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デジタルミュージアムに関する研究会(第7回)議事概要

1. 日時
平成19年3月15日(木曜日)13時〜15時5分

2. 場所
文部科学省総務課会議室

3. 出席者
【構成員】 (有識者)
原島主査、池内委員、大井委員、田中委員、田良島委員、水谷委員、谷岡委員
(文科省)
田中大臣官房政策課長、生川計画官
(総務省)
藤本情報流通高度化推進室長
【事務局】 その他関係官

4. 議事等
(1) 事務局から配付資料について確認を行った後、資料のうち、研究会における審議の取りまとめ案に関して説明した。引き続いて、各委員から事前に提出され、取りまとめ案に掲載した意見について、各委員から簡単に説明を行った。その後意見交換があり、主な内容は以下の通り。
時間も限られているので、デジタルミュージアムの位置づけ、あるいはあり方について重点的に議論をいただきたい。先ほど意見のあったように、デジタルミュージアムと既存のデジタル・アーカイブとの関係を1アーカイブをインフラとして含み、それを前提としてデジタルミュージアムを想定するのか、2超高精細のような表現系の先端技術を中心にすえて考えるのか、または、31でありつつもミュージアムの範囲を超えてミュージアム・ライブラリ・アーカイブで連携すべきであるのか。また別の意見としては、新しい知の出会い、日本の新しい文化創造を可能にするような仕組みを考えるのか。他に意見のあった技術的な部分に関しては、先にデジタルミュージアムが何を目指すのかを議論すればだんだん見えてくるものと思う。
 デジタルミュージアムに関しては、資料に「ガラスケースの中に実物が展示されたミュージアムではなく、次世代型のデジタル・アーカイブ化された文化資源の保存・公開・活用を行う概念であり、もとより美術館等の施設を有するものではない」としてあるとおりだと思う。ただ、あまりに広げすぎるとメッセージ性がなくなる。ひとつの考え方としては、超高精細の表現技術だけではなく、ネットワークや他の最先端技術が日本の文化と結びついてすばらしいものができるのではないか、という面を書き込めればいいと思う。

英国などでは、ミュージアム、ライブラリー、アーカイブが統合の方向に向かっていると聞いている。先日、オランダでも博物館・図書館・文書館を全部横つなぎにして、ナショナル・ライブラリーが中心になって進めているデジタルミュージアムのプロジェクトがあるという話を聞いた。

当初、デジタルミュージアムとして想定していたのは、現存する博物館・美術館をデジタル化するということではなく、最先端の映像技術が開発されつつあって、それが将来的には家庭にも届けられるような発達したものになっていくだろう、しかしその地点にいきなり到達することは不可能なので、日本の文化を表現するという点からも世界的にもアピール度の高いものとして、文化財を対象とし、そのすばらしい技術を実証モデルのような形態で当面ミュージアムとして具現化を図ったらどうか、ということだった。したがって、公文書館の蔵書のデジタル化までを含めて考えていたわけではないものの、実証モデルの相手先としてはありうるだろう。それが成功して、そのよさが広く認識されれば過程にも取り入れられるかもしれないが、それにはきっと新しい技術とそれを用いた体制作りというのが必要になってくる。

技術がこれまでのミュージアムを変えていくだろうことは明らか。自分としては、デジタルミュージアムのあり方をここでいろいろ議論しても、近いうちにそれを凌駕する技術・概念がやってきてしまうだろうことを危惧している。例えばグーグルでは、ライブラリーを含めてすべてのデータをアーカイブ化しようというオファーをいろいろなところに出しているのだが、日本のコンテンツのアーカイブ化を全部外注化してしまうことには懸念を抱いている。今回、国のプロジェクトとしてデジタルミュージアムに取組もうとしている以上、一歩時代の先を行くものが何か打ち出せないだろうか。

デジタル・アーカイブの話が始まった当初、日本の文化資産のデジタルコンテンツが囲い込まれるのではないかという噂が広まったことがある。自分としては、日本のコンテンツフォルダは参入障壁が高いので、それほど急激に囲い込みが進むとは考えていないが、一方で国内におけるアーカイブのネットワーク化は政策的に進めていくべきと思う。各館任せにするよりは、技術的な標準化あるいはメタデータの分野で主導権をとるなどして、国の施策として取り上げないと、文化資産保有者は安心できない。

デジタルミュージアムと言いつつも、ともすれば従来型のミュージアムの議論だけに矮小化されてしまいがちなのが、この研究会の難しいところ。

リアルのミュージアムの維持だけではなくデジタル面に対しても情報を出していくというのが現代におけるミュージアムのあり方だとする方向性であり、それをある種の常識とすることが、今後のよりよいものを生み出すために必要なこと。

それは、技術そのものの話というよりは、博物館などにある情報をデジタル化した途端に何が起こって、それを共通的な認識の上でどうマネージしていくかという問題といえる。

現状としては、現物の文化資産をデジタル化するときに、長期的な保存・活用に耐えうるデジタル資産というべきものはできていない。したがって、まずはみんなが安心して使えるデジタルミュージアムのための資産をどう構築するか、というのが問題で、次に、それを活用して一段階上の技術を利用しどのように活用できるのか、そのためには何が必要なのかという議論の組み立てにするとわかりやすいのではないだろうか。

技術の進展が博物館・美術館そのものを変える時代が来ているといえないだろうか。それに対してどう考えるかが重要。

発物館・美術館側の政策とクロスするような格好で技術の進展がある。デジタル技術を応用したより新しいタイプの博物館・美術館になるのか、従来型のものを見せる館にするのかは、それぞれの判断にゆだねられるべきだろう。

デジタル化で、技術が非常に高速かつ高度に世界的に進歩している今日、こちらの意図にかかわりなく、ミュージアムが変容している面もあるだろう。ほうっておくと日本のコンテンツがだめになってしまう可能性もあるので、それを日本の一番進んでいる技術で防ぐことができないだろうか。

放送や通信は、デジタル化技術で相当な変革が起こった。今や教育の世界も変わりつつある。技術に対してそのときに選択するかしないかではなく、どうやったらきちんと対応できるのかを考えておくべきだと思う

今技術がどんどん発展していて、それを博物館・美術館に適用してみたらどうなるか、ということをデモンストレーションしてみる、そのときにどういうことに配慮して技術の応用を考えていくべきか、あるいは、博物館・美術館ではなく他にいい適用の場があるかどうか、という点を研究会で指摘してもらえたらいいのではないだろうか。世界に対する文化発信という観点から捉えられなくもないが、そうするともっといろいろな事柄が出てくることになるだろう。まさに文化政策であり、そのひとつとしてのアーカイブ化を論じることにはなる。

まさに、文化政策を考える材料として、超高精細などの日本が持っている武器をどう位置づけるかということ。グーグルなどは、大量データを蓄積する技術を持っているので、この分野には参入しやすいだろうが、国がある程度方針をはっきり示しておけば、文化侵略みたいなのは抑えられる。

結局は資金の問題に帰結するのでは。「イノベーション25」との関連でどうデジタルミュージアムを位置づけるのか考える必要があろう。グーグルがやろうとしているのは、資金提供はいらないから文化資産のデジタル化をしてあげよう、その代わりデジタル化資産の利用権も獲得しようというビジネスモデルともいえるもの。

「イノベーション25」と絡めて、文化の発信が日本にとって大切になってくる。そのときに超高精彩のような最先端技術は、感激を与えるための有効なツールとなるだろう。そうすると、文化の発信のためにはやっぱりもとになるアーカイブがしっかりしていなければならないし、肝心なところは日本できちんと押さえておくことが肝要だということ。

技術にはいろいろなものがあって、外国に勝てる技術をベースにするのは当然。総務省の次世代構想技術委員会では、ネットワーク技術が進歩していないところに対して国の支援が必要であるとしつつも、今既に強い分野に対してもさらに支援して徹底的に差をつけておくべきだと思う。そのひとつがスーパーハイビジョン。

ネットワーク技術はグーグルなどを見てもわかるように、その発信力はものすごい勢いで伸びているが、そこでこの研究会として、どう情報発信をしていくかを考えることが重要。あまりに個別技術にこだわったようなプロジェクトを取り上げるのでなく、情報発信、映像技術、情報技術の進展の中で、ある技術がどれくらい文化の発信力を持っているかを実証する、ということはできるだろう。

(2) 事務局から、今後の進め方について説明があり、本日の議論を踏まえて骨子案を再度まとめなおし、次回会合で議論することになった。次回は3月27日に開催する予定。

(以上)

(大臣官房政策課)


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