資料2

安全検討会(第1回)の指摘についての補足説明

○ 研修場所

○ ルートの選定

1 本件ポールを国の機関が設置するためには、法律上、環境大臣への協議が必要であること

  • → 大日岳は、中部山岳国立公園内に位置し、自然公園法(昭和32年法律第161号)第13条にいう「特別地域」として指定されており、本件のようにポールという工作物を新設等する場合には、通常は環境大臣による事前許可が必要となる(違反の場合、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)。
     ただし、国の機関が行う行為については特例が設けられており、当該許可は不要とされているが、その代わり、環境大臣への協議が必要となる。

2 本件ポールの設置を同意することはできないこと

  • → 協議を受けた環境大臣は、本件設置行為に係る通常の場合の許可基準である同法施行規則(昭和32年10月11日厚生省令第41号)第11条第13項等に沿って、本件設置行為を同意するかどうかを判断している。
     そして、本件ポールの設置行為を当該許可基準に当てはめて考えると、
    •  「当該建築物が主要な展望地から展望する場合の著しい妨げにならないものであること。」との基準を満たさないこと
      (積雪の関係等からしてポールを撤去できるのは6月頃と考えられるが、その場合、立山黒部アルペンルートは4月下旬から5月上旬には開通しており、その主要な展望地として室堂や弥陀ヶ原(展望施設、広場、休憩所がある)があり、そこからは天候が良ければ大日岳山頂を十分見ることができる。また、その場所での写真等の撮影した場合にポールは十分写るものと考えられる。)
    •  「学術研究その他公益上必要」と認められる場合には、例外的に許可が認められるが、そのような場合には該当しないこと
      (本件ポールの設置は明らかに学術研究ではない。また、「公益上必要」な行為とは、その行為が直接的に公益に資するものに限定して考えるべきであり、たとえば、土地収用法第3条各号に掲げるような行為(ダムの建設など)及び自然環境の保全を目的とした行為等が対象と考えられる。)
    等の理由から、本件ポールの設置は許可基準を満たさない。
     したがって、本件ポールの設置を同意することはできない。

<参考>

自然公園法(抄)

(目的)

第一条  この法律は、優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図り、もつて国民の保健、休養及び教化に資することを目的とする。

(特別地域)

第十三条  環境大臣は国立公園について、都道府県知事は国定公園について、当該公園の風致を維持するため、公園計画に基づいて、その区域(海面を除く。)内に、特別地域を指定することができる。
2  (略)
3  特別地域(特別保護地区を除く。以下この条において同じ。)内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては環境大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし書は略。
  • 一 工作物を新築し、改築し、又は増築すること。
  • 二〜十五 (略)
4  環境大臣又は都道府県知事は、前項各号に掲げる行為で環境省令で定める基準に適合しないものについては、同項の許可をしてはならない。
5〜9  (略)

(国に関する特例)

第五十六条  国の機関が行う行為については、第十三条第三項、第十四条第三項、第十五条第三項第六号又は第二十四条第三項の規定による許可を受けることを要しない。この場合において当該国の機関は、その行為をしようとするときは、あらかじめ、国立公園にあつては環境大臣に、国定公園にあつては都道府県知事に協議しなければならない。
2〜4  (略)
第七十条  次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
  • 一 第十三条第三項、第十四条第三項、第十五条第三項又は第二十四条第三項の規定に違反した者
  • 二 偽りその他不正の手段により第十六条第一項の認定を受けた者
  • 三 第二十五条の規定により許可に付せられた条件に違反した者

自然公園法施行規則(抄)

(特別地域、特別保護地区及び海中公園地区内の行為の許可基準)

第十一条  法第十三条第三項第一号、第十四条第三項第一号及び第二十四条第三項第一号に掲げる行為(仮設の建築物(土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱又は壁を有するものをいい、建築設備(当該工作物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう。第二十条第一号イ(2)において同じ。)を含む。以下同じ。)の新築、改築又は増築に限る。)に係る法第十三条第四項 、第十四条第四項及び第二十四条第四項の環境省令で定める基準(以下この条において「許可基準」という。)は、次のとおりとする。ただし書は略。
  • 一 (略)
  •   次に掲げる地域(以下「特別保護地区等」という。)内において行われるものでないこと。
    •   特別保護地区、第一種特別地域又は海中公園地区
    •   (略)
  •   当該建築物が主要な展望地から展望する場合の著しい妨げにならないものであること。
  •   当該建築物が山稜線を分断する等眺望の対象に著しい支障を及ぼすものでないこと。
  • 五・六 (略)
2〜11  (略)
12  法第十三条第三項第一号、第十四条第三項第一号及び第二十四条第三項第一号に掲げる行為(前各項の規定の適用を受ける工作物の新築、改築又は増築以外の仮設の工作物の新築、改築又は増築に限る。)に係る許可基準は、第一項第一号及び第六号の規定の例によるほか、次のとおりとする。
  •   第一項第二号から第四号までの規定の例によること。ただし、次に掲げる行為のいずれかに該当するものについては、この限りでない。
    • イ・ロ (略)
    •   学術研究その他公益上必要であり、かつ、申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することができないと認められる工作物の新築、改築又は増築
  •   当該工作物の外部の色彩及び形態がその周辺の風致又は景観と著しく不調和でないこと。ただし、特殊な用途の工作物については、この限りでない。
13  法第十三条第三項第一号、第十四条第三項第一号及び第二十四条第三項第一号に掲げる行為(前各項の規定の適用を受ける工作物の新築、改築又は増築以外の工作物の新築、改築又は増築に限る。)に係る許可基準は、前項各号の規定の例によるほか、次のいずれかとする。
  •   当該工作物の地上部分の水平投影外周線が公園事業道路等の路肩から二十メートル以上離れていること。
  •   次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。
    •   学術研究その他公益上必要と認められること。
    •   地域住民の日常生活の維持のために必要と認められること。
    •   農林漁業に付随して行われるものであること。
    •   既に建築物の設けられている敷地内において行われるものであること。
    •   前項第一号イ又はロに掲げる行為のいずれかに該当するものであること。
14〜34  (略)設

○ 研修時期

1 安全性が高い時期であること

  • → 北アルプスは、例年1、2月は荒天が多く、場合によっては吹雪が1週間続くこともある。
     3月になると天候は落ち着きはじめ、積雪状態も安定してくるが、下旬になると積雪が緩み始め、湿雪・全層雪崩等のリスクが生じてくる。
     4月になると、低気圧の発達・寒気の流入があり、天候が不安定になり、どか雪もある(この頃の雪は水分が多いため湿雪・全層雪崩も多い。)。

2 研修の教育的効果が高い時期であること

  • → 実際の冬山登山において、危険を察知し、回避することができる能力を身に付けるためには、「冬山」の厳しさを経験できる時期である必要があり、4月以降になると「冬山」の経験が得られない可能性が高い。

3 大学の休みの時期であること

  • → 研修期間は1週間であり、参加学生にとってまとまった休みが取れる時期は3月の春休みの期間である。

○ 講師

<情報収集>

1 気象及び積雪に関する情報の把握

  • → 新聞、テレビ、ラジオ等の気象状況を入手するとともに、本研修会前に実施した山岳スキー講習会の状況や、入山前の登山研修所周辺及び事前偵察を実施した人津谷周辺の状況から、気象及び積雪状況を把握していた。

2 大日岳に関する知識及び経験の集積

  • → 大日岳という特定された山を継続して研修場所とすることにより、ルート上の危険箇所など、この山に関する知識及び経験の集積を図っていた。

<講師への情報提供>

1 講師研修会の実施

  • → 講師研修会において、講師に対して、気象や積雪、ルート上の危険箇所等についての情報を提供するとともに、研修会実施上の諸問題について検討を行った。

2 登山研修所と講師との打合せの実施

  • → 研修会前や研修中の打合せにおいて、講師に対して、気象や積雪、ルート上の危険箇所等についての情報を提供し、研修内容や行動の詳細を決定した。
  •  なお、大日岳遭難事故後、情報収集について、以下のとおり、改善・充実を行っている。

1 大日岳及びその周辺に関する情報、事例を収集するホームページの設置

2 ヘリコプターによる大日岳周辺雪庇・積雪状況の観察

3 定点観測地点(雪見平)における積雪状況の観測、データの蓄積

4 山頂確認手法の検証、ルート維持・退路確保の方法の検証(登山指導員冬山研修会)

5 ヒヤリハット体験報告書の作成

  • → ヒヤリハット体験の概要(日時、場所、内容)、原因(環境、装備、動作・操作、人的問題)、教訓・対策について報告書を作成し、類似の危険事例に対する円滑な対処を図る。

6 研修山域の危険地帯地図の作成

  • → 過去の経験・研修会実施時に感じた危険を集積し、研修山域について、「雪崩」、「崩落」、「滑落」、「ミスコース」、「立ち入るべきでない場所」といった危険箇所を表示した地図を作成

○ 研修生の参加資格

<参考>登山経歴書における主な聴取事項

部の名称、部内での役職、部員数、部の年間山行日数
一週間のトレーニング時間(体力トレーニング、机上学習、ザイルワーク等の登山トレーニングごとに)
雪上幕営の経験日数
スキーの経験年数、スキー技術の程度(資格の有無等)
登山歴(年月・コースについて無雪期・積雪期ごとに)
登山以外のスポーツ経験
登山研修所研修会の参加歴