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自然史標本にカビが発生する場合、博物館に収蔵される前の原因による場合と博物館に収蔵された後の原因による場合のどちらが多いのか。
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一度博物館に収蔵されれば、被害はケタ違いに小さくなる。野外採集をして標本を作ってから博物館に収蔵されるまで、実際にはかなり長く空いてしまうことが多く、一番危険なポイントだと思っている。
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だとすれば、予め標本と菌相との関係を把握しておくことが重要だろう。
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家庭で管理されている場合にどんなカビが被害を及ぼしているのか、知っておきたいと考えている。なお、老朽化した博物館やランニングコストの乏しい博物館においては収蔵後もカビ発生の危険性が伴うところもあるのが現状である。
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一番問題なのはアマチュアの方や大学からカビ被害を受けている標本が寄贈されるときに博物館がどういう処理をして収蔵庫に入れているかだろう。貸出に伴い、収蔵庫を出入するときも同様である。ここを改善できれば効果は大きいのではないか。
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冷凍燻蒸のお話があったが、低温に置くだけでなく、その際に何らかの化学薬品処理を行うのか。
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マイナス40度の環境にさらすことによる効果を期待するものであり、薬品処理は行わない。昆虫に関しては効果が確認されている。
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菌相の把握については大阪市立環境科学研究所との連携はどのようになされているのか。
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現時点では取り組んでいない。今回の発表が契機となって、問題意識をもち始めたのが現状である。本格的に取り組む際には、大阪市立環境科学研究所と連携して進めていくのがベストだろう。
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臭化メチルの使用全廃の影響は大きいか。
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当館はもともと二硫化炭素による個別燻蒸を行っており、不安に思っているというのが現状である。
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24時間空調、20度、湿度50パーセントというのは展示場もあてはまるのか。
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収蔵庫のみであるが、施設全体として乾燥はしている。20度にキープする主眼はカビよりも昆虫の発生を防ぐことにある。
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文化財保護の観点からは一括してガス燻蒸を行うのが望ましいが、燻蒸剤によってはDNAが破壊され、利用できなくなると聞いている。燻蒸に関する情報提供の在り方については、どのような形態が望ましいと考えるか。
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燻蒸剤については、価格やDNAへの影響等を含めた情報が一覧となって提供されることが望ましい。どの燻蒸剤を使うかについては、各博物館が実情に応じて判断することになる。
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エキボン燻蒸をやった標本からはDNAは抽出できない。私はかねてからジーンバンクの作成を推奨してきたが、これまでの分類学は形態による分類が重視され、DNA利用はあまり認識されてこなかった。近年その重要性が明らかになってきており、カビ被害標本に対する個別燻蒸などのやむを得ない場合を除き、燻蒸を行うべきではないと考える。
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