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デジタルミュージアムに関する研究会(第3回)議事概要

1. 日時
  平成18年10月31日(火曜日)14時30分〜16時30分

2. 場所
  NHK放送技術研究所

3. 出席者
 
【構成員】
(有識者) 原島主査、池内委員、大井委員、田中委員(、谷岡委員)、田良島委員、水谷委員
(文科省) 田中大臣官房政策課長、勝野情報課長、生川計画官、安部伝統文化課文化財保護企画室室長補佐(小松伝統文化課長代理)、関根美術館・歴史博物館室長
(総務省) 飯尾情報流通振興課課長補佐(藤本情報流通振興課情報流通高度化推進室長代理)

4. 議事等
 
(1) NHK西山理事からNHK放送技術研究所とスーパーハイビジョン技術について、以下のとおり紹介があった。
 
 NHK放送技術研究所は75年の歴史。
 スーパーハイビジョンは2000年頃から研究を開始したが、開発にはまだ時間がかかる。前身のハイビジョンは研究開始から実用化まで30〜40年かかった。
 スーパーハイビジョンは昨年の愛知万博で初めて公開し、好評を博した。その後九州国立博物館のシアター4000で活用するとともに、欧米でも複数回の展示を行ってきている。
 ハイビジョンの16倍の情報量があるので、家庭用に提供できるまでには、カメラ・ディスプレイの開発や、伝送、符号化、圧縮等の関連技術開発を含め、まだ多くの研究開発が必要。
 一般向けの放送の前に、産業応用といった形でどのような活用が可能かも検討していく必要がある。九州国立博物館での実用例が参考となる。

(2) NHK放送技術研究所内の見学の後、意見交換があった。主なやりとりは以下のとおり。(●NHK、○構成員)
 
構成員  撮影するときに、人間の目でピントが合わせられるのか。

NHK  特に暗いときには、非常に難しい。技術的な課題のほかにカメラマンの能力の問題の2つの問題がある。オートフォーカスの技術開発を進める必要がある。

NHK  ピントの問題はハイビジョンにも共通している。最近の受像器の高性能化を受け、わずかなピントのずれもはっきりと見えるようになってきた。高齢化社会でもあり、カメラマンの視力も低下している。ピントが合っているか分かるような機能、オートフォーカス機能といったものの開発が必要。ハイビジョンですらそのような状況であるから、スーパーハイビジョンはなおさらである。

NHK  現場のカメラマンは、フォーカスよりもカメラワークの方に力が入る。

構成員  目の疲れ等を考えると発光型には限界がある。自然に近くディスプレイで見ていることを意識させないような、反射型ディスプレイを開発していただきたいが、研究開発状況はどうか。

NHK  現時点で高画質なものとなると発光型しかない。しかし、画素数が多くなると、目の疲れの問題も顕著になり、自然さという側面も考慮して反射型のディスプレイも開発していかなければならないと考えている。反射型は消費電力の面でも優れているが、高画質面からは発光型となる。

構成員  文化財のように静止しているものを撮る上での技術的な問題は何か。

NHK  感度がまだ弱い。ある程度明るくしておかないと撮れない。

構成員  静止画の場合は、必ずしも動画用のスーパーハイビジョンで撮る必要はない。

NHK  九州国立博物館のコンテンツの作成過程を説明すると、まず12000bpiドラムスキャナでデジタルアーカイブ化を行う。その後アスペクト比16対9にトリミングして、スーパーハイビジョンの倍かける倍の画素数のデータとし、この時点で色の補正、コントラストの補正、絵の修復を学芸員とともに行う。それをファイルとして保存した後、そのファイルをベースにスーパーハイビジョンのプロジェクタにあわせた補正を行っている。

構成員  色の再現などはどうしているのか。出てきた映像を見て修正するのか。

NHK  最初の段階では、AdobeRGBという色の信号形式に処理している。その後、学芸員が主観的に補正する。最後には、スーパーハイビジョンのプロジェクタの色再現の範囲にあわせるように補正をしている。それが完璧な方法かどうかは明言できないが、マスターも保存してあるので、例えばスーパーハイビジョンの色再現の範囲が変われば、デジタルアーカイブ化したマスターのところからやり直すことで対応可能である。

構成員  美術館の立場としては、スーパーハイビジョンに対応するために、いい写真素材を用意することが大切なのか、それともいい撮影環境を作ることが重要なのか。ハイビジョンのときは、撮影に来る場合とフィルムを貸す場合の2通りがあった。フィルムを貸す方が現場は楽である。

NHK  何が最も重要かは一概に言えないが、九博が一つの実験場となると思う。

構成員  アーカイブの素材として考えたとき、平面のものもあれば、3次元の物体もある。撮影する対象によって撮り方が変わってくると思うが、その点についてはどうか。

NHK  ハイビジョンで壷をアーカイブ化した例などはあるが、どういう美術品をどのように見せたいか、個々の作品にとって最もふさわしい見せ方を考えていく必要がある。

構成員  スーパーハイビジョンの解像度は、フィルムに負けているのか。

NHK  フィルムの大きさで決まると思う。今日見ていただいたカメラは、対角が22ミリ弱だが、今度開発するさらに高解像度のカメラは対角が40ミリ近くある。

構成員  一枚の絵を撮るということでは、8かける10のフィルム等に比べるとまだ物足りない感じがある。

NHK  静止画であっても、今のカメラでは絶対感度が足りず強い照明が必要となるので、美術品という点からは問題が多いかもしれない。ただ、静止画の場合ならばシャッター時間を長くするという方法もある。60分の1秒のシャッタースピードを1秒にすれば、感度は60倍になる。

構成員  動画を扱うということであれば、フィルムよりスーパーハイビジョンの方が勝っているのではないか。デジタルミュージアムをどのように考えるかという問題がある。現在、美術館等にあるものはほとんど止まっているが、それは今まで技術がなかったから止まっているものしか扱えなかったということの裏返しかもしれない。そうであるならば、技術の進歩によって、美術館に収蔵されるものも変わっていく可能性があるのではないか。

構成員  デジタルミュージアムを美術館等における収蔵物の新しい見せ方に係わるソリューションとして考えるのか、それとも箱に入って止まっているもの以外も美術館の概念に含める新しい動きとして考えるのか、ということである。どちらにしろ、面白いものを見せられたらいい。

構成員  所蔵品を持たず、映像等を美術品として扱う美術館もできてきた。それらの取組とスーパーハイビジョンの融合ということもあり得る。

構成員  先進的な美術館がある一方で、地方にある一般的な美術館などでは、4かける5、8かける10などのフィルムを撮ることも現状としては難しいのではないか。


(3) 次回は日程調整の上、開催することとなった。

(大臣官房政策課)


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