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デジタルミュージアムに関する研究会(第2回)議事概要

1. 日時
  平成18年10月20日(金曜日)10時〜12時

2. 場所
  文部科学省宇宙開発委員会会議室

3. 出席者
 
【構成員】
(有識者) 原島主査、池内委員、大井委員、田中委員、田良島委員、水谷委員、谷岡委員
(文科省) 田中大臣官房政策課長、勝野情報課長、生川計画官、小松伝統文化課長、関根美術館・歴史博物館室長
(総務省) 藤本情報流通高度化推進室長、飯尾総合政策課課長補佐(坂本総合政策課長代理)
【事務局】 結城事務次官、その他関係係官

4. 議事等
 
(1) 前回欠席のNHK技術研究所谷岡委員から挨拶があった。

(2) 科学技術振興機構研究成果活用プラザ京都の松波弘之館長及び京都大学国際融合創造センターの井手亜里教授より、超高解像度大型平面入力スキャナの開発等について発表があった後、意見交換があった。主なやりとりは以下のとおり。(●発表者、○構成員)
 
構成員  先ほどの装置ではRGBでデータをとっているが、RGBとは違うものでの展開は考えられないのか。というのも、確かにディスプレイということを考えるとRGBでよいかもしれないが、RGBデータというのは特定のスペクトルをサンプリングしただけのもので、アーカイブを行うならば、もう少し連続性のあるスペクトルがよいのではないか。また、顔料の推定のところで連続スペクトルが出ていたが、あれはどのようにして採ったのか。

発表者  RGB以外のデータ形式でも技術的には十分可能であるが、ディスプレイへの適用を念頭に置き、RGBのデータ形式にしている。2つ目の質問だが、このプロジェクトでは、光の条件と撮影の条件等をもとに、RGBの3色のデータから連続分光反射率のスペクトルの推定を行っている。その推定誤差はほぼ1〜2パーセント以内である。

構成員  一般の顔料というのは3つあるいは4つの基底関数であらわすことができるというふうに言われている。誤差が1〜2パーセントということだが、これはRGB以外の4つ目の基底関数の影響がその程度ということか。

発表者  4つの関数云々の話は初耳だが、分光反射率はRGBデータからの逆算で、簡単に推定できる。それも、高度なマトリックス変換で処理しているので、非常に正確な結果が出る。

構成員  退色したり見えなくなった色を再現でき、顔料のデータ化まで可能なスキャナは非常に興味深い。前回の研究会で説明したように、九州国立博物館のシアター4000のコンテンツについては、既存の4かける5あるいは8かける10のフィルムが退色し、鮮明さが不十分であったため、ほとんど新たに作成することになった。その作業は、相当技術が優れたプロカメラマンでないとできないものであり、非常に困難だった。当該スキャナは、素人でも簡単にできるということで非常に興味深い。また、仏像とか漆器類といった立体物についても、このスキャナでそのまま撮影できるのか。

発表者  立体物は現時点では考えていない。そのためには、スキャナの精細度を今のほぼ10倍以上に上げる必要があるが、技術的に可能でも予算等の都合でそこまでいけない。

構成員  スキャニングしている際の被写体への照度はどれぐらいなのか。発表では、約3週間分の光が当たると言っていたが、多すぎるのではないか。

発表者  多いように聞こえるかもしれないが、日本よりも厳しいヨーロッパの基準で見て最低保証できるという値である。

構成員  展示時間の積算ということであれば、3週間という話はそれほど違和感はない。

構成員  こらから高齢者が増えていくと思われるが、彼らの視力では50ルクスや20ルクスの照度で展示されてもほとんど鮮明に見えないと思う。しかし、こういったシステムを使うことで明るく変換して見せることができればよい。

発表者  そういう観点は、未来型博物館にとって非常に重要である。まだ初期段階ではあるが、ヨーロッパでは、目に障害をもつ人に対してどういう表現をし、どういう博物館づくりをしていくかというテーマとして非常に重要視されている。

構成員  このスキャナは非接触ということだが、絵画の微妙な凹凸はどの程度まで撮れるのか。

発表者  この装置では大体6ミリ以上の凹凸であれば問題ない。小型スキャナの場合は2ミリくらいである。予算をかければ、さらに程度を上げることができると思う。

構成員  データの展示までには、デジタルデータの採取、コンテンツ作成、人々への見せ方の工夫という3つの段階がある。その3つがうまく連続することでデータを非常に有効に活用できるわけだが、つくられたデジタルデータの権利等、データの保全管理はどのように行っているのか。また、美術館だけではなく他の様々な場所で見せることができたらいいが、そういう意味でハードウエア的な問題というのはどのようなものか。

発表者  社寺などでの使用も可能になるように、表示システムをワンセット100万円以下に持っていきたいと考えている。データ管理の問題については、データベースをつくり、学芸員などがアクセスできるようなシステムを考えている。権利関係については、非常に難しい問題が存在しており、自分たちは現時点では、原則、全面的に相手の権利にしている。個人的には、そのような文化財のコンテンツ化が望ましいと思う。

構成員  権利関係については、複雑な問題が絡んでくるので、今後様々なケースを想定して整理していく必要があるだろう。


(3) 東京大学情報学環・学際情報学府教授の池内克史委員からデジタルミュージアムに向けての研究開発について発表があった後、意見交換があった。主なやりとりは以下のとおり。(●発表者、○構成員)
 
構成員  コンテンツ作成技術は、対象物が大きくなるほど難しくなるということなのか。

発表者  大きくても難しいし、小さくても難しい。

構成員  小さいほうの問題というのは何か。

発表者  極めて小さい領域で、センサーに一定の精度を求められるのか、また、そのような領域で果たして色とは一体何かとかいった問題である。

構成員  学術情報の流通という側面から、蓄積したデータをどのように利用可能にするかということが問題になると思うが、どのような対応をしているのか。また、例えば30年後に文化財等の修復などのためにデータが必要となった場合、それをどのように受け渡すのか。

発表者  著作権はデータを採ったほうにあるというのが個人的意見だが、今は大学側50、相手側50としている。データ利用については、サンプルをWebに載せており、学術目的なら無料でダウンロードできるようにしている。民間用には有償にすべきではないかという意見があるので、学内ルールをつくっている。


(4) 次回は10月31日(火曜日)に開催し、NHK放送技術研究所においてスーパーハイビジョンを視察することとなった。

(大臣官房政策課)


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