戻る


1.中核拠点

(1) 中核拠点に整備する施設について
1 屋内トレーニング施設
ア) JISSにおける現状
 現在、JISSには、次のようなトレーニング施設があり、その一部は既にいくつかの競技における強化拠点として利用されている。こうした中、競泳、シンクロナイズドスイミング、体操、レスリングについては、世界選手権大会等の成績を見ても競技力向上の成果が現れはじめている。
専用施設
150メートル競泳プール、2シンクロナイズドスイミング専用プール、3体操競技場、
4室内射撃場、5レスリング場、6フェンシング場、7ウェイトリフティング場、
8ボクシング場
共用施設
1研究体育館(バスケットボール2面規模)、
2トレーニング体育館(ウエイトトレーニング室)、
3低酸素トレーニング室、 4低酸素宿泊室

  専用の練習場がない競技においても、研究体育館を活用して合宿等の強化活動を行っている例があるが、複数の競技団体の要望が重なる場合には計画どおりの利用ができないなど、ナショナルレベルの本格的な強化拠点としては機能していない状況にある。

イ) 整備の考え方
 これらのことを考慮すると、それぞれの競技における強化拠点としていくためには、基本的に専用の練習場を確保することが必要である。競技ごとの専用の練習場が確保されることによって、ナショナルレベルの拠点としてだけでなく地方ブロックのジュニアの育成・強化との連携の要にするなど、競技力向上の観点から計画的に幅広く活用することが可能となり、施設がより有効に活用されることが期待できる。
 したがって、現在、JISS内に既に専用の練習場が確保されている競技以外の室内競技に対応できる練習場を新たに整備する必要がある。具体的な競技種目としては、オリンピック実施競技の中では次のものが考えられる。
 1バレーボール、2バスケットボール、3ハンドボール、4バドミントン、
 5卓球、6新体操、7柔道、8トランポリン
 前述のとおり、原則として専用の練習場とすることが適当であるが、専用とするか否か、コート面数等については、各競技団体における育成・強化活動の実態及び 計画に基づき適切に調整していく必要がある。

ウ) 整備の留意点
 練習場の施設・設備の仕様については、原則として競技種目ごとの国際ルールに対応したものとするとともに、各競技種目のトレーニングの特性等を適切に踏まえたものとする必要がある。また、トレーニング中の動作分析を行うための映像情報機器や空調設備を整備する必要がある。なお、競技種目によっては、使用する器具の国際規格や仕様が主要な大会ごとに変更になり、それに伴って練習場の器具についても更新することが必要となる場合がある。このような競技種目の器具の設置については、基本的に各競技団体において対応することが適当である。
 また、全ての競技団体が共用利用できる施設として、水中トレーニングやトレーニング後のクーリングダウン等を行うための25メートルプール、ウエイトトレーニング室、様々な競技にフレキシブルに対応可能な共用コート、指導者の研修や小規模な交流試合等のための可動式の観覧席が必要である。
 さらに、各競技のトレーニングに直接使用するスペースのほかに、競技団体別の控室、ミーティングルーム、各競技の専任コーチ等が集まり情報交換を行うコーチ室、研修室、競技者等が休憩するためのスペース、ロッカー・シャワールーム、器具庫等も必要である。
 なお、特にトップレベルの競技者については、トレーニングにおけるストレスをできるだけ少なくするなどメンタル面への配慮も必要であり、様々な面においてトレーニング施設の快適性に留意することが重要である。

2 屋外トレーニング施設
ア) 整備の考え方
 屋外競技のトレーニング施設を整備するには広大なスペースが必要である。また、天然芝グラウンドについては、養生の観点から利用頻度に制限がかかるため複数面のグラウンドを確保する必要がある。このため、西が丘地区の中核拠点の中に、屋外競技種目ごとの専用施設を整備することは困難であり、整備できない競技については、競技別強化拠点として対応することが適当である。
 一方、陸上競技のトレーニングや室内系の競技種目を含む各競技の基礎トレーニングを行うための施設として、400メートルトラック及びジョギングコースを整備する必要がある。400メートルトラックについては、天候に左右されずトレーニング環境を一定に保つことができるよう走路上屋根付の全天候トラックとするとともに指導者用に若干の観覧席を設けることが望ましい。
 なお、サッカー、ラグビー等の芝グラウンドを必要とする競技についても、大会前の調整合宿や動作分析等、JISSと連携した強化活動を円滑に実施することが重要であり、こうした場合は、現在、整備されている西が丘サッカー場を活用できるようにすることが必要である。
 テニス競技については、既にJISSに整備されているハードコートが利用できるが、天候に左右されずトレーニングができるように屋根を整備する必要がある。

イ) 整備の留意点
 屋外トレーニング施設においても、屋内トレーニング施設と同様、必要に応じてミーティングルーム及びトレーニング効果を高めるためのウエイトトレーニング施設等を整備することが望ましい。

3 宿泊施設
ア) 整備の考え方
 JISSには、現在約80名分の宿泊室があるが、ナショナルチームの合同合宿等100名を超える大規模な合宿や複数の競技団体の日程が重なる場合には対応できていない。競技団体に対するナショナルトレーニングセンター中核拠点の利用計画調査の結果によると、相当数の宿泊室を新たに整備する必要がある。その際、夏季の長期休業期間や国際総合競技大会の前に利用者が集中するなど年間を通じた閑忙の差が見られるが、宿泊施設の規模の目安としては、稼働率が年間平均約7割程度となるようにすることが適当であると考えられる。

イ) 整備の留意点
 現在のJISSの宿泊室が若干手狭であるとの利用者の意見があることを踏まえ、利用者がリラックスできる面積の確保や、海外の競技者との合同合宿などを考え、体格の大きい競技者に対応したベッド等についても留意する必要がある。部屋のタイプについては、チームスポーツにおけるチームワークの向上やジュニアの育成・強化の観点から、ツインや数人のグループで利用する和室タイプの宿泊室も一定割合設けることが適当である。また、長期間の合宿等を想定した長期滞在型が可能なタイプの部屋についても考慮することが望ましい。
 宿泊施設には、トレーニング後の疲労回復や障害等の予防のためのマッサージルーム、ウエイトコントロール等を行うコンディショニングルーム、大浴場、栄養管理の行えるレストラン、情報交換やリラックスするためのラウンジやミーティングルーム等も整備する必要がある。

(2) 中核拠点の有効活用
 強化拠点としての機能をより効果的に発揮するため、各競技団体においてナショナルトレーニングセンターを活用した強化計画を策定する必要がある。策定する場合、ナショナルトレーニングセンターの第一の目的であるナショナルレベルの強化活動はもとより、ジュニア期からの競技者育成プログラムでの活用や指導者に対する講習会の実施など様々な形で活用することにも配慮したものとし、各競技の競技力向上の頂点にふさわしい施設となるようにしていくことが重要である。また、JISSと一体となっていることを最大限に活用し、スポーツ医・科学及び情報を効果的に取り入れた質の高い育成・強化活動が行われるようにする必要がある。
 なお、施設の管理に当たっては、利用時間などについて、できる限り利用者側の便宜に配慮する必要がある。
 また、トレーニング施設と同様、様々な面において宿泊施設の快適性について留意することが重要である。



ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ