中央教育審議会(第137回) 議事録

1.日時

令和5年9月25日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧庁舎6階) ※WEB会議

3.議題

  1. 急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた我が国の高等教育の在り方について(諮問)
  2. 教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)について
  3. 生涯学習分科会社会教育人材部会 中間的まとめについて
  4. 日本語教育機関認定法について

4.出席者

委員

荒瀬会長、永田副会長、橋本副会長、秋田委員、安孫子委員、石崎委員、今村委員、植村委員、内田委員、清原委員、後藤委員、齊藤委員、貞廣委員、清水委員、戸ヶ﨑委員、古沢委員、堀田委員、湊委員、村田委員、吉岡委員、吉田委員、渡辺委員

文部科学省

盛山文部科学大臣、青山文部科学副大臣、安江文部科学大臣政務官、藤原事務次官、藤江文部科学審議官、豊岡総括審議官、望月総合教育政策局長、矢野初等中等教育局長、池田高等教育局長、滝波総合教育政策局政策課長 他

5.議事録

【荒瀬会長】  定刻になりましたので,ただいまから中央教育審議会総会を開催いたします。本日は御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 この会議は,前回同様,ウェブ会議方式と対面を併用して開催させていただきます。
 本日は,盛山正仁文部科学大臣,青山周平文部科学副大臣,安江伸夫文部科学大臣政務官に御出席いただいております。ありがとうございます。
 それでは,盛山大臣,青山副大臣,安江政務官から御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【盛山大臣】  このたび文部科学大臣を拝命いたしました盛山正仁でございます。今回の総会は,私の大臣就任後,初めての総会でございます。中央教育審議会出席に当たりまして,荒瀬会長,永田,橋本両副会長を始め,委員の皆様方の,これまでの御尽力に,まずもって感謝,御礼(おんれい)を申し上げます。文部科学大臣といたしまして,全力で教育政策に取り組んでまいりますので,今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
 いつの時代も,教育というのは国家,社会の礎であります。発展の原動力でございます。国づくり,人づくりの根幹とも言える教育をしっかりと前に進めていくためには,皆様からの御提言を踏まえながら,様々な現場の方々との対話を重ね,政策を一つ一つ着実に進めていくことが重要であると考えております。
 本日はこの後,将来社会を見据えた我が国の高等教育の在り方について諮問をさせていただきます。急激な少子化が進行する中で,これからの高等教育はどうあるべきか,目指すべき姿,方策など,委員の皆様方からの闊達(かったつ)な御議論を頂戴したいと思います。その後も,先月取りまとめていただきました教師を取り巻く環境整備についての緊急提言を始め,多岐にわたる議題について御報告し,御議論いただくものと承知しております。
 本日のテーマは,いずれも我が国の教育にとって極めて重要なものでございます。委員の皆様方の,これまでの御尽力に対し,改めまして深く感謝を申し上げますとともに,引き続き御審議に御協力賜りますよう重ねてお願い申し上げまして,私からの御挨拶とさせていただきます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
【荒瀬会長】  盛山大臣,ありがとうございました。
 続きまして,青山副大臣,よろしくお願いいたします。
【青山副大臣】  皆さん,こんにちは。このたび文部科学副大臣を拝命いたしました青山周平でございます。中央教育審議会の委員の皆様方におかれましては,日本の発展の礎となる教育政策につき御議論を頂いておりますこと,心から感謝を申し上げます。
 私も,委員の皆様方の議論をしっかりと踏まえ,盛山大臣はじめ,職員の皆様とともに,我が国の繁栄の一番重要なところを支えているという強い気持ちを持って,全力で働いてまいりたいと思っております。引き続き皆様方から御指導賜りますように心からお願いを申し上げ,御挨拶といたします。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  青山副大臣,ありがとうございました。
 続きまして,安江政務官,お願いいたします。
【安江政務官】  このたび文部科学大臣政務官を拝命いたしました安江伸夫でございます。中央教育審議会の委員の先生方におかれましては,日本の宝である子供たちのために御議論を重ねていただいておりますことに心からの敬意を表し,感謝を申し上げる次第でございます。
 私も,委員の先生方の御議論をしっかりと踏まえ,複雑困難な課題にしっかりと対応し,また,対話をどこまでも大切にさせていただきながら,小さな声に寄り添い続け,誰一人取り残されない教育をしっかりとつくっていくために全力を尽くしてまいる所存でございます。今後とも御指導のほど,よろしくお願いを申し上げます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 盛山大臣,青山副大臣,安江政務官,本当にありがとうございました。頂いたお言葉をしっかりと受け止めて,我々も議論を続けてまいりたいと思います。
 続きまして,委員の交代及び文部科学省の人事異動がありましたので,事務局から御紹介をよろしくお願いいたします。
【滝波総合教育政策局政策課長】  それでは,委員の交代と,事務局の幹部の御紹介をさせていただきます。
 まず,本年5月28日付で大字弘一郎委員,それから平井邦明委員が辞任されまして,5月29日付で,東京都中央区立久松小学校校長で全国連合小学校長会会長の植村洋司委員が,また,東京都文京区立音羽中学校校長で全日本中学校長会会長の齊藤正富委員がそれぞれ就任されております。なお,お二人とも,この会議には少し遅れてのご参加と伺っております。
 委員の御紹介は以上でございます。
 また,事務局の幹部の異動がございましたので,この機会に御紹介をさせていただきます。
 まず,文部科学事務次官の藤原でございます。
 それから,文部科学審議官の藤江でございます。
【藤江文部科学審議官】  どうぞよろしくお願いいたします。
【滝波総合教育政策局政策課長】  総括審議官の豊岡でございます。
【豊岡総括審議官】  よろしくお願いいたします。
【滝波総合教育政策局政策課長】  総合教育政策局長の望月でございます。
【望月総合教育政策局長】  よろしくお願いいたします。
【滝波総合教育政策局政策課長】  初等中等教育局長の矢野でございます。
【矢野初等中等教育局長】  どうぞよろしくお願いします。
【滝波総合教育政策局政策課長】  私学部長の寺門でございます。
【寺門私学部長】  よろしくお願いいたします。
【滝波総合教育政策局政策課長】  それから,私,総合教育政策局の政策課長を務めます滝波でございます。どうぞよろしくお願いします。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 それでは続いて,本日の会議開催方式及び配付資料につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。
【滝波総合教育政策局政策課長】  それでは,御説明させていただきます。
 本日もウェブ会議での会議開催とさせていただきます。傍聴につきましては,ユーチューブにて配信をしておりますので,御承知いただきたいと思います。
 それから,各議題の質疑,意見交換の際,御意見ございます場合には,会場でのご参加の委員の皆様,ウェブ参加の委員の皆様ともに,挙手ボタンを押していただくようにお願いします。それから,御発言ですが,会長の御指名の後にお願いしたいと思います。会場でご参加の委員の皆様方には,会長から御指名があった後に,事務局からマイクをお持ちいたしますので,机上の端末にお顔を映しながら御発言を賜れればと思います。
 それから,今日の資料でございますけれども,議事次第にございますとおり,資料1-1から資料5までを配付してございます。過不足等ございましたらば,お申しつけいただければと思います。
 それから,資料5,これは中央教育審議会運営規則などに基づきまして,昨年10月の総会以降,中教審の会議を経ない形で行われました諮問につきまして御報告をするものでございます。この資料につきましては,時間の関係で配付の扱いとさせていただきますので,御了承いただければと思います。
 最後に,今日の御出席の状況でございますけれども,委員の数,全部で29名ですけれども,このうちの12名の方々がウェブ参加,それから10名の方々に会場でのご参加ということで,合計22名の委員の皆様に御出席いただくということで,定足数を満たしていることを御報告したいと思います。
 なお,本日途中での御退席,あるいは途中からのご参加という御予定の委員の方々もおいでになりますので,その点は御承知おきいただければと思います。
 説明は以上でございます。よろしくお願いします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 本日の議事でございますが,全部で4件あります。議題の1といたしまして,急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について,これは諮問を頂くことになっております。議題の2といたしまして,教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)について,先日出たものでございます。議題の3といたしまして,生涯学習分科会社会教育人材部会中間まとめについて,そして議題の4といたしまして,日本語教育機関認定法について,この4件でございます。
 それでは,まず議題の1に入りたいと思います。急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について,大臣より諮問がございます。
 撮影を御希望されるプレスの方は,真ん中辺りに黄緑の線がありますが,そちらまでお進みいただければと思います。
 では,盛山大臣,諮問理由の御説明をよろしくお願いいたします。
【盛山大臣】  会長,ありがとうございます。それでは,これから諮問理由の御説明をさせていただきます。
 本日の総会では,急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について諮問させていただきます。
 今,学校で学んでいる子供たちが社会の中心になって活躍する21世紀半ばの社会は,あらゆる側面において,これまでの,日本社会の仕組みの延長線上では対応できない事態に直面することが想定され,我が国の高等教育は,今正に歴史の転換点に立っています。
 とりわけ少子化は,我が国が直面する最大の危機です。急速な少子化に伴う18歳人口の減少により,2040年代の大学進学者数は50万人前後で推移すると推計されています。また,少子化の進行以外にも,コロナ禍を契機とした遠隔教育の急速な普及や,国際情勢の不安定化,研究力の低下など,高等教育を取り巻く環境は大きく変化しています。
 そのような中で,人材育成と知的創造活動の中核である高等教育機関は一層重要な役割を果たすことが求められています。とりわけ今後の人材育成においては,基礎的で普遍的な知識・理解と汎用的な技能に加えて,その知識を活用でき,ジレンマを克服することも含めたコミュニケーション能力を持ち,自律的に責任ある行動を取れる人材を育成することが特に重要となっています。また,社会に出た後も,新たに必要とされる知識,スキル,態度及び価値観を身につけ,またそれを更新していくためのリカレント教育も一層求められています。そして,このような人材の育成が,ひいては個人及び社会のウエルビーイングの実現につながるものと考えます。
 このような要請に応え,高等教育機関が求められる役割を真(しん)に果たすことができるよう,今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた,地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方や,国公私の,設置者別などの役割分担の在り方の明確化などを図りつつ,各機関の,教育研究の質の一層の向上を図ることが必要であり,中長期的な観点から,だいたい2040年以降の社会を見据えて,目指すべき高等教育の姿や,それを実現するための方策などの高等教育の在り方について検討をお願いします。
 具体的には,次の事項を中心に御審議をお願いします。
 第1に,2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿についてです。グランドデザイン答申で示された高等教育が目指すべき姿を前提としつつも,同答申以降の社会的,経済的な様々な変化を踏まえ,これからの時代を担う人材に必要とされる資質・能力の育成に向けた高等教育機関の,役割の一層の発揮のために,今後更に取り組むべき具体的方策について検討をお願いします。
 第2に,今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた,地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方についてです。各機関の理念や使命,社会のニーズを踏まえた高等教育の実現に向け,今後の高等教育全体の適正な規模も視野に入れながら,地域における質の高い高等教育へのアクセスを確保するための抜本的な構造改革の在り方について検討をお願いします。
 第3に,国公私の,設置者別などの役割分担の在り方についてです。高等教育全体の目指すべき姿を念頭に,国公私の,設置者別などの役割分担の在り方や果たすべき役割・機能等を明らかにするとともに,その実現のための具体的方策について検討をお願いします。
 第4に,高等教育の改革を支える支援方策の在り方についてです。教育研究を支える基盤的経費や競争的研究費等の充実,民間からの投資を含めた多様な財源の確保の観点も含めた,今後の高等教育機関や学生への支援方策の在り方等について検討をお願いします。
 以上,諮問事項について説明させていただきました。詳細については,お手元の諮問文に添付されております諮問理由を御参照ください。
 委員の皆様におかれましては,何とぞよろしく御検討くださるようお願い申し上げます。
【荒瀬会長】  盛山大臣,ありがとうございました。
 それでは,諮問を頂きたいと思います。
(諮問文手交)
【荒瀬会長】  大臣,公務のために御退席になります。ありがとうございました。
 では,事務局から,ただいま頂きました諮問に関する説明をよろしくお願いいたします。
【池田高等教育局長】  高等教育局長の池田でございます。よろしくお願いいたします。先ほど盛山大臣から御説明いたしました諮問理由及び諮問事項について,補足して説明をさせていただきます。
 資料は,基本的に1-1,諮問文に沿って御説明をさせていただき,1-2の諮問の概要と,1-3の参考資料等を必要に応じ参照させていただきたいと思います。
 まず資料1でございますが,頭紙をめくっていただいて,最初のページでございます。「理由」と書いてあるところでございます。
 高等教育の在り方を今回検討していただく背景,必要性について,大きく2点挙げております。
 上に書いてございます1点目が,急速な少子化の進行でございます。2022年の出生数は77万人強ということで,統計を開始した1899年以来,最少の数字となっております。少子化の進行の中で,我が国の,高等教育機関への進学者の数の推移につきましては,資料1-3のこのページに詳細ございますが,主たる進学者である18歳人口は,ピーク時である昭和41年が約249万人でございましたが,令和4年,昨年は約112万人と,半分以下に減ってございます。一方で,大学進学率が高まったため,大学進学者数は,当時昭和41年の29万人から,昨年は64万人へと大きく増加してまいりました。
 次に,資料1-3の22ページを御覧いただきたいと思います。急速な人口減少に伴って,今後の大学進学率の伸びを加味したとしても,2040年の大学入学者数は約51万人になります。少し細かい資料で恐縮ですが,3つの箱があるうちの一番上の段を御覧いただきたいと思います。このうち大学入学者数,2040のところは約51万人でございますが,これが2050年,一番右端になりますと,50万人を少し切るという状況でございます。したがって,2040年以降は50万人前後で推移すると推計されております。
 元に戻っていただいて,2点目は,先ほど申し上げた少子化以外の要素として,特に3点あろうかと思っております。コロナ禍を契機として遠隔教育が急速に普及して,その可能性や課題がはっきり見えてきたこと。それから2つ目は,国際情勢の不安定化により,教育や研究のグローバル化へ大きな影響が及ぼされていること。3点目は,我が国の研究力が相対的に低下しているということなどが,特に大きな点として高等教育を取り巻く変化として挙げられるかと思います。
 こうした状況の中で,文部科学省では2018年に,2040年に向けた高等教育のグランドデザイン,いわゆるグランドデザイン答申を中教審で取りまとめていただいておりまして,その中で,学修者本位の教育への転換を図り,教学マネジメント指針の策定や大学設置基準改正などを行って,高等教育の質の保証を始め,様々な取組を行ってきております。
 こうした今後の複雑に変化する社会におきまして,一人一人の実りある生涯と我が国の持続的な成長・発展を実現し,人類社会が調和ある発展をしていくためには,人材育成と知的創造活動の中核である高等教育機関が一層重要な役割を果たすことが求められております。高等教育機関においては,初等中等教育段階での取組も踏まえ,学生が文理横断的に知識やスキル,態度,価値観などを身につけ,AIでは代替できない,真(しん)に人が果たすべき役割を考え,実行できる人材を育成していくということが必要でございます。また,社会に出た後も,新たに必要とされる知識などを身につけ,随時更新していくためのリカレント教育が一層求められております。このような人材の育成が,個人と社会のウエルビーイングの実現につながると考えております。
 このような要請に応え,高等教育機関が求められる役割を果たすことができるようにするためには,今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方や,国公私の設置者別あるいは機関別などの,役割分担の在り方の明確化を図りつつ,各機関の,教育研究の質の一層の向上を図ることが必要です。また,これらを実現するための支援の方策についても検討する必要がございます。
 こうした御検討に当たりましては,中長期的な観点から,だいたい2040年以降の社会を見据えて,目指すべき高等教育の姿や,それを実現するための方策などの高等教育の在り方について御審議をいただければと思います。具体的な諮問事項につきましては,先ほど盛山大臣からもお話がありましたけれども,資料,このページの下段以降,4点挙げております。
 第1に,2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿についてです。現在の高等教育政策は,先ほど申し上げたとおり,だいたい2040年頃までを念頭に置いて審議,提言を頂いたグランドデザイン答申の方向性,特に学修者本位の教育への転換という大きな方向性を踏まえて進めております。今回の御審議におかれましては,この方向性を前提としつつも,同答申以降の社会経済の様々な変化を踏まえ,これからの時代を担う人材に必要とされる資質・能力の育成に向けた高等教育機関の,役割の一層の発揮のため,今後更に取り組むべき具体的方策について検討をお願いいたします。
 第2に,今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた,地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方についてです。2022年の18歳人口は約112万人,大学入学者数は約64万人でございます。グランドデザイン答申では,社会人や留学生を含めた多様性のあるキャンパスの姿を描いていただきましたが,学部への社会人入学者数はだいたい1万人台の後半でこれまで推移しており,学生に占める留学生の割合も,OECD諸国と比べて低い状況が続いております。また,地域によって高等教育機関への進学率や進学者収容力が異なるとともに,少子化の中で地方の私立大学ほど厳しい経営状況である傾向にあるなど,高等教育の置かれている状況は地域によって大きく異なっております。
 こうした状況も踏まえ,今後の,高等教育へのアクセス確保の在り方について考える必要があります。特に,各機関の理念や使命,社会のニーズを踏まえた高等教育の実現に向け,既存の学部・学科の構成や教育課程の見直し等,教育研究の充実に関する方策,高等教育機関間の連携の強化に関する方策,再編・統合等を促進する方策,教育や経営に関する情報の公表に係る方策を始め,今後の高等教育全体の適正な規模も視野に入れながら,地域における質の高い高等教育へのアクセスを確保するための抜本的な構造改革の在り方について検討をお願いいたします。その際,地方の高等教育機関が果たす多面的な役割につきましても十分に考慮しつつ御検討いただければ幸いでございます。
 第3に,国公私立の,設置者別などの役割分担の在り方についてです。第1及び第2の検討事項を踏まえ,高等教育全体の目指すべき姿を議論していく際には,設置者別あるいは機関別の観点からの議論も必要でございます。我が国の高等教育機関における設置者別の在り方については,明治期以来の歴史的経緯や制度上の位置づけ等も考慮し,また,グランドデザイン答申で再整理していただいた役割等も踏まえた上で,それぞれの高等教育機関が持つ特色と強みを最大限に生かして,高等教育の在り方を再構築していく必要があります。
 各高等教育機関におきましては,これまで設置者別,機関別に様々な役割を果たしていただいていますが,例えば国立大学においても,大学ごとにそのミッションの多様化が進んでいること,昨年3,000億円の基金によるデジタル,グリーン等の成長分野での学部再編支援を通じた大学改革の推進などの政策が進展するなど,政策上の大きな変化もございます。さらに,少子化の急速な進行やデジタル化,グローバル化の進展など,社会が大きく変化している中で,国公私の設置者別や,大学,短大,高専などの,機関別の役割分担の在り方,果たすべき役割・機能を明らかにするとともに,その実現のための具体的方策について検討をお願いいたします。
 第4に,高等教育の改革を支える支援方策の在り方についてです。各機関においては,厳しい財政状況の中で,人件費や研究費が必ずしも十分に確保できず,教育研究活動に大きな影響を与えかねない事態が生じているとの指摘がございます。また,我が国の高等教育段階に対する教育支出は,OECD諸国平均と比べ家計負担の割合が2倍程度高い現状もございます。第1から第3までの検討事項も踏まえ,教育研究を支える基盤的経費や競争的研究費等の在り方と,それらの充実方策,民間からの投資を含めた多様な財源確保の観点も含め,今後の高等教育機関や学生への支援方策の在り方等について御検討をお願いいたします。
 以上が中心的に御審議をお願いしたい事項でございますが,このほかにも高等教育の在り方に関し必要な事項について御検討いただき,審議が一定程度取りまとまったものから,順次成果を御提示いただければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,この諮問に関しまして御意見,御質問がおありの方はよろしくお願いいたします。御意見,御質問を発言される委員は,挙手ボタンを押していただくようにお願いします。会場の方も押していただくようにしていただきますと,順番が分かりますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,まず渡辺委員からお願いいたします。
【渡辺委員】  日本学校保健会・日本医師会の渡辺でございます。今の大臣からの諮問に関しまして,項目に関して簡単に意見を述べさせていただきます。
 まず,最初の目指す姿ということでございますけれども,国公私立や地域特性など様々な形態の大学という組織において,全ての大学が同じような特性を持つ人材を育成する必要はないと考えております。各大学は,各々の存在意義を考え,大学が目指す人材の姿を提示し,同じ方向性を共有する学生を入学させ育成するという体制が必要ではないかと考えます。どの大学も2年で基礎系を修学し,後半で卒論をつくるというパターン化した体制ではなくて,各大学――つまりこれは国公私立の関係なく,各大学の特徴を示していただくのがいいのではないか。専門学校や高等専門学校も同じように考えるべきと思います。
 次に,地域とかいろいろありますが,役割分担に関しまして,旧帝国大学を中心とした大きな大学と,それに類似した縮小版の地域の大学という構図は避けるべきだと思います。各大学は,どういう人材を育てて社会に送り出すかというコンセプトを明確にして,それに沿った学習プランを提供する必要があると思っております。他大学と重複するような学科は避け,特色ある分野を伸ばす運営をするべきであります。
 その場合に,資料1-2が示すような国立,公立,私立の定義のような概念を払拭して考えるべきだと思います。国立,公立,私立大学は経営母体が異なり,利害関係も生じると思いますので,例えば厚生労働省が行っている地域医療構想のように,省令で協議体を定め,都道府県レベルで関係者間による役割分担を協議し,都道府県内でどのような人材を育成し,他地区とどう連携するかという方向性を示すべきではないでしょうか。すなわち,文部科学省におかれましては,この件に関して当事者に委ね過ぎず,ある程度積極的な介入や調整を行うことが必要ではないかと思います。当然その中に高等専門学校や専門学校も検討の対象に組み込まれておくのが望ましいと思います。
 最後に支援方策でございますけれども,大学は教育機関であるとともに,研究機関である必要があると思います。近年,研究の質の低下とともに,インパクトファクターを有する論文数の減少も見られています。これは国立大学の独法化による研究費の削減が無関係とは思われません。このことは中教審でも相当議論されてこられたと思いますけれども,一体財務省はどう認識しているのかというふうに思わざるを得ません。文部科学省には,中教審の声を確実に財務省に伝え,現状に満足せずに,しっかりと闘っていただくことを強く要望いたします。
 その上で,一定の入学者に満たない,又は入学倍率が低い学部の予算を,活発に活動し入学希望の多い大学や学部に再配分することが必要ではないかと思います。現在でも各大学で,ある程度めり張りのある予算配分を行っていると思いますけれど,これを更に進めることによって大学のモチベーションが高まるのではないかと考えます。
 私からは以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。諮問の内容に関しましても大変積極的な御意見を頂戴いたしました。そういったことも含めて,今後,大学分科会で御議論をいただければと思います。ありがとうございました。
 では,清原委員,橋本副会長の順でお願いいたしたいと思います。清原委員,どうぞ。
【清原委員】  ありがとうございます。杏林大学客員教授,前東京都三鷹市長の清原です。ただいま頂きました諮問につきましては,タイトルに「急速な少子化が進行する中での」とあります。正に,今生まれた子供も,大学に入るのが18歳としますと,18年かかるわけでございますので,本当に深刻な状況の中で重い諮問を頂いたと受け止めています。2点に絞って意見を申し上げます。
 1点目でございます。資料1-2にまとめていただいております諮問の「高等教育の在り方を検討する背景・必要性」に,このように書かれています。「一人一人の実りある生涯と我が国社会の持続的な成長・発展を実現し,人類社会の調和ある発展に貢献するため,人材育成と知的創造活動の中核である高等教育機関の役割が一層重要化している」と指摘した上で,まずは「学生が文理横断的に知識,スキル,態度,価値観を身に付け,真(しん)に人が果たすべき役割を実行できる人材を育成することが必要」と指摘するとともに,その後でございます,「リカレント教育も重要」とあり,「こうした人材育成が個人・社会のWell-being(ウエルビーイング)の実現にも貢献」とあります。
 実は今期の生涯学習分科会において,後ほど報告させていただきます「社会教育人材の活躍推進」について検討するとともに,「リカレント教育,リスキリング」についても本格的な検討を開始しています。それは全ての人がウエルビーイングを実現するための生涯学習,社会教育を推進するためでございます。既に,経団連を代表する委員の方,連合を代表する委員の方,また企業におけるリスキリングと高等教育,大学教育との関係を研究している委員の方々の報告を受けながら意見交換を行っておりまして,次回は放送大学からリカレント教育の取組についてヒアリングをする予定です。
 本諮問については,主として大学分科会において審議が進められると想定していますけれども,地方創生,また地域社会の持続可能性について生涯学習の在り方を検討しております生涯学習分科会での審議が,この諮問の取りまとめに貢献できることがあるのではないかなと――いいえ,是非貢献したいと,生涯学習分科会の委員を代表して,分科会長として発言をさせていただきます。個人・社会のウェルビーイングの実現のために高等教育が果たすべき役割を生涯学習の視点からも強めて,まとめていただければとお願いします。
 2点目でございます。私は,かねて司法制度改革推進本部の裁判員制度・刑事検討会及び公的弁護制度検討会の委員を務めていたこともありまして,この数年,大学分科会に設置されております法科大学院等特別委員会の委員を務めています。この特別委員会では,これまで法科大学院の教員の皆様に加えて,未修者として弁護士になられている方を含む法曹界の皆様,司法研修所の委員の皆様などと,一時期は危機に直面していた法科大学院の取組を,いかに法治国家としてしっかりと確立していくかということで,熱心な議論が重ねられてきました。そこで,法科大学院協会の皆様の連携協働,そして法科大学院と法学部の連携で法曹コースというのもつくられました。大学改革について,法科大学院が学部と一緒になって改革してきたような事例もお役に立つのではないかと思いました。
 特にコロナ禍の中で,未修者の皆様の,教育の質の向上のために,共通到達度試験の取組をしたり,オンデマンド教材を法科大学院が共同で試作したりするなどの取組がありました。今年は法科大学院設立20年でもございまして,法曹養成連携協定に基づく法曹コースや,特別選抜による,いわゆる3プラス2の状況,今年度から実施される在学中の司法試験の受験等について,今,実態を適切に把握して検証していくプロセスに入っています。法科大学院の事例では,学部と大学院の連携,あるいは法科大学院と司法研修所や,自治体や企業等との連携についても推進がなされています。
 是非今回の,諮問の審議の中で,ほかにも教職大学院の事例とか,いろいろ皆様が御努力されている事例があると思いますので,実際の事例に即して,課題発見のみならず,解決の方向性について具体的な取組が提案できると望ましいと思いました。本諮問の意義を認識しまして,中教審の他の分科会や,あるいは委員会等々の活動を結集して,よりよい実効性のある答申に向けて取り組んでいければと,委員の一人として思いを強くして発言させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。おっしゃるとおり,これはもちろん大学分科会を中心に議論いただくのは間違いないのですけれども,中央教育審議会というのが今,3つの分科会を持っているということの意義をしっかりと生かしていく必要があるということと受け止めさせていただきました。と同時に,デンマークでしたでしょうか,からスタートしたフレキシキュリティーという発想がありますけれども,労働界と,それから学問の世界と,これがいかに行き来ができるかといった,そういったことも考えていくと,決して文部科学省だけで完結した話ではなくて,これはいろいろな場合によく言われるわけですけれども,その際,今,清原委員もおっしゃったように,よそとのつながりということを考えたときに,財務省はもちろんそうですけれども,財務省だけでなくて,関係する府省庁との関係というのもしっかりと考えていくことが,我が国の将来を描いていくことにつながっていくのかなということを思いながらお聞きしました。ありがとうございました。
 それでは,橋本副会長,よろしくお願いいたします。
【橋本副会長】  橋本です。こういう人口予測はほとんど当たりますので,まず18歳人口が減るということは間違いないと思いますが,大学進学率が今後も延びていくかどうかは少し懸念事項が残ると思います。
 アメリカでは,学費が高騰しているという環境要因もあるのですが,本当に大学に行く価値があるのかどうかという議論が結構行われておりまして,先進的な企業,いわゆるアップルとかグーグル等,入社に学位を要件としない企業も増えてきています。その中で,特にリベラルアーツ系の大学というのはどんどん統廃合が進み減っているという現象が起こっていると聞いています。アメリカで起こっているから日本にも起こるのだという単純な話ではないと思いますけれども,一つのストレスシナリオとして,進学率が現状より上がることはなくて,下がるということもあり得ることを考えておかなければいけないと思います。
 そういう意味で大学や高等機関で学ぶことの本質的な意味や価値というものを若い人が自覚した上で考える機会を増やしてあげるということが非常に重要だと思います。本当に大学に行く意味があるのかということを恐らく今の若者は考えると思いますので,その意味づけみたいことをしっかり提示できるかどうか。それは,それぞれの大学が自分たちの持っている強みとか特徴を明確にし,しっかりと示していただくということであり,いわゆる需要と供給の世界の中で,学生や留学生,あるいは研究者の方が,この大学だったら行ってもいいと選ばれる大学を目指していくことが本質論ではないかと思います。
 それともう一つ,これは企業の人間として実感していることですけれども,本当に二,三年のスパンで,いわゆる技術のトレンドは大きく変わっており,チャットGPTに代表されるように,去年と今年では全く違うことが起こっているという時代であります。そんな中で,学び直しのニーズというのは非常に高いものがあり,特にレベルを上げて学び直しをしたいというニーズは,これは企業に限らず,どのコミュニティーにおいても起こっていると思います。
 恐らくそこに大学が,その存在価値を発揮していく大きなチャンスがあると思います。もちろん学生の教育というのが本筋の仕事ではありますけれども,そういう社会のニーズに応えていけるリカレント教育を,大学あるいは大学院ならではの特色を生かしてやっていく。それはただ単に授業を行うことだけではなくて,世の中のニーズ,特に企業側のニーズがどこにあるかということも捉(とら)まえていただいた上でリカレント教育を進めていただき,需要に合った供給体制をつくっていただくということが非常に重要かと思います。
 リカレント教育をどうやったらいいかということについては意見がいろいろあると思いますが,それぞれの大学の創意工夫に任せ,先行している大学の事例や海外事例等を参考に,それぞれの大学が創意工夫をして,レッセフェール的に競争原理を働かせて頑張っていくというのがまず一つの方法だと私は思います。
 また,それでは全ての大学がついていけないということもあるかと思いますので,先進事例を横展開する,若しくは具体的な方策としてのプロトタイプを示してあげるということも一つの方法かなと思います。恐らくリカレント教育を進めたいという要望はあったとしても,どこから手をつけて,どんなふうにしたらいいのかなかなか捉(とら)まえられていない,あるいは情報収集しても具体的な実務として捉え切れていない大学もあるのではないかと想像しています。そのような大学に対して,どのようにサポートをしていけるかということも大変大事かなと思っています。このような視点をもって答申に向けた議論を進めていくことができたらなと思っています。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。今の御発言は,正に御自身もおっしゃいましたけれども,企業のお立場からの御発言であるというふうに考えますと,大変重みのあるお話であったと思っております。ありがとうございます。学び直しの重要性というのはみんな分かっているわけですけれども,なかなかそこに踏み切れない,いろいろな事情があるわけですが,その事情を一つ一つ乗り越えていく必要があるということを改めて思いました。ありがとうございました。
 それでは,吉岡委員,お願いいたします。
【吉岡委員】  ありがとうございます。この諮問については大学分科会が中心に議論をするということですので,総会の場で少し発言したいと思います。
 言うまでもなく,今後の社会というのは,非常に高度な知識や技能を必要とするわけであります。それを担っていくのが大学,高等教育だと思うのですけれども,先ほどの資料にありましたように,日本の高等教育に進んでいる人数というのは大体8割です。4年制の大学で5割をここのところで少し超えたというぐらいだと思います。今後,人が減っていけば,その数も減っていくだろうということは予想されることでありますけれども,しかし,これからの社会が非常に高度な技術や知能,能力を必要とするのであれば,やはり重要なことの一つは,初中教育から大学――大学でなくてもいいのですけれども,高等教育にきちんと進む道というものをつくっていくことではないかと思います。
 大学分科会での議論は,恐らく大学がどうするかという議論になると思いますけれども,やはり日本の社会の知的レベルを上げていくためには,例えば高校から高等教育をちゃんと受ける人の数を増やしていくということ,これはやはり非常に重要なことだろうと思います。これは大学分科会で大学のことを考えるのと同時に,是非初中等での議論ということも考えていただければと思います。いわゆる高大接続ということを広く取った場合の問題でもありますし,若い人たちの進学を支援していくということでもありますけれども,今後減っていくのだからという,そのことを所与にするのではなくて,どうすれば質の高い教育を受ける,特に若い人たちを増やしていくのかということは念頭に置いておかなければならないというふうに思って,総会の場ですので,発言させていただきました。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。正に今おっしゃいましたことは,先ほど橋本副会長からも,学ぶことの価値とか意味を若い人が考えることができるような機会を提供する必要があるというお話でありましたが,それと相通ずる御発言であったと思っております。高大接続というのは,大変重要なテーマであることは間違いありませんので,これについても引き続き,間にある入学試験をどうするのかといったことも含めて検討していくことは大変重要であると思いました。ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 今村委員,お願いいたします。
【今村委員】  ありがとうございます。少し私も,考え抜けていない段階での発言になってしまうのですけれども,発言させていただきます。
 私は義務教育ワーキングと高校ワーキングに参加をさせていただきつつ,自身の本業でもずっと義務教育と高校の学びをどうしていくべきかというところの現場で仕事をしています。2022年から本当に思いを込めて,この中央教育審議会で決定した,高校のカリキュラムをよいものにしていこうということで,探究を全ての教科の柱としていくということで高校の学び方が変わったわけなのですけれども,走り出しはよかったものの,現状,かなり多くの,特に進学校,進学を一部の子だけでも目指すような学校では探究の時間が非常に形骸化しているということが,既にそこかしこで起きているように見えます。
 これが何でそうなっているのかというと,やはり大学入試が待っているということに合わせた時間配分をしていったときに,1日7コマやらなきゃいけないし,特に1自治体1校しかないような高校ですと,やはりそこに全ての学力レベルの子たちが行っているということになると,国立大学を目指す子がいる限り,そこでの時間配分はかなり網羅的な教科の時間に配分しなきゃいけないということになって,じっくりと腰を据えて取り組んで問いを深めていくような探究の時間には,とても生徒も時間を使うことはできないし,先生もそこに対してじっくりと向き合う時間を確保するということはとてもできないということが起きています。
 そのときに,これは本当に悩むのです。18歳で大学生になるということを,ここからどこまで日本社会が多数の選択肢のまま行くのだろうかということが,やはりいろいろなことの諸悪の根源になっているのではないかなというふうに思っていて,資料3の3ページ目を見ると,18歳の60.4%が高等教育に入学していると書いてあって,それが少ないと見るのか多いと見るのか分からないのですけれども,やはりそこは,それだけの子たちがまだレディネスがない状態で,とにかく進路未定者を出さないようにということも含めて,高校は何らか高等教育にアクセスすることにしていて,それはやはりどこか,高卒を選ぶと,そこで,これからの一生の選択肢はそれでいいのかと,やはり大学を中心にした高等教育に入れてあげなきゃということも先生方の中にはあるように思っています。
 しかし,先ほどから出ているリカレント教育をベースにした社会にしていくとなれば,別に18歳で大学生にならなくても,一度働いて,そこから何らかの時間を経て,もう1回学びたいとなったときに大学生になると。資料3の9ページには社会人の入学者が学部で年間1万9,000人と,全然増えていないというようなことが見えてきているわけですけれども,むしろもっと社会がおおらかに,18歳に間に合わなくていいのだということがきちんとシステムになっていけば,小学校受験,中学校受験,高校受験というところにこんなに家庭がお金を使わないのではないかと。都市部では中学受験,私も小学生の親なのでびっくりしているのですけれども,地方で育った私としては,こんなにみんなが中学受験に間に合わないとまずいというムードが本当に私たちの心を支配するものなのかということを経験しているわけですが,その先にはやはり18歳で大学生になるというところを見据えた時間軸があるように思うのです。
 なので,そこを解除していくということを本当にどうしていけばいいのだろう,本当にリカレント教育ベースの大学入学というところをシステムにしていけないかということが,是非御検討される方々に一緒に検討していただきたいなということをお願いしたいと思いまして,発言させていただきます。
 私からは以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。探究が受験の邪魔になるというのは,本当はそうではないと心から思っておりますけれども,なかなかそれが理解されないということであれば,事実としてはなかなか通用していないということでもありますので,そこを何とかしなければならないということと,加えて,後からおっしゃったことは大変大きな話で,これは国によっては,高校を卒業した後そのまま大学に行く人って必ずしも多くなくて,専門学校に行ったりとか,一旦働いて,また勉強しようと思った人だけが大学に行くといったような,必ずしもそれが回り道とか寄り道しているというような意識にならない,そういう国もありますので,その辺考えると,我が国においてもどうしていったらいいのかということを考えるということかと思います。ありがとうございました。
 では,村田委員,お願いいたします。
【村田委員】  ありがとうございます。1点だけ,先ほどの吉岡委員の発言に少し触発されました。吉岡先生がおっしゃるように,ほとんど大学分科会で大学の在り方等々が議論されていくのだと思うのですが,1つだけ重要な点だと思いますのは,この諮問文の要約のところにも書いてあるのですけれども,例えば成長分野を引っ張るというような言葉が入っています。これは要するに文理横断,あるいは文理の壁を越えてというところだと思います。それから,先ほど橋本副会長からも出ましたAIの話です。これは情報系の科目の重要性だと思うのですが,そうしますと当然,高等教育,大学教育だけでなくて,中等教育での問題,中等教育で文系と理系を分ける,これがいいのかどうか。あるいは,情報教育をするときに,正に文系と理系のことも含めて,入試の問題を避けて通れないと思うのですね。今,今村委員からございました,いわゆる探究型の問題も,やはりこれは入試が科目別に行われているというところに大きな課題がありますから,入試の問題,これをどうするかということはやはり避けて通れなくて,ここの間をきっちりと,高大の接続,高大を一緒に議論することをしておかないと,大学は大学だけ,高等教育だけ,中等教育は中等教育だけで議論すると,結局問題の本質的な解決にならないのではないかという気がしておりまして,この総会の場でしかこういう発言できないと思いますので,一言発言させていただきました。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。やはりとても大事な御発言であったと思います。避けて通れないものはできるだけ少ない方がいいと思いますけれども,しかし実際にはたくさんあって,避けて通れないものは避けて通れないわけでありますから,そことどう向き合っていくのかというのを考えながら進めていかなければならないということかと思いました。ありがとうございました。
 では,後藤委員,お願いいたします。
【後藤委員】   大学分科会なので,そのときにと思っていたのですが,少しだけ述べさせてください。
 高等教育の在り方を論じる初期条件というのは,高等教育とは何かという再定義を含めて考えるということだと思います。国や社会が求める人材像を中軸にして,先ほどから出ていましたように初等中等との違い,それから連続性による人材育成の意義を明確にするということではないかと思います。もう少し端的に言うと,高等教育を受けたことで人は何がどう変わるかという基本的なところに立ち返るということだと思います。最初に御意見があったのですが,研究と教育のウエートの比率とか,それぞれのレベルで大学の役割を規定するということはできないと思います。高等教育機関は設置者,機関別のみならず,特色,強み,ミッション,それから育成する人材像は千差万別ですので,学校の規模や特色を考慮しない議論にはならないようにしていきたいと思います。
 まだいろいろありますけれども,また大学分科会でよろしくお願いします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。高等教育の再定義が必要ではないかというお話で,是非また大学分科会でよろしくお願いいたします。
 それでは,この辺りで次に移りたいと思いますが,よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。では,いろいろ出ました。大学分科会を中心に御議論いただくということでございますので,永田分科会長,是非よろしくお願いをいたします。
 では,続きまして,議題の2といたしまして,教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)について,事務局から御説明をお願いいたします。
【矢野初等中等教育局長】  初等中等教育局の矢野でございます。資料2-1のカラー刷りのペーパーを御覧いただきたいと思います。私からは,中教審質の高い教師の確保特別部会による,教師を取り巻く環境整備についての緊急的に取り組むべき施策(提言)について御説明申し上げたいと思います。
 初等中等教育分科会の下に設置された質の高い教師の確保特別部会におきまして,8月28日に,子供たちへの,教育の質の向上のための学校における働き方改革等について,直ちに取り組むべき施策に係る緊急提言を頂戴しております。この際,貞廣委員が部会長として,そして荒瀬会長には部会長代理として御尽力賜りましたことを改めて御礼(おんれい)申し上げたいと思います。
 今回の提言でございますが,緊急的に取り組むべき施策を取りまとめたものでございまして,今後,骨太の方針2023を踏まえつつ,制度的な対応が必要な施策も含め,広範,多岐にわたる諮問事項について,更に議論を深めていただく所存でございます。学校における働き方改革を進めるためには,国や自治体,学校など,それぞれの主体が取組を徹底することが不可欠でございます。この緊急提言を踏まえまして,国として教師を取り巻く環境整備に向けた支援に全力で取り組むことは当然のこととして,教育委員会や学校におきましても,できることを直ちに,かつ計画的に取り組むことにより,多くの教師の皆様が変わってきたという実感を持つことができるようにしていくことが非常に重要であるというふうに考えております。
 タイトルの下の黄色い枠囲みの部分を御覧いただきたいと思いますが,これは施策を進めていく上での基本的な認識や理念を取りまとめていただいたものでございます。学校教育の成否は教師にかかっているという大前提の下,教師は子供たちの成長を直接感じることのできるすばらしい職業であるということを示していただきました。我が国の学校教育の成果は,高い専門性と使命感を有する教師の献身的な取組によるものである一方,教師の時間外在校等時間は,一定程度改善しているものの,依然として長時間勤務の教師が多いという状況にございました。全国的な教師不足の問題も,憂慮すべき状況にあるとされております。
 このような状況を改善し,より持続可能な学校の指導,運営体制を構築していくためには,教育に関わる全ての者の総力を結集して取り組む必要がございます。国,都道府県,市町村,各学校など,それぞれの主体が自分事としてその権限と責任に基づき主体的に取り組むこと,保護者や地域住民,企業など,社会全体が一丸となって課題に取り組み対応していくことが極めて重要であるとされております。その上で,国は先頭に立って,教師を取り巻く環境整備のための支援を充実すること。また,各主体の取組を後押しするための強力なメッセージを発信することなどの役割を果たすことが必要であるというような御提言を頂戴しました。
 今般の改革の目指すべき方向性は,長時間勤務の是正を図ることで,教師の健康を守ることはもとよりでございますが,教師のウエルビーイングを確保しつつ,高度専門職である教師が新しい知識・技能を学び続け,子供たちに対してよりよい教育を行うことができる,これが核心部分でございます。
 次に,取組の具体策について,主なものを御説明申し上げます。まず,学校・教師が担う業務の適正化の,一層の推進についてでありますが,学校教師が担ってきた業務について,学校と家庭や地域との間や,教師と教師以外の支援スタッフ等との間の役割分担や連携を推進するため,平成31年の中央教育審議会答申においてお示しいただきました,「学校・教師が担う業務に係る3分類」と,それに基づく14の取組の徹底を図るため,国,都道府県,市町村,各学校の主体ごとに,具体的な対応策の好事例を横展開すべきということとしております。
 詳しくは資料2-3でお示ししておりますけれども,例えば資料3の3ページに書かれておりますけれども,登下校に関する対応の例でございますが,14の取組ごとに,右側に考えられる対応策の例として,各主体で取り組んでいただく内容を取りまとめております。2では,全ての学校で授業時数について点検し,特に標準授業時数を大幅に上回る,年間1,086コマ以上の教育課程を編成している学校は,令和6年度以降の教育課程編成において見直すことを前提に点検し,指導体制に見合った計画とする必要があるとしております。また,学校行事については,精選や重点化,準備の簡素化・省力化等を進めることとしております。
 3では,ICTはもはや学校現場に必須のツールでございます。1人1台端末の活用等による校務処理の負担軽減や,学校と保護者等の間の連絡手段の原則デジタル化など,ICTのさらなる活用が必要であるということとしております。
 次に,2の学校における働き方改革の実効性等の向上等についてでございますが,1では働き方改革について,学校教育運営協議会や総合教育会議で積極的に議題とするとともに,保護者等から過剰な苦情等に対しては,行政による支援体制の構築が必要であるとしております。
 2では,教師の健康及び福祉の確保に向けて,在校等時間が上限時間の範囲を超えている場合の学校の業務の検証や見直しの徹底,勤務間インターバルの実施に向けた効果的な在り方の検討,休憩時間の適切な確保が必要であるとしております。また,有効なメンタルヘルス対策が実施できるよう,要因分析や対策の好事例の創出が必要であるとしております。
 3では,学校における取組状況の公平な見える化に向けた基盤づくりとして,国において在校等時間の把握方法等を含め周知・徹底し,教育委員会と学校は,それに基づいて客観的な把握を徹底する必要があるとしております。
 次に,持続可能な勤務環境整備等の支援の充実についてでございますが,1では,教師の持ちコマ数の軽減等にも資する小学校高学年の教科担任制の強化など,教職員定数の改善が必要であるとしております。
 2では,教員業務支援員の全小・中学校への配置や,副校長・教頭を専門的に支援する人材の配置の支援,その他スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー,学習指導員,部活動指導員などの支援スタッフの配置充実が必要であるとしております。
 3では,給特法等の法制的な枠組みを含めた教師の処遇改善については,今後議論を深めていくことを前提としつつ,職務の負荷や職責を踏まえ,先行して主任手当や管理職手当の額の速やかな改善が必要であるとしております。
 4では,教師のなり手を新たに発掘するため,教育委員会と大学・民間企業等との連携・協働による教職の魅力発信や,マッチングの効率化等が必要であるとしております。
 緊急提言の説明は以上となりますけれども,今回の緊急提言や骨太の方針2023も踏まえ,来年度概算要求におきましては,資料2-5に記載しておりますけれども,小学校高学年の教科担任制の強化など,教職員定数の改善,教員業務支援員の全小・中学校への配置をはじめとした支援スタッフの配置充実,主任手当や管理職手当の,額の改善等の処遇改善,教育委員会が大学・民間企業等と連携し,教師のなり手を発掘・確保する取組の支援等,必要な経費を計上したところでございます。
 資料2-4を御覧いただきますと,この緊急提言を受け,8月29日に大臣を本部長とする,学校における働き方改革推進本部を開催いたしまして,「文部科学大臣メッセージ~子供たちのための学校の働き方改革 できることを直ちに,一緒に~」を公表したところでございます。
 ポイントは3点で,1点目として,国が先頭に立って改革を進めていくという決意を表明しました。2点目は,学校・教育委員会は,できることを直ちに実行すべきであるということです。そして3点目は,保護者や地域住民の皆様に,学校による業務の見直しや役割分担の見直し等に対する御理解と御支援を頂戴したところでございます。
 私から,説明は以上でございます。
【荒瀬会長】  矢野局長,ありがとうございました。
 では,本件につきまして,委員の皆様から御意見,御質問を頂戴したいと思います。先ほどと同様に,発言のボタンを押してください。では戸ヶ﨑委員,そして渡辺委員の順によろしくお願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  戸田市教育委員会の教育長,戸ヶ﨑でございます。今,矢野局長から御丁寧に御説明いただきましたとおり,こういう意味で,肝煎りで出された提言ですが,私自身危惧しているのは,いまだこの提言が届いていない自治体や,また,学校現場がないのかどうかということです。場合によっては,イベントの案内等の文書と同じような扱いを受けて,ファイリングの中にしまわれているのではないでしょうか。
 先ほどの議題(1)にも,この後の議題(3)にも関係する内容でもありますが,私としては,「令和型の戦略的広報」についても今後考えていかなくてはいけないのではないかということで,意見を申し上げます。
 これまで中教審答申をはじめとして,教育の施策は,文科省の多大な御尽力で,通知でもちろんそうですが,ホームページ,SNS,さらにはメルマガや場合によってトークイベント,さらには動画の配信など,様々考えられる手段,手法で広報発信の努力が行われてきています。しかし,常に考えているのは,伝えることと伝わることは全く違うということです。国から自治体等を経由して現場に着く頃には,本来的に大事な,本質的な意味,言うなれば魂といったものが抜けてしまって,要望だけが,ある意味負担感や抵抗感を持ちつつ,独り歩きしてしまうことを危惧しています。
 様々なグッド・プラクティスが,全国はもとより近隣の自治体にもなかなか政策波及されていかないことや,社会の変化に対応しよう,同期しようともしない,GIGAスクールの取組もそうですが,課題を抱えているとしても何ら困っていないというような自治体や学校があることを危惧しています。つまり,中教審と現場とのギャップを,常に意識していく必要があるのではないかと思います。
 教育は,「見届け」が極めて重要です。多義的で耳あたりのよい言葉で築かれた理想の教育が,演繹(えんえき)的なアプローチによって現場に下りていくだけでは,やはり現場の担当者は「分かったつもり」にはなっていても,腹落ちまではしていないことがあると思います。これまでも,立派な事例集をつくっていただいていますが,本当に届いてほしい自治体には届かない実態があると思います。
 そのような意味で,気づきを促すことは非常に重要だと思います。「インサイト」という言葉がありますが,こういう気づきを促すような刺激で国の議論等が,自治体や現場に腹落ちをして,実践等に結びつくように,「令和型の戦略的広報」や「コミュニケーション・デザイン」について,これからも知恵を絞っていく必要があると思います。今後は,通知等の優先度付けや「重み付け」の戦略も必要だと思います。
 更にAIや,RPAというロボティクスを使ったオートメーション的なテクノロジーを駆使しながら,情報を確実に受け取っているかの見届けや,それを受け取った自治体や学校がどういう気づきや変化,行動をしていっているのかの変容についても可能な限り,できれば可視化,定量化しながら,見届けていくことも必要だと思います。
 先行事例として,このたび教育課程課が,学習指導要領の趣旨の実現に向けて,「各教科等教育課程研究協議会」が今年度から,文部科学省の行政説明を市町村の教育委員会にもオンデマンドで視聴できるようにする取組をやっていただきました。これまでの教育界では常識であった,国から県,また,教育事務所を経由して市町村という伝言ゲームの壁に風穴をあける取組であり,これは小さな一歩ですが,私は歴史的な一歩だと捉えています。
 いずれにしても,喫緊の教育課題解決に向けて,スピード感を持って取り組んでいくためには,以前からの演繹(えんえき)的なアプローチを打破し,文部科学省から教育の最前線である現場へのチャネルを開拓しながら施策を届けるとともに,そのニーズを直接吸い上げていくような視点も大事だと思います。
 理想を申し上げれば,国,自治体,学校等のそれぞれのファクターが同心円状につながっていって,ポリシーダイレクションを共有しつつ,これからもお互いに助け合って,刺激し合いながら最適値を求めていくような姿に一日も早くなるといいのではないかと考えています。
 少し長くなりました。以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。大変重要な御指摘であると思いました。少なくとも緊急提言が届いていないというようなことが,これは大変穏やかにおっしゃってくださいましたけれども,実は相当それが心配しなければならない状況が,恐らくあるのだろうというふうに思います。出した側(がわ)は出したので届いたはずだと思っているのですが,実は受け取った側(がわ)の扱いが十分でなかったりとか,あるいはもっと言うと,完全に受け取っていないという状態とかがあり得るということですので,これは十分に,私も自分の属している組織でやっていることが,もしそうであれば,これは本当に仕事に大変大きな支障も生じますし,十分気をつけなければならないと思います。戦略的広報というのを意識するという,そのお話は大変重要な御指摘であったと思います。ありがとうございました。
 では,渡辺委員,お願いいたします。
【渡辺委員】  日本学校保健会・日本医師会の渡辺です。私は,教師の責任感という観点から1点だけ申し上げたいと思います。
 真摯に業務を行おうとしている教師ほど責任感が強く,当然ストレスも多くなるというふうに考えております。これまで繰り返し述べてきたことでございますけれども,教師を取り巻く環境整備で最も早急に対応すべき課題は,勤務時間の短縮だけではなくてストレスの軽減にあると思っております。文部科学省の御尽力で,教師の勤務時間は短縮されつつありますけれども,精神疾患の罹病率とか,それに伴う休職が減少しないというのは,やはりこれまでの対処の仕方が的確ではないのではないかというふうに感じております。是非事務局は,この分析をしてどう対処するかというふうな視点を持っていただきたいというふうに思います。
 教師の業務負担を減らす施策の1つとしてタスクシフトを挙げておられますけれども,それだけでは不十分ではないかというふうに思います。つまり,業務の分担だけではなくて責任の分担,つまりタスクシフトだけではなくてディビジョン・オブ・レスポンシビリティー(division of responsibility)が伴わなければ,負担の軽減にはつながらないのではないかと思います。単に時間を短縮するための支援員の配置とか業務分担だけではなくて,教師の責任を軽減する視点からの施策を,是非具体的に示していただきたいというふうに希望いたします。
 私からは以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。御専門の立場から,大変重要な御指摘を頂きました。今おっしゃいましたストレス,あるいはもっとそれが高じて精神疾患といったことにつきましては,特別部会の議論の中でもそういう御指摘があったというふうに聞いております。ありがとうございます。今後,特別部会は更に議論を続けていくという,その途中での緊急提言でございますので,今後の議論に生かせていただきたいと思います。
 では,石崎委員,お願いいたします。
【石崎委員】  初中分科会でも同じような話をさせていただきましたが,一応総会の場でお話しさせていただきたいと思います。
 2つあるのですけれども,1つは学校における教師を取り巻く環境整備というのを,小中学校だけではなくて高校,特別支援学校,幼稚園なんかも入るかもしれませんけれども,一体的に進めていただきたいということでございます。できることをできるところから始める,どこかで聞いたことがあるなと考えてみたのですけれど,部活動の地域移行のときに,その話,中学校でまず土曜,日曜から始めましょう。高校はいつ回ってくるのだろうな,高校の先生たち,校長先生たちだけではなくて,先生たちもいまだ待っております。
 学校における働き方改革の「学校」というのが,これは一条校のことをいうのか何の学校のことをいうのか少し定義されていないので分からないのですけれども,少なくとも高校,そして特別支援学校,幼稚園も大変だと思うのですけれども,そういったところの教師の働き方というものも含めて一体的に議論していただきたいということが第1点でございます。
 それから,第2点ですけれども,先ほどの委員のお話に似ているところもあるのですけれど,メッセージ性ということなのですが,働き方改革を進める上で,授業時数を大幅に上回っているものは削るとか,行事を精選するといった言葉が,もちろん丁寧に議論の中身を知っている人は違うということは分かるのですけれども,こうした言葉が躍っていますと,やはり教育の質を下げて働き方改革を進めようとしているのではないかという誤ったメッセージとして受け止められる方も,学校関係者以外の中ではいないわけではないと思うのです。ですから,そこのところはやはり丁寧にメッセージを伝えていく必要があるのではないのかなと思います。
 それから,少し話はずれるのですけれど,初中分科会でも同じ話をさせていただきましたが,私,近所の中学校の学校運営協議会というところにも参加させていただいています。そこに出ている地域の住民の方々から,学校は働き方改革といって,学校運営協議会という会議を5時までにやることに変えましたけれども,私たちだって働いていて,休みを取ってこなくちゃいけないのですという意見がたくさん出まして,中学校の校長先生困っていたのです。結局,働き方改革を御理解くださいというメッセージというか,紙は届いているしメッセージも届いているのですけれど,御理解くださいだけ言っても,やはりなかなか学校関係者以外の方に,いわゆるメッセージが届いていないのではないでしょうか。紙が届いていないという意味ではなくて,やはり意図がちゃんと伝わっていないというのか,理解を得られていないということがあるのではないでしょうか。だから,その理解を得てもらえるためには,やはりもう少し,学校ももちろん大変なのですけれども,世の中みんなが納得できるようなメッセージの出し方というのを考えていく必要があるのではないかなと思うところでございます。
 以上,簡単に2点ですが,今後の検討で生かしていただければと思います。いつもこの会議に私が出ていないということをしつこく言うのですけれども,本当にそれは高校の先生たちが,やはり高校が置いてきぼりにされているのではないかなと心配の声が届くので,いつもあえて言わせていただいているのですけれども,本当に「学校」というものを一体的に捉えていただければなと思いますので,よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。高校は決して議論の外にあるわけではないということは間違いないと思いますが,学校運営協議会の会議の時間帯については,これは多分学校だけではどうにもならなくて,社会全体で子供の成長に関わる時間を使うことが,例えば会社であっても堂々と休みが取れるとか,むしろそれが推奨されるとか,そういったような社会変革も伴わない限り,これはもういがみ合いしか生じませんので,そういったことも含めて考えていくことが必要かなと思いました。ありがとうございました。
 堀田委員,お願いいたします。
【堀田委員】  堀田でございます。緊急の提案について,御説明ありがとうございます。
 取組の,具体策の1の(3)のところに,ICTの活用による校務の効率化を推進する件がございます。私はこれまで,校務DX等についての,国の検討の会議の座長等を担当してまいりました。その過程でいろいろ調べてみると,実は先生方の働き方に対して,一部の自治体ではそれなりにICTの活用が既に推進されてきて,そのような自治体の割合はだんだん増えているなと思います。しかし実際は,自治体によるコンピュータの利用制限やネットワークに対する制限が強過ぎて,例えば校長先生のコンピュータはワイヤーで机に縛られていて持ち運べないので校長室でないと仕事できないとか,笑えないような話が結構あります。その結果,業務の自由度が低く,結果的に先生たちは職員室や校長室から離れられない,それで家に帰りにくいというような現実も出ている自治体もございます。
 こうなるのはセキュリティー上の懸念によるものでありまして,各自治体の情報セキュリティーポリシーとの関係でこういうふうに使いにくくなるわけですけれども,現在ではクラウドを活用するなんていうのは社会では常識ですし,成績情報のような機微情報と,そうでない様々な校務情報を区別してセキュリティーレベルを変えるというのは当たり前のことかと思います。各自治体の技術理解によっては,それらを全部一律に決めてしまって,全部持ち運べないとか,全部見ることができない,全部ここからしかできないみたいに制限しているところもございます。是非今回の提言を各自治体が受け止めるときに,先生方が働きやすくなるためにDXを今,目指しているのだという点を最上位に置いていただくということを,運用上,是非国からも求めていただければというふうに思います。
 私からの意見は以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。いろいろなことがつながっているということかと思います。今,堀田先生おっしゃいましたけれども,ICT活用が,授業で使うということが,どうもGIGAスクール構想の関係で強調される面もあるのですけれども,授業で使うものと業務で使うものとか全く別であるというふうな発想自体を乗り越えない限りは,使い勝手が悪くて仕方がないと思いますし,その辺り,是非進めていただければと思います。ありがとうございました。
 では,安孫子委員,お願いいたします。
【安孫子委員】  ありがとうございます。ニトリの安孫子でございます。企業から,業務改善,業務改革について意見を述べさせていただきたいと思います。
 企業としては経営上の必須項目として,効率改善の目的で労働生産性向上の行動を起こさなければ生き残っていけないために日常の業務の1つとして改善改革活動を行っています。できることを直ちに行うという考え方につきましても,行えないので問題が蓄積しているので,これはどのように行えるようにするか具体策を打ち出すこともすごく大事だなと感じます。
 今までの経験からも,業務の実態調査が,まずは業務改革の基本にあります。実態調査の前提としては,作業項目名と,その作業の内容を定義づけしたところから,実態を数値に置き換えることが重要な,まず改革の第一歩でありました。目標を実態からどのように変えていくかというというところの目標もシンプルに数値で表さないと,様々な関連部署,関連の業務をつなぎ合わせて,効率改善というのはなかなかうまくいかないものだと実感しております。
 この実現のためにどういうプロセスを踏むかですが,やはり経験上,兼務での業務改革はとても難しいということが分かっておりまして,これはそのための業務改革の特別部隊が,組織編成として必要になろうかと考えます。
 私からは以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。具体的に御提案を頂きました。恐らく学校での働き方改革がなかなか難しいのは,最高といいますか,最も重要な目的が,子供たちの成長であるというところで,そこのところがなかなか数値化できませんので,どうしたら最も効率的な働き方になるのかというのがなかなか見えないところがあるわけですけれども,そこをそれこそ本当に一つ一つ乗り越えていく必要もあるのだろうというふうに思いました。ありがとうございました。
 それでは,齊藤委員,お願いいたします。
【齊藤委員】  全日中の齊藤でございます。よろしくお願いします。発言の機会を頂きありがとうございます。
 今,様々な委員さんからのお話を伺いました。私も特別部会の委員として参加をしておりまして,部会に参加されている方には毎回同じことを言っていると言われるかもしれませんが,例えば国から発せられるメッセージは通知等も含めて現場がしっかりと受け止めているかということについては,校長が果たす役割が大きいというふうに思っています。
 8月に手交された提言,あるいは大臣メッセージにつきましても,全日中としてそのメッセージが出ているアナウンスをしています。ただ,それが成果に表れなければ,伝わっているのかということが,現場に対する声として上がってくることも,受け止めなければいけないと思います。その上で,これまで働き方改革に向けた取組につきまして,いわゆる今回3分類に関する具体的な対応策については,文科省からお示しを頂いております。この施策については,現場から上がっていなければおかしいという内容であると思いますし,これを国に率先してやっていただいたというところについては,働き方改革の具現は,待ったなしであるという危機感を,現場が一層強くもたなければならないという部分がございます。
 働き方改革の恩恵にあやかる教員から,どのような策を取ってほしいとか,どうなれば負担が軽減されるかという考えをきちんと吸い上げて,それを実行していくことで,時間の短縮にはつながらなくとも,働きがいを大きくするという部分については大きな意義があると思います。また,全日中としては,きちんと現場から考えを吸い上げて,それを教育行政機関や文部科学省等に伝えていくことも役割だと思いますので,引き続き努めてまいりたいと思います。
 今日,私,4時半頃に遅参いたしましたが,本校で学校運営協議会が行われていた関係で遅れました。本日の学運協の中でも,このメッセージについてはお伝えをしているところです。現場等で取り組まなければいけないことについて引き続き取り組んでまいります。今後とも御指導をお願いいたします。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。齊藤先生,引き続きよろしくお願いいたします。
 ここで青山副大臣が御公務のため,御退出になります。副大臣,ありがとうございました。
【青山副大臣】  どうもありがとうございました。失礼します。
【荒瀬会長】  まだまだ御意見おありの方いらっしゃると思うのですが,あとはあした会議がございますので,貞廣特別部会長に今日の御意見もお預けいたしまして,今後の御議論をよろしくお願いいたしたいと思います。
 では,議題の3つ目に移りたいと思います。生涯学習分科会社会教育人材部会が中間まとめを出されていらっしゃいます。まず,生涯学習分科会長の清原委員から御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。生涯学習分科会長の清原です。よろしくお願いします。
 生涯学習分科会では,第11期の生涯学習分科会での議論を踏まえるとともに,第4期教育振興基本計画における教育政策の目標の8番目に,「生涯学び,活躍できる環境整備」,9番目に,「学校・家庭・地域の連携・協働の推進による地域の教育力の向上」,10番目に,「地域コミュニティの基盤を支える社会教育の推進」などが掲げられていることを実現するために,第12期において,「社会教育人材の養成,活躍機会の拡充」に関する議論を継続的・重点的に行うことといたしました。
 そこで今年の5月に,専門的な議論を行う社会教育人材部会を設置しました。本部会では,牧野篤部会長を中心として,これまで5回の集中的な御議論を頂きました。そして,今後の社会教育の,裾野の広がりを見据えて,「社会教育人材をハブにした人づくり,つながりづくり,地域づくり」の実現を目指すべく,社会教育人材の養成に関する事項について,可能な限り早急に取り組んでいく必要があるものを中心に,中間的まとめを作成していただきました。今後,社会教育人材のネットワーク化などの残された課題について,部会で継続して検討していただき,生涯学習分科会でも審議を進める予定です。
 それでは,中間的まとめにつきまして,高木地域学習活動推進課長より説明していただきますので,どうぞよろしくお聞き取りのほどお願い申し上げます。
【高木地域学習推進課長】  失礼いたします。総合教育政策局地域学習推進課長の高木でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は資料3-1と3-2を御用意させていただいております。3-2が社会教育人材部会でまとめていただいた本文でございますけれども,本日は資料3-1,概要で御説明させていただきます。
 まず,青囲みの社会教育人材を取り巻く状況等に関する認識についてです。1行目から書かれてございますように,例えば,学校教育と社会教育との連携による,世代を超えた地域のつながりづくりが行われていること,福祉・農村振興・防災・まちづくりなどの多様な分野において,地域コミュニティに着目した施策が展開され,社会教育との連携が重要となっていること,社会の構造的な変化によるリカレントやリスキリングの学習ニーズの高まりなどの,社会教育のフィールドが広がっていることなどから,社会教育の裾野が拡大しています。
 こうした状況を見据え,地域コミュニティにおける学びを基盤とした自律的・持続的な活動の促進に資する,社会教育の専門性を有する社会教育人材が果たし得る役割は大きいと考えられるところでございます。
 しかしながら,様々な行政分野において,社会教育との連携が模索されている一方で,社会教育主事の配置率は5割を切っており,社会教育人材の質的な向上,量的な拡大を図っていくことが極めて重要となっているところでございます。
 2つ目でございます。続けてオレンジ囲みのところでございます。今後の施策の基本的な方向性を整理しております。まずは地域社会の様々な場で活躍する社会教育人材の確保についてです。多様な主体が担う福祉・農村振興・防災・まちづくりなど,様々な領域において,社会教育人材を確保することが重要であり,これにより相互の支え合いや組織的な教育力が発揮され,それぞれの活動の活性化だけでなく,社会教育全体の振興に資するものであると考えております。そのために,社会教育主事講習について,幅広い多様な人材にとって受講しやすいものとすることが重要となっております。
 このために欠かせないものが,右側の社会教育主事及び社会教育士の役割の明確化と,配置促進です。まず,社会教育主事ですが,多様な分野と社会教育をつなぐ地域全体の学びのオーガナイザーとしての役割が求められます。一方,社会教育士については,現場レベルの活動において,それぞれの専門性と社会教育の知見を生かしながら,それぞれの分野の活動を活性化させたり,その意義を深めたりする役割,専門性を様々な場に生かす学びのオーガナイザーとしての活躍が期待されると整理しております。こうした中で,社会教育全体を俯瞰(ふかん)し,調整することを職務として担う社会教育主事の役割は重要性も増すこととなります。
 また,地域の社会教育人材がそれぞれの専門性と相互のつながりを生かして活躍できるよう,社会教育主事が,地域の社会教育人材ネットワークを構築・活性化する役割を担うことが重要となります。つまり,各教育委員会が,社会教育主事を配置することで,地域における社会教育やその関連分野の実践をつなげ,各取組の相乗効果的な充実を図る体制を整備することが望まれます。
 その上で,下段に示したとおり,社会教育人材に求められる能力・知見等とその養成の在り方ですが,社会教育の裾野が広がる中では,受講者が自身のニーズに応じて選択し得る環境を整備・拡充していくことが重要になります。更に社会教育主事講習や養成課程では,社会教育主事の任用を見据えながら,社会教育士としての経験を積む上で必要となる,言わば社会教育人材のエントリー条件であり,受講後も様々な実務経験を積んでいき,社会教育主事として必要な能力を高めた上で,任用されていくことが望ましい方向性の1つであるということで整理されているところでございます。
 2ページ目をおめくりいただきまして,具体的な改善方策になりますけれども,量的な拡大を図るため,社会教育主事講習の定員を拡大することはもちろんのこと,それだけでなく,受講者の多様なニーズに応えるためにも,受講者の選択肢の拡大を図ることが必要であり,例えば,講習のオンライン化,夜間・休日の開講を促していくことや,分割履修といった複数の機関で講習を受講することなど,柔軟な履修方法も必要であることに触れております。このためにも,講習科目の提供方法を弾力化し,大学の判断によっては,開設科目数を柔軟に選択できるようにすることや,国の委託費を活用しないで実施する社会教育主事講習については,委嘱の期間を延ばしたり,大学の判断で受講料の徴収ができるようにしたりするなど,より多くの大学などの開講を促していくということを考えているところでございます。
 次に,社会教育主事養成課程における取組ですけれども,できるだけ多くの学生が受講しやすくなるような改善や,社会教育主事講習との連携による双方の充実・改善等が期待されるということについて記載しているところでございます。また,上記のような各大学での様々な取組の特色や工夫については,文部科学省と各機関との,意見交換の場の設置を行い,取組の共有を行うことで,さらなる質の向上を図ることが必要と考えているところでございます。
 続いて,受講資格の明確化でございますが,PTAや子ども会などの活動実績については,どういったものであれば受講できるのか,海外大学の卒業生の取扱いをどうするかなどについて明確化する必要があると整理しているところでございます。
 最後に,民間資格等の取得者の一部科目代替についてですけれども,民間資格等において,社会教育主事講習と一定程度関わりが深い部分がある場合は,部分的に一部科目を代替して認めることが可能となるよう,基準の検討を進めるということにしているところでございます。
 以上が,これまでの議論の整理とともに,国としてもしっかり速やかに進めなければいけない内容でございます。
 3ページでございます。今後の検討事項として,現時点で考えられるものを整理したものでございます。1つ目が,社会教育人材の活躍促進ということで,社会教育以外の分野,例えば,学校運営協議会と地域学校協働活動の一体的推進を含めた学校教育や首長部局,NPO,民間企業などで,社会教育の知見と,当該分野の知見を組み合わせながら生かしていくような活躍の場などについて促進方策を検討するといったものでございます。
 続いて,2つ目でございますけれども,社会教育人材のネットワーク化について,地域の社会教育人材がそれぞれの専門性と相互のつながりを生かして活躍する上で,お互いがつながり合う機会というのが極めて重要であるため,今年度の試験運用に加えて,更に具体的な手法を検討するといったものでございます。
 3つ目でございます。旧制度の修了者へ社会教育士の称号を付与する方向で検討すべきといった意見も踏まえまして,さらなる検討を進めると行ったところでございます。
 4つ目が,修了証書の在り方でございます。社会教育士であることの証明があった方が活動しやすいといった受講者側からの意見も踏まえまして,その発行体制も含めて更に検討を進めるといったものでございます。
 5つ目でございますけれども,社会教育主事の配置に関する実態把握を進めまして,今後の対応を検討するといったものでございます。
 6つ目でございます。社会教育人材の継続的な学習機会を確保するため,2つ目のネットワークの活用や,研修のオンデマンド配信,デジタルバッジ活用の可能性の検討を進めることとしております。
 最後,4ページでございます。今まで述べてきたものにつきまして,社会教育の裾野の広がりと,社会教育人材が果たすべき役割について図式化しておりますので,御参考までに御覧いただければと思います。
 文科省としましては,本中間的まとめの内容につきまして,速やかに制度改正に着手し,可能なものは令和6年度から実施していきたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  高木課長,ありがとうございました。
 これ,中間的まとめというのですね,中間まとめではなくて。なかなか難しいですね。ありがとうございます。
 ただいまの中間的まとめでありますが,御質問,御意見ございましたらお願いをいたします。では,秋田委員,お願いいたします。
【秋田委員】  学習院大学の秋田です。
 私は生涯分科会ではありませんけれども,これはこれからの地域コミュニティーを子供真ん中社会から高齢化の方を中心にして学び続ける社会をつくるというところまでの中心になる,社会教育主事や社会教育士の方々を育成するという,とても重要な試みであるというふうに,私自身思います。
 ただし,周知というのでしょうか,社会の中で社会教育主事のことや社会教育士の方のことがもっと一般社会に知られていくような,そういうような広報活動というものも必要であろうというふうにも思います。先ほど例えば,PTAなどの活動にこれまで参加されてきた方が実績として認められて,更にコミュニティー,自分のまちづくりに継続的・持続的に参加していくというような,そういうような活動の中心になられるような方たちというものがあるのだというようなことを,より周知していただくということが必要であろうと思います。
 また,2点目として,研修の在り方で,今回ネットワーク化というようなことも出されたりしております。また,人材のネットワーク化というものも,ただ人がつながればネットワークになるのではなく,触媒としてのプラットフォームがあったり,それから,何らかの新しい刺激があることによって,人はネットワークをつくっていくと思います。例えば,教職員の場合ですと,教職員支援機構というようなところがあるわけですけれども,この社会教育の人材育成につきましては,一応国研の中にそういうセンターがあるというふうには伺ったのですけれども,今後更にそこが中心になりながら,あるいは文部科学省のやはり国が中心になりながら,そうしたオンライン化であったりオンデマンド配信であったりというようなもののリーダーシップを取っていくことによって,各全国の自治体の中でも,社会教育主事という方や社会教育士の普及ということが可能になるでしょうし,養成も,私の前いた大学ではやっておりましたけれども,なかなかそう多くの人材が,どういう職があるのかがよく見えておらず,人材としても少ないというようなことがあります。
 むしろ,経済合理的に考えれば,もっと国とかあるところの研修施設が,こうしたものをオンライン化して,研修講座などを開いていくというようなことも重要になっていくのではないかというふうに思います。学校教育に余りにも多様なものが集中している中で,社会教育とのどのような連携ができるのか,そのための専門のコーディネーターというものをどうつくっていくのかということは,子供から高齢者までのウエルビーイングにつながるところだと思いますので,是非こうしたところを御検討いただけたらと思う次第です。
 以上になります。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。そもそも社会教育の,担い手の存在の周知が大事だというのは,非常に本当に大事なことかと思いました。ありがとうございました。
 大変申し訳ないのですけれども,あと会議の終了時間まで10分を切りそうな状態ですが,もう1件まだ議題がございます。御発言はそのままやっていただくのでありますけれども,手短によろしくお願いいたします。申し訳ありません。戸ヶ﨑委員の前に言うのは大変恐縮なのですけれども,よろしくお願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  先ほどの「戦略的広報」の話にも関連しますが,社会教育そのものや社会教育主事の存在そのものが,なぜ教育行政に必要なのかが,現場にまだまだ腹落ちしていないことが1つ課題だと思います。つい先週,埼玉県で社会教育主事配置調査があり,私自身も衝撃を受けましたが,そもそも社会教育主事が配置されていない自治体があります。配置されていない理由として,「社会教育主事を配置しなくても,一般職員が社会教育主事的な業務を行えている」「人事異動があるため専門職員の養成・配置が難しい」等が非常に多く掲げられています。これは厳しい言い方をすると,社会教育や専門職としての社会教育主事の存在の必要性がそもそも自治体に伝わっていないこと,また発令要件や対象などの資格制度の構造そのものが現場の実情に即していないところもあると思います。
 社会教育主事が,現場で具体的にどのような役割を担うのかが明確になっていないと,現状のままで「問題ない」と感じられてしまいますし,社会教育士の資格を取得しても,組織の中で活用されないままになってしまうことを危惧しています。学校現場と同様に,現場のギャップを意識しながら,意義や役割が「伝わる」ように,解像度をこれから上げていかなくてはいけないと思います。
 また,学校現場でも,社会教育と連携した取組がもっと促進されるように,教員籍の社会教育主事有資格者の位置づけや教育委員会内の社会教育主事との連携も非常に大きな課題だと思います。私が確信しているのは,地域の中にある様々な学習機会や地域人材の情報提供など,いわゆる学校教育と社会教育とが連携していくことで,学校の働き方改革に間違いなくつながっていくだろうと思いますし,活動の場を求めている地域の人にとっても更に学びを深めるいいきっかけになるのではないかと思います。
 本市においても,公民館の職員が学校に出向いていって情報交換を行ったり,地域の人に市内の学校の様子や教育施策等について知ってもらうという講座を開催したりするなど,小さな一歩ではありますが,連携の取組を進めています。
 更に大学の教員養成課程においても,教員免許の取得と同時に,社会教育士の資格を取得できるカリキュラムにするなど,学校教育と社会教育が一体のものであるということを,教員養成の段階から是非意識して学んでもらうことも重要だと思います。教師自らが,学校だけではなく,先ほど説明にありましたとおり,地域全体の学びのオーガナイザーであるという意識を持って地域社会とつながっていくことで,学校全体,学校以外の社会にも目を向けた授業づくりや学校運営の実現にもつながっていくと思います。
これからは,是非社会教育主事を軸として,子供も大人も共に学び続けられる環境をつくり,学びと活動を結びつけて,地域や学校で活躍する人材が増えるように,社会教育行政の枠組みを超えた取組を進めていっていただけるといいと思いました。
 長くなりました。以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 では,渡辺委員,お願いいたします。
【渡辺委員】  日本学校保健会・日本医師会の渡辺です。簡単に述べます。
 戸ヶ﨑委員と秋田委員と近い意見だと自分でも思っています。まず,社会教育士が国の認定となったことを受けて,今回の中間的な取りまとめを清原委員がつくられたというのは,非常にこの中身も評価することであります。なので批判するわけではないのですけれども,そもそも文部科学省としては,全国市長会から社会教育主事の必置義務撤廃の要望があったにもかかわらず必置にこだわったわけですので,その結果を調査分析することが先決ではないかと思うのです。つまり,社会教育主事の自治体への必置義務があるにもかかわらず,配置率が5割に満たない理由をまず分析するべきではないかというふうに思います。これは戸ヶ﨑委員がおっしゃったのと同じ意見であります。
 その理由は,現行の社会教育主事のどの部分にあるのか,何が問題だったのか。単なる市長や教育委員会の認識不足なのか。まず原因を明確にし,それならどういう形で研修を行い,どのような体制がそれに合うのか,どういう対処が,そういう今,理解されていないことに対して対応できるのか。運営とか研修の原資をどうするのか,というようなことを検討するのが先ではないかと思います。
 報告書の末尾に,これから配置できていない実態調査を進めるべきだと述べられていますけれど,対応が逆だと思います。複数の中核都市の教育長さんに個人的に伺ったところ,配置はされているけれど,法に従っているから行っているだけで,現時点では必要性を感じていないというふうにおっしゃっておられました。認識がないというのと同じだと思うのです。まず自治体関係者に,社会教育主事の必要性を認識していただくことが必要ではないかと思います。
 せっかく社会教育士を育成されても活用できる場がなくて,意義が理解されていない環境の中では,その能力を十分生かすことができないのではないかと思いますので,是非やはり環境整備を整えることを優先していただきたいというふうに希望いたします。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 時間の関係で何も申し上げないことにしようと思っておりましたが,大変重要な御指摘であるというふうに思います。どうぞ,清原委員。
【清原委員】  委員の皆様から,大変率直で現実に即した御意見を頂いたと思っております。生涯学習分科会といたしましては,資料の3-1の4ページ目を御覧いただくと示されていますように,今まで大学における社会教育主事の課程を修了したり,主事の講習を受けたりしたとしても,教育委員会に任用されなければ,「社会教育主事」という名称を使うことができないという現状がございましたところ,講習を受け,しっかりと能力を身につけた人は,「社会教育士」という称号を持つことができるという制度に変えたところ,この間正に3年ぐらいの間でございますが,約4,000人の方が,任用されなくても「社会教育士」の称号を得るという,研修への積極的な参加をしていただいたという事実があります。
 その方たちが必ずしも教育委員会に採用されなくても,ここで言えば学校における「地域学校連携担当の教員」であったり,あるいは「地域学校協働活動推進員」としての市民であったりの活躍をしていただいており,団体や民間企業の場合はCSRといいましょうか,地域貢献の中でネットワークやファシリテーターやコーディネーターの力を発揮していただいたり,地域コミュニティにおいて防災士などと連携しながら,防災活動を社会教育士が担っていただいたりというような事例が具体的に見えてまいりました。
 従いまして,今,教育委員会に任用されていない方においても,「裾野の広がり」という表現をいたしましたが,教育行政の中にとどまらない社会的なニーズの中で活躍していただけるまちづくりの力の発揮が見られました。そこで改めまして,教育委員会で働いていただく社会教育人材の在り方を検討するとともに,幅広い地域社会の生涯学習ニーズに適合的な社会教育人材の活躍についても検討すべきということで,本格的な検討を始めたわけです。
 渡辺委員は,まず実態もきちっと調べるのが先ではないかとおっしゃいました。後先になって恐縮ですが,実態をより一層正しく把握しながら,実際に社会教育士として研修も受け,活躍の場を求めている人には適切なマッチングを,そしてそういう人たちが孤立せずに地域の役割を果たせるような教育行政及び民間のNPOや企業等とも連携した,広い意味での地域づくり,ネットワークづくりへの提案もできればよいと受け止めました。
 いずれにしましても,委員の皆様におかれましては,改めて社会教育人材についてしっかりと周知徹底を図り,その取組についての情報が届きますようにという御意見でございます。文部科学省では,ホームページに社会教育士の取組については,かなり具体的な事例をビジュアルに,当事者の生の声も含めて発信をしておりますが,ホームページは見ていただかないとメッセージが届かないので,プッシュ型でないのが残念でございます。是非今日皆様から頂いた御意見を力に,生涯学習分科会,また教育人材部会として,しっかりと皆様の御期待に沿えるような検討を深めていきたいと思います。
 お力を頂きまして,どうもありがとうございます。以上です。
【荒瀬会長】  清原分科会長,ありがとうございました。では,引き続きよろしくお願いいたします。
 皆様,申し訳ありません。既に終了時間を過ぎております。あともう1件議題がございまして,大変恐縮ですが,延長させていただきます。よろしくお願いいたします。
 最後の議題です。日本語教育機関認定法について,まず,事務局から御説明よろしくお願いいたします。
【今村文化庁国語課長】  失礼いたします。文化庁国語課長です。お手元の資料4に即しまして,概要を説明させていただきます。
 我が国におきまして,在留外国人は,令和4年末で既に300万人を超えております。コロナ禍で少し人数が減っておりますが,コロナ禍の前,令和元年度におきましては,様々な日本語教育を提供する組織・機関を通じて日本語を学習されている方が,既に約28万人いるという状況でございまして,今後も日本語教育を必要とされる方々は増えていくだろうという状況の中で,日本語教育の環境整備が喫緊の課題となっております。
 このため,令和元年6月には日本語教育の推進に関する法律が成立しまして,その中で国の責務として,こうした日本語教育の環境整備について総合的な施策を作成し,それを推進すること,また,そのために必要な法制上の措置を講じるということになっておりました。
 こちらを踏まえ,今般の国会で成立しましたのが,日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律でございます。こちらは対象としましては,我が国に現に居住されている外国人の方で,日本語に通じない方が,我が国における日常生活,あるいは社会生活を国民とともに円滑に営むことができる,そのために必要な日本語能力を養っていただくための日本語教育を提供する,そのような環境をきちんと確立していくための制度を創設するための法律となっております。
 制度としましては大きく2つございまして,1つは先ほど申しましたとおり,日本語教育というのは現状,様々な機関,例えば大学ですとか,専修学校,各種学校といったいわゆる学校に類するものから株式会社のようなもの,あるいはボランティアの方を中心として,地域,地方公共団体ですとか,あるいは民間の団体等で提供されているもの,様々な実施主体がございます。そうした状況を前提としまして,日本語教育を提供される教育機関の申請に基づきまして,一定の基準に適合することを文部科学大臣が確認をした上で日本語教育機関を認定する制度を創設いたします。
 もう一つが,登録日本語教員の制度でございます。こちらは新たに創設いたします日本語教員試験に合格した者,また,一定の水準が確保されているとして登録をした登録実践研修機関が提供する実践研修を修了した者について,登録日本語教員として登録を受けることができる,このような制度を創設することとしております。
 この認定日本語教育機関,それから登録日本語教員の情報につきましては,文部科学省におきまして,日本語及び複数の言語で情報発信するということで,こうした体制ができているということを可視化することで,必要な方にきちんと届くということと,それから,こうした様々な主体で提供されている日本語教育におきまして,健全な競争というものが効いてきて,全体として日本語教育の質が向上するということを期するものでございます。
 この法律は来年4月に施行となっておりまして,現状,日本語教育を提供されている方が新制度に円滑に移行できるように,経過措置期間を5年間設けることにしております。
 つきましては,この法律におきましては,3つの事項について,政令で定める審議会の意見を聞くということになっております。具体的には認定日本語教育機関につきまして,認定基準を制定するとき,それから,実際に日本語教育機関を認定する,あるいは認定を取り消すとき,それから,日本教育機関が提供する教育等がその基準に適合しなくなった場合には,段階的な改善措置,是正措置を取っていくということになっておりまして,その一環で戒告又は命令をするとき,この3点につきましては,まず審議会の御意見を頂戴するということになっております。この対象としまして,教育機関の認定に関わる事項ですので,専門的な知見が必要ということで,中央教育審議会の意見をお聞きしたいと考えているところでございます。
 現状,政省令の制定をしているところでございまして,省令につきましては,先週パブリック・コメントが終了したという状況でございます。今御覧いただいているとおり,年明けからは全ての制度等をそろえまして,関係者への説明に入りたいと考えておりまして,大変恐縮ですけれども,政令が制定され次第,中央教育審議会からの御意見を頂戴できるような形でお願いできればと考えております。
 説明は以上です。よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  今村課長,ありがとうございました。時間のことを申しましたので,相当手短にお話しいただいたのかと思います。ありがとうございました。
 本件につきまして,皆様の御質問,御意見ございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 これ,もう一度というと変な言い方ですけれども,実際に意見を出す機会というのはまだあるということと受け止めてよろしいでしょうか。
【今村文化庁国語課長】  はい。実際は中央教育審議会で定められます分科会から御意見頂戴したいと思いますので,その際に御説明させていただけるかと思います。
【荒瀬会長】  ありがとうございます。そういうことだそうです。ということで,皆さん大変申し訳ありません,進行がまずくて。では,今回も御意見ございましたら,是非事務局にメール等でお願いをしたいと思いますが,よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 この件につきましては,今後,政令が公布されましたら,生涯学習分科会において議決ができるように,中央教育審議会運営規則の改正を行う必要があるものと考えております。この改正の手続なのですが,速やかに進めていくことが大事かと思いますので,書面での審議をもって審議会として決定することといたしたいと考えております。中央教育審議会運営規則第7条におきまして,審議会の議事の手続その他審議会の運営に関し必要な事項は,会長が審議会に諮って定めるとされております。つきましては,本規定に基づきまして,運営規則の改正手続を書面審議により進めることについて,本日の審議会にお諮りしたいと思いますが,よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【荒瀬会長】  ありがとうございます。オンラインでご参加の皆様も含めて,うなずいていただいております。ありがとうございます。それでは,そのように進めさせていただきます。
 これで終了させていただきますが,特に何かございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 では,長時間延長してしまいました。申し訳ございませんでした。本日の会議,これで終了いたします。ありがとうございました。
 

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