令和7年10月7日(火曜日)14時00分~16時00分
秋田委員(座長)、池内委員、伊佐治委員、伊藤委員、植村委員、紀之定委員、小林委員、汐見委員、設楽委員、曽木委員、髙橋委員、土屋委員、手塚委員、中村委員、奈須委員(副座長)、野口委員、堀川委員(副座長)、松木委員、松本委員
塩見総合教育政策局長、神山社会教育振興総括官、髙田地域学習推進課長、坪田大臣官房教育改革調整官、田中図書館・学校図書館振興室長、稲田図書館・学校図書館振興室専門官
【秋田座長】 皆様、こんにちは。それでは、定刻となりましたので、これより、図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者検討会の第7回目の会議を開催いたします。
本日の流れですが、本日の議題は、「今後の図書館・学校図書館に求められる人材の育成」及び「報告書骨子案への意見交換」についてです。
まず、事務局より今回の会議における論点案を御説明いただきます。その後、2名の方に御発表をいただくことにいたしております。初めに曽木委員より、「図書館に求められる人材の育成の現状と今後の充実」について御発表いただきます。次に、設楽委員より、「学校図書館に求められる人材の育成の現状と今後の充実」について御発表をいただきます。お二人の御発表が終わりましたら、御発表に関する質疑や論点案に基づいた意見交換の時間を30分程度取りたいと思います。その後、事務局より次に「報告書の骨子案」について御説明をいただきます。説明後、骨子案に関する質疑や意見交換の時間を30分程度取りたいと思っております。
まず、今回の会議における論点案について、事務局より御説明をお願いをいたします。
【田中図書館・学校図書館振興室長】 それでは、事務局より御説明いたします。
資料の1を御覧ください。2ページ目、論点案でございます。本日は、下から2つ目の「今後の図書館・学校図書館に求められる人材の育成等」の部分になります。ここでは、これまでの検討を踏まえ、必要となる組織体制、館長、司書教諭、学校司書、司書に求められる資質の向上の在り方、また、司書教諭、学校司書、司書の配置充実に向けた課題等について取り上げております。
続きまして、3ページ目を御覧ください。司書数の推移につきましては、図書館数の増加に伴い、継続的に増加傾向にございます。グラフにありますとおり、現在では司書の方が2万2,375人で、直近20年前の平成17年の1万2,781人から数字を追いますと約1万人程度増となっております。
また、割合の推移ですが、専任・兼任、また非常勤、そして指定管理者それぞれの中身について、専任・兼任については減少傾向、非常勤については横ばい、指定管理者については増加という推移となっております。
1ページおめくりください。4ページ目です。こちらは司書教諭・学校司書の配置状況ですが、主に司書教諭の発令、学校司書の配置が進む一方で、学級数や学校種によるばらつきが課題となっております。
まず、司書教諭についてですが、ここは学校図書館法第5条において、12学級以上の「学校には、学校図書館の専門的職務に掌らせるため、司書教諭を置かなければならない」と規定されております。
続いて、発令状況ですが、小学校で69.9%、中学校で63%、高等学校で81.5%となっております。
また、このうち12学級以上の学校における発令状況は、それぞれ小学校が99.2%、中学校が97.0%、高等学校が93.2%という状況になっております。
続きまして、学校司書におきましては、学校図書館法第6条において、学校には司書教諭のほか、「専ら学校図書館の職務に従事する職員」として学校司書を「置くよう努めなければならない」と規定されております。
その上で、学校司書の配置状況ですが、小学校で68.8%、中学校で64.1%、高等学校で63%という状況になっております。
続きまして、5ページ目を御覧ください。学校司書の配置状況のうち、特に公立学校における調査を令和5年に行った結果です。特に公立の小中高では7割程度を超えていますが、一方で特別支援学校は2割以下であり、ばらつきが生じているという傾向となっています。
また、学校司書の配置状況ですが、小学校・義務教育学校の前期、また、中学校・義務教育学校の後期と中等教育学校の前期、最後に高等学校・中等教育学校の後期について、それぞれ66.6%、55.6%、95.4%という状況になっております。
続きまして、6ページ目です。司書の研修状況については、都道府県において9割以上研修を実施しているものの、その他の市区町村での研修の実施が約3割程度にとどまっている状況です。
続きまして、7ページ目を御覧ください。こちらは司書教諭・学校司書等の研修の状況です。都道府県、政令指定都市・中核市は約9割の研修が実施されておりますが、その他の市区町村での研修の実施は約3割にとどまっている状況です。
続きまして、8ページ目です。こちらは基本的な方向性として、これまでどのような規定等々に設けられているかということですが、望ましい基準には職員の配置等について設けられており、それぞれ、市町村立図書館、都道府県立図書館、私立図書館に区別した上で記載されております。
続いて9ページ目ですが、学校図書館ガイドラインにおいても、学校図書館に携わる教職員等の内容が明記されており、第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の中でも、「子どもの読書活動の推進方策」という章の中の「人材育成」のパラグラフで、司書及び司書補、そして司書教諭・学校司書について明記されています。
これらの状況を踏まえ、10ページ目ですが、本日の論点と検討の視点案です。大きく3点あり、1点目が、「今後の図書館・学校図書館に求められる組織体制、役割」です。共通事項として、専門的なサービスを実施するために職員、ボランティア等の人数はどれぐらい必要か。
また、学校図書館においては、その機能を十分発揮できるよう、校長等の管理職、司書教諭や一般の教員、学校司書等がそれぞれの立場で求められている役割を果たす上で、組織的に取り組むことの重要性について記載をさせていただいています。
また、2点目、「館長(校長)、司書教諭・学校司書、司書に求められる資質向上の在り方」ですが、ここでは共通事項として、多様な子供たちの個別最適な読書環境を実現するために求められるスキル、知識、能力が急速に変化・複雑化する中で、読書活動に携わる人材の育成の在り方とは何かという点、そして図書館においては、情報化・国際化の進展や読書バリアフリーへの対応等に留意しつつ、司書・司書補等に対する継続的・計画的な研修の実施の必要性について、学校図書館については、学校図書館の利活用が教育課程の展開に寄与する形で進むようにするために、学校教職員の一員として学校司書が職員会議や校内研修等に参加する必要性について触れています。
3点目として、「司書教諭、学校司書、司書の配置充実に向けた課題等」として、共通事項で、図書館・学校図書館所管課において、所管の図書館・学校図書館が専門的なサービスを実施する上で必要な司書及び司書補を確保するために求められる採用時の要件及び処遇改善の重要性について挙げております。
事務局からの説明は以上でございます。
【秋田座長】 田中室長、御説明ありがとうございました。
それでは、初めに曽木委員から御発表をいただきます。よろしくお願いいたします。
【曽木委員】 よろしくお願いします。日本図書館協会の曽木でございます。本日は、「公立図書館に求められる人材育成の現状と今後の充実に向けて」というテーマをいただいております。説明につきましては、3つの柱として、職員数と配置の状況から見た司書・司書補の現状、公立図書館の司書・司書補に求められる資質、専門性、役割について、そして最後に配置の充実に向けての取組を挙げて、人材育成に必要な点についてお話ししたいと思います。
次お願いします。初めに、公立図書館の司書・司書補の現状ということで、まず、「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(以下、「望ましい基準」)が告示された後、2014年から2024年までの10年間を見ていきたいと思います。本日、先ほども資料をいろいろ出していただいておりますが、図書館数や職員数の推移の状況などについては、こちらのデータのほうも併せて見ていただきたいと思います。
次お願いします。最初に、この後の説明で根拠とした数字ですけども、毎年調査を行っております日本図書館協会の『日本の図書館 統計と名簿』を基にしております。正規職員は、専任職員と兼任職員を合わせた数、非正規職員については、会計年度任用職員などの非常勤職員、それから臨時職員、委託・派遣職員です。委託・派遣職員は指定管理者の職員を含めております。非正規職員については、年間労働時間1,500時間を1人として換算しております。そのため、社会教育統計と若干数字が異なるところもあることを先にお断りしておきます。
次お願いします。まず初めに、公立図書館全体から見た職員数の変化と司書の配置状況です。先ほどもありましたけども、職員数のほうは増加傾向ということで、司書の配置人数のほうも増えております。しかし、このグラフの一番下、少し濃い青の部分、これが正規職員ですが、こちらについては減少を続け、非正規職員は逆にこの10年で増加しているという傾向です。
次お願いします。少し詳しく見て、都道府県立図書館の状況です。こちらは職員数も増えてはいますが、職員の大体60%ぐらいは司書であるということ、この傾向についてはこの10年あまり大きな変化があるということではありません。
次お願いします。次に、市区立図書館についてですが、こちらは職員の数も司書の配置率のほうも、50%台ということではありますが、少しずつ進んではいます。ただ、やはりこれは正規職員の司書ではなく、非正規職員の方の幅が広がっているということが分かると思います。
次お願いします。町村立図書館については、こちらは司書の配置はまだ50%にも満たないという状況です。市区立図書館とも共通することではありますが、正規職員の司書の方については、全体の職員数から見ると10%を少し超える程度という状態です。司書の配置は少しずつ増えてはいますが、ほぼ非正規職員の方によって運営されているところが多いと言っていいのではないかと思います。
次お願いします。司書の配置という点で、司書資格を持った図書館長について見てみますと、図書館の数で見て、大体4分の1程度が司書の館長ということになります。これについては、地域館や分館の組織がどのように館長を持つかということにもなって、統計の取り方に誤差はありますが、司書資格をお持ちでない館長の方が大半であるという傾向は同じであろうかと思います。
「望ましい基準」では、市町村立図書館についてですが、司書の任命が望ましいとありますが、実際はそうはなってない状況であります。
次お願いします。次に、司書・司書補に求められる資質、専門性、役割についてです。
次お願いします。司書の専門性という前に、そもそも司書というのはどのように世の中で見られているかということですが、まず、図書館が本を借りるところというイメージが非常に強い。最近は居場所ということも言われていますので、住民とか行政の方もそちらの意味でも少し考えてくれるようにはなっておりますけども、本を貸すとか、返すとか、そういった仕事をしている図書館というのは、外から見ると、誰でもできる仕事だよねとか、慣れればできるとか、すなわち簡単な仕事だなと思われているという感じがします。
残念ながら、司書の専門性をいう前に図書館の必要性がまず認知されてないということで、司書でなければできない仕事があるというのはまだまだ理解されていないと感じることがあると思います。
次お願いします。私たちが話題にしている司書の役割ですが、これについては、貸出しやレファレンス、児童サービス、それからサービスの基礎となる蔵書の管理、発注や蔵書データの整理などの専門的な業務をすることですが、これは来館者に対するサービスであったと思います。
ただ、これからの司書については、これまでの役割に加えて、来館者に限定しない地域というコミュニティについて、人が情報を得る、学習する支援をする、図書館はそれを提供するために必要な公共施設であることを発信していくことも必要であろうかと思います。
誰一人取り残さない読書活動や生涯学習の支援を考える上でも、知識と情報の拠点であることを伝えていく役割を司書が認識、意識していかなくてはいけないと思います。
次お願いします。そして、その役割を果たすために司書に求められる資質、専門性ですが、これは、「情報」と「人」をつなぐ、それから「情報」と「専門知識」をつなぐことができるということ、これが求められていると思います。読書、文化、社会の変化、こういったことについて好奇心を持つということ。それから、図書館のカウンターなどは利用者とのコミュニケーションの場でもありますが、そういった中で、地域の状態を知って課題を見つけていくこと。それから、情報を得る手段が非常にあふれている中で、何が正しいかということも考えなくてはいけませんが、課題の解決のために信憑性のある情報へ住民の方を導いていく。それから、情報が正しいかどうかというファクトチェックの支援をすることも必要だと思います。
司書が扱うのはいろいろな形の情報ですけれども、情報と図書と司書が持っている体系的な知識や技術を生かすことができなくてはならないと思います。
次お願いします。3番目の司書・司書補の配置の充実に向けてです。配置の充実のために必要な要素は5つあると考えております。法の担保、予算の担保、館長・管理者の意識、司書等の養成・採用・配置、そして人材育成・研修。この5本の柱が必要だと思います。
次お願いします。何よりも重要なのは、法で担保されるということです。それから、予算が担保されるということです。法や基準、条例、規則などに努力義務の規定があることは非常に大事なことです。これは大前提ではありますが、ただ、努力義務とは必須ではないので、必須ではない規定というのは先送りになることもあり、優先度が低くなっていきます。
先ほどの図書館長の有資格のほうも、法の縛りがなく、「望ましい基準」で司書の任命が望ましいとは書いてありますが、結果は先ほど述べたとおりです。
優先度が低いということは、予算がつきにくく、本来の目的とは別に、コストの視点で運営方法の検討が行われてしまうということになります。
図書館は、住民にとって必要な施設であり、そこに司書が必要だというお墨つきというか、法的な裏づけがなくてはなりません。
次お願いします。公立図書館というのはそもそも単独で存在しているわけではありません。自治体の組織の中の一つです。組織を継続させていくためには、必要な職員構成を考えていかなくてはなりません。それを考えるのは誰かというと、図書館長であり、管理者です。
職員の年齢構成、高齢化も進んできていますが、そういった年齢構成、経験・研さんを積んでいる司書等がどれぐらいいるのか、どう育てていくか、不足を補うためにどう採用していくかと計画を考えていくことが必要になります。
そういう意味でも、図書館を知っている司書の方が館長になるということは非常に大事なことでありますし、あるいは異動で来られた館長、管理者の方たちにも、できれば司書資格を取得することをお勧めします。様々な研修もありますので、こういったことの受講をお願いしたいと思っています。
次お願いします。そして、もう一つ、司書の配置のために必要なのが、そもそも司書を養成する、そして採用して配置することです。司書の養成については、全国の大学で開講していただいておりますが、実は司書課程や科目については平成24年の改正が最後となっております。既に10年以上経過して、時代に合ってないという指摘もあるようですので、見直しが必要な時期でないかということをここで申し上げておきます。
それから採用については、正規職員の採用が非常に少ないです。非正規職員が増えている問題もあります。安定した図書館事業や組織の継続を考える上でも、正規職員の採用は絶対必要なことです。
何よりも採用して配置すればいいということではありません。司書資格があるということは、最初の一歩であって、そこに経験と専門知識の蓄積があり、専門性が育っていきます。持続可能な図書館であるためには、人材育成はやはり必要であり、人材の確保が安定していることを進めていかなくてはいけません。
次お願いします。では、人材育成という点で、研修の実施状況を見てみますと、9割近い図書館では研修に取り組んでいらっしゃいます。自分の館でやるところ、それからほかの機関での研修に派遣する、そういったことが9割以上はやっていただいている。
ところが、自分の館で研修することに限って、職場内で研修を行うことになると、実施率が60%台に下がってきます。職場内研修を行うには、指導役の職員がいない。いわゆる経験を積んだ職員が少し少ない。それからあと、外部の講師を招いて研修をする。研修をする環境が難しい。例えば職場内の職員数が少ないために、研修を受講させる時間の余裕がない。勤務シフトの関係上、研修に向かわせることができない。講師を呼ぶ予算がないなどの状況が見られると思います。
次お願いします。司書の専門性を向上させる目的、最終的なところは何かと考えると、それは図書館を運営できる司書になるということだと思います。専門性を上げると、業務に直結した専門能力のレベルを上げると考えることは非常に重要なことであり、障害者サービスや生成AI、社会の変化に伴うテーマについて十分な研修が行われていないことがこの会議でも言われておりますが、これに力を入れることは言うまでもございません。
ただ、それだけではなく、図書館を運営できる司書として期待できる人材育成ができないと、将来にわたって専門性の高い司書が図書館を運営することが難しくなってきます。
図書館を運営できる司書を育成するという点で、基本的な常識に始まり、法や財務、事務能力といった組織の一員としての常識を持つこと、また、マネジメント力をつけるということも大事なことです。
次お願いします。こうした人材育成も環境として整えるだけではなくて、司書自身も自分で専門性を上げることへの姿勢を積極的に持つということが必要になります。専門性を上げることで司書の評価が上がり、配置の充実にもつながっていきます。職場での研修や経験だけではなく、勤務館以外の図書館や、図書館関係団体等のつながり、絵本専門士、読書アドバイザーなども有効だと思います。図書館情報学の学び直しなどもそのステップアップになると思います。
日本図書館協会では「認定司書」という、経験を積んで、自分の意見をはっきり表に出せる方について認定しております。そういう名称を得たり、内外の講師役ができる司書がいるようになると、次の世代へ引き継げる持続可能な図書館になっていけると思います。
次お願いします。そうはいっても非正規化が進んでいる現実はやっぱり厳しいものです。会計年度任用職員や指定管理者の職員は、同じ図書館で経験を積むことが非常に難しくなっていると思います。
それから、図書館の業界も人手不足ということは同じことで、予算不足、研修に行きたくても行けないという声もあります。これは館長や、人事に関わる部署の意識が変わらなければ改善は難しいとなりますので、そうすると最初の法の担保、予算の担保というところになって、先ほど申し上げた5つの柱を整えることが重要なポイントであろうと思います。
最後に、まとめでございます。図書館の人材育成と充実を考える前提としては、まずは図書館の役割の認識、図書館が住民のウェルビーイングにつながる場所であるという認識を広めることが必要であり、その場所には知識と住民をつなぐ司書が必要であること、司書がしっかり図書館にいる、しっかり図書館で働いていくためには、制度を担保することが必要となります。
次お願いします。最後に、公立図書館が将来にわたって役割を果たす中で、学校図書館と連携する必要があることはこの会議でも皆様から繰り返されております。それは社会教育ということを考えるときに、公立図書館と学校図書館が車の両輪となるものと考えますので、その両方についても同じように充実をさせていかなくてはなりません。
次お願いします。日本図書館協会では、「いつでも開いている図書館へ」という学校司書の配置等に関する提言をまとめ、公開いたしました。
次のページをお願いします。時間があまりございませんので、提言の柱4つを読み上げて終わりにしたいと思います。
「すべての学校に、フルタイムで一校専任の学校司書を配置すること」。「学校司書を学校教育に関わる職員の一員として処遇すること」。「公的な研修を制度化するなど、学校司書の資質向上を保障すること」。「これらを可能とするため、学校司書の法的位置づけを明確にする学校図書館法の条文改正を行うこと」。
これらの見解についても、先ほどのページにリンクがありますので、併せて御覧になってください。
御清聴ありがとうございました。
【秋田座長】 曽木委員、どうも御説明ありがとうございました。
それでは、続きまして、設楽委員から御発表をいただきます。よろしくお願いいたします。
【設楽委員】 全国学校図書館協議会顧問の設楽です。本日は、「学校図書館に求められる人材の育成の現状と今後の充実に向けて」というテーマでお話しさせていただきます。
次お願いします。具体的には、学校図書館における司書教諭・学校司書の現状、、学校図書館の司書教諭・学校司書に求められる資質・役割・専門性、司書教諭・学校司書の配置充実に向けた課題、この3点を取り上げてお話しいたします。
また、充実に向けての提案として、読書指導に加えて、学習指導ができる環境、主体的な学びを支援できる機能の充実、情報活用能力を育む教科等横断的や探究学習の充実により自立した学習者の育成を目指す、などを考えています。
それでは、学校図書館における司書教諭・学校司書の現状からお話しします。
次お願いします。先ほどもありましたように、司書教諭の配置状況は、令和2年度「学校図書館の現状に関する調査」によると、表のとおり、12学級以上の公立学校では、小学校99.4%、中学校が98.9%、高等学校が98.5%発令されています。
次お願いします。12学級以上ということにつきましては、先ほど説明がありましたので、省略させていただきます。
それでは、11学級以下の学校はどうなっているか、さらに詳しくみたいと思います。
次お願いします。同調査を詳しくみると、11学級以下の司書教諭の配置状況も分かります。11学級以下の発令の割合は極端に少ない状況です。もう少しよく見ると、中学校9,950校のうち5,143校、51.7%が11学級以下です。
次お願いします。これは令和2年度「学校基本調査」にある都道府県別学級数別学校数からも11学級以下の学校の割合が分かります。上が小学校、下が中学校です。このグラフから地域による格差が読み取れます。
次お願いします。11学級以下の学校の割合は、平均すると、公立小学校で43.7%、中学校で51.5%となっています。教育の機会均等という観点からも司書教諭の全校配置が必要だと思います。
次お願いします。次に、学校司書の配置状況は、同調査によると、表のとおりです。これも先ほど示されましたが、小学校が69.1%、中学校が65.9%、高等学校が66.4%となっています。12学級以上の公立学校の司書教諭が90%台の発令に対して学校司書は65.9%から69.1%と低い状況にあります。
次お願いします。学校司書の雇用状況については、「令和5年度公立学校における学校司書の配置状況に関する調査」があります。この調査から常勤職員の割合が低いことが分かります。また、会計年度任用職員もフルタイムの割合が少ない状況です。さらに担当する学校数が多くなるほど雇用条件が厳しくなっています。学校司書の役割は、蔵書管理だけではなく、読書や学習指導などについて専門的な支援を行っている実態などを学校内や保護者等に広く知ってもらう必要があると思います。
次お願いします。また、同調査の配置の有無では、表のとおりです。これも先ほど示されたとおりですが、令和2年度に比べて令和5年度は配置が進んでいることが分かります。同時に、特別支援学校での配置の低さが目立ちます。学校図書館法の一部改正で学校司書が明記された経緯の一つに、各自治体予算で法律にはない「いわゆる学校司書」を配置していた実績があります。こうしたことからも、学校司書の役割を明確に示す必要があります。
次お願いします。司書教諭と学校司書の2職が必要かといった意見も耳にすることがあります。例えば表は全国学校図書館協議会の学校図書館調査の過去12回の平均蔵書冊数の推移です。小学校は1万冊程度、中学校は1万2,000冊程度、高等学校は2万5,000冊程度です。この程度の冊数を管理するだけならば2職は必要ない、常勤でなくてもよいなどの捉え方もあるかもしれません。
しかし、司書教諭や学校司書は、蔵書管理だけではなく、読書指導や学習指導とその支援、情報活用能力の育成などが本来の役割であることを周知徹底する必要があります。
次お願いします。また、学校図書館の現状に関する調査からは、司書教諭が学校図書館の業務を担当する時間を確保している学校も分かります。その場合、1週間当たり小学校は1.6時間程度、中学校は2.6時間程度、高等学校は4.5時間程度で、その割合は全体の僅か11%から16%程度です。
司書教諭の多くは校務分掌としての充て職です。この場合、教科担当であるとか、学級担任に加えての校務分掌であり、専任の司書教諭ではありません。この表からも多くの学校では授業時間数等の軽減措置がされてないことが分かります。
校務分掌としての司書教諭を充てる場合、中学校、高等学校は学年ごと、小学校は低・中・高学年ごとなど複数の司書教諭を発令して業務の分散化を目指してはどうでしょうか。
次お願いします。次は、学校図書館の司書教諭・学校司書に求められる資質・役割・専門性です。第6回有識者会議で池内委員からの御発言に「学校図書館格差ということですが、圧倒的です。全く無関心な現場も、ものすごく頑張っている現場がある」との御指摘がありました。
設楽も同感で、現場にいたときの個人的な感覚では以下のとおりです。学校図書館に関する認識は学校間格差が大きい。学校図書館を利用する教師は、学校全職員の一部にとどまっている。司書教諭と学校司書の区別がつかない職員もいる。また、教師の中にも、学校図書館を使うと授業時数が足りなくなるなどの固定観念があります。加えて、GIGAスクール構想の下、情報端末の使用が喫緊の課題です。情報端末を使えば学校図書館の資料は不要だとする声も耳にします。
次お願いします。司書教諭・学校司書に求められる資質・役割・専門性の前に教師の専門性について触れさせていただきたいと思います。教師の専門性は、教職に対する情熱、教育の専門家としての力量、総合的な人間力の3つの要素に集約できると言われています。特に教育の専門家としての力量は、教育のプロとしての核となる能力です。
具体的には次のような力が含まれます。学習指導・授業づくりの力は、子供たちの興味を引き出し、深い学びを促す力です。子供の理解力・生徒指導力は、発達段階や個性を深く理解し適切な指導や支援を行う力です。集団指導の力・学級づくりの力は、互いに尊重し、協力し合える良好な人間関係を築く力です。
次お願いします。特に、学習指導・授業づくりの力については、大学でも、教科教育法や教材研究など、教科指導に関する科目を履修しています。学習指導要領は、「生きる力」の育成を目指しています。主体的な学びや対話的な学びを通して生涯にわたって学び続ける深い学びの実現が必須です。そのためには、自らの力で学ぶことができる学び方を身につけた自立した学習者の育成が必要だと捉えることができます。
次お願いします。学び方を身につける、つまり、「学ぶ力を学ぶ」とは何でしょうか。学び方を学ぶことで、自分で学習サイクルを回せるようになり、自力で解決する力が育まれます。これは学習者として最も重要なスキルの一つと言えます。
このような力を育む指導者の役割と専門性は表のとおりです。役割として、教育課程への貢献は、探究的な学習活動や調べ学習を支援します。読書指導は、読書習慣を育むためのプログラムを企画・実施します。学校図書館の運営は、経営方針や年間計画を策定し、他の教職員や学校司書と連携して図書館全体を運営します。
専門性として、教育者としての専門性は、児童・生徒の発達段階や学習内容を理解し、図書館活動を計画・実施する能力です。図書館情報学の専門性は、資料の収集・整理・提供に関する知識や技術です。情報活用能力は、情報リテラシーを育成するための知識や指導力です。こうした役割や専門性を持っているのが司書教諭だと言えます。学び方指導に関して、資料の専門家としての学校司書が連携協力できる環境が必要です。
次お願いします。最後に、司書教諭・学校司書の配置充実に向けた課題です。学校図書館は単に本が置いてある場所ではなく、子供たちの学びを支える重要な教育施設です。学校図書館には2つの目的と3つの機能があります。
2つの目的は、学校図書館法に明記されている「教育課程の展開に寄与する」と「児童・生徒の健全な教養を育成する」ことです。
3つの機能として、読書センター機能は、読書の喜びを育む場として、読書に親しむきっかけを提供します。豊かな人間性を育む場として、感性や想像力を豊かにし、人生感や価値観を育むことを目指します。
学習センター機能は、学習活動を充実する場として、主体的な学習活動を支援します。学び方を学ぶ場として、課題解決能力や情報活用能力を身につけるための拠点となります。
情報センター機能は、多様なメディアを提供する場として、様々なメディアを収集し、目的に応じて情報を活用できるようにします。情報リテラシーを育む場として、必要な情報を探し出し、その信憑性を判断する力を育みます。正しい情報活用能力は、現代社会を生きる上で不可欠なスキルです。このことを一人でも多くの教育関係者に理解してもらうことが喫緊の課題だと捉えております。
次お願いします。司書教諭の専任化が学校図書館の機能を発揮するのに有効なのは、私立学校の専任司書教諭の活躍を見れば明らかです。過去においても東京都では専任司書教諭配置に向けて動いていました。全国学校図書館協議会の『学校図書館50年史』によると、全国的に公費、学校司書の配置が進んだこと、学校図書館専任よりも教科担当を希望する者が漸次増えたことなどから、東京都では専任司書教諭配置に消極的になったものとみられているとあります。司書教諭の専任化について熟慮する必要がありますが、私立学校での実績を踏まえて、学校図書館を授業で活用するといった需要が高まれば、専任司書教諭が必要になるはずです。
次お願いします。司書教諭資格を持っている人の実態を把握するのは非常に難しいようです。そこで、司書教諭資格付与の現状については、立教大学、中村百合子先生が、「司書教諭資格付与の現状、まずは統計」に司書教諭資格取得者の変遷を掲載しています。2002年の1万9,992名をピークに、その後減り続け、近年では5,000人前後で落ち着いています。令和6年度学校基本調査によると、小・中・高等学校数は約3万3,000校程度なので、1校当たり、複数人の司書教諭有資格者がいると推測できます。
次お願いします。そこで司書教諭の発令状況を調べてみました。学校基本調査の中に、「本務教職員のうち、教務主任等の数」がありました。その中に司書教諭が明記されていました。表は、国立、公立、私立を合わせた全学校数に対する発令状況です。このことから微増ではありますが、発令状況が改善されていることが分かります。
次お願いします。最後に、配置の充実に向けた課題についてまとめます。
学校司書の配置を1校に1名配置を目指す。
学校司書の間接的支援、直接的支援、教科指導への支援を学校全体で計画的に導入する。
司書教諭が学校図書館に関わる時間を週2時間程度設けたり、司書教諭を複数人発令したりする。
学び方や情報活用等に関する指導や支援ができる司書教諭、学校司書の研修体制を充実する。
情報活用能力を育むため、カリキュラムマネジメントに学校図書館活用計画を盛り込む。
以上です。どうもありがとうございました。
【秋田座長】 設楽委員、どうも御発表をありがとうございました。それでは、これからお二人の御発表に対する御質問の時間としまして、その後に御発表や論点案に基づく御意見について御自由に御発言をいただきたいと思います。質問と意見を分けるということでございます。
まず、お二人の御発表に御質問がありましたら、お手元のタブレット等の挙手のアイコンをお願いをいたします。
ありがとうございます。特に今のところ挙手はないということでございますので、御意見のほうに移りたいと思います。発表や論点案に基づく御意見を伺ってまいりますけれども、その前に、今回の論点である人材育成の観点から自治体の立場におられる委員より御発言をお願いしたいと考えておりますので、それでは、伊佐治委員より御意見を賜れますでしょうか。お願いいたします。
【伊佐治委員】 松本市の伊佐治裕子と申します。4月からは副市長を務めております。昨年、参加させていただいたときは教育長として参加をさせていただきました。私からは地方自治体の行政に関わっている立場から本日の議題について意見を述べさせていただきます。
先ほどの曽木委員のお話にありましたけれども、とても身につまされるものがございました。私も就職した際は、公共図書館の司書として14年間勤務したことがありまして、そして昨年度までは教育長ということで、学校現場での図書館の置かれている現状も見てきました。
そうしたことで、図書館行政というのはどうしても様々ある行政課題の中で、どうしても財源、それから人的資源の配分が後回しになりがちだ、優先順位が低いというようなお話がありましたが、そういったことを痛いほど感じてまいりました。
そのために、非正規職員が多いというような、そして予算配分が少ないというような構造的な課題を抱えていると思うんですね。そうした事態を好転する転機となるのは2点あると思うんです。
1点目は、首長、何といっても首長ですね、選挙で選ばれた首長が図書館行政の重要性を理解して、トップダウンに近い形で施策を進めるときだと思います。でも、それは選挙がありますので、一時的なものにとどまってしまうという懸念があります。
やはり何といっても、国の法令の改正ですとか、それから財源措置、これが一番、地方を変えていく、地方行政を変えていく大きな要素となっています。現に、松本市の状況を見ても、松本市の学校図書館の学校司書が、実は以前はPTAの会費で雇用されるという不安定な立場だったんですけれども、現在は市の直接雇用に変わっています。非正規ですが、変わっています。これはきっかけとなったのは、平成27年4月から施行されました学校図書館法の改正によって配置が努力義務になったこと、そして、その3年ぐらい前だったと思うんですが、学校司書の配置を促すために、地方交付税による財源措置がされた、これが大きかったと思います。これが松本市においても大きな転機となりました。
ただ、全国的な実態を見ても、先ほどの設楽委員の御発表にもありましたけれども、小中学校とも学校司書の配置が7割に満たないということで、これが今後、努力義務という形のなかで好転していくとはあまり思えないんですね。ですので、やはりこの現状を変えていくには、学校図書館法で配置を義務規定にすること、それからそれを担保する地方財政措置が欠かせないものと思っています。
それからもう1点あります。先ほど図書館が構造的な課題を抱えているんじゃないかと申し上げたのですが、これを打破する視点として、実は第2回から第4回の議論の中で私はヒントをいただいたんですが、県立長野図書館が長野県内の図書館を巻き込んでスタートしてくれた「デジとしょ信州」の例、これを御紹介いただきましたけれども、市町村はここに負担金を払ってという形で連携をしているんですが、現在、この電子図書館システムを活用しまして、学校単位で登録をして、子供たちはGIGA端末で読書ができる、そういった環境整備も進んでいます。
電子図書館、賛否両論あるわけですけれども、でも子供が家庭の蔵書量などによって教育格差のある現状に置かれているということが現実的にある中で、不読率の解消ですとか、情報にどんな家庭環境にあってもアクセスができるという、そういった支援という形で、より可能性を探ることができるのではないかと思います。
それからもう1点、多様な人々にとってのアクセシブルな読書環境の整備ということが議論されました。その中でも、こういったデジタルの環境というのが有効であることが分かりましたので、やはりそれぞれの自治体、財源が限られる中で、都道府県という単位で、都道府県がリーダーシップを取って、広い範囲でこの整備を進めていただくこと、こういったことも期待をしていきたいと思っております。
以上です。
【秋田座長】 ありがとうございました。法の義務づけの必要性や、それから、「デジとしょ信州」を長野県が推進しながら一緒にネットワークをつくっていくことの必要性について御発言をいただきました。ありがとうございます。
それ以外にも皆様、いろいろなお立場から御発言をいただけたらと思いますので、御自由に挙手をタブレットのほうで押していただけたらと思います。
ありがとうございます。松本委員、お願いをいたします。
【松本委員】 ありがとうございます。私からは3点お話をしたいと思います。主に公共図書館についてです。1点目は、検討の視点3と関わりがあるんですけれども、採用時の要件、処遇改善についてです。先ほど曽木委員からの御発表にもありましたが、非正規職員の増加というのはやはり非常に大きな問題だと思います。特に処遇がよくないということですね。会計年度任用職員や委託職員等の処遇が非常によくない。同一労働同一賃金の観点からも非常に大きな問題であろうと思います。
日本図書館協会も文部科学省で会見をしたり、あるいは院内集会等も開催されて、近年非常に取り上げられるようになっていると思いますが、やはりこの問題は改めてここでも問題を共有しておきたいと思います。これが1点目です。
それから2点目は、検討の視点2と関わりがありまして、人材育成についてです。司書課程のカリキュラムについて、新たなカリキュラムが必要ではないかと考えます。先ほど曽木委員からもありましたが、私も全く同感です。現在のカリキュラムが施行されたのは2012年です。その後、電子書籍や電子雑誌、あるいはデジタルアーカイブであったり、地域との連携強化であったり、読書バリアフリーであったりと、いろいろな課題が出てきているわけです。
あと、制度的なことでいうと、学校司書モデルカリキュラムとの科目の共有といいましょうか、そうした学校司書モデルカリキュラムと司書課程の科目を一緒というか、それを活用しているというようなことがあります。
このカリキュラムについては、図書館法施行規則で科目・単位数が決まっております。また、シラバス、これは司書課程開設の際、文部科学省に届出が必要になるわけですけれども、これについては、2009年の「司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目の在り方について」という報告に基づいてつくらないといけないということがあります。現在のカリキュラムは選択科目が多くていろいろ工夫の余地はあるんですけれども、それも限界があるだろうと思います。
日本図書館協会の図書館情報学教育部会、これは図書館情報学の教育に関わる教員で構成する部会ですけれども、そこでも新たなカリキュラム案というのが出ておりますので、司書課程カリキュラムについてぜひ検討を進めるべきだと考えております。
3点目は、継続教育についてです。先ほど曽木委員の説明の中で、Hop、Step、Jumpというスライドがありました。そこで認定司書の話が出てまいりました。ここでお願いしたいのは、文部科学省としてこれにもっと関与していただきたいということです。
認定司書は何かという説明をここでゆっくりしているわけにはいかないんですけれども、日本図書館協会が司書を認定するというもので、勤務経験とか、自己研さんとか、あるいは論文などを基に認定をするというもので、現在、全国で176名の認定司書がいます。
司書資格というのは、これは資格としてはもちろんあるんですけれども、専門職としては最初のステップでして、働きながら自己研さんを積んで専門性を高めるという、そういう性格を持っております。認定司書制度を使うことで、自己研さんの動機づけとしても活用してもらえるというところがあります。
今、私、イギリスに滞在しているんですけれども、こうした制度はイギリスを含めて諸外国でもあります。もともとこれは1996年の生涯学習審議会社会教育分科会で、「社会教育主事、学芸員及び司書の養成、研修等の改善方策について」というのが出されたんですけれども、それで提起をされたということがあります。
ですので、文部科学省としてもこの制度についてぜひもう少し関わりを持っていただきたいと思います。やはり教育委員会等にこの制度を紹介したり、あるいは認定の奨励をしたりというようなことをしていただくと、こうした制度も広がって、そのことが司書の底上げにつながっていくと考えますので、そうしたことも考えていただきたいということです。
以上です。
【秋田座長】 松本委員、ありがとうございます。採用時の処遇の問題、それから2点目としては、養成の司書のカリキュラムの問題、そして3点目としましては、継続的なところでの認定司書の問題について御指摘をいただきました。ありがとうございます。
ほかにはいかがでございますでしょうか。
ありがとうございます。髙橋委員、お願いいたします。
【髙橋委員】 お二人の発表を踏まえて、私は今館長で、以前は高校の校長だったので、非常に耳が痛いというか、心が痛いというか、ちょっと自戒の念も込めて意見を述べさせていただきます。まず、館長の視点からですけど、公共図書館って、研修参加のパーセンテージに関しては自治体によってばらつきがあるのは知っていますけど、研修の中身も重要だと思います。現在実施されている研修には、結構伝統的な司書の仕事であるレファレンスサービスとか、選書とか、蔵書構築とか、児童サービスとか、そういう伝統的な研修メニューというのは多いと思うんですよね。
ただ、静岡県も、今、新館をどうするかみたいな話をしていく中で、図書館の機能って大きく変わってきていて、サードプレイスであるとか、まちづくりであるとか、コミュニティに寄与する、課題を解決するなんていう大きなうねりがあると思います。そのような状況の中で、研修メニューの中に新たに加えた方が良い内容があると思っています。例えば、参加体験型活動を通して住民の意識をちょっと変えていって、それで図書資料とつなげるファシリテーション力とか。また、コミュニケーションのスキル。この間、全国の司書のコンクールにAI司書が参加して、正解が決まっている資料の検索はAI司書のほうが強いんだけど、コミュニケーションを通して、その人が本当に望んでいるものを探し出すという部分では人間の司書のほうが強いみたいな結果がでたそうです。それから学校でよくやるコーチングですよね。主体的な向上心みたいなのを導き出すような人とのやりとりの仕方。何かそういう人と話し合って資料と結びつけていくとか、住民の主体的な意欲をかき立てていくとか、AI時代だからこそ、人間にしかできないメニューも司書の講座には入れていったほうがいいんじゃないかなと思います。また、館長としても高校の校長としてもちょっと自戒の念も込めて言えることは、法に書いていることはやらなきゃいけないかなみたいな風潮があると思います。なので、学校図書館法に書いてある司書教諭、表現が「司書教諭を置かなければならない」となっているので、置くには置くんですよね。だけど、実際に分掌等に専任で割り当てているケースってほとんどなくて、いていただければいいですよね、そういった学校も非常に多いと思っています。
なので、さっきの発表にもありましたけど、なかなか専門的職務に十分関われないケースというのが多く出ているというところがあるので、先ほどの話じゃないですけど、法の担保の観点から、もうちょっと具体的に司書教諭に関しては、学校図書館法に業務や役割を書いたほうがいいのかなと思っています。
そして、そういったことをコントロールするのはやっぱり学校の校長です。なので、学校の校長は図書館の館長だってよく言いますけど、あれもガイドラインに書いてあります。ガイドラインと法律って、重みがちょっと違うというか、法に書いてあって置かなければいけないって言われると置くんですけど、ガイドラインに書いてあって望ましいというと、うーん、ちょっと今、生徒指導が忙しいからみたいな話になるので、そこもさっきの法の担保で、校長の意識が変わるように法的に司書教諭の位置づけや業務内容みたいなものをしっかり書いたほうがいいのかなという気はしています。
さらに、校長の研修メニューの一部として図書館のことを組み込んでみてはいかがでしょう。自分が学校の校長の研修に出たときに、あんまりまとまった形で学校図書館の研修をした記憶がほとんどないので、ちょっとそういう分野のメニューを入れる余地はあるのかなと感じています。
あと、秘密の鉱脈じゃないんですけど、学校図書館に関しては校長と学校司書とそれから司書教諭と3者の話が多いんですけど、高校でいうと、静岡県は、学級数6クラス以上の県立高校には原則的に図書主任を置かなきゃいけなくて、図書主任という先生がいるんですよね。図書主任は通常運営委員会に出席しています。小中の先生に話を聞くと、司書教諭とは別に図書館担当の先生を置いている学校っても多いと聞いています。この人たちは図書館の仕事を担当しているので、比較的学校の中でも教職員全体に対して発言がしやすい図書主任とか図書担当の先生というのは、もうちょっと具体的にこれこれやりましょうねって業務内容を記述すると良いと思います。例えば、年間、図書館をどれだけ教員が使っているかというのを調査して、各学期の職員会議で発表しましょうみたいな、そういう具体的なことを書いてもいいのかなみたいな感じがしていて、そういうところが、法的裏づけを伴って明記されると実効性が出てくると思います。
私も副校長のときに、図書館担当の先生方にこれやってあれやってって頼むときに、法律に書いてあると頼みやすいんですよね。だって法令で定められているんだからって。それがないと、何で僕がやらなきゃいけないんですかって必ず言われるので、法的裏づけがあると、校内の管理職としても頼みやすいという実態はあるかなと思います。
反省の意味も込めて、以上です。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。1点目は、研修のメニューにこれからの時代に合わせた内容をもう少し盛り込んだ方がよいのではないかという話。もう一つは、学校図書館法のほうに義務づけとしていろいろな位置づけのことをきちっと書いていくということが大事ではないかという御指摘いただきました。
それでは、この後、紀之定委員、小林委員とお願いしたいと思います。
紀之定委員、お願いします。
【紀之定委員】 失礼します。いろいろありがとうございました。とても参考になります。
私のほうからは2点ありまして、まず1点目ですけれども、曽木委員からも、司書・司書教諭の研修メニューを考えていく、刷新していく話というお話がありました。GIGA構想一人一台端末時代になってから、調べ学習や情報活用においても方法が多様になってきていますので、それに合わせて、勤務している学校司書や司書教諭も研修に参加できれば助かるだろうと思われます。
ICTに関する研修を受け、その後、実践してみる。そこで上手く操作できないときはICT支援員の方に詳しく聞くという事があります。今、課題になっていることや新しく活用されていること等を学び、それを自校でも取り入れ実践し生徒に返していくというサイクルが実用的だと考えております。
GIGA構想になってからいろいろやっぱり内容も変化してきていますので、それと同時に、現在、勤務している学校司書または司書教諭に関してもそういった研修も一緒に何か考えていくという方向も考えていただけたらなと思っております。
2点目ですけれども、設楽委員のほうから最後のまとめのところで、司書教諭は学校図書館に関わる時間を週2時間設けたり、司書教諭を複数人発令するというお話がございました。週2時間でもそういう時間を設けていただけるというのはすごく画期的であるし、助かることだなとは思いますが、週2時間というのはどういった根拠から来ているのかなと知りたいと思っております。
例えば司書教諭としても、ほかの教科が図書館で調べ学習していると聞きましたら、応援に行ったり、問題点等を一緒に考えたり、授業でこうしたらいいのではないかと話し合ったり、また生徒の質問に対応していく等、日々授業が満タンのように入っていくという状況もあります。また、司書教諭を複数人発令するとありますが、まず、図書館担当というのが各学年におりまして、それをまとめるのが司書教諭という形になっているということもありまして、その辺りを少し御説明していただけるとありがたいなと思っております。よろしくお願い致します。
【秋田座長】 ありがとうございます。今の紀之定委員からの2時間の根拠と複数の根拠について設楽委員の方から補足をお願いできますでしょうか。
【設楽委員】 まず週当たり2時間の学校図書館に関わる時間ですが、いろいろな学校現場の話であるとか、実際に司書教諭としての担当する時間の話を聞いています。こうした現状を総合すると、週に5時間程度ではないかと思います。そこで、先ほどパワーポイントでもお示ししたように、週当たり小学校は1.6時間程度、中学校は2.6時間程度ということが出ておりますので、それで2時間という控え目な表現をしました。
それから、司書教諭の複数配置というのは、実際に複数配置している学校もたくさんありますが、司書教諭としての仕事が1人ですと、転任・転補したときにその内容が途切れてしまいます。複数人で担当していると、複数の司書教諭が同時に転任・転補するということはまずあまりありませんので、今まで培ってきた学校図書館の中での司書教諭としての仕事が継続できるという意味で、複数人の配置を提案しました。
もう一つは、1人で担っているのではなくて複数人で担うことによって職務が分散化できます。この2点から複数人配置を提案をさせていただきました。
以上です。
【紀之定委員】 ありがとうございます。継続はとても大切なことだと思いますので、ありがたいお話だと思います。司書教諭の発令状況が90%以上あります。さらに、学校図書館教育に関わる時間がもう少し確保できたり、新しい課題に対応できる研修を受講できたり、発令後のさらなる次の段階に進んでいければ、内容の濃い学校図書館運営に役に立っていくものとなり、図書館を活用した子供たちの深い学びにつながっていき、より貢献できるかと考えております。ありがとうございました。
【秋田座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、小林委員、お願いをいたします。
【小林委員】 私から2点お話をしたいと思いますが、司書教諭と学校司書の配置のことについてともう一つは特別支援学校の学校司書の配置のことについてお話をさせてもらいたいと思います。
一つ、前回の会議の最後のほうに池内委員が言われた学校間格差が大きいということは本当にそのとおりだと思っていまして、これは自治体間の格差が大きいということとも置き換えられると思うんですけど、ここをどうしていくのかということは非常に大きな課題だと思います。先ほど伊佐治委員のほうから、制度、仕組みをきちんとしておくべきだという具合にするという、すごくいい御意見を聞いて、ぜひそうなればいいなと思っているところですし、もしそういう措置が取れるのならぜひそうしていただきたいということを強く思ったところでございます。
ただ、配置がなぜそうやって曖昧になっているかということを、その背景を考えると、やっぱり学校司書は何をしなきゃいけないのか、司書教諭は何をしなきゃいけないのかということがぼんやりしているからそうなっているんじゃないかなと。ここがはっきりこれをしなければならないのだということが分かれば、それは置かなきゃいけないんだということが通じていくんじゃないかなと思うんですけども、実際のところは、司書教諭が発令されているから、司書教諭も頑張っていらっしゃる方がいるので、学校司書の配置に熱心でないとか、あるいは学校司書が配置されて頑張っているから、あるいは司書教諭は学校図書館の業務に携わらなくてもいいんだ。いていただいたらいいんだみたいな校長先生の話がさっきありましたけども、それが実態となってそういうことになっているということは、やはりその役割がぼんやりしているということに尽きるんじゃないかなと思っていまして、ここのところをどう明確化して、必要なものだということをはっきりさせていくのかということが大事なことだと。まさにこの会議がそういうことをやっていることだと思っていますけれども。
もう一つ、研修が今日テーマなんですけども、司書教諭、それから学校司書に対する研修というのはある程度行われているということなんですが、誰が研修ができていないのかというと、管理職と一般の先生ですよね。管理職が学校図書館がなぜ必要なのかということを研修する機会が欲しい。ぜひそういう機会がつくられるようにしたい。あるいは一般の先生方が学校図書館をどう活用してどう教育に生かせるのかというようなことを学ぶ機会が欲しい。学んでいただける機会が欲しい。やっぱりそこがないと、いくら司書教諭・学校司書が学校の中で頑張ってもやっぱり少数の中で展開していくことになるので、あるいは学校教員の養成課程の中にそういうものがあってもいいのかも分かりませんし、何らかの形で学校図書館ということが必要なんだ、本当に学校図書館活用教育が大事だというのであれば、やっぱりそういう位置づけを考えていくべきなんじゃないかなと思います。
それから、特別支援学校の学校司書の配置のことについてですけども、やはりこれだけ極端に低いということについて、何か考えなきゃいけない、手を打っていかなきゃいけないんじゃないかと思います。特別なニーズを必要とする児童・生徒たちがこれからの社会を生きていく中で活字を手に入れるということがどれだけ大切なことかということですよね。そこを考えたときに、著作権法が改正されて、様々な本を読むことに障害がある子供たちに対して、提供できる資料の幅は広がってきているわけですけども、ただ、幅が広がっただけでは無理で、それを誰がどう準備するのかと考えたときには、やっぱりそれは学校司書であったり、司書教諭であったりだろうと思うんですね。その手を打つ人たちがいないのに、幅を広げて、これは使えますよというような法律の改正になっているとすると、それは絵に描いた餅になっていて、実際にそれはできないことなんだろうなと思います。
どうしても必要な資料を個に応じて準備するためにはどうしてもマンパワーが必要だと思いますので、そういうような意味からも、特別支援学校への学校司書の配置率を向上させていくということはぜひとも必要なことなんじゃないかなと思います。
ちょっとどこで言える機会があるか分からなかったので、ここで発言させてもらいました。以上です。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。学校司書と司書教諭の役割、職務の明確化をもっと明記していくことや、それから、管理職や一般教員への研修の必要性、そして特別支援学校での学校司書の配置の必要性というのをいただきました。
ありがとうございます。このお二人の御発表に関連しまして今御意見をいただきましたので、それでは、これから次の議題のほうに移らせていただきたいと思います。次の議題は、報告書の骨子案についてになります。初めに事務局から御説明をお願いいたします。
【田中図書館・学校図書館振興室長】 それでは、御説明いたします。資料の4を御覧ください。タイトルは「図書館が拓く未来の学びと地域社会~これからの図書館・学校図書館の運営の充実に向けて~(報告書)骨子」案でございます。こちらは、これまで議論していただいた項目ごとに、ある程度ポイントとなる内容を列挙させていただいたペーパーになります。したがいまして、今日これからこの骨子案に対していただいた御意見等も踏まえ、さらにブラッシュアップをした上でまたお示しさせていただこうと考えています。
現時点での項目立てですが、大きく5点ありまして、1番目が「はじめに」、2番目が「図書館・学校図書館を取り巻く現状及び課題」、3番目が具体的な方策、4番目がその方策を踏まえた様々な諸規定に係る部分、最後に「おわりに」ということで整理をしています。
それぞれの課題のところも、これまで御議論いただいたデジタル化への対応、読書バリアフリー、また読書環境の充実や関係機関との連携、本日もお話が出ました司書等の配置や研修、さらに読書推進人材などを挙げております。
先ほども申しましたとおり、列挙はしましたが、本日、この後、御意見を賜ればと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
事務局からの説明は以上でございます。
【秋田座長】 御説明どうもありがとうございました。それでは、今度はこの骨子案につきまして、御質問や御意見、質問と意見で構いませんので、ある方はお手元のタブレット等で挙手のアイコンのほうをお願いをいたします。
それでは、今、池内委員、松本委員、植村委員と挙がっておりますので、最初に池内委員、お願いいたします。
【池内委員】 骨子を拝見しまして、これまでにも例えば資料1の2ページ目の論点案のところにも書いてありますけれども、多様な人々のための読書環境の整備というところと多様な方々の利用の促進ということについては大きく扱っていただきたいなと。これはデジタル環境が整う以前から、もちろん図書館界では重要視されてきたことなんですけれども、読書のデジタル化とか、GIGAスクールで端末を持つことができるようになったとか、ネットワーク環境の整備とか、あるいは電子書籍がだんだんと市場を大きくしていることによって、より一層、多様な方々の読書環境を整備することができるようになったと思うんですね。これは非常に重要なことでして、例えば公共図書館なんかの場合は、放っておくと、近所に住んでいる紙の本が好きな方しか来ないとか、勉強しに来る人だけのニーズしかないということがあるんですけれども、実際には公の施設であって、無料の原則があって、要するに地域住民の方々、例えばここに挙げていらっしゃるのは、障害者、外国人、高齢者等々ということですけれども、例えば距離的に遠いだけでもやっぱり図書館って圧倒的に利用できないんですよね。もっと言うと、図書館の開いている時間に仕事している人はなかなか来れないと。そういう様々な人々が利用できるような技術というのが今、大分蓄積されているということと、特に、今、人々が利用している娯楽でも勉強でもそうなんですけど、研究でもそうなんですけども、見ているものが本当にばらばらなんですよね。
例えば昔でしたら、私、子供の頃に寺尾聰の「ルビーの指輪」なんて誰でも歌えたんですよ。SMAPの「世界に一つだけの花」、誰でも歌えたんですけど、そんな歌、もう今ないんですよね。見ているものがばらばらで、かつ図書館に来る方だけのニーズを充足しているということを考えると、そういう図書館ってできないんですよね。
だから、非常に多くの方々、とにかくメディアが多様化して、コンテンツも多様化して、そういう時代だからこそ、先ほどの専門性との関わりもありますけれども、図書館の方がきちんと住民の人々のニーズを把握して、これ図書館に来てくださる方のニーズは図書館の方はすごく把握しているんですね。でも図書館に来ない方のニーズって極めて把握することが難しいんですね。一生懸命頑張って非来館者の方に対して調査をかけているような図書館、自治体も実際にはございますけれども、なかなかそういうことになってない。
もう一つは、様々な文脈があるんですけれども、一つは、図書館の評価というのは図書館法でも「望ましい基準」、とても大事だと書かれているんですね。そのときにどうしても量の評価にならざるを得ない。客観的な数値ですからね。ですが、そこでやっぱり来館者や貸出しと。貸出し、以前ほどではないですけど、いまだに貸出し、来館者というのは非常に強い指標で、そればかりを重視していると、例えば、外部環境との調和、書店や出版業界との関係において、もう一つ別の新機軸がないかなというのは長年、館界の課題の一つだったんですけども、これ、多様な人々に対する利用、より多様な人々が利用できる図書館をつくるということを目指してやると、実は極めて健全な運営ができる。
例えば、障害者サービス、例を一つとってみても、例えば「りんごの棚」や、障害者の方々が利用できる、大活字本から、展示から、様々な資料を用意することができるわけですよね。それでも障害者の方の利用が少なければ、それはもしかしたら基礎的環境整備がうまくいってないのかもしれないと。スロープを用意したり、書棚の間を空けてみたりとか、それでも利用がないんだったとしたら、それは例えば、広報がうまくいってないとか、遠くに住んでいてどうしても来られないという方には、オーディオブックとか電子書籍とかという様々な方策があり得るわけですよね。
学校図書館もそうでして、例えば今、不登校の生徒さん、非常に大きな問題ですよね。そういう方々に例えばリアルで、学校図書室の図書室登校とか、保健室登校とかもあるかもしれませんし、公共図書館にそういう方々たまに来るということあるんですけども、おうちでも学習環境、学習する機会をきちんと確保するために、今、情報技術を使って、電子書籍、つまりデジタル読書の環境を整えることができると思うんですよ。
つまり、結果として、多様な利用者、とにかく自治体とか学校とか多くの方々、できるだけ多くの多様な方々に対するニーズを発掘して、それを充足するという図書館を目指せば、外部環境との調和とか気にせずに極めて健全な図書館や公共図書館や学校図書館の運営ができると思うんですね。
これは多分この会議でも恐らくほとんどの館界の皆さんも同じ意見だと思うんですね。ですから、ぜひその言葉をきちっと、できたら骨子の大きいところに書いておいていただくと大変ありがたいなというのが私の意見です。
以上です。
【秋田座長】 ありがとうございます。ここに書かれているだけではなく、より多様な方々を含んだ、デジタルも利用できるような形での、来館者のみでない図書館のニーズをくみ上げて生かすというところ、ありがとうございます。
それでは、続きまして、松本委員、お願いいたします。
【松本委員】 2点ございます。今回の骨子で(4)で2と3、項目2と3同じで、(4)のところで、図書館・学校図書館や書店、NPO法人、関係機関との連携という、非常に小さな話で恐縮なんですけど、これ、つなぐの「や」なのかなと思いまして、「と」なんじゃないかなと思ったんですね。ですが、改めてよく考えると、もしかしてこれ図書館と学校図書館も含めて考えているのかなと思うと、「や」なのかなとも思ったんですが、だけど、「や」だと、やっぱり連携が一体誰と誰なのかというのが非常に不明確になるので、よいアイデアは特にないんですけども、ほかのものがあれば考えていただきたいというのが1点目です。「及び」とかというのもあり得るのかなと思ったんですけども、ちょっとほかにあるのであれば考えていただくといいかなというのが1点です。
もう1点は、ちょっとお願いのような形なんですけれども、項目の4を見ますと、望ましい基準、あるいは学校図書館ガイドラインの改定におけるということなので、今回の議論を踏まえて、こうしたものの改定、見直しをするということがここで示されていることだと思うんですね。それは大変いいことだと思うんですけれども、ただ一方で今回はかなり焦点を絞った議論をしてきましたので、少なくとも「望ましい基準」などについては、もう少し全体的な見直しを検討した上で改定したらどうかということです。
今回、「望ましい基準」、2012年に出されたものを、13年か14年ぶりか分かりませんけど、見直しをするということで、そのスパンで考えていくと、次回の改定は2040年になるんじゃないかと、2040年ぐらいになるんじゃないかとも思えますので、その時期がどういうことになっているか分かりませんけれども、やっぱりこの間の期間、変化に対応した見直しだけじゃなくて、もう少し将来を見据えた対応をしたほうがいいんじゃないかということです。
資料の構成、電子資料なんかどんどん増えていますし、公共図書館では場の活用というのも非常に重要になってきていますし、それに伴って職員の仕事のやり方というのも変化しているということがありますので、今回の議論を踏まえて改定するということ自体は全くいいことだと思うんですけれども、もう少し全体を見据えた改定も考えていただきたいというお願いです。
以上です。
【秋田座長】 ありがとうございます。1点目は、(4)の表現、表記、それからもう1点は、「望ましい基準」の見直しを行おうとしているわけですが、そこについて、より全体的であり、これまでだけではなくより将来を見据えた形で議論をしていくことの必要性を言っていただきました。ありがとうございます。
それでは、植村委員、お願いいたします。
【植村委員】 「3.図書館・学校図書館の運営の充実に向けた方策」に関してです。人材の連携・協働の中に読書推進人材が挙がっていますが、「デジタルに強い」人材については、既に学校にはコンピューターが導入した頃に教職員をサポートするために入ってきたICT支援員がいます。GIGAスクールでは、その人材もこれまで以上に求められていると思います。一方、学校図書館における電子図書館や電子書籍が普及すると、当然、「デジタルに強い司書・司書教諭・学校司書の育成」が重要ですが、それがICT支援員は授業におけるパソコンの使い方サポートで、学校図書館はそれとは別というのは、どうもそぐわないと感じます。現場において、もっと有効な連携があっていいと思います。もちろん学校司書がICTにすごく詳しくなることも大切です。しかし、連携はあっていいんじゃないか。運営が何となく縦割り的になっている例を見聞きします。現場に行きますと、以前パソコン室だったところが閉じたままで、図書館としてはそのスペースが隣なのに使えない例や、逆に、さっさと壁を取って、かつてのパソコン室だったところを有効に利用している例があります。積極的に使っているところとそうでもないところがあるんですが、空間的な利用に加え、ICT支援員との連携があっていいと思います。
もう一つ、(4)の「関係機関の連携・協働の促進」で忘れてはならないのは、公民館です。市民活動している人たちって、少しそういうふうな言い方もよくないですが、公共図書館派と公民館派みたいなところがあるんですね。建物を建て直すと、合築がなっていくところが増えています。一般の市民から見れば図書館も公民館もないですから、そこで様々な活動をし、学ぶことにおいては、あたかも1つの組織のように、1つの建物にあっていいんです。それが、うまくいってないところへ行くと、受付窓口から、あのホールは向こうですみたいになって、たまたま建物は1つだけど、全然融合してないという事例にも出会います。
MLA連携という言葉もありますけど、図書館が同じ公共組織の中で連携する相手としては、まず最初に公民館があってよいのじゃないかなと思っています。
最後に、最終的な報告の改定ということになるんですが、図書館法も学校図書館法も、その下にある「望ましい基準」もガイドラインも、時間がたって現状にそぐわない点があるものの、不変的な理念はちゃんと書かれているんですよね。ちゃんと書かれているけど、それを現実化することができていないということだと思います。
例えば研修もそうですが、校長とか館長の理解が抜けがちで、結果的に、自治体の予算の関係で、望ましいんだからしなくてもいいよね、努力義務だからしないでいいよねと落ちてしまうわけです。
だから、しっかり縛りをつけるような方策こそ求められると思いました。理念はみんな共通理解ですけど、現実化する方法をこの報告書の中でしっかり書き込めればなと思ったところです。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。ICT支援員のこと、そして組織として、公の中での様々な組織の連携、そして3点目としては、理念を現実化する方法をきちっと書き込んでいくという御意見を賜りました。ありがとうございます。
それでは、続きまして、松木委員、お願いいたします。
【松木委員】 ありがとうございます。先ほどからお話が出ております、特に池内委員がおっしゃったところを私もお願いをしたいと思います。今現在、評価基準がやはりどうしても貸出しだったりというのは、長く皆さんがおっしゃっています。やはりここに至って、地域の連携というのは、大きな図書館の役割と多くの方が認識されておりますので、ぜひそういったところを明確に評価基準に入れていく。今回、評価基準を見直すということを明確に入れていただきたいと思います。
その上で、先ほど松本委員もおっしゃった、「望ましい基準」を10年以上改定されてないわけですので、しっかりとそこだけ、またしっかり時間を取って、現状に合わせた基準をつくって、公共図書館・学校図書館をしっかりとしていただけるようにと思っております。ぜひ明確に評価基準の見直しをしていくということを入れていただきたいというのも私の意見です。
以上です。
【秋田座長】 ありがとうございます。評価基準を明確化していくということや、それから「望ましい基準」を現在の観点からきちっとしていくというところ、ありがとうございます。
ほかには御意見はいかがでございますでしょうか。
髙橋委員、曽木委員、そして堀川委員という形でお願いできればと思います。髙橋委員、お願いいたします。
【髙橋委員】 骨子の大きい3の(5)の「人材育成と専門性の向上」に、デジタルネットワークと館長・学校長のことが書いてあるんですけど、この中に、新たな図書館の役割に鑑みた研修内容の検討とか必要性として、ファシリテーション力とか、対人スキルに関連する、何かそういった新たな能力の育成を喚起させるような記述を入れたほうがいいんじゃないかなと思ったのがまず一つです。
それから、大きい4のところで、図書館と学校図書館制度・基準の見直しで、財政担当部署なんかと図書館に必要な設備や資料数等について話すと、「望ましい基準」というのは参酌基準だよね、結局、参考にすればいいんだよね、みたいなことを言われたことがあります。
私が学校長だったときの感覚と似ていると思いました。そういう実態を踏まえると、学校図書館ガイドラインとか「望ましい基準」の中でも、長年この2つに記述してきた内容の中でも、1つ上の例えば図書館法とか、学校図書館法とか、法のところに移動してもいいような内容のもの、ただしあんまり細かいものが移動すると困ると思うんですけど、そういったガイドラインとか「望ましい基準」から法のほうに内容を移動させてもいいようなものの検討みたいな、何かそういったこともちょっと考えたほうがいいんじゃないかなと思いました。そうしないとやっぱり管理職が職員に業務を頼みにくいので、組織という視点からも、そうしてほしいという気はします。
【秋田座長】 ありがとうございます。1点目は、新しいこれからの図書館のための研修とか、表現を加える点、もう一つは、ガイドラインや「望ましい基準」等から法へ、何をより法令化していくのかを報告書の中に書き込んではどうかという御意見をいただきました。ありがとうございます。
それでは、続きまして、曽木委員、お願いいたします。
【曽木委員】 今日もいろいろお話ししたんですけども、その中で、多分この方策というのをつくっていったとしても、恐らく地域の問題は何ら解決しないのかなと。司書を置くということについては取組が進められると思いますけども、その人たちがどういう身分であるかということについては、あまり解決になるようなことがここにはっきり書いていかないと、なかなか処遇の改善にはなっていきませんし、実は処遇の改善をしないと司書のなり手がいないところもあります。せっかく採用試験を実施していただいても、内定をキャンセルする学生さんがいらっしゃるということも聞いております。なぜキャンセルするのかは分からないんですけども、図書館司書があんまりいい仕事じゃないと思っているのか、いろんな意味や理由があると思うんですけれども、やっぱりこれからの図書館を担っていただく司書を養成して配置していくためには、やはり処遇については、解決しないで、そのまま見て見ぬふりで、司書を置きましたというところで済まされてはちょっと困るなというのが私の実感です。
これは公共図書館も同じですし、もちろん学校図書館も大変悲惨な状態であるということは聞いておりますので、そういった両方のところでやっぱり入れていただきたいなというのがあります。
以上です。
【秋田座長】 ありがとうございます。やはり非正規の方の処遇の改善の問題を書き込むべきという御意見をいただきました。
それでは、続きまして、堀川委員、お願いします。
【堀川副座長】 失礼します。この骨子をずっと見ていったときに、読書環境とか読書という言葉が出てきていて、やはり図書館イコール読書というイメージがそのままになっています。そして、3番のところの(3)の生涯にわたる学びを支える読書環境の充実という読書と、それから(6)の読書推進人材との連携・協働という、この2つを比べてみても、読書という意味は同じではないと思います。先ほど設楽委員も、それから曽木委員からも、図書館の役割として、学習とか、それから情報活用能力の育成とかという言葉が出てきていました。そういうことは本文の中には出てくるかもしれませんけれど、章の見出しとしてそういう言葉がないと、やっぱり図書館というのは読書なんだというイメージをそのまま与えてしまうような気がして、何か工夫がないかなと思います。学習環境とか、あるいは情報環境とか、もっといい言葉をぜひ工夫していただけたらなと思います。
それから、この中には、じゃあ、これで実際に国は何をしたらいいのかとか、教育委員会はどうしたらいいのかというような、そうした視点も最後のところでちょっと入れていただけたらなと思います。以前、学校図書館ガイドラインを出したときにも、教育委員会はガイドラインを周知してというか、ガイドラインを踏まえた学校図書館の充実に向けた施策の推進を教育委員会がやってくださいというような、そういう文言もありましたので、やっぱりそういうことも加えていただけたらなと思います。
それから、先ほどちょっと髙橋委員から出てきたように、実際に図書主任という名前で図書館のことをしていらっしゃる方々は多いんですが、でも運営だけであって、カリキュラムとどう関わりを持たせるかという、そこまでの役割というのは捉えられていないんですね、図書主任の場合には。そういう現実も踏まえて、やはり学校司書や、司書教諭は何をするか、図書主任はどこまでするのかとかというような記述も入れていただけたらなと思います。
以上です。
【秋田座長】 ありがとうございます。堀川委員から3点挙げていただきました。1点目は、読書環境というだけではなくて、学習とか、環境とか、情報の環境とか、そういう言葉もあり得るのではないか。2点目としては、国や教育委員会が何をこのような形でしていくのかというところについて、それぞれのすべき使命、役割みたいなところを終わりに、それぞれのところが何をすべきかということの記載を書き込んではどうかというところと、司書教諭と、先ほども出ておりましたけれど、役割として図書主任と学校カリキュラムに関わる司書教諭の在り方の明記とも必要になるのだろうということです。
ありがとうございます。続きまして、池内委員、お願いいたします。
【池内委員】 度々申し訳ありません。今堀川委員が読書という言葉について御意見いただいたところでちょっと思い出したんですけども、第4次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の中で恐らく初めてデジタル読書というものも読書に加えるということが書かれているんですね。でも実は、世の中の人が何をもって読書という行為とみなすかというのはとてもばらばらなんですね。これについて、慶應義塾大学名誉教授の上田修一先生がそういう調査をなさった事例があって、例えば電子書籍を読むという行為は読書だと思わない人が半数以上いるんですよね。今、メディアが多様化して、オーディオブック、つまり、音で聞く読書というのもあるんですよね。つまり、メディアが多様化して読書の範疇も広がっている。つまり、紙だけだった時代でも、辞書を読むことは読書じゃないと。辞書なんて読むとめちゃくちゃ面白いんですけど。いろんな人がいるんですよ。
ですから、やっぱりこの手の文章を書くときに、読書推進計画でもそう思ったんですけど、読書とはという定義がやっぱり必要なのかなと思いました。今堀川委員がおっしゃってくださって、ああ、そうだと思い出したんですけども。例えば本屋さんに行くと、お母さん、お父さんが、何でもいいから本買ってあげようって言って漫画を持っていったら漫画は駄目とか言うわけですよ。日本の読書調査をやると、漫画は除くって書いているんですよ。これ本当に奇妙なことで、何だって読書のはずなのに、読書から外しているとかという人もあるわけですね。
だから読書とは何かというのはやっぱり、文科省が定義してくださる読書の定義があったら、我々もいろんなところで引用して、授業で文科省はこうやって言ってるんだよ、読書って言えるので、比較的多様な読書を捉えるような概念を定義していただくと、今回の骨子にも含めていただくと大変ありがたいかなと思います。
以上です。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。恐らくそれはブーメランのようにここでどういうことを読書として考えていくのかということにも関わってくるんだと思いますが、少し広く定義したり考えていく必要があるのではないかということをお話しいただきました。
ほかにはいかがでございますでしょうか。
よろしゅうございますでしょうか。
それでは、本日はここまでにさせていただきまして、いただいた意見を含めまして、第7回の会議における主な意見というような形で取りまとめて次回に資料とさせていただきます。
また、本日、時間の関係であったり、後でというようなことで御発言をいただけなかった委員におかれましては、後ほどメールにて事務局のほうにお送りいただければと思います。
次の議題は、「その他」ということですが、事務局から何かございますでしょうか。
【髙田地域学習推進課長】 その前に、少しだけよろしいでしょうか。今日は、特に骨子についていろいろ御意見をいただき、ありがとうございます。実は、今回骨子案を出すときに、我々も迷いがありました。皆さんの御意見を踏まえて有識者会議の報告を出すので、今回は控え目な内容で出したのですが、やはりできるだけ、骨太と申しますか、あるいは新しいメッセージでしょうか、これからの今後の図書館・学校図書館に向けて、新しい時代を踏まえてこういう方向性でやっていくべきだというメッセージ性のあるものをできるだけ盛り込みたいと考えております。今回はまだ控え目ですけれども、そのようなことも踏まえて、今回言い足りなかった部分について、後ほどメール等で御意見をいただける場合は、そちらも踏まえて、次は少し踏み込んだ形の御提案をしたいと考えております。ただ、そうはいっても最終的に行政文書になるときに表現を変更することもあったりしますが、我々としては意欲的に今後のメッセージ性をできるだけ出したいと考えておりますので、そういった観点で御意見いただければと思います。
次回も次々回もまた議論いたしますので、よろしくお願いいたします。
私から補足でした。
【秋田座長】 ありがとうございます。
【稲田図書館・学校図書館振興室専門官】 第8回以降の会議日程につきまして御連絡をさせていただきます。
資料5でございます。第8回は、11月14日金曜日、13時から15時、第9回は12月18日木曜日の14時から16時の開催を予定しております。いずれも会場は文部科学省会議室を予定しておりまして、ウェブ会議を併用して行います。
以上でございます。
【秋田座長】 ありがとうございます。本日の議事は全て終了いたしましたので、第7回会議はこれで閉会といたします。ありがとうございました。
オンライン御参加の方もどうもありがとうございました。閉会といたします。
総合教育政策局 地域学習推進課 図書館・学校図書館振興室
電話番号:03-5253-4111(内線:3484)