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スーパーハイビジョンのシステムとして考えているのは、RGBという三原色をベースにしたもの。最近は受像機自体が従来のものよりも色再現が広いものがでてきているため、解像度を重視しているスーパーハイビジョンについても、より豊かな色が表現できるシステムについて今後検討していく必要はあると思うが、当面は現段階で手に入るRGBを基本にしている。
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明るさの深度やビット数についても、今のところ現在の開発レベルのもので概ね事足りていると考える。超高精彩の技術ということになると、静止画であればこれを越える技術が存在するかもしれないが、動画であれば今のスーパーハイビジョンを越えるものはまだないはず。文化財を再現するのに十分な技術かどうかという疑問はあるが、スーパーハイビジョンも技術的にはまだ完全とは言えず、完成までにはもうしばらく時間がかかると思っているので、議論を進めていく上では、今あるものをとりあえずベースに考えていくのもいいと思う。
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スーパーハイビジョンが実用化される際には、圧縮されたものが伝送されることになるが、そのための高圧縮技術についても現在研究中。
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九州国立博物館ではスーパーハイビジョンの映像シアターが備え付けられているが、ここでは新撮した静止画を使いながらストーリー仕立てにしたものを上映している。
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博物館ではマイクロフィルム資料をたくさん持っていると思うが、そろそろ寿命が来ているのではないか。置き換えなどはしているのか。
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確かにマイクロフィルム資料は劣化が避けられないものだが、東京国立博物館ではまだそこまで劣化しているものはないこともあって、バックアップは進んでいない。しかしながら将来的には、学術利用目的に資するためにも、データのデジタル化を考える必要があると思う。
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TV側の経験から言っても、従来のフィルムは劣化が避けられないので、早くデジタル処理してアーカイブ化を進めているところ。(博物館等が保有する)収蔵品を撮影したフィルムも劣化するわけで、撮影したものを幅広く公開していくことを考えるのなら、早いうちにデジタル処理しておくことが重要。
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博物館・美術館では収蔵品のデジタルアーカイブ化を進め、それを公開・ネットワーク化につなげていくための技術的なバックグラウンドが十分でない。収蔵品を保有する側としては、保存管理の方法には長期的・安定的に使えるような技術が好ましいが、保存されたものの利用の仕方はバラエティに富んでいていいと思う。そのための試みに博物館自ら取り組むのは様々な理由から難しいものの、そうした取組を通じて、博物館・美術館の認知度が上がり、博物館・美術館の意義が生かされていくことになる。
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九州国立博物館のようなシアター型の大きな画面とシステムを伴った設備を博物館や美術館が作るのは、現実問題として難しい。公開が制限されている収蔵品を代替的にデジタル技術で鑑賞する機会を提供したり、遠隔地の人々にもインターネットを介して多くの作品の鑑賞機会を提供したりするため、ここ数年文化庁と協力して文化遺産オンラインの整備等を進めてきたところ。ハイビジョン技術については、これまで博物館・美術館にうまく取り入れられた例は少ないと感じている。
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九州国立博物館のように、ストーリー仕立てにしたスーパーハイビジョン映像を上映するにはコストがかかることはもっともだが、収蔵品のデジタル画像を単に連続して見せるだけでも十分観覧に耐えうるコンテンツになるはず。ネット上でのデータベースの公開とスーパーハイビジョンシステムによる収蔵品のアーカイブ化を同時に考えていくには、確かに検証すべきことも多いが、それは今後研究会で議論を深めていくことである。
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この研究会を立ち上げるにあたって、小坂大臣からは、本物に接するのと全く同じような印象・感動を与える映像を文化遺産にも当てはめることはできないだろうか、そして将来的にそのような映像が実用化したときには一般化しているであろう最先端の技術をベースに考え、実現に向けた研究開発構想を作るために知恵を絞ってほしいと言われている。現在すでにある文化遺産オンラインの類の重要性ももちろん認めつつも、それとは少し違うような取り組み方について議論を尽くすようにとも言われている。
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デジタルデータの強みには、普通では見えないものや通常公開されていないものが見られる、例えば、九州国立博物館では普段見られない遺跡の昔の状況を映像にして見せることができるということもある。遺跡のある現場でデジタル技術で再現された古代の姿を見せるというようなミュージアムのあり方も、ひとつの方向性としては考えられるだろう。 |