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デジタルミュージアムに関する研究会(第4回)議事概要

1. 日時
  平成18年12月5日(火曜日)15時〜16時

2. 場所
  ルーブル−DNPミュージアムラボ

3. 出席者
 
【構成員】
(有識者) 原島主査、池内委員、大井委員、谷岡委員、田良島委員、水谷委員
(文科省) 田中大臣官房政策課長、勝野情報課長、小松伝統文化課長、関根美術館・歴史博物館室長

4. 議事等
 
(1) 原島主査より研究会の概要について紹介があった。

(2) DNPの舟橋ICC本部長よりルーブルミュージアムラボについて以下のとおり説明があった。
 
 本ミュージアムラボは、10月25日にオープンした。
 DNPは、これまでもビジネス展開を念頭に、ルーブル美術館の収蔵品をデジタルアーカイブ化してきたという経緯がある。
 本プロジェクトは、ルーブル美術館にとっては海外展開の一環であり、DNPにとっては本業を活かしたメセナ活動の一環である。
 とくにルーブル美術館には、海外からの来館者の鑑賞をいかにサポートするかという課題があり、それに対するソリューションの提示ということも視野に入れている。

(3) DNPミュージアムラボ内見学の後、意見交換があった。主なやりとりは以下のとおり。(●DNP、○構成員)
 
構成員  館内の4Kシステムで上映されていた8かける10の映像を新たに撮影するのに、どのくらいの期間を要したのか。

DNP  全3ヶ所、それぞれ3日間程度かけて撮影した。なお、8かける10の映像は新しく撮ったものであるが、その他のすべての映像まで新たに撮影したわけではない。画像の拡大が不要でクオリティが高ければ、既存の4かける5でも利用した。

構成員  既存の4かける5をもっと活用できないのか。

DNP  クオリティがよければ使えるが、8かける10でないと良い画像が得にくい。

構成員  4Kシステムの映像はかなりリアリティがあるが、電子データというのは、ディスプレイで映す場合と紙で印刷する場合のどちらにより適しているのか。

DNP  印刷物とディスプレイの映像は、基本的には加色混合と減色混合の相容れない世界なので、単純には比較できない。そもそも違うものを見ていると考えた方が良いのではないか。

構成員  映像は減色混合であるから、やはり紙の上にある本物の作品と色が異なってしまう。ディスプレイで見せるということは、本物の作品とは違ったものを見せているということになるが、これは技術的未熟さのゆえ仕方ないことなのか。

DNP  今回のプロジェクトは、絵画をそのまま4Kシステムで再現するということではなく、IT技術を使って美術作品にどのようなアプローチが可能かを一つのテーマとして行っている。美術館という環境の中では、本物の作品であってもガラスケースや照明などで見えない部分がでてくる。だが、4Kシステムを使えば、はっきりと再生・拡大することが可能になり、肉眼で観るのとは違う鑑賞が可能になる。もちろんリアリティはもっと追求したいが、美術作品の新たな見方というものを提供できればと考えている。

構成員  同じ映像でも、美術館の中で本物の作品とともに見る場合と、美術館の外で映像のみを見る場合は違う役割を果たすことになると思う。本物とともに見れば、映像は作品の鑑賞を補完するという位置付けになると考える。一方、映像のみで鑑賞すれば、それは違う位置付けのものになると思う。

DNP  ここはミュージアムではないが、ルーブル美術館から本物のジェリコーの作品を借りて展示している。我々も、本物の作品がある空間とない空間とでは、同じ映像でも提供できる見せ方が異なってくると考えている。今回は、透明スクリーンに映すことで、本物の鑑賞の邪魔にならないようにしている。

構成員  社内では、データを印刷するときの色の変化等を見極める専門家がいると思うが、映像についても同様の専門家を育てたりしているのか。

DNP  印刷に関しては10年ほど前からマイスター制度を設け、反射原稿の印刷に関してはそういった人材も確保している。また、1982年頃から最近の画像処理機器が導入されて以後、加色混合の見極めが出来る人材が育っている。一方、プラズマディスプレイや液晶、RGB以外の色を使うような新たな表現装置が次々と生まれており、それに追いつくまでにとても時間がかかる。

構成員  ある程度の規模の施設があり、映写設備等もそろっている美術館ならば、今回見せていただいたような装置は容易に設置できるのか。

DNP  単に機械だけを運び出して設置するというだけなら物理的には容易である。ただし、満足できる色を出せるかということについて、表示デバイスの性能等を含め問題が多い。今回も色の調整に2か月半かかった。

構成員  本ミュージアムラボが、予約制を採り、鑑賞時間に制限を設けているのは、このプロジェクトがまだ実験段階にあるからなのか。

DNP  元々オフィスビルとして建築されたこのビルの完成直前に、本プロジェクトが盛り込まれたということから考えると、作品を置けるようになったこと自体が画期的なことであると認識している。作品の管理等には費用がかかるため、本業をしながらの運営となると時間的制約が生じるのはやむを得ない。将来的には、ビジネスとメセナの双方をにらみながら検討している。開館時間の設定については、一般の社会人が見に来られるように、平日の夕方以降か土曜日の午後にしている。日曜日は、建物の空調管理等、予算的な制約が平日より大きいため開館していない。

構成員  メセナとビジネスという話があったが、将来のミュージアムのために費用面や機能面を含めた一つのシステムモデルを提示できるようになるまで、この取り組みを続けていくつもりなのか。

DNP  自分たちはメーカーではないので、既存技術を使ったソリューションを提示することが役割だと考えている。メーカーと共同して、その時の先端技術を導入し常に実験の場としていきたいと考えている。

構成員  デジタルデバイスをミュージアムに適用することは長い歴史があるが、ディスプレイを使うデバイスについては困難な面も多く、無難な音声ガイドを導入することで済ませがちである。作品とデバイスのどういう組み合わせがうまくいくのかは実験の繰り返しだと思うが、手持ち用のPDAの使い方について、何か独自のアイデア等はあるのか。

DNP  実はこのプロジェクトは、PDAありきで始めたのではない。ルーブル美術館のように世界各国から多数の来館者あるような美術館では、言語等の問題で来館者の作品理解が妨げられているという問題があるが、とりあえずその解決策を提示出来ないかという意識が念頭にあった。たとえば音声案内などで、館内に入ると自動的にスタートするような仕組みを構築したいと考えている。本来であればPDAよりももっと小さい音声機器の方が望ましいのであるが、PDAでないと無線LANに対応できないという問題があった。実をいうと、PDAがオーバースペックであるために地図等の他の情報を入れている。

構成員  直接デバイスとやり取りできるようになればいいと思うが。

DNP  何も持たずに聞こえてくるというのが理想ではある。本プロジェクト3年間の間に挑戦していきたい。

構成員  技術的には携帯でもできるはず。何も借りないのが本当は一番いい。

DNP  携帯ゲーム機を音声ガイドとして使っている展覧会があったが、画面の光が他人の鑑賞の妨げになっているという声もあり、考えるべき課題であると思った。

構成員  色の正確性の問題というのは、現実の色の連続スペクトルをRGBというかたちに落としているから発生する問題なのか。それとも加色や減色の方式である限りやむを得ないのか問題なのか。

DNP  RGBという形式に落としているためであると考えている。例えば減色混合の場合は、イエロー、マゼンタ、シアンを混ぜると本来黒が出るはずだが、黒のインクを入れないと真っ黒が出ない。RGBは、発色の過程でごまかしているような感じがする。信号処理の過程でもっと素直に色を出せるようなデバイスがないものかと考えている。

構成員  加色混合の方でも研究が進んではいるが、色の正確性を重要視する人が少ないと感じる。テレビの世界ではどうなのか。

構成員  普通は、視聴者がテレビの色と本物の色を比較することはありえないので問題とならない。これまでは、データの伝達や圧縮に重点をおいてきたが、今後は表現方法についてもっと研究しないといけないと考えている。もちろんカメラだけでなくディスプレイも含めて検討しないといけないと考えている。先ほど、4Kの映像は必ずしも本物を目指しているのではなく、電子データとしての活用方法に重点をおいているというような話であったが、一方で、本物がどこにいてもインターネット等を通じて見ることができるということも大切な観点であると思う。

DNP  放送や映画では色に絶対はなく、観客が望む色が正しい色になる。印刷物も今後はそのような方向に進む傾向があり、顧客の望む色をいかに出せるかという点に重心がおかれつつある。

構成員  画家は、自分の作品の表示のされ方をどう考えているのだろうか。

DNP  今回の展示に関しては、ルーブル美術館のキュレイターに色の評価・調整をお願いしている。

構成員  加色混合は困るという画家がいるかもしれない。

DNP  メディアのデジタル化に伴い、規格が混在している。今後、メディアの相互乗り入れが進むにつれて、規格の統一ということは大きな問題になってくるだろうから、本研究会の中心テーマとして御検討いただきたい。

構成員  放送分野の色について言うと、絶対的な色の正確性は問題にならず、カメラの切り替え時に違和感を与えない程度の色の統一性が保たれていればよいということになっている。また、顧客の求める色と製作者側が出したい色とが違うこともある。製作者側も、色の標準がいかにあるべきかということについて考えていくべきであろう。

構成員  超高精細のデジタル・コンテンツを使えば、持ち出しの難しい海外美術館の収蔵品を持ってくることも可能になる。例えば、海外にある日本の美術作品を国内の作品と並べて比較したり、作品への理解を深めるために用いたりということも可能になるだろう。

(4) 次回は、日程調整の上、1月以降に開催することとなった。

(大臣官房政策課)


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