中央教育審議会(第112回) 議事録

1.日時

平成29年6月22日(木曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 「第二講堂」(旧庁舎6階)

3.議題

  1. 新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について
  2. 教育再生実行会議第十次提言について
  3. その他

4.出席者

委員

 北山会長,小川副会長,河田副会長,明石委員,生重委員,尾上委員,小原委員,帯野委員,亀山委員,菊川委員,篠原委員,竹宮委員,田中委員,田邉委員,永田委員,中根委員,成田委員,林委員,坂東委員,日比谷委員,福田委員,米田委員

文部科学省

 樋口文部科学大臣政務官,鈴木大臣補佐官,戸谷事務次官,山下文教施設企画部長,有松生涯学習政策局長,藤原初等中等教育局長,常盤高等教育局長,村田高等教育局私学部長,信濃大臣官房政策課長,助川大臣官房会計課専門官,神山大臣官房審議官,佐藤生涯学習総括官,里見生涯学習政策局政策課長,他

5.議事録

【北山会長】
 それでは時間になりましたので,ただいまから中央教育審議会総会を開催いたします。
 御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。本日は,松野大臣,義家副大臣,樋口政務官に御出席いただいております。
 初めに,文部科学省において人事異動がありましたので,事務局から御紹介をお願いいたします。

【氷見谷政策課長】
 失礼いたします。今回より私,氷見谷が生涯学習政策局政策課長として担当させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

【北山会長】
 ありがとうございます。里見課長の御後任として氷見谷課長が着任されています。よろしくお願いします。
 それではまず,本日の議題について御説明いたします。今日はまず議題(1),「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」諮問いただく予定です。続いて議題(2),「教育再生実行会議第十次提言について」の御説明を頂いた後,議題(1)と併せて意見交換を行いたいと思います。
 なお本日は,報道関係者から会議の全体について録音,カメラ撮影を行いたい旨申出があり,許可しておりますので,御承知おきいただきたいと思います。
 それでは,議事に入ります。まず本日の配付資料について,氷見谷課長からお願いします。

【氷見谷政策課長】
 失礼いたします。本日の配付資料でございますが,お手元の会議次第に記載しておりますとおり,資料1から資料3‐2,参考資料がございます。また,山野委員から配付資料ということで,スクールソーシャルワーク評価支援研究所等のパンフレット等3部を頂いておりますので,配付しております。御確認いただければと思います。
 また,資料につきまして,補足を2点させていただければと思います。まず資料1を御覧ください。委員の皆様には既にメールなどで御連絡させていただいておりますが,3月6日に開催された中央教育審議会総会以降,中央教育審議会運営規則などに基づきまして,総会を経ないで行われた諮問について御報告するものでございます。もう1点は,参考資料についてでございます。参考資料を御覧ください。「障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実について」に関して,若干御説明をさせていただければと思います。
 文部科学省においては,障害者が生涯にわたり,自らの可能性を追求できる環境を整え,地域の一員として豊かな人生を送ることができるようにすることが重要という認識の下,省内の体制を確立するため,特別支援総合プロジェクト特命チームを設置するとともに,平成29年度から生涯学習政策局に障害者学習支援推進室を新設したところでございます。資料は,省内の体制整備に加えまして,4月7日付けで発出された大臣メッセージと通知文を付けております。文部科学省といたしましては,障害のある方々が生涯を通じて教育やスポーツ,文化などに親しむ機会が持てるよう,障害者学習支援推進室を中心に,省を挙げて支援に取り組んでまいりたいと存じます。
 最後に,机上にタブレット端末を置かせていただいております。机上に配付しております資料につきましては,パンフレットを除きましてお手元のタブレットの方でも御覧になれるようにしております。画面はノートパソコンと同じように,キーボードの操作のほか,タッチパネルでも操作できますので,画面をタッチすることでも操作をしていただくことが可能です。画面上にPDFファイルが並んでおりますので,そちらをクリック,又はタッチしていただければ御覧いただけます。操作で御不明な点が生じた場合には,近くの事務局にお声掛けをいただければと存じます。配付資料につきましては以上でございます。

【北山会長】
 ありがとうございました。配付資料についてはよろしいでしょうか。
 それでは,議題(1)に入ります。まず松野大臣から,「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」の諮問がございます。松野大臣,よろしくお願いいたします。

【松野大臣】
 皆さん,おはようございます。文部科学大臣の松野博一でございます。委員の皆様方におかれましては,御多忙のところ御参集いただきまして,誠にありがとうございます。
 教育は,人々の多様な個性・能力を開花させ,人生を豊かにするとともに,社会全体の一層の発展を実現する基盤となるものであります。直面する諸課題を乗り越え,我が国を新たな時代へと導くため,皆様からの御提言を踏まえ,政策を着実に推進をしていくことが重要であると考えております。全力で教育改革に取り組んでまいりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 さて,本日の総会では,「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」,諮問させていただきます。
 我が国の学校教育は,国際的にも評価が高い教員が,子供への情熱や使命感を持った献身的な取組を積み重ね,高い成果を上げてきました。
 一方,急激な社会変化の中で,子供には必要な資質や能力を確実に育成することが求められており,昨年12月に本審議会から頂いた答申を受けて,小・中学校の学習指導要領等を改訂いたしました。今後は,これまでの各学校での取組の実績を基盤としつつ,新学習指導要領等を確実に実施をし,学校教育の改善・充実に努めていかなければなりません。
 特に教員には「カリキュラム・マネジメント」や「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた取組が求められていますが,このほかにも生徒指導や部活動,地域との連携など,教員に対して多様な期待がある一方で,先般公表した教員勤務実態調査では,長時間勤務という看過できない深刻な状況であることが改めて明らかになりました。
 文部科学省では,学校現場における業務の適正化に向けた取組を既に進めておりますが,これにとどまらず,今回の調査で明らかになった課題に対し,具体的かつ実効性のある取組を更に進める必要があります。
 教員の長時間勤務の要因を見直すことで,教員が自ら研鑽(けんさん)できる機会を持てるようになるとともに,教員が「魅力ある仕事」として再認識をされ,誇りを持って働くことは,子供の教育にも良い影響として還元されると考えます。
 このような観点から,国公私立学校を通じ,学校における働き方改革に関する総合的な方策について検討をお願いします。
 具体的には三つの事項を中心に,御審議をお願いします。
 第1に,これまで学校が担ってきた業務のうち,引き続き学校が担うべき業務は何か,学校・家庭・地域・行政機関等の役割分担の在り方や,連携・協働を進めるための条件整備等について御検討をお願いいたします。
 第2に,これまで培った日本の学校教育の良さを生かしつつ,教員が教育の専門職として子供の指導に一層専念できるよう,教職員及び専門スタッフが担うべき業務の在り方及び役割分担について御検討をお願いいたします。
 第3に,教員が子供の指導に使命感を持ってより専念できる学校の組織運営体制の在り方,学校の特性を踏まえた勤務時間制度や勤務状況を踏まえた処遇の在り方,具体的には,勤務時間外に自主的,自発的な判断により長時間勤務を行わざるを得ない実態をどのように改善していくかなどについて,御検討をお願いいたします。
 以上,諮問事項の概要について説明させていただきました。詳細につきましては,お手元の諮問文に添付されております諮問理由を御参照ください。後ほど,担当局長より説明させていただきます。
 本日御審議いただきます事項は,これからの教育,ひいては我が国の未来を左右する重要なものでございます。委員の皆様方のこれまでの御尽力に対し,改めて深く感謝を申し上げますとともに,大所高所から積極的な御議論を賜りますようお願い申し上げます。
 それでは,諮問文を会長にお渡しをいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
(諮問文手交)

【北山会長】
 松野大臣,ありがとうございました。
 松野大臣は,公務のためここで中座されます。ありがとうございました。

【松野大臣】
 よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 それでは,今の諮問に関する補足説明を,藤原初等中等教育局長からお願いいたします。

【藤原初等中等教育局長】
 先ほど大臣から諮問について御説明がございましたが,私の方から主として資料2‐2,それから資料2‐3を使いまして,現状や諮問に至った経緯等について補足説明を申し上げたいと思います。
 まず資料2‐2を御覧ください。目次をめくっていただいて,1ページ目でございます。昨年12月に本審議会から頂きました答申を受け,今年の3月31日,新しい幼稚園教育要領,小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領を公示するとともに,学校教育法施行規則の一部改正省令を既に公布したところでございます。幼稚園につきましては平成30年度から,小学校につきましては,移行期間を経まして平成32年度から,他の学校種についても随時本格実施をしていく予定となっております。
 2ページを御覧ください。新しい学習指導要領のポイントでございますが,まず今回の改訂は,改正教育基本法の下での2回目の改訂になりますが,教育基本法,学校教育法などを踏まえて,これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積を活(い)かし,子供たちが未来社会を切り拓(ひら)くための資質・能力を一層確実に育成することを目指すものでございます。子供の現状・課題を踏まえて,知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等の育成のバランスを重視する現行の学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で,知識の理解の質を更に高め,確かな学力を育成していくことと併せて,先行する特別教科化など道徳教育の充実や体験活動の重視,体育・健康に関する指導の充実により,豊かな心や健やかな体を育成していくことを考えております。
 そのために,子供たちが何のために学ぶのかという学習の意義を共有しながら,授業の創意工夫や教科書等の教材の改善を引き出していけるよう,全ての教科等においてその内容を,1,知識及び技能,2,思考力,判断力,表現力等,3,学びに向かう力,人間性等の三つの柱で再整理したところでございます。
 3ページ目を御覧ください。今申し上げたことの上で,小学校,中学校におきましては,これまでと全く異なる指導方法を導入しなければならないと浮き足立つ必要は全くなく,我が国の教育実践の蓄積に基づく主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めていくことをお示ししております。このような新しい学習指導要領の円滑かつ確実な実施のためには,教員一人一人の力量が発揮されるよう,教職員の定数改善などの指導体制の充実や,教職員の業務改善などの一層の推進を図るとともに,既に行われている優れた教育実践の教材,指導案などの集約・共有化による授業研究や授業準備等への支援が求められております。
 また,学習の基盤となる資質・能力や様々な現代的な課題に対応して求められる資質・能力を育成するためには,教科等横断的な学習を充実することが重要であり,教育内容や時間の適切な配分,必要な人的・物的な体制の確保,実施状況を検証し改善していくことなどを通して教育活動の質を向上させる,各学校によるカリキュラム・マネジメントの確立を進めていくことも重要であるということでございます。
 以上の考え方に基づきまして,学習指導要領を改訂したところでございますが,小学校と中学校の標準授業時数につきましては,次の4ページと5ページに掲載しているとおりでございます。とりわけ小学校におきましては,この赤字のところで示してあります外国語教育について,現在5・6年生で外国語活動を週当たり1コマ実施しておりますが,今回の学習指導要領改訂により,3・4年生から外国語活動を,5・6年生については外国語科を導入することとなり,これによって小学校の標準授業時間数が増加するということになります。急激な社会的な変化が進む中で,子供が予測不可能な未来社会を自立的に生き,社会の形成に参画するための資質・能力を一層確実に育成するためにも,新しい学習指導要領が円滑に実施されることが必要不可欠でございます。
 次に6ページを御覧ください。ここでは不登校の割合,暴力行為の件数は,いまだ高い水準にありまして,また日本語指導が必要な児童生徒数,通級指導による指導を受けている児童生徒数,それから特別支援学級・特別支援学校に在籍する児童生徒数,これらはいずれも増加傾向にございます。また,子供の貧困が指摘されていることでありますが,要保護及び準要保護の児童生徒数も増加傾向にありまして,学校現場が抱える課題は,生徒指導をはじめとしてまだまだ数多く存在するものと考えております。
 このような状況の中で,文部科学省におきましては,教育政策に関する実証研究の一環といたしまして,教員の勤務実態に関する実証分析を10年ぶりに実施しているところでございまして,去る4月28日には,教員の勤務時間に係る部分の速報値を公表したところでございます。
 お手元の資料2‐3,2‐4は勤務実態調査の速報値でございますが,2‐3の概要を使って御説明を申し上げたいと思います。資料2‐3の最初のページでございますが,今回のこの調査は委託研究として,平成28年度から2か年の予定で実施しているところでございます。小学校,中学校いずれもそれぞれ約400校ずつに勤務する教員合計約2万人を対象といたしまして,学校ごとに昨年の10月から11月のうちの連続する7日間を設定いたしまして,その期間の勤務実態の調査をいたしました。この調査は大きく分けて,学校調査,それから教員調査の二つで構成されておりまして,今回は教員調査の中で,個人の属性など及び各教員の業務記録についての集計を行いました。なお,学校調査,それから教員のストレスチェック調査につきましては,今年度末までに集計し,分析を行う予定でございまして,現在作業を進めているところでございます。
 資料2‐3の2ページを御覧ください。教員の1日当たりの学内勤務時間につきまして,これは前回の調査と比較して,平日,それから週末,土日共に,いずれの職種につきましても勤務時間が増加しております。具体的には,教諭の平日1日当たりですが,小学校で43分増加して11時間15分,中学校では32分増加して11時間32分,それから教諭の土日1日当たりにつきましては,小学校で49分増加して1時間7分,中学校では1時間49分増加して3時間22分となっております。なお,これらの数字は休憩時間や仕事の持ち帰りの時間は含まれておりません。これを1週間当たりの学内総勤務時間にいたしますと,小学校の教諭で57時間25分,副校長・教頭で63時間34分,中学校の教諭で63時間18分,副校長・教頭で63時間36分となっております。
 次に3ページを御覧ください。1週間当たりの学内総勤務時間の分布を示しておりますが,60時間の勤務ということになりますと,これが週当たりの時間外勤務が約20時間になりまして,これを4倍いたしますと,おおむね月80時間の時間外勤務となります。したがって,1週間当たり60時間勤務のラインを上回る,すなわち1か月当たりの時間外勤務が80時間上回るという者については,教諭の場合が小学校で33.5パーセント,約3分の1,中学校で57.7パーセント,6割弱でありまして,また副校長・教頭の場合では,小学校で62.8パーセント,中学校で57.9パーセントと,いずれも約6割前後を占めているということになります。なお,月80時間以上の時間外勤務が2か月以上続けば,いわゆる過労死ラインを超えると言われております。
 それから,4ページを御覧ください。ここでは,学内勤務時間と持ち帰りの業務時間についてでございますが,前回10年前の調査と比較いたしまして,学内勤務時間が増加している一方で,持ち帰りの業務時間につきましては,若干ではありますが減少しているところでございます。
 次に,1日当たりの業務内容別の勤務時間を前回の調査と比較したところ,平日につきましては,小学校で授業が27分,学年・学級経営が10分,それから中学校では,授業が15分,授業準備が15分,成績処理が13分それぞれ増加しているところでございます。
 次のページ,5ページを御覧ください。週末の土日についてですが,特に中学校では部活動が1時間4分,成績処理が10分,それぞれ増加しているところでございます。今回の調査結果によって,改めて看過できない大変深刻な教員の勤務実態を,客観的なエビデンスとして裏付けたものと,文部科学省では認識をしております。
 恐縮ですが,お手元の資料の2‐2の方にまたお戻りいただければと思います。文部科学省におきましては,今回の先ほど申し上げた調査結果が明らかになる以前から,学校現場における様々な支援を行ってきたところでございます。資料2‐2の7ページを御覧ください。これは本審議会から一昨年,平成27年の12月に「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」,それから「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」,さらには「これからの学校教育を担う教員の資質・能力の向上について」の三つの答申を頂いているところでございます。
 この三つの答申を踏まえまして,文部科学省では,学校現場を取り巻く環境が複雑化,困難化する中,教員が子供と向き合う時間を確保し,全ての子供たちに新しい時代にふさわしい教育を保障するため,教員の資質向上と併せて学校指導体制の充実が不可欠であるとの認識の下,昨年8月,馳前大臣のときに,学校と地域の二つの視点から,「『次世代の学校・地域』創生プランを策定,発表したところでございます。このプランを踏まえまして,教員の資質向上のための教員改革の一環として,教員の養成,採用研修を通じた不断の資質向上のための教員公務員特例法等の改正を,昨年の11月,臨時国会にて行いました。さらに学校の指導体制を質的かつ量的に充実することと,地域との連携・協働も含め,学校の運営体制を改善することの二つの方策を一体的に推進することが不可欠であることから,基礎定数化に伴う教職員定数の標準の改正,事務職員の職務及び共同学校事務室に係る規定等の整備,学校運営協議会について,学校運営への必要な支援に関する協議を行う等の役割の見直し,それから地域学校協働活動に関する連携・協力体制の整備などを内容といたします,義務標準法や学校教育法等の改正につきまして,本年3月の通常国会にて法改正を行ったところでございます。この義務標準法の改正によりまして,16年ぶりに法律改正を伴う計画的な定数改善が図られることになりまして,一部の加配定数を定数化するといったことが実現できたところでございます。
 次のページ,8ページを御覧ください。必要な教員が確実かつ安定的に措置され,地方自治体による教員の計画的な採用・研修・配置に寄与するとともに,発達障害等のある児童生徒や日本語に課題のある児童生徒に対するきめ細かな指導の充実や質の向上に必要な研修体制の充実が図られるということでございます。通級による指導や,外国人児童生徒等教育,それから初任者研修に係る教職員定数の基礎定数化につきましては,これまで加配定数で措置してきた現状よりも,教職員配置の割合を改善する内容となっておりまして,この基礎定数化について,今後10年間で着実に実施していくということになっております。あわせて加配定数につきましても,小学校における専科指導の充実,貧困等に起因する学力課題の解消,統廃合・小規模校への支援,いじめ・不登校等への対応の強化などについての改善を盛り込んでいるところでございます。
 次に9ページを御覧ください。学校現場の業務改善を進めるためには,教育委員会が支援を行う上での基本的考え方や改善の方向性を取りまとめた,学校現場における業務改善のためのガイドラインを平成27年7月に公表し,またそのための取組を力強く進めていくために,今年の1月には松野大臣から,「学校現場における業務の適正化について」という大臣メッセージを発信いたしまして,業務改善に集中的に取り組むモデル地域を指定し,学校現場の業務改善を加速するためのプロジェクトの実施,それから部活動指導員の制度化や部活動活動の総合的なガイドラインの作成の検討など部活動の適正化の推進,さらには業務改善等に知見のある有識者や教育関係者等を,業務改善アドバイザーとして派遣する仕組みの創設などを行っているところでございます。
 10ページ,それから11ページを御覧ください。本年度の教育委員会における学校の業務改善のための取組状況の調査の速報値の概要でございます。都道府県,政令指定都市の教育委員会につきましては,ここにありますとおり,おおむね業務改善の取組が進みつつある状況となっておりますが,他方,市区町村の教育委員会につきましては,まだまだ十分とは言えない状況になっているところでございます。
 以上が,学校現場の状況と,これまで文部科学省が取り組んできた学校現場に対する様々な支援でございますが,当然支援につきましては,実施してからまだ間もなく,学校現場にまでまだその効果が十分に伝わりきっていないのではないかと思われます。しかしながら,今回の教員勤務実態調査の速報値を受けまして,新しい学習指導要領の円滑な実施をはじめとする,学校や教職員が本来期待されている業務にしっかりと取り組むことができるように,先ほど大臣からも御説明申し上げましたとおり,調査で明らかになった課題に対し,具体的かつ実効性のある取組を更に進める必要があることから,今回三つの事項についての御審議をお願いすることとしたわけでございます。
 一つ目の検討事項,「学校が担うべき業務の在り方について」でございますが,お手元の資料の2‐2の12ページを御覧ください。12ページの表に示したように,諸外国と比較いたしますと,我が国の学校に期待される役割は非常に多岐にわたっているということでございます。その一方で,教育基本法13条では,学校,家庭及び地域住民その他の関係者は,教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに,相互の連携及び協力に努めるものとされております。これらを踏まえまして,学校が担うべき業務は何であるか,学校,家庭,地域,行政機関等の役割分担の在り方や連携・協働を進めるための条件整備等の在り方について御検討いただければと考えております。あわせて,法令で義務付けられている学校関係書類や行政機関,民間団体等から依頼される各種調査業務等の精選の在り方についても御検討いただければと思っております。
 二つ目の検討事項,「教職員及び専門スタッフが担うべき業務の在り方及び役割分担について」でございますが,まずは教員が本質的に担うべき業務は何かについて御検討いただければと思っております。その上で,それ以外の業務について,事務職員,あるいは13ページの表にありますような様々な教員以外の専門スタッフ,あるいは支援人材,これらの間の役割分担及び連携の在り方についても御検討いただきたいと考えております。
 そのほかにも,新しい学習指導要領等を円滑かつ確実に実施するために必要な方策をいかに講じるかといった,学習指導や生徒指導等の体制の強化の充実の進め方,それからICTの効果的な活用なども含めた更なる業務改善,その効果的な実施体制を構築するための方策についても御検討いただければと思っております。
 三つ目の検討事項,「教員が子供の指導に使命感を持ってより専念できる,学校の組織運営体制の在り方及び勤務の在り方について」でございますが,教員が限られた時間の中で子供の指導に使命感を持って,より専念できる体制を整えるためには,組織としての学校運営体制の強化・充実を図ることが必要でございます。
 資料の14ページと15ページを御覧ください。ここでは現在,学校に置かれております教諭以外の職と主任等をまとめております。学校運営体制の強化・充実を図るため,副校長,主幹教諭,指導教諭等の役割や主任の在り方,学校運営を支える事務職員のなど,学校組織運営の体制の在り方,また,管理職の意識改革も含めた効果的な学校マネジメント体制の構築の在り方についても御検討いただきたいと考えております。あわせて,現在の学校内において,教職員の役割分担として決められております校務分掌の在り方,それから学校内に置かれている各種委員会等の整理合理化に向けた方策の在り方についても御検討いただければと思っております。
 教員の勤務の在り方についてでございますが,お手元の資料の16ページを御覧ください。教員は勤務態様の特殊性から,一般行政職と同じような勤務時間の管理にはなじまないとされておりまして,その特殊性を踏まえまして,いわゆる超勤4項目以外,原則時間外勤務を命じないこととされており,時間外勤務手当を支給しない代わりに,給料月額の4パーセントに相当する教職調整額を支給しているという仕組みでございます。あわせまして,教員に支給される手当につきましては,お手元の17ページの表でまとめてあるとおりでございます。このような教員の勤務時間の在り方,その管理の在り方,勤務状況を踏まえた処遇の在り方がどうあるべきかについて御検討いただきたいと考えております。
 以上が,諮問に至った経緯及び諮問内容等の補足説明でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【北山会長】
 藤原局長,ありがとうございました。
 ここで,義家副大臣は公務のため御退席されます。義家副大臣,ありがとうございました。
 続いて,議題(1)にも関係があります,議題(2),教育再生実行会議第十次提言の御説明を,瀧本内閣官房教育再生実行会議担当室長からお願いいたします。

【瀧本教育再生実行会議担当室長】
 それでは,資料3‐1を御覧いただければと思います。また,資料3‐2が提言の本体となっておりますので,お手元に御用意いただきつつ,私の説明はこの資料3‐1に沿って,主なポイントについて報告させていただきたいと思います。
 この教育再生実行会議ですが,平成25年に内閣の最重要課題の一つである教育改革を推進するために,安倍総理御出席の下,これまでも大きな方向性について提言を重ねてきております。本日は,今月6月1日に座長でいらっしゃる鎌田早稲田大学総長から安倍総理に提出されました第十次提言につきまして,本日の諮問とも関わりますので,簡単に御報告をさせていただきたいと思います。
 資料3‐1ですが,表題のところにございますとおり,今回十次提言は,「自己肯定感を高め,自らの手で未来を切り拓(ひら)く子供を育む教育の実現に向けた,学校,家庭,地域の教育力の向上」というタイトルになっております。今回十次提言では大きく二つのテーマを議論いたしました。一つは,「学校,家庭,地域の役割分担と教育力の向上について」,もう一つが,「子供たちの自己肯定感を育む」でございまして,大きく二つのテーマの議論が今次の教育再生実行会議で進められたところでございます。
 1ページを御覧ください。1の「(1)学校,家庭,地域の役割分担」として,一つ目の点にございますとおり,それぞれの立場から子供の教育に責任を持ち,機能を発揮し,相互に連携・協力しながら子供を育むことが重要であり,教育基本法においても,それぞれに係る規定を置き,理念を明示しているといったことで整理をしております。その下の,「(将来にわたっての議論の必要性)」ですが,一方で,様々な変化が家庭や地域,学校に対して今後更に影響を与え,とりわけ家庭や地域は更に変容する可能性があり,今後,家庭や地域の教育力の向上にとって更なる課題が生じることが予想される中で,我が国の強みである「日本型学校教育」を維持・発展させるには,学校への更なる資源投入が不可欠であって,将来を見据えた国民的議論が必要ということで,理念的な整理をしております。
 (2)は,「家庭,地域の教育力の向上」ということで整理しておりますが,「(家庭の教育力)」に関しましては,一つ目の点にありますが,家庭教育支援を更に充実していく。二つ目の点では,様々な困難を抱える家庭,あるいはその子供に対して教育と福祉の連携・協力の実効性の向上を通じて,更なる取組の充実が重要であるとして,幾つか具体の提言を行っておりますが,その中からここでは主なものとして,四角の中に四つほど具体の施策をまとめてございます。
 幼児教育に関しては,段階的無償化の取組を可及的速やかに推進する。あるいは,教育・福祉の一体支援の確実な実施に向けて,文部科学省,厚生労働省による連携・協力の実質化を進める。さらには妊娠期から就学期以降まで切れ目のない支援の実現に向けて,子育て支援施策との連携,それから総合的な家庭教育支援,さらにはなかなか来てもらえない家庭に対する訪問型の家庭教育支援を一層推進していくことを提言しております。また,子供が家族や地域で過ごすための環境作りとして,地域ごとの学校休業日の分散化等についても提言を行っております。
 その次に,「(地域の教育力)」でございますが,1点目に,コミュニティ・スクールの導入促進など,関連法令の改正の趣旨を踏まえた地域学校協働活動を推進していくこと。その際,地域住民が自然と集まれるような魅力的なスペース,コミュニティ・スペースとして学校を整備・活用することで,地域の力を学校に呼び込むといったような環境作りについても提言を行っております。また,三つ目,四つ目の丸ですが,「学校応援週間」,さらにはユネスコが制定している「教師の日」といったものを設けて,教職の仕事に対して思いをいたし,相互に信頼し合えるようなきっかけとなるような事柄についても設定していくことを検討してはどうかという提言を行っております。また,高校中退者等に対する切れ目ない就労支援,学習支援といった支援体制の構築についても提言を行っております。
 2ページ目を御覧ください。学校の教育力向上の観点で,教師の働き方改革についても何点かの提言をこの中で行っているところでございます。先ほど藤原局長からも説明がありましたが,四つ目の点にございますように,教員勤務実態調査の速報値を踏まえると,既に限界に来ている学校教育の現場というのがあり,その業務負担軽減が喫緊の課題とされています。五つ目の点ですが,国は教師が担うべき業務の精選・明確化等を通じ,スピード感を持って,教育の質の向上や教師の負担軽減に向けた教師の働き方改革について総合的に検討するよう提言を行っているところでございます。
 具体策として,その下の二つの四角囲みの部分ですが,チーム学校の実現に向けた,生徒指導や特別支援に専念できる教師の配置の充実,あるいはスクールカウンセラー,ソーシャルワーカーといった外部専門家の配置の促進という点がうたわれております。一方で,学校の部活動改革として,部活動指導員の配置の促進に加えて,指導者の資格の在り方,あるいは地域単位で部活動を行える環境作りについての検討といった提言も盛り込んでいるところでございます。その他,統合型校務支援システムの導入などICT化の推進や,学校事務の効率化,さらにはとりわけ小学校の英語をはじめとした専科指導の導入,さらには様々な外部人材の活用の推進による学校指導体制の充実といった点について,この中で提言を行っているところでございます。
 次に二つ目のテーマでございますが,「子供たちの自己肯定感を育む」ということで,一つ目の点では,各学校が改訂された学習指導要領の前文で示された理念を踏まえまして,子供たちの自己肯定感を育むことを目標として掲げつつ,日頃の教育活動を行っていくことが大切であるとした上で,三つ目の点ですが,自己肯定感を二つの側面から捉えるということを,この中では提言を行っております。
 一つは,勉強やスポーツ等を通じた競い合いなど,自らの力の向上に向けて努力をすることで得られる達成感を通じて育まれる自己肯定感といったもの,もう一方で,自分のアイデンティティに目を向け,短所を含めた自分らしさや個性を冷静に受け止めることで身に付けられる自己肯定感,この二つの側面から捉えるということです。その次の四つ目の点ですが,何事も積極的に挑戦し,自らを高めていく姿勢を身に付けるということと,もう一方で,自分らしさを見失うことなくリラックスして臨み,自らの力を最大限発揮できるようになることの両方が重要であろうということで,考え方が整理されております。また,その次の点ですが,良いところは積極的に褒め,ただし褒めるばかり,褒めるだけではなくて,叱るべきときには叱るなど,大人が愛情を持って関与していくことが重要であるとしております。
 具体の提言方策として,幼児教育,あるいは家庭教育に関する提言のほか,地域学校協働活動推進員の配置や研修を促進して,多世代交流とか異年齢交流を推進,さらには青少年教育施設の活用なども通じた体験活動の積極的な推進ということについて提言を行っております。加えまして,自己肯定感を残念ながら下げることにつながっております「ネットいじめ」に対して,民間事業者と協働した「ネットいじめ」への相談体制の構築といった点についての提言を行っております。その他,放課後の居場所作り,あるいは新しい学習指導要領で求める主体的・対話的で深い学びの実現に向けた学習指導体制の充実,業務改善の促進といった点について提言を行っているところであります。
 最後3ページを御覧ください。ここはこれまでの提言の確実な実行に向けてということで,提言のフォローアップでございます。これまで九次にわたる提言を行っておりましたが,(1)のところで,過去の提言のうち,法令改正等がなされた事項を整理しております。 28年5月に第九次提言がなされましたが,そこまでで提言のフォローアップを一旦済ませておりますので,第九次提言以降の法令改正事項をここでまとめております。また(2)として,今後更に確実な実行に向けて注視する必要のある重要事項ということで,7点ほどをフォローアップとして整理しております。丸1「教育投資・教育財源の充実」から始まりまして,丸7「『選挙権年齢引下げ』への適切な対応」ということで,主権者教育等々,こういったものをしっかりと引き続きフォローアップしていくよう提言を行っております。
 なお,教育再生実行会議第十次提言を受けた安倍総理からは,松野大臣に対して,国公私立学校を通じた教職員の働き方改革についてスピード感を持って取り組むように指示がございました。
 以上,教育再生実行会議第十次提言のポイントについて御報告をさせていただきました。ありがとうございました。

【北山会長】
 ありがとうございました。
 それでは,ただいま大臣から頂いた諮問並びに藤原局長の補足説明,それから教育再生実行会議の第十次提言につきまして御質問,ないしは御意見がありましたら御発言をお願いしますが,本日の諮問,働き方改革に関しては,これから初等中等教育分科会を中心に審議を進めていただくことになりますので,まず,初等中等教育分科会長でもある小川副会長に御発言をお願いしたいと思います。

【小川副会長】
 ありがとうございます。初等中等教育分科会長としての発言というよりも,飽くまで中央教育審議会委員の一人として,諮問内容に沿って,私個人として特に重要ではないかと思われる論点について,幾つか意見を述べさせていただければと思います。
 教員の働き方改革に関しては,諮問事項の中にもあるように,様々なアプローチや取組の方法があるかと思います。ただ,私はそうした様々なアプローチや取組の方法の中でもとりわけ重要なものは,教員の仕事の範囲が余りにも広がり過ぎて,業務の量が多くなっていますので,そうした教員の業務をきちんと減らすことが,まず一番大きな取組の課題かと思います。教員の仕事の量を減らすことなく,例えば勤務時間の上限規制などを設けるなどの様々な制度的な見直しを図ったとしても,結局はサービス残業として,今の長時間勤務の実態は残っていくと考えています。ですから,基本は教員の仕事量をきちんと減らしていくこと。教員の仕事の量を減らしつつ,学校のパフォーマンスを上げていくような仕組み作り,体制作りをどのように構築していくのかということが,今回の教員の働き方改革の主要な課題ではないかと思っています。
 既に諮問事項の内容にも書かれていることですが,教員の業務量をしっかり減らしていくためには,当然業務改善の取組や,ICTを活用した校務処理の効率化など多様な取組は当然並行して行われるべきだと思いますが,やはり教員の仕事の量を減らすためには,教員の本来担うべき業務の範囲をきちんと確定すること。それを踏まえて,それ以外の業務を担う他の専門スタッフや支援スタッフをきちんと学校に配置し,増員していくという体制作りが,基本的,ないしは中核になるべき取組かと思います。
 御存じかと思いますが,実際,イギリスの教員は授業中心にして働いているわけですが,そうしたイギリスの教員ですら2000年前後以降,授業以外の業務が非常に増えて,長時間労働が非常に大きな問題となってきました。その際,イギリス政府がとった対応というのは,教員が担う必要のない業務というのを洗い出し,教員が担うべきではない業務25項目をピックアップして,そうした業務については他の専門スタッフや支援スタッフをきちんと学校に配置するような体制づくりを2003年以降,しっかり取り組んできています。学校の教職員についても,御存じかと思いますが,イギリスの場合には,教員が四十数パーセント,他の専門支援スタッフが五十数パーセントというような構成比になっていますので,そのような体制作りを目指しながら,教員の本来業務をしっかり確定し,本来業務に専念できる組織体制を作っていくことが基本かと思います。
 そうした取組を行った上で,教員が本来担うべき業務の量と時間をしっかり管理していく勤務時間管理の仕組みないしは運用ルールを次に作っていくことが必要ではないかと思います。その点については,例えば秋の臨時国会で審議が予定されている労働基準法の改正では,上限規制ということが恐らく議論されるかと思いますが,教員の場合においても,この上限規制をどのような形にしていくのか。仮に上限規制を設ける場合には,どのような上限規制の在り方がより望ましいのかということが当然議論されてしかるべきだと思います。恐らくそのような勤務時間の上限規制の在り方は,時間外勤務の支払の有様,代替の休みをどのように措置するかということとも非常に密接に関連するような課題かと思います。
 その上で,もう一つ大きな問題は,先ほど松野大臣からも御説明がありましたように,現在の給特法の下で広く容認されてきている教員の自発的行為の名による無制限な時間外勤務を,きちんと制限していく取組が必要かと思います。現在の給特法の下では,職務命令ができる時間外勤務というのは限定4項目という形の法令で規定されていますが,しかしそれ以外の業務については,いわゆる教員の自発的な行為であるということで,その時間外勤務については制限されてきませんでした。やはりこれは非常にまずいのではないかと,私は思っています。少なくとも校長が割り振りした仕事,その上で校務分掌に組み込まれている業務については,やはり校長の管理監督下の勤務時間であると認定した上で,その業務の時間外勤務をどのように規制していくかということが,きちんと法制度的にも整備されていく必要があるのではないかと思います。
 その上で,超過勤務時間への対応というのをどう考えるか。恐らくそれにふさわしい超過勤務手当,ないしは,仮に教職調整額という形を残すのであれば,そうした実態に見合った金額を設定することなどが必要かと思いますが,しかし,恐らくそのようなお金の面で改革することについては,様々な状況を考えると制限がありますので,超過勤務に対してはしっかりとした代替の休みを確保するというアプローチも極めて重要になるのではないかと思います。変形労働時間制の問題などもいろいろ議論の余地もあるかと思いますが,その際には,長期休業期間の働き方をどうするかということは,当然避けて通れない検討課題なのかと思います。
 いろいろなことを検討していった場合,恐らく現行の給特法の様々な規定と抵触するような問題が出てくるかと思いますが,その際には,やはり給特法の廃止を含めた様々な見直しということが当然課題に上ってきていいのではないかと思います。給特法というのは非常によく考えられた制度だということで,肯定的に評価する方もいらっしゃいますし,また私のように廃止論者もいますので,評価は一様ではないということは,私も分かっていますが,ただ,給特法が制定された1971年当時と現在を比べると,余りにも教員の働き方に関わる環境が変わってきていますので,恐らく何らかの見直しということが避けて通れないのではないかと思っています。
 以上のことも含めて,働き方改革については初等中等教育分科会としてもしっかり議論していきたいと思います。よろしくお願いします。

【北山会長】
 ありがとうございました。それでは,御意見,御質問があれば,お願いします。
 篠原委員,お願いします。

【篠原委員】
 以前にも申し上げたのですが,教えていただきたいことがあります。官邸が行っていた働き方改革実現会議で教職員の労働時間,労働超過勤務の問題がストレートに取り上げられてない理由は何でしょうか。議論はあったけれども,最終的には外されているのでしょうか。あるいは,別途教職員については検討するだろうという前提に立って議論から除かれているのでしょうか。なぜあそこに落とし込まれていないのか,私,不思議でしようがないのですが,もし分かったらその点について教えていただければと思います。

【藤原初等中等教育局長】
 政府の働き方改革実現会議におきまして教員の勤務時間問題が議論されていない理由につきまして,私ども明確にはきちんと把握をしていませんが,教員の中心として公立学校の教職員があり,基本的に地方公務員です。その問題を議論するとなると,一般職地方公務員などといった地方公務員全体の議論も関連してくる。さらには地方公務員を議論するのであれば,国家公務員はどうするのだというような議論にもなります。全体の公務員の議論の取扱いについてどのようにするかということが,まだ政府全体の方ではきちんと整備されていないということがあるので,特に公立学校の教員の問題も,そこでは議論はされていない経緯としてあるのではないかと思っております。
 また,これまで内閣官房の事務方,また与党の政調の幹部とも議論させていただきましたが,先ほど私の方から御説明申し上げた公立学校の教員の勤務実態調査の結果を受けて,今後文部科学省として早急に政府全体の議論も見ながら,今後の対策を考えていくという,文部科学省のスタンスを説明したところ,その方向性でまずは進めるようにということになっている状況でございまして,中央教育審議会での御審議をお願いしたということでございます。

【篠原委員】
 働き方改革実現会議では,公務員全般も取り上げられていないのですか。

【横倉委員】
 公務員は労働法の対象外なので,取り上げられていません。

【北山会長】
 それでは,志賀委員,お願いします。

【志賀委員】
 これまでも教育現場が限界にきているというのは,ここで何回も議論されていましたし,林横浜市長は,横浜市内の小・中学校の教育現場の厳しさを何度かお話されていました。それを真っ正面から取り上げられるということで大変重要なテーマだと思いますが,通常の企業で申し上げると,要するに生産の現場が完全にオーバーフローしているという状態ですから,そこに設備投資をして省力化をするのか,人を補充するかという判断ですね。そのような意味で考えると,両方ともお金の要る話になります。
 ですから,この現状を見て見ぬふりをしてお金を出さないということは非常に悪化していくということなので,国としての方針,例えば今,高等教育の無償化が議論されていますが,そのリソースを小・中学校の現場に充てるのか,あるいは,今高齢者から若者へという予算のシフトというのも言われていますが,国全体としてそのような大きな枠組みの中でリソースのシフトをしないと,いわゆる一般企業で経営者が頑張れ頑張れと言って,そこの現場の従業員の善意とロイヤリティに支えられた現場というのは,やはり一言で申し上げると気の毒でしかないですし,そこが分かってこのような中央教育審議会で議論するのであれば,先ほど申し上げましたとおり,速やかに設備投資をするのか,人員を増やすのかというような対策をとって,予算のシフトを行うべきだろうと思います。そのような最終的な方向性を持った形にしておかないと,最後まで善意と好意といった精神論で頑張ってということにしかならないだろうと思います。

【北山会長】
 先ほど御説明がありました教育再生実行会議の十次提言にも財源の話が盛り込まれていましたし,少し前に取りまとめられた第八次提言も財源に関する提言だったと記憶しています。また,次期教育振興基本計画に向けた検討においても,3大テーマの一つとして財源の在り方について議論することとなっています。このように,財源の話は常に出てくるのですが,今おっしゃったとおり,非常に重要な論点だと思います。
 それでは,帯野委員,お願いします。

【帯野委員】
 ありがとうございます。私は企業人として,組織というのは小さなところから見直さないと変わらないと思っています。業務の中で,小さな無駄を省いて,それを積み重ねていくことしか業務改善というのは成功しないと思います。そのような意味で,頂いた資料の中には,既に各都道府県,市町村で,かなりの学校で業務改善の方針を出しているということですが,では具体に学校現場でどのぐらいパソコンで出勤管理がされているか。朝学校に行って,管理者がパソコンを開くと,どの先生がどのぐらい残っていることを一目に見ることができないと,そこも管理できないと思いますので,そのようなところにICT,ITの活用の余地はあると思います。
 それからこの間もある学校に見学に行きましたところ,先生がテスト問題を作って自分でプリントアウトして,前から順番に配って,後ろから順番に回収して,それを持って帰って採点をして,パソコンに入力をして,それをまた生徒に一人一人返すことをされていました。採点をして,パソコンに入力をする,テスト問題をプリントアウトする,この合計時間は30分くらいかもしれませんが,この30分が年間積み重なっていけば,相当大きな時間になると思いますので,このようなところでITの活用というのは随分大きな役目を果たすと思います。ただ,教育委員会が指導しても,個々の学校現場で何が無駄なのかというところを,実際に働いている人は見えなくなっていますので,ある程度,民間のコンサルティングなどを入れて,5分でも10分でも無駄なところを見付けて積み重ねていく。全国にコンサルティングを入れるという大きな予算かもしれませんが,恐らく1週間もあればできることだと思いますし,全体の教育予算の中では小さな予算だとは思いますので,是非そのような小さな無駄を発見するという第一歩から始めるべきではないかと思っています。
 それから,大きな制度を改善するということになれば,先ほど小川副会長がおっしゃったように,教職調整額は,私は廃止するべきだと思っています。調整額を廃止して,超過勤務手当を支給する。この資料では,小学校で64.7,中学校で66.4分の超過勤務が平均として出ていましたが,超過勤務していない先生もいるわけです。そうすると,やっている先生はもっとすごい超過勤務時間になっているわけですね。超過勤務手当を支給することにして,そのためには残業届を出させて必要な残業は許可をして,必要でないものは許可をしないといった制度で,やればやるだけ報いられるというようにしなければ小手先の手当を付けたぐらいでは改善しませんので,やはり抜本的に制度を変えるのであれば,教職調整額の支給をやめるべきだと思います。
 平成19年の今後の教員給与の見直しの在り方については,ワーキンググループに私も参加しましたが,その中でもやはり教職調整額を廃止した方がよいのではないかという意見も出ておりましたし,それから10年,随分教員の意識も変わったと思いますので,今,これを見直すべきではないかと思います。
 それからもう一つだけ申し上げます。このようなことを申し上げてしまっては失礼ですが,教育の無駄も省くべき,見直すべきなのではないかと思います。教育に無駄がないと思われるかもしれませんが,私は勉強が嫌いで,小学校の頃から,親にこれを今勉強しておかないと大人になったら困ると言われて嫌々勉強してきました。ですが,大人になって社会に出て,世界で仕事をして,ローマ字を知らなかったから自分の人生困ったということは1回もありません。特に小学校で習った訓令式,「tokyo」の後に長音記号を付ける,それから母音の後には「n」と「y」でアポストロフィを付けるといったことをしたことがありませんし,日本語を固有名詞以外でアルファベットで書いたという経験も一度もありません。このような無駄な授業が小学校の新しい指導要領では3時間になっています。
 たった3時間かもしれませんが,先生の準備時間も含めて,このような小さな無駄を省くべきだと思いますし,これは,無駄なだけではなくて,混乱を招きます。小学校3年生で訓令式の英語,つまりローマ字を教える,そこに今度は英語の教育が入ってくるわけですから。現在使われている教科書を見ると,「犬」や「猫」を,ローマ字で書かせています。しかし,英語の時間は既に「cat」も「dog」も習っているわけですから,子供に混乱を招くような教育,ましてやそれが無駄なものであれば,改訂を出したばかりではありますが,やはり小さなところから一つ一つ教育の方の無駄も見直していくべきではないかと考えます。以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。生重委員,お願いします。

【生重委員】
 私には,三人子供がおりまして,長女が中学の教員,長男が小学校教員,次男が中学の教員になりましたが,部活動の副顧問で,ずっと年間5日間しかお休みがもらえず,ついに学校の最寄りの駅に着いて吐き気がして学校に行けなくなり,鬱症状で半年間休業したのですが,本人は休業中に給料をもらうことが心が痛くて嫌だと言って退職しました。公務員を辞めた後に,正規職員ではないのですが,今は私立の高校で数学の教員として働いております。小学校の教員をやっている長男も,朝の5時前に出まして,帰ってくるのは,大体9時にはなるかなという感じですね。本人は,早朝出勤することによって仕事がはかどるから,早朝に行きたいと言うのですが,そのようなここに出ている実態以外の,やると思っている人間に仕事が回ってくるというのは,これは民間企業も一緒かとは思います。
 昨日,私はコミュニティ・スクールの地域の会議に出ておりました。そのときにも,校長先生,副校長先生から,今年の夏は,勇気を持って10日間学校を閉めますという宣言がございまして,それはすばらしいと我々運営委員は拍手喝采をいたしました。ちょうど昨日も話し合ったのですが,教員の勤務実態を保護者に理解してもらう必要があると思います。いつ来ても,いつ電話をかけても,いつでもどこでも先生がいると思っている今の保護者の有様を変えなければなりません。
 それと同時に,細かいことなのですが,業務の洗い出しに,地域の行事の洗い出しというのも是非入れていただきたいと思います。地域の行事は小学校の土日をなくす,最大の要因です。地域の方は,全てに先生たちに来てほしいと思っています。ですが,それらの行事に出ない方は出ず,出る方は永遠に出続けることによって,ひずみが生まれてくるのではないかと思います。
 それから,本日の資料にもたくさん書いてありましたが,子供の問題というのは,家庭の問題でもあります。今,「家庭教育支援チーム」が徐々にあちこちに生まれ出しているのですが,その機能を生かすために,やはり是非地域において保健福祉部と教育委員会の更なる連携が必要だと思います。研修の講師で行ったときに,今,保健福祉部と教育委員会が連携を果たせているかと聞くと,ほとんど余り意思疎通がないのです。ですが,生まれたときから関われる家庭教育支援チームがあって,孤立しない子育てを支援する,小学校入学までサポートしていくことは,小さなエリアの中では実現可能なことなので,是非そこのところもお話合いの俎上(そじょう)に乗せていただきたいと思います。それから,不登校になった子供たちのケアカウンセリングについては,山野先生の方がお詳しいのですが,その辺りはもっと進めていって,個人にどう向き合えるかが必要だと思います。これは,学校の教師に今,求められています。
 私は,昨日も学校で申し上げたのですが,私の住んでいる地域では地域連携を先進的に進めている学校エリアなのですが,それでも勤務実態を見ると,本当にひどく多忙だなと日々感じています。新しい学習指導要領を是非実現して,これからの未来を担う子供を育てていくためにも,チーム学校が大切であるとか,それからますますカリキュラム・マネジメントをしていくのだとか,先ほどおっしゃっていた主体的,対話的,深い学び,アクティブ・ラーニング手法を用いるのだという学校現場が置かれるこれからの状況は,新たに研修や養成を行うというだけで補い切れる問題ではないのだと,私は感じています。
 資格ありの人がやれる仕事と,資格がなくてもできる仕事といったような考え方で,例えば朝,校門で安全指導をしてくれる方は資格がなくてもいいと思います。そして,ひどい話ですが,うちの子供が傘を忘れたので学校に届けるから,うちの子供の机に傘を届けてくれと担任に電話してくるといった話もあります。この状況を変えないと,何も変わりません。そのような具体個例の実態もたくさんありますが,給食指導など,とにかく資格がなくてもできる仕事も含めて,もう一度ちゃんと一から細かい実態を是非聞いていただき,見直しをしていただきたいと思います。先生たちにもゆとりの時間が生まれない限り,チーム学校の実現はあり得ません。孤立してしまっている先生たちが全国にどれだけいるかということをよくお考えいただいて,いろいろなことをより実現して,より良い教育を実践していくためには,先生たちにとって働きやすい環境,少しでも時間的ゆとりがあるということが大切なのではないかと思います。子供の人数が減っているから教員を減らすという図式はおかしいと思います。今の実態に合わせて,学校現場により多くの人の手が入っていくということを実現していってほしいと思います。
 では予算はどうするのかという話になるのですが,国からはもちろんなのですが,自治体ごとに,統合できない状態が大分続いているところがまだまだあります。適正な一小学校,一中学校の人数基本はどの人数なのかということを示していただければと思います。ただ,これは過疎エリアのことは含んでおりません。そのようなところで学校教育が受けられることは,重要だからです。ただ,中規模都市の中で,自分の学校に対する思いが強過ぎて,統合できないという状況が続いているところをたくさん知っています。ランニングコストを考えても,一定の適正規模で学校が運営できるようになることで,そこで浮いたお金が余剰人員として雇用することにもつながり,そこに新しい人材が労働できる環境も実現できるのではないかと思います。
 今,部活の審議も始まっていると思いますが,是非もっともっと掘り下げた部活の実態を捉えて,新しいこれからの人材を育成するという観点から,考え直していただきたいと思います。私からは以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,山野委員,お願いします。

【山野委員】
 前回,欠席させていただいたので初めて参加します山野です。よろしくお願いします。
 本日,スクールソーシャルワークの資料を配付させていただきました。今もお話に出してくださったのですが,家庭教育の支援チームの検討についてもずっと座長もさせていただいていました。今の議論で,皆さんもおっしゃったところについて,私も申し上げたいと思っていたのですが,一番問題なのは,学校の中にいじめ問題や不登校,虐待という相談を,先生方とスクールソーシャルワーカーが相談するにも,先生が腰を落ち着けてケース会議をするということもなかなか難しいことです。私もたくさん学校に入るのですが,「立ちカンファレンス」と呼んでいるぐらい,廊下を歩きながら相談するというのが実態でございます。
 そのような中で,現在,学校教育法の施行規則も改正されて,学校職員にスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーも位置付くということが先ほどの御説明にもありましたが,4月から新たになったところでございます。コミュニティ・スクールの関係も,地域学校協働の関係も,社会教育法等が改正され,本当に第一歩が踏めたのではないかと思っています。教育再生実行会議にもプレゼンテーションに行かせていただいて,いろいろと取り入れていただいたということは,本当に感謝しております。
 ただ,資料2‐2の13ページに並んでいるいろいろな支援の方,専門職だったりボランティアだったりということはあるのですが,対等ではないのですね。先生方は正規職員でいらっしゃる一方で,カウンセラーやスクールソーシャルワーカーは週1回などで来る方なので,教師にとってもあてにできないという形になりますし,先ほど小川委員がおっしゃったように,たくさんある教員の仕事をどのようにきちんと整理して,これ以上やってはいけないというぐらいの法的な規定をしないと,先生方はどんどんやっていかざるを得ません。いかざるを得ない毎日の状況で,今までやっていた自分の仕事を誰が担うのかということが明確でないと,安心して業務を減らしていくことができないのではないかと思います。
 そうすると,では13ページに書かれている人たちが担っていけるのかとなると,対等ではない中で,どれぐらい実現するのだろうというのが非常に危惧されるところです。教員の働き方や業務整理するためには,今ある部分をどこでどう担うのかということも,やはり考えてきれいに出していかないといけないのではないかと思います。
 もう1点だけ申し上げます。地域であったりスクールソーシャルワーカーであったり,いろいろなところに関与していただいた学校で,プリポストでタイムスタディ調査を行いました。何が変わったのかというと,今日の資料のどこかにもありましたが,個別指導や集団指導というのが,先生方,マイナスになっていました。そのような一つの自治体ででも調査をして,例えばここが変わっていくというような調査も必要ではないかと思います。今取り組んでいる中で,いろいろな支援を入れているところの何が変わっていくのかというエビデンスで見ていく必要がありますし,いろいろな支援を行っている人たちと対等関係をどうやってもたらすのか。それから,学校に地域が入るなど,いろいろな人が入るということに,学校はまだまだ負担感を持たれています様々な制度や事業は教師を助けようと思ってたくさん入っていくわけですが,それはまた一つマネジメントする仕事が増え,教師の仕事になり,負担感にもなっていくという,すごく残念なことになっています。せっかく入っているのに,1回も利用されていないというようなスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーもいます。
 したがって,そういった教員の働き方を整理するときに,どのようにつないでいくのか,対等,正職化していくというのはもちろんなのですが,どのように対等性を作っていくのか,どこまでが校長の管理なのか。先ほどもおっしゃった,地域の活動まで校長の管理なのか。この資料にもありましたが,学校プラットフォームということが話題になっているのですが,全て教師が担わねばならないという感覚になっています。したがって,是非法律などで規定をして,整理するときに,何が校長の権限で,ここから校長責任ではない,地域活動はそうではないということや,専門職が機能していくところはそうではないということを並行して作らないと,いろいろな仕事を共有できないのではないかなと思いました。以上です。

【北山会長】
 では,横倉委員,お願いします。

【横倉委員】
 日本医師会会長の横倉です。今日お話をお聞きしたことで,二つ大きくテーマを分けてお話をさせていただきます。
 一つは,近未来の改革ということで,教育とは基本的に我が国の次世代を担う子供たちをどう教育するかという視点が不可欠であり,その議論をもっとすべきではないかということです。そして,直近の改革として,そういう視点で教員の働き方をどう考えていくかということだと思っています。先ほど志賀委員が,学校現場は一般企業では生産のオーバーフローの状態とおっしゃっていましたが,その中でどのような投資をしていくかということを,ここで十分考えておかなければなりません。そして,教員の働き方改革という直近の問題と,子供たちを取り巻く環境というのが急速に変わり,少子・高齢社会が急速に進んでいることと,家庭における共働きが非常に増えているような社会環境の中で,従来の教育の在り方を少しずつ改善するだけで本当にいいのかどうかということを,これは少し長い目での検討を早急にすべきではないかと思います。
 また,教員の改革のところでは,先ほど孤立している教員のお話が出ました。実は50人以上教員がいる学校では,産業保健の担当の医師を置くようになっています。産業保健ではメンタルヘルスケアを見ていかなければならないわけであり,メンタル面で病んでおられる教員が今,急速に増えている中で,その対応についても,もっとしっかりやっていかなければならないわけです。そしてまた,50人未満のところに関しましては,健康相談員をしっかりと置いていかなければなりません。このように教員のサポートという意味で産業保健の活動ということにも注目をしていく必要があります。そのようなことが,ひいては教員の働き方の改革に大きくつながることであると言えると思います。
 それと,先ほど教職調整額を廃止するお考え,また継続する両方のお考えがあるとお聞きいたしました。今から50年前ですが,私が医師になろうかと思ったとき,いわゆる「でもしか先生」ということが社会で言われまして,教員になりたいという人たちが,「でもしか先生」と言われる頃から増えてきたのは,教職調整額が設置され,教員はすばらしい職業であると社会に受け止められたというのも事実でありますから,この調整額をお考えになるときは,一般の労働者よりも少し上乗せする,教員ならではの給与体系をしっかり作っていただきたいと思います。以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。善本委員,お願いします。

【善本委員】
 現場の公立の中学校と高等学校の中高一貫教育校を預かる者として,現場からお話をさせていただければと思います。
 私どもにとりましては,教師の働き方改革をこのように御議論いただくことは非常に有り難く思いますし,私も教師になって35年目ですが,ようやくこのときが来たかという思いもございます。総論的に申し上げますと,教師の仕事の中で,いわゆるルーチンワークが7割,時の教育課題や突発的なこと,様々な事件や事故が起きて,その再発防止のためにやらなければならないことが3割というように考えますと,このときの教育課題など3割の部分が変化していって変わっていくといいわけですが,実態としては,その都度その都度何か起きる度に行われる様々な施策が,反永続的に積み上げられていくわけですね。ですから,それがビルド,ビルド,ビルドでスクラップがないものですから,そこの部分が非常に重くのしかかっているという印象が,現場の印象でございます。そこの部分は,要するにスクラップ・アンド・ビルドするマネジメントサイクルを作っていくということが非常に大事なことではないかと,現場の実感としてはあります。
 それから,部活動について大変気に掛けていただき,部活動指導員の制度も制度化されたということは,大変有り難いことです。一方で学校の現場には,専門的な部活動の指導技術を有して,高いマネジメントを持って部活動指導を行い,それにやりがいを強く感じている教職員もたくさんいます。例えば,部活動指導員のような制度を設定していただいた場合には,そういった専門の指導ができない部活動に対して,まず配置するということが当然学校現場のニーズになりますので,専門指導できない部活動にそういった方たちに入っていただく。そうすると,もともと長時間労働の当事者であった高いモチベーションを持って部活動を指導している人たちは,結局取り残されるという問題が出てきます。ですから,そのような教職員に対してどのような対応をしていただくかということも,併せて考えていただければと思います。
 それと同時に,外部の方々に入っていただくということは大変有り難いことです。地域で育てていただくということも,本当に私たちとしては有り難いことですが,外部をつなぐコーディネートの役割を果たすのが,現場の実態としてはほとんど副校長・教頭になっています。そうしますと,今回の数字を見ても,学校現場で最も長時間働いているのは副校長・教頭ですが,この勤務時間の中には,例えば勤務時間と数えられないものがございます。代表的なものがPTA活動への対応で,これは勤務と認められていません。それから,地域行事への参加といったことを考えると,実態としては副校長・教頭の勤務が最も改善すべきところであり,これらのことが一端となって,私ども東京都でも,管理職選考の志願者が年々減少していて,管理職のなり手がないということで非常に苦労しています。
 そういった意味で,マネジメントを正常化する意味でも,このような副校長・教頭の勤務の軽減。特に法令上ももちろん「校長を助け」ということなのですが,この「校長を助け」の言葉は,当然学校運営上の助けでなくてはならないのですが,これらが例えば,非常にさ末な事務実務を肩代わりするようなところにもなっている実態がございます。私の学校には二人の副校長がおりますが,二人に対しては,「私は自分のことは自分でやるので,そういうことはやらなくてもいいです。マネジメントに注力してください。」と言っています。一方で,そういった実態もあるのと,また,学校の中で分掌に位置付けられない,いわゆる非常に隙間の雑事のようなものが副校長の実務となっている観点があって,特にそういったことをそつなく行う副校長・教頭が教職員から頼られたり,優れた人材であると判断されたりするような実態もありますので,そういった副校長・教頭の働き方の改革ということも大変重要なことと思います。そこを意識していただければと思います。以上でございます。

【北山会長】
 それでは,渡邉委員,お願いします。

【渡邉委員】
 日本経済団体連合会で教育問題委員長を務めております渡邉と申します。ほかの方のお話とも重なるかもしれませんが,働き方改革を何のためにやるのかという視点が非常に重要なのだろうと思います。日本型の学校教育の特徴として,知・徳・体の調和を図ってきたというような視点があると思いますが,将来的にこれを自立・協働・創造の理念を目指す学校運営に重ねていくという視点で,この働き方改革についてもアプローチする必要があるだろうと思います。したがって,単純な業務削減というものをやればいいという話ではないのだろうと考えます。大変矛盾する話なのですが,そのために本日の議論のいろいろなところに出ておりますチーム学校という考え方を,もう少し発展型で考えていく必要があるのではないかというような気がいたします。
 資料2‐2の7ページや,資料3‐2の9ページに,このチーム学校等についての記載がありますが,特に資料2‐2の7ページが分かりやすく,チーム学校には三つの要素があるのだろうと思います。一つ目は,チーム学校という概念を,これからの新しい時代に対応する教育の向上のために使っていくということであります。教師はアクティブ・ラーニング等の新しい要素に対応していかなければならないので,こういった新しい業務に対応できるだけの集中した環境整備が必要だという視点で,このチーム学校を使うということだろうと思います。したがって,教師の姿というものも,従来どちらかというと個人型,プロフェッショナルを目指す姿というものから,プロフェッショナル・アンド・チームワークを目指す姿ということに変わっていく必要がありますし,学校自体のマネジメントも,こういったプロフェッショナル・チームワークを重視するマネジメントに移っていく必要があるだろうと思います。
 それを行うためには,幾つも各論が出ております事務職員との役割分担の明確化や,部活動あるいは英語教育の外部人材の活用など,こういったものを一緒に行わなければ,プロフェッショナル・チームワークというのはなかなか難しいだろうと思います。
 それから,二つ目の要素が,この右側にある地域や民間の人々と学校が連携・協働する,コミュニティ・スクールとしての視点から見たチーム学校なのだろうと思います。これも非常に重要な要素だと思います。
最後のもう一つは,下の方に書いております,セーフティネットの視点でチーム学校を考える必要があるだろうということです。これは先ほどお話にあった,スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなど,セーフティネットの視点からのチームワークということだろうと思います。
働き方改革の各論を進める場合も,こういった形で,チーム学校を将来の新しい時代に対応した発展型にしていくというような視点から,こういった理念に合ったような形なのかどうかを見ていく必要があると思います。そのためには,資源投入の話がありましたが,学校事務のICT化や,それから民間で今,働き方改革をいろいろと行っていますが,そこで使っている民間のノウハウをもっと取り入れて効率化を図るということが,条件整備においては非常に重要になるだろうと思います。そういった面では,またいろいろな意見交換をさせていただければと思っております。以上で終わります。

【北山会長】
 ありがとうございます。それでは,天笠委員,お願いします。

【天笠委員】
 三つ申し上げたいと思います。まず一つ目なのですが,今回,これから議論を深めるに当たって,様々なデータを出していただけるのではないかと思うのですが,その際,教職員の勤務実態の実情というのを丁寧に現状把握ができるようなデータをお出しいただけることをお願いしたいと思います。その「丁寧」という意味は,既に我々は,たくさん知っているということが事柄の前提になるのかもしれませんが,それはそれとして,例えば1日単位で先生方は,どのような姿をそれぞれの学校,地域で展開しておられるのか,1週間単位で見るとどうなのか,あるいは1月単位で,あるいは学期単位で,年間単位で,それぞれそのような単位で見たときに,それぞれどのような姿として現れてくるのか,あるいはどのようなデータになってくるのかどうなのか,それを重ね合わせながら勤務の実情をもう一度しっかりと把握するということが議論の前提になってくるのではないかと思いますので,どうぞその点で,データの提示をよろしくお願いしたいと思います。
 それから,二つ目でありますが,当然各学校の先生方の勤務の状態を改善するという視点でありますが,そのためには,学校と教育委員会との関係という視点を見落とすことはできないのではないかと思っております。もろもろの現象というのでしょうか,様々な眉をひそめるような現象等々は学校として発生するのですが,実は教育委員会に内在するものがあるということも相応にあるのではないかと思います。したがって,学校の勤務の状態等々を改善するというのは,実は教育委員会の方に目を向けていくことが大切だということもあるのではないかと思いますので,余り学校単位,単位学校の中だけに視線を注(そそ)ぐということよりも,常に教育委員会と学校,とりわけ先ほどのデータは,市町村教育委員会と学校との関係にいろいろな課題がありそうだなという示唆のあるデータが出ていたように思いましたので,その辺りのところを是非これから掘り下げていければと思います。
 最後三つ目ですが,この間,中央教育審議会等々の答申でも,学校の自主性・自立性,校長の裁量の権限の拡大,それぞれの学校で特色を持ってもらうなど,様々な提言をこの場を通して発信してきたと思います。それがこの10年,20年振り返ってみたときに,結果としてどのような今日であるのか。私は,学校が自主性・自発性,自立的な機関,組織であるということは基本的に大切なことだと思いますし,そのような提言をこれまで重ねてきたことについては高く評価している一人でありますが,それに見合う条件整備や資源の投入,あるいはそのような学校の自主性,自立性をより担保する,発揮する,そのような視点でうまくかみ合ってきたのかどうなのかというようなこと等が一つのテーマであって,今回の勤務の在り方というのも,そのような意味においてそれぞれの学校の自主性,自立性をしっかりと担保した,またそのような方向でこの解を見つけ出していくということが大切ではないかと思っております。
 その自主性,自発性,裁量の中身は何なのかというと,やはり学校の教育課程をそれぞれ編成して実施する,それぞれの学校において,そのような子供たちに一番近いところで教育を実施していただける,そのような環境を整えるためのこの度の先生方の働き掛けの条件の整えといったようにこれを私は位置付けたいと思いますので,また皆さんと一緒に議論させていただければと思います。以上です。

【北山会長】
 菊川委員,お願いします。

【菊川委員】
 実務の観点から1点申し上げます。資料2‐2の13ページを御覧ください。教員以外の専門スタッフの資格のところを御覧いただきますと,下半分はなしということです。これは先ほどから意見が出ていますように,学校の中でこのような専門スタッフが対等にやっていくためにも,必要なところには資格を「望ましい」でもいいですから,設定していくことが大事ではなかろうかと思っております。それは,国家資格や大学の科目履修制度,検定試験などが考えられます。資格が必要でない場合もありますが,必要なところには資格をきちんと明示していくということが大事であると思っております。

【北山会長】
 ありがとうございます。それでは,次に恒吉委員,お願いします。

【恒吉委員】
 比較教育学を研究している者なのですが,21世紀の教育改革でもって,認知的と非認知的な教育を統合的に子供を見ていくことは,非常に各国で言われていることで,そういう意味でも,日本の統合的な教育というのは評価をされているものだと思います。ただ,だからこそ持続可能な制度にしていくということが非常になおさら大切なのだろうと思います。
 先ほどから出ています,組織の無駄を省いていく,また意識を改革していく,もっとやればいいというものではなくて,意識改革をしていくというのはもちろん大切なのですが,やはり仕事の量が増えて,そして実際,複雑化している。数値で見やすいのは長さなのですが,長さだけでなくて内容の問題がやはりあると思うのですよね。和やかに話していたら1時間も長くないかもしれませんが,責められていれば10分だって非常にストレスがかかるということもあり,そういった中で,対応できる範囲を超えていくという中では,やはり人を充てていくということがどうしても必要だと思います。そういう意味では,先ほどから出ているようなリソースのリロケーションというのは議論しないといけないと思います。
 そしてその中で,バックアップスタッフの話や,資格の話もありましたが,やはり専門性を認めて,それも教員だけでなくて,地域や保護者も専門性が分かる形で認められる立場になり,そして安定したキャリアとしてそれが可用であるという形に,コアなバックアップスタッフがならないと,実際は学校の中でやらなくてはいけないことができず,外の地域や保護者に向かって何かを発言しようとしたときに,やはり専門性だとか安定した立場でないと,担任や管理職が出ていかなければ駄目になってしまい,実際は仕事量が減っていかないことになっていくと思います。
 あともう一つは,地域や学校によってニーズが違うので,バックアップスタッフにしても,そういったニーズに柔軟に対応できるようなきめ細かい対応,制度になっていけばと思います。以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。村田委員,お願いします。

【村田委員】
 ありがとうございます。私の方からは,大学の視点で少し申し上げます。基本的に今回の教員の働き方改革は,渡邉委員がおっしゃっているように,正に大学含めて,生徒,学生が将来どう育っていくのかという,大きな中に位置付けられるのだと思います。例えば今,恒吉委員も少しおっしゃっていましたが,本日頂きました資料の中に,どれだけ教員が働き,業務以外でやっているのか,いわゆる業務の中でやっているのかという資料がございますが,特に極端に大きいのが,土日のクラブ活動なのですね。先ほども少し話が出ていましたが,これは例えば,ある部分は超過勤務で,しかしこれはむしろアウトソーシングするというような考えをしていかないといけないだろうと思います。
 2点ございます。1点目は,高大接続の観点から,例えばクラブ,部活なのですよね。どこかでチーム学校,あるいはもう一つは異年齢の交流というのがありましたから,例えば地域の大学の学生がクラブの面倒を見るといったようなことをすれば,この部分は随分大学の学生にとっても,それは自分の知識を子供たちに教えるということは大きな勉強なのですね。教えることが一番大きな学びですから,そのようなこともできるのではないかと思います。特にここは1時間,2時間で極めて大きなところがありますから,ここを解消できるというのが一つのアイデアです。
 それから2点目,大学の視点から申し上げたいのは,先ほど少しございましたように,費用が変わってくるであろうということです。これも御存じのように,GDP比で,いわゆる初等中等教育の公財政支出は,OECDの平均以上でございます。他方,高等教育と幼児教育はOECDの中では最下位に近い状態にございますので,その辺りのバランスも含めてどうするかを考えていかないといけないのではないか。つまり,トータルでどのような人材を育てていくかということを考える中で,この制度化を考えていくことが必要ではないかと考えております。以上でございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。では,寺本委員,お願いします。

【寺本委員】
 今,議論がありましたPTAの立場として,部活についてやはり同じように思っています。土曜日,日曜日どこか1日休みましょうといってもなかなか休みが取れない,試合や大会があるからという状況の中で,先生も一生懸命やられています。先ほどお話が出ていなかったのですが,実は部活の中で,生徒指導上部活が必要だとおっしゃって,一生懸命頑張っていらっしゃる学校や先生がお見えになる。部活と生徒指導,これを一緒にしてしまうと,生徒指導はどうなるのかということがあるので,ここは一つ部活の中身と生徒指導に真摯に向き合って,専門家を入れるなり,そういった方々で対応するなりということをしていかなければならないのではないかと思っています。
 それから,大会等も,いわゆる中学校ではいろいろな規模の大会があるので,いろいろな大会に出してあげよう,出たいといった思いがあるのですが,これは総合的に見て,大会や試合の数も精査をしていかないと,恐らく休みは取れないのだろうなと思っています。それからまた,保護者の過熱化についても,そもそも試合や大会の数が減るからこうだよという話もしていけば,それはそれである程度一定の理解はされると思っていますので,この辺りも含めて総合的な精査が必要であろうと思っています。
 それから,専門家ですが,学校の先生の仕事の中身をしっかりと見直すことで,専門家の方ということの意見が出ています。これは,病院で例えて申し上げると,正にドクターが全部見られないから専門家の方がたくさんお見えになってチーム医療をされているようなケースがそうだと思います。同じように,これは子供たちを見て,しっかりとチームで,学校で対応していこうというなら,教員だけではなくて様々な専門家をもっと入れないとできないというのは,ほかの現場を見ても明らかなことですから,このこともしっかりと議論の中に入れて,どんな専門家が必要なのか,又はその専門家の資質もどれだけ必要なのかというところもやっていただけると有り難いと思っています。
 それから,先ほどPTAの話をしていただきましたが,PTAが業務か業務でないかという議論もあるのですが,実は私たち自身もPTAは無償でやっているわけですから,そのような点では業務ではございません。実際にあった話を申し上げますと,PTAが,学校の中で一つの教室をお借りして,そこで会議を行おうとした際に,案内の看板を校長先生が立てようとしたときに,段差でつまずかれて大きなお怪我(けが)をなさいました。学校の本来の義務時間の中なのですが,PTAのために看板1個出して転んで怪我(けが)をしたら,これは公務災害ではないという認定になりました。このようなことも含めて,きちんとした議論が必要ではないかと思っています。以上です。

【北山会長】
 それでは,時久委員,お願いします。

【時久委員】
 三つ簡単に申します。一つは,各学校や各市町村教育委員会等でできることは,今精一杯やっているということです。実は働き方改革が出てきて,それまでも課題は浮上していたわけですが,今,日本中でそのような意気が高まっているということもあって,例えば部活動の休みの日を作ったり,それから定時に帰る日を設けたり,ICT化をしていったり,考えられるだけのことで,学校や各地区でできるようなことは精一杯やっているという機運が出てきたことは,非常にいいと思っています。
 二つ目ですが,人材の配置のところで,コミュニティ・スクールや地域学校協働本部,部活動のことなど,いろいろな施策を文部科学省も出してくださっています。その辺りを,地域のボランティアに今,頼っているところもありまして,人員の配置というときに,やはり予算的なところがかなり必要になってきます。コミュニティ・スクールにしても,学校は応援はしてくださりますし,ボランティアの方,部活動も応援はしてくださるのですが,仕事を終えた後の地域の方に頼ることについて,今,機運が出てきてやり始めたときはいいのですが,長続きがするかどうかということもあります。お金をかけ過ぎることもできませんので,その辺りの人材の配置のところは,今後大きな焦点になると思います。
 三つ目は,最終的には最初にお話しいただいた学習指導要領の方向に向かって,子供をいかに育てるかというところですので,この辺りのところをいつも思いながらやっていきたいと思っているところです。

【北山会長】
 ありがとうございます。中田委員,お願いします。

【中田委員】
 三つほど申し上げます。一つは,この働き方改革というのは,勤務時間の問題というレベルだけでなくて,教員の専門性とは何かということを改めて問い直す作業と重なっている印象を受けています。例えば,確かに部活動や様々な地域行事に関連して出掛けて行くという場合がありますが,そのような教員の仕事はなぜずっと今まで行われてきたのかと考えたとき,それは子供の成長を多面的に理解し,多面的に応援していく環境を整えていくために必要とされてきたということがあるのだろうと思います。だから,その大切さを損なうことなく,どう今後に継承していくかということを,様々なバックアップ体制を整えながら確保していくというのが大事なところだろうと思います。
 そうなりますと,様々なバックアップ,様々な専門家の力を得ながら,単に機能分化をすればいいという話ではないだろうと思います。様々な力を借りながら,子供の成長ということを中心に置きながら,どう連携し,それこそ子供の成長を支えるチームとなっていけるのかというところが,次の大事なポイントだと思います。今まで以上に新しい仕組みを作るのであれば,移行期間も今まで以上に人的投資というのは,ある意味必要になる場面は多々あるのではないかと思っています。これが二つ目です。
 結局,分化すればいいという話ではなくて,もう1回子供の成長を支えるために,それを統合化し,互いの役割をどのように連携していくかというところを作らないと,ばらばらになってしまうのではないかと思います。その意味でも,既にその他の委員からありましたが,今どうしてそのような業務実態になっているのか,その必要性が何だったのかというところを,実態に即して改めて捉えていただきたいと思います。
 最後に,そのようにバックアップ体制を取るということが,全国的にどこでも可能になるのかどうかという視点も是非入れて,検討いただきたいと思います。専門性を持った教員として成長を支えるというのは,逆の言い方をすれば,無駄があったから無駄を削(そ)いで集中化するということなのかもしれないのですが,何が無駄なのかというのを考えるのは非常に難しい問題だと思います。改めて子供の成長という視点を中心において,それをきちんと捉え直すということが必要ではないかと思っております。
 東日本大震災復興のときに,子供たちがどう未来を担うのかと思いながらも,ある層の方々からは,どんなことがあっても,やはり有名大学に進学できる競争力を持つことが必要だという声があり,別の方からすれば,今こそ地域の課題を捉え,それを担える複眼的な対応力を身に付けていくことが必要だとする声がありました。「無駄」を捉える際にも何をそのときの判断材料,価値判断の材料にするのかという重要なところがありますので,この点も丁寧に御検討いただければと思います。

【北山会長】
 それでは,最後に日比谷委員,お願いします。

【日比谷委員】
 ありがとうございます。先ほどの寺本委員の御意見と少し重なるところがあるのですが,部活動と生活指導についてのお話がございました。今話題になっていることの中で,部活動への先生の御負担をどうするかというのは非常に大きい柱になると思うのですが,そもそも学校という枠組みの中で,部活動にどのような役割を期待するのかということを少し議論した方が良いように思います。
 もう一つ,資料2‐2の9ページにその話があるのですが,先ほど,中学校ですと土日で1時間以上増えているというようなお話がありましたが,ここで運動部活動やスポーツ医・科学,全国体力・運動能力,運動習慣,スポーツ指導者と記載があるのですが,部活はやはりもう少し全体的に見る必要があると思います。例えば音楽系のクラブ等でも本当に多くの時間を使っているところがあると思いますので,スポーツの話は結構なのですが,もう少しここは全体を見なければならないのではないかと思います。

【北山会長】
 いろいろな貴重な御意見を頂き,ありがとうございます。本日の意見交換はここまでとさせていただきます。
 先ほども申し上げましたように,この諮問案件は今後,初等中等教育分科会を中心に審議を進めていただく予定です。何名かの委員の方には初等中等教育分科会にも分属いただいておりますので,またそちらでも議論を掘り下げていただければと思います。
 それでは,時間でございますので,本日の議事はこれまでとさせていただき,次回の日程について,氷見谷課長から御連絡お願いします。

【氷見谷政策課長】
 失礼いたします。次回の総会でございますが,9月4日月曜日,15時から17時を予定しております。場所は,本日と同じ旧庁舎6階,ここの第2講堂を予定しております。よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 それでは,本日は会議を終了いたします。お忙しいところありがとうございました。

―了―

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