戻る


資料1

「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等」(意見の概要)

   中央教育審議会は、4月11日に文部科学大臣から「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について」諮問を受けた。具体的な検討項目は、1初等中等教育段階までの青少年に対し、学校の内外を通じて様々な奉仕活動・体験活動を充実するための方策、2初等中等教育を修了した18歳以降の青年が、様々な分野において奉仕活動を行えるような社会的な仕組みづくり、3社会人が幅広く奉仕活動等を行うことのできる環境づくりの3点である。
   中央教育審議会総会では、これら3つの事項について幅広く議論を行った上で、生涯学習分科会に具体的な議論を付託した。生涯学習分科会では、総会での議論を踏まえつつ、先の通常国会において学校教育法及び社会教育法の改正法が成立するなど、特に学校の内外を通じた青少年の様々な体験活動の一層の促進方策の検討が緊急に求められていることに鑑み、当面1の事項を中心に、関係者からのヒアリング等を行うなど、検討を進めてきた。今回、総会での審議に資するため、これまでの審議における意見の概要を整理したところであり、今後、総会での議論を踏まえつつ、生涯学習分科会において更に報告に向けた検討を行うこととしている。

 

奉仕活動・体験活動の意義、目的等について
 
(1)検討の視点
       奉仕活動や体験活動は、人間社会の仕組みや人間と自然のかかわり、人間とは、自然とは何かについての知識・認識を体験的に深めることと考えれば、社会人として、人間として学ぶべき義務の一つとして捉えることもできる。
       体験活動は誰のためではなく自分のためにするもの。人は自分が「世話をする」側にまわることで、活力が生じる。他人に貢献するというかかわりを通して、輝くことができる。こうした体験を子どもも大人もできるように教育の中に新しい仕掛け、仕組みを作らなければならない。
       奉仕活動や体験活動を通じて、みんなで地域を支えているという意識を育て、コミュニティを再構築するという視点も重要。
       一般的に、ボランティアとは、1自発性、自主性、2公共性、福祉性、3無償性が特色としてあげられ、特に1が大切にされている。奉仕活動については13を含むが特に3が大切にされている。ニュアンスは人により違いがあるが、奉仕か、ボランティアかという言葉の問題にこだわるより実際の体験を通じて成果をあげていくことの方が重要。
       今回の審議を通じて、「新しい公共」のために私生活主義を克服すべきというメッセージを発することは意味がある。ただし、その場合、奉仕活動等への参加者にインセンティブは与えるが、不参加者にペナルティは科さないことが大事。
       
 
( 2)社会全体での取組の重要性
       子どもの体験活動を意味のあるものにするためにも、大人の奉仕活動を重視することが重要。学校教育での取組を社会人までつなげていくことが大事。教員も地域の一員として地域活動に参加すべき。縦割りではなく、関係省庁とも連携して日本全体でのボランティアプロジェクトを推進すべき。
       日本の新しい社会を作っていくために、国民一人一人が奉仕活動や体験活動に取り組むことを奨励するような社会的仕組みを作っていくことが重要。活動に直接参加することが基本であるが、それができない場合には、例えば活動の経費を拠出することも一つの方法であっていいという考え方を提言することも重要。
       上記のような取組を促進するために、地域の体験活動の推進のための基金を活用するなど、皆が寄付をすることを促進することなども考えられる。
       大人が社会的責任を果たすためには、納税するのみならず、地域活動に汗を流すことも必要だという意識を作る必要がある。そのために、社会貢献が目に見える形になるように、例えば、確定申告の際に社会貢献的活動への寄付のリストを記述する欄を必ず設けるなど、税制の面でも意識付けのシステムが必要。
    18歳以降の問題については、大人への準備期間として位置付け、活動の幅広いメニューを提示した上で実施することが必要。あわせて、進学や就職の際に評価するなどのインセンティブを明確化すべき。
       自分に少し不利になっても大事なことはやるべきだということ、このことに学校、社会、家庭含めた社会全体で取り組むことについての重要性を強調すべき。
       民間には地域に密着し、地域に精通した保護司の人たち、子育て援助を行っている更生保護婦人会、BBS(Big Brothersand Sistersmovement)のボランティアの人たちなど協力できる用意のある人材がすでにたくさんいる。このような人々と連携し、協力することも考えるべき。
       
 
(3)初等中等教育段階の活動の重要性
       ボランティア活動、奉仕活動など色々な言い方があるが、結局は子どもたちにとっては、子どもたちが社会の中で自分はどのような存在か、ということを学ぶための体験学習であり、その意味ではコミュニティ体験学習ということができる。自分が社会の中でどのような存在か、ということを知るためのコミュニティの中での体験の内容としては、ソーシャルサービス体験と産業体験が有意義。
       子どもの頃から様々な体験を通して社会性や社会規範意識を身に付けさせるとともに、他人の役に立つということ、自分と公との関係がどのようなものであるかということ、更にそれらを自分で判断する自立した判断力を体系的に育てていくことが重要。
       
       
学校内外における様々な体験活動を促進していくための方策について
 
(1)学校内外の活動を促進していくための方策
    【学校教育としての体験活動の在り方】
       教育活動として奉仕活動や体験活動が大きな成果をあげることはすでに実証されており、学校において全ての子どもたちに体験させることが必要。
       学校における体験活動は、体験活動のきっかけを与えるとともに、教科の学習等を通じて学んだことを身をもって理解することを重視すべき。
       体験活動を通じて、一人一人が人間的に成長したり、将来の生き方や社会のためにできることを考えたりできるよう、教科教育と適切に組み合わせ、体系的に実施していくことが必要。
       学校の教育活動の中に体験活動を入れることは大事なことであり、指導計画にきちんと位置付けをした上で、1教科学習のプロセスの中に位置付ける、2総合的な学習の時間の中に位置付ける、3部活動として実施するなどのさまざまな方法が考えられる。教科等の学習と体験活動を分けて、片方が増えれば片方が減るという考え方ではなく、体験活動を教科等の学習にからませていくことが大切であり、「時間がない」という声への回答にもなる。
       地域の活動をカリキュラムの中に取り込み、教科等の一環として位置付けて実施することも可能。学校がカリキュラムに基づき、しっかりやっていくのを地域社会がサポートしていくことが大事。また、その場合の活動は、教科等の活動であり、奉仕活動でもあるといった場合もある。
       体験から何を得たのか、また、自分が何者なのかを知るための振り返りは、初等中等教育でしっかりとやることが大事。その際、教員に加え、その体験活動に関わってきた外部の関係者の意見や感想等も参考にすることが大切。
       学校外活動が単位認定されることとなった場合の評価方法について、子どもによって得るものは異なることや、成果についても将来開花する性質のものであることから、安易に点数で評価することは適当ではなく、例えばグループで何を感じたかを話し合わせるというような形で振り返らせるなど、活動を踏まえた工夫を行うべき。
       
    【学校外の任意の体験活動の在り方】
       学校教育での活動と学校外での活動とでは、体験の意義が違う部分があるが、自分の責任で主体的に行動する姿勢を持つ人を育てることが、共通の目標。学校教育において体験活動を重視することとあわせて、学校外での活動の充実を図ることが必要。
       活動へのインセンティブが重要であり、高校での単位認定や、入試や就職の際の評価などを促進することが必要。
       学校外で任意に行う活動は、教育にとらわれない、自由、自発の活動であり、生の社会の体験をする場であるべき。
       自発的に活動先を見つけて活動を行ったことについても社会的に評価するべき。子どもたちがそれぞれ自分の「学習歴」をつくり、積み上げていき、そのファイルである生涯学習パスポートを自分が何者であるかを知るために使ったり、また学校や就職などでの評価にも役立てることも有効。
       
 
(2)充実した活動内容への工夫
    【子どもの自主性や自発性を育むための工夫・配慮】
       「助け合い」は小さいうちから実際に体験することによって身に付いていくもの。まずボランティア体験学習において体験させることを通じて自主性を育てるべき。その際、子どもの興味、関心を引き出し、自発性を高める工夫をする。多様なプログラム開発を行い、選択肢を用意し、動機付けをしていくことが必要。
       子どもたちに自発的に何をやりたいかを考えさせるなど活動の企画・立案に参加させたり、自発的に行う活動を支援することが重要。また、活動に当たり、子どもの希望を早い段階から聴取し、学校、地域、行政が連携・調整し、なるべく子どもの希望を取り入れることが重要。
       活動を行うにあたって困難に遭遇した際にも、自分達で考え、解決するように指導することが重要。
       活動を行うにあたって、子どもの意識を高めるための機会や場を工夫することも有意義。
       アメリカのボランティアを表彰する制度のように、地道な取組を表彰し、世の中に知らせていくことも有意義。
      【発達段階を踏まえた体系的な指導を行うための工夫・配慮】
       各教育レベルごとに、活動の意義や目的を整理した上で、小・中・高それぞれの取組に継続性をもたせ、途中で断絶がないようにすべき。それによって、それぞれの段階に応じたメニューを組むことや地域全体の取組にしていくことが可能となる。
       教える側が内容を決めて取り組ませることが有意義な時期と、自主性・能動性を重視すべき時期とがある。小学校中学年程度まではとにかく取り組ませることも有意義だと思うが、思春期以降は自主性を尊重しつつ働きかけていくことが重要。そのためには色々な選択肢を用意することが必要。
       活動の期間について、工夫することが必要。連続して5日程度実施した方がよいものもある。
       
    【地域の特色を生かし、地域に根ざした活動にするための工夫・配慮】
       学校で全員が体験することを契機として、地域の中の様々な団体や人を掘り起こし、地域に総合的な受け皿を作ることが可能になるのではないか。
       学校を単位として、例えば、子どもが地域の高齢者施設のある高齢者の世話を継続的に行っていくという閉じられた親密な関係を体験する中で、自分が頼りにされている感覚やコミュニティの一員という感覚を育むこともできるのではないか。
       私立学校に通学している子どもも捉えることを考えると、地域を中心とした推進体制の整備を考えるべき。
       異年齢間の交流や、保護者も巻き込んだ活動などに地域ぐるみで取り組むことが重要。
       具体の成功事例を集め、それを普及していくことが大事。地域の実験の成功例の積み上げをどのように首都圏など都市部での制度設計に活かすかを考えるべき。
       自らの地域がどういうところか、どんな産業で成り立っているのかを知ることは重要。そのためにも、家業や地域産業の手伝いを体験活動の一つとして積極的に位置づけるような工夫も必要。
       社会公共施設や、まちの産業を教材にして、総合的な学習の時間の中で学校外で学習することも有意義。社会的な生活の中で嫌なものを見せないのではなく、きちんと教えていくことも必要。
       
 
(3)指導者の確保
    【教員の力量の向上】
       体験活動などの実践に当たり、教員の資質の向上が必要。また、教員の中には奉仕活動等を体験したことがない人もいるため、外部の専門的な機関との連携も考えるべき。
       体験活動の推進には、まず学校の教員の理解が重要であり、地域の行事に積極的に参加するなど、交流を深め、教員の意識を変えていく必要がある。
       現場では、体験活動を通じ子ども自体は変化していくのに、教員はあまり変化していかないという声がある。教員も子どもと一緒に体験すべき。教員も含めた実際の体験の在り方、組立方を考えることが必要。
       教員の社会体験研修の機会を拡充することや体験活動の実践に当たって教員の様々な相談に応じることができる体制の整備が必要。
       
    【多様な指導者の確保の在り方】
       教育ボランティアの役割が重要。社会の様々な人々が学校に来て、子どもたちがそれらの人に接する中で多くのことを学ぶことができる。地域のマイスター的な人を招いて、指導してもらうことも有意義。
       社会の第一線で活躍していた高齢者をはじめ、高い能力を持った多様な人材の教育の場への参画を促進することが重要。教職員定数を活用して学校現場の実情に応じて非常勤講師を採用することが可能となる制度改善も行われたことから、この制度などを活用して地域の人材を社会人特別非常勤講師として積極的に登用すべき。NPOを組織し、例えば退職した中間管理職等そこに登録した人の中から特別非常勤講師を選ぶ、などの仕組みを考えることも有意義。
       例えば、県民カレッジ等の修了者について、その学習成果を活用する観点から、体験活動の指導者やコーディネーターとして活用することも考えられる。
       
 
(4)学校・家庭・地域・行政の連携による支援方策
    【活動を進める際の受け皿づくり】
       活動の受け入れ先の開発が必要。学校段階の体験活動は、奉仕というよりも体験学習として、受け入れ側に負担が重い場合がある。その負担をどうするか、検討が必要。
       NPOやボランティア団体を育成・充実させ、受け皿とすることが重要。
       インターンシップ制度の活用も有意義。
       社会福祉分野以外の分野の開発が必要。
       アメリカにおいては、公の機関は飛び込みでのボランティアの受入体制が整っていると聞く。日本においても、公的機関でそのような体制を整備する必要がある。また、社会教育施設についても、ボランティアを受け入れ、学習する機会を提供するのも業務の一つであるという考え方にしていく必要がある。
       子どもたちには、社会の色々な面を全て見せる必要があり、例えば、様々な民間の事業体が子どもに体験活動をさせるための事業を始める、NPOが子どもに体験学習をさせる事業を始める、行政が色々企画立案する、等様々な分野で受け皿があっていい。
       都市部では、経済団体が非常に熱心。協力してくれる企業、NPOをリスト化して小・中学校に紹介すればかなりのサポートになる。
       都市部では学校の余裕教室を高齢者の活動に提供しており、学校内で自然に交流できる環境がすでにできている。また、大都市では、一人暮らしの高齢者や、夫婦だけの家に子どもが定期的に訪問するなどの活動も広まっている。
       
    【活動時の安全確保】
       活動を実施する際には、事故に備えての保険などの対応が必要。
       
    【学校・家庭・地域・行政の連携による推進体制づくり】
       知事部局と教育委員会をはじめ行政部内での積極的な連携が必要。
       学校と教育委員会、社会福祉協議会等関係団体との密接な連携が重要。
       グローバル化が進む中で、企業には社会貢献に対する意識が強くなってきており、資金を出すだけでなく、ボランティア休暇を制度化するなど、様々な方法でかかわるようになっている。人々が能動的に社会とかかわり、生涯学び続けていくことは、企業にとっても重要なことで、その取組を促進することが必要。
       全ての学校の全ての子どもを受け入れてもらうためには各学校の教員の力だけでは困難。受入先と派遣のマッチングなどについて、地域の教員を含め皆で調整を行う作業が必要になる。これにはかなり専門的な力が必要であり、大きな課題。
       地域に指導者の人材バンクやサポートセンターを作り、小・中・高、団体、企業間のコーディネートを推進すべき。また、子どもたちの自発的な活動を教育委員会などのレベルでもフォローすることが必要。
       今後、学校と地域との連携を考える際は、必要に応じ受け皿となる組織を新たに地域に作るなどしながら、学校の教員もそこに参加するような形で関わるのがよいのではないか。また、学校には地域と継続的に連携するための担当者が必要。
       受け入れ側、送り出し側双方にコーディネーターを置くことが必要。
       プログラムづくりやコーディネーターの養成が大事。全部の学校で取り組むとなると地域の中で受入先の開発が必要。できるだけ多くの人に協力してもらえる仕組みを作るべき。いい体験はできるだけ小グループで行うことが大切。
       ウェブ上にマッチングするためのエリア別、種類別の情報サイトを作るなど、学校と地域との連携や活動のハウツーを提供できる仕組みが必要。
       
    【財政的な支援の必要性】
       現在、小学校から中学校まで1100万人の子どもたちがおり、この子たち一人一人が充実した体験活動を行うことができるような予算の手当が必要。
       活動を行う上では、必要経費、保険、謝金等必要な経費を確保する必要がある。
       学校内外における奉仕活動・体験活動を円滑に実施していくためには、実際の活動だけでなく、学校や地域の連携のための体制づくりについても財政的な裏付けが必要。
       アメリカではインターンシップに熱心に取り組む学校には多額の補助金を出したり、インターンシップの最大の雇用者は連邦政府であるなど、行政の関与が大きい。日本においても、パブリックセクターがもっと乗り出すべきではないか。

 

ページの先頭へ


(別紙)

※取組の事例

(1)学校教育における取組

○兵庫県教育委員会
     阪神淡路大震災や、神戸須磨区の事件が発生したことから、子ども達の置かれている状況をどのように捉えるか、子どもたちの成長をどのように図っていくか、を検討して行く中で、「心の教育」「地域の子どもは、地域で育てる」という考え方のもと、「トライやる・ウィーク」を実施。
     兵庫県内の全公立中学校の2年生が1週間にわたり、体験活動。
     兵庫県推進協議会、市町推進協議会、中学校区推進委員会が連携し、生徒の興味関心を聴取し、受入先、指導ボランティアの確保、生徒の希望と受入先との調整等を実施。
     学校、家庭、地域の三者が連携して、円滑かつ実効性のある推進体制を確立。
     職場体験が全体験活動の7割。
     「トライやる・ウィーク」がきっかけとなり、子ども達が地域の活動や休日のボランティア活動に参加するなど日常的な活動に発展。
     家庭における親子の会話時間の増加。
     地域の子どもは地域で育てるという気運の高まり。
     受入先ボランティアの確保、活動の日常化、生徒の興味、関心に応じた活動内容の充実等を図っていくことが課題。
     
○富山県教育委員会
     富山県内の全公立中学校の2年生が1週間にわたり、体験活動を実施。
     4人程度の班単位で事業所や福祉施設などで活動。働くことの喜びや苦しさ、認められたり、感謝されることの喜びを味わうとともに、規範意識や社会性を高めることが目的。
     学校、保護者、行政担当者、事業主、団体関係者等で推進委員会を組織し、生徒の希望聴取、受入先の確保、生徒の希望と受入先との調整、指導ボランティアとの連絡等を実施。
     受入先としては事業所が多数。
     生徒が自らを見つめ、人間的な成長を遂げた、家庭においても親子の語らいが深まった、地域の中学生に対する理解が深まり、地域ぐるみの育成体制ができたなどの成果。
     受入先事業所の確保、地域の教育力の更なる開発・定着、予算問題などへの対応が課題。
     
○埼玉県さいたま市立大宮小学校
     奉仕の心を学び、根付かせる実践の場として、毎週全校あげて校内清掃活動(1〜3年及び障害児学級)、駅前清掃活動(4〜6年)を実施。
     子供たちは、4年生になるとJRC(青少年赤十字)の登録式に臨む。このことは生徒の意識高揚を図る上で有意義。
     児童生徒会活動のJRC委員会が企画立案、当日の運営を担当。教員は、ボランティアとして参加すると共に、安全面(交通事故など)に気を配り、側面支援。
     地域社会や保護者の理解を得られるよう、広報広聴活動の実施、学校便りの回覧を実施。
     公共の場でマナーの良い学校という評価。いじめや不登校の発生率が低い、発生しても解決や解消が早いなどの成果。
     駅前清掃に対し、通勤の邪魔、「やらせ」との声もあり、それらへの対応や理解を求めるために地域全体の活動として根付かせていくことが課題。
     
○千葉県佐倉市立根郷中学校
     社会福祉施設が隣接しているため、「お隣さんと仲良くしよう」というごく自然な流れで取組を開始。
     手話、点字の習得、ボランティア精神の養成、障害者との共生について学習するカリキュラムを学校裁量の時間と総合的学習の時間を活用して設定。
     講師の手配、カリキュラムの作成等市の社会福祉協議会と連携。市の社会福祉協議会では、同校の取組がきっかけとなり、「学校担当職員」が置かれた。このような活動は、学校と施設、社会福祉協議会の三者で取り組むことが必要。
     活動を実施するためには、学校としては、年間計画の作成、事前協議、教職員による事前研修の実施、学校ぐるみの取組姿勢、地域連携体制の強化が必要。
     生徒の意志とは少し違うが、共通の体験をさせ、将来困っている人に出会ったとき、自分の意志を伝え、行動に移せる人が1人でも増えるならと考えて指導。分からない人がいても数学がなくならないように、必要なものは必要であり、目に見える成果はなくても早急な判断はせず、子どもを信じることが大切。
     障害をもつ人の自立の精神、サポートする人たちの生き方にじかに触れることにより、点字手話の技能だけではなく、今後の自らの生き方を考える生徒が育っていくことに期待。
     今後は、予算、講師の人材不足、教師の意識改革、保護者の理解、協力体制の確立、継続性、生徒個々の思いの把握、などの課題に取り組むことが課題。
     
○神奈川県立高浜高等学校
     普通科に福祉教養コースを設置。体験学習を中心に手話、点字などのコミュニケーション手段の獲得や講演会の開催などを通じて福祉の各分野を学習。
     ボランティア活動として障害者の音楽会の支援、募金活動などを実施。
     平成13年度からボランティア活動を上限3単位で単位認定することとした。卒業単位には含まれないが、生徒の学校外活動を評価するという趣旨。
     体験活動には、学校主導型で行うことで生徒の動機付けに効果がある面と、生徒が企画などに携わることで主体性を育む面があり、双方が必要。
     体験活動は福祉関係の授業で学んだことを検証する場となっており、社会福祉の現状や課題を認識、人権意識の高揚、連帯感を育む上で有意義。また、一度参加することにより、以後自発的にボランティア活動を行うようになった生徒もおり、動機付けとしても重要。
     ボランティア活動を実施するためには、保険や活動参加費、旅費、行動費が必要であり、予算の確保が課題。

 

(2)学校外における取組

○山形県における高校生ボランティアサークル
     高校生による、学校単位ではない、住んでいる地域単位でのボランティア活動。
     地域の温かさや人間関係の大切さを知っている青年に育ってほしいと考え、活動を開始。
     活動内容は、子供相手のジュニアリーダー、手作り人形劇、環境美化、国際交流、施設訪問、一人暮らし老人宅清掃、雪下ろし、など子供たちが自ら考え出した多彩なもの。
     行政が山形県青年の家を活動の拠点として提供。
     県教育委員会、市町村教育委員会による学校への当該活動の理解の呼びかけ等のフォロー。
     都市型には都市型の、地方には地方の活動の在り方があり、全国一律というやり方は困難。行政は、それらに考慮して活動に関わるべき。
     老人会なども活動に参加したり、資金援助を行う会が結成されたり等、大人にも影響を与えた。また、高校生が小学生、中学生にとってのロールモデルとなり、子供たちの中に、自分たちが今まで「お兄ちゃん、お姉ちゃん」に面倒をみてもらったのだから、今度は自分達が活動するのは当たり前、という意識を培養。
     活動に取り組んでいた子供が成人し、県内外で活躍する若者に成長、また、自分の子供にも、ごく自然に活動に参加させる親に成長。
     ボランティア活動を特定の人がやる特別な活動ではなく、「お互い様」「あたりまえ」の活動にしていくことが必要。
     
○財団法人ボーイスカウト日本連盟
     スカウトの加盟員が地域社会に貢献するとともに、スカウト運動が地域社会に根ざした実践活動であることを広く社会にアピールすることを目的として活動。
     主な活動内容は、空き缶回収、公共場所の清掃奉仕、地域福祉、地域協力活動、各種募金活動など。
     地域組織と日常的に接触し、協働関係を維持。公共機関等へのポスター掲示等により広報。
     活動を通じ、子供たちの生まれた町への関心、自主性、自発性の高まりが見られ、また、保護者、地域のボランティアへの理解の深化などの成果。
     
○長崎県国見町の社会福祉協議会
     単発的ではなく、中・長期的な視点で系統的に育てることを目標として取組を実施。
     小学校5年生から中学生を対象者とし、全児童生徒にチラシを配布し、広く参加者を募集。
     国見町社会福祉協議会と国見町教育委員会とが連携し、事業を共催。事務局は隔年で担当。
     事務局の提案に基づいて子供たち自身による活動プログラム作り。当初は班制度だったが、子供たちの他の班の活動にも取り組んでみたいという声を受けて、班を廃止。福祉、環境、歴史の各プログラムから子供が自分で選択。
     主催団体がもつネットワークを受入先や講師として活用。
     町内の1人暮らしの高齢者にも受入先になってもらい、ボランティアとして協力。
     子どもたちの生まれた町への関心、自主性、自発性の高まり、保護者、地域のボランティアへの理解が深化などの成果。
     今後は参加者OBや、保護者を企画・運営に取り込むプログラム作りに取り組むことが課題。

 

ページの先頭へ


初等中等教育段階における奉仕活動・体験活動の推進について(イメージ)(案)

 

ページの先頭へ