中央教育審議会(第120回) 議事録

1.日時

平成30年12月21日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧庁舎6階)

3.議題

  1. 「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について(答申(案))」について
  2. 「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申素案)」及び「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン(案)」について
  3. 「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」について
  4. その他

4.出席者

委員

 北山会長,永田副会長,明石委員,天笠委員,有信委員,生重委員,帯野委員,亀山委員,菊川委員,志賀委員,篠原委員,寺本委員,中田委員,宮本委員,無藤委員,山田委員,横倉委員,善本委員,渡邉委員

文部科学省

 柴山文部科学大臣,中村文部科学大臣政務官,藤原事務次官,芦立文部科学審議官,生川官房長,瀧本総括審議官,清水総合教育政策局長,永山初等中等教育局長,常盤国立教育政策研究所長,下間大臣官房審議官,丸山大臣官房審議官,平野大臣官房審議官,塩見社会教育振興総括官,寺門総合教育政策局政策課長,久保田総合教育政策局生涯学習推進課長,中野総合教育政策局地域学習推進課長,望月初等中等教育局初等中等教育企画課長,合田初等中等教育局財務課長 ほか

5.議事録

【北山会長】
 それでは,ただいまから中央教育審議会総会を開催いたします。お忙しい中,御出席いただきましてありがとうございます。
 本日は,柴山大臣と中村政務官に御出席いただいております。よろしくお願いします。
 それでは,早速,本日の議事について御説明いたします。まず議題(1)の「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について(答申(案))」について,生涯学習分科会で取りまとめられましたので,御報告いたします。その上で,委員の皆様の御了承が得られれば,本日答申として,柴山大臣にお渡ししたいと思います。
 続いて二つ目の議題ですが,「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申素案)」及び「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン(案)」について,初等中等教育分科会で取りまとめられましたので,御報告いたします。
 最後に,「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの改革プラン~」について取りまとめられましたので,御報告いたします。
 なお,今日,報道関係者から,会議の全体について録音・カメラ撮影を行いたい旨,申出があり,許可しておりますので,御承知おきいただきたいと思います。
 それでは,早速議題に入ります。まず,本日の配布資料について,寺門課長からお願いします。

【寺門総合教育政策局政策課長】
 本日の配布資料につきましては,お手元の会議次第に記載してあるとおり,資料1‐1から3となってございます。過不足ございましたらお申し出ください。
 以上でございます。

【北山会長】
 よろしいでしょうか。
 それでは,議題(1)に入ります。
 先ほども申し上げましたように,「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について(答申(案))」についてであります。この案は,前回,11月26日に総会で御審議いただきました。前回の総会で頂いた委員の皆様からの御意見も踏まえ,生涯学習分科会で修正された答申案が取りまとめられましたので,清水局長から御説明をお願いしたいと思います。清水局長,お願いします。

【清水総合教育政策局長】
 では,申し訳ございません,着席で御説明をさせていただきます。
 資料1‐1と1‐2でございます。会長から既に御報告がありましたとおり,前回の総会で御審議を頂きました。そして,併せまして,国民への意見募集,パブコメを実施いたしますととともに,12月10日でございますが,生涯学習分科会でも再度御審議を頂きまして,そこでのそれぞれの御意見を踏まえまして,一部修正等を行いました,行ったところでございます。
 この間,答申案全体の構成に関わるような大きな変更はございませんでした。最初に,全体の概要を改めて簡単に御説明させていただいた後に,前回の総会以降の修正点のうち,主なものを御説明をさせていただきたいと思っております。
 まず,資料1‐1,縦長2枚もののカラー刷りを御覧いただきたいと思います。
 今回の答申案,大きく2部構成になっているところでございます。第1部が,1枚目でございますが,今後の地域における社会教育の在り方として,社会教育の意義や果たすべき役割について,今後,社会教育を基盤とした人づくり・つながりづくり・地域づくりが一番重要であるとしております。その上で,新たな時代の社会教育の方向性といたしまして,開かれ,つながる社会教育,そういった考え方を提示しているところでございます。
 1枚おめくりいただきますと,2ページ目が第2部ということになります。こちらは社会教育施設に関するものでございますが,社会教育施設には,学習と活動の拠点としての役割のみならず,住民主体の地域づくり等の拠点としての役割も求められているといったことを示しまして,地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管できることとする,そういう「特例」につきまして,社会教育の適切な実施の確保に関する制度的担保が行われることを条件に,可とすべきという,そういう結論を提示していただいているところでございます。
 全体像,以上でございますけれども,続きまして,資料の1‐2,答申案の本体でございますが,前回の総会以降の主な修正点について御説明をさせていただきたいと思います。
 申し訳ありません,おめくりいただきまして,最初は5ページ目でございます。5ページ目の下から丸がありますけれども,下から三つ目の丸,住民の主体的な参加のためのきっかけづくりという,ここで社会教育への参加の少ない層について記述をしておったところでございますが,若者や現役世代といったものを例示にしていたところ,外国人といったものも例示として追加すべきではないのか,今後,日本で暮らす外国人の増加が想定される中で,地域における社会教育への外国人の参加も一層大切になってくるのではないかと。こちらはパブコメでの御意見でございましたけれども,それを踏まえて,ここに外国人という文言を追加したところでございます。
 続きましては,少し飛びまして,13ページになりますが,13ページの上から2つ目の矢羽根というんでしょうか,矢印になっているところでございます。こちらは,社会教育と他の多様な主体での連携・協働の推進についての具体的な方策をここで提示をしていただいているものでございますが,前回の総会におきまして,地域の社会教育だけでは対応が難しい部分も含めまして,大学や専門学校等の高等教育機関との連携,高度な実践的なニーズにも応えるリカレント講座の開設等がますます重要になってきていると。
 そういった点,大学と社会教育との相互の連携,協力の中で,リカレントの講座を実施していくということが重要だという御指摘がございましたので,この矢印のところの2行目のところでございますが,「学習者の高度な実践的ニーズ等に応えるリカレント講座等の開設を共同企画することなどを通じて」といった部分を記述を追加をしているところでございます。
 それから,同じ13ページの一番下の下から2行目から一番下の行,それから,次の14ページの一番上の2行にわたる部分でございますが,こちらは前回の総会におきまして,学校と,地域と学校の連携・協働について,コミュニティスクール,あるいは,地域学校協働活動といったものが制度化から10年以上経過する中で,現場での取組が進んできていると。その上で,今後更に前進していく必要があるという地域と学校との連携の現状について,より詳しく表現した方がいいのではないかということがございましたので,こちらも追加でございますけれども,13ページの下から2行目ぐらい,「こうしたことを背景に」といったところから14ページの上の2行の記述を,その趣旨に沿って追加をさせていただいたところでございます。
 それから,あと,15ページでございますが,15ページの上から二つ目のこの矢羽根と言っていますが,「教職課程を置く大学においては」という段落があるかと思います。この段落を,これ,段落ごとでございますけれども,新しく追加をしたところでございます。
 ここは地域と学校の連携・協働のための具体的方策についての記述でございますが,これを進めるためには,地域と学校の連携・協働の意義等について教師が理解を深めるということが大変重要であるといった御指摘が生涯学習分科会においてございまして,その部分,明記をしておく必要があるということで,こちらに追加したものでございます。
 なお,15ページの一番下の注の21,注釈の21,こちらもその教職課程における地域と学校との連携に係る制度的な規則改正等がございましたので,この記述を追加することに併せて,注記も追加をしたところでございます。
 そして,最後でございますが,少し飛びまして,20ページでございます。第2部がここからでありますけれども,第2部「今後の社会教育施設の在り方」と,それから,第1章,ゴシックで書いてあります「今後の社会教育施設に求められる役割」,この間の丸が二つありますけれども,これを今回追加をさせていただきました。
 これ,趣旨といたしましては,生涯学習分科会の議論の中で,答申案の第1部と第2部,これは関連するものとして書かれているわけでございますけれども,初めて読む人に,この第1部と第2部の接続というのが分かりにくい点があるのではないのかと。第1部と第2部のつながりをより明確にする意味で,そういったそのつながりについてしっかりと記述すべきではないかという御意見がございましたので,第2部の冒頭に第1部を簡単に振り返り,そして,第2部での社会教育施設の在り方に係る検討につなげていくという意味での記述を追加したところでございます。
 前回の総会以降の主な修正は以上でございますので,あと,全体を見回しまして,細かい字句的な修正等もあるところでございますが,大きなところは以上ということでございます。
 説明は以上でございます。

【北山会長】
 清水局長,ありがとうございました。
 本件に関しては,これまで十分に時間を掛けて御議論いただいたものでございますので,内容はまとまってきているものと考えます。
 したがって,今後の実施に向けての議論が中心になろうかとは思いますが,何か御意見,御質問があれば,御発言いただければと思います。では,篠原委員,お願いします。

【篠原委員】
 基本的にはこれでよろしいかなというふうに思いますけれども,この6ページ目の真ん中ぐらいにちょっとあるんですけれども,地域,学校のコラボですね。それで,その中で,地域防災とか人生100年時代とか,そういうことで記述をされているんですけれども,こういうところはいわゆる主権者教育,主権者意識を子供の頃から持っていただくという観点からも大変重要な指摘だと思うんで,どこかに主権者意識を育むとか,そういうためにもとか,何かそういう表現が,どこのページがいいのか分かりませんけれども,この社会教育の推進について,どこかにそういう記述を一言盛り込んでもらうといいんじゃないかなという感じがしております。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 では,文科省から御回答いただきたいと思いますが,この点については,学習指導要領の改訂における「公共」に関する議論などの経緯もありますので,今後の実施に当たっては,当然,その新しい学習指導要領に裏打ちされる部分もあると思います。
 どうぞ。

【中野総合教育政策局地域学習推進課長】
 事務局から補足させていただきます。
 ちょっとそこの部分とは別の部分になるんですけれども,資料1‐2の本文の方の9ページ,8ページからつながっている文章の9ページの1枚目のところなんですけれども,学びへの参加のきっかけづくりということで,とりわけ子供,若者に入っていただくという中の記述におきまして,最後に,主権者教育のことも触れているところでございます。

【篠原委員】
 ちょっとここ,見落としていました。分かりました。これ,入れていただければいいと思います。

【北山会長】
 大丈夫ですか。そのほか,よろしいでしょうか。
 それでは,もし追加で御意見がありましたら,事務局にお寄せいただければと思います。そちらについては今後,答申の実施段階で文科省に配慮いただくという段取りになります。
 本件に関しての審議はこれまでとさせていただきまして,本答申案について,皆様,御了承いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【北山会長】
 ありがとうございます。それでは,答申を大臣にお渡ししたいと思います。
 まず,答申に当たりまして,私から一言挨拶,御挨拶申し上げます。
 柴山大臣に,「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策」の答申をお渡しするに当たって,一言申し上げます。
 本件につきましては,今年の3月に大臣から諮問を受けて,生涯学習分科会を中心に,約9か月にわたって審議を重ねてまいりました。
 答申では,より多くの地域住民の方の主体的な参画を得て,幅広い関係主体や専門的人材等の連携・協働に立脚した「開かれ,つながる社会教育」の実現が目指され,もって「社会教育を基盤とした人づくり・つながりづくり・地域づくり」が,今後,日本全国において一層推進されるべきであることについて提言をしております。
 文部科学省におかれましては,この答申を十分に尊重いただいて,我が国の未来を見据えた教育改革の実現に向けて,関係諸施策の充実や必要な制度改正に迅速に取り組まれることを期待いたします。
 それでは,大臣に答申をお渡しさせていただきます。
(答申文手交)

【北山会長】
 それでは,柴山大臣から挨拶をお願いしたいと思います。大臣,お願いいたします。

【柴山大臣】
 皆様,こんにちは。ただいま,北山会長から,「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策」の答申を頂戴をいたしました。
 本件につきましては,今お話がございましたとおり,今年3月の林前大臣の諮問以来,9か月にわたって,大変精力的な御審議を賜りました。
 北山会長,明石生涯学習分科会長はじめ,委員の皆様が英知を結集され,充実した内容の答申をこうしておまとめを頂きましたことに,深く感謝を申し上げます。
 私といたしましては,お話があったとおり,人生100年時代を迎えて,生涯にわたる学びが今後一層重要となっているということ,そして,人口減少や高齢化が進む中で,まさしく住民同士のつながりづくりですとか主体的な地域運営への関わりの要請が今までになく高まっているということなどを踏まえますと,個人の成長と地域社会の発展の双方に寄与し得るのがこの社会教育だということだと思っております。今後より大きな役割がこの部分に期待されていくものだと考えております。
 本答申では,地域活性化に向けた新しい社会教育の在り方について,的確に御提言を頂くとともに,今後の社会教育施設の所管の在り方についても御提言を頂いておりまして,お示しを頂いたこれらの御提言をしっかりと受け止めて,必要な法律改正を含め,関連施策の推進に全力で取り組んでまいりたいと思います。
 本日は誠にありがとうございました。

【北山会長】
 柴山大臣,ありがとうございました。
 大臣はこの後,公務がおありとのことで,ここでご退席されます。

【柴山大臣】
 すいません。ちょっと柴山プランの紹介もあるんですね。すいません,校務がありまして。

【北山会長】
 どうもありがとうございました。

【柴山大臣】
 じゃあ,すいません。どうも本当にありがとうございます。

【北山会長】
 それでは,続きまして,議題(2)に入りたいと思います。
 「学校における働き方改革」に関しても,前回の総会で,答申の骨子案について御審議いただいた経緯にございます。
 前回の総会で頂いた委員の皆様からの意見も踏まえ,学校における働き方改革特別部会や初等中等教育分科会で審議を進め,今般,答申素案として取りまとめられましたので,文科省において策定する「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン(案)」と併せて御審議いただきたいと思います。
 まず,答申素案の作成に大変御尽力いただきました初等中等教育分科会の無藤分科会長代理から御報告をお願いできますか。

【無藤委員】
 それでは,無藤の方から発言させていただきます。
 お手元の資料2‐1,そして,2‐2というものがその資料でありますが,より詳細は後ほど事務局からお話しいただきたいと思います。まず,概略を私の方で説明させていただきます。
 本来,初等中等教育分科会会長,また,特別部会の部会長である小川先生でありますが,きょうは公務のため御欠席と伺ってございますので,私の方で,会長代理,また,特別部会の部会長代理という立場で,答申素案について簡単に御報告させていただきたいと思います。
 前回,この総会,11月26日でございましたけれども,答申骨子案についての御審議を頂戴してございます。その後,そのときに頂いた皆様方の御意見,また,これまでの特別部会,さらに,初等中等教育分科会での御意見を盛り込み,お手元の答申素案として取りまとめたものでございます。
 まず,第1章におきましては,我が国の学校教育がこれまで大きな蓄積と高い成果を上げているということ,そして,それは高い意欲や能力を持った教師によって支えられているということ,一方で,子供のためであれば,どんな長時間勤務もよしとするような働き方というものが教師の崇高な使命感から生まれるところもなくはない。しかしながら,それは望ましいように見えて,そこで教師が疲弊していくことも大いにあり得ることであります。
 そうだとすれば,それは子供のためにはならないということで,教師として,日々の生活の質や,また,その教職人生を豊かにすることで,それを通して授業の質が高まり,子供たちの学びが深まっていくという好循環を目指すべきであると考え,学校における働き方改革の目的を明確にいたしました。
 第2章でありますが,勤務実態調査の分析を行い,これを記載してございます。その上で,学校における働き方改革を進めるための総合方策として,大きく5つほどの点を挙げてございます。
 第1,勤務時間管理の徹底と勤務時間・健康管理を意識した働き方の促進,第2点,学校及び教師が担う業務の明確化・適正化,第3点,学校の組織運営体制の在り方,第4点,学校の勤務の在り方を踏まえた勤務時間制度の改革,第5,学校における働き方改革の実現に向けた環境整備,以上5つに分けて問題点を整理し,提言に向けてございます。そして,それを受けて,第3章以降に,それらの議論をまとめて,提言につないだということであります。
 そして,特に勤務時間管理につきましては,いわゆる超勤4項目以外の時間外勤務を含めて,在校等時間として外形的に把握し,この時間外勤務の上限の目安を月45時間以内,年360時間以内とするガイドライン案が文部科学省において作成されてございます。これ,上限,あくまで上限の目安ということですから,ここまでは許されているという意味とは違うことを申し上げておきたいと思います。
 また,勤務時間制度については,給特法の基本的な枠組みを前提とした上で,在校等時間の縮減のための取組を総合的かつ徹底的に推進すること。1年単位の変形労働時間制については,この制度自体が長時間勤務を縮減するものではありませんけれども,業務時間を削減することを前提に,地方公共団体が選択的に導入できるようにすることで,休日の増加によるゆとりの創造と年間を通じた総勤務時間の短縮を図ることとしてございます。
 答申素案では,こうした総合的な方策について取りまとめてございますけれども,それに加えまして,今後更に検討を要する事項を幾つか挙げておきました。教育課程の在り方,免許の在り方など,働き方改革を実施する上で重要と指摘された事項についても明記してございます。
 そして,本文の最後には,中教審として,保護者や地域をはじめとする社会に対して,学校における働き方改革への理解,そして,協力を是非お願いしたいというメッセージを盛り込んでございます。
 私の方からは以上でございますので,それでは,事務局から,答申素案の詳細についての御説明をよろしくお願いいたします。

【北山会長】
 では,お願いします。

【永山初等中等教育局長】
 それでは,続きまして,初等中等教育局長,永山でございます。
 資料2‐1の答申素案,それから,資料2‐2のガイドライン案について,その内容をまとめて御説明申し上げます。
 武藤分科会長代理より御説明いただきましたとおり,11月26日,前回の総会におきまして,この答申の骨子案について御審議いただきました。その際頂いた御意見も踏まえまして,この答申素案を取りまとめたものでございます。
 なお,前回の総会で賜りました御意見,例えば篠原委員から頂いた学校の働き方改革と家庭や地域の役割などにつきましては,なお,部会の委員の先生方と検討中でございますので,改めて御案内申し上げたいと思います。
 それから,本答申の素案につきましては,12月6日の特別部会及び12月14日の初等中等教育分科会において御審議を頂きました。一部,これも,なお事務局で修正している箇所もございますが,大筋で認識が共有されたところでございます。
 では,まず,資料2‐1,3ページを御覧いただければと思います。第1章として,働き方改革の目的でございます。3ページ目の一つ目の丸のとおり,我が国の学校教育がこれまで高い成果を上げている基本的な認識をまず確認した上で,4ページの一番下の丸のように,これまでの我が国の学校教育の蓄積は,Society 5.0,AIが飛躍的な進化を遂げるこれからの時代でもなお有効であるとの御議論を頂きました。
 その上で,5ページの上から二つ目の丸の7行目ですけれども,我が国の学校教育の高い成果が教師の長時間にわたる献身的な取組の結果によるものであるならば,持続可能であるとは言えない。『ブラック学校』といった印象的な言葉が独り歩きする中で,意欲と能力のある人材が教師を志さなくなり,我が国の学校教育の水準が低下することは子供たちにとっても我が国や社会にとってもあってはならない,とお示しをしております。
 6ページの2が学校における働き方改革の目的でございます。
 上から二つ目の丸のとおり,先の通常国会で成立しました「働き方改革推進法」による労働法制の大きな転換を踏まえると同時に,教育基本法や学校教育法に定められた教育や学校の目的に基づく目標を達成するために行われる必要があること,7ページに移りまして,「子供たちのためであればどんな長時間勤務も良しとする」という働き方は,教師という職の崇高な使命感から生まれるものであるが,その中で,教師が疲弊していくのであれば,それは子供のためにはならないこと。また,子供たちに対して,効果的な教育活動を行うことができるようになることが学校における働き方改革の目的であり,これを原点としながら改革を進めていくべきとの御議論を賜ったところでございます。
 9ページからは,第2章ということで,まず,勤務の長時間化の現状と要因について御議論いただきました。
 一つ目の丸ですけれども,学校種によってかなり状況が異なるという御議論を頂いております。
 また,次の丸ですが,この10年間で,小・中学校の教師の勤務時間が増加した要因として,3点が上げられております。1点目は,若手教員の増加,10ページになりますけれども,2点目が,総授業時数の増加,そして,3点目が,中学校の部活動指導時間の増加でございます。
 12ページからは,検討の視点と基本的な方向性ということで,13ページの1つ目の丸にあるように,特に,文部科学省の果たすべき責任は大きいという御指摘を頂いております。この箇所で,文科省は,学校と社会のバッファとしての機能を果たすとの記載がありますけれども,特別部会において,このバッファという言葉が消極的なイメージを与えるという御指摘がありましたので,これは表現を整理したいと考えております。
 その上で,上から二つ目の丸のとおり,検討の視点を1から5まで上げております。これが第3章以降の柱ということになります。
 15ページからが第3章でございます。「勤務時間管理の徹底と勤務時間・健康管理を意識した働き方の促進」といたしまして,17ページの2.の勤務時間の上限に関するガイドライン,これを御覧いただければと思います。
 具体的には,18ページの一番下の丸のように,このガイドライン案を,本答申を取りまとめいただくのと同じタイミングで,文科省において策定したいと考えております。そして,その際には,19ページの上から6行目にありますとおり,この上限ガイドラインの実効性を高めることが重要であり,文部科学省は,その根拠を法令上規定するなどの工夫を図り,学校現場で確実に遵守されるように取り組むべきであるという御指摘を頂いております。
 ここで,資料2‐2,このガイドラインの案を御覧いただければと思います。
 1ページ目の趣旨でございますが,その後ですけど,2ページ目,2ページ目に3.で勤務時間の上限の目安時間という項目がございます。(1)本ガイドラインにおいて対象となる「勤務時間」の考え方の3行目からですが,「超勤4項目」以外の業務が長時間化している実態も踏まえ,こうした業務も含めて適切に把握をするという観点から,今回のガイドラインにおいては,在校等時間として外形的に把握するということにしております。
 これまではいわゆる「超勤4項目」以外の時間について,自主的,自発的勤務であることが強調されるあまり,勤務時間管理が徹底されず,かつ,勤務時間を縮減するというインセンティブも働きにくかったとの指摘もございました。このような指摘も踏まえ,ガイドラインの対象となる時間について,教師が校内に在校している時間を対象とすることを基本とし,そこから自己研鑽の時間,その他業務外の時間を自己申告に基づき除くことといたします。
 これに加えて,校外の勤務についても,職務として行う研修や児童生徒の引率等の職務に従事している時間については,時間外勤務命令に基づくもの以外も含めて外形的に把握し,対象として合算することとしております。
 その上で,同じページの一番下ですけれども,上限の目安時間として,原則として1日の勤務時間を超えた時間の1か月の合計が45時間を超えないようにする,また,1年間の合計が360時間を超えないようにするとしております。
 ただ,3ページ目ですけれども,いじめ等の生徒指導上の重大事案が発生した場合など,児童生徒等に係る臨時的な特別の事情により勤務せざるを得ない場合の特例的な扱いについて記述しております。
 その上で,4ページの5.留意事項の(2)として,勤務時間管理については,改正後の労働安全衛生法において,勤務時間の把握が事業者の義務であることが法令上明確化されたことを踏まえ,タイムカード等の客観的な方法により測定することや,(3)として,本ガイドラインの実施に当たって,休憩時間や休日の確保に加え,在校等時間が一定の時間を超えた教師への医師の面接指導や健康診断の実施,退庁から登庁までに一定時間を確保するいわゆるインターバル等の留意事項が書かれています。
 ここで,また資料2‐1の方にお戻りいただければと思います。
 2‐1の最後,裏表紙といいますか,74ページを御覧いただければと思います。ここに総合的な方策パッケージ工程表とございますが,特別部会において,今後の働き方改革の具体的な進め方を示すべきという御指摘を頂きまして,工程表をお示しいただいております。
 この工程表の上から3段目に,上限を定める規則等という項目がございます。一番左側に,先ほど御覧いただいた文部科学省のガイドラインについて,検討,決定,通知と進みまして,その後に,制度的工夫の検討とございます。これが先ほど御覧いただいた法令上の根拠を持つという御提言を受けたものになりますけれども,この内容については,例えば給特法に,文部科学大臣がこのガイドラインを指針として定めるというような法律上の根拠規定を置くことなどが考えられます。
 それを前提に,各自治体においてこの上限を2020年度から規則等で定めていただくことで,この上限が実効性ある形で位置づけられていくのではないかとの御議論を頂いているところでございます。
 それでは,この同じ資料2‐1の20ページにお戻りいただければと思います。20ページからの学校の労働安全衛生管理について御説明申し上げます。
 21ページにありますとおり,学校の労働安全衛生管理は必ずしも十分でないという現状があります。特に21ページの一番下の丸ですけれども,公立学校の教育職員に占める精神疾患による病気休職者数が5,000人前後で推移していることや,志ある教師の過労死等が問題となっているという御議論がございました。
 一番下の行ですけれども,志ある教師が適切な勤務時間の管理がなされなかった中で,勤務の長時間化を止めることができず,ついに過労死に至ってしまう事態は,本人はもとより,その遺族又は家族にとって計り知れない苦痛であるとともに,児童生徒や学校にとっても大きな損失である。勤務実態が把握されていないことをもって,公務災害の認定に非常に多くの時間が掛かり,遺族や家族を一層苦しめてしまうような事例も報告されている。このような事態は決してあってはならないものであり,根絶を目指して必要な対策を実施していかねばならないとの御議論を頂いたところです。
 なお,特別部会では,この点は労働安全衛生管理にとどまらないので,総論において記載してはどうかとの御意見も頂いております。現在,整理をしているところでございます。
 23ページを御覧ください。学校の労働安全衛生管理の充実に向けて,1つ目の丸の最後の3行ですけれども,文部科学省として,全ての学校において,ストレスチェックが実施されるよう,教育委員会の実態を調査し,市町村ごとにその実施状況を公表すべきとされ,また,23ページ最後の丸の下から3行目,産業医の選任義務がない規模の学校に関しては,教育委員会として産業医を選任し,教職員の健康の確保に努めるべきと記載されております。
 24ページを御覧ください。5.の働き方に関する意識改革として,特に下から2行目ですけれども,管理職の登用等の際に,教師や子供たちにとって重要なリソースである時間を最も効果的に配分し,可能な限り短い在校等時間で教育の目標を達成する成果を上げられるかどうかの能力や働き方改革への取組状況を適正に評価することが大事であるという御議論を頂いております。
 27ページを御覧ください。第4章,業務の明確化・適正化です。昨年12月の中間まとめに引き続きまして,これは本来誰が担うべき業務であるか,また,それぞれの業務について,負担軽減のためにどのような適正化を図るべきかという観点から御議論いただきました。
 その上で,28ページの1つ目の丸ですけれども,業務の明確化・適正化は,決して社会に対して学校を閉ざしたり,内容を問わず一律にこれまでの業務を削減したりするものではない。むしろ逆であり,教師や子供たちにとって重要なリソースである時間を最も効果的に配分するかについての考え方を明確にし,地域や保護者に伝え,理解を得ることが求められるという考え方をお示しいただいたところです。
 次に,28ページの下の(1)ですけれども,この部分は,業務の適正化・明確化の総論であり,そこで重要なのが,先ほども申し上げたとおり,文部科学省が果たすべき責任は大きいということでございます。
 具体的には,28ページの下から4行目からですけれども,働き方改革の趣旨や目的,これは学校の業務ではない,先生の業務ではないといったことも含めて,文部科学省が明確なメッセージを出していく。その意味で,学校と社会の連携の始点となり,つなぎ役として前面に立つという御議論を頂いております。
 また,29ページの6行目ですが,業務改善の取組状況調査を見直し,実際の在校等時間の可視化に取り組み,公表していくことが求められます。また,文部科学省としても,これから学校に様々なお願いをするときには,スクラップ・アンド・ビルドの徹底が必要であり,また,もとより学校の働き方改革のための条件整備が非常に大事だという御議論を頂いております。
 29ページの下の(2),教育委員会等が取り組むべき方策としては,文科省と同じように,学校と社会の間に立つこと,また,30ページの真ん中,学校施設の地域開放においては,学校の負担軽減を図りつつ,教育委員会として責任を持って地域開放していくという御指摘を頂いております。
 続いて,(3),各学校が取り組むべき方策としては,1つ目のポツの3行目,削減する業務を洗い出す機会を設定し,校長は一部の教職員に業務が偏るこのないように校内の分担を見直すとともに,自らの権限と責任で業務を大胆に削減することとされています。
 特に,注61ですけれども,夏休み期間中の高温時のプール指導,勝利至上主義の早朝勤務,内発的な研究意欲がないにもかかわらず形式的に続けられている研究指定校としての業務などを大胆に見直し,削減していく必要があると御指摘を頂いており,文科省としても,社会に対して訴えたいと考えております。
 31ページからは,代表的な業務についての考え方ですけれども,具体は58ページ以降の別紙2において記載しております。58ページを御参照いただければと思いますが,一つ一つの御紹介は省かせていただきますけれども,ポイントは,先ほど31ページの注62,それから,注63,これを御覧ください。
 ここに書いておりますのは,学校の責任は無限ではなく,有限であるということです。安全配慮義務にしても,発達の段階によって程度は異なりますが,学校が予見可能性を踏まえて配慮していれば,責任を果たしているということになりますし,一番下の行には,保護者に過失がある場合には連帯して責任を負う,そういった裁判例を示しております。
 このように,業務の縮減を文部科学省として前面に立って進めていくと同時に,33ページの4.学校が作成する計画等の見直し,あるいは,34ページの5.,教育課程の編成・実施の在り方などを議論いただいているところでございます。
 36ページの6,在校等時間の縮減の目安として,72ページに別紙3という形で付けておりますが,御参照いただければと思います。72ページの別紙3,先生方の時間外勤務の状況は大変厳しく,解決不可能に感じられるかと思います。しかし,例えば,文部科学省の勤務実態調査では,先生方は,小・中学校ともに,勤務時間よりも45分ほど早く学校にお越しになっておられます。これは年間でいうと150時間の時間外勤務になり,これをどうすべきかしっかりと議論して,実現していく必要があると考えております。
 それから,小学校でいえば,例えば72ページの(5)ですね。これは北海道の事例を参考にしておりますけれども,統合型校務支援システム,これを導入すると,年間120時間の縮減というかなり大きな時間となります。
 73ページは中学校ですけれども,(4)の部活動につきまして,スポーツ庁が作成した部活動ガイドラインを遵守することによって,年間約120時間,また,部活動指導員の活用によって,年間約160時間,合計で年間約280時間の圧縮になり,これも具体的に進めていく必要があると考えております。
 それから,前に戻っていただきまして,37ページでございますが,第5章の「学校の組織運営体制の在り方」です。ここでは40ページの1つ目の丸のように,特に現在増えている若手教員をどう支えるのかという御議論を頂いております。
 それから,42ページの第6章で勤務時間制度の在り方についての御議論を頂いております。42ページの2つ目の丸ですけれども,給特法の下では,時間外勤務命令に基づいて業務を行うのは超勤4項目のみであり,それ以外の業務は,教師が自らの判断で「自発的」に勤務していると整理をされてきました。
 こうしたことから,学校の勤務時間管理が不要であるとの認識が広がり,教師の時間外勤務を抑制する動機付けを奪い,長時間勤務の実態を引き起こしているとの指摘を頂いたところです。
 議論のポイントは,43ページの一つ目の丸でございます。まずは,この上限ガイドラインを定めて,超勤4項目以外の業務についても在校等時間として把握の対象として,勤務時間の適切な把握管理を徹底していく必要があります。また,あわせて,業務の明確化・適正化を図り,業務を縮減していくことが必要です。
 また,43ページの二つ目の丸ですけれども,教師の勤務の在り方を踏まえた勤務時間制度の検討に当たっては,教師の専門職としての専門性や,時代が変わり,社会全体が高学歴化しても相対化されることがない教師の職務の特徴を踏まえる必要があるとの御議論を頂いたところです。
 その上で,43ページの3番目の丸ですけれども,一部の委員からは,給特法を見直した上で,36協定や超勤4項目以外の勤務時間の上限設定,時間外勤務手当の支払いなどを原則とすべきとの御議論を頂いております。
 これについては,44ページの上から2行目のように,教師の職務の本質を踏まえると,教育の成果は必ずしも勤務時間の長さのみに基づくものではない,給特法だけでなく,人材確保法も含めた教師の給与制度も考慮した場合,必ずしも教師の処遇改善につながらないという御指摘も頂いております。
 その下の丸の4行目ですが,教師の専門性や職務の特徴を改めて認識した上で,現状の教師の働き方の実態を踏まえた制度の在り方を検討した場合,直ちに現行の給特法に規定する超勤4項目を廃止したり,36協定を要するとしたりすることは,現状を追認する結果となり,働き方の改善につながらないのではないか,また,学校において現実的に対応可能ではないのではないかといった御議論を頂いたところです。
 したがって,44ページの上から二つ目の丸ですけれども,まず,給特法の基本的な枠組みを前提とした上で,勤務時間管理の徹底と上限ガイドラインという枠組みの中で,働き方改革を確実に実施する仕組みを確立し,成果を出すことか求められるという御議論を頂いております。
 なお,44ページの一番下の丸ですけれども,教職調整額が「4%」とされていることについては,実態との乖離があるという御指摘も頂いておりますが,勤務時間の縮減のための施策を総合的かつ確実に実施していくことを優先すべきであり,これらの取組の成果を踏まえつつ,必要に応じ,中長期的な課題として検討すべきとの御指摘を頂いたところです。
 45ページ,2.の一年単位の変形労働時間制につきましては,これ自体が勤務時間の縮減の切り札として議論されてきたわけではありません。注76のとおり,学校ではかつて,完全学校週5日制までの間,夏の「まとめ取り方式」として,先生方が社会的な理解を得ながら,長期休業期間中にまとまった休みを確保していたところであり,そのような方策が有効ではないかとして議論されたところです。
 現在でも,週休日の振り替えや連休など,様々な手段はありますが,一年単位の変形労働時間制の導入については法改正が必要であるということから,今回特に御議論を頂いたところです。
 ただし,46ページの上から4行目のように,現在では夏休みにおいても先生方はいろいろな業務がございます。このため,仮に導入するとしても,夏休み期間中の部活動や大会,研修等について,先生方が長期の休みを取れるように,文科省が前面に立って,徹底的に変えていく必要があると考えております。
 また,46ページの一番下の丸ですけれども,育児や介護等の事情によって配慮が必要な方に対し,変形労働時間制を適用しない選択を確保できるように措置をすべきとしております。
 47ページの2行目ですが,一年単位の変形労働時間制を導入することで,学期中の勤務時間が現在よりも長時間化することはあってはならないということで,その4行ほど下に,段階的に全体としての業務量を削減し,学期中の業務を現在より長時間化しないようにした上で,導入することが検討されるべきではないかという御指摘を頂いております。
 なお,先ほど御覧いただきました本資料最後のページ,74ページに付けております工程表,その下から2つ目の段ですけれども,一年単位の変形労働時間制については,2020年度に在校等時間の上限を各自治体で規則等を定めていただいた上で,勤務時間の縮減の状況を踏まえつつ,2021年度から導入してはどうかとお示しを頂いております。
 戻りまして,47ページ,3.の中長期的な検討については,これは給特法の枠組みも含めて,労働法制や教師の専門性の在り方,公務員法制における今後の動向等を踏まえながら,今後も引き続き,必要に応じて検討を重ねるべきという御議論を頂いているところです。
 48ページの第7章は,働き方改革の実現に向けた条件整備ということで,49ページにかけて,学校指導・運営体制の強化・充実や業務改善・効率化への支援といったメニューが記載されております。
 それから,51ページの3.ですけれども,今回の議論では様々な御指摘を頂きましたが,引き続き検討が必要な事項について記載しております。具体的には,小学校における教科担任制の充実,教育課程の在り方の見直し,免許更新制の実質化も含めた養成・免許・採用・研修全般にわたる改善・見直し,新しいテクノロジーの活用,小規模校の在り方の検討などについて記載しております。
 53ページからの第8章では,この改革が自走する仕組みが必要であるとの御議論を頂いて,53ページの一番下の丸のように,業務改善取組状況調査などを通じて,改革の進捗状況を市区町村ごとに把握をして公表していくことが必要ではないかという御議論を頂いております。
 最後に,54ページの下から2つ目の丸,それから,最後の丸ですけれども,働き方改革特別部会の委員の皆様の強い御意見に,御意思に基づきまして,中教審として,保護者や地域の方々への呼び掛けを頂いております。特に一番下の丸のように,今回の改革は子供たちを最前線で支えている教師がこれからも自らの時間を犠牲にして長時間勤務を続けていくのを望むのか,心身ともに健康でその専門性を十二分に発揮して,質の高い授業や教育活動を担っていくことを望むのか,その選択であるという問い掛けを頂いております。
 答申素案とガイドライン案についての説明は以上でございますが,これらにつきましては,12月6日から本日まで,国民の皆様からの意見募集を行っているところでございます。
 説明は以上でございます。ありがとうございました。

【北山会長】
 永山局長,ありがとうございました。
 それでは,この答申素案と,先ほど説明がありました上限ガイドライン案の審議に入ります。
 御意見,御質問があれば,札を立てていただければと思います。
 それでは,渡邉委員からお願いします。

【渡邉委員】
 ありがとうございます。
 今回のこの答申素案は,多方面にわたる実態調査ですとかヒアリングをベースにして取りまとめられ,なおかつ,新しい時代に向けた教育制度の改革を意識した大変網羅的な内容であり,非常に意義ある答申になっていると思います。そのため,私からは,この答申後の実践フェーズの段階においての期待ということで,意見を申し上げさせていただきます。
 昨今,学校だけではなくて,経済界や企業でも,働き方改革についての議論や実際の取組が進んでいるわけですけれども,その中で,働き方改革の矛先が労働時間削減関連にやや偏り過ぎていて,付加価値の向上が二の次になっていることが反省として言われています。
 今,働き方改革をイノベーション創出,あるいは,生産性向上につなげて,これから迎えようする時代,人が中心の経済社会であるSociety 5.0の実現に貢献していくのだ,という考え方が強まっていると思います。そういった目線でこの答申素案を拝見すると,学校における働き方改革も,勤務時間の削減に加えて,新たな価値創造という視点や,教員の働きがい,ワーク・ライフ・バランスの改善を通した教育の質の向上,特に学びの本質的な向上にもう少し重点を置く必要があるのではないか,そのような印象を持ちました。
 もとより,答申素案の「はじめに」や1章において,働き方改革の目的は,教師自らの人間性や創造性を高めて,子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようにすることだとまとめられております。まさにこのとおりだと思います。
 そして,その目的を果たすために,チームとしての学校の推進や,AI等のテクノロジーの活用などを総合的な政策パッケージとして取り上げ,これが学校における働き方改革の目的を果たすために必要なのだと,まとめていただいています。まさしく,これらの実践がこれから重要になると思います。とりわけ,第5章に取り上げていただいている学校組織のマネジメントの充実や,「チーム学校」の実践好事例の横展開という視点が,実践フェーズにおいては大変重要な要素になるだろうと思います。
 2015年に,「学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策」という答申が公表されております。その趣旨に沿った体制の構築が今も困難な地域があるのだとすれば,答申の内容も踏まえて,そうした地域にこそ文科省が手を加えて積極的に支援していく必要があるのではないかと感じております。
 また,答申素案で,優良事例や改善事例の共有とその横展開が必要だということについて,随所で言及されている点は非常に良いと思います。例えば,22,24,29ページ等には,労働安全衛生管理の先進事例や,勤務環境の改善事例,あるいは,業務改善の優良事例そのものを収集して横展開するという記述があります。こうしたことがこれからの実践フェーズにおいては大変重要だと感じました。
 最後に,54ページの「最後に」の締めくくりの保護者や地域,社会に理解を求めた記述は,多くの方々の意見を踏まえた内容でしょうし,教師たちが疲弊しているのも事実ですので,気持ちは大変痛いほど分かります。その上で,この答申が公表され,多くの方々に評価していただくことを考えますと,もう少し未来を考えることの大事さを強調して,これは前向きなチャレンジであると伝えることが重要ではないかと思います。
 すなわち,子供たちが自立,協働,創造の理念に向かってたくましく育ち,誰一人取り残さない未来を作るために,保護者や地域,社会との協力の下に,この難題を乗り越えて,協創して実現していこう,といった視点でこの最後を結んでいただいた方がより前向きな雰囲気になると思いました。
 以上です。

【北山会長】
 大変貴重な御意見だと思います。
 もう一方,山田委員から手が挙がっておりますので,お願いいたします。

【山田委員】
 ありがとうございます。
 まだちょっとよく読み込んでないので,大変分からないところがありますので,教えていただけたら幸いなんですけれども,今回こういう形でガイドラインを法的に位置付けるというお話になったわけでありますけれども,そもそも給特法の中で位置付けていくんだと思いますけれども,その場合のガイドラインの法的な意味というのがちょっと今聞いていてもよく分からなかったなと。
 これは指導,指示みたいな形でなっていくのか,それは公務員法上,それに反した場合どうなるのか,逆に,これに基づいて,条例で上限を定める形になっているんですけれども,これは条例ではなくて規則等になっているんですけれども,この規則等で上限を定めるということの根拠はどうするのか,その点がちょっと聞いていてよく分からなかったなという感じがします。こういうのは規則で定められるのかなと,そもそも条例上の根拠があって,多分その中で規則が出てくるんだと思うんですけれども,そうすると,条例自身も出て変わってくる形になるのかという,その一連の流れがどうも聞いていてよく分からなかったというのがまずその質問であります。
 それにしても,ここまで上限を定めて,そして,まさに学校の先生の勤務時間を把握してやっていく,一人一人の状況も個別にきちんと把握できる,そうした中で,教員の調整額というのが本当に法的にうまく理由づけられるのでしょうか。
 前は,そういうのはなかなか厳しくきちっとやることが難しいから,全般的にみんなにあげたという形になっていたと思うんですけれども,これだけ管理を徹底しておいて,それでやっぱり教職調整額というのはやっぱり論理的に出てくるのかなという感じがしておりますし,ガイドラインの中身も,そのまま規則にするというと,私なんかも昔,法律とかやっていましたけれども,物すごく難しい規則になるなというところが感想でございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 ここで一旦切りまして,渡邉委員のコメントは大変貴重な御意見でして,事務局としてはそれを強く受け止めるということかと思います。また,「最後に」の部分については,もう少し強いメッセージで,との御要望だったかと思います。
 ではまず先に,山田委員の御質問について,事務局からコメントをお願いできますか。

【合田初等中等教育局財務課長】
 事務的に,財務課長でございますが,お答え申し上げたいというふうに思っております。
 まず,前者でございますが,これ,私どもは中教審で答申を頂きましたら,これを法制的に整理をさせていただく必要がございますけれども,恐らく中教審で御指摘を頂いておりますのは,今回,ガイドラインで示しているもの,これは私どもが行政の一環としてお示しをしているその勤務時間管理の考え方でございます。
 当然,その前提といたしましては,先生御案内のとおり,昨今の働き方改革推進法によって,労働安全衛生法によって,その事業者はその従業員の勤務時間を客観的な状況,客観的な手段において把握しなければならないという義務がより一層明確になったということが前提になってございます。
 この義務を果たすという観点から,教職員については,私どもとしては,こういうガイドラインにのっとって把握するということについてお示しをさせていただくというのが今回のガイドライン,これはあくまでも我々行政の一環としてお示しをさせていただくものでございます。
 他方で,中教審におきましては,このガイドラインをただ単に行政上の措置として定めるのではなくて,給特法という枠組みの中で,国民の意思として,いわばガイドラインというよりも,ある種の指針として定めていく必要があるんじゃないかという御指摘を頂いているところでございます。
 その際,中教審におきましては,働き方改革特別部会におきましても,労働法制の専門家の先生方とも御相談をしても,給特法の枠組みの中で,その超勤4項目と,それから,それ以外という整理をしていると。そして,この勤務時間の内外を包括的に評価をして,教職調整額を出すというこの枠組みと,それから,その超勤4項目以外の校務として行っているその勤務というものを併せて,勤務に関するいわば在校等時間として管理をしていくというような整理をしていくということが可能であると。
 可能であることを前提として,給特法上に,このガイドラインの趣旨も……。

【山田委員】
 何で可能であるの? それが分からないから聞いているんだけど。

【合田初等中等教育局財務課長】
 可能であるというのは,つまり,後者の御質問に関してお答え申し上げると,この給特法の仕組み自体が,超勤4項目以外の時間はどうでもいいと,そこは自主的,自発的にやっているので,そこは管理もしなくてもよければ,そこがいくら長時間化しても構わないという制度設計にはなっていないということが前提になってございます。
 もちろん,給特法は,先ほど申し上げたように,勤務時間の内外を包括的に評価をして,超勤4項目を支払うという仕組みにはなってございますけれども,そのことと超勤4項目以外のその在校等時間を含めて,先生方の勤務時間管理を行うということについては,これは両立するのではないかという議論を頂いているということでございます。
 したがいまして,前者の質問についてまずお答えをさせていただきますと,そういう形で,給特法上指針と定めた上で,これは委員御案内のとおり,地方公務員については,この勤務時間管理について,総務省が条例参考例というものを年明けにも示そうとしていると。
 それに基づいて,その条例参考例に基づいて,非現業の公務員であれば,人事委員会の規則に基づいて上限規制を行っていこうという話もございますので,私ども,もし給特法の改正を今回お認めを頂いて,このガイドラインを指針と定めるとすれば,それを根拠にした上で,各県に対して,都道府県に対して,あるいは,政令市に対して,その条例を定めていただくと。
 その条例を根拠に,教育公務員の場合は,教育委員会規則,又は,人事委員会規則で今回のそのガイドラインに定めるような在校等時間の管理というものをやっていただくということを,これは最終的には地方自治体の判断でございますので,私どもとしてはそのような指導,助言,援助をさせていただくということになろうかと思っております。

【北山会長】
 山田委員,どうぞ。

【山田委員】
 普通にガイドラインで示されて,あとは学校の自由でいろいろ運用,運営の中で管理をしていくというのは分かるんですけれども,しかし条例,規則も条例の一部ですから,そこで上限を定めてきちっとやっていくとなると,今までの前提が崩れてしまっているんじゃないか,その上限を管理するのは誰かということに対し非常に懸念を持つということだけを指摘させていただきます。

【合田初等中等教育局財務課長】
 一言だけ申し上げますが,今,委員がおっしゃいましたように,非現業の公務員の場合は,勤務時間というのが勤務時間外については全て職務命令に基づいてその勤務を行うということでございますので,そこは今,総務省の方がお示しをなさっておられるように,そのことを前提に,条例参考例をお示しをさせていただいて,各自治体で御判断いただくという枠組みになるわけでございますが,教師については,これも委員御案内のとおり,この勤務時間と,それから,勤務時間外については,職務命令を発せられるのは超勤4項目だけであると。
 それ以外については,校務として職務は行っているけれども,職務命令は出ていないというような状況になってございますので,そういう先生方の勤務の特性を考えたときに,他方で,働き方改革の観点から,在校等時間というものを正確に把握をし,それについて上限を定めて先生方の働き方を改善してあげなければならないというこの構造の中で,今回の御提起を頂いたというふうに考えてございます。

【山田委員】
 じゃあ,超えたら誰の責任になるんですかね。

【合田初等中等教育局財務課長】
 それは恐らく非現業の公務員も,要するに,超えるような職務命令は出し得ないと。上限を超えるような職務命令は出し得ないということになるわけでございますけれども,他方で,その先生方についても,校務として行っている以上,在校等時間が一定の枠内に収まるように,校長ですとか教育委員会には一定の責任があるという整理をするということになるかと存じます。

【北山会長】
 では,最初の渡邉委員のコメントについても,一言,永山局長からお願いできますか。

【永山初等中等教育局長】
 大変貴重な御意見いただいたと思います。確かに勤務時間を減らすということだけではなくて,質の向上といいますか,新しい価値を創造する。質は非常に大事だと思いますし,それから,特に学校の場合には「チーム学校」という視点,それから,AI等の最先端の技術の導入,活用,これは中でも触れられておりますけれども,そういったことというのはきちんと進めていきたい,当然だと思っておりますし,あと,最後の書きぶりにつきましては,また少し考えさせていただきたいと思います。

【北山会長】
 お願いします。
 それでは,お待たせしました。帯野委員,その後,生重委員,お願いします。

【帯野委員】
 渡邉委員と同じく答申後のことについて,文科省にお願いしたいことがあります。
 まず,多くの議論を重ねて,よく練られた立派な答申ができつつあると思っています。ただ,この答申を出して終わりということにしないためにお願いしたいわけですが,この答申は,1年単位の変形労働時間制という新制度の導入と,既存の制度の着実な実施,つまり,あるもの,できるものを全てやっていくということの2本立てだと思うのですね。
 その中で,既存制度のところについて,ちょっと気になるところを2点,申し上げたいと思うのですが,先ほども御指摘があった地域学校協働活動でしたっけ,これはたしか平成27年,私の記憶が正しければ,2015年の12月21日,ちょうど3年前に答申を出したと思います。
 ただ,3年たって,この会議ではグッドプラクティスを聞くのですが,自分の周りで学校で活躍している地域の方とか,地域の方を入れて生き生きとした学校というのはあまり見ないのですね。
 多分,地域によって事情は違うと思うのですが,ただ,今,1万,小・中併せて1万6,000校ぐらいですか,感じでは3割もいってないんじゃないかな,1割ぐらいかなと思っておりますので,そこをどうしていくか。
 この答申の中には,文部科学省が教育委員会,学校の取組を調査,公表することで受け皿整備を進めていくべきであるとなっていて,それはそのとおりなのですが,3年たっても,調査・公表にとどまるというのはいかがなものかと思います。これが全国に広がるように,各団体で議論をできるような,次なる刺激策を考えていただきたいと思います。
 もう一点は,学校の組織運営体制の在り方のところで,指導主事,主幹教諭,それから,指導教諭,事務職等々について触れられていますが,この中で指導教諭の役割というのはあまり明確になっていないし,よく分からないのですね。
 一方,9ページのなぜ労働時間が増えているかというところで,第1に,若手教員30代以下が10ポイント増加していて,若くなれば,若ければ若いほど労働時間が長い。その原因が経験の少なさ,サポート体制の未整備となっているのですね。ということは,指導教諭の役割が本当に果たせているのかどうかというところが大きなポイントであると思います。
 本当は,こういう現状であれば,今こそ指導教諭の出番であると思いますので,ここは,制度ができたときの原点に立ち返って,なぜ生かされないのかを検証し,生かされないのであれば給与表は特2級だったと思いますので,処遇になってしまいますので廃止も含めて見直す。
 そして,その原資を,今一番必要としている,例えばSSWのところに充てるとか,そんなふうにして制度はいつも見直して新陳代謝を図っていくということがとても大事だし,それを見せることもとても大事です。なぜならこの1年単位の変形労働時間制の導入は,10年に一度ぐらいの大きな制度改革であると思います。
 であれば,以前申し上げたように,やはり国主導でやるべきだと思うのですが,勤務条件条例主義の原則で,地方に委ねざるを得ないということでした。そうすると,地方には議会もあれば組合もあります。先ほどお話が出たように,そこに対応するのは人事委員会ということになると思うのですが,大きな制度というのは当然反対意見がある。その反対意見に対して,意見を聞いて説明して,納得してもらわなければいけない。
 そのときに,やっぱりその置き去りにされている既存の制度を条件整備していく,目に見える形で活性化させていくということがなければ,説得も力強さがなくなるというか難しいと思いますので,そういう趣旨で,是非,文部科学省には,既存の制度を活性化するための次の一手をお願いしたいと思います。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 では,生重委員,お願いします。

【生重委員】
 今,帯野先生があまりきらきら活躍しているところを見掛けないとおっしゃったんですが,意外と全国的にかなり頑張っていて,活躍なさっていて,これはすごいと。
 先日,ちょっと有名過ぎるんですが,大阪の大空小学校にヒアリングに参りましたら,また本当にこれはまたすごいというぐらい地域の方々が大活躍で,学校との協働関係も良い形になっておりました。大阪全般がそこ,進んでいるかといったら,そうは申せないですが,私がちょっと本当にこれ,すばらしい内容になっているなというふうにこの素案については思います。
 私は,別の観点から,逆に,全国の学校現場をヒアリング,教育委員会のヒアリングを今ちょっとさせていただいておりまして,そのときに,ここの内容に書かれているというのは,ある一定の人口がいるところでは,ルールをどうしていこうかとか,様々なところでサポートスタッフを入れていったり,地域学校協働の中でいろいろな案を出していったり,ランチスタッフを設けて給食指導に,先生だけではなく,地域の方が入っていただくなど,いろいろ考えられる。
 でも,最近,割と他県に行きまして教育委員会からの御相談は,うちの教育委員会には5校しか小学校がなくて,1校の中学校だと。例えば1校を通い切れないので27名で残っているとか,そういう状況下において,そういう人材を手当てしようとすると,人の奪い合いになるんですというより具体的な相談を受けることがある。
 そのときに,学校ごとに作るんじゃなくて,町一体型でお作りになったらいかがですかというふうにお勧めするようにはしているんですが,御存じかと思いますが,町一体型で作ろうが,遠いんです,一校一校が。子供が一つの学校に通ってこられないという条件と同じように。
 ということは,町ぐるみで様々なことをやっていくとしたならば,やっぱりある程度,都心部と地方における条件の違いとか,あと,地方での悩みが予算が付けられないんですね。そこの部分が一番大きくて,今,私が申しました例なんかは,例えば交通費,ガソリン代が出る。バスが走ってないところなんかは,それだけでも参加してくれる人が増えていったり,いろいろ条件的に難しいことはあるかと思うんですが,一定の手当がないと,そういう条件のところでは難しい問題もあるものだということを日々実感しているところなので,是非,何かやっぱりこれからの若い先生が増えていく中で,いろんな方に斜めの関係として入っていただくことはとても有効なことになっていくと思いますので,予算配慮とか,そういうことで,ますますその地域学校連携推進が,その条件の違いによって進まないということにならないような御配慮を頂きながら,この中に書かれていることが実現していくことを望みます。
 私からは以上です。

【北山会長】
 ありがとうございました。
 今の帯野委員と生重委員からの御意見は,いわゆるコミュニティスクールなども含めた論点で,おそらく3番目の議題にも関係してくる部分がございます。その点については,後程,御説明,御議論頂くことにしたいと思いますが,今のお二方の御意見に対して事務局からコメントはございますか。

【永山初等中等教育局長】
 地域と学校の協働につきましては,様々なデータ上は,少なくともかなり進んできているというふうには私どもとしても認識は持ってございます。もちろん,地域,あるいは,学校,自治体によっての差というのはあるんだろうと思いますけれども。
 それから,指導教諭等の指導力といいますか,役割なり,位置付けなり,実績なり,こういったものについて,これも様々であろうかと思うんですけれども,いずれにしましても,今回この答申いただきましたら,これから,私ども,関係者にいろいろとお願いなり,働き掛けなり,御相談なりをしていくことになると思いますから,そういった中でも,改めて,この答申の趣旨に沿った取組というものを,今,現時点で具体的にというところまではなかなか申し上げにくいんですけれども,しっかりやっていきたいと考えております。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 続いて,菊川委員,お願いします。

【菊川委員】
 こういう答申が出てきたことは,非常にすばらしいと思っております。
 その上でですが,この答申が現場サイドで形式的に,あるいは,誤って受け止められないために,渡邉委員さんや,生重委員さん等々もおっしゃったように,この答申での新たな価値が何かということを考えたいと思います。今,学校では,新しい指導要領を根付かせることで,先生方,一生懸命だと思います。
 ですから,現場サイドから言うと,今度の,社会に開かれた教育課程というメッセージと,この教職員の働き方改革,あるいは,新たな時代に対応する人材の育成という教育課程の本質とこの先生方の具体的な働き方改革というのを関連付けて,現場におろしていただく,説明していただくと,先生方が腑に落ちるのではなかろうかというふうに思うところです。【北山会長】
 ありがとうございます。
 幸い,合田課長は学習指導要領の御担当もなさっておられますし,今回も担当課長ですので,コメントをお願いできますか。

【合田初等中等教育局財務課長】
 御指摘のとおりかと思います。しっかりとまた整理をさせていただきたいと存じます。

【北山会長】
 そのほか,いかがでしょうか。中田委員,お願いします。

【中田委員】
 この答申自体の持っている価値というのは十分認識しております。
 それで,今,前の方々がおっしゃったこととの関連ですが,本日は,最初に,社教審の答申が議題になっています。その上で,この素案が今,新議案として掛かっている。そして,三つ目の議題がこの後掛けられてくるということだと思います。今,これらの施策案の背景には,学校教育,それから,社会教育,生涯教育が日本の中で大きな変革期を迎えているという事実があることは十分認識しています。そうした大きな変革期に関わって,様々な施策が今,具体化され,展開されようとしているとなった場合,その相関関係をきちんとパッケージとして理解していくということがとても大事じゃないかなと思っています。
 今,直前に,関係をきちんと見ておく方がいいんじゃないかとおっしゃったとおりで,例えばなんですけれども次のような工夫もあるかもししれません。きょうの資料の2‐1の一番後のページに,今後の工程表というのが出てくるわけですけれども,これはこの答申におけるパッケージの工程表だと思うんですが,それと前後して関係する教育改革の工程表ときちんと縦につないで,層を作って並べてみたときに,それぞれが掲げようとしている展開軸が,そのほかの答申で示している展開軸とどう符合していて,その実現性がどのようなタイミングで準備されて展開していくのかというようなことを示しながら,今回のこの答申をお示しするという工夫もあるかと思います。
 学校からすれば,勤務時間が減っていくということは大事なことなんですけれども,子供たちの育つ力,環境,それを支える環境が損なわれることなく勤務時間が減っていくためには,地域というのがどう変わっていかなければいけないのか,それによって,例えば社会教育士と言われるような条件整備がどのように進んでいって,それが充実し地域社会の中でどう機能していくのか,そこに地域格差があるのか,ないのかというようなことを含めて,相関図的に理解していく視点というのも大事じゃないかと思いますのでそうした観点も含めお願いしたいと思います。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 時間の関係で,本件の審議は,今の中田委員の御意見で終了とさせていただきます。最後に仰った相関表,全体像という点に関しては,教育振興基本計画が全体像にあたるかとも思います。まず基本計画があり,そこからいろいろなブランチが出てくる形になってきます。では,事務局からコメントよろしいですか。

【合田初等中等教育局財務課長】
 大変重要な御指摘だろうというふうに思っております。もとより,中教審の働き方部会は,教育課程の改善に御尽力なさった無藤先生をはじめ,多くの先生方に御議論いただいておりまして,その中には,2020年度からの新課程の実施であるとか,あるいは,先ほど菊川委員からお話がございました社会に開かれた教育課程といったような議論も踏まえながら,それを頭に入れながら,あの工程表を作っていただいているというふうに理解をしてございます。
 働き方改革自体は,これはやっぱり働き方改革というものを一つ軸に進めていくわけですし,その事柄,先生方に御理解いただくためにも,工程表をあまり複雑にするわけには参りませんけれども,そういった教育改革の全体像をしっかり踏まえながら議論いただくということは引き続き大事なことだと思っておりますので,何らかの形で,私どももこれは行政の立場として整理をし,発信をさせていただきたいと思っております。

【北山会長】
 全体像として大きなPDCAの表があっても,そこから,各論のPDCAにどんどん分かれていくので,例えば,菊川委員の御意見も,それぞれの各論のPDCAがどうなっているかが見え難いい部分もあるという御指摘だったと思います。
 それでは,委員の皆様からいろいろ御意見も頂きましたので,今後,答申案としての取りまとめに向けて,特別部会,それから,初等中等教育分科会で更に御検討をお願いしたいと思います。
 そして,次回の総会で,修正後の答申案について御確認いただき,そこで,了承いただければ,答申として提出するという段取りになりますので,その旨,御了承いただきたいと思います。
 それでは,議題(3)に入ります。
 「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの改革プラン~」,これについて,11月22日に取りまとめられましたので,報告案件として,事務局からその内容の説明をお願いしたいと思います。

【下間大臣官房審議官】
 お手元,資料3を御覧いただきたいと存じます。このたび,去る11月22日に,「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」を公表いたしましたので,御報告をさせていただきます。
 1枚くっていただいて,2ページを御覧いただきたいと存じます。一つ目の丸でございますけれども,「Society 5.0の時代こそ,学校は,単に知識を伝達する場ではなく,人と人との関わり合いの中で,人間としての強みを伸ばしながら,人生や社会を見据えて学び合う場となることが求められている」ところでございます。
 そうした学校における教育の中核を担うのは教師でございます。二つ目の丸でございますけれども,「学びの質を高め,すべての児童生徒にこれからの時代に求められる資質・能力を育成するためには」,「中核を担う教師を支え,その質を高めるツールとして先端技術には大きな可能性」があると。
 そうした進展する技術を学校教育にも積極的に取り入れることによりまして,教育の質を一層高めていきたいというふうに考えております。
 このプランは,学びの革新に向けた施策の大きな方向性を示すものでございまして,具体策の検討に向けたキックオフとなるものでございます。従来からの取組の加速化を図りながら,これまでにない新たな取組についてもスピード感を持って実施してまいりたいと考えております。
 3ページを御覧いただきたいと思います。本プランは,1にございますように,遠隔教育の推進による先進的な教育の実現,2の先端技術の導入による教師の授業支援,3の先端技術の活用のための環境整備の3点を政策の柱としてございます。
 1点目の遠隔教育につきまして,少し事例を御覧いただきたいと存じますので,4ページで示しております文部科学省における実証事業の具体的な事例につきまして,5ページからで先に御説明を申し上げたいと思います。5ページを御覧ください。
 5ページ目の小学校・中学校・義務教育学校の事例につきましては,中山間地にある小規模校であるため,上の課題のところにございますけれども,様々な経験や考えを持った人と出会う機会が少ない。先ほど生重委員から,こうした学校の様々な地域の皆様も参加をした取組についての御指摘も,御紹介も頂いたところでございます。工夫を頂いておりますけれども,こうした機会が少ない学校において,例えば外国語活動,外国語といった授業におきまして,ALTが各校を巡回しているために,ネーティブスピーカーによる指導の時間が限られているということがございます。
 そこに遠隔教育を活用する,遠隔授業を実施することで,下の成果のところでございますけれども,ALTによる発音指導等の機会の充実によりまして,英語を用いた表現活動が向上したといった成果が見られたところでございます。
 6ページ目の小学校の事例でございますが,学級の人数が少ないために,児童生徒の関係,あるいは,考え方が固定化されやすく,交流学習等の実施が困難という課題がございましたところ,遠隔教育を実施することによりまして,下の成果の二つ目のポツでございますが,とりわけ小規模校の児童にとって教育機会の充実が図られ,学習意欲の向上が見られたということでございます。
 それから,7ページ目の高等学校の事例でございますが,小規模な分校において,化学担当の教員が配置できなかったところ,遠隔授業を実施することで,分校においても化学担当の教員による授業を実施をし,より高い質の授業を実現することができたという事例でございます。
 もう1ページくっていただきまして,8ページでございますけれども,特別支援学校の事例につきましては,病気のため通学できない児童生徒の病室での学習につきまして,WEB会議システムやICT機器等を活用いたしまして,教科,あるいは,児童生徒の病状に応じた遠隔授業を実施をすることで,病気のため通学できない児童生徒が同学年の児童生徒とともに学ぶことができるようになり,孤独感や不安感を軽減させることにつながったというふうな事例でございます。
 以上,事例について触れさせていただきましたが,小規模校における教育活動の充実でございますとか,不登校,あるいは,病気療養児といった様々な事情を抱える児童生徒の学習機会の確保を図り,教育の質を向上させる観点から,有効な教育方法の一つと考えているところでございます。
 恐縮でございますが,3ページに戻っていただきまして,1でございますけれども,このため,2020年代の早期に,全ての小・中・高等学校で遠隔教育が活用できますよう,全国の優れた取組の普及や,民間企業・大学等のノウハウや技術の集約・活用を促進してまいります。
 また,枠内の三つ目のポツでございますけれども,中学校における遠隔授業につきましては,教室に教師がいることを前提として,ニーズの高い分野,具体的には新たなプログラミングや英会話において実証的取組を行う予定としているところでございます。
 2点目の先端技術の導入による教師の授業支援につきましては,いわゆるビッグデータの活用による指導の充実や指導力の分析,研修への活用などによる教師の指導力向上,質向上に向けた取組などを進めてまいりたいというふうに考えてございます。
 3点目の環境整備につきましては,先端技術の活用のために,学校のICT環境の整備を更に進めてまいりたいというふうに考えてございます。
 飛んで恐縮でございます,10ページ目をちょっと御覧いただきたいと存じますが,11月27日に開催されました教育再生実行会議技術革新ワーキンググループにおいて本プランを提案をいたしまして,現在,教育再生実行会議において議論を頂いているところでございます。また,文部科学省内にもプランの実行のためのチームを設置をいたしまして,外部の有識者の協力も得ながら,関係施策の具体化を進めてまいります。
 この当面のスケジュール案に沿いまして,教育再生実行会議における議論の結果も踏まえ,可能なものから順次取組を進めながら,年度内に中間取りまとめ,6月までに取りまとめを行っていただくといことを考えておりまして,必要な措置を速やかに講じますとともに,必要なものにつきましては,中央教育審議会におきまして,今後御議論いただきたいというふうに考えているところでございます。
 説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 ありがとうございました。
 それでは,生重委員,お願いします。

【生重委員】
 もうこれはもうすぐにでも推進していただきたいと思っております。
 私も物すごい山合いの過疎地のICT活用の学校を何回か通って見せていただいたり,じゃないと,20人とか50人以下になると,教員,専科教員,中学なんかは専門的な教科を教える教員が配置されなくなるから,順番に回ってくるとか,美術の先生はずっと来ないとか,体育もタブレットPCを見ながら,柔道の足払いをみんなで話し合っているとかという現場を見てきているんですが,それと,もうここの中に盛り込んでいただきたいことの一つとして,そういう場所をいっぱい見てきて,やっぱり今,回ってくると言いましたが,人との出会いも必要なんですよ。余りにも人がいないんで。
 ですから,この最先端を使っての授業と,それと,やっぱり手当てされていく人との出会いということがあって,リアルに,例えばかつて理科実験教室の理科実験の方を送り込む制度があったんですが,そういう方たちが定期的にやっていくとか,リアルに,画面から伝わるものではなく,リアルもできるようなところに,だから,最先端技術と人との交流みたいな,そういうところから,実際出合っていくことの中で,子供たちが感じていくこととか,リスペクトしていくものにリアルに出合っていくことの重要性というのもあると思っています。
 それと,この最先端のタブレットPCの授業を見ていて,一番私自身が感銘を受けて面白かったのは,拠点になる大きな学校があって,そこの分校みたいな山合いの3名の子が拠点となる学校の授業にリアルに参加していて,その授業の中で意見を自分たちも言ったり,交換したりするようなこともやっていて,タブレットと,それから,電子黒板を通じて,リアルにそちらの大きな学校に参加して一緒に勉強しているみたいな,そういうことも含めて,体系的に作っていっていただいて,子供たちのこの最先端技術活用の中で,様々な人との交流,同学年との交流,それと,それから,最先端を活用しての学習意欲が向上するのは間違いないんです。
 もう劇的に子供たちの目が輝いていきますし,物すごくやる気になるというのも見ていますので,すごく上手にそこら辺を組み立てながら,このせっかく発信する柴山プランの中で,人との出会いも大切,最先端も活用する,子供の意欲,モチベーションを上げるというところにつなげていただきたいなというふうに思います。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 もう一方,善本委員,お願いします。

【善本委員】
 ありがとうございます。実際に既にこのようなシステムを活用している学校現場の立場から,3点ほどお話をさせていただければというふうに思います。
 私どもは中高一貫校ですけれども,他に例を見ない,校地が歩いて10分弱離れて,二つに離れているというところが状況がございまして,私が着任したときに,非常に校務運営上支障が多いと思いましたので,企業ではもう当たり前かと思いますが,昨年の初めにテレビ会議システムを導入しました。これは働き方改革には非常に効果があって,教員からの評判も良く,運用されています。
 それから,これは東京都の事業で,オンライン英会話を今,フィリピンと結んで,1対1でやっています。それから,それは今年の夏,校内に全ての教室にWi‐Fiを引いて,先行実施校として,これも都の事業ですけれども,タブレットを使ったり,あるいは,生徒自身が持っている,高校生ですから,スマートフォンのような端末を使ったりして授業に生かしていくというふうなことの先行実施に,この夏以降,取り掛かっています。
 これらのシステムの中で,やはり一番問題になるのは,テレビ会議をやっているときにも音声が途絶えたり,あるいは,フィリピンと結んでいても,40台,1クラスで40台一遍にやるんですが,必ず不具合が出たりする。そして,先ほど申し上げたWi‐Fiのタブレット活用も,いちどきにやろうとすると,やっぱり不具合が出るというのが実態です。
 なので,このシステムを本当に生かしていくために,実はお話としてはすごくいいお話なので是非やっていただきたいんですが,ネットワークシステムが安定的に稼働するようにすることって思っている以上に大変だと現場で実感しています。ですから,そのことは,予算的なことも含めて,かなり意識していただかないといけないんじゃないかなというのが1点目です。
 それから,2点目はセキュリティの問題で,実は今,ここに来る直前に,私,他県の校長先生に添付ファイル付きのメールを送りましたら,お返事が来て,当県はセキュリティが非常に厳しく,添付ファイルを開くことができないので,ファクシミリで送っていただけませんかというお返事が来ました。
 実際に,私どもの東京都でも,例えば動画のサイトというのは見ることはできませんし,セキュリティの問題というのはとても重要なんですけれども,そのことと,教育で生かしていくための運用の利便性を向上させるということ,非常に難しい連立方程式なんですが,これを両立させていくということをかなり考えていかなくてはいけないんじゃないかということが2点目です。
 それから,最後は,その3点目は,というような課題がありながらも,実は私どもの学校では,これを,このシステムを海外との連携にもっと使っていきたいなと思っています。私どもでも海外にシスタースクールを持っていますし,そういったところと居ながらにして連携して,この中では小規模校の教育ということが主眼に置かれていますけれども,グローバル人材の育成ということを考えると,こういったシステムが海外の学校と連携するとか,海外の大学と連携するとか,そういったシステムに活用されるのであれば,非常に希望が持てるというか,そういった面もあると思いますので,この中にそういった視点,もし可能であれば,入れていただければ有り難いなというふうに思います。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 あとお二方,今,手が挙がっていますので,お二方の御意見をお聞きした後,最後に事務局からお願いしたいと思います。では,天笠委員,お願いします。

【天笠委員】
 失礼いたします。先ほどの前の議題のときの意見ともつながる部分もあるかもしれませんけれども,改めて,この政策の推進については,全体的な地図があって御説明いただくといいかなというふうに思いました。
 まさにテーマにありますように,先端技術のそれを開発し,そして,それを教育の分野に導入していくという,そういう理解の仕方もあるかと思うんですけれども,ただ,私にとりましては気に,目に入ってくるのは,例えば中山間地域ですとか,遠隔地ですとか,そういうところにおける教育の在り方についての大きな提起という,そういうこともあるかと思いますし,また,事例にもありましたように,小学校と中学校と高等学校の相互の関係ということを捉え,ある意味で言うと,小学校から高等学校までの連携接続という,そういう制度に関わるようないろんなものがあったりですとか,ある意味,各都道府県,こういういわゆる人口減少地域における教育の在り方というのは,いわゆる統廃合問題等々でいろんなところで悩みを抱えている。
 そういう今日的状況の中で,この様々な課題の状況の中で,この取組というのがどういう全体像の中のそれなのかという,その位置付けということを改めてしっかりと明確にしていただくということの必要性というか大切さってあるように思います。
 要するに,極めて限定的な教育技術の開発の取組だとしても,今申し上げたようないろんなところに波及的な影響等々を持っていくということで,例えばその一つとして,中山間地地域における高等学校の存在というのをどう考えていったらいいのかどうなのかという,そういうことと,もうやっぱりこれは提起せざるを得ないというか,関わらざるを得ないというふうな,こういうこともあるわけで,既にそういう意味で言うと,先ほどありましたように,先行する取組とかというのは様々に展開されているという言い方もできるじゃないかと思うんですけれども。
 それら試みられていることと,もう一回全体的な文脈の中で,全体の構造の中で位置付けていくという,そのことがこの取組のまた成果ということとつながってくるんじゃないかというふうに思いますので,どうぞ,改めてこれ,どういう全体の文脈の中でのこの取組なのか,改革なのか,その辺りのところもあわせて,この取組とともにしっかりと描いていただければということをお願い申し上げたいと思います。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,最後に無藤委員,お願いします。

【無藤委員】
 私は少し違う角度からお願いでありますが,以前から,文部科学省と教育政策として,エビデンスベースであるべきだということがあって,局などの改組もあったと聞いております。その意味で,遠隔教育とかICT環境の活用というのは極めてエビデンスを作るのに向いている施策になると思います。どうしてかというと,比較的小規模で導入して効果が検証できるからなんですね。
 ただし,その場合には,三つほどの条件が要るわけです。一つは,きょうの報告でも事例が出ておりますけれども,この事例をどう選んだかはちょっとここには書いてなくて分かりませんけれども,基本的に事例でそこで新たな教育的試みをすることですけれども,それを手挙げ方式ではなくて,ランダムに割り当てるということが第一の条件です。
 手挙げ方式ということはやりたいところを募集してやってもらうわけですが,手を挙げるところは大体そもそも熱心で優れていたりするかもしれないので,やっぱりそこの条件を除くには,ランダムということは,そういう新たな試みをするところと従来のやり方のところを比較するということをランダムに決めるという意味です。
 2番目は,その成果は必ず客観的なテストで行うということであります。随分様々なテストが確認され,作られてきました。
 3番目はコスト計算をするということです。1校に極めて多大な経費を掛ければ大抵のことは良くなると思いますが,それが全国化できるようなコストベースに合うかという検討が必要だと思います。
 このことを是非進めることによって,エビデンスに基づいて,部分的に様々な事例が出て成果があると私も思うんですけれども,その全国化を図っていただきたいと思います。
 以上です。

【北山会長】
 どうもありがとうございました。
 今,生重委員から無藤委員まで,いろいろな御意見や御要望がありましたけれども,全体を踏まえて,最後に文科省からお願いします。

【下間大臣官房審議官】
 貴重な御意見を賜りまして,ありがとうございました。
 生重委員からございましたとおり,大変先端技術は可能性を秘めているわけでございますけれども,冒頭にも申し上げましたとおり,人と人との関わり合いの中で,人間としての強みを伸ばすということがこれからSociety 5.0という時代にも求められているわけでございますので,おっしゃったとおり,リアルに学ぶことの重要性ということと,こうした技術をうまく組み合わせていくということについて考えていきたいと思います。
 それから,学校における先端技術の革新につきまして,善本委員の方からは,ネットワーク環境を含むICT環境の整備の問題でございますとか,技術の活用と情報セキュリティの両立,確保の問題でございますとか,大変重要な御指摘を頂きました。その点につきましもしっかりと御検討してまいりたいと思っております。
 それから,天笠委員からは,高等学校の在り方を含む全体的視野の中でこのことについても検討すべきという御指摘を賜りました。高等学校につきましては,教育再生実行会議の方でも,高等学校の改革についてのワーキングにおいて議論いただいているところでございますが,その議論も踏まえながら,文部科学省としてしっかり考えていきたいというふうに考えているところでございます。
 その上で,最後に,無藤先生から,エビデンスを作るという観点からのお話がございました。三つの御指摘はしっかりと受け止めながら,こうしたまさにエビデンスを作っていくために先端技術を活用するということにつきましても,私どもも実証的な取組を進めながら,様々な条件も学校において先端技術がどのように,今,活用できるのかということをしっかりと検証してまいりたいというふうに考えてございます。

【北山会長】
 どうもありがとうございました。委員の皆さん,よろしいでしょうか。
 それでは,もし追加で何かございましたら,文科省の事務局までお寄せください。それでは,本日の議事はこれまでにしたいと思います。
 最後に,次回の日程についてお願いします。

【寺門総合教育政策局政策課長】
 次回ですが,明年1月25日金曜日10時からの予定でございます。場所はこちらと同じでございます。新年早々,お忙しいかと存じますが,よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 それでは,以上で今日の会議は終了でございます。今年は今日が最後の総会でございます。皆様,どうぞよいお年をお迎えください。文科省の皆様もよいお年をお迎えください。

―了―

お問合せ先

総合教育政策局政策課

政策審議第一係 堀井、市川
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ファクシミリ番号:03-6734-3710
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