中央教育審議会(第125回) 議事録

1.日時

令和2年10月16日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧庁舎6階) ※WEB会議

3.議題

  1. 「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(中間まとめ)について
  2. 生涯学習分科会における議論の整理について
  3. 教育再生実行会議における検討状況について

4.出席者

委員

 渡邉会長、天笠副会長、明石委員、荒瀬委員、有信委員、今村委員、牛尾委員、加治佐委員、亀山委員、菊川委員、木場委員、清原委員、小林委員、今野委員、志賀委員、竹中委員、中野委員、萩原委員、橋本委員、東川委員、日比谷委員、堀田委員、道永委員、村岡委員、村田委員、吉岡委員

文部科学省

 田野瀬副大臣、鰐淵政務官、丸山文部科学審議官、松尾文部科学審議官、増子官房長、串田総括審議官、山﨑文教施設企画・防災部長、浅田総合教育政策局長、髙口大臣官房審議官、佐藤総合教育政策局政策課長、瀧本初等中等教育局長、蝦名大臣官房審議官、塩見大臣官房審議官、川中大臣官房審議官、中川国立教育政策研究所長、池田教育再生実行会議担当室長 他

5.議事録

【渡邉会長】
 それでは,お待たせしました。ただいまから中央教育審議会総会を開催いたします。本日は大変御多忙の中,また時節柄大変な折に御出席いただきまして,本当にありがとうございます。
 本会議ですけれども,新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するということで,ウェブ会議方式と対面を併用して開催させていただきます。
 本日は,田野瀬副大臣,それから鰐淵政務官にも御出席いただいております。副大臣と政務官におかれましては,就任後初めての中央教育審議会総会への出席ということでございます。一言御挨拶頂ければと思いますので,最初に田野瀬副大臣から,お願いいたします。

【田野瀬副大臣】
 御紹介いただきました,文部科学副大臣を拝命いたしました田野瀬と申します。
 日頃から中教審の先生方におかれましては,日本の教育政策のために,本当に未来に向けての御議論を熱心にいただいており,そして的確な提言,答申をいただいております。このことに心から御礼を申し上げたいと思っております。
 皆さんと共に今日も議論させていただけたらと思っておりますので,よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

【渡邉会長】
 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして,鰐淵政務官からお願いいたします。

【鰐淵政務官】
 皆様こんにちは。御紹介をいただきました,この度大臣政務官を拝命いたしました鰐淵洋子でございます。よろしくお願いいたします。
 中教審の委員の皆様には,これまで活発に御議論を重ねてくださり,お取組をされていますことに心から敬意を表し,感謝を申し上げます。大変にありがとうございます。
 私は,今回大臣政務官を拝命いたしまして,改めて未来の宝である,また日本の宝である子供たちのために,その子供たち一人一人が生き抜く力を育み,また個性や特質を引き出す教育,その実現のために全力で取り組んでいきたいと決意を新たにさせていただきました。中教審の皆様には大変にお世話になりますけれども,しっかりと皆様の御意見,御議論を踏まえた上でその実現に向けて頑張ってまいりたいと思いますので,今後とも御指導のほどよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

【渡邉会長】
 鰐淵政務官,ありがとうございました。
 それでは,本日の会議についての開催方式と資料につきまして,事務局より説明をお願いいたします。

【佐藤総合教育政策局政策課長】
 事務局を務めさせていただきます総合教育政策局政策課の課長をしております佐藤でございます。よろしくお願い申し上げます。
 ただいま会長から御説明,お話がありましたとおり,本日はWebexを用いたウェブ会議方式と対面を併用して開催させていただいております。文部科学省におきましては,新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から,会議の開催につきまして,従来ウェブ形式や持ち回り形式ということでやっておったところでございますが,9月19日以降,イベント等の開催規定について見直しが行われたことを踏まえまして,文科省におきましても傍聴者の規模を縮小する等の措置をとった上で,感染症拡大防止の措置を適切に講ずることを前提に,対面での会議開催を可能とするという方針で変更をされたところでございました。そこを受けて,本会議もウェブ会議を原則としながら,ウェブ会議と対面方式の併用という形で開催をさせていただいております。この点,御理解をいただければと存じます。
 そして本日,議題の(1)と(2)につきましては,内容の御説明の後,委員の皆様方に御議論いただく時間を設けてございます。会場にお越しいただいている皆様方で御意見があられます場合は,ネームプレートを従来どおり立てていただければと存じます。ウェブ参加の委員の皆様方におかれましては,挙手ボタンを押していただければと存じます。会長の御指名により,いずれにしましても順次御発言をいただくという形をとらせていただければと存じます。会場で御参加の委員の皆様方は,御指名があった後,事務局の者がウェブカメラ用のパソコンとマイクをお持ちいたしますので,そのセットができ次第御発言をいただくという形をとらせていただければ幸いでございます。
 また,ウェブ会議を円滑に行う観点から,大変恐れ入りますが,Webexからの参加の委員の方々は,御発言時以外はマイクとカメラをオフの状態にしていただくよう,御協力をお願い申し上げます。
 委員の皆様方におかれましては,大変御不便をおかけする点があろうかと存じますが,何とぞ御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
 なお,本日は報道関係者と一般の皆様方向けに,本会議の模様をWebex Eventsの方に配信を同時でライブで行ってございます。この点,御承知おきいただければと存じます。
 また,本会議は前回と同様,基本的にペーパーレスで進めさせていただければと存じます。
 委員の皆様方のお手元にございますタブレットに,本日の資料を既に開いてございますことから,資料の御確認をさせていただければと存じます。本日の資料につきましては,議事次第にございますとおり,資料1から資料4まで,加えて参考資料の1から4となってございます。御不明な点等ございましたら,係の方にお申しつけくださいませ。
 なお,資料4につきましては,中央教育審議会運営規則等に基づきまして,総会を経ないで行われた諮問について御報告をするものでございます。前回の総会以降,今年の1月でございますが,諮問が行われたものに加え,今期第10期の中教審の発足以後,これまで総会にて取り扱われなかった事項も,この資料の中に含んでございます。
 それと参考資料1につきましては,道永委員の方から御提出をいただいている資料でございます。
 また,参考資料の2と3についてでございますが,例年概算要求,それから税制改正要望事項については,事務局からお時間を頂戴して御説明をしてございますが,本年は時間の都合から,資料配付という形を取らせていただいてございます。御理解をいただければ幸いでございます。
 最後になりますけれども,本日の御出席をいただいている委員の皆様方,全体で29名の委員がいらっしゃいますけれども,会場御参加いただいている委員の方が8名,それからウェブで参加いただいている方が18名,計26名の委員の皆様方に御参画いただいていることを御報告申し上げます。
 そして机上に座席表と,本日の文科省側の出席者名簿を置かせていただいてございます。その名簿には,前回,今年の1月の総会から本日の総会までの間に人事異動等があった者について下線を引かせていただいてございます。お時間の関係で一人一人の紹介は割愛させていただければと存じます。
 以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

【渡邉会長】
 ありがとうございました。
 資料につきましては,議題ごとに御確認をいただくということでよろしくお願いしたいと思います。
 それでは,本日の議事について御説明させていただきます。まず議題(1)の「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して」,これは中間まとめでございますが,事務局より説明をいただいた後に,意見交換を行いたいと思います。
次に,議題の(2)の生涯学習分科会における議論の整理についても御説明をいただいて,こちらも意見交換をさせていただきます。
 最後に,議題の(3)については,教育再生実行会議における検討状況について御説明させていただきたいと思います。
 なお,先ほど説明がありましたとおり,報道関係者の皆さんと一般の方向けに,本会議の模様についてはウェブ会議ツールであるWebexで配信をさせていただいておりますので,御承知おきいただければと思います。
 それでは,早速でございますが,議題(1)「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して」について審議いたします。これは,昨年中教審として諮問を受けた「新しい時代における初等中等教育の在り方について」に関する内容でございますけれども,初等中等教育分科会や特別部会も含めて,大変精力的な議論をしていただきました。本日は,その中間まとめという位置づけでございます。
 それでは,分科会長を務めていただいた荒瀬分科会長と事務局から説明をお願いしたいと思います。最初に,荒瀬分科会長から説明をお願いします。

【荒瀬委員】
 初等中等教育分科会長及び新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の部会長を務めております荒瀬でございます。よろしくお願いいたします。
 まず私から,これまでの審議の経過について簡単に御報告をさせていただきます。詳細につきましては,後ほど事務局から御説明いただきたいと思っております。
 昨年4月に,先ほど会長から御案内ありましたように,文部科学大臣から,新しい時代の初等中等教育の在り方について諮問を受け,初等中等教育分科会の下に置かれた新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会を中心に,教育課程部会や教員養成部会など,関係する部会や有識者会議等におきまして審議を重ねてまいりました。毎回熱心かつ活発な御議論をいただき,前回の中央教育審議会総会でも御報告させていただきましたとおり,昨年12月には初等中等教育分科会において,論点取りまとめを行いました。その後,さらに議論を深めるべく,関係部会等での審議を進めようとしておりましたが,新型コロナウイルス感染症の拡大のために会議の中止や延期を余儀なくされました。
 子供たちにとってはもっと大変でありました。御承知のように,本年3月から全国一斉の臨時休校の措置が取られ,長期にわたり子供たちが学校に通えないという事態に直面いたしました。このことを受け,初等中等教育分科会及び新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会は,オンラインで緊急会議を開催し,4月30日に臨時休業等により学校に登校できない子供たちへの支援と,学校再開後の在り方について,「全国の学校教育関係者のみなさんへ」と題したメッセージを発出いたしました。その後,オンラインの会議を重ね,今般の新型コロナウイルス感染症の拡大によって大きな注目が集まった遠隔・オンライン教育を含むICTの活用についても集中的な議論を行いました。学校の役割や機能を踏まえつつ,ウィズコロナ,ポストコロナのそれぞれの段階において,ICTを活用してどのように子供たちの学びを保障,充実させていくことが必要かを議論し,特にポストコロナの段階では,対面指導か遠隔・オンライン教育かどちらか一方を選ぶのではなく,発達段階に応じて,それらを適切に組み合わせて使いこなすことで,協働的な学びを展開することが必要であるという方向性を示しました。
 このような初等中等教育分科会及び特別部会での議論と並行する形で,関係部会やワーキンググループでの議論を深めていき,その議論を踏まえ,今月7日には初等中等教育分科会におきまして,「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(中間まとめ)」を取りまとめました。本中間まとめでは,第1部を総論,第2部を各論とし,総論では2020年代を通じて実現を目指す学校教育を「令和の日本型学校教育」と名付け,その姿を描くことで,目指すべき方向性を示しております。
 本日,お手元の資料1-2の13ページから18ページにかけてのところですが,とりわけ16ページからは,幼児教育段階から始めて,各学校段階での子供の学び,教職員の姿,そして子供の学びや教職員を支える環境について,こういうことができる,こうなっているという形で,是非とも実現したい姿を述べております。目指すべき学びの在り方を,「全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現」とし,学校における働き方改革やGIGAスクール構想の実現といった動きも加速,充実させ,新学習指導要領を着実に実施しながら,従来の日本型学校教育を発展させた,新しい時代の学校教育を実現していくこととしております。
 そのための改革の方向性といたしまして,一つ目は,学校教育の質と多様性,包摂性を高め,教育の機会均等を実現すること。二つ目といたしまして,連携・分担による学校マネジメントを実現すること。三つ目といたしまして,これまでの実践とICTの最適な組合せを実現すること。四つ目といたしまして,履修主義・修得主義等を適切に組み合わせること。五つ目といたしまして,感染症や災害の発生等を乗り越えて学びを保障すること。六つ目といたしまして,社会構造の変化の中で,持続可能で魅力的である学校教育を実現すること,この6点を挙げました。それぞれの詳細につきましては,この後,瀧本初等中等教育局長に御説明いただきたいと思います。
 昨日から始めておりますが,今後30近い関係団体の皆様から広く御意見を伺いつつ,今年度内の答申に向けて引き続き審議を進めてまいりたいと思っております。今日は,中間まとめについての御議論をどうぞよろしくお願いいたします。
私からは以上です。ありがとうございました。

【渡邉会長】
 荒瀬分科会長,本当にありがとうございました。
 それでは,引き続き,事務局の瀧本初等中等教育局長から説明をお願いいたします。

【瀧本初等中等教育局長】
 引き続き説明させていただきます。初等中等教育局長を務めさせていただいております瀧本と申します。
 お手元の資料1-1と資料1-2がありますが,本日はお時間の関係上,資料1-1に基づいて説明をさせていただきたいと思っております。
 先ほど荒瀬分科会長から審議の経過については御紹介をいただきましたとおり,新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会,その他関係部会等における御議論も踏まえまして,今月の7日に,これまでの審議を踏まえた中間まとめが取りまとめられました。この資料1-1がその概要でございますけれども,まず1ページ目には,現在の学校教育を取り巻く社会の変化と,それから,日本型学校教育の成果と課題についてまとめられているところでございます。Society5.0時代の到来といった急激な社会的変化が進む中で,今般の新型コロナウイルスの感染拡大もあり,まさに予測困難な時代を迎えております。
 右の水色のところですが,このように急激に変化する時代の中で,我が国の学校教育は,一人一人の児童生徒が,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら,様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き,持続可能な社会の創り手となることができるよう,その資質・能力を育成することが求められているとされております。
 この資質・能力を育むための学校教育の在り方を検討するに当たり,まず知・徳・体を一体で育む「日本型学校教育」と言われます我が国の学校教育の成果と,変化する時代の中で直面する課題について,御覧のように9点の整理がなされてございます。
それも踏まえて一番下のところですが,こうした状況を踏まえた上で,学校における働き方改革やGIGAスクール構想の実現といった動きも加速・充実をさせ,ICTも活用し,新学習指導要領を着実に実施しながら,従来の日本型学校教育をさらに発展させた新しい時代の学校教育を実現する必要があるとされたところでございます。
 資料の2ページを御覧いただきたいと思います。2020年代を通じて目指すべき「令和の日本型学校教育」の姿について説明をさせていただきます。本中間まとめでは,目指すべき学びの在り方を,全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと,協働的な学びの実現とし,そのような学びを実現するための改革の方向性が示されています。
 まず,個別最適な学びについて説明をさせていただきます。学習指導要領においてこれまでも重視されてきた個に応じた指導については,「指導の個別化」,すなわち子供たち一人一人の特性や学習進度に応じた指導を行うとともに,自らの学習を調整し,粘り強く取り組む態度を育成する「指導の個別化」と,それから「学習の個性化」,すなわち子供たちの興味関心等に応じ,その子供ならではの課題を設定するなど,主体的に学習を最適化することを教師が促す「学習の個性化」を,教師の視点から整理した概念が個に応じた指導であり,これを学習者の視点から整理した概念が,「個別最適な学び」であると整理をされてございます。
 また,学校ならではの協働的な学び合い,あるいは多様な他者と協働した探究的な学び,様々な体験活動などを通じ,持続可能な社会の創り手として必要な資質・能力を育成する協働的な学びも重要であるとされました。知・徳・体を一体的に育むためには,教師と児童生徒,また児童生徒同士の直接的な関わり合いや,自分の感覚や行為を通して理解する実習・実験など,様々な場面でリアルな体験を通じて学ぶことが重要であると考えられます。また,個別最適な学びと協働的な学びの往還を実現することが必要であるとされております。
 このことも踏まえまして,中ほどの水色の部分で,各学校段階におきます子供の学び,その下の教職員の姿,子供の学びや教職員を支える環境等について,目指すべき姿が示されてございます。
 資料の3ページを御覧いただきたいと思います。ここまでの議論を整理して,日本型学校教育の構築に向けた今後の方向性について御説明をさせていただきます。
 まず,上の緑色のところですが,これまでの日本型学校教育が果たしてきた学習機会と学力の保障,社会の形成者としての全人的な発達・成長の保障,さらには安全安心な居場所・セーフティネットとしての身体的,精神的な健康の保障を,学校教育の本質的な役割として重視し,継承していくことが必要であると示されてございます。その上で,教職員定数や専門スタッフの拡充等の人的な資源,ICT環境や学校施設の整備等の物的資源,これらを十分に供給・支援することが,国に求められる役割として挙げられております。また,履修主義か修得主義か,あるいは,遠隔・オンラインか対面・オフラインかといった二項対立の陥穽に陥らず,教育の質の向上のために,発達の段階や学習場面等により,どちらのよさも適切に組み合わせて活かしていくという考え方に立つべきであるとされています。
 以上を踏まえ,全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと協働的な学びを実現するための「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性として,(1)から(6)まで,先ほど,荒瀬分科会長からも紹介がありました6点をまとめて整理をして示していただいたところでございます。これら6つの改革の方向性を踏まえまして,この後,各論9点にわたりますが,各論において今後進めるべき具体的な取組を挙げているという構造になっています。
 各論についてのポイントを絞って御紹介させていただきます。4ページを御覧いただきたいと思います。まず,各論の1番目は,幼児教育でございます。幼児教育の質の向上については,生涯にわたる人格の形成の基礎を培う幼児教育の重要性を踏まえ,幼児教育の実践の質の向上と,そのための環境整備が必要であることなどが基本的な考え方として示されました。幼児教育の内容・方法の改善・充実や,人材の確保,資質及び専門性の向上,幼児教育推進体制の構築などを進めていくこととされているところでございます。
 資料の5ページをお願いしたいと思います。資料の5ページ,各論2点目ですが,9年間を見通した新時代の義務教育の在り方については,児童生徒が多様化し,学校が様々な課題を抱える中であっても,義務教育において,誰一人取り残さないということを徹底することなどが基本的な考え方として示されています。カリキュラム・マネジメントの充実に向け,総枠としての授業時数は引き続き確保しつつ,教科ごとの授業時数の配分について一定の弾力化が可能となる制度を設けることや,義務教育9年間を見通し,小学校高学年からの教科担任制について,令和4年度を目途に本格的に導入すること。そのために,小学校と中学校の両方の教員の免許状を取得しやすくなるような制度の整備などを進めていくこととされているところでございます。
 資料の6ページをお願いいたします。6ページは各論3点目,高等学校の教育についてでございます。高校に在籍する生徒の多様なニーズ及び学びの実現が必要であることなどが,基本的な考え方として示されております。その上で,高等学校の特色化・魅力化を促進するための,特に普通科の在り方の見直しや,高等教育機関や地域社会等の関係機関と連携・協働した高度な学びの提供に向けた取組を,さらに進めていくことなどが示されているところでございます。
 資料の7ページをお願いいたします。各論4点目ですが,特別支援教育です。新時代の特別支援教育の在り方についてということで,インクルーシブ教育システムの理念を踏まえ,通常の学級,通級による指導,特別支援学級,そして特別支援学校といった,連続性のある多様な学びの場の一層の充実,整備を着実に促進することなどが基本的な考え方として示されております。その上で,特別支援学校の設置基準の策定,あるいは教室不足の解消に向けた施設整備など,教育環境の整備に向けた取組や,特別支援教育を担う教師の専門性の向上に向けた取組を進めていくこととされてございます。
 資料8ページをお願いいたします。5点目は,増加する外国人児童生徒たちへの教育の在り方におきましては,外国人の子供たちが共生社会の一員として,今後の日本を形成する存在であることを前提に,関連施策の制度設計や必要な支援を行うことなどが基本的な考え方として示されております。その上で,研修機会の充実等による教師の指導力の向上や就学状況の把握,就学促進に向けた取組,さらには進学や就職等の進路選択の支援の充実を図っていくべきことなどが示されたところでございます。
 資料の9ページをお願いいたします。各論6点目です。遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方についてでは,発達段階に応じてICTを活用し,教師が対面指導と遠隔・オンライン教育を組み合わすことで,個別最適な学びと協働的な学びを展開していくことなどが,基本的な考え方として示されてございます。その上で,学習履歴,いわゆるスタディ・ログの活用など,教育データのさらなる活用に向けた取組の加速,全国的な学力調査のCBT化の検討,デジタル教科書・教材の普及促進を進めていくことなどが示されてございます。また,臨時休業時におきます学びの保障,あるいは学校で学びたくても学べない児童生徒への遠隔・オンライン教育のさらなる活用について,方策を検討していくことが指摘をされてございます。
 資料の10ページをお願いいたします。各論の7点目,新しい時代の学びを支える環境整備についてでは,今般の新型コロナウイルス感染症対策や,GIGAスクール構想の実現を前提とした新しい時代の学びを支える学校教育の環境整備を図ることが基本的な考え方として示されてございます。1人1台端末や遠隔・オンライン教育に適合した教室環境等の整備を進めるとともに,少人数によるきめ細かな指導体制や,小学校高学年からの教科担任制の在り方の検討を進め,指導体制や必要な施設・設備を計画的に整理することとされてございます。
 同じく10ページの各論8点目ですが,人口動態等を踏まえた学校運営や学校施設の在り方についてでは,少子高齢化や人口減少等の中であっても,持続的で魅力ある学校教育が実施できるよう,学校配置や施設の維持管理,学校間の連携の在り方について検討していくことが基本的な考え方として示されてございます。教育関係部局と首長部局とによる新たな分野横断的実行計画の策定等により,教育環境の向上とコストの最適化を図ることなど,それぞれの地域の実態に応じた学校運営や,個別施設計画に基づく計画的・効率的な施設整備を進めていくことなどが示されてございます。
 資料の11ページをお願いいたします。各論最後の9点目でございます。Society5.0時代におきます教師及び教員組織の在り方についてでは,社会的な変化の中で,教師の情報活用能力の向上が一層重要であることや,多様な知識・経験を持つ人材との連携を強化していくことなどが基本的な考え方として示されてございます。教師のICT活用指導力の向上に向け,教職課程の授業や,現職教師への研修の充実を図ること,多様な外部人材が参画できる柔軟な教員組織の構築に向けた仕組みの構築など,具体的な取組を進めていくこととされてございます。
 以上でございますが,今後,中央教育審議会においてさらに検討を深めていただき,現在関係団体からのヒアリングも鋭意進めておりますが,そちらの議論も踏まえつつ,今年度内を目途に御答申をいただきたいと考えているところでございます。こうした検討も踏まえまして,文科省といたしましても,必要な制度改正,予算の確保等に取り組んでまいりたいと思います。
 引き続き活発な御議論のほど,何とぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

【渡邉会長】
 どうもありがとうございました。中教審の諮問事項全般について,漏れなく報告をいただいたのではないかと思います。
 それでは,ここからは委員の皆様から御意見,御質問を頂きたいと思います。講堂でご参加の委員の方は,いつもの通りネームプレートを立てる形で意思表示をしていただきたいと思います。それから,ウェブ参加の委員については,挙手ボタンがございますので,そのボタンを押していただければと思います。ただ,御発言が終わりましたら,ハウリング防止のため,手を下げるボタンを押していただければと思います。
 それでは,御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。では,橋本委員からお願いいたします。続きまして,清原委員,志賀委員の順で御発言をお願いできればと思います。

【橋本委員】
 橋本です。それでは,大きく2点について申し上げたいと思います。
 まず,ICTを活用した教育に関してです。今回の中間まとめの表題にもありますように,「令和の日本型学校教育」,これを進めるにはツールとしてのICTを基盤とする方向が示されておりますし,各論の中でも,教師の対面指導と,遠隔・オンライン教育等を使いこなすハイブリッド化の展開等が記載されています。その前提となる学校のICT環境については,国の御尽力によりましてGIGAスクール構想が前倒しをされ,整備が一気に進み,いよいよこれから1人1台の端末を活用した教育が進められるということで期待が増しております。
 ただ,市町村長さんからは,早くも更新期の財政負担を心配する声が多く寄せられております。この間,実際整備をしてみますと,端末が4万円台だとしても,それ以外に付加的な経費がかかり,すぐ6万円以上になってしまうという状況です。今回はコロナに係る特別交付金もあって財政上の心配はあまりなかったんですが,次の更新期への財政面での不安というのは非常に大きいものがあります。
 その一方で,こうした機器については,普段使いしてこそ値打ちがありますので,学校の備品というより,家でも自由に使える個人の文房具のようなものになった方がよいという考え方もあるかと思います。こうしたBYOD方式の前提としては,購入しやすい価格になるということが前提条件ですが,すぐには無理であったとしても,こうした方向を追求するという方法もあるんじゃないかと考えます。いずれにしましても,すぐ更新期を迎えることになりますので,自治体の負担を考慮した更新期の財政措置というものを早いうちから検討いただきたい。このことが,「令和の日本型学校教育」実現に向けて欠かせないということが1点です。
 加えまして,今回,校内のネットワークについても予算措置をいただき,環境が整備されることとなりましたが,今後,どの学校でも授業で端末等を一斉に使用するようになった際,学校外のネットワークの強化も必要になってくるだろうなというふうに思います。文部科学省におかれては,既に2022年度からのSINETの初等中等教育機関への開放が示されておりますので,こうしたものが通信環境として実際に使いやすいものとなることなど,今後,学校外のネットワーク環境の整備につきましてもよろしくお願いをしたいなということであります。
 あと一つ大きな2点目ですが,初等中等教育,とりわけ高校教育と高等教育との連携についてです。今回の中間まとめでは,幼児教育から高校教育までを幅広く含んだ内容となっており,その上で,高校教育については,初等中等教育段階,最後の教育機関として,高等教育機関や実社会との接続機能を果たすことが求められるとされています。高校改革の内容としましては,生徒の多様化したニーズに応じた学びを実現するため,普通科の学科の弾力化・大綱化を図ることや地域社会等との協働,そしてSTEAM教育を推進することなどが示されておりまして,高校教育の学びをより充実させ,魅力を高めようとするものだと思います。
 他方,高校教育との連携が求められる高等教育,またそのつなぎの部分に当たります大学入試改革については,現在見直し議論が進められているほか,高校の多様な学びを大学側で評価できるようにする,Japan e-Portfolioの取組の先行きが少し見通せないような状況もあり,今回の高校改革が本当に大学の方にうまくつながっていくのかという点では,少々不安もあります。大学入試が高校の教育に与える影響が実際に大きいだけに,重要な点だと考えます。新学習指導要領の実施による高校教育の改革を含め,一旦は大学教育,高校教育,大学入試改革の一体的改革として検討が行われ,方向性も示されたことでもありますが,今のように高校側,大学側双方の動きがある中で,改めて高校と大学の連携という点に視点を当てた整理等が必要ではないかというふうに感じております。
 以上です。

【渡邉会長】
 貴重な御意見ありがとうございました。
 1点目の端末の更新時予算等の関連については,今回,概算要求について御説明いただく予定にはしておりませんが,後ほど事務局から,解説いただければと思います。
 それから,高校改革については,これまで答申に盛り込まれてこなかった課題でありますが,今回はSTEAM教育を含めて,非常に重要で大きな改革案をご提示いただいております。また,高大接続につきましては,過去の答申にて基本的な考え方が整理されておりますが,今の時点で,この中間まとめに記載された考え方以外の要素があるのであれば,後ほど事務局からご説明いただければと思います。
 それでは,引き続き御意見をお伺いします。清原委員,お願いいたします。

【清原委員】
 ありがとうございます。杏林大学及びルーテル学院大学客員教授の清原慶子です。荒瀬先生を中心に,初等中等教育分科会及び特別部会の議論にも参加をさせていただきまして,本日この中間まとめがまとまったことを,分科会長,そして委員の皆様方に,私は感謝いたします。2点申し上げます。
 1点目は,先ほどの橋本委員の問題提起と重なりますが,今回の「GIGAスクール構想」,また「デジタル教科書の導入」,また「小学校高学年からの教科担任制の導入」,「少人数教育の充実」などの方向性は,いわゆる「令和の日本型学校教育」の具体的な中身として,現場の皆様にも信頼を頂きつつあります。
 昨日,ヒアリングの最初として,指定都市教育委員会協議会,中核市教育長会,全国町村教育長会の会長さんから御意見を頂きましたが,中間取りまとめに一定の御評価を頂きました。けれども,それと同時に,これを具体化していく際の「学校の施設整備の充実」,また,「最適な教職員の確保」については引き続き大きな課題であること。また,「過渡的には地域的な格差」の生じることも懸念されますので,「国及び都道府県の適切な支援」が現場には必要ということも確認されました。
 とはいえ新型コロナウイルス対策で,国も都道府県も市町村も,財政的には来年度の予算編成でも困難があると承知しています。そうした中,新型コロナ対策の一環としても,学校教育に必要な財源を確保していくということは極めて重要でございますので,今後,国,都道府県,各市区町村におかれましては,「令和の日本型学校教育」の構築の基盤整備のためにも,情報通信ネットワークの基盤や学校の施設整備のことも含めた,熱心な予算編成への御努力をお願いしたいと思います。
 2点目です。これは教育委員会と,それから首長部局の連携の一層の必要性について発言をさせていただきます。私は,東京都三鷹市長として,「コミュニティ・スクールを基盤とした小中一貫教育」を,教育委員会と連携して進めた経験を持っております。法律改正により,総合教育会議も実質化されました。この新型コロナウイルス感染症対策を通じて,子供たちの健康を守り,感染症を防ぎ,そして社会的距離を確保した学校教育を保障していくこと,そして保護者の悩みに寄り添うこと,教職員の働き方改革も進めることなどは,どうしても市区町村長と教育委員会,教育長をはじめとする委員の皆様とのさらなる連携がなければ実現しないと考えております。そうした具体的な現場に,「令和の日本型学校教育」の構築が進みますような具体的な提言を,さらに最終的な答申に向けて進めていければなと願っております。
 ありがとうございます。以上です。

【渡邉会長】
 貴重な御意見ありがとうございました。
 会議の途中ではございますが,田野瀬副大臣と鰐淵政務官におかれましては御公務があるということでございますので,これにてご退席をされます。本日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは,引き続きお願いしたいと思いますが,志賀委員から御意見を頂ければと思います。

【志賀委員】
 ありがとうございます。ちょっと頭が整理できていない発言をするかもしれないんですけれども,今産業界では,よく言われるように,いわゆるメンバーシップ型採用からジョブ型へのシフトが急速に進んできて,本当の意味のジョブ型にいっているかどうかはともかくとして,流れはそちらにいっているなと。メンバーシップ型とジョブ型の違いというのは,いわゆるメンバーシップ型というのは,会社がやるべき仕事を従業員に振り分けてやっていく。つまり,人に仕事をつけていくという。だから,適性を考えながら仕事に。したがって,その職場の中にはみんなが仕事をもらえるという,そういう比較的安心できる職場づくり,これが日本の強みだったわけですが,ジョブ型というのは,この仕事は今いるメンバーの中で誰がいいだろうと選ぶのではなくて,外からでも社外からでも,この仕事に最適な人材を持ってくるという,そういうジョブ型になってきました。したがって,メンバーシップ型とジョブ型に移ると言っているんですが,実は従業員にとって極めて厳しい。つまり,自分の能力が常に試されて,能力がなければ仕事がないという,そういう現実世界に直面していくわけです。
 今日御説明を聞いていた中で,これから日本が直面するであろうジョブ型の世界,つまりジョブ型と言っても,普通の仕事はどんどんAIに取られていっちゃいますから,AIができない,いわゆるジョブを人がするという世界になってくるわけなので,そうすると例えば,極めてクリエイティブな仕事であったり,あるいは企画力の強さであったり,実行力の強さであったりとそういうところが,しかもいわゆるメンバーシップ型であれば,OJTで数年間雑巾がけしながら教育されてきたものが,即戦力としてみなされる。つまり,新入社員のときから成績で評価されていくという,そういう世界が恐らく間違いなくやってくると。それがやってこなければ,日本経済全体が非常に厳しい社会になってしまうということだろうと思います。
 それを想定して,今そういう産業界の動きがある中で,「令和の日本型学校教育」が,そういうジョブ型人材を育てる教育になっているかどうかという視点で見たときに,幾つかのポイントがあろうかと思います。特に高校の普通科教育の学科の弾力化という,これは非常に重要だろうと思います。高校の普通科というのは,間違いなくメンバーシップ型人材を育てる,つまり全体的に平均値の高い生徒を育てていくというのには非常にふさわしい教育だったわけですが,そうではなしに,もっとそれぞれの能力,小中学校の間である能力を,高校のときからある程度特化させて教育していく,そういうような教育に移っていくことによって,そこからさらに大学で専門性を磨いていくと。こういうところでどんどんジョブ型人材の育成につながってくるのかなという気がします。
 冒頭申し上げましたように,十分整理した意見ではないんですけれども,産業界から見ますとそういう動きが目前に来ているということを考えていただいて,作成に当たっていただければなと,そのように思います。

【渡邉会長】
 どうもありがとうございました。今回の中間まとめにおいて,高校改革,とりわけ普通科改革やSTEAM教育は,まさしくご指摘頂いた視点も認識した上での記述だと思っております。ありがとうございました。
 それでは,先ほど事務局にお願いしていました,端末等の更新時の予算と,入試改革について,現段階でコメントできましたらお願いいたします。

【瀧本初等中等教育局長】
 初等中等教育局でございます。
 まず,義務教育についての,端末でGIGAスクールでということですが,正直現状を言いますと,なかなか大量な端末の調達になりますので,大体ようやく年度末ぐらいまでに,全国で何とか入るかなというような状況で,その中でも若干遅れが懸念される地域がございますので,まずはきちんと子供たちの手元に端末が届くように,調達の関係で事業者側にも協力いただきながら,そこを急いでいるという段階でございます。
 したがって各自治体には,自治体として議会との関係その他あるでしょうけれども,しかしながら,まずは子供たちの手元に届けるというところを力を入れてくださいと。その上で,耐用年数を考えますと5年前後になろうかと思いますけれども,更新時が来た際のということですが,御承知のとおり,これまでも一定の地財措置がございました。したがって,5年後の大きな更新費用に関しては,関係省庁とも十分相談をしながら,橋本委員からも,早いうちから検討してくださいということで御指摘ありましたが,できるだけこの調達をまずは終わらせた上で,それから活用に向けた支援をしっかりとしていきながら,できるだけ早くに次の更新に向けた財源の検討は,関係省庁とも協力いただきながら進めていきたいと思っているところでございます。
 その際,橋本委員からございましたとおり,今回も大量の調達で,全体として必要な機能を備えた端末の価格が大分低下してきておりますので,この価格の低下が本当にどこまでいくかということも含めて,先ほど委員からは,個人の文房具的なと,BYOD的なというお話もございましたけれども,様々な選択肢があろうと思いますが,そうした選択肢も含めつつ,財源に向けた検討は,できるだけ早期に関係省庁等も含めてスタートさせたいと思っております。
 あともう1点,同じく学校外のネットワークについての御指摘がございました。実は今回のGIGAスクール構想の中で整備できたのは,学校内における10ギガクラスのネットワーク整備でありまして,学校外のネットワークそのものは,私どもの文科省のGIGAスクールの予算では対応していません。ただ,きちんとそういうネットワーク環境を確認した上で,一人一人の児童生徒の端末に至ったベースでの十分な通信速度が確保できるようなことを確認をした上で申請をし,調達を進めてくださいということのチェックは一応いただいてはいるんですが,さはさりながら,やはり学校外の部分で心配なところがございますので,これについては,実は近い将来できるであろうデジタル庁に当たるITの担当室がございますので,そこ,あるいは総務省さんとも十分連携をして,学校外のネットワークに隘路がないかと。あるのであれば,これは他省庁とも協力いただきながら太くしたり,新たに,正直言うとまだ未光地域なんていうのがありますので,そういったことも含めて,きちんと関係省庁とも連携をしながら進めていきたいと考えております。
 すみません,最後の大学入試については,ちょっと私の方からは申し上げられませんが,高校の指導要領が再来年からですので,高校としてはしっかり進めつつ,その後のその子たちが受けていく大学入試との関係については,高校サイドの意見もしっかりと入れて反映をしていただく形で,現在進められている大学入試改革の議論に,現場サイドからもしっかりと意見を入れていただくように努力していきたいと思います。以上です。

【渡邉会長】
 ありがとうございました。高校段階ではスクールポリシーを明確にして,入試対応につなげていくといった考え方ということで理解したいと思います。ありがとうございました。
 それでは,ウェブで挙手をされている方にもご発言いただきたいと思います。小林委員,中野委員,村岡委員,さらにほかの方も手を挙げておられますが,まずこの3名の委員について,御意見を伺いたいと思います。
 小林委員からお願いいたします。

【小林委員】
 小林です。大変充実した取りまとめをいただきましてありがとうございます。私自身特別部会に参加しておりましたので,各論についての個別のコメントではありませんが,全体として,これからこれを具体的にしていくに当たってお願いしたい点を3点申し上げます。
 まず1点目は,本文の18ページにございますけれども,新しい「令和の日本型学校教育」を構築にするに当たって,新しい業務を次から次へと付加するという姿勢であってはならないと考えます。この点非常に重要だと考えております。人的資源,物的資源の供給支援は確保されるべきではありますが,現場ではやること,やめること,それから誰がやるのかということを,やはりゼロベースで考えて,新しい方向性に向かって体制をつくっていくことが必要ではないかと思います。
 2点目ですけれども,20ページにございますけれども,今回これを実行していくに当たっての機会均等,それから,一人一人の可能性を高めたり,誰一人取り残すことがないということは必ず実行しなければなりませんが,これは教育の水準を下げる方向,下にそろえるということではなくて,全体を上げていくという姿勢でお願いします。取り残されそうな人たちに合わせるのではなくて,上に向かって進んでいき,取り残されそうな人に対しては全力を挙げてサポートしていくというような体制で,機会均等ということをそういう形で捉えていただきたいと思います。
 それから,最後3点目ですけれども,28ページ目の幼児教育の質の評価の促進です。こうした評価をすることは非常に必要だと思いますけれども,往々にしてあまりにも細かい評価体制をつくることによって,現場への負担が増えてしまうようなことがあちこちで見られますので,この自己評価につきましては合理的に,そして問題点はPDCAに資するような,簡略で,そして分かりやすいものにしていただきたいと思います。
 以上3点です。

【渡邉会長】
 ありがとうございます。「令和の日本型学校教育」の具体化に向けて,働き方改革,チーム学校あるいは多様性と包摂の中にも出てくる考え方など,大変具体的な方向性をお示しいただきました。ありがとうございます。
 それでは,引き続き,中野委員からお願いいたします。

【中野委員】
 岡山県の浅口市の中野でございます。学校では新しい日常の中で,様々な工夫と対策を凝らして目的を明確にして,運動会や日帰り旅行などができるようになりまして,児童生徒の成長を実感できるようになったというのが現状でございます。
 今回の「令和の日本型学校教育」についての取りまとめ,本当に短期間の中で集中議論を行って,諸課題についての解決についてまとめられているということを評価したいと思います。私の方も,資料1-2の冊子の中で見ていったので,そのページでお願いいたします。
 まずは教科担任制の導入についてですが,35ページ,36ページにおいて,具体的な実施年度とか,それから教科,そして,重要であります免許の在り方など,こういったものの現実的な方向性が示されたと,こういった辺りをすごく評価しているところです。
 そして,前に戻りますが,31ページの中にも教科担任制の内容が入るわけですが,それが学力の確実な定着と資質・能力の育成に向けた方策ということで,教科担任制によって学力の定着が図れるんだというふうな位置付けの中で,私はまとめられているのを評価したいと思うわけです。
 32ページのところの一番上に,「扱う情報が高度かつ大量になる小学校高学年以降」という表現がありますけど,まさに私はそのとおりだと思います。学校現場からも自主的,それから主体的に教材研究を行いたいということがありますので,教科が絞られれば,そういったことも教員ができる状態になりますし,時間が欲しいというのが教員の実際の声だというふうに思っております。したがって,小学校では全ての教科を高学年の担任が指導するので,本当に限界が来ているというふうに考えるわけです。教師自身も児童の知的好奇心とか知的欲求,これに応え切れていないもどかしさを感じております。
 そこで,ここに具体な部分も書いてあるんですけれども,教科担任の中では授業の交換であるとか,それから専科教員の配置であるとか,それからもう一つは,同じ中学校区で中学校の教員が小学校高学年の教科を指導するといった辺りもすごく効果的だと思います。それもちょうど36ページ,小中一貫教育の導入と併せての記述となっております。この記述は大切な部分かなと思います。学校規模によってこの制度をうまく利用しながら,システムを作っていく必要があると思います。ただ,これは学校努力だけではできるわけではありません。教員の配置を早急に行う必要があるということを痛感しています。どこの学校もいろんな状況中で,今も実際にそういった考えの中で工夫をされていますけれども,やはり教員の配置がないことにはスムーズな実行には移れないということで,中間まとめの中を実効あるものにしてほしいなということを感じました。
 先ほど言った学校規模や,それから学校間の距離的条件などによってパターンができるのではないかと思いますので,その事例をまとめていただきたいと。今後,そういうことも必要だと思いますし,先ほど,教員数の少ない学校,資源が少ないように見えますけれども,そういう学校については,是非オンライン授業など,提携する学校等を決めて,オンライン授業などを組むといったようなこともできるかというふうに思います。
 2つ目です。32ページの白丸3つ目ですが,令和の時代こそ,幼児教育から学びに向かう力を育てていく必要があると思います。その1つに,キャリア教育が取り上げられています。小学校から中学校の接続の部分の大切さ,中学校から高校への接続部分の大切さが述べられておりまして,本当に小中高の一貫の考え方でキャリア教育を進める必要性があると思います。そういったときには,県や市の実態のレベルでまとまりの中で考えていく必要があると思うんですが,その手法として,自分の学習履歴をキャリア・パスポートに取りまとめていくというふうなこと。指導要領にも示されているわけですが,そのことによって,ボランティア活動や社会貢献が促進されるということも,私は期待できると思っています。
 そのときに,自己の変容や強みを振り返って,そのときだからこその教師や友達から助言,アドバイスなどが心に響いた言葉として蓄積されていくのではないか,効果があるのではないかというふうに考えるわけです。そのときに,このパスポートの内容や様式,そして,これが持続的に学習履歴を残せるデジタル化を研究してほしいと思います。1人1台端末になりますので可能だと思います。そういった辺りが示されてくることを期待しています。
 最後になりましたが,世界的なコロナウイルスの影響によって,海外への渡航が制限されて,我が市でもオーストラリアの生徒とオンラインで交流を計画しているところです。日頃は毎年,オーストラリアとの交流をしているわけなんですが,実際に行っているわけなんですが,今はオンラインの交流を計画しています。今後はICTの活用によって,海外の中学生や高校生と議論を深めるという可能性も出てくるのではないかというふうに思います。子供たち1人1台端末の有効性を本当に子供たちがきちっと理解してほしい。嫌いになることがあってはいけないと思うんです。ですので,この中にもICT支援員の話もありましたが,しっかりと理解して子供たちがこれを使えるような状態が大切だと思います。ここにまとめられている中間まとめが具体的な形になって現場に浸透してくれば,すばらしい形になるかなというふうな感想を持ちました。
 以上です。

【渡邉会長】
 どうもありがとうございました。御指摘のとおり,今回の教科担任制は大きな改革の中心になる内容かと考えます。その具体化に向けての御指摘だと思います。
 また,小中高の接続性,連続性については,新学習指導要領の考え方自体の連続性とも重なると思います。本当にありがとうございます。
 それでは,引き続き,村岡委員からお願いいたします。

【村岡委員】
 山口県知事の村岡です。中間取りまとめ御尽力に感謝を申し上げます。
 私の方から,大きく2点申し上げたいと思います。1点目ですけれども,ICT教育の関係でございます。今,GIGAスクールによりまして,小中学校,みんな1人1台端末が整備をされるということになりまして,県内でも今進めているところであります。今回,コロナによりまして,これは我々県などで,高校の方も休校等を行うことによって,私自身かなりICTの遅れを痛感しております。
そしてまた,小中学校については1人1台整備がされる中で,9年間,1人1台でICTが充実した中で教育をして,高校に行った途端にまた黒板の世界,アナログの世界に戻るということでは非常にもったいない。ここはやっぱり連続してICT教育をしっかりと行えるように,山口県におきましては,今回コロナを踏まえまして,県立高校においても1人1台端末を整備する,また,学校内の通信環境もしっかり整備するということを,これは単独で行うことにいたしました。それからまた,私立高校の方も,ICT環境をしっかり整備してほしいということで,県独自の支援を行ったところです。
 そして,実際の教育の中身を充実するために,やっぱり先生方のスキルアップ等が必要でありますから,特に教職員のICT教育をするためのスキルアップなりサポートのための特設サイトを設けましたり,あるいは県立高校について5校,ICT研究校に指定をいたしまして,その中で,導入します1人1台端末を活用して,主体的で対話的で深い学びができる,そうした授業を研究していく。また,個別最適学習を行っていく,そうしたことをモデル的に行いながら,その成果を全県的に普及していきたいなと思っております。
 今回取りまとめでも書いてあり,先ほども説明がありましたけれども,対面指導か,ICTオンラインかという二項対立じゃなくて,やっぱりそこをしっかりと結びつけたハイブリッドでやっていくということを追求していくのはそのとおりだというふうに思います。
是非そうしていただきたいと思いますが,先ほどお話もありましたとおり,ICT環境を整備するんですけれども,これはやっぱり続けていくためには大変コストもかかってまいりますし,また,将来更新も出てきます。今,政府におきましてデジタル化を社会全体で進めていこうということで大きく動き出していますけれども,私は,是非教育の分野へ,特に力を入れていただきたいと思います。やっぱり未来を担う子供たちに,デジタル化,ICTの投資というのを優先的に充実をして行っていくべきだと思いますので,ここをしっかりデジタル化社会を進める中でも,是非文科省に頑張っていただいて,特に子供たちの教育こそ優先的にデジタル化すべきだ,ICTの恩恵を与えるべきだということを訴えていただきたいな,頑張っていただきたいなと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。
 それから2点目は,少人数学級の関係です。山口県におきましては,平成14年から独自に少人数学級を進めておりまして,全国に先駆けまして,平成23年度には小学校,中学校全ての学年で35人学級を実現しています。そして,大規模小学校におきましては,小1プロブレムなどの課題の解決のために,30人学級化も取り組んでいるところです。これもやってみて非常に成果が上がっておりまして,実際に授業についていけない児童がぐっと減ったりですとか,あるいは,一人一人の発言の機会が増えたり,いろいろ動作をする機会を充実させることによりまして,主体的な学習につなげることができています。また,クラスの人数を減らすことによって,教室のスペースもゆとりが出てきまして,それによって子供たちが自由に活動できる場所だったり,あるいは身体表現活動ですとか,作業的な学習を充実して安全に行うことができる,様々メリットがあるわけです。是非これをしっかりと進めていただきたいというふうに思います。
 ICT教育の考え方も同じですけれども,個別最適化の学習,一人一人に応じた学習というのはこれからますます求められるわけでありますので,そうしたことに対応して,少人数学級化も是非進めていただきたいと思います。また,感染症対策もございます。こうした時代にこそ,子供たち一人一人を大切にする,そうした指導ができるように,是非これは国の責任で,計画的に少人数学級を進めるべきと考えておりますので,是非ここは力強くお願いしたいと思います。
 以上です。

【渡邉会長】
 ありがとうございました。自治体側から見た視点として大変重要な御指摘だと思います。
 今のご意見に関連して,ICTインフラの高校段階の予算措置の考え方,あるいは少人数学級に関する行政を含めた検討状況はどうなっているか,もし今段階でコメントできることがあれば,事務局から説明できますでしょうか。

【瀧本初等中等教育局長】
 会長から2点御下問がございました。
 まず1つは,GIGAスクールの高校についてということでございます。現時点では,直ちに予算というのが計上されてないわけでございますので,現状山口県の村岡委員からもございましたとおり,県の公費できちんとそろえているところ,ないしはそろえようとしているところ,それから,BYODの方針を既に公立学校でも導入して,1年生はBYODが原則とか,あるいは学科によってBYODをやっているところなど,様々な状況がございます。こうした状況を踏まえた上で,GIGAスクールのうちの高校部分をどうしていくかということについては,現在まだ明確な方向性としては出ておりませんが,検討させていただいているところでございます。
 すなわち,進んだところはもう既にかなり投資が済んでいる中で,国としての役割については,これまでは地財措置で一定の対応を高校にもしてきたという中で,今後に向けてどうしていくかということで,現在検討させていただいているところでございます。
また,少人数についても会長から御下問ございました。村岡委員からも御発言ありましたし,関連をして,中野委員からは教科担任制で教員の配置をしっかりと,ということで御意見を頂きました。いずれも来年度の概算要求の中で,教科担任制についての充実であったり,少人数学級を含めた子供たちのきめ細かで,計画的な指導体制につき,現在,財政当局と折衝中でございますので,今,激励していただきましたが,しっかりと我々現場の声も踏まえて取り組ませていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【渡邉会長】
 ありがとうございました。
 それでは,ウェブにて挙手をされている,萩原委員,木場委員,道永委員と3名続けてお願いいたします。少し時間が押していますので,お一人方少しずつ要点をまとめていただければと思います。
 それでは,萩原委員からお願いいたします。

【萩原委員】
 ありがとうございます。立教大学及び日本NPOセンターの萩原です。御説明ありがとうございました。
 最初にまず少人数学級ですが,これは私も今,小学校1年生の孫を抱えているので,当事者として,教師にとっても子供にとっても大変メリットの大きいことですので,最適人数が何人なのかについても含めて御議論いただければ大変ありがたく思います。
それから,ICTにつきましては,現在大学でも,御存じのようにハイブリッドで進めているところもございますが,やはり言うは易しなんですけれども,どうしても対面を重視してしまうのか,オンラインの方を重視してしまうのかと,そういうまだ慣れないところがあります。そのときに,やはり小中高ということになりますと,教員だけはどうしても難しい。となってくると,協働ということもございましたけれども,地域のNPOであるとか,あるいは大学生,そういったところと連携していくことによって,特に大学院,あるいは大学で教員志望の方たちが何らかの形で支援に入ることによって,将来的には資質を得ていくみたいな,そういうチャンスにもなるのではないかなと思いますので,そういったトータルに考えていける,そういったことができるような制度設計,あるいは予算措置といったものも,是非考えていっていただけるとありがたいかなというふうに思っております。
 短くしました。ありがとうございました。

【渡邉会長】
 どうもありがとうございます。連携は極めて重要であり,今回の中間まとめでも指摘されています。
 では,木場委員,お願いいたします。

【木場委員】
 お世話になります。よろしくお願いいたします。
 私の方からは,外国人児童生徒への教育の在り方について一言申し上げたいと思います。グローバル社会の中で,令和の教育としましては非常に重要になってくると考えております。現在,日本にいらっしゃる在留外国人の数というのが,ここ5年だけでも20%以上増加しているそうでございます。この増加というのは,教育現場にとりましては大変なスピードということで,対応は喫緊の課題だと推察されます。
 私事で恐縮ですけれども,小学生の頃に北欧におりまして,もう50年以上前なので日本人学校などというものは一切ない状態でございました。ブリティッシュスクールに通ったのですが,朝から晩まで言葉が分からないのに座り続けるということは,本当に人生において一番の難行苦行だったように感じております。そういった意味でも,コミュニケーションが取れるそういった喜びというのを,児童生徒の皆さんにも感じていただきたいと思っております。日本語習得の底上げをしなければ,コミュニケーションの素地をきちんと作ることが私は一番大事だと思っておりますが,それを学校現場の教員の皆さんだけにお願いするというのは大変な負荷がかかるとも感じております。この資料にもございますけれども,学校における日本語教育のほかに地域における日本語教育,これをもっともっと充実させる必要があるのではないかと考えております。
 その際の視点として,児童生徒はもちろんなのですが,私はその親御さんへも,日本語教育のサポートをもっと手厚くする必要があるのではないかと思っております。なぜなら,両親が言語で苦労して非常にストレスを感じている状況ですと,そのお子さんにも身体的・精神的な健康の面でのしわ寄せが来るというふうに考えるからです。
 昨年の6月に,日本語教育の推進に関する法律というものも施行されたと伺っております。こういったことも含めて,地域にある日本語教室ですとか識字教室など,実態を把握した上で,よりそれらを活用して,ボランティアの方だけに頼ることなく,国として,支援をきちっとしていただきたいと,底上げをお願いしたいと思っております。
 最後に,外国人のお子さんと反対に,日本のお子さんについてなのですが,総論にもございましたけれども,「あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら」というくだりがございます。まさにこういったことを考えますと,クラスの中に外国人の児童が増加してくるということは,非常にメリットであるというふうに捉えることも重要です。外国に行かずして異文化体験,異文化理解の促進ができるというふうに,メリットについても課題とともにしっかりととらまえて,他者の価値を認める良い機会として活用していただきたいと考えます。
 以上でございます。ありがとうございました。

【渡邉会長】
 どうもありがとうございます。今回の諮問事項の中で,御指摘の外国人児童生徒への対応については,非常に大きな諮問事項でございます。項目も大変多く,就学機会の確保から始まって,進学,就業継続のための相談の包括的支援の在り方ですとか,その指導体制とか,大変幅広い諮問となっております。その内容について,非常に的確な御指摘をいただいたと思います。本当ありがとうございます。
 それでは,引き続き,道永委員,お願いいたします。

【道永委員】
 ありがとうございます。併せて資料の説明もさせていただいてよろしいでしょうか。

【渡邉会長】
 どうぞ,提出していただいた資料のことですね。よろしくお願いいたします。

【道永委員】
 それでは,まず意見の方から申し上げます。資料1-2の46ページから53ページにかけて,4.新時代の特別支援教育の在り方について,とございます。中でも医療的ケア児の対応については,新型コロナウイルス感染症への対応も当然必要ですが,災害時について,最終報告で盛り込んでいただきたいと思っております。
 それでは,説明資料について説明させていただきます。これは本年5月,日本医師会学校保健委員会が取りまとめました「児童生徒等の健康支援の仕組みを核とした実践的な生涯にわたる健康教育を推進するために学校医はどうあるべきか」という資料となります。本文3ページで,日本医師会として取り組むこととして,学校医の活動を中核に据え,児童生徒の健康リテラシー向上に貢献していくべきである。子供の健康リテラシー向上に参画していくための土台と環境づくり。具体的には学校医が,学校での健康教育立案に協力し,出前授業等の児童生徒向け及び教員・保護者向け教育を立案・実施をする等を進めていくべきであるとしています。
 本文の7ページをちょっと御覧いただきたいのですが,日本医師会はこれらの実現のため,行政との連携を積極的に進めてほしいこととして,中央教育審議会に対して,次期学習指導要領改訂と,大学における教員養成教育への医療界からの参画を提案する。文部科学省の健康教育部局,初等中等教育局健康教育・食育課との連携もさらに進めてほしい。厚生労働省には,健康日本21における健康リテラシーの重要性の強調,今後整備される,PHRの健康教育への活用等を働きかけていくとしております。
 健康リテラシーの育成,学校医と専門家との連携の重要性とありますが,これらは新型コロナウイルス感染症の拡大の中での学校生活,学校のICT化を進めていく中で,デジタルデバイスとの関わり方にも関係していると思いますので,御協力をいただければ幸いです。
 また資料1-2に戻りますが,64ページに記載されております,人生100年時代と言われる今日にあって,医療界と教育界の連携は極めて重要になっております。委員の先生方におかれましても,教育分野での関係機関の連携強化による切れ目ない支援を充実していくために,引き続き御理解,御協力を賜れれば幸いです。
 以上,よろしくお願いします。ありがとうございました。

【渡邉会長】
 どうもありがとうございます。コロナ禍を経て,新たな日常における健康リテラシーの向上は,まさしく国家課題として受け止めたいと思います。非常に重要な御指摘だと思います。
 今日も説明は省略させていただいておりますが,概算要求の43ページの資料にも,新たな日常における子供の健やかな心身の育成ということで,行政サイドとしても,子供の健やかな心身の育成のための予算措置等を検討いただいているところです。
事務局から何かコメントがあれば,一言だけお願いできますか。

【瀧本初等中等教育局長】
 会長,ありがとうございました。予算要求上,今,指摘いただいたところでの健康リテラシーも含めた健康づくりの推進のほか,道永先生からも御指摘いただいたPHRだったり,あるいは,さらには感染症の関係も,感染者情報システムみたいなデジタル化による,できるだけの事前の防衛をしていくようなことも含めて,総合的に取組を進めていきたいと思っております。ありがとうございます。

【渡邉会長】
 ありがとうございます。
 それでは,ちょっと時間が押してきましたので,今手を挙げておられる堀田委員,今村委員,それから最後に荒瀬分科会長から,ご発言いただけたらと思います。
 それでは,堀田委員,お願いいたします。

【堀田委員】
 東北大学の堀田でございます。このたびの中間まとめは,これは非常に大切な,我が国の教育における大きなイメージチェンジみたいな部分があると思い,期待しております。私は特別部会にも初等中等教育分科会にも出ておりますけど,今日の御説明であった概要の方ではなくて本文の方に,やや誤読されてしまうと困るなと思うことについて,2点だけ簡単に申し上げたいと思います。
 1点目は,資料の1-2で言えば13ページに当たるんですけども,我が国の教育がとてもよくできていたという,ある意味,我が国の教育のよかったところを押さえた上で,だから根本から見直さなければならないわけではなくて,よさを受け継ぎながら,新しいことを入れていくのだという話が書いてありますが,これはややもすると見直さなくてもいいのだと取る人がいると嫌だなというふうに思います。これは書き方だけの問題かもしれませんけど,誤読されないように,何か表現の工夫を更にしていただければとお願いしたいところです。
 もう一つ,同じ文書でいえば45ページに当たるところなんですけど,STEAM教育のことです。STEAM教育が,高等学校の学習指導要領の総合的な探究の時間とか理数探究と非常に多くの共通点があるというふうに書いてありますが,これもややもすると,高等学校でとても深くSTEAM教育やるので,小学校,中学校では,各教科の学びだけしっかりやっておけばいいよというふうに読まれがちな懸念があります。小学校にプログラミング教育等が入りましたけれども,これもSTEAM教育の一環だと思いますので,小中高を体系立てて体験的に学び,その上で,とりわけ高等学校では深く学ぶというような書きぶりに,何か調整していただければと思う次第でございます。
 私からは以上です。

【渡邉会長】
 ありがとうございます。大変重要でSTEAM教育全体の定義に関わる御指摘だと思います。
 それでは,今村委員,お願いいたします。

【今村委員】
 NPOカタリバの今村です。大変な取りまとめをありがとうございました。
 私も分科会の方には参加させていただいていたんですけれども,不登校の子供たちの固定化,コロナによってあえて学校に行くという選択をしなくなった支援している子供たちの様子を見て,本当は分科会で主張しなきゃいけなかったかもしれないんですけれども,ここで発言させていただきたいと思います。
 資料1-1の5ページと,資料1-2の36ページに,不登校について明記されているんですけれども,私は遠隔教育やICTを利用して学んでいくということを保障していくということは,本当に日本の教育にとって大きな前進だったと思いますし,ここは確実に推進していかなければならないし,今,学ぶということを,学校に行かないということで止まってしまった子供たちにとって,とても大きな懸け橋となる前進を,今回の答申によって明記された部分が大きかったと思います。やっぱり特に低学年の子供たちや,思春期に入った子供たちにしても,人との関わりということが,生身の人間同士の関わりというものがあるに越したことはやっぱり一つもないと見ていて思います。
 そういった意味で,この「令和の日本型学校教育」が目指すのは,学校に来ていない不登校を減らすということのみならず,学びが止まっている生徒,また学びを通じて人と出会うということがない生徒,不登校ではなくて不学習の児童生徒をいかに出さないか,一人ももし取り残さないとしたら,不学習の子こそ出さないということを,みんなでタッグを組んでやっていかねばならないと感じています。
 そのためには,現在,現状検討されている少人数学級ももちろん一つの方向性ではあるんですけれども,やっぱり採用倍率が下がってきているということもきちっと受け止めなければいけないということもありますし,どうしたら子供たちにとって魅力的な学びの場を手の届くところに,多数作っていくのかということについては,何らかの実証的な取組を始めていかなければならないと思っています。そのときに,やっぱり適応指導教室やフリースクールの存在,指導教室といいますか,教育支援センターやフリースクールの存在をいま一度見直していかなければならないと思っているんですけれども,特にフリースクールは,現在,フルコスト家庭負担分で行く場所になっていますので,不登校児童生徒全体の2.2%しか活用されてないというふうに聞いています。
 これからどんな経済力の家庭の子たちでも多様な学びの場と接続し,不学習の生徒を出さないというためにも,リアルな場で人と人が出会う,フリースクールやオルタナティブスクールをどのようにこの国として位置付けていくのかということについて,検討を始めなきゃいけないということを,今回,令和の学校の個別化,学校選択の個別化のために実証実験を始めていかなきゃいけないということも,どこかに明記できたらと思い,発言させていただきました。
 私からは以上です。

【渡邉会長】
 どうもありがとうございます。カタリバでの実践を踏まえた上での御意見と受け止めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは,まだ御意見のある方いらっしゃるとは思いますが,時間の関係もございますので,最後に荒瀬分科会長からお願いいたします。

【荒瀬委員】
 ありがとうございます。私から,お礼を申し上げたいと思います。本当にいろいろと御意見ありがとうございました。
 今,まだ中間まとめということですので,まだ決まったものではなくて,現在検討していますのは,章立ても含めて項目立てといいましょうか,それも含めて最後検討していく必要があると思っております。
 今日頂きました御意見や,今続けていますヒアリングを基にいたしまして,今後議論を重ねて,これからの社会に生きて,これからの社会を創っていく子供たちを主語にするような方針を作れればと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

【渡邉会長】
 どうもありがとうございました。
 本日も大変貴重な意見を頂き,ありがとうございました。今後,最終的な答申のとりまとめに向けて,皆様には再度御意見を伺う機会があると思いますが,この中間まとめ「令和の日本型学校教育」の副題が,「全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと協働的な学びの実現」となっているように,こうした精神の下にまとめようということであります。
 私自身も,今回とりまとめようとしている答申は,大変大きな位置付けになると考えております。つまり,Society5.0 for SDGsという未来の姿からバックキャストするというような未来志向の視点と同時に,長い歴史の中で積み重ねてきた現場実践の日本型学校教育の視点,この二つの概念を,この文中にもあるように二元論に陥ることがないように,そして二項対立の陥穽に陥ることのないように,弁証法的な解決を目指す,ということだろうと思います。
 とりわけ持続可能な社会を目指す中において,多様性と包摂を実現していくということだと思います。我々は中教審という立場ですから,教育基本法に基づくような,教育の普遍的な使命の下に,「令和の日本型学校教育」を再構築していくことが求められると考えます。皆さんと共に,今申し上げたことを築いていきたいと思いますので,今後ともよろしくお願いしたいと思います。
それでは,第一議題については以上とさせていただきまして,次に,議題の(2)に入らせていただきます。
 (2)について,最初に事務局から説明をお願いします。これは浅田総合教育政策局長より,説明いただきます。

【浅田総合教育政策局長】
 失礼します。総合教育政策局の浅田です。議題(2)中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理について,初めに私から資料2の24ページ,概要ですが,これで御報告をさせていただき,その後で明石分科会長,また必要に応じてほかの委員の方から補足を頂くことにしたいと思います。
 この議論の整理ですが,9月24日,明石分科会長,清原副分科会長,菊川副分科会長,そして今日御出席の今村委員,牛尾委員,中野委員,萩原委員,東川委員をはじめとする委員の皆様にお取りまとめいただいたものです。新たな視点,方向性も示すことができたと思っています。心から感謝申し上げます。
 今期は,前期第9期の答申の土台の上に,開かれ,つながる社会教育を目指すための課題や方策等を中心に,ヒアリングも含めて,熱心かつ濃密な御議論をいただいたと思っています。この分科会でも,新型コロナウイルス感染症の影響や対応は重要な視点となりました。社会教育においても,学びを止めないための工夫や努力が重ねられ,その中から新たな可能性や視点も得られたと考えています。
 一番上にありますように,この議論の整理の次,副題に是非御注目いただきたいと思います。「多様な主体の協働とICTの活用で,つながる生涯学習・社会教育~命を守り,誰一人として取り残さない社会の実現へ~」というものです。もちろん本文を是非お読みいただきたいんですが,この副題に大事なことが詰まっていると思います。
 生涯学習・社会教育が,人と人との温かいつながりの中で,一人一人がより充実した幸せな生き方ができるようにするためのものだという基本は変わりませんけれども,特に重要なポイントを幾つか御紹介させていただきますと,1つは,学びをより豊かで便利なものにするために,ICTの活用が今や必須になっているということがあると思います。2つ目に,生涯学習・社会教育による学びや人のつながり,地域での活動やICTの活用は,感染症や災害から身を守り,命を守ることに直結するという,命を守る生涯学習・社会教育という視点であります。以下,全体像を御紹介させていただきます。
 構成としては,大きく1と2となっており,1が生涯学習・社会教育をめぐる現状・課題,2が新しい時代の生涯学習・社会教育の広がりと充実に向けて,この2本柱です。
 まず1は,5項目に整理をしています。生涯学習・社会教育において,社会的包摂の実現という視点が極めて重要であることは言うまでもありません。多様な人たちが理解し合い,共生する社会をつくる上で,社会教育は大きな役割を担っております。
 2つ目が,人生100年時代と生涯学習・社会教育という視点です。マルチステージの人生では,必要なときに必要な学びを通じて活躍の可能性を広げていける環境が不可欠です。
 3つ目が,Society5.0に向けたこれからの生涯学習・社会教育という視点です。時間的・空間的な制約を超えた学びなど,新たな技術の活用で,学びも大きく広がります。そうした利点を最大限に生かす必要があるということです。特にインターネットは,今や使うと便利というオプションではなくて,安全安心に生きるために必要な情報につながる命綱にもなり得ます。ICTを利用できる人とできない人の格差,いわゆるデジタル・ディバイドの解消は,住民の安全や命を守ることにも直結するものです。
 4つ目が,地域活性化の推進。豊かな学びを実現するには,教育委員会だけで閉じていては駄目で,多様な主体が連携・協働する必要があります。
 最後が,子供・若者の地域・社会への主体的な参画と多世代交流の推進ということです。子供や若者が地域に主体的に関わり,活躍する機会を増やすことで,地域全体が元気になる。したがって,生涯学習・社会教育の政策担当者は,住民の立場に立って何が必要か,何が求められているのか,何が人々の幸せにつながるかを考えて,生きた施策にするということが大事だと思います。
 こうした現状・課題を踏まえて,2で今後重視すべき視点や施策の方向性を示しています。まず,新しい時代の学びの在り方として,知識をインプットする受け身的な学びだけではなくて,疑問を持ち,課題を見つけ,考えを発信し,他者と共に考え,新たなものを生み出す主体的な活動が,学びの重要な要素になるということ。オンラインによる学びと対面による学びの双方の長所を生かすことで,より豊かな学びが実現できることを強調しています。
 次に,先ほども触れましたが,命を守る生涯学習・社会教育という視点です。新型コロナウイルス感染症や自然災害等の課題に関して,必要な知識を得たり学び合ったりすることは,今や住民の命を守ることに直結します。誰一人取り残さない包摂的な社会の実現のためにも,多様な人たちの多様なニーズに合った学びの機会を設けることが重要になります。
 そして,推進のための方策について,5項目で整理をしています。一つ目が,学びの活動をコーディネートする人材の育成・活用。今年度から始まった社会教育士の仕組みを生かすために,取組事例や成果を具体的に紹介し,横展開することなどです。
 二つ目が,新しい技術を活用したつながりの拡大。例えば,オンラインで世界の大学の講義を視聴できるMOOC,大規模公開オンライン講座ですが,そうしたものや放送大学などを,人々の学びの充実のために一層活用していくこと。社会教育施設におけるICT環境の整備の推進。高齢者など,スマホやパソコン等を使い慣れない方たちへの目配りも含めて,社会教育施設等でもICTリテラシーを身につけられる学習機会を充実することなどを示しています。
 三つ目が,学びと活動の循環・拡大のための工夫や取組の推進ということです。
 四つ目が,個人の成長と社会の発展につながるリカレント教育の推進。特に大学や専門学校等での実践的なプログラムの拡充や,遠隔教育の活用等が重要になります。
 最後に,各地の優れた取組の支援と全国展開ということで,ほかの地域でも参考になるような優れた取組,先進的な事例等を,関係者が共有できるようにすることなどを挙げています。
 この議論の整理を次期に引き継いで,さらに新たな展開を目指していくということになります。大変充実した御議論をいただいた分科会の委員の皆様に,心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
 なお文科省では,今期分科会の御議論を踏まえて,これを実際の生涯学習・社会教育の現場で活かしていただくために,参考となる例を分かりやすく示した事例集,政策集を作って,ホームページで公表したところでございます。全国の生涯学習・社会教育担当者,関係者の皆さんに,是非御活用いただきたいと願っております。
 生涯学習分科会の議論の整理についての御報告は以上です。明石分科会長はじめ委員の皆様方から,適宜補足いただければ幸いです。

【渡邉会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,御意見をお伺いしたいと思いますが,先ほどの議題から,継続的に手が挙がった状態になっている方がいらっしゃいます。第二議題についての御意見かどうか分かりませんので,一旦手を下げていただけますでしょうか。その後,第二議題について挙手をしていただきたいと思います。
 ありがとうございます。一度全部下げていただいたようですので,まず明石分科会長より,補足的な説明をしていただければと思います。明石分科会長からお話があった後に,皆さんからの御意見をお伺いいたします。それでは,明石分科会長,よろしくお願いします。

【明石委員】
 生涯学習分科会の会長の明石でございます。
 今回の議論の整理で強調したいことは,新しい人材の学びの在り方について提案したことでございます。目玉が2つあります。一つは,人生100年時代の到来と,ウィズコロナ・アフターコロナ時代において,命を守る生涯学習・社会教育という考え方を示したことであります。この命を守るということは,コロナから命を守るだけでなく,人生100年時代を生き抜くための命も含んでおります。リカレント教育,学び直しを豊かにした,生活と人生を豊かにすることも含んでおります。
 二つ目は,誰一人取り残さない包摂的な社会の実現のために,様々な人たちに必要な学びの機会を設ける必要性を提案しております。具体的には,新しい情報技術を活用したオンデマンドによる学びと対話による学びの組合せで,豊かな学びを提供していくことでございます。人と人と地域と地域,そして時代と時代のつながりを大事にしながら,誰もが人生100年時代を生き抜くチャンスを提案していきたいというのが,今回の議論の整理での目玉であります。
 以上で,報告を終わります。

【渡邉会長】
 非常に貴重な議論の整理をいただきまして,本当にありがとうございました。
 それでは,皆さんからも御意見,御質問を頂きたいと思います。挙手の表示をお願いいたします。会場から有信委員,それから清原委員,続けてお願いいたします。

【有信委員】
 どうもありがとうございます。私の意見は,第一議題で志賀委員からの指摘があった,メンバーシップ型採用からジョブ型採用へという全体の動きということとも絡んでお話ししたいと思います。
 実際にジョブ型雇用が既に進行しているアメリカの実情を見ると,アメリカの中では,具体的な大学教育が社会の要請にマッチングしてないということはここ10年来ずっと言われていて,それに対する対応として,大学と産業界が協働で教育プログラムを作るということがかなり行われるようになってきています。その上でこの報告書を見ると,例えば6ページに,社会人のニーズに合った実践的なプログラムが少ないとか,8ページに,Society5.0に対してICTやAI等の先端技術に関する知識を求められているとかということが書いてあるんですけれども,これに対して実際に重要なのは,大学と,それを必要としている人たちが,協働で新しいことに取り組むというような部分が,必要だろうと思います。そういう視点での文言を一つ入れていただけるといいのではないかと思いますので,よろしくお願いします。

【渡邉会長】
 ありがとうございます。
 それでは,清原委員お願いいたします。

【清原委員】
 ありがとうございます,清原です。この取りまとめに関しまして,3点簡潔に申し上げます。
 1点目は,先ほど御報告,御披露がありました「初等中等教育分科会の中間まとめと,生涯学習分科会における議論の整理の共通点」についてです。生涯学習分科会では,「多様な主体の協働とICTの活用でつながる生涯学習・社会教育,命を守り,誰一人として取り残さない社会の実現へ」と,「社会的包摂」,そして「コロナ禍での命を守る重要性」について集約をいたしました。このことは,初等中等教育分科会の「全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現」ということと通底する,言わばSociety5.0,SDGsの理念に対応する,まさに「児童生徒,人を中心に置いた取りまとめ」になっているところで,これは極めて重要だと考えます。
 それに表れていますように,生涯学習の在り方,社会教育の在り方を考えますときに,2点目でございますが,まさにそれぞれが別々のものではなくて,学校教育が一斉休業のとき,公民館の活動も止まったところもありますが,生涯学習・社会教育として子供たちを支え,保護者を支えた実践もありました。併せて学校教育関係者が社会教育士として,公民館や生涯学習施設の取組に活躍するということも見られ,対象としても,人材としても,活動の内容としても,「学校教育と生涯学習・社会教育の密接な関係性の中で,今後も大いなる連携を進めていくこと」がふさわしいと思います。
 3点目です。この生涯学習分科会の取組の中で,昨年9月の豪雨,そして今年の7月の豪雨,さらには新型コロナウイルス感染症対策の中で,「命を守る」というメッセージを集約しましたが,それを各地域に伝え,それを生かす具体的な事例や政策を共有するためにどうしたらいいかということで,現場の声をお聞きしましたが,この議論の整理の中に幾つもの具体的な事例を含めていただきました。また,浅田局長が御紹介されましたように,既に文部科学省のホームページには,具体的な『政策事例集』がアップされています。また,しかしホームページを見なければならないというのでは,ちょっとそれもなかなか浸透しないことがあるのではないかということでお願いをしましたところ,事務局では,公民館関係者に対して,オンラインの情報共有の機会を予定されているとのことです。
 ICTを生かし,オンラインを生かすのは,公民館や生涯学習施設,図書館等の現場だけではなく,これから文部科学省としても,是非生涯学習フェスティバルとかそういうのがもうできなくなってしまっている現状の中ですので,オンラインの手法を使いながら浸透を図っていただければと思います。
 なお,事例の中で特徴的なものに,20ページに紹介されている,兵庫県加古川市における「ボランティアポイント」の取組があります。これはまさに「学習と活動の循環」を支える仕組みで,総務省,文部科学省では,例えば,マイナンバーカードを活用して,このボランティアポイントの全国的な普及のためにも,モデル的な事業をされるという情報も頂きました。加古川市が先駆けとして,市民お一人おひとりの活動がほかの活動とつながるように,また経済ともつながるように,工夫された取組は,その理念を生かして,地域の実情に合わせた活用が図られることによって,学習と地域の経済と,そして人々の心と体の健康,そうしたものが「共助の仕組み」の中で生かされているものと思います。
 今後も事例を共有しながら,それぞれの自治体の工夫が共有され,そして深化される。そのことが議論の整理の後に深まることを願って,私から3点の意見とさせていただきます。
 以上です。ありがとうございます。

【渡邉会長】
 清原委員,ありがとうございました。また分科会にも御参加いただきまして本当にありがとうございました。
 あと,ウェブから3名の方が挙手されています。時間の関係がございますので,牛尾委員,木場委員,菊川委員にお伺いしたいと思います。牛尾委員からお願いいたします。
 牛尾委員の音声が入らないようですので,木場委員から御発言をお願いできますでしょうか。

【木場委員】
 それでは,お時間がないようなので短くお話しいたします。
 今回の命を守るという視点は本当に重要だと思っておりまして,特に私からは,この激甚化する自然災害に対応するというところで発言したいのですが,公民館のWi-Fiの普及率について申し上げたいと思います。公民館というのは避難所になることが非常に多くなっておりますけれども,確認しましたところ,Wi-Fiの普及率がまだ半分程度というふうに伺っております。避難中にそういった情報を得るためにも,是非ここはWi-Fiの環境を整えていただきたいと希望いたします。
 また,情報を取るためにはスマホを使いこなせなければいけませんが,なかなか年配の方がこういったICT機器を使いこなすというのは難しい点もあると思います。こういうところでも是非公民館などを利用して,社会教育の一環として,教えていただきたいと思います。そういった指導の場面でも,公民館に,Wi-Fiの整備が必要となりますので,御検討いただければと思いました。
 以上です。

【渡邉会長】
 ありがとうございます。
 それでは,先に菊川委員に御発言いただければと思います。

【菊川委員】
 本文の21ページですが,1点だけ申し上げます。
 21ページの一番上の丸ですが,ICTを活用した遠隔授業は,自宅にいながら授業を受講できるなど,時間的・空間的制約の大きい社会人の学びにも有効であるというふうに出ております。今回コロナで,大学関係者はとても御苦労されて,急遽いろんなオンラインを組まれたと思います。これを今後,アフターコロナの時代に再整備していくときに,是非社会人のことを念頭に置いていただきたいと思います。時間的・空間的制約が多い社会人が,大学のオンラインを受けられるように,また大学の経営戦略のためにもお願いしたいと思っております。
 以上でございます。

【渡邉会長】
 どうもありがとうございました。
 牛尾委員,つながりますでしょうか。通信機器の関係だと思いますが,音声が入らないようですので,申し訳ございませんが,別途事務局から牛尾委員の御意見をお伺いするということにさせていただければと思います。
 それでは,全体を通して,浅田局長,明石分科会長からもし何かコメントすべきことがあればお願いしたいと思います。それでは,浅田局長からお願いいたします。

【浅田総合教育政策局長】
 どうもありがとうございました。幾つかお答え,あるいは説明をさせていただきます。
 まず産業界との連携につきましては,分科会でも,また我々ももちろん問題意識を持っていって,今回も20ページに,例えば,「これからの社会に特に求められる知識・技能については,大学や専門学校等と産業界が連携し実践的な教育プログラムを開発・拡充することが重要である」といった記述もございまして,実際そういった文部科学大臣が認定するプログラムの事業も現にやっておりますし,そういったものの拡充に引き続き努めていきたいと思っています。
 それから,公民館のWi-Fi,あるいはICT環境はそのとおりでして,だからこそ今回の議論の整理で,こういう新たな視点が必要なのだということを強調させていただいたつもりです。したがって,こういう考え方,認識を関係者にも今後より強く持っていただいて,そういう環境の整備もまだまだ十分でないので進めていただきたいし,我々もその旗を振っていきたいと思っています。
 次に,社会人の学び直しについては,今回のコロナでテレワーク等が進んだということも一つあるんだと思いますが,報道によると,社会人向けの動画学習サービスを提供しているある会社で,今年2月から9月1日までで登録者の数が2倍以上に増えたとのことです。そういうニーズは高まっていると思いますし,自宅で,あるいは空いた時間,隙間の時間を使ってそういう学習ができるというメリットは非常に大きいと思います。社会人の学びの機会,それに大学や専門学校などがどういうふうに寄与,貢献していけるかということも含めて,いろいろ考えて施策を進めていきたいと思っております。
 以上でございます。

【渡邉会長】
 どうもありがとうございました。
 有信委員,何かございますか。

【有信委員】
 すみません,浅田さんは多分よく理解していただいていると思うんですが,産業界との連携というのは,ここで言われているレベルの話ではなくて,具体的に既にこの中にも紹介されていますけど,立教大学の大学MBAとか,デザインの学校だとかの例もあります。しかし,ただそのレベルではなくて,例えば地域の各大学が,地域のメンバーのニーズも踏まえつつ,もう一段進んで協働・共創の場として機能するような,そういうレベルでのむしろ連携を考えていただきたいと,そういうことだと思います。地域の産業,地域のメンバー等含めて。だから,地域の大学が協働・共創の場となる中で,教育においてもきちんとした連携が組めるようになると,より本質的な解決につながるのではないか。もう一段深掘りをしていただければと思って申し上げました。

【渡邉会長】
 ありがとうございます。
 明石分科会長,最後になりますが何かございますでしょうか。

【明石委員】
 いえ,もう結構でございます。

【渡邉会長】
 ありがとうございます。
 先ほどから御意見のあるように,コロナ禍での議論でありましたので,この議論の整理というのは大変時宜を得たものになっていると私も感じました。多様な主体の協働とICTの活用という考え方をベースとして,「つながる」というキーワードが出てきています。先ほどの御指摘のように,産学連携を含めた地域社会との横のつながり,多世代にまたがる縦のつながり,この縦横のつながりにより,生涯学習・社会教育を大切なものとして育て上げていこうというまとめであると私は理解しております。
 大変時宜を得たまとめでございますので,この考え方をベースにして,今後,中教審において,各教育段階の議論をしていく必要があると受け止めさせていただきました。本当にありがとうございました。
 それでは,かなり時間が押してしまいましたが,もう少し時間を頂いて,議題の(3)について,事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【池田内閣官房教育再生実行会議担当室長】
 それでは,内閣官房教育再生実行会議担当室長をしております池田でございます。私から資料3に基づいて,教育再生実行会議での検討状況について,簡潔に御説明をさせていただきたいと思います。
 資料3の1ページを御覧ください。教育再生実行会議は,第2次安倍政権が発足したときに,総理の下で各省に関わるようなことも含めて,教育改革を推進するために議論をということで設置をされております。会議のメンバーは,総理大臣,官房長官と文部科学大臣,教育再生担当大臣も兼務されていますけれども,この3閣僚と有識者でございます。現在,22名の有識者の方が御参画いただいております。
 これまで発足以来,昨年5月まで,すいません,誤植がありまして,平成29年とありますのは,令和元年でございます。令和元年5月までに11次にわたる提言を取りまとめまして,今年の7月から新たにポストコロナ期における新たな学びの在り方について検討を開始していただいております。
 中教審等との役割分担ですが,簡単に申し上げますと,教育再生実行会議の方は,総理の下で他省庁のことも視野に入れながら,大きな方向性を御議論いただくと。中教審は,その方向性とも軌を一にしながら,より専門的な観点から,具体的な政策や制度設計などに落とし込んでいくという,こういう役割分担かと思います。したがいまして,この後御説明する議論のテーマも,今日前半で御議論いただいたことと重なる部分もありますが,連携を取りながら交通整理をして議論をしていただきたいと思います。
 1ページおめくりいただいて2ページでございます。今の議論の概要でございますけれども,背景の四角の二つ目を御覧いただければと思いますが,大きく分けて2点ございます。一つは今後,また同じようなコロナなどで,学校の休業を余儀なくされるような事態が生じたとしても,子供たちの学びを確実に保障できるような環境整備を考えていくということと,もう一つは,ポストコロナで新たな日常,あるいは社会の価値観が大きく変わっていく中で,学びの在り方も変わっていくという,新しい学びの在り方を議論いただくということでございます。
 また,今年の5月,6月頃にいろいろ議論されました。9月入学につきましても,コロナ対応ということで導入するということは見送りになったわけですけれども,少し時間をかけてじっくり御議論をしていただくこととしております。
 もう1枚めくっていただいて3ページでございますが,教育再生実行会議の本体会議の下にワーキンググループを二つ設けております。初中教育と高等教育でございまして,このメンバーには,今日も御参加いただいている中教審の堀田先生や今村先生,日比谷先生にも入っていただいておりますし,来週以降ワーキングでヒアリングを進めていくに当たって,天笠副会長をはじめ中教審の委員の方々からも御意見をお聞きする予定でございます。
 具体的な検討の内容は資料6ページから9ページまでに細かく書いてございますが,簡単に申し上げますと,初中ワーキングの方では,主として対面とICTのハイブリッドによる協働的な学びや個別最適な学びをどう進めていくかとか,あるいはデジタル教科書などのほか,当面緊急の課題としては,少人数学級の在り方がございます。この少人数につきましては,安倍総理の在任中に,少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備や関連する施設整備などについて進める方向で議論するという方向性を,初等中等教育のワーキンググループで御確認いただいておりますので,今後,文科省と財務省や総務省との調整状況も踏まえながら,必要に応じてこの実行会議でも早めに緊急に提言を頂くということもあり得るかと思っております。
 それから,高等教育ワーキンググループでは,初中と同様に,対面とICTのハイブリッドの学びの在り方のほか,ニューノーマルに対応した国際交流の在り方,留学生交流の在り方,さらには卒業時期が今後多様化していった場合の大学と社会の接続の在り方なども課題でございます。
 こうした議論を7月以降進めておりますけれども,菅総理が就任された後,デジタル化の対応ということもかなり力を入れておられまして,これを踏まえて,デジタル化についても集中的に議論するタスクフォースというのを別途置いております。これはワーキングの委員の中から5名の方を,タスクフォースということで横出しにして,ここでも集中的に議論をしていただくことになっております。
 今日前半でいろいろ中教審での御検討状況のお話ありましたけれども,先ほど申し上げたように,新規事項が重なってくるところもありますので,今後連携を取りながら,実行会議で議論を進めていただきたいと考えております。全体の大きな提言は,来年5月までにまとまればと考えております。
 以上でございます。

【渡邉会長】
 中教審等の関係も含めて御説明をいただきまして,ありがとうございました。
 全体の大きな流れ,他省庁をまたがるような様々な動きがありますが,そうした動きをしっかりと受け止めながらも,教育現場は中教審がどのような答申を出すのか大変な関心を持って見ているわけですから,我々中教審は教育現場の羅針盤となるような答申をまとめていくという考え方で臨んでいきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 以上で本日の会議を終了とさせていただきます。
 次回総会の日程等については,追って事務局から連絡させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

── 了 ──

(会議終了後,書面で提出のあった意見は以下の通り)

【牛尾委員】
 2020年度から順次全面実施されている新しい学習指導要領では,「社会に開かれた教育課程」を重視し,よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を学校と社会が共有し,それぞれの学校において,必要な教育内容をどのように学び,どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを明確にしながら,社会との連携・協働によりその実現を図っていくこととされています。環境変化が激しく不確実性の高まる今日の社会においては,より複雑で困難な課題が山積しており,その解決には多数の選択肢が存在します。状況変化によっても解決策は変容し,その都度多様な人の視点や能力を結集して問題解決に当たっていく努力が必要となります。そうした観点から常に変化する社会問題への解決に向けた知の習得,人々との協働の学びの場として生涯学習や社会教育の重要性が高まっていると理解しています。しかし,現実には新型コロナウィルスの発生により,多くの社会教育の現場は機能停止を余儀なくされました。これまで公民館など社会教育施設等においては十分なICT環境が整備されておらず,たとえば,大学が併設する生涯学習機関においても,リカレント教育機関においては前期の授業を開講することができず不本意な状況も垣間見られました。こうした実態は,受講者の中に高齢の方など一部ICT技術への対応が困難な方々が存在したこともありますが,大学側の意識として,リカレント教育の授業のICT化に対する優先度が相対的に低くなりがちであったのではないかと推察されます。正規の大学教育ではICTを駆使した授業の実施に切り替えることで教育の継続性を担保することができたわけですが,リカレント教育に対しては,財政的にも人員配置の面でも資源配分が十分に行われなかった点は大変遺憾に感じております。
 通常,リカレント授業には,現役大学生も履修者として参加することも多く,まさに老若男女入り混じった授業展開で創発的な知が創成される利点がみられていたのも事実で,緊急事態のなかで,そうした貴重な学びの場が第一に停止してしまった点は今後改善していかなければならないものと強く思います。
 今回の取りまとめの中でも,学びを止めず,人と人とがつながり続けられるようにするためには,ICT等の技術を活用した新たな形での取組を積極的に推進していくことが有効であるといたしましたが,公的施設も民間の社会教育施設においても,ICT 環境整備の現状は決して十分ではありません。今後の教育予算を考える際に,生涯教育の継続性の確保の視点から,各自治体や教育機関のICT環境の整備を積極的に進めていけるようご配慮をいただきますよう切に願う次第でございます。
 

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