 |
先ほどの装置ではRGBでデータをとっているが、RGBとは違うものでの展開は考えられないのか。というのも、確かにディスプレイということを考えるとRGBでよいかもしれないが、RGBデータというのは特定のスペクトルをサンプリングしただけのもので、アーカイブを行うならば、もう少し連続性のあるスペクトルがよいのではないか。また、顔料の推定のところで連続スペクトルが出ていたが、あれはどのようにして採ったのか。
|
 |
RGB以外のデータ形式でも技術的には十分可能であるが、ディスプレイへの適用を念頭に置き、RGBのデータ形式にしている。2つ目の質問だが、このプロジェクトでは、光の条件と撮影の条件等をもとに、RGBの3色のデータから連続分光反射率のスペクトルの推定を行っている。その推定誤差はほぼ1〜2パーセント以内である。
|
 |
一般の顔料というのは3つあるいは4つの基底関数であらわすことができるというふうに言われている。誤差が1〜2パーセントということだが、これはRGB以外の4つ目の基底関数の影響がその程度ということか。
|
 |
4つの関数云々の話は初耳だが、分光反射率はRGBデータからの逆算で、簡単に推定できる。それも、高度なマトリックス変換で処理しているので、非常に正確な結果が出る。
|
 |
退色したり見えなくなった色を再現でき、顔料のデータ化まで可能なスキャナは非常に興味深い。前回の研究会で説明したように、九州国立博物館のシアター4000のコンテンツについては、既存の4 5あるいは8 10のフィルムが退色し、鮮明さが不十分であったため、ほとんど新たに作成することになった。その作業は、相当技術が優れたプロカメラマンでないとできないものであり、非常に困難だった。当該スキャナは、素人でも簡単にできるということで非常に興味深い。また、仏像とか漆器類といった立体物についても、このスキャナでそのまま撮影できるのか。
|
 |
立体物は現時点では考えていない。そのためには、スキャナの精細度を今のほぼ10倍以上に上げる必要があるが、技術的に可能でも予算等の都合でそこまでいけない。
|
 |
スキャニングしている際の被写体への照度はどれぐらいなのか。発表では、約3週間分の光が当たると言っていたが、多すぎるのではないか。
|
 |
多いように聞こえるかもしれないが、日本よりも厳しいヨーロッパの基準で見て最低保証できるという値である。
|
 |
展示時間の積算ということであれば、3週間という話はそれほど違和感はない。
|
 |
こらから高齢者が増えていくと思われるが、彼らの視力では50ルクスや20ルクスの照度で展示されてもほとんど鮮明に見えないと思う。しかし、こういったシステムを使うことで明るく変換して見せることができればよい。
|
 |
そういう観点は、未来型博物館にとって非常に重要である。まだ初期段階ではあるが、ヨーロッパでは、目に障害をもつ人に対してどういう表現をし、どういう博物館づくりをしていくかというテーマとして非常に重要視されている。
|
 |
このスキャナは非接触ということだが、絵画の微妙な凹凸はどの程度まで撮れるのか。
|
 |
この装置では大体6ミリ以上の凹凸であれば問題ない。小型スキャナの場合は2ミリくらいである。予算をかければ、さらに程度を上げることができると思う。
|
 |
データの展示までには、デジタルデータの採取、コンテンツ作成、人々への見せ方の工夫という3つの段階がある。その3つがうまく連続することでデータを非常に有効に活用できるわけだが、つくられたデジタルデータの権利等、データの保全管理はどのように行っているのか。また、美術館だけではなく他の様々な場所で見せることができたらいいが、そういう意味でハードウエア的な問題というのはどのようなものか。
|
 |
社寺などでの使用も可能になるように、表示システムをワンセット100万円以下に持っていきたいと考えている。データ管理の問題については、データベースをつくり、学芸員などがアクセスできるようなシステムを考えている。権利関係については、非常に難しい問題が存在しており、自分たちは現時点では、原則、全面的に相手の権利にしている。個人的には、そのような文化財のコンテンツ化が望ましいと思う。
|
 |
権利関係については、複雑な問題が絡んでくるので、今後様々なケースを想定して整理していく必要があるだろう。
|