令和5年度国立大学法人会計基準等検討会議(第1回) 議事要旨

1.日時

令和5年11月1日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎7号館東館16階 16F2会議室 ※WEB併用

3.議題

  1. 主査の選出について
  2. 運用基金に関する会計処理について
  3. 国際卓越研究大学への助成等に関する会計処理について
  4. 新株予約権の評価に関する会計処理について
  5. その他

4.出席者

委員

樫谷隆夫主査、植草茂樹委員、江戸川泰路委員、金子靖委員、加用利彦委員、野々村愼一委員、水田健輔委員
(有識者)木村彰吾名古屋大学理事・副学長

文部科学省

伊藤文部科学戦略官、井上国立大学法人支援課長、柳澤大学研究基盤整備課長、山田国立大学法人支援課専門官、東條国立大学法人支援課専門官、齊藤大学研究力強化室室長補佐

オブザーバー

日本公認会計士協会
 

5.議事要旨

【議事1:主査の選出について】
全会一致で樫谷委員を主査に選任することを決定した。

【議事2:運用基金に関する会計処理について】
(事務局)
資料2に基づいて内容を説明。

(委員等)
最初からエンダウメントに組み入れる目的で受領した寄附金は、どのような処理で運用基金に計上されるのか。

(委員等)
大学における寄附金は長期的に使う目的のものと短期的に使う目的のものがある。短期的に費消する目的の寄附を運用基金に入れることは違和感がある。

(事務局)
寄附金の性質によって運用基金として適当なものかどうか区別すべき。短期的に費消する寄附金は運用基金に含めるべきではないと考えられる。

(委員等)
有価証券の配当金を事業に充てる目的で有価証券の現物寄附を受ける場合があるが、これは運用基金の対象か。

(事務局)
有価証券を長期的に保有して果実を事業に充てる場合は、現物寄附であっても運用基金に入れられる仕組みとしたく検討する。

(委員等)
寄附金債務の仕組みは残るのであれば、受入当初から運用基金として処理するもの、受入時に寄附金債務とするもの、受入時は寄附金債務とした後に何らかの理由で運用基金に振り替えられるもの、と 3 つのパターンが存在する。会計基準等に定められた一定の要件を満たすものを運用基金に振り替えることができ、さらに運営方針会議でその要件を満たすものかどうか整理するべきであると考える。会計基準で決めるルールと各大学の運営方針会議の意思決定に委ねる部分、それぞれを整理されるべきと考える。

(事務局)
どの程度細かく要件を設定するか検討する。あまり厳格な要件を定めると運用基金が活用されなくなる。会計監査で判断に支障が出ないよう留意しつつ、要件を検討していきたい。

(委員等)
運用基金の取崩はどの程度柔軟に認めるのか、資本剰余金の財産的基礎という性質と取崩の柔軟性が矛盾しないよう、方針を検討すべきと思われる。

(委員等)
会計の基本原則に照らすと、運用基金を取崩して損益計算書に計上することは、資本取引・損益取引区分の原則を超えるものであり、運用基金の取崩処理は、簡単には認めるべきではないと考える。取崩にある程度の柔軟性が必要なことも事実である一方、会計上は極めて高いハードルを設けるべきである。例えば運営方針会議など上位の意思決定機関で取崩額について決議するなどの制度設計にすべきと考える。

(事務局)
運営方針会議は財務諸表の作成義務も負う。取崩について一定の制度上の厳格さを担保し、取崩の目的と額を決めるべきとのご意見をふまえ、意思決定のプロセスについては一定のルールを検討したい。

(委員等)
当期純損失が計上されていても、運用基金へ繰り入れることは可能とするのか。

(事務局)
その通りである。減価償却等による損失も考えられ、当期純損失が生じた場合も繰入財源が存在すれば繰入はできる制度とする。

(委員等)
運用基金という科目名称は、余剰金があるとの誤解を招くようにも見える。大学の基盤を支える重要な資金であるという科目名称にすべきではないか。

(委員等)
海外の大学のエンダウメント会計は、大学本体の会計とは別。今回の運用基金は附属明細で運用基金の増減等の情報が開示されると理解した。大学の基盤を構成するエンダウメントがどれだけあるのかを対外的に示すことは意義がある。

(委員等)
上場企業でも株価純資産倍率(PBR)の向上が課題となっている中で、資本が何を意味するのかが改めて問われている。自己資本の厚さはリスク事象への対応力に加えて、将来成長投資を行う原資を有しているといえる。運用基金の意義についても、将来成長投資の原資であるとの観点から説明することも有用と考える。

(委員等)
運用基金を取崩して費用に充てても良いのか。固定資産にしか使えないのか。資本剰余金である運用基金を財源に固定資産を取得するのであれば、財産的基礎のイメージに沿うが、費用にも充てられるとなると、財産的基礎の性質があまりないように見受けられる。

(事務局)
運用基金を取り崩して費用に充てることも可能と考えている。取崩の手続については、資本剰余金の財産的基礎としての性質を踏まえつつ、整理していく。

(委員等)
大学が中長期的な事業計画や投資計画を立てづらいことが課題であり、運用基金がこの課題の解決にも活用できるよう、取崩のルールを検討すべき。

(委員等)
当年度の収益に計上したものの一部を当年度中に運用基金に振り替えるとのことだが、過去に受領した寄附金債務を運用基金に振り替えられるのか。一時的に寄附金債務で受け取り、その後の学内の議論を踏まえて後年度に運用基金に振り替えたいものが出てくる可能性もある。事務局には引き続き検討いただきたい。

(委員等)
運用基金の財源とできる自己収入は、大学債の償還財源とも重複する。運用基金で資金を蓄えて将来の償還に充てることも考えられる。

(事務局)
過年度に計上した寄附金債務を運用基金へ振り替える場合、運用基金を取り崩して固定資産取得や借入金返済に充てる場合など、パターン別の会計処理を検討する。

(委員等)
エンダウメントを造成していく観点からは、エンダウメントに蓄積することを謳って集めた資金を運用することになるため、従前のような単なる寄附金ではなく個々の大学がエンダウメント化する意思決定したものを運用基金に入れると整理すべき。

(委員等)
運用基金制度を導入できる大学は、「運営方針会議を設置した大学」かつ「業務上の余裕金の運用に関する認定を取得している大学」という理解で良いか。

(事務局)
その通りである。

(委員等)
業務上の余裕金の運用に関する認定制度は、取り扱うことのできる金融商品に応じて自家運用の第 1 から第 3、委託運用の第 4 の 1・2 区分まであるが、扱うことのできる金融商品の幅が最も広い第 3 区分の認定が必要か。

(事務局)
検討中である。運営方針会議が必置となる予定の大学は現時点でも第 3 区分の認定を有している。

(委員等)
運用基金に繰り入れて良い寄附金かどうか会計監査において判断可能となるように整理して頂きたい。取崩のルールも同様に監査可能性を考慮いただきたい。資本取引・損益取引区分の原則があるので、運用基金制度については法令等で制度として定めたうえで、その制度趣旨に合った処理を特例として会計基準で定める建付けにして頂きたい。

(委員等)
運用基金制度は法令等に定める予定か。

(事務局)
省令とするか会計基準(告示)とするか、省内の法令担当とも協議して検討する。

【議事3:国際卓越研究大学への助成等に関する会計処理について】
(事務局)
資料3に基づいて説明。
(委員等)
体制強化助成は、他の財源とは別の独立した予算として管理することが想定されているのか。具体的には他の財源と混合使用が可能とすれば、今回の会計処理案は大学の負担にならないのか。

(事務局)
運営費交付金のように他の財源と一括管理するのではなく、プロジェクトを立てて執行し、残高を管理していくことになると想定している。

(委員等)
運営費交付金と一体で使用することはできないのか。また体制強化助成の明細は助成された金額の執行額や残高を記載する明細であるのか。

(事務局)
体制強化計画に記載した多数の事業に助成金は充てられるが、当該事業に他の財源も充てることは可能。他の財源で実施された部分も含めた各年度の体制強化計画の実施状況は、別途年度報告を大学に作成させる。また、附属明細書における体制強化助成の明細として、助成金の執行額・期末残高を記載する増減明細を対外的に明らかにする。

(委員等)
助成金と他の財源が混ざる可能性があるならば、附属明細書として体制強化助成の額の部分のみを記載するのではなく、体制強化計画に対する執行実績を記載すべきではないか。この助成金で取得した固定資産、と言った形で財源整理する必要があるとすれば、補助金と同様の処理となり、大学の負担が大きくなるように思える。

(委員等)
従来の受託研究などと違って、体制強化助成は、各プロジェクトの財源が複数想定される。特に固定資産について財源を区別する必要があるか、区別は可能なのか。体制強化助成が自由に使える財源なのであれば、財源別処理は必要ないように思われる。

(委員等)
補助金のように厳密な財源管理をすることはあまり意味が無いと思われる。簡便なやり方を検討して頂きたい。寄附金と同じで中期目標期間終了時に精算のための収益化をする必要はないか。精算のための収益化は不要とする旨を定めなくても、会計基準等で定めなくても繰越できるか。

(事務局)
運営費交付金のように中期目標期間最終年度の精算を求める制度ではないため、精算のための収益化は不要とする仕組みとする。

(委員等)
大学から JST への出えんと将来の JST からの払戻について、今回の論点ではないが、国際卓越研究大学が自己資金で出えんした資金が払い戻される部分に限って言えば、JST に拠出して運用された結果が払い戻されるのであり、通常の資金運用の会計処理と同じとなるはず。体制強化助成を債務受けすることに基本的に異論はないが、出えんと払戻の会計処理をどのように整理するかによって、体制強化助成を受領する時の会計処理も影響を受けるかもしれない。

【議題4:新株予約権の評価に関する会計処理について】
(事務局)
資料4に基づいて説明。

(委員等)
企業会計の基準改正により、有価証券は原則としてフェアバリューとし、例外的に非公開会社の株式については取得原価で良いとされたが、非公開会社の新株予約権は原則の方に分類されている。民間企業では新株予約権を保有するケースが少ないが、国立大学では増えてきており、基準改正前に民間も国立大学も適用していた本源的価値による評価とする今回の変更案は賛成である。

(委員等)
ベンチャー支援の対価として新株予約権を取得し、本源的価値で評価する場合、一般的には本源的価値はゼロになると思うが、会計上は備忘価額とするのか。

(事務局)
その通りである。

(委員等)
実務への影響が気になっていたが、現状も備忘価額で処理しており、改正案でも基本的に備忘価額になり、影響なしと理解。

(委員等)
大学はベンチャー企業に直接出資できるか。その場合の株式の評価方法は。

(事務局)
指定国立大学はベンチャーへの直接出資が可能。非上場企業であれば国立大学も企業会計も取得原価が貸借対照表価額となる。

(委員等)
ベンチャー支援の対価として現金以外に株式と新株予約権が考えられるが、株式を取得すると議決権行使等の問題があり、上場時のリターンを獲得することが主目的であれば新株予約権のほうが利用されている。

(委員等)
上場して売却益が得られれば、運用基金に繰り入れることもできるのか。

(事務局)
その通りである。

(委員等)
令和 3 年度の会計基準等検討会議で、時価算定基準を国立大学にも導入することを検討した際の結論を見直すことになるのか。

(委員等)
国立大学も原則として企業会計に従うとされている以上、国立大学だけ例外的に時価算定基準の適用除外とする理由もないため、企業会計に揃えるという結論だったと理解。企業では時価評価が特段問題とならなかったが、国立大学では実務上大きな課題があったという状況。

(事務局)
令和 3 年度第 5 回の検討会議では企業会計に揃えるとの結論に至ったが、実務上の課題に加えて、国もスタートアップ創出を重要施策に位置付けたことなど、周辺事情も変わってきた。

(委員等)
本会議として、新株予約権の評価については、資料記載の案で特段の異議はない。

【その他】
(事務局)
今後のスケジュールは、12 月までに今回の議論を会計基準案に落とし込んだ本会議の報告書の素案を議論し、年度内に報告書を取りまとめたいと考えている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課

(高等教育局国立大学法人支援課)