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建築学会規準では、汚染濃度の測定にあたって、サンプリング方法の指定もしているのか。
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限定はしていないが、数種類推奨している。
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ダクト清掃によって室内の汚染レベルを下げることは可能か。
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ダクトクリーニング専門業者に具体的な指示をすれば、可能であると思う。
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清掃の手法について評価を行うような団体は存在しているのか。
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業界団体には、標準的な評価法を定めているところもある。
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建築学会規準は、具体的にどういう種類の微生物を対象としているのか。一つの測定法では、空気中に存在する菌のうち特定のものしか観察できないのではないか。
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そういう点では、不十分な点もあるかもしれないが、従来からの慣例にも従いつつ、データを評価することで対応している。
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少し違う培地を使うだけでも数値が変わってしまう可能性はある。
また、微生物濃度を測れない場合にはその代替としてCO2(二酸化炭素)や粉じんの量を測ることによって真菌の量を予想するという方法も考えられるが、必ずしも一定の値が出ない。
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規準等の作成にあたって微生物由来のVOCを考慮しているのか。
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微生物の出す化学物質は、他の建材から出るものに比べると微量なため、微生物由来のVOCの数値を一般化することはできていないというのが現状である。
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微生物汚染を抑えるために、ダクトの清掃や換気が効果的とのことだが、ほかにも対策はあるのか。
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湿度制御などもある。湿度が上がるとカビの繁殖には好条件となってしまうので、50パーセントぐらいの低湿度を一定に保つということが重要。
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収蔵庫などでは、展示室に比べて外気の取り入れが少なくなる。そのような場合には、空気清浄機が効果的ということか。
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ご指摘のとおり、カビの粒径は大きいため、一般のフィルターでもある程度除去できる。
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建築学会規準における評価について、微生物の量が重要という話があったが、カビの種類を決めることによって性質がある程度分かるので、種を決めることも大切だと思う。
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種の同定については、同定する者の技術によって結果が左右される。培地の種類から見て、入るわけがないという菌が属として同定されてくることもある。現場サイドで菌数が重要になるのも分かるが、同属のカビが非常に多く出るという異常例もあり、やはり属や種の把握も重要ではないか。
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例えば浮遊粉じんでもって浮遊カビを予測するということは、限定的な条件下では可能である。しかしながら、粉じんの測定では観測できない菌もあるので、そういう場合は別途種の同定が必要になる。
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本規準は、維持管理規準として評価のために使うという方向に向きがちだが、設計規準として設計段階でも活用してほしい。だが、現場では対応しきれていないのが実情。
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美術館の収蔵庫は、博物館の収蔵庫と比べると、精度が高く収蔵物も少ないのでカビが生えにくい構造になっている。一方、自然史博物館等は収蔵物が汚くカビが生えやすい。このような事実も知っておいていただきたい。
空気清浄機を用いたとしても、博物館の収蔵庫は大きなものでは高さが七、八メートルもあるので、その空気をろ過しきれるのかという疑問がある。また、収蔵物によって空気が滞留する場所が出てきたりするなど、設計当初の空調では対応しきれない可能性もあると考えられる。
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確かに美術館と博物館では条件が違うが、博物館で測定したデータだけでもそれに基づく対処法を提供することはできるはず。企画、設計、施工、維持管理の4段階に分けた場合、企画の段階で、陳列ケースに入れなくても美術品が劣化しないよう、小まめなゾーニングとスポット的な空調を利用した設計も考える必要があると考えている。
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博物館の収蔵庫等において、微量の空気の流れを測定する方法はあるのか。
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空気調和・衛生工学会では、換気効率の測定法に関する基準づくりをやっている。トレーサーガスという特別なガスを利用し、その濃度分布をはかることによって滞在時間を推定することができるが、一般利用に向いている方法ではない。また、空気の流れを推定しても、換気設備を新たに設置することは容易にはできないため、設計当初想定された空気の流れを妨げないような物の配置を心がけるということくらいしかできないだろう。
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設計規準のパラメータとして、人の流れや動線というものはどのように扱っているのか。
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既存のものは動線等については考慮していない。ただ、美術館や博物館等では、保存用空調の観点からも動線等について考慮していかなければならないと考える。
また、収蔵庫に物を入れると中の空気量が減り、微生物濃度が上昇するため、収蔵物の容量についても考える必要がある。 |