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デジタルミュージアムに関する研究会(第1回)議事概要

1. 日時
  平成18年9月11日(月曜日)13時30分〜15時25分

2. 場所
  文部科学省10F3会議室(10階)

3. 出席者
 
【構成員】
(有識者) 池内委員、大井委員、田中委員、田良島委員、原島委員、水谷委員、NHK放送技術研究所 渡辺次長(谷岡委員代理)
(文科省) 田中大臣官房政策課長、勝野情報課長、生川計画官、小松伝統文化課長、関根美術館・歴史博物館室長
(総務省) 阪本総合政策課長、藤本情報流通高度化推進室長
【事務局】 結城事務次官、その他関係官

4. 議事等
 
(1) 小坂大臣から、初会合開催に当たり携帯電話を通じて以下のとおり挨拶があった。
 
 将来的に子どもも大人もそれぞれの地域の図書館や博物館で、デジタルアーカイブ化された世界の美術品や日本の国宝・重要文化財などを細部まで見られるようになれば、それによって本物に触れたいという気持ちも高まると思う。
 テクニカルな問題から財政的な問題まで、いろいろ研究しなければならないテーマがあると思うが、それぞれの委員の方々の御専門の知識をお借りして、議論を進めていただきたい。

(2) 結城事務次官から、研究会の趣旨説明を含めて以下のとおり挨拶があった。
 
 この研究会は、我が国が保有する数々の価値ある文化財を次世代型デジタル映像技術を活用してアーカイブ化し、時間と空間の制約を受けずに直接視覚で捉えたものとほぼ同じ映像によって、鑑賞体験が一般国民にも可能となるようなデジタルミュージアムというものについて研究開発構想を練るために、小坂大臣のイニシアティブにより設置することとなったもの。
 研究会では、文化財等の次世代型デジタルアーカイブ化及びアーカイブの活用・流通・ネットワーク化に必要な技術の研究開発構想と、デジタルミュージアムの実証のためのシステム研究開発構想の2点について特に検討いただきたい。
 文部行政と科学技術行政の両方を所管する文部科学省として、これらの融合・統合による新しい施策への取組みのひとつとしても、この研究会を重視している。来年3月をめどに研究構想を取りまとめていただき、提言内容については平成20年度予算要求につなげていくことも考えている。
 委員の皆様には忌憚ない意見をお聞かせいただくとともに、格別の御協力を賜りたい。

(3) 主査に原島委員が選出され、主査代理に池内委員が指名された。その後、各委員より自己紹介があり、原島主査から以下のとおり挨拶があった。
 
 私の好きな言葉に「現在というのは過去から未来へのかけ橋である」というのがある。IT関係の世界では今しかないという感覚に陥りがち。一方で文化を見るときには、過去があり、未来があり、現在はあくまでその流れの中のかけ橋でしかないという考え方が大切なのではないか。そのかけ橋となるために、今ある技術をどう生かしていくのかが大切なこと。
 今年の1月に文部科学省の会議で「文部省と科学技術庁が一緒になった今、科学技術庁と文化庁を結びつけることが、文部科学省の役割ではないか」と啖呵をきったことがある。その発言の責任を取るために、今回、自分が主査になることになったのではないかと思う。

(4) NHK放送技術研究所及び大井委員からNHKが開発したスーパーハイビジョンについて発表があった。引き続き、田良島委員から東京国立博物館における文化財のデジタルアーカイブ化の取組について発表があった後、一括して意見交換が行われた。主なやりとりは以下のとおり。(●発表者、○その他の構成員)
 
発表者  スーパーハイビジョンのシステムとして考えているのは、RGBという三原色をベースにしたもの。最近は受像機自体が従来のものよりも色再現が広いものがでてきているため、解像度を重視しているスーパーハイビジョンについても、より豊かな色が表現できるシステムについて今後検討していく必要はあると思うが、当面は現段階で手に入るRGBを基本にしている。

発表者  明るさの深度やビット数についても、今のところ現在の開発レベルのもので概ね事足りていると考える。超高精彩の技術ということになると、静止画であればこれを越える技術が存在するかもしれないが、動画であれば今のスーパーハイビジョンを越えるものはまだないはず。文化財を再現するのに十分な技術かどうかという疑問はあるが、スーパーハイビジョンも技術的にはまだ完全とは言えず、完成までにはもうしばらく時間がかかると思っているので、議論を進めていく上では、今あるものをとりあえずベースに考えていくのもいいと思う。

発表者  スーパーハイビジョンが実用化される際には、圧縮されたものが伝送されることになるが、そのための高圧縮技術についても現在研究中。

発表者  九州国立博物館ではスーパーハイビジョンの映像シアターが備え付けられているが、ここでは新撮した静止画を使いながらストーリー仕立てにしたものを上映している。

その他の構成員  博物館ではマイクロフィルム資料をたくさん持っていると思うが、そろそろ寿命が来ているのではないか。置き換えなどはしているのか。

発表者  確かにマイクロフィルム資料は劣化が避けられないものだが、東京国立博物館ではまだそこまで劣化しているものはないこともあって、バックアップは進んでいない。しかしながら将来的には、学術利用目的に資するためにも、データのデジタル化を考える必要があると思う。

発表者  TV側の経験から言っても、従来のフィルムは劣化が避けられないので、早くデジタル処理してアーカイブ化を進めているところ。(博物館等が保有する)収蔵品を撮影したフィルムも劣化するわけで、撮影したものを幅広く公開していくことを考えるのなら、早いうちにデジタル処理しておくことが重要。

発表者  博物館・美術館では収蔵品のデジタルアーカイブ化を進め、それを公開・ネットワーク化につなげていくための技術的なバックグラウンドが十分でない。収蔵品を保有する側としては、保存管理の方法には長期的・安定的に使えるような技術が好ましいが、保存されたものの利用の仕方はバラエティに富んでいていいと思う。そのための試みに博物館自ら取り組むのは様々な理由から難しいものの、そうした取組を通じて、博物館・美術館の認知度が上がり、博物館・美術館の意義が生かされていくことになる。

その他の構成員  九州国立博物館のようなシアター型の大きな画面とシステムを伴った設備を博物館や美術館が作るのは、現実問題として難しい。公開が制限されている収蔵品を代替的にデジタル技術で鑑賞する機会を提供したり、遠隔地の人々にもインターネットを介して多くの作品の鑑賞機会を提供したりするため、ここ数年文化庁と協力して文化遺産オンラインの整備等を進めてきたところ。ハイビジョン技術については、これまで博物館・美術館にうまく取り入れられた例は少ないと感じている。

発表者  九州国立博物館のように、ストーリー仕立てにしたスーパーハイビジョン映像を上映するにはコストがかかることはもっともだが、収蔵品のデジタル画像を単に連続して見せるだけでも十分観覧に耐えうるコンテンツになるはず。ネット上でのデータベースの公開とスーパーハイビジョンシステムによる収蔵品のアーカイブ化を同時に考えていくには、確かに検証すべきことも多いが、それは今後研究会で議論を深めていくことである。

その他の構成員  この研究会を立ち上げるにあたって、小坂大臣からは、本物に接するのと全く同じような印象・感動を与える映像を文化遺産にも当てはめることはできないだろうか、そして将来的にそのような映像が実用化したときには一般化しているであろう最先端の技術をベースに考え、実現に向けた研究開発構想を作るために知恵を絞ってほしいと言われている。現在すでにある文化遺産オンラインの類の重要性ももちろん認めつつも、それとは少し違うような取り組み方について議論を尽くすようにとも言われている。

その他の構成員  デジタルデータの強みには、普通では見えないものや通常公開されていないものが見られる、例えば、九州国立博物館では普段見られない遺跡の昔の状況を映像にして見せることができるということもある。遺跡のある現場でデジタル技術で再現された古代の姿を見せるというようなミュージアムのあり方も、ひとつの方向性としては考えられるだろう。

(5) 事務局から今後のスケジュールについて説明があり、研究会は概ね月1回をめどに開催していくことで合意された。

(6) 次回は10月中〜下旬に開催することとなった。

(大臣官房政策課)


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