 |
白色腐朽と褐色腐朽についてリグニンの分解方法に違いはあるのか。
|
 |
白色腐朽菌は分解酵素を出すためにリグニンの分解が起こる。褐色腐朽菌についてはよく分かっていないが、ラジカルによってリグニンを変質させるという考えがある。
|
 |
リグニンの分解による強度への影響はどの程度か。
|
 |
セルロースが強度に直結するのは間違いないが、リグニンの影響は定かではない。ただし、セルロースを鉄筋にたとえればリグニンはその周りにあるコンクリートであり、リグニンがなくなることでセルロースが圧縮等に弱くなるという影響は考えられる。
|
 |
心材には精油等の抽出成分が含まれ、腐朽に対する抵抗性が強いということだったが、文化財に使われている木材には経験的にそのような木材が多いと考えることはできるか。
|
 |
基本的に良い木材の良い部分が使われていたと考えられる。ただし、抽出成分が時間をかけて失われ、表面の抵抗性が落ちている可能性はある。
|
 |
抗原抗体反応や遺伝子を利用した診断方法の紹介があったが、これらは特定の菌種を区別した対策につながるのか。
|
 |
そこまでは至っておらず、木材に発生したのがカビか腐朽菌かを見分ける目的で使用されている。カビの場合は強度に影響を及ぼさないため、次亜塩素酸による処理と乾燥くらいで大丈夫だが、腐朽菌の場合はしっかりとした対応が必要になる。
|
 |
カビは強度に影響を及ぼさないということだが、糖やセルロースは分解しないのか。
|
 |
木材の場合、セルロースの周りにはリグニンが豊富にあり一般的なカビが分解できない状態になっているため、カビは強度にほとんど影響を及ぼさない。
|
 |
木によってカビに強かったり弱かったりすると思うが、強い木にはどのようなものがあるのか。
|
 |
一般に精油を多く含む木が強い。
|
 |
含水率300パーセントでは腐朽が進行しないとのことだが、それはどのような状態か。
|
 |
ほとんど飽水状態であり、細胞中に水が入っている。それにより空気が十分に得られず、腐りにくくなる。
|
 |
艀(はしけ)でも空気に当っている部分が腐って、水に浸かっている部分は腐らない。
|
 |
現在流通している建築材等は何らかの形で防腐や防黴加工がされているのか。
|
 |
例えば住宅に使用する木材の場合、使う場所によっては処理することが義務付けられているが、それ以外では特に処理は行われていない。その他、木を伐る時期によっては、辺材変色による商品価値の低下を防ぐために処理を施すこともある。
|
 |
軟腐朽は高含水率の木材に見られるとのことだが、含水率100パーセントというイメージか。
|
 |
詳しくは存じ上げないが、本によると木製貯水槽の腐朽といった例が挙げられていることから、含水率300パーセントに近い条件ではないか。
|
 |
そのような特殊な菌もいるということか。
|
 |
そのとおり。
|
 |
物理的処理として熱処理の紹介があったが、抽出成分等も蒸発するものと考えられる。効果の持続性はどうか。
|
 |
熱処理の場合は処理温度によって効果が大きく異なり、200度を超えると効果が大きくなる。ただし強度の低下や変色といった問題が伴ってくる。抽出成分等だけでなく、菌のエサとなるヘミセルロース等も分解しているとすれば、効果の持続性が期待できる。
|
 |
以前、木材の不燃化を目的としたコーティング剤として珪酸を主体とした薬剤を紹介してもらったことがあるが、そのようなものに防腐効果は望めないのか。
|
 |
表面を完全に覆えればよいが、膨張率の違い等によりクラックが生じた場合には効果は望めないだろう。
|
 |
腐朽診断の1つとして超音波を用いる方法の紹介があったが、文化財への適用されているのか。
|
 |
文化財分野への適用は定かではないが、X線を用いているのは見たことがある。
|
 |
文化財にも適用されている。腐朽が進行している場合には音波も使用できる。このような測定関係の研究を行っている文化財系の研究者もいる。 |