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これまでの経験の中で、制御が難しい細菌やカビはあるか。
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耐酸性菌や耐熱性菌は制御が難しい。カビについては、アルコール噴霧によりアスペルギルスを抑えたと思ったら、代わりにクロカビが生えるなど、食品の専門家でもメカニズムが分からない事例が起こる。また、砂糖の入った清涼飲料水にクラドスポリウムが繁殖する事故が年に1、2回程度ある。
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包装材料自体の無菌化はどのように行っているのか。
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バイオクリーンルームの中で包装材料をつくる方法と無菌充填包装に用いる包装容器を過酢酸と過酸化水素水の混合薬剤で殺菌する方法の2通りがある。
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バイオクリーンルーム自体の信頼性はどの程度か。
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バイオクリーンルームだからといって確実に信頼できるものではない。HEPAフィルターを使って空調を行っている間はよいが、実際に人間が出入りすると汚れてしまう。そのため、使用に際しては3日間程度、浮遊菌や付着菌の測定を行っている。
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主要な殺菌方法が色々と挙げられているが、文化財を劣化させる可能性が小さいと思われる方法はどのようなものか。
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熱を加えられれば一番よい。そのほかにはアルコール噴霧とともに紫外線を照射する方法、過酸化水素のような殺菌剤をガス化させて静電気により吸着させる方法などが考えられるのではないか。
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文化財への使用ということでは一般に酸化性のあるもの、還元性のあるものは用いづらい。また、熱も形態変化を引き起こしやすいため避けることが望ましい。水没した多量の書籍に対してガンマ線を照射することがあるが、資料に与える影響を知りつつ、やむを得ず行う処置であり、定常的に用いる手法ではない。
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ガンマ線や電子線など、食品分野では安全性の問題等により使用できない技術であっても、可能性があるのではないか。
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文化財にも色々とあるし、ケースによっても違う。一概に使える、使えないと決めてしまうのはよくないのではないか。
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レトルト食品の充填など、実際に無菌包装を行う部屋で事故が起こった場合、食品分野ではどのような対応を行っているのか。
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レトルト食品の場合は前処理と充填の工程のみクリーンルームで行っているが、クラス10,000程度であり、洗浄・殺菌は普通の施設と変わらない。
ハムやソーセージについては、特に包装過程はクラス1,000のクリーンルームで行っており、厳しく管理されていると言える。その場合でも人間が出入りする関係から、通常は次亜塩素酸ソーダのような一般的な殺菌剤を用いてスチーム殺菌を行っている。発表では温度30度以上、湿度70パーセント以上という高温多湿の条件下でホルマリンによる殺菌を行うと説明したが、これは年に1、2回行う程度である。 |