてございます。
 一番右、3つ目の柱は高等教育への「アクセス」確保でございます。「規模」の適正化を図りつつ、地域における「質」の高い高等教育の機会の確保が必要とした上で、地理的及び社会経済的観点からのアクセス確保を掲げてございます。このうち、1.地理的観点からのアクセス確保につきましては、地域の高等教育機関や地方公共団体、産業界などの各地域の関係者が、地域の人材育成の在り方について議論を行う場を構築するとともに、各高等教育機関や地域において検討を促すための仕組みの整備として、コーディネーターとなる人材の育成・配置、地方公共団体における大学振興担当部署の整備、国における司令塔機能を果たすための組織整備を示してございます。
 また、2.社会経済的観点からのアクセス確保といたしましては、入学前からの取組促進とし、経済的負担軽減に関する早期からの幅広い情報提供の促進を図ることとしてございます。
 次の4ページ目を御覧いただきたいと思います。第4に、機関別・設置者別の役割や連携の在り方といたしまして、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校等の機関別の役割について示すとともに、それぞれの設置者別の役割等を踏まえつつ、各大学のミッションを再確認し、時代の変化に応じて刷新する必要があることとした上で、国立大学、公立大学、私立大学が果たしていく役割についてもお示しをしてございます。
 最後、第5に高等教育機関を支える支援方策の在り方といたしましては、1.機関補助と個人支援のそれぞれの特徴を踏まえた公財政支援の在り方や、基盤的経費助成と競争的資源配分による支援の在り方。また、2.高等教育の社会的・私的便益を踏まえた授業料等を含む個人・保護者負担の在り方。さらに、3.企業等からの寄附金や社会からの投資の拡大など、多様な資金調達を通じた経営基盤の確立・強化の方策。この3つの観点から、引き続き中間まとめ以降、より本格的な深掘りをした議論を重ねていくこととしてございます。
 この中間まとめにつきましては、本日の総会での御議論を踏まえつつ、今後さらに高等教育の在り方に関する特別部会、また、大学分科会において御審議を重ねていただき、今年度末までに一定の結論を得ていただくよう審議をお願いしているところでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、ただいま御説明を頂きましたこの件につきまして、委員の皆様から御意見、御質問を頂戴したいと思います。いかがでしょうか。
 では、渡辺委員、まず、よろしくお願いいたします。
【渡辺委員】  日本医師会、日本学校保健会の渡辺でございます。
 中間まとめに示されておりますように、急速な少子化が進行する状況においては受験生が相対的に減少し、これまでの教育機関の受皿が過剰となってくるのは当然でございます。大学等進学者希望者にとっては選択肢が広がる、門戸が広くなるけれども、選択されなかった教育機関が存続できなくなるのは当然であります。ただ、それを存続させなければならない理由というのが、本まとめではあまり明確に示されていないように思います。
地方大学の存続理由としてはアクセス、地域性と経済的理由等が示されております。経済的理由については、この中間まとめでも記されているように対応策があるようですが、一方で地域性を求めているニーズがどの程度あるのか、そのエビデンスが示されていない以上、その地域性を強調するにはなかなか無理があるのではないかと思います。
 また、現在の高等教育施設を存続させるのは、地域や企業のニーズのためというふうにこの中間まとめでは読めるのですけれども、高等教育を受けようとしている側の視点での議論があまり見られないように感じます。高等教育は国力を上げ、地域を存続し、企業の経営力を高めるだけのために存在するのではないという気がいたします。地方大学は必要だとは思いますけれども、無理に存続させても求められる学部や教育者がいなければ、受験者の方から魅力ある教育施設とは認識されないのではないかと思います。
 また、交通機関が発達した現状では、その地域という意味を再考する必要があるのではないかと思います。
 以上から、高等教育を受けようと考えている側からの意見を反映した、今後の対応策というのをお示しいただきたいと思います。
 また、若干本論からずれるかもしれないのですが、本まとめにもあるようにリスキリングが必須の時代にあって、実学を容易かつ深く学べる専門学校などの役割は一層重要になるのではないかと思います。専門学校は看護師や歯科衛生士、医療事務など、医療機関においても欠かせない人材を育成し、輩出していただいている状況でございます。
 本まとめにおいては、専門学校に関する言及、ちょっと後ろに書いてあるのですけれど、十分ではないのではないかなと思いますので、さらなる記載と検討を加えていただき、大学教育一辺倒ではないということをお示しいただきたいと思います。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。たくさんの委員の方が手を挙げてくださっていますので、順に御発言いただきたいと思います。
 続きまして、秋田委員、内田委員、清原委員、萩原委員の順でお願いいたします。では、秋田委員、どうぞ。
【秋田委員】  ありがとうございます。学習院大学の秋田です。
 この多面的で目配りの利いた中間報告をありがとうございます。特に、知の総和の維持と向上ということをビジョンとして掲げ、それを量と質とアクセスという3つの側面から構造的に議論をしていただいたことで、大変分かりやすい構造になっていると私自身は見ました。
 その中でやはり規模の適正化ということは必要だと思いますけれども、先ほどの渡辺委員の意見に私は賛成でありまして、子供の視点、高等教育を受ける人間がキャリア、高等教育を受けることによって得られる資質能力というものが、自己実現や、それが社会へのそれぞれの貢献に役立っていくという目線が必要ではないかと思います。
 特にここで年代を超え、また、分野を超えて今後の大学教育、高等教育の在り方を議論していただいたことは大変ありがたいのです。けれども、例えば障害者でも心身に障害がある人を大学や高等教育機関が受け入れたいと思っても、実はいろいろな経費がかかるということの問題に、実際に大学教員として働いていて直面します。そうしたところについての手厚い施策ということも今後必要だろうと思いますし、やはりこども家庭庁では、子供を18歳で切っておりません。障害福祉や健康というような視点から18歳以上においても様々な支援が必要だということからでございます。
 正にヤングケアラーであったり、様々なやはり格差の中の大学生がいるというところでのその学生の目線から、彼らがなぜ高等教育をやっぱり受けたいと思い、どういうふうな自己実現を保障できるのかという視点が、1点目として重要ではないかと思います。
 また、2点目ですけれども、質について様々なことを、改革を書いてくださったのはありがたいのですけれども、実は一番のネックは、高等教育を担う教員は教師の資格というものを持たずに教壇に立っている集団であります。結局いろいろな学部や組織や分野の改定を行っても、高等教育の質の最前線である、そこの教育を変えるためのFDであったり、プロジェクト型だったり、その在り方という意識を皆が変えていかない限り、高等教育は変わらないと思います。
 学習時間が短いということについても、結局は講義を担うそれぞれの、教育研究を担う教員の質をどう上げていくのかという、しかも資格がないので現職の大学の中でのFDであったり、そうしたものが非常に重要になってくると思います。それぞれの専門分野による内容の違いはあると思うのですけれども、ここを言わないというのは例えば学校教育の改革で、学校の在り方と制度だけを議論して、教師のことは一言も議論をしていないのと同じことがここでも行われています。
 しかし、本当にこれからの高等教育を考えたときには、高等教育を担う教員がどうあったらいいのかということを考えるべきだと思っています。そして、高等教育の教員は探究の専門家だと思っています。その意味で単純な受験の高大接続連携ではなく、ここに提案された小中高と探究を専門とする大学の教員や専門学校の先生が協働するという在り方は、大変に素晴らしくこれからの知の総和の質を上げていくという意味でも、大きな意味のある視点を出していただいたのではないかと思います。
 ただし、研究費の配分等でこれまで集中的、選択的に研究大学院に配分をするということをしてきました。私もその恩恵を頂いてきたわけなのですけれども、しかしながら、全ての高等教育の教員は、探究や研究と教育の両輪を回すことによって知の活性化をしています。
 そういう意味では、個人的な配分をやはり手厚くしていくという考え方も重要なのではないだろうかと考えます。特定の大学に大きなファンドも国際競争力のためには必要です。しかし、国際競争だけではなく知の国民の総和を全ての人たちが探究するような資質をそろえていくということを考えたときには、様々な大学の中の教員が、そうした研究と教育ができるような保証の在り方を今後考えていく必要があるのではないかと考えました。現在、中間段階だと伺いましたので、何らかの視点を入れていただけたらありがたいと思います。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、先ほど萩原委員まで申しましたが、その後、橋本委員、村田委員、後藤委員の順でお願いいたします。
 では、内田委員、お願いいたします。
【内田(隆)委員】  ありがとうございます。生徒を大学生として送り出す立場として3点申し上げたいと思います。
 生徒は様々大学を受験する際に、様々な分野に興味を持って進学をしてまいります。そういった様々な志向に応えるべく、高度応用研究だけでなく基礎研究も含めて高等教育機関、特に大学の連携を進めていただければと思っています。例えば共同研究や人事交流を活性化することによって、資金の共有などが考えられるのではないかなというふうに思っている次第です。また、ここのところ世界的に大学院シフトがなされておりますけれども、もちろん高度な人材を育成するためには大学院は大切であることは間違いないのですが、学部、学士の段階で早期教育、大学院レベルの学びもできるような取組というのも一方では必要ではないかなと思っている次第です。
 さらには教員養成のところでは、なかなか学校運営の資金の部分も非常に厳しい部分があるかと思います。各自治体と連携した教員養成系等も含めた財政支援を構築していただければと思っております。3点申し上げました。よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。清原です。
 このたびの「中間まとめ」をまとめるまでの間、永田特別部会長をはじめとする委員の皆様が集中的に、熱心な審議していただいたことにまず敬意を表します。
 今回の「中間まとめ」の意義と、それから今後への期待について、それぞれ申し上げたいと思います。まず、この「中間まとめ」のとりまとめの過程ですけれども、私は幸いにも5月31日に開催されました特別部会に生涯学習分科会長として、今期の審議の取りまとめについて報告する機会を頂きました。すなわち、「生涯学び続ける社会の実現及びすべての人のウェルビーイングを目指したリカレント教育」についてと、もう一つ、「地域コミュニティを支える社会教育人材の在り方」ということを中心に議論していますということで、高等教育と関連づけながら報告をさせていただきました。
 その際、質疑応答や意見交換のときに感じましたのは、主として、「少子化に代表される社会及び地域社会の課題等を踏まえた高等教育の在り方」について、皆様は、「高等教育そのものに内在する課題」を議論されるだけではなくて、常に「社会や地域社会との関係の中で高等教育の機能や課題」について検討されているということを痛感したのです。そのことは、今日御紹介いただきました資料2の2ページ目に集約されております「今後の高等教育の目指すべき姿」に一つの表れがあります。
 すなわち、我が国の「知の総和」の維持・向上の次に、目的において「質」と「規模」と「アクセス」の観点に分けられていて、その後に重視すべき点について8項目並んでいまして、一般的には8項目が並びますと、「高等教育の内なる課題」だけが重視されるのかなと思いますと、8の項目なのですが、「高等教育機関を取り巻く組織・環境との接続の強化、すなわち初等中等教育との接続の強化、社会との接続及び連携の強化、地域との連携の推進」というふうに、その内なる高等教育の課題発見、課題解決だけではなく、それをとりまく環境と関係が明記されている点です。
 具体的には、資料の3ページに(3)の「高等教育へのアクセス」とありまして、これは「高等教育に全ての人が望めばアクセスしやすいような観点からの論点」だけが書かれているのかなと思いましたら、提案の中に、「地域の高等教育機関や地方公共団体、産業界などの各地域の関係者が、地域の人材育成の在り方について議論を行う場の構築」とありまして、要するに「開かれた高等教育」、つまり「高等教育の課題を高等教育の中だけで考えるのではなくて、自治体や産業界などと連携をして議論をする場が必要である」と指摘されています。
 あるいは2番目には、「各高等教育機関や地域において検討を促すための仕組みの整備」とあり、キーワードとして「コーディネーターとなる人材の育成・配置、地方公共団体における高等教育振興担当部署の整備」云々とあります。すなわち、「高等教育の持続可能性」を考えるときには、「高等教育の内なる改革、ガバナンス」の必要性はもっともなのですけれども、「社会や地域に開かれた改革を」という議論の方向性が中間まとめで明示されているということを大切な意義として受け止めました。
 次に、だからこその期待を申し上げます。生涯学習分科会では、先ほど申し上げましたように、「生涯学び続ける社会の実現及びすべての人のウェルビーイングを目指したリカレント教育」ということを挙げているのですが、「リカレント教育」については、背景については明示されているのですが、まだ「中間まとめ」の段階では、その具体策については今後の検討課題になっているようです。
 そこで御提案なのですが、先ほど、秋田委員の御発言を聞いていて触発されたのですけれども、3ページの3の「今後の高等教育政策の方向性と具体的方策の質のさらなる高度化」の2なのです。「外国人留学生や社会人をはじめとした多様な学生の受入れ促進」の中に、もちろん「社会人の受入れ促進」もあるし、「障害のある学生への支援」とか「産業界、地方公共団体との組織レベルでの連携促進」がありますし、「通信教育」であるとか「キャンパスのダイバーシティ」が重要であり、ここが実は「高等教育の持続可能性」の中のキーになるのではないかと考えます。
 すなわち、「大学、高等教育で学ぶ人の多様化」をいかに果たしていくかということを本気で高等教育内部だけではなくて、秋田先生が言われたように、例えば高校生とか中学生の声を可能なら特別部会で聞いていただくとか、とにかく当事者として、今後高等教育に学ぼうとしている人、あるいは企業の方に御協力いただいて、リカレント教育で成功した方、失敗した方、両方の例を聞いていただくとか、何らかのアンケート調査でもいいのですが、当事者として高等教育に多様な関わり方をしている人に、今後、「中間まとめ」の整理を受けて、生の声を聞いていただくような機会があるとよいと思います。今まさに「中間まとめ」の方向性は「内なる改革」を考えるだけではなくて、「社会全体、地域全体で高等教育の持続可能性」をあるいは「社会貢献」について考えていこうという方向性が明示されましたので、それにもっともっと高等教育当事者以外の人を巻き込んで議論をする機会があると、より具体的に政策等が提案されていくのではないかなと考えました。
 以上です。いずれにしましても、今後の審議が本当に楽しみと思いながら、「中間まとめ」を聞かせていただきました。ありがとうございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、萩原委員、お願いいたします。
【萩原委員】  中間報告、ありがとうございました。
 私の方からは、国立女性教育会館という理事長の立場から言って、まず資料2-2の(2)近年の高等教育を取り巻く変化の中で、2、進学率における地域間格差のところに、大学進学率の男女差や高等教育進学率における、都道府県格差というふうに並列になっているのですが、これは別物だと思っております。できればこの大学進学率の男女格差というのは、やっぱり別建てしていただきたいなと思っております。それは分野別に、専攻分野による格差のところにもつながってきます。
 それはどういうことかというとこれは小学校、中学校、高校のところにも関わってくることなのですが、やはりアンコンシャス・バイアス、いわゆる無意識の偏見、思い込みがあって、女子生徒はやっぱり理工系ではなくて文系とか、そういったことを学校の先生も、国立女性教育会館の調査によりますと学校の先生もお持ちだし、それから両親、そして祖父母、関係する家族もやはりそういったバイアスが非常に根強いというところもありますので、そういったところから先生方の質のところでは、そういったバイアスを取り除くというところが非常に重要になってくるかなと思いますので、できることならば、これは小さい頃からの教育のところに関わってくるところでありますし、これは別建てしていただけると大変ありがたい。
 結果として今、企業の方も理工系出身の女子学生を採用したいと思っても非常に少ないというところから、企業の方が逆に、ある某企業では公益財団法人つくって、女子生徒たちのそういった理工系の進学率をサポートするような動きも出てきておりますし、国立女性教育会館もそこと連携するというふうなことも出ておりますので、是非ここのところはしていただきたい。
 もう2点、やはり私も秋田先生の御意見に非常に触発されました。元大学の教員とすると、最後はすいません、隣に元上司もいらっしゃるのですけれども、学内行政に携われば携わるほど研究はまずできない。多分、貞広先生も今そうなっているのじゃないかと思いますが、研究したくても研究できない、科研費を取りたくても科研費を取っても調査できないというような状況の中で、教員の質をどう、自分自身のエンパワーメントをどうするのかということを大きな課題になっていますので、先ほど初中の方では働き方改革のことが言われていますけれども、大学の教員の働き方についてもしっかりと議論する必要があるのではないかなと思っております。
 それから、最後に私も社会人入学というか一度社会に出てからもう一度学び直した人間でございますので、この社会人教育というのは非常に重要だというふうに思っておりますので、その辺りを更にしっかりと議論をしていただければなと思っております。
 以上です。どうもありがとうございました。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。それでは、橋本委員、お願いいたします。
【橋本副会長】  橋本です。中間まとめ、大変御苦労さまでございました。
 私も大学分科会の一員ですので、今後議論に参加させていただくことになりますが、最終まとめへ向け2点ほど申し上げたいと思います。
 まず1点目は、25ページ以降の「新たな時代に対応した教育内容の改善」において、文理融合教育とかリベラル・アーツ教育、データサイエンス・AI教育など取り上げていただいておりまして、これは我々経済界、経団連の提言でもこれまで主張してきたことでございますので、今回のまとめは経済界、産業界と軌を一にしたものというふうに考えております。
 この中で文理融合教育について申し上げますと、すでに初等中等教育において一生懸命取り組んではいるものの、まだまだ「やる意味が分からない」という印象を抱いている生徒が4割ぐらいいるというアンケート結果があるということも聞きました。その原因の一つとしては、やはり文理別を前提とした入学者選抜がまだ多くの大学に根強く残っていることがあると考えます。39ページの具体的方策で、「初等中等教育段階での学びの変化や多様な学生に対応できる、多面的・総合的な入試の推進」というのを挙げていただいておりまして、是非今後、大学における文理横断・文理融合教育の実践とともに、入学者選抜においても、高校での総合的な知の探求活動を評価するといった総合型選抜の在り方の検討なども是非推進していただきたいなと思います。
 それからリカレント教育についても、たくさん内容を割いていただいていまして、ありがとうございます。これは大学側、それから企業側双方ともやらなければいけないことがございまして、一つは、この社会のニーズに適したリカレント教育プログラムを大学の方で開発、実践いただくということですが、学ぶ人が仕事あるいは育児などで忙しい社会人ですので、そういう人たちが学びやすく取り組みやすいように、学位取得よりも細分化された単位での学修を可能として、学修によって獲得したスキルや知識を認証する、いわゆるマイクロクレデンシャル制度といったものも、更に整備をいただければと思います。
 それから企業側としては、やはり従業員の自律的な学びというのを推進していかなければいけないのですけれども、なかなか仕事との兼ね合いもあり、まだ不十分だと思います。経済的支援あるいは休暇休業制度の導入、それから何よりも学びの成果をその後の仕事における処遇や報酬と連動していくような仕組みを一般化し、普遍化していく、そして学びたい人のモチベーションの向上に寄与していくという工夫も、今後我々企業の課題として考えております。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、村田委員、お願いいたします。
【村田委員】  ありがとうございます。中間まとめ、非常に要点がよくまとまって、論点がはっきりしているなというふうに本当に思ってございます。その上で、中間取りまとめですので、今後について少しお願いをしたいなということに関して、御意見を3点お話ししたいと思っています。
 まず、アクセス、サイズ、それからクオリティとこの3つがあるのですけれども、特に恐らくアクセスとサイズが二律背反の一番大きなところだと思うのです。ここで問題になっているのははっきりとは書かれてはいませんが、念頭にあるのは私立大学、それも首都圏、大都市圏でない私立大学をどうするかということが基本的な話題になっているかというふうに思います。冒頭説明がございました現在110万人から82万人に18歳人口が下がると、74.5%になるわけです。そうしますと今ちょうど2024年で、ほぼ全入時代、過年度生と現役生を合わせた大学志願者数と大学の定員がちょうど一致するような形になっています。これでさらに74%、75%に下がるということは明らかに供給超過になります。マーケットメカニズムに任せて私立大学は自然淘汰という考え方も一つだと思うのですが、一方で、大学は国公立大学と私立がありまして、国公立大学はマーケットメカニズムではないわけです。そうしますと、ここはやはり政策的にある意味、極端な例を言いますが、全ての大学が一律75%へのダウンサイジングということも、極端な例としてはあり得ると思うのです。
 何を申し上げたいかと言いますと、少し政策的に今後どうしていくのかということを具体的に考えていただきたい。その中に当然、アクセスの問題、奨学金の方の問題はほぼ今後解決していくと思いますので、学生が学びたいという科目あるいは学部についてのアクセスについての問題は残ろうかと思いますので、この点を具体的にお考えいただければありがたいなと。
 それから次に、質(クオリティ)の問題ですが、先ほど来、幾つか御意見が出ておりますけれども、一つは恐らくこの場合の質というのは、学習成果の可視化が問題だと思うのですが、中間まとめにも出ていますが、やはりそこは学習時間をどう増やすかという問題だと思うのです。ダウンサイジング云々という問題と教育の質の問題はある意味、関連はあるのですけれども、ここでは少し分けて議論をしていただいた方がいいのではないかなと思ってございます。
 特に学習時間をどう増やすかということ、これは極めて重要な問題だと思います。そこが教育の質の一番大きな肝になっているのではないかと。
 その上で、文理融合につきましては、先ほど何人かの方がおっしゃっていましたように、入試のところの問題と直結していると思います。特に日本の場合、25%程度しか高校で理系を選択していません。そこの原因は何かと言うと入試の問題です。それでは、入試のところをどうするかということが、あるいはもっと言えば中等後期教育のところでの文理の分断につながって、そのことが大きな問題になっています。
 実は先ほど少し橋本委員からもありましたように、経団連が「博士人材」というレポートを出しました。その中で、先端技術立国と無形資産立国がうたわれています。これ実はイノベーションが起こり得る条件なのですが、そのイノベーションが起こるかどうかという大前提には、研究者の比率が重要になります。R&D研究者の比率が労働力にどれだけ占めているかというのがすごく効いて、日本は今のところトップクラスにあります。
 しかしながら、博士の大学院生、修士の大学院生が減りつつありますので、これが今後心配になってきている。こういうことがあろうかと思いますので、是非このところは理系の人材をどうするかということを含めて、高大接続のところ、入試のところを考えてより具体的に考えていただきたい。
 特にAIのところで言いますと、情報の科目が高校で既に必修化して、情報が今度入試でいわゆる共通テストで導入をされます。多くの大学では、情報の科目を言わば入試で作問する先生がいません。そこはやはり共通テストを利用するということ、ここへ道を開いていただかないと、逆にAIを使える人材が育っていかない。特にボリュームゾーンである私立大学での学生のAIを使う人間が育っていかない、ここは喫緊の課題だというふうに考えております。
 それからもう1点、最後にAIの話のついでにですが、恐らく教育の質の一番大きなところでは、ここにもありますように、言ってみればコンピテンシーレベルの能力をつけていくことが重要という意味では、PBL(Problem Based Learning)どうしていくか。そこには、先ほど言いましたように、大学教員の意識改革、が必要ではないでしょうか。自分の研究をそのまま教えると言うのは、これはもはや時代遅れもいいところで、もうそんなものはAIだとか、あるいはグーグルをやればすぐ出てくるわけで、いかに学ぶ学び方、あるいは実践をしていく、そこのProblem Based Learningを教える教員をどうつくっていくか、ここは教員の意識改革につながるかと思いますので、その辺りより具体的に検討していただきたいなと思ってお願いをする次第でございます。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、後藤委員、お願いいたします。
【後藤委員】  中間まとめありがとうございます。2点述べさせていただきます。
 1点目は大学院教育についてでございます。急速な少子化の中で、初等中等教育との連続性、それから社会との接続性を考えまして、高等教育の本質や果たす役割を今正に真に問う時期が来ていると思います。単線型学校教育と終身雇用からの脱却、学ぶ時期や進路の複線化への対応の一つとして、大学院が社会人教育の中心となり、働く質の向上に貢献すると期待しております。進学率の推移や専門性の深化から考えましても、高等教育と呼ぶにふさわしい学びの質を提供できるのは、学士段階から大学院教育に移行しているように思います。大学院教育について更に突っ込んだ議論が必要と考えております。
 2点目は、高等教育の社会的役割についてでございます。高等教育機関は、知的創造活動の中核で、教育、研究にとどまらず社会の様々な機関と地域連携や産官学連携などにより、地域の中核となるべき役割をもち、地域の大学の衰退は地域の人々の生活そのものに影響します。その高等教育機関の役割分担を設置者や機関別のみで規定するのはやはり困難だと思います。特色、強み、ミッション、育成する人材像は高等教育機関で千差万別で、学校の規模や特色等を考慮しない議論にならないようにしていきたいと思います。
 さらに重要な観点であります連携の在り方につきましても、更に突っ込んだ議論をお願いいたします。文科大臣の諮問でも設置者の枠を超えた高等教育機関の連携、再編、統合の議論は避けることができない状況であると述べられております。答申案の作成に向けまして、さらなる審議をお願いいたします。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。それでは、熊平委員、お願いいたします。
 今のところ熊平委員までが手を挙げていらっしゃる状態です。ほかの方で御発言がありましたら、手を挙げていただくようにお願いいたします。
 では、熊平委員、お願いいたします。
【熊平委員】  ありがとうございます。また中間報告、とても整理されていて、課題がクリアになっているなと思っております。その上で、少しこういう視点も今後加えてみてはどうかという観点から、3点申し上げさせていただきたいと思います。
 1つ目は、後藤先生もおっしゃられたことと大変共通しているのですけれども、まず、入学者の視点で考えてはどうかということであります。実際、単線キャリアが終わっているという話ですけれども、現在は3年以内に転職する人が37%になっているというお話も伺っておりますので、もう学んで卒業して就職して、そして一生、一か所で働き続けてに対するというキャリアはなくなったということになります。もちろんリスキリングとかいろいろな環境の変化に合わせて学ばなければならないという要請もございますけれども、やはり人間、学び続けることがこれまで以上に大事になってきているという中での大学は、高校卒業してから4年間、お世話になるだけのところでは全くなく、生涯にわたって自分の人生を豊かにするために役立つ場所であるということになっていくのだろうと思います。
 また一方で、学位が意味を持たない時代になってきているというのも事実です。学位があれば就職できて、学位があれば幸せに生きられるということがある程度見通しとしてあった時代とはまた違って、本当の意味での実力をつけていくということも問われているので、そういう中での大学の在り方というのも考える必要があるのではないかと思います。
 それにも少し関連していると思うのですけれども、やはり全入時代になってまいりまして、AO入試も増えております。そういう中で、やはり卒業の資格をどうするのかということについての議論が、ずっと置き去りになってきたといいますか、あまり議論されていなかった。入学で厳しく見て、卒業はある程度のところでよしとするというような風潮があったかなと思いますけれど、海外ですと卒業が難しい大学ほど人気があるというところが、日本の親がそういう考え方が持てるかという、また別な課題もあるのですけれども、しかし、やはり学びの質をどう保証していくのかということについて向き合うということが、必要な時期が来ているのではないかなと思うところでございます。
 それから3番目ですけれども、私も知の総和という言葉が本当に、この目的として大変ありがたい言葉だなと思っております。その知の総和も恐らく社会実装につながっていくということになると思うのですけれども、そこで私が思いますには、やはり今時代の変化というのは大変大きく、また、特に前例を踏襲しない社会に社会を移行させていくという、トランスフォーメーションという言葉が正しいのかもしれませんが、そういうシフトというのが日本だけではなく地球全体で、あるいは人類全体で進んでいくというような、そういう時期に来ていると思うのです。
 この時期のこのトランスフォーメーションは、企業では、企業がリードすることは限界があると思います。そういう中では高等教育はもちろんですけれども、高度な専門性を持ち、本質的な研究が進められ、そして、その専門性も一つではなくて全てがそろっているというこの多面的、多角的な専門性を有しているということが、何よりもこの社会を変化させていくことをリードする、その力になっていくのではないかと思います。
 ですので、そういうことのために、高等教育が果たす役割があるということも、全面的に今回の答申の中に入っていくといいなと思っております。そのためにはやはり専門性も更に高度化していくわけですから、そこにしっかりとそこをリードしていただきたいですし、新領域に関しても積極的にチャレンジしていただきたいですし、文理横断も当然ながら問題を解決する際に不可欠なりますので、そういったものも必要になってくると思いますので、いろいろな言葉で既に出ていることではあるのですけれども、何のためにそれが本当に必要なのか。高等教育の役割は今後どうなっていくのかというところに対して、しっかりと世の中にも打ち出せるような内容だったらよいなと思います。
 最後にそういうことをするためにも、やはり教員の役割ということに対して少し見直しをかけていかないとあれもこれもという本当に初等中等教育の話と似たような話になってしまっては本当に残念なことになりますので、そこも併せて検討領域として提案が入るといいのではないかと思いました。
 私からは以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、今、手を挙げていただいていますのが、清原委員と安孫子委員です。本日はこの御発言、安孫子委員までとさせていただきたいと思います。
 その後の時間どれだけ残るか分からないのですけれども、もしも今、非常にたくさんの御意見が出ましたので、何かございましたら永田先生、あるいは伊藤局長から御発言いただければと思います。それでは、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。清原です。2度目の発言,失礼いたします。皆様の御意見に触発されて1点だけ申し上げます。
 それは、3ページの(2)の高等教育全体の「規模」の適正化について、ちょっと私自身の経験から発言したいと思います。私は、大学分科会の中の法科大学院等特別委員会の委員を務めさせていただいています。法科大学院は大変特徴のある大学院ではございますが、この間、多くの撤退の事例も踏まえつつ、法科大学院の皆様が連携・協働を強めてきているということ、また、法科大学院が設置されている関係のある大学の法学部以外の他の地域の大学の法学部とも協定を交わして、「法曹コース」を設置し、法科大学院への進学を促しているということです。
 そこで、ようやくこの頃、進学者数に増加傾向が見られるということなどがありまして、「再編・統合」、「縮小・撤退」という厳しい言葉を「中間まとめ」には書いていただいているのですが、いや応なくそういう課題に直面することがあるかもしれませんが、法科大学院の取組などが事例となって、「大学院間の連携」であるとか、「他の大学の学部と大学院との連携」であるとか、いろいろな可能性があるということも視野に入れながら、できる限り前向きに、課題は深刻ではありますが、御審議を継続していただけるとありがたいと思います。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。では、安孫子委員、お願いいたします。
【安孫子委員】  ありがとうございます。資料2-2の3、教育研究の質の高度化について、意見を申し上げます。この質とは何を目指すのかというところをさらに明確に言語化することを期待しています。私たち企業は、大学を卒業した大勢の若者を毎年1,000人規模で採用しますが、彼らのほとんどがこの高等教育の中で研究した内容というよりも、高等教育を通して育んだ能力を、仕事を通して大いに発揮できる人が活躍しているという現実があります。その能力というのが、先ほど橋本委員も触れておられましたけれども、資料2-1の25ページにありますSociety5.0、この能力そのものです。
 では、この能力を大学でどう体験的に学んでいるのか。また、高大接続の中で、この学びのパスが描かれているのか、それが私どもとしては見えません。さらに26ページにあるリベラル・アーツについても昨今の若者を通して不足を感じている次第ですので、この辺も含めてやはりどんな質を目指すのか、ここについての言及を更に求めていただきたいと思っています。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。それでは、委員の皆様からの頂きました、たくさんの御意見ございました。それにつきまして、永田先生から御発言を頂きたいと思います。お願いいたします。
【永田副会長】  たくさんの御意見、本当にありがとうございます。気づかされたこと、またもっと深く考えるポイントもいろいろと分かりましたが、今申し上げたいのは、地域は我が国の全体の先導モデルになっているということであるということです。というのは、2040年になると東京にある大学も定員割れをすることになっています。それが少し早く来るのは地域なのですが、マスで考えていただくととにかくいなくなってしまうという条件の中でも何とかこの国を支えるということが前提です。地方別にシミュレーションしていて、進学率を今よりも10%以上上げても、あるところから劇的に回復しないという状況になっていて、東京も2040年に定員充足率が90%代になります。つまり、日本中から東京に流動する人を入れてもシミュレーション上はそうなります。その段階を何とかしなければいけないという考え方で進めているということです。
 そのときにマスで、個人個人の能力を上げるというのはもちろんそのとおりであり、教員も変わらなければいけないし、カリキュラムも変わらなければいけないと思うのですが、マスを上げていくとすると、社会人という大きなマスを上げること、それから、今の大学あるいは学士課程のみならず大学院課程も含めて変えていくということで、個別の教育の強化というのは当然あると思います。
 それが質のところにあるのですが、もっと考えるとそれでも必要な人は足りません。例えば、実は東京地方大学という言い方すら生まれてきていて、東京の大学も東京地方の大学というぐらい臨場感があって、人が減っています。そうすると都庁も地域であれば県庁も、市役所も人がいなくなってしまうのです。
 そこで働けるグレードの方が減るのはもう目に見えていて、これを何とかしなければいけないと思うと、相当考えてないといけないと分かっていただけるのではないかと思います。ですから、教員の質も上げなければいけません。それから入試も変えて、文理横断に問題のない形として小中高大大学院が接続していくようにしなければいけません。それをマスで変えなければいけないということになります。今日頂いたご意見はとても参考になるものがたくさんあると思います。是非ともより皆さんの意見に応えられるような形にしたいと思います。特別部会で地方大学のある先生のヒアリングをしたのです。これがもう強烈でして、何を行っても絶対に無理であるという資料が出てきたときに、きれいごとを言っている段階ではなくて、それが東京にも僅か、十数年で訪れるということで、東京も地方であるということに気づいてきました。本当に我が国を救うためにやらないといけないということなので、頂いた意見をうまく反映できるように活用しながら、もっとレベルの高い、また、具体策に満ちた答申を最終版にしたいと思っています。ありがとうございました。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。伊藤局長、よろしいですか。
【伊藤高等教育局長】  はい。
【荒瀬会長】  ありがとうございます。
 今頂きました御意見も踏まえ、最終的に特別部会長の永田先生の方でまとめていただきたいと思います。状況は決して楽観できないところではありますけれども、その中でいかに光を見つけていくかという大変な取組であると思います。是非、今後の御議論を、御期待申し上げたいと思います。
 それでは、以上で本日の会議は終了したいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
 ありがとうございました。では、これで終了いたします。ありがとうございました。
 
 

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