中央教育審議会(第136回) 議事録

1.日時

令和5年5月22日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧庁舎6階) ※WEB会議

3.議題

  1. 「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(諮問)
  2. 教育未来創造会議第二次提言について
  3. G7富山・金沢教育大臣会合について

4.出席者

委員

荒瀬会長、永田副会長、橋本副会長、安孫子委員、石崎委員、内田委員、大字委員、金田委員、清原委員、後藤委員、貞廣委員、清水委員、奈須委員、萩原委員、浜委員、平井委員、古沢委員、堀田委員、湊委員、吉岡委員、渡辺委員

文部科学省

永岡文部科学大臣、簗文部科学副大臣、柳事務次官、伯井文部科学審議官、藤江総合教育政策局長、藤原初等中等教育局長、里見大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、森友総合教育政策局政策課長 他

5.議事録

【荒瀬会長】  それでは,ただいまから中央教育審議会総会を開催いたします。本日は御多忙の中御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 本会議は,前回同様ウェブ会議方式と対面を併用しての開催とさせていただきます。
 また,本日は,永岡大臣,簗副大臣に御出席いただいております。大臣,副大臣,どうもありがとうございます。
 それでは,まず,本日の会議開催方式及び配付資料につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。
【森友総合教育政策局政策課長】  本日もウェブ会議での会議開催とさせていただき,傍聴につきましては,ユーチューブにて配信をしておりますので,御承知おきください。
 各議題の質疑,意見交換の際,御意見がございます場合には,会場でご参加の委員の皆様,ウェブでご参加の委員の皆様ともに挙手ボタンを押してお知らせください。御発言は会長の御指名の後にお願いいたします。会場で参加の委員の皆様には,会長から御指名があった後,事務局がマイクをお持ちいたしますので,机上の端末に,お顔を映していただきながら御発言をお願いいたします。
 本日の資料は議事次第にございますとおり,資料1-1から資料3まで,そして,参考資料として,1-1,1-2を配付しております。
 御不明な点等ございましたら,事務局までお申しつけください。
 最後に,本日の御出席につきまして,全体29名の委員のうち,14名がウェブ参加,9名が会場参加いただいております。合計23名の委員の皆様に御出席を頂いておりますことを御報告申し上げます。なお,本日途中退出途中参加予定の委員の方々もおられますので,御承知おきください。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 それでは,本日の議事について御説明いたします。議題は3つありまして,議題の1として,「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(諮問)」,議題の2といたしまして,「教育未来創造会議第2次提言につきまして」,議題の3といたしまして,「G7富山・金沢教育大臣会合について」ということであります。
 それでは,まず,議題の1に入りたいと思います。令和日本型学校教育を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について,永岡大臣から諮問がございます。
 では,まず,プレスの方を御案内したいと思います。よろしくお願いします。
(報道関係者入室)
【荒瀬会長】  それでは,大臣,諮問理由の御説明,よろしくお願いいたします。
【永岡大臣】  皆様,こんにちは。文部科学大臣の永岡桂子でございます。
 委員の皆様方におかれましては,御多忙のところ,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。
 本日,諮問をいたします,「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策につきまして,その要点を御説明申し上げたいと思います。
 明治5年に学制が発布されましてから150年が経過をした中,質の高い教師の存在は,常に我が国の学校教育の中核であり続けている一方,少子化の進行や子供の抱える困難の多様化,複雑化,GIGAスクール構想によります1人1台端末の実現など,学校を取り巻く環境が大きく変化をしております。
 そうした中で,全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図る「令和の日本型学校教育」の実現により,教育の質を向上させることが求められているところでございます。
 これを直接担うことになります教師につきまして,文部科学省では,これまで学校における働き方改革を最重要施策の1つとして取り組んできたところでございます。その結果,先月に公表した令和4年度実施の勤務実態調査の速報値におきましては,教師の時間外在校等時間の状況が一定程度,改善したことが明らかになりました。一方で,依然として長時間勤務の教師が多い実態があります。全国的に教師不足が指摘されていることも憂慮すべき状況でございます。
 学校教育の成否を左右する教師に,やはり質の高い人材を確保することは必要でございまして,抜本的に教職の魅力を向上させることが喫緊の課題でございます。そのためには,働き方改革の加速化,教師の処遇改善,そして学校の指導運営体制の充実を一体的,総合的に進めることが不可欠と思っております。こうした取組を進めることによりまして,質の高い有為な人材が教師を目指して,教師が 志気高く,誇りを持って働くことができる社会となることが求められているわけでございます。
 このため,「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について,先日,取りまとめいただきました,調査研究会における論点整理等も踏まえ,次の事項を中心に御審議をお願いしたいと考えております。
 第1に,教師の勤務制度を含めました,さらなる学校における働き方改革の在り方についてです。第2に,教師の処遇改善の在り方についてでございます。第3に,学校の指導・運営体制の充実の在り方についてでございます。
 以上が,中心的に御審議をお願いしたい事項でございますが,これらに関連する事項を含めまして,「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備について,幅広く御検討いただくようにお願い申し上げます。
 なお,これらの課題は,広範多岐にわたることから,審議の状況に応じまして,施策を迅速かつ着実に実施していただくために,逐次,取りまとめていただくことも御検討いただきますように本日はお願いしたいと,そう考えている次第でございます。
 そして,後ほど国際統括官から報告があると思いますが,先般行われましたG7の教育大臣会合におきまして,日本の教師不足,教師の働き方改革,大変議論になりました。今日,委員の皆様方に御審議をお願いするところではございますが, G7の,それぞれの大臣から,やはり自分の国でも学校の先生の成り手がいないのだと。また,学校の先生の仕事の在り方が長時間にわたって大変で,丸つけが厳しいのだよねという話,それから,学校の先生,これからIT教育もしなければいけないので,その人材確保という点も大きな問題だということが本当に議論になったこと,委員の皆様方にも御報告申し上げます。
 以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【荒瀬会長】  大臣,ありがとうございました。
 それでは,諮問文を頂戴したいと思います。
(諮問文手交)
【荒瀬会長】  それでは,プレスの皆さんはここで御退室をお願いいたします。お疲れさまでした。
(報道関係者退室)
【荒瀬会長】  では,御公務の関係で,大臣と副大臣もここで御退室されます。永岡大臣,簗副大臣,ありがとうございました。
【永岡大臣】  どうぞよろしくお願いいたします。お世話になります。失礼いたします。
(永岡大臣,簗副大臣退室)
【荒瀬会長】  それでは,事務局から,諮問に関する御説明を頂きたいと思います。
【藤原初等中等教育局長】  それでは失礼いたします。初中局長の藤原でございます。
 ただいま大臣から諮問をさせていただいたところでございますけれども,その諮問に至る経緯,また現状,こういったことにつきまして,補足説明をさせていただきたいと存じます。
 最初に,資料の1-3を御覧いただきたいと存じます。1-3の3ページをお開きください。学校における働き方改革に関するこれまでの経緯をまとめたものでございます。平成29年に,前回の勤務実態調査の速報値を公表したわけでございますけれども,その中で教師の厳しい勤務実態が明らかになったことを踏まえ,中央教育審議会において,学校における働き方改革について御議論いただいたところでございます。
 そして,平成31年1月に頂いた答申を踏まえ,令和元年12月に給特法を改正し,教師の勤務時間の上限に関する指針を策定するとともに,国,教育委員会,学校が,それぞれの立場で働き方改革を進めてきたところでございます。
 具体的には,国においては小学校における35人学級の計画的整備や高学年教科担任制の推進等の,教職員定数の改善,教員業務支援員をはじめとする支援スタッフの充実,校務のデジタル化等の,学校DXの推進など,様々な取組を総合的かつ集中的に進めるとともに,各教育委員会や学校においては,勤務時間の客観的な把握の徹底や業務の見直し,削減等の取組を進めていただいているところでございます。
 そして,令和元年の給特法改正時には,3年後に教員勤務実態調査を行うべきである旨の附帯決議がなされたことを受けまして,教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況等を把握するため,令和4年度に勤務実態調査を実施し,先月,その速報値を公表したところでございます。
 資料1-4,こちらがその速報のデータでございます。資料の1-4を御覧いただきたいと存じます。教員勤務実態調査は,前回の給特法改正時に3年後をめどにという附帯決議があったわけでございまして,それを踏まえ,勤務実態や働き方改革の進捗状況等を把握,分析するために行ったものでございます。今回の概要としては,在校等時間は前回の調査,平成28年の調査と比較いたしまして,平日,それから土日ともに全ての職種で減少したものの,依然として長時間勤務の教師が多いと,こういう実態が明らかになったところでございます。今回は,8月と10月,11月のうち,連続する7日間を調査したわけでございます。
 そして,その結果,一般の時期,10月,11月につきましては,教師の1日当たりの在校等時間を見た場合,平日の教諭につきましては,小学校は10時間45分と,前回の11時間15分から約30分の減,中学校は11時間1分,前回の11時間32分から約30分の減となったところでございます。また,一番下,土日でございますけれども,土日の教諭の勤務といたしましては,小学校は36分でございまして,前回の1時間7分から約30分の減,また,中学校は2時間18分でございまして,前回の3時間22分から約1時間の減となったところでございます。特に中学校の教員の減少幅が大きいわけでございますけれども,部活動のガイドライン等を定めてきたことによって,適切な休養日が設定されたことなどの影響があるのではないかと考えられるところでございます。
 また,2ページ目でございます。これは,10月,11月の業務内容のより細かい分析ということでございます。これは1日当たりの業務内容別の在校等時間の集計をしたものでございますけれども,現段階では飽くまで速報値なので,詳細な分析をまだ行っているものでございませんけれども,その数字を個別に見ていただきますと,平日について見れば,主に授業,主担当,朝の業務が小中ともに増加をしたわけでございますけれども,小学校では学習指導の時間の増加というところがございます。朝の業務が増加した理由としては,別の調査項目で把握したコロナ対応時間の内訳のうち,登校時の児童生徒の,健康状態の把握に,小学校で6分,中学校で5分を費やしているということでございますので,こうした対応によって朝の業務の時間が増加したと考えられるところでございます。また,授業や学習指導の増加の理由としては,これまで学校行事に充てていた時間を通常の授業に充てたといったような場合,それから放課後等の補習を行った場合などがあったのではないかと考えられるところでございます。
 その一方で,減少したものとしては,学校行事,これが小中ともに減少したわけでございますけれども,そのほか小学校では成績処理学校経営が,また,中学校では学年学級経営,生徒指導が減少しているわけでございます。学校行事につきましては,コロナ禍ということもあり,行事の精選が図られたということが考えるところでございます。また,成績処理の減少の要因としては,校務支援システム等のICTを活用した業務の効率化というものが影響したことが考えられるところでございます。また,土日では,主に学校行事が小中ともに減少したほか,中学校では部活動,クラブ活動が減少しているということでございます。
 全般として見てみますと,働き方改革の取組等の成果が着実に現れ,教師の在校等時間の合計は減少する一方で,授業などを子供に接する時間が確保されているというふうに,方向としては向かっているということが見てとれるのではないかと思っております。
 続きまして,3ページ,こちらは長期休業中,8月の勤務状況ということでございます。8月の長期休業中の平日20日うち,所定の勤務時間をフルで勤務した日数というのは,小学校で5.6日,中学校で8.4日となっております。また,勤務日に係る在校等時間は10,11月と比べ,短い結果となっております。こうした結果から夏休みは休暇が取得,ある程度,取得できていると,そういう状況であろうかと思います。
 それから,4ページ目でございます。年齢階層別に,今回の在校等時間の変化というものを見てみた場合に,こちら,若い世代が特に減少幅が大きいとなってございます。とりわけ40歳以下の減少幅が大きいわけでございますけれども,30歳以下で見てみますと,小学校が11時間49分から11時間3分へと46分の減,中学校は12時間8分から11時間29分と39分の減ということで,若い世代ほど減少幅が大きいと,こういった状況でございます。
 また,教師の有給休暇取得日数,右側でございますけれども,前回調査と比べて,小中ともに取得日数が増加をしているという状況でございます。それから部活の顧問,こちらが左下でございますけれども,前回調査から減少しているということでございまして,とりわけ週6日,7日練習していたというのが,前回の調査では,これが相当数を占めていたわけでございますけれども,今回,6日以上練習しているというのは右側,黄緑と,それから紫色といった当たりでございまして,非常にこれが小さくなったという……,紫ではないですね,黄緑と深い緑,これがかなり小さい数字になったというような状況があるわけでございます。
 それから,資料の1-6を御覧いただきたいと存じます。こちらは,先般,調査研究会の方で取りまとめていただきました論点整理の資料でございます。4月13日に公表されたものでございます。こちらの方では,有識者や教育委員会,学校関係者により構成される質の高い教師の確保のための,教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会ということで,給特法等の関連する諸制度や学校組織体制などについて,論点を整理していただいたわけでございます。
 1ポツで基本的な考え方を書いておりますけれども,教師の処遇改善や勤務制度,さらなる学校における働き方改革,学校の,指導運営体制の充実の在り方等を一体的,総合的に検討する必要があるという考え方でまとめられておりまして,特に今後,検討すべき論点として,5つの観点から取りまとめ整理をされているわけでございます。
 2ポツが具体的な論点でございますけれども,(1),1点目,教員給与の在り方についてでございます。教職調整額や超勤4項目の在り方,教師の意欲や能力の向上に資する給与のめり張りの強化等について,論点として整理をされておりまして,特に留意が必要な観点といたしまして,教育が特に教師の自発性,創造性に基づく勤務に期待する面が大きいことなどの教師の職務の特殊性,また,教師の職務が,勤務時間の内外に切り分けることができるものなのかどうかといった観点,また,仮に,時間外勤務手当を支給することとした場合に,管理職が時間外勤務として承認することの実務上の可否,いわゆるサブロク協定の締結を要することとなれば,管理職の大きな負担となるといった観点をどのように考えるのか,また,教育の成果は必ずしも勤務時間の長さのみに基づくものではないといった観点などが挙げられているところでございます。
 そして,2点目,2ページ目でございますけれども,教師の勤務制度の在り方についてということでございます。勤務制度を見直すことの必要性や1年単位の,変形労働時間制の運用の見直し,勤務間インターバル制度等への対応,教師に多様な人材を取り込みやすい仕組みの在り方などについて,整理がなされているところでございます。
 また,3点目では,さらなる学校の働き方改革の推進についてということで,いわゆる学校,教師が担う業務に係る三分類,これをこれまでお示しをして,取組を進めてきたわけでございますけれども,こうしたものを更にどのように徹底していくのか,また,上限指針の実効性を高める仕組みの在り方や働き方改革の取組状況を見える化していくことが必要ではないかといった,そうした論点について,整理がなされておるところでございます。
 また,(4)では,学級編制や教職員配置の在り方等についてということで,柔軟な学級編制や教職員配置の仕組みに見直していくことや,学習指導の在り方,中学校を含めた学校の望ましい教育環境や指導体制の在り方等について,整理がなされてございます。
 また,最後5点目でございますけれども,支援スタッフ配置の在り方等についてでございます。支援スタッフのさらなる充実や学校の実情に応じて,地方公共団体が柔軟に配置できるようにしつつ,標準的な支援スタッフの配置の考え方を示すこと等が論点として整理をされているところでございます。
 こうしたこれまでの考え方の整理などを踏まえまして,このたび,大臣の諮問という形に至ったわけでございまして,非常に広範かつ重い課題でございますけれども,どうぞ何とぞ御審議のほど,よろしくお願いを申し上げます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。大臣から諮問の理由の御説明,そして,ただいま藤原初等中等教育局長から,具体の中身を踏まえた御説明を頂きました。
 では,ただいまから委員の皆様の御意見,御質問を頂きたいと思います。御発言の方は挙手ボタンを押していただくということで,よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。では,渡辺弘司委員,よろしくお願いいたします。
【渡辺委員】  日本医師会の渡辺弘司です。よろしくお願いいたします。
 今,御説明いただいたことに対して意見を述べさせていただいてよろしいですか。
【荒瀬会長】  お願いいたします。
【渡辺委員】  今,大臣から諮問が3つあって,それに対して,今,藤原局長の方が資料を説明していただいたと思うのですけれども,諮問の1つ目,教師の勤務制度を含めた学校における働き方改革に関しまして,質問と,それから意見,一緒でよろしいですか。
【荒瀬会長】  どうぞ。
【渡辺委員】  資料1-4は非常にすばらしい資料だと思います。どうしても勤務時間外だけという形になると,量の問題だけが議論されがちになるような気がするのですが,質である業務の内容とか負担感の改善というのを併せて協議をする必要があるのではないかと思うわけです。
 つまり,数字が出やすい,勤務時間外の時間を減らすということが必ずしも最終目的ではなくて,教師の負担をどのように軽減するか,結果として,休職率とか精神疾患の罹患(りかん)率をどうやって改善させるかというところが最終的な目標であるべきだろうと思います。
 1-4の資料を,今はまだ途中経過ということでございましたけれども,是非,十分分析していただきまして,その内容によって,どのような支援をし,どのような点を改善するのが効率的であるかというような考え方を是非持っていただいて,前に進めていただきたいと思います。そうしないと,時間だけを考えて,単に時間になるからもう退職しましょうと,自宅に業務を持って帰ってはいけない,ということだけであれば,教師のモチベーションが悪くなるのではないかという気がするわけです。
 大臣諮問の2つ目,教師の,処遇の改善の在り方とおっしゃったと思います。時間外手当を均等に配布するシステムを批判するわけではございませんけれども,教師の魅力は若干下がったと,以前のように人気がなくなって,成り手不足が顕在化した今の段階では,能力給や資料に提示されている自発性や創造性に応じた給与体系が必要となるのではないかと考えます。給与のために仕事をする人がいいわけではないとは思いますけれども,やはり何らかの評価をすることが必要ではないかと考えます。
 大臣諮問の3つ目,学校の指導,運営体制の充実ということに関しまして,資料の1-3の28ページに支援スタッフのリストがたくさんございます。これらが円滑かつ効果的に活用できていれば教師の負担は少なくなっているとは思うのですが,必ずしもうまくいっていない部分もあるのではないかという危惧がございます。例えばスクールカウンセラーに関しまして,不登校や発達障害児の対応に活用しようという御提言があり,そのとおりだと思うのですが,学校医をやっている自分からしますと,知っている限りで言えば,個人情報の関係からチーム学校という形でスクールカウンセラーが余り活用されていないような気がいたします。
 先ほどの時間の分析も含めて,どのように,どの部分に,有効に支援スタッフを配置するかということを検討していただきたい。と同時に,支援スタッフを入れてタスクシフトをするということは責任の所在が不明確になるというリスクがございますので,その点は,併せて御協議を頂きたいと考えております。
 ありがとうございます。以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。諮問の3つの理由に沿った形で,御質問と御指摘を頂きました。量だけでなく質の問題があるということで,負担の軽減ということについてどのように考えるのかということでありますが,分析を是非というお話でありました。この辺りにつきまして,今,事務局の方で何かございましたら。
【藤原初等中等教育局長】  今,頂いた御意見大変重要だと思っております。別途,教師の方々の精神疾患の問題,これは大変重要な問題だと思っておりまして,今年度,更に深めた形での調査研究も実施をすることとしているわけでございますけれども,その際には御指摘ありましたように,時間というファクターだけではなくて,やりがいという観点から,どの部分が一番大事で,重要なポイントなのかといったようなことも十分分析をしていく必要があるのだろうと思っております。そうした中で,全体として質の高い教師の確保をしていくという観点から,どういった制度設計が望ましいのかと検討していく必要があるだろうと思っております。
 あと,分析につきましては,更に課長の方から補足をお願いいたします。
【村尾初等中等教育局財務課長】  財務課長の村尾でございます。分析に関してですけれども,例えば本体資料で1-5というもの,これは勤務実態調査の速報値の,全体版の公表資料ですけれども,この関係で言いますと,31ページ,これは満足度というものを聞いております。また,32ページ,これはやりがいというところを見ておりますけれども,これはこれまで調査をしてきていない部分ですけれども,こういったデータなども分析しながら,最終的な分析結果については,年度末に最終的にまとめていくということで,今,その調査研究会,有識者から成る調査研究会の方で分析を開始しておりますけれども,逐次,必要な分析データについては,中央教育審議会においても提供しながら審議を進めてまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。渡辺委員,よろしいでしょうか。
【渡辺委員】  すみません,詳細に回答いただきありがとうございました。よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。渡辺委員,お名前を読み間違えて大変失礼いたしました。
 では,続いて清原委員,安孫子委員,後藤委員,内田委員の順によろしくお願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。杏林大学客員教授の清原慶子です。
 本日頂きました「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策(諮問)」は,これまでの中教審の検討,答申を踏まえて,正に解決が今,求められている課題を諮問していただいたものと重く受け止めています。
 その上で,今後の検討に際して,留意していければと思う点を4点,申し上げます。1点目は,どうしても「令和の日本型学校教育」を担う教師というところに焦点が当たりますと,教育の,いわゆる供給側の視点というのが重視されるかもしれませんけれども,私は「令和の日本型学校教育」が推進しようとしている「個別最適な学習」,あるいは「協働型学習」というのは,飽くまでも児童生徒が主体的にそれぞれの個性や能力を生かされる,そんな学びの保障につながっていることだと思います。
 実際,教室の児童生徒が多様化し,そして教師も多様化し,保護者も多様化し,地域の実情の多様性も把握されています。そこで,まず,出発点として,誰1人取り残さないという,そうした児童生徒中心の教育を実現していくためにこそ,学校における働き方改革や教師の処遇改善や望ましい学校運営の在り方があるというところを共有できればなと思います。
 2点目に,私は現在,初等中等教育局初度中等教育企画課を事務局とします,「『令和の日本型学校教育』を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議」で,教育委員会の機能強化,活性化のための方策,そして,教育委員会と首長部局との効果的な連携の在り方,また,教育委員会における学校運営の支援のために果たすべき役割,とりわけ小規模自治体への対応,広域行政の推進のための方策などについて検討しています。
 そうした検討の中で,何よりも学校の,教育の質の向上を考えるときには,教師にだけ注目してはならないのであって,事務職であるとか,先ほど御説明があったスクールソーシャルワーカーとかスクールカウンセラーとか,関係の職員が文字通りの意味での「チーム学校」という取組を進めていくことが不可欠になってまいりますし,福祉の視点を入れるならば,市長部局との連携も不可欠です。
 正に,本日の諮問には「総合的な方策」という文言がありまして,「総合」ということを考えていくとき,誠に僭越(せんえつ)でございますが,例えば,文部科学省の所管で言うならば,初等中等教育局の財務課,そして,教育課程課が重要な取組の中心になると思いますが,総合教育政策局の教育人材政策課とか,あるいは官房の文教施設企画防災部など,要するに環境といったときに,是非「オール文部科学省」といいましょうか,局を超えて,「こどもまんなか」,児童生徒中心の総合的な方策について検討していただく体制をつくっていただければ,学校現場,自治体も総合行政として,教師の質の確保に向けて連携ができるのではないかなと思います。
 3点目に,本日有り難いことに,大臣からこういう御提案がありました。「最終的な取りまとめの前に,逐次何らかの取りまとめがあれば,どうぞ具体的な方向性や政策を提案してください」と。実は,私は,平成29年から平成31年まで設置されていた「学校における働き方改革特別部会」の委員を務めさせていただきました。そのときも,実はスタートして間もなく,「緊急提言」ということで,「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導,運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策」という方向に向けて,例えば校長及び教育委員会は学校において,勤務時間を意識した働き方を進めることに始まる緊急提言がなされました。
 そのことが,正に今につながっている実態把握でありますとか,できることから,例えば,勤務実態を把握するために,ICTを活用して,教員が自主的に自分の勤務時間をきちんと管理する,それを校長や管理職が管理するというような仕組みも導入された経過もありますし,給特法の改正にも至りましたので,是非今期もタイムリーに提案をして,どんどんできることは示していって,自治体とも連携していくということが受け入れられると思います。
 最後に,私は,先ほど,どちらかというと,教師を中心にすると,供給側の視点からの検討になるのではないかと思われがちではないかと申しました。次期教育振興基本計画を検討する部会では,ユースラウンドテーブルということで,こども若者の声も聴きましたし,関係団体のヒアリングにおいて,大変多様で建設的な御意見も頂きました。今回も,できれば児童,生徒,若者,あるいは教師御本人を含めて,いわゆるネガティブな課題を提起するようなラウンドテーブルというよりは,むしろこういうことをするとよくなるというか,ポジティブな方向性を提案していただけるような,そんなヒアリングの機会をつくっていただけたら,教師の皆様も受け身ではなくて自ら,学校の中で率先して働き方改革の担い手として進めていくという,受け身ではない主体性が出てきていただければ有り難いと思いまして,そんな方向で検討を進めていただくことを願っています。
 以上です。どうもありがとうございました。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。学校における働き方改革が単に教師が楽をするといったようなことではなくて,飽くまでも児童生徒を中心とした学校教育を展開するために必要なのだということを改めて確認していただきました。また,そのためには教育委員会の機能強化であるとか,あるいは,それに関わって必要な提言があれば逐次やっていくことの重要性であるとか,さらには,当事者を含めた様々な形でのポジティブなラウンドというお話でございましたけれども,そういった御提言も頂きました。ありがとうございました。
 それでは,この後,安孫子委員,後藤委員,内田委員,堀田委員,古沢委員の順でお願いしたいと思います。後の議題の関係もございますので,一旦,古沢委員までとさせていただきたいと思いますが,後ほど,また時間を見ながら,御発言を求めることになるかもしれません。よろしくお願いいたします。
 では,安孫子委員,お願いいたします。
【安孫子委員】  安孫子です。本日は,ニトリの,ロサンゼルスでの教育研修の現場から参加させていただいております。
 資料の1-5について,企業側としての意見を述べさせていただきます。改善改革のプロセスとしては,実態調査を行って数字で示したということはとても意味があることだと思っていますし,あるべき方向だと考えます。この結論は,調査を更に深めて,分析をすべきだという意見になります。
 まず,教育の様々な業務の作業人数,時間の実態ですけれども,これはやはりもう少し分類を明確にして実態を明らかにすべきだと思います。例えば主体業務,これは企業で言うと,その業務をやることで利益を生む業務のことで,附帯業務,これは利益を生まない業務を指します。それと準備にかかる業務,さらに,無駄やイレギュラーの業務,こういった分類で,実態を調査することによって,さらに,何が問題で,何に手を打たなければいけないかということが明確になると思います。
 特に,企業で言うと,主体業務が一番重要なわけですが,これは,教育においては,企業で言うところの利益に置き換わるものは何だろうかと考えます。教員が業務を行って,そして,彼らが評価を得ること,もの,それに数値,これは一体どういうものなのか知りたいところです。
 それらが分かりましたら,主体業務の優先順位が高い業務から,無駄が多い工程を見つけ出し分析する段階に入るのではないかなと考えます。これは企業における業務改善のやり方です。教育の主体業務を明確にすることで,それの時間を確保し,そして,それ以外の業務をいかにAIに転化していくか,若しくは,集中して扱う,専門部署,又は専門の人たち等に,仕事を分類して,人を充てるということをしながら,教員の主体業務を守っていくプロセスに改善していくとよいかなと考えました。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。数字で示すことの重要性について,改めておっしゃっていただきました。
 教員の業務に関しては,既に学校の中でやっていくべきことであったとしても,教師がやるべき仕事なのかどうなのかといったような分類もしているわけですけれども,今後の検討の中でそういったことが,果たしてどのように実態として動いているのかというのも見ていく必要があると思いました。最初に御発言いただいた渡辺委員からもそれが果たしてちゃんと動いているのかというのも見ないといけないというお話だったかと思いますので,そういったことも注意しながら進めていきたいと思います。専門的にできる人,あるいは,そういうポストをつくってということもお話は大事だと思います。ありがとうございました。
 では,後藤委員,お願いいたします。
【後藤委員】  失礼いたします。少し網羅的になりますが,4点ほど,感想めいたことを述べさせていただきます。
 教師の勤務時間の客観的な把握というのは,具体的にどのような手順でなされているかということがなかなか難しいと思います。そもそも困難ですし,実態との乖離(かいり)がないかということも少し気になるところでございます。時間外勤務を削減するということは確かに必要ではありますが,そのために勤務時間管理を厳密に行うということは,教職の専門性や特殊性と相いれないという本質的な矛盾もあるところでございます。
 2点目は,教職の魅力を向上させるには,給与を上げ,学校種による格差などもなくすことも必要ですが,何より大切なのは,教師がやりがいを感じ,誇りを持って働くということが重要で,この総会で,従前から議論されていますように,教師に対するリスペクトや敬意のようなもの,それがやはり重要だと思っております。
 3つ目は,チーム学校づくりに関して,組織的,機動的なマネジメントを自発的に促すには,日常的な教職員のコミュニケーションが欠かせません。管理運営の視点のみならず,教職員の良い関係性を構築するという努力が必要だと思います。
 最後に,教師の職場環境整備のための方策につきまして,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー,学習指導員,部活動指導員など,専門人材等による教員の支援は,実効性があると思います。もう一つ,採用時のメンター制度などをつくっていただいて,OB,OG教員の活用などをしていただくことを期待するものでございます。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。大変具体的なお話を最後していただきました。給与も大事だし,時間も大事だけれども,やりがいと誇りを持って働けるかどうかというのが,これもまた大変重要ではないかということで,この辺りをどう見ていくのかというのは大変難しいことかと思いますので,その辺も今後の検討の中で考えていければと思っております。
 教職員の職場の関係性というのでしょうか,いわゆる風通しのよい職場という,居心地がよくてやりがいを感じることのできる職場というのは,これは学校以外のいろいろな職場もそれを目指すわけですけれども,学校の中でも,必ずしもできているということではないので,この辺りもまた議論していきたいと思います。ありがとうございました。
 では,内田委員,お願いいたします。
【内田委員】   京都大学の内田です。このたびは大変重要な議題をとり上げていただきありがとうございます。
 私はこれまで,地域教育振興基本計画の中でも,教育の場の,ウェルビーイングの重要性について,述べさせていただいておりました。というのは子供たちも含め,生徒,地域の人々,様々な人たちが関わって教育現場がつくられているからです。これまでは多分,主体である,学び手である学習者,つまり子供たちや生徒にフォーカスが当てられてきましたが,教員たちが疲弊してしまうと,学校の力はどんどん弱まってしまいます。教育の現場を一つの場として考えるとき,や教職員全体のウェルビーイングが非常に重要になっていくと考えております。
 資料1-5は大変丁寧な調査がなされており,非常に重要な資料です。今後継続的に調査や分析を続けていかれることを期待したいと思っております。
 私の専門は心理学ですので,特に主観的な指標に注目をして拝見させていただきました。資料1-5でいうと,31ページ目あたり,満足度に関する意識が示されています。これを拝見しますと,仕事以外の生活とのバランスということに関して,結構しんどいなと思われている先生方は結構いらっしゃるようです。また,年収や待遇についての問題も提起されています。教師にやりがいがあることは確かですがそのやりがいやお仕事に見合った給与や待遇があるのかという点については,結構意見が分かれているようです。
 教員の中にもいろいろな働き方や個人差があることを考慮に入れ,やりがいの重要性と同時に,それに見合ったワークライフバランスとを提供できる現場の構築は,これからの重要な課題です。
 分業体制ということに関して言うと,スクールカウンセラーを始め,地域の人々との連携というのが,これからの学校の改革において重要な要素となると思います。チームとしての協力体制が必要であり,単に分業するのではなく学校がチーム体制を整え,お互いにサポートし合えるような組織づくりが重要と感じました。
 以上です。ありがとうございました。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。教育振興基本計画の中に述べられているウェルビーイングについて,内田先生が本当に前からずっとおっしゃっていることで,具体的に子供たちだけではなくて,教職員のウェルビーイングというのが実現できない限りは,学校の中は何も変わらないということをおっしゃったのだと受け止めました。やりがいを感じるって大事だけれども,やりがいを感じて仕事を続ける上での,ちゃんとした待遇,処遇があるのかといったようなことも,これも本当にしっかり考えないといけないなと思いました。
 また,手直しをしてできるところと,根本的に本気で大きな変革を考えなければいけないところというのもあるのかもしれないなということを思っています。これは中教審への諮問を頂いたわけでありますので,私たちとしては,もちろん改善を少しずつ進めるということを検討しつつも,必要な場合には,大きな変革を考えるということも選択肢から消さないで議論したいと思います。ありがとうございました。
 では,堀田委員,お願いいたします。
【堀田委員】  東北大学の堀田でございます。諮問についての御説明と,働き方改革のデータの説明ありがとうございました。これらにつきましては,調査研究会でも論点整理を事前に頂いた上での諮問と理解しております。
 私の専門の,教育の情報化の観点から発言しますが,まず,量的には,業務分量をどれだけ減じるかということが何より重要だと思います。ただ,国から見たら,既にこれは教員の仕事として義務ではないと公表されていることが,いつまでも学校現場では現場の先生から義務のように捉えられていることがあるかと思うのです。ですから,国から見て義務としているもの,義務ではないとしているもの,そして,それを受けた上で設置者等が義務にしていること,そうでないこと。あるいは,管理職等の判断で,義務的に行っている,これは学校事情がありますからいろいろあると思うのですけれど,あとそうでないものみたいなことを教員目線から整理して,どこに課題があるか,誰が改善可能なプレーヤーなのかということを明確にするということが重要かなというのが1つです。
 もう一つ,これを質的に見ると,先ほど渡辺委員が冒頭おっしゃいましたけれども,働きやすくするというか,働きがいがあるようにするというか,このことが非常に重要なのだと思います。ICTやデジタルに期待されるわけですけれど,現状では,校務のDX等のいろいろ検討をしていますと,自治体によるコンピューターに対する制限,ネットワークに対する制限が強過ぎて,自由度が低く,結果的に教員が職員室から離れられなくなって,かえって忙しくなったり,しんどくなったりしているという現実があります。
 これらのことは,セキュリティーのこととか情報漏えいとかいろいろなことを考えての対策だということは分かるのですけれど,新しい技術ではとっくに解決しているようなことがまだ当該の自治体に取り入れられていないがために,いつまでも昔のようなやり方が横行しています。昔と同じように,Wi-Fiは危ないのだとか,クラウドは危ないだとか,もし危なかったらこんなに普及して,世の中で使われているわけはないのですけれど,まだそういう思い込みで過剰な利用制限をしているというところで,これは各自治体の技術理解に関係するところかなと思います。
 今の話のように,自治体によっては先生たちをICTで縛ってしまっているところがあるかなと思いますので,この辺りについてメスを入れることが必要かと思っております。
 私からの意見は以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。正に今おっしゃった,バイアスがどんどんかかっていって,一番,子供たちに近いところの先生が,そのバイアスによって時間を取られ,労力を取られてしまっているということになっては全く話にならないわけでありまして,今,堀田先生がおっしゃった自治体によるところのICT活用の際の制限というのも,これも前からおっしゃっているのですけれども,なかなか改善がなされていないというところもありますので,その辺りについてもしっかりと見た上で,提言ができればなということを思います。ありがとうございました。
 では,古沢委員,お願いいたします。
【古沢委員】  ありがとうございます。私も先ほど清原先生がおっしゃったように,教員の処遇改善とか職場環境の改善は児童生徒のためにこそ,進むべきだと思っております。そうした取組が,結果的に教師の質向上にもつながるようにすることが大切だと思います。
 その上で,学校現場で,まだ職員やスタッフの活用などでかなり職場環境が改善できる部分があるのではないかと思っていまして,一例を挙げますと,最近増えている発達に課題のある児童生徒ですとか,外国人の支援について,学校現場,私が訪問した限りなのですけれど,必ずしも専門性の高い人材が教えているわけではなくて,むしろ若手であったり,新任の教員がまず,そういった方の支援に当たるということが結構多いように見受けられます。
 外部の専門性の高い人材との連携を自治体で進めていると思うのですけれど,そうした連携をより進めるとともに,そうした専門性の高い教員を育てることも大切ではないかと思っております。諸外国では,かなり外国人の支援というのに力を入れていることも踏まえますと,緊急性の高い課題の1つではないかと思います。
 それと,資料の1-6で,最後にある,諸外国においても時間外勤務をどういうふうに設定するかという一文があるのですけれども,是非一度資料を拝見したいと思っておりまして,教員免許の制度とか働き方,先進国でもそれぞれ,まちまちだと思うのですけれど,必ずしも待遇がいいわけではない国もかなりありますし,あと,例えば,先生の地位が高いと言われるフィンランドなどでは,処遇はそれほど特別いいわけではないのだけれども,魅力としては長期休暇をしっかり休めると。ただ,その間給与はないそうなのですけれど,それが魅力ということを以前フィンランドに行ったときに,皆さん口をそろえていました。日本でも,かつて先生は長期休暇の間に休めると言われている時代もあったと思うのですけれど,給与がないとかそういうことをそのまま日本に置き換えるわけにはいかないのですが,一つ,若い人に対する魅力向上としては,しっかり休めるということは検討の余地があるかなと思いました。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。今でもできることもあるのじゃないかということ,発達に課題のある児童生徒への支援についておっしゃいましたが,確かに若いうちにいろいろなことを経験しておけというのも一つの指導かも分かりませんが,専門性のないままでは,それがかえって若い人のやる気を削(そ)いでしまうといったようなことになったりするということもあるというのは,私も感じるところです。
 また,処遇という点で,休暇という言葉はなかなか使い方が難しいと思うのですけれども,要はそれもまた教職員の学びに通じるのではないかと思いますし,教職員自身の学びをどのように保障していくのかというのは非常に大事なことだと思います。それが十分でないために教職に魅力を感じない,人が成長するために学ぶという場に対する魅力を感じないということになっているとしたら,これは非常に残念なことです。教師が学ぶことに興味を大いに持っている,あるいは探究するといったことにわくわくする,そういう教師に出会うことによって,子供たちがわくわくして学んでいくということがつながっていくと思いますので,今のお話も,また議論の中で,是非具体的に考えていければと思います。ありがとうございました。
 皆さん,大変御協力いただいた関係がありまして,少しまだ時間があるのですが,御発言を,この件に関して,お願いできるのでしたら手を挙げるボタンを押していただければと思いますが,いかがでしょうか。
 では,平井委員,そして石崎委員,お願いいたします。
【平井委員】  ありがとうございます。まず,今の学校現場の現状についてですけれども,質の高い教師を確保するという考え方はもちろん大切なのですが,かなり厳しい状況にあり,とにかく人数をそろえることを優先しているのが実情だと思っています。これについては,一刻も早く改善をしていく,そういう環境になってほしいと願っているところです。
  平成31年1月の中教審答申で,学校及び教師が担う業務の明確化,適正化が示され,3分類されましたが,資料の1-5を見ると,十分でない部分はかなりあると思っています。特に学校の校長が,自らの権限と責任で,学校の伝統であったり,慣例という形で続いていたりするものについて大なたを振るうべきということも書いてあり,全日中の様々な機会で私も訴えてきたところです。しかしながら,1-5の後半のデータを見ると,まだまだ先生方は改善できると思っていても,改善ができない理由として,結構,学校の慣行であるとか,保護者,地域の理解が十分に得にくいとか,そういうものが阻害要因として挙がっているというのもよく分かってきます。
  学校として,保護者や地域に働き方改革を理解してもらう際,子供たちの幸せにつながるという点をしっかりと説明するのですが,なかなかそこに行き着かず,学校の先生たちの業務を改善して少しでも楽になるようするということですよねという伝わり方に,どうしてもなりがちという点に,苦しいところがあると思っています。
  さらに,今回の勤務実態調査の結果を見ると,必ずしも教師が担う必要のないという業務についても時間数が上がっているわけですが,そもそも教師の本来業務という部分にスポットを当てたとしても,勤務時間の7時間45分に収まらない状況があると思っています。
  そうなると,先ほど荒瀬先生からお話があったように,大きくなたを振るうということも必要ではないかという考えについても,そのとおりであると思います。学校に様々な人材を投入して,チーム学校という形で,少しでも学校の機能を総合的に働かせようとすればするほど,いろいろな方々との打合せなどの時間も更に必要になってきます。今回,教師の処遇について報道などでも大きく取り上げられていますが,処遇だけでなく,やはり本来の業務にしっかりと時間をかけて傾注できる,その時間というものを,先生方は求めているのではないかと思います。だからこそ,今回示された一体的な改善を図っていくことがとても大切だと思っているところです。
  あとは,やりがいというものは,先生方一人一人捉え方が違うかもしれませんが,やはり本来の業務で子供のために取り組んだ部分で跳ね返ってきたときに,この仕事のやりがいを皆さん感じるのではないかと思っています。細かく1-5の資料を見ていくと,この業務は負担感が大きい。しかも重要ではないと捉えているものとして,中学校では部活動などで数字がはっきりと出ています。そういう点をきちんと整理し,大胆に取り組まないと,7時間45分の中で,しっかりと先生方が子供たちの方を向き,やりがいを持って業務に当たれるという状態にはならないのではないかと思っているところです。
 細かい数字をしっかり分析していくことが必要だとは思うのですが,是非本来業務にスポットが当たる,そこに本当に傾注できるような環境を確実につくるところに力を入れていただきたいと思います。細かい業務の時間数を少しずつ削っていっても,絶対に本来業務の部分は削れないので,そこをどうするのかというところに大なたを振るってほしいと願っています。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。具体の中学校の現場を見ていらっしゃる立場から,非常に具体の話をしていただきました。改善できない理由というのは何なのかというのは,これは本当にしっかり考えないと,改善できない,だから駄目なのだではなくて,どうしたら改善できるのかというのをこれから考えていく,そのための具体に動くような議論につながっていけばいいなということを思いました。
 ただ,実態として,とにかく人数をそろえるというふうな,そういう実態が現実にあるということ,これは本当に早急に改善しなければならないことでもありますので,その辺も含めて,先ほどお話がありましたけれども,文部科学省としても,できることにしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 では,石崎委員,お願いいたします。
【石崎委員】  お願いいたします。私も,現場の実態をより詳細に見て議論していただきたいなという趣旨でお話をさせていただきます。
 非常に細かく数値を出して,細かい学校の業務をこれから分析していくということはとても大事だと思います。ただ,平均で数字を見ていますから,例えば個別の生徒の指導なんていうのは,例えばいじめがあったとかいって何十時間も対応している先生や,そうしたことがなくて残業ゼロな先生を平均して出てきている数字なわけですよね。だから,実際に追い詰められている先生というのが,何十時間,こういうものに対応して困っているのかとか,そういったものが,数字上は見えなくなっているのかなと思います。そういったような細かいところまで,これは部活指導員もそうでしょうし何でもそうだと思うのですけれども,個別のところにも是非踏み込んで見ていただきたいなと思います。
 特に,部活動指導なんかは,最近やり玉に挙がることが多くて,それで,今平井先生から,部活は確かに大変なのだというお話もありましたけれど,しかし部活動は,それこそ私たちが教員になった30年前からやっているのですけれども,何が変わってきたのかなと思うと,けがをしたときに大きな責任を求められるとか,うちの子は何で試合に出してもらえないのだとか,パスが回ってこないからいじめなのではないかとか,そんなようなことがだんだん増えてきて,それでだんだん教員の負担感というものが大きくなってきたという部分もあるのじゃないかなと思います。先ほど外部人材の話もありましたけれども,外部人材を入れれば,そうしたことに関する打合せも,それこそ打合せする人数が増えるだけというのは多く聞く話です。
 それから,処遇改善の話も,教職調整手当が4%から10%にという議論もございますが,そうすると2.5倍にもらうお金が増えるのかなと思う人がいるかもしれませんが,実態は幾らかというと,例えば新採1,2年目の教員は,教職調整手当は幾らもらっているか,皆さん御存じですか。大体9,000円ちょっとです。それが2.5倍になったから,それで働かせ放題が続いていいのかというようなことはよく言われるのでお伝えしておきますけれども,そういった細かい学校の現場の実態というものを踏まえて,是非是非議論を深めていただければ有り難いなと思いますので,お願いいたします。
 ごめんなさい,最後一言だけ言わせていただきたいのですけれど,働き方改革という言葉は,働く側(がわ)に問題があるかのような言葉に思えてしまって,「働かせ方改革」をしなくちゃいけないのじゃないかと思っているのです。ですから,そんなことも含めて,是非現場の実態を反映していただきたいと思います。
 バツを出してくださっている方がいるので,聞こえていないのかもしれませんが,私の方はミュートは入っていません,大丈夫です。
 以上です。
【荒瀬会長】  石崎先生,すみません。決して文部科学省の通信回線が都合の悪いところで切れるということではないと思うのですが。調整手当が10%になったところでどれだけ上がるかというあたりから聞こえなくなりまして。
【石崎委員】  そうですか。そこは都合が悪かったですかね。
【荒瀬会長】  それはまた後から聞いておきます。
 先生,その後,調整手当以外の話。
【石崎委員】  最後に申し上げたのは,働き方改革というのは,働く側(がわ)に課題があるかのような言葉に聞こえるので,どちらかというと働かせ方改革なのではないのかなということを申し上げました。すみません,つまらないことで。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございます。働き方改革というと働く人に問題があるみたいに聞こえるのは,本当にそのとおりだと思います。ありがとうございました。
 先生がおっしゃった,平均を見るというので全体をつかむのも大事だけれども,個別のことについてもしっかりと見るというのは本当に大事な視点かと思います。ただ,それをしていこうとすると,これは多分我々の議論だけではどうにもならないので,具体に,設置者である教育委員会であるとか,あるいはもっと言うと学校の中でどう取り組んでいくのかということも重要になってくるでしょうから,そういったことについても議論ができればと思います。議論することがいっぱい増えそうな感がありますけれども,そのように思って伺いました。ありがとうございました。
 では,大字委員,お願いいたします。
【大字委員】  小学校長会の大字でございます。今回,このような諮問がなされたことに大変現場として有り難く感じておりますし,この議論を通して,現役の今の教員がとても勇気づけられたり,これから先生を目指そうとする学生が,よし,やってみようと。また,その学生の親が,うん,これだったら,うちの子供を教員にしてもいいぞと,そんなふうに思えるような議論がなされると,非常に有り難いなと思っています。
 どの職場も同じだと思うのですけれども,学校もそうで,明るい疲労と暗い疲労があって,学校の先生たちは,対子供のためにがーっとやることに対しては,相当やっても,家に帰って明るい疲労で,よし,今日も楽しかった,よし,あしたも頑張るぞと思えるのですけれど,例えば少し行き過ぎたクレーム対応であったり,そういうものを直接に浴びると,非常に暗い疲労になって,それが積み重なると,それこそ精神が病んで,せっかくついたこの仕事ができなくなるというようなことにつながるのかなと。まず,その辺りを何とか明るい疲労で1日終われるような,そんな職場に,全国の学校でしなきゃいけないなというのが1つです。
 あと,小学校現場だと,1週間という中で何かをしようと思って使える時間が余りにもないということです。例えば,時間割で1日6時間で5日間ということは,30こま,こまがあるのですけれども,29こまは授業で埋まっていて,もう1こまは特別活動で埋まっているわけです。1週間の中で例えば外部の人と打合せしようとか,何か新しいものをやろうと思って,じゃ,どこで時間を生み出すのということです。そうなると,やはり年間の総授業時数等々も含めた削減をしていただいて,例えば週の中に,3時間でも4時間でも,そういう時間が当たり前のようにある,そういう環境を望みたいと思いますし,小学校の教員は,持ち授業実施時数の上限が決まっていないので,これは校長も悪いのですけれども,学校によっては週29時間授業している先生もいるのです。学校によっては19時間だったり。この辺りも,やはり週の持ち授業時数の上限あたりも設定をしていただいて,その辺りを超えるような状況は,例えば講師時数が発生するというような,中学校的な授業時数と講師時数の配当という辺りを御検討いただけると有り難いなと。
 少し具体的な話になりましたけれども,どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。最後の話はなかなか重いお話で,何とかしなければ,これはどうにもならないですね。明るい疲労と暗い疲労というのは非常によく分かるお話であったと思います。ただ,明るい疲労もあまりたまるとよくないでしょうから,程々に明るい疲労があるというのはいいのでしょうけれども,そういったことも含めて,今,たまたま中学校,高等学校,そして小学校の代表の先生方からお話を頂きました。この後ですけれども,萩原委員,そして橋本委員,熊平委員の順にお願いしたいと思います。今日,熊平委員までで,一旦また考えさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 では,萩原委員,お願いいたします。
【萩原委員】  ありがとうございます。時間も限られていると思いますので,短くいきたいと思いますが,まず,私はこの質の高い教師の質の高いというのは一体何だろうかと,常にしっかりと見極めていく必要があるなというふうに思っております。
 それから,今小学校4年生の孫を持っているものですから,その現場の状況というのも把握できる立場におります。その中でいうと,やはり教師の働き方改革はもちろんそうですし,先ほど木村先生もおっしゃったように,児童・生徒を中心にしっかりもっと考えていかなきゃいけないというときに,子供たちも先生たちを支える人たちも時間に追われているというか,正に時間の貧困の問題というものを根本的に見ていかなきゃいけないのじゃないかなというふうに思っております。
 それから,先ほど古沢委員の方からフィンランドの話がありましたが,12年前にフィンランドの調査を5年ほどやった経験から思い出したことがありました。日本の親は,大学を卒業したばかりの社会人経験のない教師に子供をよく預けられますねと言われたことが私はとてもショックだったです。そのときは,まだ娘も大きくなっていますし,あれだったんですけれども,それを先ほど思い出しました。そして,しっかりと彼らが,自分の能力を発揮できるようなメンター制度というのがありました。3人ぐらいついていたでしょうか。ですから,新人ではあるけれども,そういう方たちのサポートを得ながら,しっかりと教師としてエンパワーメントをしていく,こういった仕組みづくり,日本にも必要だろうというふうに思います。先ほど,メンター制度の話もありました。
 それから,今孫娘を見ていて,やはり教科担任制の導入というのはもう少し早い時期でもいいのではないかというふうに思っています。1人の先生が学ぶ,教えるには,余りにも内容が多くなっています。例えば,私,今66歳ですけれど,66年前の社会とか歴史と今の歴史では,全然この66年分ぐらいが入っているわけですから,そういったところに1人の先生の負担というのは大きくなってしまっているんではないかなというふうに思っております。この業務内容,負担感のためにも様々な専門の先生方,専門スタッフとの連携,その連携をするためのコーディネーターの存在,その打合せのための時間をどうするのか,やはりここにも時間の貧困の問題があるかと思いますが,そういったものも含めて,全体のデフォルトをもう1回見直すということが必要になってくるのじゃないかなというふうに思っております。
 以上です。ありがとうございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。質の高いとは何なのかというのは,これは本当に大事な我々の検討課題であるというふうに思います。ありがとうございました。
 では,橋本副会長,お願いいたします。
【橋本副会長】  橋本です。少し重複あるかもしれませんが,令和元年に1度答申を出していただいていますので,2回目ということを考えますと,この4年半の間に何ができて何ができなかったか,それはなぜかということをしっかり考えなきゃいけないのかなと思います。そして,そのできた,できないの判断も,全体として進捗が遅れたのか,あるいは個別の事情で遅れて,個々の教育現場によって差が出ているのか等も含めて考えなくてはないと思う。例えばICTの活用の話になりますと,進んでいるところと進んでいないところで恐らく差があると思うのですが,このICTというのは正に魔物でして,今のチャットGTPに見られるように,来年の今頃には全く違う技術が発達して,ますます遅れるところは遅れるし,進むところは進んでいく。こういった格差ができないように,しっかりと全体の底上げをしなきゃいけないと思いました。
 2点目は,我々民間企業でも働き方改革を一生懸命やっていまして,デジタル化を進めたり,いろいろな対応をして長時間労働が改善されて,更に個人の時間ができて,仕事以外の時間の充実から,人間の幅みたいなのを広めていこうということはよく言われているのですが,特に教育現場については,こういうことを忘れてはいけないなと思っています。我々民間でやっていることが,従業員の創造意欲の向上とか生産性の向上に,本当につながっているかどうかとなると,まだまだ疑問点がいっぱいありまして,やらなきゃいけない,あるいは反省しなきゃいけない,検証しなきゃいけないことがいっぱいありますが,学校現場においても大事だと思いますので,先生の処遇とか労働環境を改善することは大事なのですけれども,教師という仕事を魅力ある仕事に変えて,最終的には,先生方にいきいきと教育に集中し質の高い教育を行っていただいて,我が国の未来を切り開く人材を育成いただくということに注力していただくということがやはり大事です。世間やメディアからはどうしても勤務時間とか処遇が注目されるかもしれませんけれども,最終的な目的はそこにあるのだということを忘れずに,答申へ向けて議論していければいいなというふうに思います。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。何ができて何ができなかったのか,それはなぜかといったことを考えるということはとても大事だと思いますし,また,我々が目指すところは何なのかというと,給料を上げることだけが目的ではないというのを,改めてそういうことについてもしっかりと確認しながら進めていきたいと思います。ありがとうございました。
 では,この件最後に,熊平委員からお願いいたします。
【熊平委員】  【熊平委員】  ありがとうございます。本テーマは,とても重要なテーマであるという認識を持っております。仕事柄,外部の研修等で学ぼうとされている先生方との接点が多くあります。その中で,意欲の高い先生方が,教員をやめる現実も見て参りました。先生方がやりがいを持ち続けるための環境整備がとても大事だと感じております。
 内田先生もおっしゃったとおり,ウェルビーイングが,本当に大事だと私も思います。その観点から,企業でエンゲージメントを高めるためには,4つの視点があると言われておりますので,共有させていただきます。仕事の意義を実感できること,成長を実感できること,良好な人とのつながりがあること,存在の承認があること,この4つが満たされていると,エンゲージメントが上がると言われています。この観点から先生方の現実を見ますと,全て満たされていないのではないかと思います。そういう観点から少しお話させていただければと思います。
 まず,最初の仕事の意義についてです。先生方の,時間の使い方の分析をしていただいたことは,大変よいと思いました。その中でも授業の準備の時間が減少しているという点がとても気掛かりです。先生の主たる業務は,学習指導であると思いますが,先生方がいい指導を行うためには準備が必要です。また,今日では,探究学習など難しい授業が増えている中で準備がとても大事であると思います。もう10年前に,私が教員養成に従事していた頃から,先生方が,「忙しくて授業の準備ができないのだよね」という嘆きをよく耳にしました。中途半端な授業準備で,授業を行うのは,恐らく気持ちのいい仕事ではないと思います。また,成長に関しては,学びの最近接領域という言葉がありますが,教員の場合は,担任になると,1年目と10年目が同じことを期待されるという,かなり大胆な成長を期待する在り方もいかがなものかと思います。また,孤軍奮闘している先生方からは,「先生方は学校とつながっているというよりも学級とつながっているのだよ」と説明されることもあります。そんな状態ですと,つながりも不足しています。そして,最後の存在の承認も,先生方は保護者からいろいろクレームが出る等大変なことばかりで,褒められる機会も認められる機会も非常に少ないです。校長先生を中心に,学校全体で,一人一人の先生の存在の承認が実感できる配慮が必要です。いろいろと改善することができる部分が残っているのは間違いないと思いますので,これを機に,一気によい方向に向かうことを期待いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。4点いずれも大事なところで,とりわけ今,本当に欠けているのが存在の承認ということではないかなと思いながらお聞きしました。ありがとうございました。
 この件,今日は一旦ここで次に移りたいと思いますが,この件につきましては,諮問を受けて,今後,初等中等教育分科会で議論を進めていただくことになろうかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,議題の2に移りたいと思います。
 教育未来創造会議第二次提言について,事務局から御説明をよろしくお願いいたします。
【瀧本教育未来創造会議担当室長】 内閣官房の教育未来創造会議担当室の室長を務めております瀧本と申します。先月,この未来会議が取りまとめた第二次提言について御報告をさせていただきます。まずは資料の2-2が提言の本体ですが,今見ていただいているのはそのはじめにという2ページ目の部分です。教育未来創造会議は,内閣総理大臣を議長として,有識者構成員と関係大臣から構成される会議体であり,永岡大臣も議長代理を務めている場でございます。
 第2段落に,昨年5月に取りまとめた第一次提言のことを触れておりますが,この中教審総会の安孫子委員と,それから日比谷委員にも,構成員として,この第一次提言の取りまとめに加わっていただきまして,ありがとうございます。
 第3段落から第二次提言のことについて触れておりますが,グローバルレベルでの人流に関連をして,下から2行目ですが,留学生の派遣,すなわち日本人学生の海外留学とともに外国人留学生の受入れ,それから,このベースとなる教育の国際化について焦点を当てて提言を取りまとめたものです。
 時間の関係上,今日は,この資料2-2の本体ではなくて2-1の提言概要を用いて説明をさせていただきます。
 タイトルとして,「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ〈J-MIRAI〉」とさせていただきました。最初に,左側ですけれども,基本的な考え方の3つ目ですが,これまで留学生交流は特に受入れについて,過去に10万人計画とか30万人計画ということで,ややもすれば量を重視する視点が強かった面がございましたが,今後,特に日本人学生の,海外派遣の拡大の面でも,あるいは外国人留学生の,日本への受入れの面でも,より質の向上を図っていく視点も重視していくべきだろうということを,最初左側のところでまとめさせていただいております。
 また,右側ですが,今後の方向性として,最初に1の(1)として,日本人学生の派遣を位置づけました。今回の提言の,特徴の1つは,外国人留学生の受入れももちろん大事ですけれども,全体を通じ,日本人の海外への留学,派遣というところをより重視をして先に記述するような構成となっております。日本人の海外留学においては,短期ももちろん大事でございますけれども,特に中長期留学の数と割合の向上を図ることや,特に大学院レベルでの学位取得を推進していくということを,まず基本的な方向性として打ち出しをさせていただいております。(2)外国人の受入れですが,特に,きちんとした学ぶ意欲のある高い志を有する優秀な外国人留学生を戦略的に受け入れていくことを推進してまいりたいということを記載しております。特に,出身国にかなり大きな偏りが見られますので,受入れ地域については,より多様化を図る方向で取組を促進してはどうかということで提言がまとめられております。
 2ポツのところでは,特に日本人の海外留学の場合,帰国後の就職にマイナスになるのではないかと,スケジュールの観点でちゅうちょするきらいがございますが,海外へ留学から帰ってきた日本人学生の,就職の円滑化の推進,同時に外国人留学生で日本に残って活躍したいという意欲のある方については,その定着の促進というものを進めていくことが大事だろうと,整理をさせていただいております。
 また,3ポツでは,これらのベースとなる様々な教育の国際化を進めていくことの重要性が指摘をされております。
 次のページをお願いいたします。
 こうした方向性に立って,10年後,2033年までの指標として,目標値をそれぞれ今回の提言の中では設定をさせていただきました。このページの一番左下を御覧いただきますと,赤と黒の棒グラフがありますけれども,高等教育機関に在学する千人当たりの海外への派遣留学者数を国際比較しますと,日本は韓国の半分以下,フランス,ドイツにも及ばないというような状況がございます。
 一番左上の方を見ていただきますと,日本人学生の派遣として10年後までに50万人と書いてございます。これは,大学生のみならず,高校生の海外留学も含み,また,大学生の短期の数も含んだ数字でございますが,小さい字で添えられているとおり,コロナ前の数字でだいたい20万人強いたものを,今後10年先までに,だいたいフランスやドイツのような非英語圏の水準にほぼ匹敵するようなレベルというところの50万人という数字を目指すということを目標として描かせていただきました。
 また,中ほどです。外国人留学生の受入れ定着については,30万人計画が2019年に既に達成をされておりますが,コロナで激減をしました。今後,2033年までに,しっかりとした意欲のある留学生を40万人まで引き上げていくことを目標値として設定をさせていただいたところです。
 右側のところは,これに関連をして,教育の国際化,例えば大学では,英語のみで卒業・修了できる学部・研究科等の数の増加であったり,その右側では,英語で複数教科の授業を受けられるような高校が,統計では今50校日本にはございますけれども,これを3倍の150校まで広げていくことなどを目標値として設定をさせていただいたところです。
 次のページをお願いいたします。
 それでは,こうした目標値のために具体的に何を方策として講じていくかというのが,このページと次のページで整理をしています。
 まずは,日本人学生の派遣方策ですけれども,赤字のところを見ていただきますと,特に授業料相互免除型の協定派遣の増に向けた取組推進,文科省高等局の方でも一定の支援をしておりますけれども,こうしたものを拡充していくような取組,それから給付型奨学金を着実に拡充していくなど,経済的支援の充実を図っていくこと,それから官民協働でのトビタテの発展的な推進等々も含めて取組を記載しています。
 左下の方は,初中教育段階における英語教育・国際理解教育の充実,1人1台端末を活用した海外との交流の促進というのも,生徒にとっては非常によい刺激になるのではないかということで,提言の中に盛り込まれています。
 右側が外国人留学生の受入れに関するもので,諸外国でも取り組まれておりますが,優秀な学生,若しくは高校卒業予定者を早期からリクルートしていくような獲得強化に向けたプログラムの構築であったり,あるいは国費留学生制度の地域,若しくは分野の重点化などの見直しもしっかりと進めていってはどうかと提言されてございます。
 中ほど,留学生への授業料設定の柔軟化とか,留学生の定員管理の弾力化,一方で,④で,適切な在籍管理のできないような学校については,その大学名等の公表であったり,在留資格「留学」の付与を一定期間停止したり,さらには私学であれば私学助成の厳格な対応といったことも併せて進めていくべきということで提言に盛り込まれております。
 また,国際交流の推進においては,「アジア架け橋プロジェクト」という高校段階での交流プログラムがございますが,高校生段階から,そうしたプログラムをより充実強化していくことについても提言の中に盛り込まれてございます。
 その次のページをお願いいたします。
 最後のページですが,具体的方策の2ポツ,留学生の卒業後の活躍に向けた環境整備ということで,日本人学生の帰国後,通年・秋季採用,インターンシップ等による多様な選考機会の提供など,経済界の御協力も頂きながら,また,厚生労働省,経産省とも連携をしながらこうした取組を広げていくこと。さらには(2)に関して,外国人留学生の定着に関しては,特に経産省さんが,各地域でコンソーシアム若しくは中小・中堅企業向けのプラットフォームを設けて,採用,受入れに係る伴走型支援の展開を始めたところです。こうしたものをしっかり充実していくような取組と,併せて③ですが,法務省関係になりますけれども,在留資格上の様々な課題もございましたので,より積極的に高度人材を受け入れられるような新しい在留資格制度の創設,さらには質の高い専門学校の認定制度を通じて,現行の,在留資格の運用の改善といったものにも結びつけていってはどうかということで具体的な提言も頂いているところです。
 また,右側,国内大学の国際化を一層推進していくという観点では,そうした取組を継続的に取り組めるような環境整備であったり,それらを先導するような大学の認定制度の創設というものが提言で盛り込まれているところです。また,様々な外国人材,日本に来ていただいた際に,その子弟の教育の問題等も含めて対応を充実していく必要がありますし,国際的な中等教育機関と書きましたのは,例えば都立の国際高校や広島県の叡智(えいち)学園のような,公立ではありますけれども,バカロレアの認定を受けて直接海外の大学にも進学できるような,そうした学校が少しずつ増えてきておりますので,そうした整備推進,運営支援といったことを提言されているところです。また,現在国会で法案が審議をされているところですが,日本語教育機関,日本語学校の認定制度を通じた質の向上をしっかりと図っていくような取組など,最後に日本型教育の輸出も含めまして,幅広い観点からグローバル人材育成についての提言を頂いたところです。
 現在,担当室では,こうした内容について,国立や私立大学などの各種会合で説明をさせていただいたり,経済団体や知事会等にも協力依頼を行うなど,その広報に努めているところです。また,政府としては,いわゆる骨太の方針,ないしは概算要求もにらみながら,各省と連携しつつ,今回の二次提言で盛り込まれた各提言事項について,その1つ1つの実施の方策や,具体的なスケジュールを工程表に落として取りまとめる作業を現在進めているという段階です。皆様におかれても,御理解,御協力賜りますよう,よろしくお願いします。
 私からの説明は以上です。ありがとうございました。
【荒瀬会長】  瀧本室長,ありがとうございました。大変大事な話かと思います。出て行く人が出ていかない,入ってもきてくれないということでは,これはどうにもならないことになるわけで,その点について,いろいろと御意見お持ちかと思いますが,大変申し訳ございません,時間の関係で,お一人かお二人になるのですけれども,御意見ございましたらお願いいたします。よろしいですか。
 具体的に今後動いていただくということになりますので,その動きを注視しながら,また,我々としても意見を申し述べたいというふうに思います。それでは,本当によろしいですか。
 では,次の議題に移りたいと思います。
 最後の議題です。議題の3といたしまして,G7富山・金沢教育大臣会合について,事務局から御説明をお願いいたします。
【岡村国際統括官】  ありがとうございます。国際統括官の岡村でございます。冒頭,大臣から少しだけ御紹介をさせていただきましたG7富山・金沢教育大臣会合の結果について御報告をさせていただきます。
 この1枚目にございますように,5月の12日から15日まで,富山県富山市及び石川県金沢市,両市において行われました。本体会合というのは13,14に集中しておりますが,加えて,G7の大臣の方々におかれましては,小学校,中学校,そして大学,それから各種の文化施設の御視察も頂いたところでございます。詳細は,ここに記載のとおりでございます。
 オープニングセッションとクロージングセッションのほかに,テーマを据えたセッションを4つ設けております。
 次のページをお願いします。
 具体的にどのような議論を行ったかということでございます。全体の問題意識といたしましては,コロナの影響ですとかロシアのウクライナ侵略,それから激変する世界,社会の課題に取り組んでいく次の世代のお子様方を育むためには,どういうふうに教育があるべきかということを基本的な問題意識といたしまして,議論を進めていただきました。
 各セッション,今4つセッションを設けたと申しましたが,その4つのセッションにつきましては,この紙の下のところに4つ示させていただいております。
 1番目が,コロナ禍を経た学校の在り方,2番目が全ての子供たちの可能性を引き出す教育の実現,3番目が社会課題の解決とイノベーションを結びつけて成長を生み出す人材の育成,そして4番目がコロナ禍の変化を受けた今後の教育の国際化とその役割という4つのセッションで議論を深めていただいた次第でございます。
 次のページをお願いいたします。
 この議論を踏まえて,3日目に富山・金沢宣言というものをG7で取りまとめ発表させていただいております。基本的な考え方としましては,G7間で,こういう御時世でございますからこそ,なお一層,自由・平和,法の支配と民主主義の価値観を共有しつつ,以下のものについて取組をしっかりと進めていくということでございます。
 その中には,民主主義,自由,法の支配や平和の礎としての教育の普遍的価値の共有等々もありますが,最近,他のG7の大臣会合でも話題になり,本体会合でも話題になっております生成系AIを含めた近年のデジタル化の急速な発展,これについては,教育に与える正負の影響をプラスの面,マイナスの面の影響を両方ともしっかりと認識をし,評価をしながら進めていかなければいけないという問題意識も共有されております。
 G7が目指す取組の方向性といたしまして,先ほど御説明をいたしました,それぞれのワーキンググループの議論の,問題意識の柱立てに沿って,4つのテーマに従って御説明を差し上げます。
 まず,コロナ禍を経た学校の役割の発揮とICT環境の整備ということでは,コロナ禍で学校に行けなかった,学校がクローズしなければいけなかった,そういうことを踏まえ,学校の役割というものを大臣間で非常に共有しております。学校の役割が今後も継続して効果を発揮していくように,そして多様で包摂的な社会の基盤に資するように取り組みましょうということ。
 それから,このコラムの真ん中下になります,ICTの導入もされたということで,対面による教育に加え,リアルとデジタルを融合した教育の促進に向けてICT環境の整備を継続するとともに,教師のICTスキルの向上などについても非常に重要だねということの合意に至っております。
 全ての子供たちの可能性を引き出す教育の実現という観点では,一人一人の子供に最適な学びを進める。デジタルの活用も含めて,そういうことをますます進めていけるだろうということ。そして,その先には,子供たちのウェルビーイングの向上に資すると,この観点も重要ですという合意に至っております。そして,またここでも,魅力ある優れた教師の確保・資質能力の向上や学校の指導・運営体制の整備を行うということについても,共通の認識を得ております。
 3番目の社会課題の解決とイノベーションを結びつけて成長を生み出す人材育成という観点におきましては,全ての子供・若者にSTEAM教育等の教科横断的な教育を推進するとともに,やはりここでも,デジタルですとかグリーンといった成長分野の人材育成,また起業家教育についてもその重要性が合意をされております。
 最後の4番目の柱でございます。今,瀧本室長の方から御説明がありました,私どもの政策とも非常に軌を一にするものでございますが,国際社会の連携に向けまして,G7各国間の生徒・学生の人的交流をコロナ禍前の水準に回復し,更に拡大をさせるというようなこと。そして,更にG7において今後とも引き続いてハイレベルの政策対話を続けていきましょうということ。それから,改めてウェルビーイング,このことについて確認をしております。
 4ページ目をお願いいたします。
 ここまでが大臣会合の御報告になりますが,これをインプットした形で,一昨日まとめられましたG7の広島首脳のコミュニケ,この中に,今御説明を申し上げました全てのポイントが,しっかりと位置づけられるということになりました。冒頭の大臣,教員確保の難しさだとか多忙,大忙しだと,こういうことについて,会合の席でも,それからランチの席でも,非常に問題意識,みんなで共有したのよというような御紹介があったかと存じます。これに関しましては,今申し上げました宣言の中でも,あらゆるところに教師ということ,デジタル化ということも書いてございますが,まとめて,総じて少し申し上げますと,やはり将来を担う人材を育てる,将来を担う生徒・児童を育てるということになりますと,社会自体がデジタル化で大きく変化をしていると。フランスの大臣は,80%のお仕事が,今の生徒さんたちが社会に出るときには変わっていると。こういうときに,その生徒さん,児童さんを育てる人々,教師がどれだけ重要であるかということ。そして,重要なのにもかかわらず,教師の確保が難しいのだ。これ,G7全ての国々がおっしゃっていました。大忙しであるということ,それから処遇の問題もあるし職場環境の問題もあるということを,異口同音に皆様方,悩みの共有,そしてこれをどうにかしていかなきゃいけないということが,熱く議論の中でも進んでおりました。会議の昼食のとき,それから2国間でお話合いをされる場面もいっぱいありましたが,そのときに,この教師の観点,いつもメインのイシューでございました。
 このような会合で,大きな方向性を各国とも合意をできたことも踏まえ,日本の教育の政策にも,私どもしっかりと生かしてまいりたいと思います。
 以上,御報告ということでございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。G7富山・金沢教育大臣会合について,岡村統括官より御説明を頂きました。この件に関しまして,御質問とか御意見ございましたらお願いしたいと思いますが。やはりお一人かお二人か。内田委員,お願いいたします。
【内田委員】  ありがとうございます。本当にG7の中で非常に日本の教育に関連した御発言や御提言がたくさんあったことということで,大変よかったのではないかと思っています。
 ウェルビーイングの海外の研究者から,今回のG7での,日本の調和と協調のウェルビーイングの取組について取り上げられたことにも反応があったことをお伝えしておきたいと思います。やはりこうした会合を通して提言というのを行っていくことの国際社会におけるインパクトというのを大変感じた次第でございます。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。続いて,貞廣委員と清原委員も手を挙げていらっしゃいますので,貞廣委員,清原委員にも御発言いただきたいと思います。では,貞廣委員,お願いいたします。
【貞廣委員】  千葉大学の貞廣と申します。丁寧に御説明いただきまして,ありがとうございます。今日の御説明の前にも,この各大臣会合セッションの経緯については報道等で触れてきておりますが,本当に奇妙なほど,その方向性と内容が令和答申と重なっておりまして,これはホスト国のリードにもよるかと思いますが,国横断的に同じような課題を抱えていらっしゃるということでもあろうかと思います。
 我々の検討しているものが,全く的外れな方向性ではないということを,またここで確認をさせていただいた次第なのですが,ここからがお願いというか,私どもは何をしたらいいでしょうかという御質問のようなものです。特に最後の今日の資料の,4ページ目のG7広島首脳コミュニケを拝見したときに,これも大変令和答申に重なることがわかります。やはり包摂性と社会的な公正というのがワンツーのトップになっていて,ウェルビーイングの実現を目指していくということです。一方,令和答申にはここまで書かれなかったなと思われる点もあります。例えば「人材支援の投資の重要性を認識する」とか,また少し上の方に行くと,やはり「G7がより公平かつ効率的な方法で人への投資を拡大する必要性を改めて表明する」といったように,適切なリソースの裏づけをもってして未来の人材を育てていくということがしっかり明確に書き込まれている点,これは,少し令和答申とは温度差があるところだなと思ったところです。今日の議題1にも関わりますけれども,,多様なニーズに応えていく教育というのは大変手がかかるもので,リソースの裏づけもあってこそ実現するものだと思います。この人材への人材支援への投資,人への投資を拡大するということを,社会的,政治的に腹落ちして合意をしてもらって拡大をしていただくためには,ここの審議会なり,私,教育の研究者ですので研究上なり,それぞれがどういうことを担っていったらこういうことを社会的に合意していただけるようになるのかということが,1つ非常に,私,個人的に大きな課題だと思っているところでございます。こういうことが必要だというだけではなく,必要性そのものを社会の方々に真(しん)に納得・合意いただき,国民みんなに応援団になってもらってしっかりと資源もつけていただけるようにするにはどうしたらいいのかということを考えていくということも重要だということを,改めて認識させられたものでした。ありがとうございます。
 大変なお仕事だったかと思います。お疲れさまでございました。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。今の件も,1つ目の件との関わりがあるというふうに貞廣先生もおっしゃいましたけれども,今後の議論の中で考えていく必要あると思いますが,特に今,事務局の方から何かございますか。お願いいたします。
【里見審議官】  総政局の担当審議官の里見でございます。私も,ほぼ全行程,御一緒させていただいたということがございます。今御指摘いただきましたコミュニケ,あるいは教育大臣での宣言といったようなものというのは,政治の立場で,こういうことをしっかりやろうということをコメントとして御発言いただいたものというふうに理解しております。中教審の委員の先生方には,やはりこの教育の重要性ということをしっかりアピールしていただくということが何よりも重要だと思っておりまして,そういったような声が国民の方にも届くということによって政治の世界では認識されるというプロセスが,今回は働いたのではないかというふうに理解をしているところでございます。是非御協力,また引き続きよろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。大きな声で何度も何度も繰り返すことで政治にも反映されていくということかと思います。ありがとうございました。
 では,清原委員,お願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。杏林大学客員教授の清原慶子です。久方ぶりの教育大臣会合が日本で成立して,本当によかったと思います。特に,今,貞廣委員もおっしゃいましたように,このG7広島首脳コミュニケの仮訳の教育パラグラフ抜粋には,私たち中教審が検討してきた方向性と大いに重なるところがあり,心強く思っています。包摂性でありますとか公平性ですとか,私は生涯学習分科会委員長をさせていただいているので,冒頭に,「強靱で生産的な社会を築くために,全ての人の生涯学習の機会を促進する」とあることも,大変重く受け止めました。
 さで,その中で,教育人材,教師の重要性が強調されたという御報告を頂きました。それは,正にコロナ禍にあって,デジタル化も進み,実体験とのバランスということも含めて,教員の資質向上が求めてこられたのであり,今回の,本日受けました諮問とも重なる問題意識をG7の皆様が共有されているということを確認させていただきましたし,先ほど瀧本室長が御報告された,教育未来創造会議における着実な相互の留学生の交流についても明記されていることを大変心強く思います。
 その上で,1点だけ質問でございます。3ページの基本的な考え方の最後に,「生成AIを含めた近年のデジタル技術の急速な発達が教育に与える正負の影響を認識する」と。ポジティブ,ネガティブ,両方認識するということで,特に例示された生成AIというのは,日本国においても,特に高等教育の段階で,かなり熱心な基準の検討がなされ,政府においても検討がなされていると承知しています。
 そこで,G7において,生成AIに代表される新しいデジタル技術について,今後も継続的に相互に連携をして検討していくことを通して,教育現場の健全なデジタル技術の活用が図られるというような,このG7を契機とした継続的な検討についての方向性で確認されたことはあるでしょうか。もしあれば有り難いなと思いますが,よろしくお願いします。
【岡村国際統括官】  御質問ありがとうございました。生成AIにつきましては,この会議の一,二週間前に,様々な大臣会合でもその問題意識が出てまいりまして,最後の最後の段階に,やはりこれを議論していこう,また宣言の中にもこれを入れていこうという動きになりました。
 ですので,今,何を決めてしまおうとか,そういうことではないのですが,まず,この時点においてはプラス,プラスのものはどんどん使っていきましょう。しかし,使うときには,こういうことを気をつけなきゃいけないということについてしっかり認識しましょうというのが,この時点までの合意文書となりますが,一番下のところにありますように,これからG7おけるハイレベルの政策対話も続けていきましょうと,こういうことも合意をいたしました。決して7年後ではございません。その政策の継続的な対話の中でも,こういう話題は出てくるというふうに理解をしておりますし,私どもも,こういう大きな会議だけではなく,2か国間の交流というのも継続的に進めております。これの中でも,恐らく生成AIにつきましては,ずっと当面議論が続いていく,意見交換,情報交換,悩みの交換が進んでいくというふうに理解をしております。
【清原委員】  会長,よろしいでしょうか。本当に心強く思います。やはりこれは人類にとって一つのターニングポイントを与えるような技術だと思いますので,人間とは何か,人間とAIはじめデジタル技術等の望ましい共存のためにも,国内での努力とともに国際的な連携も必要かと思いまして,大変心強いお答えいただき感謝いたします。ありがとうございました。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。生成AIについては,多分,初等中等教育においても相当今後考えなければならない大きな課題ではないかなと思います。怖がらないで,どのようにうまく付き合っていくのかというのを考える必要があるかと思います。ありがとうございました。
 それでは,本日は,大臣から頂きました諮問を中心に御意見を頂きました。今日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。資料,参考資料1-1と1-2,留(と)めてある資料ですけれども,COCOLOプランということで,これも非常に重要であります。資料は後からまた見ていただくということでよろしくお願いいたします。
 それでは,本日の会議を終了いたします。どうもありがとうございました。

 
 
 

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