中央教育審議会(第117回) 議事録

1.日時

平成30年8月10日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 「第二講堂」(旧庁舎6階)

3.議題

  1. 今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめについて
  2. 公立社会教育施設の所管の在り方等に関する生涯学習分科会における審議のまとめについて
  3. その他

4.出席者

委員

 北山会長,小川副会長,永田副会長,明石委員,天笠委員,有信委員,生重委員,伊藤委員,帯野委員,亀山委員,菊川委員,清原委員,志賀委員,篠原委員,恒吉委員,寺本委員,時久委員,中田委員,日比谷委員,宮本委員,村田委員,室伏委員,山田委員,山野委員,米田委員,渡邉委員

文部科学省

 小松文部科学審議官,山脇文部科学審議官,生川総括審議官,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,藤原官房長,常盤生涯学習政策局長,義本高等教育局長,村田高等教育局私学部長,瀧本大臣官房審議官,山﨑文教施設企画部技術参事官,有松国立教育政策研究所長,坪井科学技術・学術政策研究所所長,久保田生涯学習政策局生涯学習推進課長,中野生涯学習政策局社会教育課長,三好男女共同参画学習課長,蝦名高等教育企画課長,平野大臣官房審議官,塩見生涯学習総括官,寺門生涯学習政策局政策課長,他

5.議事録

【北山会長】
 それでは,時間でございますので,中央教育審議会総会を開催させていただきます。
 お暑い中,お集まりいただきまして,ありがとうございます。
 議事に入ります前に,今般の文部科学省に関わる一連の事件について,文科省から一言発言をしたいとの申出を受けておりますので,小松文科審議官から発言をお願いいたします。

【小松文部科学審議官】
 失礼いたします。文部科学審議官の小松でございます。お許しを得て,御審議の前に一言発言をさせていただきます。
 先月,科学技術・学術政策局長が受託収賄容疑で逮捕,起訴され,また重ねて国際統括官が収賄容疑で逮捕されるという事件が起きております。文部科学行政の推進は,国民の皆様の信頼を得ながら行わなければいけない,特に重大な案件も様々ございます。そういう時期に,度重なる事案によって文部科学行政に対する国民の信頼を大きく損なう事態に立ち至っておりますことは大変遺憾なことでございまして,深くおわび申し上げる次第でございます。
 文部科学省といたしましては,捜査に全面的に協力しつつ,事実関係の確認に基づいて適切に対処してまいります。
 現在ですけれども,大臣の指示の下,一つは,公募型事業の支援対象者の選定過程の信頼性を確保する方策,それから併せまして職員の服務規律の遵守状況の調査について,速やかに開始すべく準備を進めているところでございます。
 文部科学省といたしましては,この事態を極めて深刻に受け止めまして,行政推進の礎である国民の信頼回復に向けまして,また,意思決定等の透明性をしっかり確保していくということを基本といたしまして,全力を挙げて取り組んでまいります。
 以上,お時間を取って恐縮でございましたが,御審議を頂く前に申し上げさせていただきました。以降の御審議をどうぞよろしくお願い申し上げます。

【北山会長】
 小松文科審議官,文部科学省におかれては,国民の信頼回復に全力を挙げていただくということで,私からも強くお願いしたいと思います。同時に,中教審をはじめとしたいろいろな会合における教育や人材育成に関する議論が停滞することがないよう,事務局体制についても引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 次に,文科省において人事異動がありましたので,事務局から御紹介をお願いします。

【寺門生涯学習政策局政策課長】
 紹介をいたします。
 まず,文部科学審議官の山脇でございます。

【山脇文部科学審議官】
 文部科学審議官に就任いたしました山脇です。よろしくお願い申し上げます。

【寺門生涯学習政策局政策課長】
 大臣官房審議官の平野でございます。

【平野大臣官房審議官】
 平野でございます。どうかよろしくお願いいたします。

【寺門生涯学習政策局政策課長】
 以上でございます。

【北山会長】
 ありがとうございました。新しく就任された方々,どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,本日の議事でございますが,まず議題(1)が,今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめについてで,これは,大学分科会の下に設置されております将来構想部会で取りまとめられましたので,御報告いたします。
 それから,議案の二つ目として,公立社会教育施設の所管の在り方等に関する生涯学習分科会における審議のまとめについて,生涯学習分科会で取りまとめられましたので,御報告いたします。
 なお,本日,報道関係者から,会議の全体について,録音,カメラ撮影を行いたい旨申出があり,許可しておりますので,御承知おきいただきたいと思います。
 それでは,議事に入りますが,まずきょうの配付資料について,寺門課長から説明をお願いします。

【寺門生涯学習政策局政策課長】
 本日の配付資料につきましては,お手元の議事次第に記載しておりますとおりでございます。資料1-1から資料3になってございます。
 過不足あれば,お申しください。
 なお,資料3につきましては,委員の皆様方にはお知らせしてございますけれども,3月2日の中教審総会以降,中教審運営規則等に基づきまして,総会を経ないで行われた諮問について,御報告するものでございます。
 また,第3期の教育振興基本計画については,6月15日に政府として閣議決定され,その後,委員の皆様方に送付させていただいておりますけれども,改めて参考資料として机上配付させていただいてございます。本総会におきましても御審議賜わりましたことに,改めて厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
 以上でございます。

【北山会長】
 第3期の教育振興基本計画については,3月に私が中教審総会において大臣に答申をお渡ししました。その後,6月に閣議決定が行われたということで,6月というタイミングは5年前も同様だったのですが,閣議決定された内容が今御紹介いただいた冊子にまとまっております。委員の皆様におかれましては,御尽力ありがとうございました。
 配付資料についてはよろしいでしょうか。
 それでは,議題(1)ですが,去年の3月6日の文科大臣の諮問を受けて,日本の高等教育に関する将来構想について,大学分科会の下に設置された将来構想部会を中心として審議が進められてきたところでございます。今般,この将来構想部会におけるこれまでの議論が「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」として取りまとめられました。
 まず,この中間まとめの作成に大変御尽力を頂きました将来構想部会の永田部会長から御報告をお願いいたします。

【永田副会長】
 ありがとうございます。資料の1-1をご覧ください。
 詳細については,後ほど事務方から説明をさせていただきますが,それに先立ちまして概要だけ簡単に説明をさせていただきます。と申しますのも,この将来像の議論の中で,どうも大学の統合というところばかり注目を浴びているわけですが,この1-1を見ていただくと,そういう雰囲気が全く見えないことがよくお分かりいただけると思います。大学の機能を高めるための方策の一つとして述べているわけであって,それを目的化しているわけではないということを最初に申し上げておきたいと思います。
 最も重要なのは,2040年の社会の姿を想像することでありますけれども,もちろん我々にとっては不可知の部分があるわけですけれども,そこにありますように幾つかのポイントから想像してみて,確度の高い内容をそこにまとめています。
 最初のSDGsというのは,これは,世界的という意味ではなくて,大きな視野での最終的な平和と豊かさを享受できる社会を目指してどうしていくかということで,本題は,その下の4点でございます。
 とりわけて,これからSociety5.0という概念で言い表されている新しい情報を最大限活用した社会がやってくるということ。この中で,実は中間まとめにもまだ書き足りていなくて,私自身も悪戦苦闘しながら「はじめ」の部分に書かなければいけないこととして,一番重要なのは,こういう時代が来て,人がやることというよりは,人がなすべきことがちゃんと見極められる人材を育てなければいけないという文言が最初の一番重要なポイントです。
 人生100年時代は,生涯教育うんぬんと言われていますけれども,これも二つ考え方がありまして,社会のリソースとしての人材活用という側面と,それから個人の学びにおける達成感,この二つがあると思っております。
 それから,地方創生については,Society5.0と同じですけれども,そこに書いてあるとおり,知識集約型社会から分散型の社会になることは目に見えているので,そういう意味合いで地方創生というのは,真の意味で我が国において社会構造,経済構造を考える上で大切なポイントである。こういった認識を持って,以下,そこにあるような内容について議論してまいりました。
 この中で,簡単に一点,現在特に議論していることを述べさせていただくと,高等教育における「学び」の再構築ということがあります。それは,もうそこに書かれたとおりなのですが,加えて大学院教育について,この中間まとめ以降,かなり議論してまいりました。なぜかというと,一つは,デジタルサイエンスの進展に鑑みて,今後,我が国,追い付け追い越せという体制をとっていかなければいけないだろうということで,大学院については,より拡充・充足を求めていくという論調になりつつあります。
 その下,極めて一番重要なのは緑のところなのですが,結局,そういったことを鑑みた上でやらなければいけないのは,本当の意味での教育の価値というものをちゃんと再構築しなければいけないというわけでございます。
 そういう内容で基本的に進んでおりまして,今,もう一つだけ申し上げておくとすると,青のところで書いております。また,赤の多様性を受け止めるガバナンスの方に書いておりますけれども,先ほど申し上げたように,地域の今後の進展を鑑みるに,高等教育像そのものは,例えば大学等連携推進法人の制度とか,あるいは地方自治体を交えた地域連携プラットフォームという形で,地域や高等教育に携わる者だけではなくて,自治体や産業界とともに将来像を考え,実際に価値のある高等教育を施していくということを考えなければならないということでございます。
 今,ざっと斜め読みをさせていただきました。詳細は,事務方の方から申し上げることといたします。

【北山会長】
 永田さん,どうもありがとうございました。
 それでは,詳細について,義本局長からお願いいたします。

【義本高等教育局長】
 中間まとめの概要について御説明させていただきます。
 永田部会長,北山会長から話がありましたように,中央教育審議会におきましては,昨年の3月に文部科学大臣から諮問を行いまして,中央教育審議会大学分科会将来構想部会(以下、「将来構想部会」という。)を中心にして,2040年を見据えた目指すべき高等教育の在り方や実現に向けた制度改正の方向性など,高等教育の将来像について,御議論いただいたところでございます。
 昨年の12月に論点整理をまとめまして,本年1月の総会にも御報告させていただきました。その後も精力的に審議を進めまして,先ほどございましたように,6月28日に「今後の将来像の提示に向けた中間まとめ」(以下、「中間まとめ」という。)を取りまとめたところでございます。
 資料1-1の概要,資料1-2の本文を使いながら,御説明します。
 概要の上段,先ほど永田部会長からもお話がございましたように,2040年の社会の姿について整理しているところでございます。SDGs,Society5.0,人生100年時代,グローバル化,地方創生をキーワードに整理を行いまして,社会の変化等を前提にして2040年に向けた高等教育の課題と方向性を整理しております。
 中身につきましては,本文の2ページから3ページを御覧いただきたいと存じます。国連で提唱されています持続可能な開発のための目標(SDGs)を達成により,「全ての人が必要な教育を受け,その能力を最大限に発揮でき,平和と豊かさを享受できる社会の到来」が期待されています。
 また,Society5.0,第4次産業革命が目指す社会につきましては,技術革新により社会の在り方そのものが大きく変化する超スマート社会,Society5.0の到来が予測されています。これらの技術革新は,AIやロボットによる職業代替可能性を格段に高めまして,仕事の仕方や身に付けておくべきスキルや能力を現在想定されているものから大きく変化させていくことが予想されるということと,現時点では想像もつかない仕事に従事していくことも予想され,幅広い知識を基に、新しいアイデアや構想を生み出せる力が強みになり,また,AIが持ち得ない、人間だからこその能力としての創造性やコミュニケーション能力が更に重要になると考えられているところでございます。
 4ページを御覧いただきたいと存じます。人生100年時代を迎える社会につきましては,「教育・仕事・老後」の3ステージの単線型の人生ではなく,マルチステージの人生を送るようになりまして,生涯を切れ目なく仕事と学びということを続けていくための質の高い教育を用意し,いつまでも有用なスキルや知識,必要な能力を身に付けられる学び直しの場が提供され,全ての人が活躍し続けられる社会が予想されます。
 次に,グローバリゼーションが進んだ社会についてですが,人の国際的な移動の爆発的な拡大,情報通信技術の劇的な進歩,社会経済のグローバル化が加速しているとともに,各国は独自の社会の在り方,文化の在り方などのローカリゼーションの動きも活発化することも想定されているところでございます。今後,留学生の受入れの拡大を含めた海外からの人材の積極的な受け入れが更に進めば,社会の様々なシステムが,多様性を踏まえたものとして構築されていくとともに,我が国の文化や社会のこれまでの在り方の良さが調和した社会に発展していくことが期待されるとさせていただいているところでございます。
 地方創生が目指す社会ですが,5ページを御覧いただきたいと存じます。2040年には総人口が1億1,092万人となり,少子高齢化が一層進むことが予想されています。他方,AI,IoT技術,ビッグデータの活用により,産業・社会構造が資本集約型から知識集約型にシフトすれば,地域の中での生産性の向上,高付加価値化が可能になりまして,都市ではなく地域が産業の拠点となる可能性も高まるとしているところでございます。
 地方創生が実現すべき社会は,「個人の価値観を尊重する生活環境を提供する社会」でございまして,生まれ育った地域で個人の価値観を尊重して生活し,その地域を豊かなものにしていくための継続的な営みができることが期待されているところでございます。
 次に,5ページの2を御覧いただきたいと存じます。高等教育をめぐる国内外の状況に関しまして,国内の機会提供の段階から近隣諸国を含めた域内の提供の段階を経て,高等教育がまだ充実していない地域への高等教育機会の提供の段階,そしてMOOCのようなオンラインでの教育機会の提供へと広がりを見せ,オープンな時代を迎えております。この動きは,先ほどの様々な社会変化も影響しております。
 6ページにおいては,競い合う「競争」から共に創る「共創」「協創」へというところでございます。世界大学ランキング等の影響もあり,国境を越えた大学間競争は激化しているところもありますが,一方,高等教育の国際協力も進展しております。既に人類が抱える課題が国境を越えたものとなっている中でも,もちろん切磋琢磨は必要ですけれども,国内外で機関ごとにただ競争するのではなく,人的,物的資源の共有化により,共に創る「共創」「協創」へと発想を転換していく必要がございます。「特に,我が国のような課題先進国の高等教育機関が世界的課題解決に貢献することは重要であり,この貢献が各国との安定的な関係の構築にも資するという意識を持つことが必要である」と書かせていただいております。
 以上が2040年頃の社会変化の方向と高等教育の状況と展望でございます。
 再度,資料1-1中間まとめ概要を御覧いただきたいと存じます。これら社会の変化等を前提としますと,2040年に向けた高等教育の課題と方向性としては,大きく四つ掲げているところでございます。一つ目は,「1.高等教育における学びの再構築」。二つ目は,「2.高等教育の新たな役割」。三つ目は,「3.高等教育に対する社会からの関与・理解と支援の在り方」。四つ目は,「4.18歳人口への対応」と整理させていただいております。
 本文を用いまして,この4点について御説明したいと存じます。6ページの3を御覧いただきたいと存じます。「1.高等教育における学びの再構築」でございます。学修者にとっての「知識の共通基盤」を作るという視点に立ち,「何を学び,身に付けることができるのか」を中軸に据えた高等教育への転換を引き続き図っていく必要があります。また,学修者の「主体的な学び」の質を高めるシステムを構築していく必要があること,一つの機関で固定された学びではなく,学修者が生涯学び続けられるための多様な仕組みと流動性を高める方策が必要である,ということを強調しております。
 7ページにおきましては,21世紀を生きるための「学び」をどう考えるかということで,OECDが提唱するキー・コンピテンシーを紹介しています。このような観点も踏まえて,「文系・理系の区別にとらわれず,新たなリテラシーにも対応した一般教育・共通教育とそれを基礎とした専門教育が行われること,分野を越えて専門知や技能を組み合わせる実践力を培う教育が行われること,卓越した才能を見いだし大いに伸長する教育が行われることが必要」としております。
 さらに,「高大接続の観点と,入学段階からいかに入学者の能力を伸ばすかという観点で高等教育における「学び」を再構築していくことが重要である」としているところでございます。
 9ページを御覧いただきたいと思います。二つ目の「2.高等教育の新たな役割」でございます。人生100年時代におけるリカレント教育を通じまして,高等教育があらゆる世代の「知識の共通基盤」となること。また,国連のアカデミック・インパクトで提唱されております国内外で必要な教育を提供すること。また,地方創生の観点から地域を支える人材育成を行うための教育を行っていくことも含め,教育及び研究の知識基盤のプラットフォームという役割を担い,日本のこれから,地域のこれからを創るという新たな役割を再構築していくことが必要であると整理しているところでございます。
 10ページを御覧いただきたいと思います。3番目の「3.高等教育に対する社会からの関与・理解と支援の在り方」でございます。高等教育が自らの強みと特色を社会に発信するとともに,高等教育の質保証に関する国内外での認知向上や,11ページに移りまして,産業界の雇用の在り方,働き方改革と高等教育が提供する学びのマッチングを図っていくこと。また,人口減少期においては,一人一人の能力と可能性の最大化が国力の源であることから,教育投資効果を最大化する形での公的支援,人材面での社会への還元と社会からの支援の好循環が必要であるとしているところでございます。
 4番目が「4.18歳人口減への対応」でございます。18歳人口が88万人に減少する状況に対応するため,できる限り多くの学生が学び,一旦社会に出た後も学びを継続するための魅力的な高等教育を提供することと,国公私を通じ,「公共財」としての高等教育という視点での政策がより重要であるとしています。
 このような高等教育を実現するためにどうしていくかにつきましては,14ページ以降を御覧いただきたいと存じます。社会の変化に対応できる人材とその成長の場となる高等教育として,学修者を主体とし,個々人の強みを最大限に活かすことができる教育への転換を引き続き行っていくことが必要で,「何を教えたか」から「何を学び,身に付けることができたのか」への転換,より一層の学習成果の可視化やリカレント教育の仕組みが重要になってきます。
 15ページの社会の変化に対応するための獲得すべき能力については,特に論理性や批判的思考力などの普遍的なスキルやリテラシーを一般教育・共通教育と専門教育の双方を通じて,きちんと育成していくべきものとしています。専門教育につきましては,ジェネラリストではなく,プロフェッショナルと具体的な業務の専門化に対応できる専門的なスキル・知識を持った双方の人材育成が求められています。
 16ページにおきましては,数理・データサイエンス等の基盤的リテラシーを大学で文理を越えて共通に身に付けさせることが必要としております。産業社会との関係におきましては,特に職業実践的な科目に関しては,産業界とも協議しつつ,カリキュラムを修正していくサイクルを恒常的に回していく必要があるとしてございます。
 17ページを御覧いただきたいと存じます。高等教育の教育研究体制でございますが,教育研究体制として「多様な価値観が集まるキャンパス」から新たな価値が生まれるとの考えの下,「多様性」をキーワードに整理しておりまして,「自前主義」から脱却し学部を越え,大学を越えて多様な人的資源を活用するため,実務家,若手,女性,外国籍など多様な教員の登用や,18歳で入学する従来のモデルから脱却し,社会人,留学生,障害のある学生など,多様な年齢層も含めた多様なニーズを持った学生への教育体制の整備,各大学が多様で質の高い教育プログラムの提供を実現するため,時代の変化に応じ,従来の学部・研究科等の組織の枠を越えて迅速かつ柔軟なプログラム編成ができるようにすることや,複数の大学等での人的・物的リソースを効果的に共有することで,一つの大学ではなし得ない多様な教育プログラムを提供することができるように,単位互換等の制度や運用の改善を行うことが必要であるとしているところでございます。
 22ページからの多様性を受け止めていくガバナンスの在り方につきましては,強みを明確にした上での連携・統合の方策としまして,国立大学の一法人複数大学制の導入や,私立大学の連携・統合の円滑化に向けた方策,国公私の枠を越えた連携を可能にする大学等連携推進法人(仮称)制度の検討,複数の大学,産業界,地方自治体との恒常的な連携体制として「地域連携プラットフォーム(仮称)」の構築,学外理事の登用促進などが提言されているところでございます。
 24ページからは,大学の強みの強化として将来構想部会で3度にわたり御議論いただいた内容を書いております。25ページには,参考として人材養成の三つの観点の例を書いているところでございます。
 27ページを御覧いただきたいと存じます。教育の質の保証と情報公表でございますが,質の保証をより一層確保するため,「全学的な教学マネジメントの確立とその前提としての学修成果の可視化」,「設置基準等の見直しを含む入り口での設置認可と認証評価制度の改善及び恒常的な情報公表の促進」が必要であるとしているところでございます。特に情報公表につきましては,社会が理解しやすいよう一括して公表することも検討すべきであるとしております。30ページには認証評価制度の在り方ということで,より効率的・効果的で実質的な改善につながる評価となるよう検討するとしております。
 32ページを御覧いただきたいと存じます。18歳人口の減少を踏まえた大学の規模や地域配置の問題でございます。18歳人口が現在の約120万人から2040年の88万人に減少すると試算されている中におきまして,33ページの大学進学者数の推計につきましては,2040年度には大学進学率が57.4%,大学進学者数が約51万人ということになります。2017年と比較すると,進学者が約12万人減少して,現在の80%の規模になることが見込まれているところでございます。
 34ページの国が提示する将来像と地域で描く将来像に関しましては,特に国の役割として,各地域での立地条件や産業状況,歴史的背景などの特有の状況を考慮する必要があります。国が直接,地域における将来像に関与することは非常に困難である一方,議論の前提としてのデータやプラットフォームの構築への関与,さらには連携・統合の仕組みの制度的整備などにつきましては国が担うべき役割としてまとめさせていただいているところでございます。
 36ページからは専門職大学・専門職短期大学,短期大学,高等専門学校,専門学校,大学院の各高等教育機関の役割等について書かせていただいているところでございます。大学院につきましては,先ほど永田部会長からもお話ございましたが,大学院部会でのこれまでの審議の内容にも触れているところであり,答申をまとめる際には,こうした大学院部会の審議内容も今後反映させることとしているところでございます。
 41ページを御覧いただきたいと存じます。本まとめは中間的なまとめでございまして,秋頃の答申に向けまして,引き続き中教審での専門的な議論を深めていただく予定でございます。今後の議論としましては,一つ目は,教育研究を支える基盤的経費,競争的資金の充実や配分の在り方の問題,学生への経済的支援の充実など教育負担の在り方。二つ目は,進学者数の減少局面を迎えまして,教育の質を保証しつつ適正な規模を維持していくために,設置基準等の見直しを含む設置認可やその審査の在り方と認証評価制度の改善,恒常的な情報公表の促進などの質保証システムの見直し。三つ目は,国公私の設置者別の役割分担やそれを踏まえた規模の在り方。四つ目は,大学院教育の在り方や大学等における研究との関係などの項目を中心に取り上げて,精力的に審議しているところでございます。
 説明は以上でございます。

【北山会長】
 義本局長,どうもありがとうございました。
 これまで中間まとめの取り纏めに御尽力されました永田部会長をはじめ,部会やワーキングループの委員の皆様に御礼を申し上げます。
 ここで時間を30分程取りますので,皆さんから御意見,御質問があればお願いいたします。
 それでは,志賀委員,お願いします。

【志賀委員】
 ありがとうございます。全体的に今まで議論してきたことですので,ほぼ議論してきた内容が網羅されて,良く整理できているなという気がするのですが,やはり最後におっしゃった部分で,私は,今の日本の高等教育を考える上で,これだけのことをやろうとしているのに対するリソース,資源が本当に足りているのかということを議論すべきだろうと。
 今のままで毎年,国立大学の交付金が減少していく,あるいは私立の助成金が減っていくという環境の中で,これだけのことが本当にできるのかということは,リソースを議論して,前もここで申し上げたことがあるのですが,やはり私は出来の悪い経営者というのは経営資源を明確にせずに経営ビジョンだけをぶち立てている。したがって,リソースとやろうとしていることがアンバランスであるが故に,いろんな問題を引き起こしてくるということだろうと思うのですが,これだけのことを本当にするのであれば,人,物,金の部分でどれぐらいのリソースが必要なのかということを真剣にしないと,2040年を想定したときに教育もさることながら研究も含めて,明らかに日本が地盤沈下している中でもう少し教育の原資を増やしていかないと,地盤沈下するという危機感がもうちょっとあってもいいのかなと。
 今,海外の大学なんかと使っているお金の量が違いますし,どんどんお金が減るので,先生方の負担がどんどん増えてきて,結局,研究に専念できないが故に日本の研究レベルが下がってくるみたいな悪循環を引き起こしているわけで,ここは最後に一言,検討課題と,答申に向けた検討課題で1ページぽろっと書くのではなくて,やはりその危機感はもう少しあってもいいのかなと思います。

【北山会長】
 では,続きまして渡邉委員,よろしいでしょうか。

【渡邉委員】
 どうもありがとうございます。冒頭に御説明いただいた永田部会長の御趣旨を踏まえましても,経済界の視点から見ても大変共感できる方向性と課題の認識だというふうに受け止めさせていただきました。
 冒頭の2040年の社会の姿を描いているわけですけれども,政府においても,経済界においても,このSociety5.0という超スマート社会の未来創造の視点で捉えて,これは,国連の掲げるSDGsの達成にも貢献するという視点なわけですが,こういう将来像からバックキャストしながら今の課題を整理して,それをしかも人生100年時代の人材づくりという視点で多様性というものをキーワードにして取りまとめられている。この視点で,大変共感ができるアプローチだと思いました。
 この未来志向型のアプローチという視点で,既に大学改革が始まっているというふうに認識しております。国立大学においても,それから私立大学においても,あるいは地方大学においても,こういった趣旨での改革が始まっているというふうに認識しております。
 その中で,いろんな成功モデルが出始めてきているというふうに思いますが,金沢工業大学の例は,いろんなところで紹介されているとおりでありますし,品質を重視した改善という視点も大変重要だと思います。
 それから,産学協同とか,きょうも説明あった文理融合的視点で社会実装化する好事例というものが大変出てきていると思います。それと地域の連携創生ですとか,リカレント教育のモデルですとか,あるいはグローバル化に向けた人材育成プログラムだとか,こういったいろいろな好事例が出てきているわけですから,このベストプラクティス的なものが持つ要素とは何なのか。こういったものを今後の取りまとめに当たって,是非取り入れながら肉付けをしていただけたら有り難いと思います。
 ただ,最終的な課題として残るものの御指摘は,先ほどの志賀委員の御指摘と全く共感する問題意識があるのですけれども,要するに健全な危機感の共有化というものを前提としないと,この議論はなかなか深まらないのだろうと思います。どうしたら,この健全な危機感の共有化ができるのかという視点を持った上で,なおかつ健全なという意味は,制度改正に当たっては再編・統合とか,そういったものについては前向きな戦略としてどうチャレンジできるような条件整備をしていくのかという視点が重要なのだろうと思います。
 何らかのインセンティブがなければ,そういう方向はなかなか難しい。あるいは地方の視点では大変重要だと思いますけれども,本文にありました,説明のありました地域連携のプラットフォームを例にするような産学協同の在り方とか,地域の活性化に向けた総合力の発揮とか,そういったものが前向きな視点としては重要になってくるのだろうと思います。
 ただ,それでも経営難に陥る場合があるわけですから,その場合は早期是正措置の導入ですとか,学生をはじめとした守るべきセーフティーネットはどうあるべきかというようなことも必要です。民間企業の中にも,同じような危機の中でいろいろな法整備がされたり,再生・破綻時の制度整備がされたりしているわけですから,民間にあるこういった経験取組例なんかも参考にしていただいて,議論を是非深めていただければと思います。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 次に,天笠委員に御発言いただいて,一旦ここで区切りたいと思います。

【天笠委員】
 どうもありがとうございます。二つ申し上げたいと思います。
 一つは,昨今,大学生を指して生徒というふうに言う大学関係者,あるいは学生自身が自らを生徒と称する学生ということで,限られた一部なのかもしれませんけども,そういうことを耳にいたします。現実の実態の一旦が,そこのところにもあるように思います。
 そのことから何を申し上げたいかというと,高等教育で学ぶ立場の学生は,まさに学生という言葉がふさわしいのであって,やはり生徒ではないのではないかというふうにまず申し上げると同時に,高等教育は,学修者の高度の自律性と主体性の基に高等教育は支えられ,あるいは成り立つものだというところ,そもそも論かもしれませんけれども,そこのところをやはりしっかりと押さえる,確認することの必要性,大切さがあるのではないかということであります。
 そのことは,何を申し上げたいかとつながるのですけれども,初等中等教育局と高等教育局の接続というのをどういうふうに考えていったらいいのかということで,高等学校の教育の延長に高等教育があるのか。そこはそれとして,義務教育,高等学校の教育を受けて,そして高等教育というのがあるのか。私は後者の方でということだと思うのですけれども,ただ,学習指導要領の改訂の考え方ですとか,そういうものというのは義務教育から高等教育までを資質,能力という視点で接続させていくというのが現在の改訂の方向ですし,これから目指す方向として出されていますので,そのことと今申し上げたことの整合というか,あるいはつなげることによって,より高等教育の目指すところに持っていくには何をどういうふうに整えていったらいいか。
 今はどちらかというと入試の問題が大きな関心を集めているのですけれども,もちろんそれは重大な課題であることは言うまでもないのですけれども,改めて高等教育におけるありようですとか課題,また学修者の主体的,自律的な在り方ということを,もう一度このところでも確認することの必要性というのが私はあるのではないかというのが一つ目であります。
 それから,もう一つは,今回の学習指導要領改訂で義務教育段階,高等学校では教科横断ということがキーワードになっています。要するにそれぞれの教科での専門性を深めた授業とともに,複数の教科を横断,関連させながら授業を図っていくということが現代的な課題として求められているのだということで,現在進行形であるわけですけれども,それを進めていくべきだと私は思っているのですけれども,なかなか難しい要件もそこにあるのかなと思っています。
 それは,いろいろあるのですけれども,事業者自身のありようというのでしょうか。私は,教科横断が深まっていくか,進められていくかどうかというのは,要は事業者の持っている幅の広さとか深さ,こういうことになるのではないかと考えています。
 その決するところは何なのかというと,事業者が持っている,私の言葉ですけども,やはり教養が実は非常に重要になってくるのではないかというふうに思っているのですけども,振り返ってみると高等教育では,この間,教養ということについて二転三転というんでしょうか,あるいはいろいろな経緯を経ながら現在あるわけなのですけども,私は,そういう点からして,今回の提案の中で7ページのところに,「文系・理系の区別にとらわれず,新たなリテラシーの基に一般教育・共通教育」,この記されていることは非常に大切なことが書かれているように思うのです。
 私の読み方からすれば,これが,これからの時代の教養というふうに理解したいと思っているわけなのですけども,それぞれの時代の果たしてきた教養の在り方というのはあったかと思うのですけども,これは,新しい時代のそういう方向性を,この文言が示しているのではないかと思うので,そういう点では,ここのところ,更に議論を深めていただいて,中身とそれが一体どういう方向性と将来に向けての課題対応ということになってくるのかどうなのか。また,そのことが義務教育の質の向上ということにどう反映されていくのかどうなのかあたりのところについて,更に議論を深めていただくことを御期待申し上げさせていただきたいと思います。
 私の方は以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 ここで,事務局からコメントすべき点があればお願いします。今後の検討課題についてはまだ議論が始まったばかりであり,半ページ程度しか記載がないわけですが,そういった点も含めて御説明いただければと思います。

【義本高等教育局長】
 志賀委員,渡邉委員からリソースについてもしっかり議論しないといけないという御意見がございました。今後検討する中で,答申に向けた中心課題と位置付けたいと考えております。今お話しいただきましたように,大改革をやろうとしているところですので,それを裏付ける人的・物的資源をどのように確保していくのかということや,日本の国力と非常につながってくるところでございますので,やり方,危機感は,共有させていただきながら,答申の議論を深めるべく事務局としてもしっかり取り組んでいきたいと思っているところでございます。
 渡邉委員から御意見がございましたように,前向きなチャレンジができるための条件整備について,規制緩和をすることによりインセンティブを付けていくことは必要だと思っています。その点も更に分かりやすく議論を深めていきたいと思っているところでございます。また,いろいろな大学で既に好事例となる取組みが始まっています。それを視野に置きながら,大学が答申を読めば,ベストプラクティスが分かるような形でのまとめ方を永田部会長とも相談させていただきながら進めていきたいと思っているところでございます。
 天笠委員から御指摘していただきました高大接続,初等中等教育局と高等教育局の接続,これは非常に大事でございます。今回の中間まとめにも記載はありますが,学びの考え方としてOECDにおけるコンピテンシーの議論を例示させていただき,入試だけではなくて,このような軸を通した形での学びというのが義務教育・高等学校教育から高等教育へつながっていく点を強調させていただいて,とりまとめさせていただきたいと思っているところでございます。
 教養の在り方として文理を越えたリテラシー,新しい教養と呼んでいただきましたけれども,単に数理・データサイエンス教育,あるいはグローバル化に対応した教育を考えるというだけではなく,併せて必要となる学びとその中身についても,しっかり分かるようにまとめていきたいと思っているところでございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,次に,宮本委員,その次に,山田委員お願いします。

【宮本委員】
 ありがとうございます。新しい時代の変化を踏まえて,大胆に改革する案であるということをまず受け止めました。2点だけ指摘させていただきます。
 まず,6ページですけれど,6ページの3の丸のところに「主体的学び」という文言が出ております。今後,学修者の主体的学びを中心として高等教育全体を改革していくのだということで,それ自体,異議ありませんけれども,例えば18歳から何年かの若い学生と社会人学生を一つ比べてみても,主体的な学びの内容と,それから,その条件に関しては相当な違いがあり,この主体的学びの質を高めるということに関しては,特に若い学生の場合には,例えばガイダンス,あるいは支援というような言葉になりますでしょうか。そのことがあっての主体的な学びであり,学生に全てを投げてしまうわけにはいかない。
 そのあたりのところは,21ページのところには多様で質の高い高等教育プログラムというところに「履修ガイダンスを前提として」というようなことが書いてありますので,多分議論の中では出ているのかと思いますけれども,ガイダンス,あるいは支援というような機能を現在の大学以上に高めていくことが重要ではないかと思います。
 それから,もう一つ,11ページのところですけれども,中段に高等教育への投資と還元と好循環というところがございます。これは,先ほど志賀委員をはじめ御意見の出たことと重なるのではないかと思うのですけれども,ここでは2行目にありますように,「教育投資に対しての投資効果をどう得たかという観点から再整理をしていく必要がある」ということで,これから再整理の作業があるのかと思いますけれども,ずっと読んでおりますと,現在の高等教育改革の課題というのがいろいろに出てきていて,向かう方向は同じだとしても,非常に多様な改革の必要性というのが出てくる中で,ここで一気に教育投資に対する投資効果という形で出てきております。
 こうなってくると,投資効果というのは何を言おうとしているのかということが問われるのではないかということでありまして,例えば統廃合,これ,投資効果として考えているのか。投資効果として統廃合だけが突出しているということになれば,かなり大きな議論になるだろうと思いますし,グローバル人材をどのくらい養成したかということが投資効果の重要なものになるとすれば,それ自身も議論になることではないかと思います。
 例えばグローバル人材以外のところで,その前のページまででは全ての人々が生涯にわたって学び続けるということ。これ,かなり対立する価値でもあるかというふうに思いますので,このあたり,教育投資に対する投資効果に関してはより詳細で丁寧な議論をしていただきたいなと思います。
 以上でございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 山田委員,お願いできますか。

【山田委員】
 今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ案の永田部会長はじめ,また,事務当局の皆様の取りまとめに心から感謝を申し上げたいと思います。特に地域での高等教育の確保・役割と人口減への対応の調和という大変難しい課題に対しまして,丁寧に書いていただいたことに対しては感謝を申し上げたいと思います。
 先日,私もかつて所属しておりました知事会でも再編・統合ありきで進むのではないかという不安が出ておりました。まさにこういう形で,調和の取れた形で提言をしていただくことが大事だし,その中において,常にその調和を意識して,これからもこの提言の実行に当たっていただければ有り難いというふうに思います。
 そして,そのときに必要なこと,2点あると私は思っているのですけれども,一つは,地域での今まで以上の産官学の連携が必要になってくるであろう。まさに高等教育というものと地域というものが切り離せない以上,その点がより重要になってきて,連携ということがまさにキーワードになってくるのではないかなと思っております。
 その点から申しますと,18歳人口減への対応のところの取りまとめのところで,国公私全体で支える高等教育がより重要に,そのために国公私の役割分担の再確認とあるのですけど,多分,ここはやはり連携と役割分担の再確認じゃないかなというふうに考えているところであります。
 そして,こういう地域において責任を持って高等教育を全体で作り上げていこうとするときには,大きな新しい改革と投資が必要だというふうに思っております。京都におきましては,府立大学と国立の京都工芸繊維大学の教養の共同化というのを行ったのですけれども,そのときもやはり建物から何から大変な投資になりました。ただ,幸いなことに企業経営者の寄附という形で賄ったわけでありますけれども,Society5.0をはじめとして新しい時代に向かって教育を確保していくためには,そうしたところの大きな投資をなし遂げていく財源的な,財政的なシステムがなければ,これは,単に地域に責任を押し付けただけの絵に描いた餅に終わるというふうに思っておりまして,その点につきましても十分配慮した形の提言にしていただければ幸いであるというふうに思います。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 本日は時間の都合で,今,名札を立てておられる6名の方までとさせていただき,その他にも御意見のある方がいらっしゃるようでしたら,後で事務局にご提出いただくという運営とさせていただきます。よろしくお願いします。
 では,恒吉委員,お願いします。

【恒吉委員】
 2点だけです。
 一つは,私が大学で教えている関係で,よく海外からの視察団がいらっしゃるのですけど,小学校に連れていくと,何も言わなくても,みんな,どの国だろうと大抵感心して帰っていくわけです。説明の必要がない。ところが,大学に連れていくと,いろいろ言わないと。欧米の方は言ったって大抵駄目で,感心せずに帰っていくのですけど,この頃はアジアもそうなってきましたよね。
 要するにもともと高等教育というのは,国際的に見た場合に,日本の初等教育などと違って弱い。要するに借り物のモデルですし,今,アジア,東南アジアも欧米のモデルのところに自分のモデルをどんどん入れて国際的に攻めているときに,必ずしもそうではないかもしれないところが多い日本の相対的な価値というか,地位が落ちているのではないかと,すごく感じます。
 先ほどのリソースの話になりますけれども,相対的に教育システムの中で弱いところを,そして,みんなが攻めているところを強くするという話は,かなりのことだということを分かっていらっしゃることをまた言っていると思いますけれども,リソースを含めて,かなりのことだということをもう一度強調しておきたいということで。
 もう一つが,日本の中の視点がすごくきちっと出ていると思うのですけれども,外からの視点を見た場合に,数か月前にアメリカに行って,老舗の非常にレベルの高い日本研究の研究所に行ったのですけど,お金がもうなくなっている。要するにかつて日本企業から入ってきたような資金が入らなくなっているわけです。その地域も,かつては日本語を教えていた小学校,それは企業のお金も入っていたわけです。それがなくなっている。実は違う言語になっているのです,アジアの言語になっているのです。
 そういうような状況の中でのことであるということで,少し外からの視点も入れるともっと危機感が出てくるのではないかという印象は持ちました。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 次に,中田委員,お願いします。

【中田委員】
 高等教育改革の必要性というのは十分共有しておりますし,教育の質の改革ということに関しても,大学でも地域と連携しながら,その質を高めていくという必要性は確認をしております。
 その上でなんですが,例えば大学,高等教育の規模の問題で言った場合,一つの目安が18歳人口の減少による適正規模というコンセプトが出ていますが,その適正規模による課題を打開するために産官学の協働,それから国公私立の協働というタームが出てくるのだろうと思います。ただし,全国的な地域状況を見たときに,その協働を支える条件,状況というのが同じかというと,やはり,そこは地域格差があるということは改めて確認しておきたいと思います。
 人的・物的な資源の格差に関しては,先ほどから御意見が出ているとおりだと思いますけれども,その課題をどういうふうに具体的に解決していくのかも注視が必要です。
 そのことともう一つ観点としては,18歳人口の減少という数値だけでは測れない地方の高等教育機関が果たしている役割がもう一つあります。それは地域の行政政策,産業,経済,それから文化等々の振興に地域の拠点として関わっており,それらを支えているという役割になりますが,それに関しては各大学がどのように役割を果たしているのかということをきちんとアピールしていく必要があるとは思いますが,そうした役割をきちんと維持できるように,そして,それが地域格差によってねじれた状況にならないようにということを改めて,今後の検討の中で丁寧に議論していただきたいと思っております。
 連携・協働という可能性は大だと思いますけれども,地域の状況を踏まえて,押しなべて画一的にそれが適用できるのかどうかというところを丁寧に議論いただければ有り難いと思っております。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 義本局長,コメントはございますか。

【義本高等教育局長】
 御意見を賜りましてありがとうございます。宮本委員から御意見を頂いた主体的な学びを支えるための大学側の組織としての機能については,全学的な教学のマネジメントをしっかりやっていくという中において,更に議論を深めているところでございます。
 それから,地域における高等教育機会の確保の役割と人口減への対応の調和をということで,山田委員,中田委員から御意見を頂きました。この点は非常に大事でございます。それぞれの地域で状況は違いますので,より丁寧な議論をするということや,域内での産官学の連携あるいは協働ということだけではなく,例えばICTを活用した形での地理的な制約を超えたような連携もあろうと思います。
その点も議論させていただいているところでございます。

【北山会長】
 それでは,次に菊川委員,お願いします。

【菊川委員】
 ありがとうございます。今日の2番目の議題とも関係するのですけれども,リカレント教育について一言申し上げたいと思います。
 リカレント教育というのは,言い出されたのがたしか昭和40年代の前半だったと思いますので,50年たって,ようやく実務として正面から取り上げられるようになったという感想を持っております。
 ただ,大人を前提とした大学教育の教育方法と教育内容は,本当はこれからではないかというふうに思っております。具体的には,教育内容なのですけれども,一つは,本当に社会人の役に立つといいますか,基礎教養も含めて役に立つ大学教育とは何かというのは,まだまだだと思いますし,それから,何を学ぶのか,学んだものをどう証明していくのかというシステムもこれからだというふうに思っております。
 教育方法についても,社会人が長く働きながら学ぶためには,時間的・空間的・金銭的な制約があると思いますが,その制約をできるだけ低くしていくためには,例えば,今おっしゃったICTの活用ですとか,あるいは単位互換制度の弾力化ですとか,そういうところがないと,社会人はフルタイムの学生にはなれませんので,短大,専門学校だけではなく,大学院,それから基幹大学においても,社会人を正規の学生として受け入れていく教育内容と教育方法の手法を深掘りしていただければというふうに思っております。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,清原委員,お願いします。

【清原委員】
 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。将来構想部会の皆様の中間取りまとめは,問題の所在を大変整理していただいて,ありがとうございます。3点簡潔に申し上げます。
 1点目は,12ページに初出の大学が併有する各種の機能の例として,世界的研究・教育拠点から社会貢献機能まで七つ整理していただいております。それらを踏まえて申し上げますが,やはり高等教育局の分野の検討だけではなくて,この示唆していただいているものは,初等中等教育における学習指導要領というよりは,生徒指導,キャリアデザインといったところに大いに影響すると思いますし,菊川委員がおっしゃいましたように,リカレント教育,あるいは専門職教育等を考えますと,産業界との連携の中で生涯学習の分野と密接に関係付けられます。
 したがいまして,今回のこの2040年を目当てとしたこの構想というのは,幅広い日本の教育に大きな影響を与えるものですので,文部科学省はもとより産業界,あるいは私たち自治体とともに横連携をしながら,示唆していただいたものを充実していければと,このように思いました。
 2点目は,今回,諮問に基づきまして地方における高等教育について重点的に御議論いただき,幾つも提案していただいていることは重要だと思います。これまでもCOCの取組など,地域と高等教育については文部科学省も力を入れてこられましたけれども,三鷹市のような小さな自治体でも市内外の大学とコンソーシアムを作りまして,平成17年,2005年からNPO法人三鷹ネットワーク大学推進機構ということで,大学の皆様が連携しつつ,一方で教育・学習機能の充実に御支援いただくとともに,研究・開発機能の連携や,さらには大学間や学生間のネットワークなどに御貢献・御活躍をいただいています。
 今回,将来構想部会のメンバーでもいらっしゃる教養大学の理事長・学長の鈴木典比古先生に理事長を務めていただき,ICUの日比谷先生にも副理事長を務めていただいているわけですが,こうした地域の様々な大学との連携の中にヒントがあるとも思っています。
 一方で,時間軸として学生がどのように履修していくか,社会人が履修していくかという点。学問分野の融合や連携について,こうした各地方の取組が重要だと思うのですが,その点について35ページに示唆ある指摘があります。
 35ページの丸の一つですが,「地域における将来像を描く際は,各地域の立地条件や産業状況等が考慮される必要があるので,しかも大学自治ですから国が直接関与することは非常に困難だけれども,議論の前提としての各種データについては,国が担うべき役割だ」と,このように明確に示していただいています。大学自治を尊重しつつ,是非,この方向性を強めていただければと思います。
 最後に,私は,民学産公の連携が,協働が必要と思い,ガバナンス,経営ということも語られているところが今回の構想の重要なポイントだと思っております。10ページ,11ページ,これは,評価と関わるので,今後,丁寧な検討をしていただく必要がありますが,大学自治を尊重しつつも,やはり高等教育に対する社会からの関与・理解,とりわけ産業界との健全な学産連携が重要だというふうに思います。地域の産業界が,それぞれの地方大学の持続可能性のために,どれだけ公明正大な相互関係を持てるかということについて示唆ある記述がございますので,是非,今後の検討でも健全な学産連携のための具体的なビジョンが示されれば有り難いと思います。
 以上です。よろしくお願いします。

【北山会長】
 どうもありがとうございます。
 それでは,米田委員,お願いできますか。

【米田委員】
 都道府県の教育委員会として高等学校教育まで管轄している者として,今回,このように高等教育の将来像の提示に向けた中間のまとめが,こういうふうに出されているということは大変有り難いと思っております。
 34ページと35ページのところで国が提示する将来像と地域で描く将来像のところで,34ページでは,一番下,あるいは下から7行目のあたりに,「高等教育機関が産業界や地方公共団体を巻き込んで」というふうになっております。我々,高等学校サイドから見て,いかに大学が変わっていくかということも非常に大きな関心事でありますし,そういう意味で,地方公共団体というものの中に,知事部局だけでなくて,教育委員会というふうなものも含まれるものなのか。あるいは,もっと広げていくと各都道府県に高等学校教育協会というのがございます。そこでも代表がおりますが,そういうふうな人たちも含むと考えていいのかどうか,その辺,教えていただければ有り難いということです。
 あと,全体的なことに関してですが,このまとめがより多くの人に読んでいただいて,理解していただくということを狙いとするものであるとすれば,まだまだ使われる用語等に専門的な用語と思われるものがあるような感じがします。その部分について欄外に説明をもう少し加えるとか,そういうふうなのがあってもいいかなと思います。
 具体的には,例えば私も初めて知ったのですが,29ページの教学IR体制の確立とか,インスティチューショナル・リサーチとか,30ページの大学教育の質に係る情報,ナンバリング,これは,なかなかイメージが湧かないと思います。その他,STEM教育に更にArtsが加わってSTEAM教育になっているとか,クロスアポイントメント制度とかというのはなかなかイメージが湧きませんけれども,その辺,もっと説明していただく余裕があるのであれば,それもお願いできればと思います。
 それから,あと,表記に関して幾つか漢字の間違い等がありますけれども,それは,例えば3ページの,細かくて恐縮ですが,「職業代替可能性を各段に高め」の「各段」は「格段」の方だと思いますけれども,そういうようなところ。
 それから,一方で「アカウンタビリティー」という言葉を使っている27ページと,それから「説明責任」というふうにしている10ページの5行目がございます。いずれかに統一するか,より分かりやすい表記をしていただければ大変有り難いということで,以上でございます。

【北山会長】
 それでは,本日はここまでとさせていただきます。もし追加御意見,御質問等がございましたら,事務局まで寄せていただければと思います。
 今,米田委員も含めて質問が幾つかありましたので,善本局長からお願いできますか。

【義本高等教育局長】
 ありがとうございました。
 米田委員から頂いたプラットフォームに地方公共団体,あるいは高校関係者が含まれるかという御質問をですが,含まれます。教育委員会や高校関係者にも入っていただいて考えていかないと,高等教育の在り方についての議論はできないと思っております。
 それから,より分かりやすい用語,説明を追加して欲しいということですが,特に大学関係者特有の言葉を使っているところがありますので,答申をまとめる際にはしっかり脚注や説明資料を付けるよう工夫をさせていただきます。また,用語の統一,漢字の表記も含めて,整合性を取る形で点検してまとめていきたいと思っているところでございます。
 リカレント教育について,菊川委員から御意見を頂きました。社会人を前提にした教育であれば,どのように役に立つのか,あるいは,学びの成果となるものをどう証明するのか。それから,時間的・空間的な制約をどう考えていくのか。特に現状においては,どうしても18歳の子供たちに対する教育と,いわゆる社会人の教育を分断して提供しているケースがございますので,どう融合させるのか。あるいは学位を取るだけでなくて,例えば部分的に履修して,それをモジュールとして履修証明するということをしっかりやろうということも将来構想部会の下に設置されている制度・教育改革ワーキンググループで議論していただいているところでございます。
 履修証明につきましても,何を学んだのかという証明がより社会に活用いただけるような仕組みづくりは,非常に大事になってまいります。その点についても議論を進めていただいているところでございます。
 単位互換も大事な点でございます。より大学間でのシェアリングが進む形にしたいと議論いただいているところでございます。
 清原委員から頂きました初等中等教育との連携は,強調させていただけるような形でのまとめを部会長とも相談していきたいと思っております。また,地域における様々な教育,研究,あるいは学生交流も含めた連携について御意見を頂いていますので,より深める形で議論を進めさせていただければ有り難いと思っているところでございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 リカレント教育は,厚労省や経産省等,他省庁とも大きく関係のあるテーマで,例えば厚労省の給付金には社会人の教育訓練,学び直しが対象となるものがありますよね。また,このような学び直し,マルチステージな人生といったことに関しては,企業側でも考えなければならない部分がかなりあると思います。したがって,いろいろなところで議論が既に始まっていると思うのですが,やはり,このリカレント教育というテーマについては,生涯学習政策局を中心に文科省として,他省庁ともよく話し合いながら,しっかり議論を進めていただきたいと思います。我々としても,「人生80年時代」の人間ではございますが,今の子供たちは「人生100年時代」ということで,職場と学び直しの本当に可能になるような環境の整備に向けて知恵を絞っていきたいと思っております。
 それでは,本件については,引き続き大学分科会や将来構想部会を中心に審議を進めていただき,今年の秋,冬ごろを目途に答申の取り纏めを目指すということで,これからまだ数か月御審議いただくことになりますが,引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 それでは,議題(2)に入ります。これは,本年3月2日の文科大臣の諮問を受けて,公立社会教育施設の所管の在り方等について,生涯学習分科会を中心として審議が進められてきたところであります。
 今般,この生涯学習分科会におけるこれまでの議論が,公立社会教育施設の所管の在り方等に関する生涯学習分科会における審議のまとめとして取りまとめられました。
 まず,審議のまとめの作成に大変御尽力いただきました生涯学習分科会の明石分科会長から御報告をお願いし,その後,常盤局長から説明をお願いいたします。

【明石委員】
 ありがとうございます。北山会長が言われましたように,このたび公立社会教育施設の所管の在り方等に関する生涯学習分科会における審議のまとめを取りまとめましたので,御報告させていただきたいと思います。
 取りまとめに当たっては,お手元の資料2-3にありますとおり,本年3月に文科大臣から中央教育審議会に対して行われました「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について」の諮問を踏まえまして,精力的に審議を進めてまいりました。
 中でも,諮問事項の3ページ目にあります第二及び第三の論点,とりわけ公立社会教育施設の所管の在り方等について,地方公共団体からの提案への対応を求められていることを踏まえまして,ほかの審議事項に先行して審議を行ってまいりました。
 審議のまとめの具体的な内容につきましては,この後,事務局より御説明をお願いいたしますが,私の方から結論のみ端的に申し上げたいと思います。
 社会教育に関する事務については,今後とも教育委員会が所管することを基本とすべきでありますが,地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管できる特例を設けることにおいて,社会教育の適切な実施の確保に関する制度的な担保が行われることを条件に可とすべきとしております。
 今後,この審議のまとめも踏まえまして,中央教育審議会として答申を年内に取りまとめる方向に向けて,残る審議事項の第一の論点も含めた社会教育の振興方策について,更なる議論を検討していきたいと思っております。
 私の方からは以上であります。

【常盤生涯学習政策局長】
 それでは,引き続きまして資料の2-1に基づいて御説明したいと思います。
 生涯学習分科会で取りまとめをいただきました「公立社会教育施設の所管の在り方等に関する審議のまとめ」でございますけれども,本文は,資料2-2としてお手元にお配りをさせていただいておりますが,説明につきましては資料2-1の概要というものを利用いたしまして,御説明をさせていただきたいと思ってございます。
 これは,今,明石分科会長からお話がございましたように,諮問自体は社会教育の振興方策についてということで,非常に幅広い諮問を頂いているわけですけれども,地方公共団体から提案がございますので,この所管の関係についてだけ先行して議論を進めていただいて,まとめをしたわけでございます。
 まず,検討の背景でございますが,ここに記してございますように,少子化による人口減少,その他,様々な地域課題に直面している状況にございます。その中で,公民館,図書館,博物館等の公立社会教育施設につきましては,地域の活性化やまちづくりの拠点,地域の防災拠点などの役割も期待されるようになっております。また,施設の設置・運営についても,他の行政部局や団体との連携ということが不可欠となっているという状況がございます。
 こうした中で,平成29年度の地方からの提案等に関する対処方針,これ,閣議決定でございますけれども,その中で,地方公共団体からの提案を踏まえまして,公立博物館について,「まちづくり行政,観光行政等の他の行政分野との一体的な取組を一層推進するため,地方公共団体の判断で条例により地方公共団体の長が所管することを可能とすることについて検討して,平成30年度中に結論を得る」ということでございます。そして,その結果に基づいて必要な措置を講じるということとされたわけでございます。このことを踏まえて,この課題が位置付いたところでございます。
 まず,1ぽつでございますけれども,現行,社会教育を教育委員会が所管していることについてでございます。
 地方の社会教育に関する事務につきましては,戦後,教育委員会の所管とされ,今日に至っているわけでございます。今後も我が国社会の大きな変化の中で,「生涯学習社会」の実現が必要であるということ。また,その際,学校教育と社会教育の連携・融合を図りながら,横断的・総合的な視点で教育行政を展開していくことが一層重要である。このことを踏まえますと,社会教育に関する事務については,今後とも教育委員会が所管することを基本とすべきと考えるということでございます。
 また同時に,今後,地方公共団体の長が所管する行政分野においても,社会教育行政とも密接に連携しつつ,その施策の中に学びを通じた人づくりの視点を明確に組み込んでいくことが重要と考えられるということでございます。
 2ぽつでございますが,一方で,今後の社会教育施設に求められる役割といたしまして,今後の社会教育施設は,地域の学習と活動の拠点としてのみならず,住民主体の地域づくり,持続可能な共生社会の構築に向けた幅広い取組の拠点としても位置付けられるべきということでございます。例えばといたしまして,公民館,図書館,博物館について,それぞれ期待される役割を整理してございます。
 次に,2ページに進んでいただきたいと思います。その上で,3ぽつでございます。公立社会教育施設の所管に関する特例を設けることについて,どう考えるかということでございます。
 社会教育施設の役割に対する期待が高まる中で,先ほど申しましたように,地方公共団体から,地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することができる仕組み,これをこの後,特例というふうに略したいと思いますけれども,この特例を導入すべきという御意見を頂いているところでございます。
 まず,(1)特例を設けることについてでございますけれども,大きく二つございます。一つは,他の行政分野との一体的な運営による質の高い行政の実現が期待できるのではないかということでございます。具体的には,社会教育施設の事業等とまちづくりや観光等の関連する事業等を一体的に推進することで,地方行政全体としてより大きな成果を上げる可能性があるのではないかということ。
 二つ目に,福祉,労働,産業,観光,まちづくり,青少年健全育成,これらは首長が所管する行政分野であるわけでございますけれども,こうした行政分野における人的・物的資源や専門知識,ノウハウ,ネットワーク等を公立社会教育施設で活用できるようになる。そのことが,社会教育行政全体の活性化にもプラスとなる可能性があるのではないかということ。
 それから,三つ目が,まちづくりや地域の課題解決に熱意を持って取り組んでいるが,これまで社会教育とは必ずしも関わりのなかった人材の育成・発掘,社会教育への参加につながる可能性があるのではないかということで,これも例えば公民館,図書館,博物館について,それぞれどのような点が考えられるのかということを記してございます。
 それから,大きな二つ目として施設の効果的・効率的な整備・運営の可能性ということでございます。
 施設の整備に関しては,首長部局が中心となって行なっております社会資本整備計画等に社会教育施設を位置付けることにより,より戦略的な整備が進む可能性があるのではないか。また,施設の運営に関しても,様々な分野の施設が複合した形で整備されている場合に,より効率的な運営ができるのではないかというようなことが議論の中では出てきたわけでございます。
 (2)で,一方で特例を設けるということとした場合,その特例を設けるに当たっての考慮事項ということといたしまして,社会教育の適切な実施の確保ということ,そのことについて,どういう在り方が考えられるのかということでございます。
 一つ目の丸でございますけれども,社会教育の特性を踏まえますと,社会教育行政における政治的中立性の確保について,これは,学校教育と完全に同一の措置を講ずる必要があるとまでは言えないものの,その確保のためには,例えば教育委員会による関与など一定の担保措置が必要と考えられる。したがって,特例を導入いたしまして公立社会教育施設の所管を長とする場合には,一定の担保措置を講ずることについて検討する必要がある。このことは,政治的中立性の確保だけではなくて,社会教育行政に広く住民の意向を反映させる上でも,社会教育施設としての専門性の確保という点,社会教育と学校教育の連携の推進という点でも重要と考えられるということでございます。
 さらに,この特例により長が所管する場合,教育委員会が教育に関する専門性を生かして一定の関与をすることは,住民の主体的な参画による学びと活動を通じてより良い課題解決と,その過程における人々の成長という社会教育の意義を実現する上でも重要ではないかということでございます。
 その上で,担保措置でございますけれども,例えば地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することについて条例を定める際には,これは,既に先行している仕組みがございますけれども,スポーツ,文化,文化財保護に関する所管についての場合と同様に,教育委員会の意見を聞くことを義務付ける。このほかに幾つかの仕組みを導入することについて議論がございました。
 こうした担保措置の具体的な在り方については,ここでの御議論を踏まえまして,法制化のプロセスにおいて,更に詳細に検討する必要があるということでございます。
 それから,次のページで(3)でございますけれども,生涯学習分科会としての考え方でございます。これは,先ほど明石分科会長からお話がございましたように,社会教育に関する事務については,今後とも教育委員会が所管することを基本とすべきであるが,地方の実情等を踏まえ,より効果的と判断される場合には,地方公共団体の判断により首長が公立社会教育施設を所管できる特例を設けることについて,社会教育の適切な実施の確保に関する制度的担保が行われることを条件に可とすべきと考えるというのが,分科会としての考え方でございます。
 (4)地方公共団体において特例措置を活用する場合の留意点ということでございます。これにつきましては,教育委員会において総合教育会議の積極的な活用であるとか,あるいは首長部局が地域活性化プラン等を策定する場合に,社会教育とか学校教育との連携について留意をしていただく。こういうことを通じて,相互の連携に基づく総合的な行政が進められることが重要ではないかということ。
 それから,司書,学芸員等の専門的職員に対する研修の充実,あるいは社会教育士等の積極的な登用であったり,こうした社会教育の人材だけではなくて,地域で熱意を持って取り組む様々な分野の人材を巻き込んで,地域を担う人づくりを進めたりすることが望まれるということでございます。
 最後に,社会教育の一層の振興についてということでございます。特例の導入によって,その所管が長に移った場合でも,それぞれの施設が社会教育法等に基づく社会教育施設であることに変わりはないわけでございますので,各施設においては,それぞれの法律や基準等を遵守して社会教育の振興に努めることが求められるということでございます。
 それから,二つ目の丸は,この特例の導入の趣旨について,関係者が十分に認識をして,社会教育の充実に向けた具体的な取組を進める必要があること。
 それから,三つ目の丸,最後でございますけれども,今後の更なる検討項目ということで,今回の検討の過程においては,ここにございますように,地域の課題がより一層多様化・高度化する中で,社会教育行政が本来期待される役割を果たすためには,教育委員会と様々な専門分野のエキスパートを擁する首長部局との協働が不可欠であること。さらには,首長部局の所管する行政分野においても,学びを通じた人づくりの視点をより重視する必要があることなどが指摘されました。
 住民参加による地域づくりに向け,社会教育はどのような役割を担うべきであるかなど,冒頭申し上げましたように,諮問自体は社会教育の振興方策という幅広い諮問を頂いておりますので,新たな時代の社会教育の在り方について,分科会を中心に今後更に議論を深めていくということでございます。
 説明は以上でございます。

【北山会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,ここでまた時間を取りまして,委員の皆様から御意見を頂戴したいと思います。篠原委員,お願いします。

【篠原委員】
 これ,質問なのですけども,博物館等とありますね。等というのは,ほかにどういうのが入るのですか。例えば美術館なんか入るのですか。

【常盤生涯学習政策局長】
 ありがとうございます。博物館法の定義の中で,ちょっと今,条文は手元にありませんけれども,歴史博物館とか美術系のもの,あるいは自然史系のもの,そういうものが含まれておりますので,ここでは,狭い意味での博物館ではなくて,広い意味での動物園とか美術館,そういうものも含めて,広い意味での博物館という趣旨でございます。

【篠原委員】
 今回の知事部局との協働,コラボということを強調されているのは,僕は時宜にかなっていると思っているのですよ。ただ,山田さんもいらっしゃいますけれども,首長部局が前面に出過ぎると,例えば美術館なら美術館についていえば,県レベルと市町村レベルでもっと協働すればいいのに,競い合って造る,よくそういう例が見られるのですよ,はっきり申し上げて。その辺の首長部局間との調整みたいなものももう一つ考えておく必要があるのではないかなという感じがいたします。

【北山会長】
 常盤局長,いかがですか。

【常盤生涯学習政策局長】
 そこは,それぞれの自治体というのは,基本的には,そこの範囲内での独自性,主体性というものを持ってお考えになると思いますけれども,もちろん県の方のお考えとして,それぞれの地域の強み・特色を生かしながら,県政全体を進めていくというお考えがあるわけでしょうから,そのあたりはコミュニケーションの問題として解決していくことかなと思いますが,更に議論を深めさせていただければというふうに思います。

【篠原委員】
 すいません,もう一点だけ。もう一つ,これは,地方レベルの話,各地域レベルの話という前提でやっていると思うのですけども,例えば国レベルはどうなのでしょうか。例えば憲政記念館,あるいは今度新しく造ります国立公文書館,そういうようなものも社会教育施設の一つとして位置付けるのですか。その場合,そういうものの活用の方法というのは,何か少し踏み込むことができるのか,できないのか。

【常盤生涯学習政策局長】
 今回,議論の対象となっているのは地方公共団体の博物館ということになっているわけでございますけれども,国レベルについては,ちょっと地方行政と外れている部分もありますけれども,博物館,ここ,実は御説明をし出すと結構複雑な話なのですけれども,いわゆる登録博物館という形で正規の形での博物館は,博物館法においては地方公共団体が所管することが基本になっているということですので,国のところまでは,いわゆる登録博物館という正式な博物館は,その範囲には及んでいないんですが,実は博物館法の中でも,そうは言っても博物館に相当する施設というような形で,博物館と同等の活動を行っている施設というものが実は位置付いておりまして,国の博物館は,基本的にはそういうもの。あるいは,それにも至らない博物館,類似施設という概念が別途あるのですけれども,そういうものとして位置付いているということがありますので,ここでの議論は基本的には,いわゆる登録博物館としての,正式なというと語弊があるのですけれども,法に基づいて基本的に振興を狙いとしている博物館を対象とした議論になっているということでございます。
 もう一歩申しますと,現状で申しますと,実は地方公共団体においても今申しました登録博物館ではなくて,相当施設とか類似施設というようなものについては,首長が現に所管をしているものもございます。それが,今回,所管について,首長も所管が可能になるということになりますと,登録博物館という正規の形で博物館法において振興しようという狙いとなっている博物館の範疇(はんちゅう)の方に,現在,首長が所管をしている相当施設のようなものも含まれてくる可能性が出てくるので,そういう意味で,行政としては,正式に所管する範囲がある意味広がってくるということも期待できるというような議論があるわけで,ちょっと話が込み入っていて申し訳ないです。

【篠原委員】
 何か分かったような,分かんないようなお話。まあまあ結構です。

【北山会長】
 それでは,清原委員,お願いします。

【清原委員】
 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。私,生涯学習分科会の議論にも参加しておりましたが,今回,市長として,首長の一人でございますので,この場でも発言をさせていただきます。
 現場の皆様のヒアリングを踏まえた丁寧な御議論をしていただいた上で,3ページにまとめていただきましたように,本分科会としては,「社会教育に関する事務については今後とも教育委員会が所管することを基本とすべきであるが,地方の実情等を踏まえ,より効果的と判断される場合には,地方公共団体の判断により長が公立社会教育施設を所管できる特例を設けることについて,社会教育の適切な実施の確保に関する制度的担保が行われることを条件に,可とすべきと考える」と集約していただいたことを歓迎し,感謝し,また責任の重さを痛感しているところでございます。
 1点目に申し上げます。御指摘のとおり,いわゆる市長部局においても地域の持続的可能性が課題であり,人生100年時代,少子長寿化の中で,今回例示していただいております福祉,労働,産業,観光,まちづくり,青少年健全育成に加えて,とりわけ防災・防犯等につきまして,市民の皆様に学んでいただきながら,実際に地域で活躍していただいているという事例は枚挙にいとまがございません。
 いわゆる社会教育の分野での学習だけではなくて,市長部局が主催する分野でも,例えば傾聴ボランティアとか,地域福祉ファシリテーターとか,様々なボランティア活動を学びながら実践していただいているというのが現実です。したがいまして,社会教育,生涯学習,なかなか区別ができないままの実態をどう市長が責任を取る形にしていくかということが問題提起されてきました。
 さらに,教育の分野でも,「コミュニティ・スクールを基盤とした小・中一貫教育」を三鷹市は進めておりますが,多くの市民ボランティアの皆様が教育支援等に活躍されており,同じように学びと活動の循環を実践していただいています。そうであるならば,是非,社会教育の現代的な意義を市長部局としてもしっかりと責任を取っていく,そのような方向性が示されたことを感謝しています。
 2点目に,現実的な問題ですが,公共施設の複合化・多機能化が進んでいます。私たちも幾つもの事例から学ばせていただきましたが,市長部局が管理するものと,これまで教育委員会が管理していたものが複合化されています。それをいかに有効に利用者本位に管理・運営していくかという課題の中で,一つの方向性が出たことに感謝しています。
 最後に,3点目ですが,しかしながら,政治的中立性の確保については大いなる議論が交わされました。私自身は,総合教育会議が活発化していること,また,社会教育委員の皆様にも活躍していただいていること,何よりも条例改正をする際にも,指定管理者を提案する際にも議会の議決を頂かなければなりません。
 したがいまして,市民代表の一方である,あるいは県民代表の一方である議会が必ず関与しなければ,このような管理運営を市長部局がするということも現実的には難しいので,政治的中立性を確保する制度的なものは,私たちが担保することが必須であり,また,できるというふうにも考えております。
 したがいまして,社会教育施設が,これまでの歴史的な経過や,あるいは適正な在り方の取組を継承しながら,市長部局が地域の実情に応じて,しっかりと議会や市民の皆様に御検討いただく中で,責任を取っていけるのではないかと思っています。その重さを実感しながら,是非,今後の法整備等で市長部局も信頼していただきながら,より良い制度を作っていただければ有り難いと思います。よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,伊藤委員,お願いできますか。

【伊藤委員】
 ありがとうございます。学校教育と社会教育の連携,あるいは連携・融合という言葉が,この審議のまとめの中にも数か所出てきておりますけれども,今,学校教育の方は大きく変わろうとしているのではないかというふうに思っています。あるいは変わる可能性があるというふうに思っています。
 といいますのも,今,清原委員さんの方からもありましたけれども,平成29年3月の法律改正で学校運営協議会の設置が努力義務になったということもあり,コミュニティ・スクールの導入数が平成29年4月で3,600校,平成30年4月で約5,400校と毎年拡大しています。そして,ここ最近は,高校での導入が大幅に増えているというふうにお聞きをしています。
 こうした動きの中で,学校現場では,少なくとも私どもの周辺では,小・中学生や高校生が地域に出ていって様々な活動が始められている。あるいは地域の方々が学校に入り,学校運営や教育活動への様々な支援を行っている。また,学校では,社会に開かれた教育課程の実現を目指した取組が始められようとしているのは,御案内のとおりだと思います。
 こうした中で,社会参画意識を持った子供たち,あるいは地域貢献や地域づくりの担い手となりたいという意識を持った子供たちが増え始めているような気がしていますし,この傾向は,これからも続いていくのではないかというふうに思っています。
 そこで,私も,この審議のまとめに示された考え方については基本的には賛成なのですが,特例措置を活用する場合においても,これは,地域によっても差はあると思いますが,大きく変わろうとしている学校教育の状況を視野に入れつつ,要は,そこをどう社会教育とつなぎ合わせ,うまく循環させ,更に大きな効果,相乗効果を生み出していくか,そうした視点と発想を持って進めていくことが社会教育の一層の振興という点では,今後大きな鍵になってくるのではないかというふうに思っているわけです。そういう状況を踏まえて,今後も議論を続けていただけると大変うれしく思います。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,次は山田委員,お願いできますか。

【山田委員】
 基本的な方向には賛成させていただきます。実は私は,企業を辞めた後に京都文化博物館の館長になっておりまして,これは,多分,準じた施設じゃないかなというふうに思います。そうした点からは,今,大変柔軟な時代になってまいりましたので,基本と特例というのはあるのですけれども,やはり今まで以上に首長部局と教育委員会部局が連携して,うまく相乗効果を高めるような方向にもっていっていただきたいと思います。
 その点でいきますと,どちらかというと教育委員会に残っている博物館に対しても,本当は首長から,総合会議がありますけれども,きちっといろいろな面で物が言えるような時代にならなきゃいけない。文化庁も観光の方に権限を持つようになってまいりましたから,制度的担保という言葉に固執をして固い棒にならずに,両方が連携をして,いい形になるような制度にしていただきたいと思います。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 中田委員,お願いできますか。

【中田委員】
 分科会の議論の成果をこのような形にまとめていただきまして,大変ありがとうございます。
 最後,確認ということになるのかもしれませんが,概要のところの3ページ,「社会教育の一層の振興について」というところにも触れられておりますが,地域の複雑で高度化する,多様化する課題に対応していくためには,社会教育市長部局との協働というのが欠かせない視点であることが示されています。この協働と言う視点は,互いの役割の相乗効果を上げるという意味で,このような対応が必要であると言うことだと思います。このことから,社会教育の役割となる,学びを通じた地域の担い手の住民の成長をどうやって支えていくのかということが大事であるということを押さえていただいていることになり,これは非常に有り難いと思っております。
 そのことは,2ページ目の「社会教育の適切な実施の確保の在り方について」のところで,丸の三つ目でしょうか,社会教育の意義についても,「住民の主体的な参画による学びと活動を通じたより良い課題解決とその過程における人々の成長という社会教育の意義」,とその実現を図ることが重要だというように,ここにも再度確認をいただいており,このことは重要な再確認事項と思っております。その上で,地域の実情に応じてどのような工夫ができるのかということを今回検討してきたと思います。
 したがいまして,今回,議論した一つは,特例を議論したということだと私は理解しておりますので,飽くまで一般化の話ではなくて,地域の実情に合わせてどのような工夫ができるのかという特例について議論をして,社会教育の振興についてはそれをこれからもきちんと維持していくことの必要性を確認していると受け止めております。
 その上でも,制度的担保のありようというのが,これから具体的にどういう仕組みを作るかによって,法制化のプロセスも含めてですが,問われていくと思いますので,引き続き丁寧な対応を頂きたいということと,社会教育法等に基づく社会教育施設としての捉え方,法律,基準等を遵守して社会教育の振興に役立つような施設としての今後の展開を期待していきたいと思っております。
 以上でございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,最後に菊川委員,お願いします。

【菊川委員】
 社会教育行政に長く携わってきた立場から発言いたします。社会教育行政の要素としては,事業と施設と専門人材でございます。ですから,施設が事業をかなり伴って特例的な措置がなされた場合に,一番気になりますのは専門人材をどう確保するかということでございます。
 3ページに,「社会教育士と社会教育に専門的な知見のある人材の積極的な登用」ということがございますけれども,国の方で社会教育士の計画的な養成,量的な拡大等々をお願いできたらというふうに思っております。
 社会教育士は,先ほど一つ目の議題のリカレントがありましたけれども,一般のボランティア活動,あるいはNPO活動,指定管理の質の向上等々にも,質保証として非常に役に立ちますし,また,一般の方が学び直して,それを資格として社会の中で再度活躍していくために必要な資格だと思いますので,社会教育行政の確保のためにも,この社会教育士等の専門人材の量的・質的拡大をお願いしたいというふうに思っております。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは最後に,常盤局長から,何かありますか。

【常盤生涯学習政策局長】
 ありがとうございます。清原先生と山田先生から首長部局と教育委員会との関係についてお話を頂いたわけでございますけれども,やはり両者が,それぞれコミュニケーションを取りながら,尊重しながら進めていくということだろうというふうに思っておりますし,それと今回のまとめの中に書かれていることで一つ特徴的なことは,所管を首長に移すということの議論に加えて,首長部局で行われている様々な一般行政とか,社会教育関連行政というものがありますけれども,そういうものについても,やはり学びを加味することによって,しっかりと位置付けることによって課題解決の質が高まったり,あるいは人材養成ができたりというようなところがありますので,やっぱり相互に乗り入れる形で協力関係,どういうふうに作っていくのかということがテーマとして,これから更に掘り下げていくべきことかなというふうに思いますし,その際に,これは総合教育会議の活用が必要かと考えます。
 ただ,現状においては,実は総合教育会議もかなり学校教育に比重が重く置かれていて,社会教育のところについて議題として取り上げられている例が,全国的に見ると必ずしも多くないようでありますので,そのあたりのお願いも我々からしていく必要があるのではないかなというふうに思ってございます。
 それから,伊藤委員の方から学校教育と社会との連携というお話がございましたけれども,この中にも書かせていただいておりますけれども,コミュニティ・スクールもそうですし,あるいは教育課程自体も社会に開かれた教育課程という位置付けになっております。それから,社会教育の立場から言っても,地域学校協同活動ということで法律改正をして位置付いているものがあるわけでございますので,これもどういう形で両者がそれぞれ尊重しながらいい関係を作っていくのかということだろうと思いますので,これまた更に議論を深めさせていただければというふうに思ってございます。
 それから,菊川先生からおっしゃっていただいた人材育成は,まさに,ここに書いてあるように,先日,社会教育士という新しい仕組みもできたわけですので,これを含めて人材の確保ということ。社会教育を担っていだたく,この方々は,社会教育士の方もそうですし,社会教育に従来必ずしも関わってこられなくて,地域づくり,まちづくりに関わってこられた方々も是非参画していただけるような,そういう形にしていくことが議論されてきたというふうに思ってございます。
 それから,中田委員からおっしゃっていただきました基本的なところで,これは,あくまでも特例であってということでございます。これは,3ページの上のところで,本分科会としての考え方のまとめで示してございますし,また,分科会長からも冒頭おっしゃっていただいたように,地方の実情等を踏まえて,より効果的と判断される場合に特例が可能となるという趣旨であるということは確認させていただきたいというふうに思ってございます。
 以上でございます。

【北山会長】
 常盤局長,どうもありがとうございました。
 それでは,本件については,引き続き生涯学習分科会を中心に,今日の皆様の御意見も踏まえて審議を進めていただきますので,よろしくお願いいたします。
 では,本日の議事は,これで終了でございます。次回の日程について,寺門課長からお願いします。

【寺門生涯学習政策局政策課長】
 次回の総会でございますけれども,来る10月5日金曜日15時から17時で予定してございます。場所は,同じくこちらの会議室でございます。よろしくお願い申し上げます。

【北山会長】
 それでは,本日の会議は,これで終了でございます。どうもありがとうございました。

―了―

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