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大日岳における標高別積雪分布特性

立山カルデラ砂防博物館 飯田 肇

 大日岳の各標高での積雪分布を事前に把握することは、登山計画や安全対策に有効であるが、アメダス等の気象観測点が無く、積雪量は平野からの類推ではうまく表現できないのが現状である。大日岳のような大きな標高差を持つ山岳での積雪分布特性には未知の部分が多い。

(観測点)

1 千寿原(研修所) 475メートル 登山研修所の超音波積雪深計により10分毎に自動計測
2 冬山前進基地 1,300メートル 積雪深ポールを設け来訪時やヘリからの目視観測
3 雪見平 1,560メートル 登山指導員研修会時に積雪断面観測
4 室堂平 2,450メートル 立山カルデラ砂防博物館で観測

1.観測結果

 表1、図1に標高別に3点以上で積雪深測定を実施した日の結果を示す。これらより、一般的に標高が増すほど積雪深が大きくなることは認められるが、年々の変動傾向は観測点により異なる。

表1 標高別積雪深(センチメートル)

測定日 千寿原 冬山前進基地 雪見平 室堂平 備考
標高メートル 475メートル 1,300メートル 1,560メートル 2,450メートル  
2002年2月3日 130センチメートル 460センチメートル   680センチメートル  
2002年2月24日 135センチメートル   465センチメートル 720センチメートル  
2003年2月12日 90センチメートル 380センチメートル   740センチメートル  
2003年2月22日 104センチメートル 400センチメートル 465センチメートル 760センチメートル 研修所積雪深計計設置
2004年2月3日 111センチメートル 330センチメートル   550センチメートル  
2004年2月11日 198センチメートル 440センチメートル   710センチメートル 悪天で前進基地までの入山
2005年2月8日 192センチメートル 420センチメートル   600センチメートル  
2005年2月12日 187センチメートル 430センチメートル 470センチメートル 520センチメートル  
2006年2月8日 234センチメートル 420センチメートル   600センチメートル  
2006年2月14日 236センチメートル 430センチメートル 625センチメートル 660センチメートル  
2007年2月8日 52センチメートル 420センチメートル   480センチメートル  
2007年2月16日 74センチメートル 430センチメートル 365センチメートル 520センチメートル  
2008年2月4日 103センチメートル 380センチメートル   580センチメートル  

図1 年毎の標高別積雪深分布

2.積雪深分布特性

 図2〜5に、標高別に4点の積雪深観測を実施できた日の標高と積雪深との関係を示す。各日とも、標高と積雪深にはよい相関がみられ、直線的に回帰できることがわかる。各観測日の直線回帰式と相関係数を図中に示す。

図2 2003/2/22 図3 2005/2/12
図4 2006/2/14 図5 2007/2/16

 図6〜9に、観測された積雪深について、各観測点間の関係を示す。研修所と雪見平でよい相関がみられるがサンプル数が少ない。一般に、各地点間の積雪深にはよい相関はみられない。これは、年毎の変動が激しいためと考えられる。

図6 研修所−前進基地 図7 研修所−雪見平
図8 研修所−室堂平 図9 前進基地−室堂平

◎まとめ