図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議(第5回)議事録

1.日時

令和7年7月17日(木曜日)13時00分~15時00分

2.議題

  1. 図書館・学校図書館と関係機関等との連携・協働の促進等のあり方について

3.出席者

委員

秋田委員(座長)、池内委員、伊佐治委員、伊藤委員、植村委員、緒方委員、紀之定委員、小林委員、汐見委員、設楽委員、曽木委員、高橋委員、土屋委員、手塚委員、中村委員、奈須委員(副座長)、花田委員、林委員、堀川委員(副座長)、松木委員、松本委員

文部科学省

塩見総合教育政策局長、神山社会教育振興総括官、髙田地域学習推進課長、坪田地域学習推進課教育改革調整官、田中図書館・学校図書館振興室長、稲田図書館・学校図書館振興室専門官

4.議事録

【秋田座長】  皆様、こんにちは。定刻となりましたので、これより、図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議の第5回の会議を開催いたします。
 本日の流れでございますが、本日の議題は、「図書館・学校図書館と関係機関等との連携・協働の促進等の在り方について」です。
 まず、事務局より今回の会議における「論点(案)」の説明をいただきます。その後に3名の方に御発表をいただきます。初めに、松本委員より「図書館・学校図書館と関係機関等との連携・協働の促進に向けて、その現状と課題を中心に御発表いただきます。次に手塚委員より紫波町図書館における地域活性化に向けた連携・協働の取組やその課題について御発表をいただきます。最後に、小林委員より鳥取県立図書館や鳥取県内の図書館における書店等の関係機関との連携・協働の取組やその課題について御発表をいただきます。
 お三方の御発表が終わりましたら、御発表に関する質疑や「論点(案)」に基づき意見交換の時間を約1時間程度取りたいと考えております。
 それではまず、今回の会議における「論点(案)」について、事務局より御説明をお願いいたします。

【田中図書館・学校図書館振興室長】  それでは、事務局より本日の論点案の御説明をいたします。
 お配りの資料、資料1の2枚目を御覧ください。「論点(案)」のほうをここで一覧を示してますが、本日は2の「図書館・学校図書館の運営上の諸課題への対応」の中の「1.関係機関等との連携・協働の促進等」についてです。
 具体的に地域コミュニティへの寄与のため、図書館・学校図書館に求められる役割、これらに対応した資料、サービス、施設・設備、人材について、また、地域の多様な関係機関等の連携・協働(学習資源・人的資源の共有の促進等)による読書環境の充実に向けて求められる事項についてです。なお、これらの事項について、図書館と関係機関との連携上の課題とされている事項、例えば、過度な複本や新刊貸出し時期や地元書店からの書籍の購入、装備費負担等に係る現状分析も含むものとしてございます。
 次に3ページを御覧ください。これらの連携・協働に係る現状です。
 図書館からの見方ですが、ここでは、図書館が企画実施した読書会・研究会等のうち、民間社会教育事業者との連携・協力の状況について調査を行っています。営利社会教育事業者との連携は、全体で2.6%程度。非営利社会教育事業者は全体で9.3%程度と、これらを足し合わせても1割強が現状です。
 また、図書館が企画・実施した読書会・研究会等のうちの共催相手について、具体的には、図書館以外の社会教育施設であるとか、また、教育委員会、知事部局・市町村部局との連携というのが、数字としては大きいところです。
 続いて、学校図書館につきましては、公共図書館と連携している学校数等の調査を行っており、実際に連携している学校数で見ると全体の7割強です。その内訳として、公立図書館資料の学校への貸出しを行っている学校数では9割強。また、公共図書館と定期的な連絡会を実施している学校数や、公共図書館司書等による学校への訪問がある学校数は、2割強にとどまっている状況です。
 次に4ページを御覧ください。これらの現状を踏まえた基本的な方向性ですが、既に平成24年に改定されている「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」においては、資料や情報の相互利用など、他の施設・団体等との協力を積極的に推進するよう努めるものとするとの記載がございます。
 また、「学校図書館ガイドライン」におきましても、学校図書館、公共図書館、博物館、公民館、地域社会等と密接に連携を図り協力するよう努めることが望ましいということが明記がされております。
 さらに、第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」におきましても、家庭、学校、保育所、認定こども園、図書館等に加え、公民館、児童館、国立国会図書館、大学図書館等が機関の特質を生かし、効果的に連携・協力する。また、図書館等が地域の書店、出版社、民間団体等との連携に努め、地域に根差した子どものための読書環境醸成に取り組むことも考えられる旨が明記されております。
 引き続き、5ページを御覧ください。本年6月10日に策定された「書店活性化プラン」においても、地域に根差した読書環境醸成のためには、書店と図書館の連携が図られることが重要である旨、また、図書館の複本購入や新刊貸出による書店の売上への影響、納入の在り方等については、未だ連携が不足しているとの指摘もあり、こうした取組が全国的に広がることが期待される旨、明記されております。
 なお、具体的な施策については、1つ目として、読書環境の整備・改善に向けた連携協働モデルの構築・普及を行った上で、読者へのアクセスの確保、読書を通じた地域の活性化、読書を支える人材の育成を図ること。2つ目として、図書館における複本購入等や新刊貸出の状況、地域の書店からの図書の購入及び装備費の扱い等について、令和7年度に実態調査を行うことが併せて明記されております。
 6ページ目を御覧ください。文部科学省においては、既に令和6年6月に図書館・書店等との連携事例をまとめた資料を発表しております。
 7ページを御覧ください。令和6年度の補正予算におきまして、図書館・学校図書館と地域の連携協働による読書のまちづくり推進事業という予算を確保した上で、今年度から事業を実施しております。
 8ページ目では、ここまでご説明した課題や現状、そして対応方針等を踏まえ、本日の会議の論点として、3つ挙げております。
 1つ目、「地域コミュニティへの寄与のために求められる役割・必要性について」このうち共通事項については、高度化、多様化する利用者及び住民の要望への対応に応えるために、図書館・学校図書館はどのような役割を担うかという点。
 また、図書館からの視点として、都道府県立図書館に対して特に期待される役割/市町村立図書館が担う役割。事故や災害等の非常事態を含めて、地域や関係機関と連携して対応するために求められる役割、連携により期待される効果。また、学校図書館からの視点として、児童生徒及び教員の利用に供しながら、地域社会と連携する必要性や意義についてです。
 2つ目、図書館資料・サービス・施設・設備の在り方についてであり、ここでは図書館からの視点として、利用者の要望や社会の要請、地域の実情に留意しつつ資料を収集・提供するために、どのような収集方針とすべきか。地域や関係機関との連携に向けて、どのような蔵書構成、サービス展開が必要か。多様な地域住民のニーズに対応するために求められる環境の整備についてです。
 3点目、司書・司書教諭・学校司書等の人材の在り方についてです。共通事項としまして、利用者の要望や社会の要請に応えるため、司書・司書教諭・学校司書等に求められる役割について。読書環境の充実に向けて、地域や関係機関との連携・協働のために司書・司書教諭・学校司書等に必要な専門性や資格。また、必要な研修等についてということで論点をまとめております。
 以上の視点を踏まえつつ、本日の議論を進めていただければと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からは、以上でございます。

【秋田座長】  田中室長、御説明どうもありがとうございました。
 それでは、発表に入りたいと思います。まず、松本委員から御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【松本委員】  よろしくお願いいたします。それでは、私から資料2「図書館・学校図書館と関係機関等との連携・協働の促進に向けて」ということで、話をさせていただきます。
 次のスライドをお願いします。本日の内容は、このようなことです。後ほど具体的な事例の発表がありますので、ここでは全体的、概説的な話をさせていただこうと思います。
 では、連携・協働とはということで、次をお願いします。
 これは1つの事例ですけども、文部科学省が「図書館実践事例集」というのをまとめています。静岡県の事例ですけども、書店員と図書館員が連携をして県民に勧めたい本を投票で選ぶということをやっております。これはイメージをつかんでいただこうということで、お示ししておりますけれども、連携・協働というのは異なる組織、あるいは機関間で連携して共通の目的達成を目指すことです。
 では、次のスライドをお願いします。連携・協働の必要性についてなどは、文献などにいろいろ書かれておりますけども、下に書かれている文献などでは、5点挙げられております。新しい利用者へのリーチということで、連携・協働することによって、新しい利用者にアプローチしていくとか、2点目、重複の回避ということで、同じようなことを別の図書館でやっているのであれば、そこをまとめたほうが効率的であろうと。3点目は、リソースの縮減への対応ということで、予算とか人の面で縮減をするというような事態があっても、サービスを維持、あるいはよりよくしていくということも可能になるかもしれない。4点目は、連携・協働によって知恵を出し合って、新しい環境に適応していく、5点目として、シナジー効果というのが挙げられていますけども、1足す1を3、あるいは4にしていく、そういったことが連携・協働によって可能になるのではないかということです。
 次をお願いします。連携・協働に関しては、いろいろな言葉が実は使われておりまして、例えば、図書館法などを見ると関連する言葉として、「連絡」「協力」なんていう言葉が使われているんですね。その概念の整理をしておきたいと思います。
 次をお願いします。こちらは、連絡、連携・協力、協働というのを、目的、活動、構造化、繰り返しという観点からまとめた表になります。ここでは、連絡から協働など下に行くに従って、機関間あるいは組織間の関係が深まるというふうに御理解いただければいいのかなと思います。
 それとあと2点ほど、ちょっと付け加えたいことがあるんですけども、協働というのがあると思うのですが、これは図書館の文脈では、住民との連携・協力の観点で、この言葉がよく使われているということです。
 それから、海外の文献などでは、協働の先にもう一つステップがありまして、「統合」というのが言われたりします。これは、資金などの資源を機関間、組織間で共有して事業を実施するということす。大学図書館などでは日本でもやられていますけれども、コンソーシアムを組むというのは、1つ代表的なことなのかなと思います。
 では、次をお願いします。連携・協働にはいろいろな課題があるということで、こちらは薬袋先生の文献で書かれていることですけれども、課題として5点ぐらい挙がっています。1点目は互恵関係の成立です。お互いにどういうメリットがあるのかということ。2点目は、資源(予算など)の確保ということで、特に連携事業等の立ち上げ時には予算などが必要になることが多いですので、そうしたものが課題になると。3点目として、連携等の意義・効果の理解。そうしたものが組織内にないと、新たな仕事がまた増えるのかというようなこともありますので、次のステップに進まない。4点目は、連携等の働きかけです。具体的な働きかけということ。5点目は事例の共有ということで、連携・協働によってどんなことができるのか。あるいは、どうすればいいのか。そうしたことの事例を共有することで、いろいろな連携・協働に進んでいくというようなことが言われております。
 私は、この中では資源の確保というのが、やはり非常に重要だろうと思います。きっかけとなるような予算を自治体あるいは国などが支出をすることで、いろいろな連携・協働などが進んでいくのではないかと思います。
 次のスライドに行っていただきまして、こちらは、制度的にどういうふうなことが今は規定されているのかというのを、少し細かく見たものです。図書館法と、それから図書館の望ましい基準の規定です。そこで、どういったことが言われているか。青色は図書館関係、緑色がそれ以外。その内側に書いてある連絡、連携、協力は関係性です。これを見ますと、これは公共図書館ですけども、連携・協力の対応であったり、連携相手というのは、かなり多様に規定されているということが分かります。
 次に行っていただいて、その中でも特に強調しておきたいのは、やはり都道府県立図書館の役割です。相互性という観点では薄いんですけれども、やはり機関を超えた協力関係というので考えると、これは非常に重要だろうと。基礎自治体の図書館のパフォーマンスは、やはりかなり都道府県立図書館の活動に依存する部分がありますので、今、「ア」から「カ」が定められていますけれども、ここの部分をいかに活性化して進化させていくか、これが非常に重要なことだろうと思います。
 では、次のスライドに行っていただいて、今度は学校図書館について見たものがこちらになります。学校図書館法と、それから、学校図書館ガイドラインに書かれているものをお示ししております。数は先ほどと比べれば少ないですけれども、いろいろな機関との連携、連絡、協力などが書かれていると。この中で私は、やはり学校図書館支援センターの役割が非常に重要だと思います。先ほども少し事務局からお話がありましたけれども、学校図書館を支える上で非常に重要だと思っております。
 鳥取県立の図書館では、学校図書館支援センターを作って、市町村の図書館を支援するということで、県が市町村の垣根を越えた取組をしているという点では、注目される事例ではないかなと思います。
 では、次のスライドに行っていただきまして、じゃあ、実際に今はどういうふうな連携・協力が行われているのかというのを、事例集を文部科学省のほうでまとめておりますので、それを見ながら、新しい部分を見ていきたいと思います。
 次に行ってください。ここでは、先ほどの制度的に規定されていることは除いて、新しい部分について、特に連携相手と連携・協働の在り方をお示ししております。連携相手としては、商店街とか地元、企業とか書店なんていうのが上がっておりますし、病院など医療関係とか、国際交流センター、あるいは住民ボランティアなどが挙がっている。連携・協働の在り方でいいますと、公共図書館が学校図書館を支援するというようなものが挙げられていたり、協働に関するものとして、住民ボランティアが挙げられたりしております。
 次に行っていただいて、それを先ほどの図にもう一度落とし込んでみますと、このようになって、この中では、やはり住民ボランティアとの協働というのが、いろいろ挙がっているなという印象があります。
 望ましい基準などでは、住民あるいはボランティアというのは、かなり受動的な存在として規定されているということがありますが、やはり協働する存在として規定していくということも、今後は必要なのではないかと思います。
 では、次に行っていただいて、学校図書館についてですけども、連携相手としては幼稚園が挙がっていますが、連携・協働の在り方については、公共図書館と似たような形です。
 次に行っていただいて、ここでも制度的なものと比べれば、今の実態として、関係者が多様化しているというようなことと、住民との協働は増えているということですかね。近年では、学校運営協議会なども活発に活動するようになっておりますので、そうした協働の在り方についても、注目されることではないかなと思います。
 では、次に行っていただきまして、注目される連携・協働ということで、公共図書館が多くなってしまうんですけども、4つほど事例をお示ししたいと思います。
 1つ目は「デジとしょ信州」です。これは長野県全体で試みられている電子書籍に関する共通プラットフォームです。連携相手は図書館間ということではなくて、長野県の場合は図書館の未設置自治体も対象にしているという意味では、新しい試みではあろうと思いますし、これは、共通プラットフォームをつくって、そして事業を動かす際にワーキンググループなどを設置して、基本は自治体の図書館職員などが実際の運営に関わっているという意味では、もうこれはほぼ統合という、先ほど概念の整理の一番最後のところ、「最終ステップとして」という話をしましたけれども、統合にかなり近づいている、あるいは統合になっているんじゃないか。やはりこういった県の連携・協働の進化系というのを、今後もいろいろ考えられるんじゃないかというのが1つ目の事例としてお示ししたものです。
 では、次に行っていただいて、2つ目ですが、今、私はポーランドにいるものですから、ポーランドの事例を少し紹介したいと思います。ポーランドでは、「Alma」という共通プラットフォームを導入しております。公共図書館以外に大学図書館も入っているんですけども、1,000館ぐらいが参加しております。これはどういったものかというと、このシステムは、国立図書館が経費を負担しております。日本では、図書館システムというのは個々の自治体がベンダーと契約をして導入していると。ある意味、重複なんですね。MARCも個々の自治体が購入しているのですが、ここは単一のプラットフォームで、それから、MARCも国立図書館のMARCを使って、個別の図書館はコピーカタロギングでほぼ済むと。典拠情報も利用できますので、図書館によってはMARCの品質が向上するということが期待されます。書誌ユーティリティー的な側面もありますので、相互貸借にも展開できるという意味で非常に面白い試みかなと思います。
 これは、先ほどの概念の整理でいえば、まさにもう統合のレベルですし、都道府県を越えて全国での連携・協働ということなんですね。日本でやはり欠けているのは、こういった全国レベルでの連携・協働だろうと思いますので、こういった支援の枠組みづくりといったものが非常に重要なのではないかと思います。
 では、次のスライドに行ってください。3つ目は、長野県の「信州ブックサーチ」というものです。これは県ごとの横断検索の仕組みでして、県内の基礎自治体、あとはほかの大学図書館などの所蔵が分かるものです。これがユニークなのは、書店が入っているんですね。近隣書店の在庫というのを調べられます。考えてみますと、こういったデジタルを活用した連携・協働というのは、今後もいろいろ進化の余地があるんじゃないかなと思います。公民館であったり、あるいは博物館であったり、そうした機関のイベント情報というのを、こういったところに載せることもそんなに難しいことではないだろうと思いますので、そうした方向性の進化というのもあり得るのではないかということです。
 では、次のスライドに行っていただいて、4つ目は、ワルシャワ郊外の公共図書館で行われていることなんですけど、そこだけではなくて、ポーランド全国で行われていることです。ここでは読書会が非常に活発です。その読書会で読んだ本の著者を講演会で呼ぶということも、活発に行われています。やはり読者を増やす、あるいは読書文化を発展させるということのためには、図書館も著者や、あるいは出版社と協力するということが必要だろうと思います。
 実はこういった著者を呼ぶといったイベントにポーランドでは国が補助金を支出して、基礎自治体がそれを実際にやっていくというようなことをやっておりますので、ある意味、種をまくというようなことも非常に大事なんじゃないかなと思います。いずれにしても、出版界と図書館界がウィン・ウィン、相互に得るものがあるという関係づくりをしていくことが、非常に大切だと思います。
 では、次のスライドに行っていただいて、こちらは最後になりますけれども、じゃあ、協働というのは、実際にどう行われているかを海外の文献などを見ますと、このようにモデル化されたりしております。
 実現要因として、信頼構築、コミュニケーション、ツールと書いていますが、共通ツールの活用とかそうしたことがあって、だけど、予算、職員、時間、競争といったものが障害になると。競争というのは、ちょっと分かりにくいかもしれませんけれども、お互いにノウハウを隠すというようなことが、弊害として出てきてしまうということです。それから、だけどそれを乗り越えて協働に進むと、ニーズ評価から始まって、事業実施のモニタリングというようなことに進んでいくわけです。このようにモデル化が可能だということなのですが、やはり地域の関係者との連携・協働において、こういったノウハウというのは、職員はやはり知っていないといけない。もちろん、連携・協働を進める中で獲得するということはありますけれども、研修であったり、あるいは図書館司書課程といったところで、こうしたことを学ぶという機会も必要だろうと思います。
 そして、そうしたノウハウを学ぶということは大事なのですが、そもそも人がいない職場、特に学校司書は顕著だと思うんですけれども、人がいないというのは、もうこれは連携・協働の基盤がないということですよね。それから、職員もどんどん替わってしまうというようなことであれば、やはりこれはなかなか進まないということがあります。人脈というのも人に蓄積するという側面がありますので、専門職が安定して働ける、そうした環境づくりが必要なのではないかと思います。
 私の発表は以上です。

【秋田座長】  松本委員、どうも御発表ありがとうございました。
 それでは続きまして、次に手塚委員から御発表いただきます。手塚委員、よろしくお願いいたします。

【手塚委員】  岩手県の紫波町図書館で司書をしております手塚と申します。本日は、地域社会における紫波町図書館の役割、連携・協働についてお話しさせていただきます。私たちの活動は、あくまで1つの事例に過ぎないんですけれども、少しでも地域の図書館の可能性ですとか、これからの重要性について感じていただけたらうれしく思います。
 では、次をお願いします。紫波町は、岩手県のほぼ中央に位置しておりまして、盛岡市から電車で20分ほどの距離にある農業が基盤の町です。時代の流れとともに高齢化や人口減少が進んで、財源が限られる中でも、持続可能で暮らし心地のよい町を目指して様々な取組を行ってきました。その1つが、官民の連携によるオガール・プロジェクトで、紫波町図書館は、その中心施設にあります。
 13年前に町で初の図書館として開館し、今では地域の人々だけでなく、町外からも御利用が多い施設となっています。
 次をお願いします。そもそも連携や協働は何のために行っているかといいますと、町の人たちが目指す未来、つまり、よりよい暮らしや未来をつくるために個々の力だけでは解決できない課題に取り組むためです。紫波町は市民活動が盛んな町で、地域ごとに多くのプレーヤーや団体が存在しています。その中で、自分たちで考え行動できる環境をつくるためには、知識や情報、そして人々のつながりが欠かせません。図書館は、そのためのハブとなる場所を目指しています。
 次をお願いします。そのため当館では、館内の空間を誰でも許容する、自由に安心して過ごせる環境づくりをしています。互いに挨拶を交わして、雑談を通じて町の情報を得たりします。司書は、コミュニケーションを土台にして情報を提供したり、時には直接人々をつなげる役割を果たします。この写真は、10周年イベントの様子なんですけれども、町の様々な専門家や愛好家の皆さんと、町民が直接話すことができるブースを設け、図書館を介して新たなつながりや発見が生まれました。
 次をお願いします。そして日々のレファレンスや相談、来館者との雑談を通じて、個人の課題から地域の課題やニーズを感じ取ることがあります。そこから、町で何が起きているか、どんな課題があるか、どうしたら解決できるかを整理して、図書館ができることを、どんな手段で行うかを考え実行しています。
 次をお願いします。その一例を4つ挙げます。まずは、鳥獣害対策です。ある時期から、農作物への獣害について困っている、個人の力ではどうにもならないという相談が増えました。高齢化が進み、担い手もいない農家さんは、農作物被害によって農業を辞めざるを得なくなると、どんどん農家は減少します。もちろん図書館でも本やDVDはそろえていますが、それだけでは解決できません。なぜなら、解決策は地域ぐるみで協力し、動物のすみかと餌場をなくすことだからです。また、担当の農林課からは獣害対策に成功した地区があり、ほかの地区にも広めたいんだけれども、説明会を開いても人が集まらないと相談がありました。そこで図書館で、実態と対策の情報を関係部署、専門家である大学の先生、実際の対策をしている地域の方、JA、他市町村の担当者などから集めて、企画展示とトークイベントを行いました。さらに各地区の公民館へ出張して、関係部署との農業専門の出版社とともに全国の対策事例などを学ぶ講座を行いました。その後、自分たちで図書館からDVDを借りて勉強会をする地区も現れました。
 次をお願いします。次に地域の記憶の継承の例です。町には、郷土史を調べたり、自費出版する方々や団体がありましたが、高齢化に伴い地域の歴史を残す活動も後継者がいないまま減少しています。また、コロナ禍で人と会う機会が減る中で、高齢の独り暮らしの方が孤独になっていくという問題もありました。そこで町の記憶を残す方法として、80代以上の町民の方にこれまでの暮らしや仕事、人生を聞き取って記録として残す、聞き書きストを養成する講座を始めました。町の方がこうした活動を行うことで、町の人が持つ記憶が継承され、地域の記録として後世に伝わることを目指しています。
 次をお願いします。コロナ禍になりまして、誰もエビデンスを持たず、不安なまま混乱する中で町にデマが広まり、刻々と状況が変わる中で情報の取捨選択が、命と暮らしを守るために必要でした。そこで、情報リテラシーを高めるために専門家や医療関係者と連携して、情報の見極め方などを展示しました。また、地域の消費が落ち込んだ際には県内の観光案内情報を提供して、地域経済のサポートを考えました。同時に、失業や転職の相談が増えてきたため、ハローワークのない町なんですけれども、その中で、気軽に立ち寄れる図書館の中で就労相談会やセミナーを開始しました。
 次をお願いします。もちろん図書館には来られていなくても困り事を抱えた方や、生きるために情報やサポートが必要な方は、見えていないだけでたくさんいらっしゃいます。そのため、町内外の福祉やケアに関わる関係者が緩く集まって話し合う、「ふれあいミーティング」という会に司書も参加して、地域で今起こっている課題を共有しています。専門分野を越えて共有して意見交換をする中から、新たなアイデアが生まれ、得意分野を生かし合った連携が生まれています。
 次をお願いします。図書館は直接地域のハブとしても機能します。例えば、紫波の酒蔵やワイナリーの魅力を伝えるイベントとして、盛岡の書店員さんとコラボしまして、紫波のお酒を飲みながら書店員の方が無人島に持っていきたい本などを、メニューにそって本を紹介するというBOOK BARです。この後、書店の中で杜氏さんがお酒を紹介するイベントが開かれたり、書店が主催のBOOK BARが開催されたりと派生していきました。直接図書館が行わなくとも、つながりから町の文化や魅力を伝えて、地域活性化の一端を担うこともできると思います。
 次をお願いします。4つ目の例として、地域で子供たちの生きる力を育むためには何ができるかです。そのためにはまず、子供たちや家族、地域、学校、それぞれが抱える悩みや課題を知る必要があります。例えば、子供たちは本が嫌いなわけではなくて、身近に面白い本がないこと、つまり環境の問題が大きいです。興味を持てる本に出会えば、図書館は楽しくて自由な学びの場所にもなります。また、ゲームが好きな子供たちは、友達と過ごすための場所として図書館にやってきます。地域では、子供たちの自由な学びをどうサポートするか。サポートしたい大人の悩み。学校では、どうやって本を読む子を増やすのか、読書習慣をつけるのか。そしてPTAでは、学校図書館をもっと魅力的にしたいという悩みの相談がありました。特に岩手県内の小中高では、学校図書館がその本来の機能を十分に生かせていないという共通の課題があります。多くの学校で司書教諭や学校司書が不在で、教員や事務員がその役割を短期間で兼任しており、図書館の運営や事業支援は難しくなっています。そのため読書以外の役割、学校図書館を活用した調べ学習ですとか、子供たちの探究心を育む活動が十分に行われていないという現状があります。こうした環境で育った子供たちが大人になって教員となり、学校図書館の重要性を理解するのが難しい教員が増え、結果的に子供たちが学校図書館を利用する機会が減少して、資料費・人件費も難しくなるというスパイラルに陥っています。
 そこで当館では、「調べるちからは、生きるちから」をスローガンに掲げ、「調べる学習コンクール」のサポートをしています。子供たちが、自分の知りたいことを自分で調べる方法を学んで、興味を持って深掘りして、考察してまとめ、発表できる力を育む取組です。しかし残念ながら、町の全ての子供たちに支援が行き届いているわけではありません。もし、司書教諭、学校司書、学校図書館が十分に機能して、さらに地域のサポートがあれば、子供たちの学びはもっと自由で深いものになり、生きる力になります。そして、それが地域全体の力を育むことにもつながると思います。
 次をお願いします。先ほど御紹介した4つの事例は、全て町が目指している暮らし心地のよい町につながっていく取組です。いずれも、連携や協働があってこそ成り立っているものです。特に子供たちの探究心を町全体で育むためには、学校図書館とのつながりが欠かせません。しかし現状では、教員の方々がその重要な役割を負っているのですが、これは非常に大きな負担となり、難しい部分も多いです。情報活用能力や問題発見、解決力、情報の生かし方、倫理観や公共心の育成など、今後ますます重要となる分野に専念できる司書教諭や学校司書、バックアップとしての公共図書館、そして専門家ですとか、地域の人々をつなぐコーディネーターが役割をしっかりと分担して、地域全体で子供たちをサポートできれば、その効果は計り知れないものになると考えています。
 次をお願いします。これらの取組には、幾つかの課題もあります。まず1つ目は、財源の確保です。地域のニーズに応えた図書館サービスを提供するためには、必要な資料や機器をそろえることが不可欠ですが、財源が限られている中では、それを確保することが難しいのが現実です。次に2つ目は、人材の確保です。特に私たちの図書館は非正規職員を多く抱えており、職員が替わるたびに培った地域とのつながりや経験がリセットされてしまいます。地域貢献の継続性、サービスの質を安定的に保つことが難しくなっています。そして3つ目が急務だと感じている課題です。これは、地域全体でデジタルリテラシーを高める必要があることです。特に情報格差やデマですとか詐欺、情報の偏りによる差別ですとか、そういった生活のあらゆる面で情報の活用能力が求められています。図書館は、多様な意見や立場、世代が交わるオープンで身近な対話の場となり、地域の全ての世代に向けたリテラシー向上の場としても、ますます必要な装置として機能できたらと思っています。
 次をお願いします。最後に都市ほどの情報資源や人的資源がない地方では、地域に出ること、交流すること、図書館がハブとなって開くこと、自然や人も含めたあらゆる知識・情報・体験が得られることで活動が回り出します。限られた資源の中でも、図書館は地域社会の協働を生み出すこと、学校は子供の学びにまつわる協働を生み出すことができます。そのためには、どちらにも情報と知識のハブになる人が必要です。特に岩手県の学校の場合は、根本をたどっていくほかはなく、教職員定数法の改正ですとか、司書教諭の選任、学校司書の努力義務から設置に変えることで、これらの新しい時代に対応できると思います。連携や協働の積み重ねによって、図書館の活用が高まり、結果的に町の人たちが自分の好きなことが実現できる手助けをすることになり、何かをやりたい人が集まってくる町、移住者や交流人口が増え、若い人がチャレンジできる。住民も外部の人でも関わる余地があると思える、関わりしろがある場所になってくるのだと思います。
 以上です。

【秋田座長】  手塚委員、どうも御発表ありがとうございました。
 それでは最後に、次に小林委員から御発表いただきます。小林委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【小林委員】  鳥取県立図書館の小林でございます。私には、書店と図書館との協働連携について報告をということでお話しをいただいておりますので、実際に鳥取県がどのように調達をしているのか、あるいは、どういう協力関係をもって仕事をしているのかということについて、具体例にお話をさせていただきたいと思います。ただ、最初は配布資料以外の手持ちの資料で説明させていただきます。
 鳥取県立図書館では「鳥取県立図書館の目指す図書館像」というビジョンを作っております。大体5年を目安として、我々はどういうサービスを県民に提供していくのかということを、具体的に文章で示しております。ホームページに掲載しておりますので見ていただけたらと思いますが、4つの柱と4つのキーワードをベースにして我々の活動を表現しているものですけども、これの第3の柱の(2)のところに「地域文化、文字・活字文化の振興」という項目を設けております。具体的には、出版社・書店との連携。鳥取方式の図書資料購入による地域文化の振興。それから、図書館と出版社・書店との相互理解の促進と連携・協力。地方出版文化の振興。「ブックインとっとり(地方出版文化功労賞)」など、地域文化、文字・活字文化を守り育てる取組への協力と県民への普及啓発。地方出版物のデジタル化。郷土資料の保存と活用を促進するために、県内の出版社・印刷会社等と連携し、地方出版物のデジタル化を推進すると記載しています。こういうビジョンの中に出版社・書店との連携を明記している例というのは、少ないのではと思っておりまして、ここで紹介させていただきます。
 こういう大前提があった中で、個別のことについて紹介をさせていただきたいと思います。
 では、最初に資料4の1ページ目になりますが、俗に鳥取方式といわれる図書の購入の方法についてお話しします。鳥取県立図書館は、県内の書店から図書を購入するということを原則としています。ただ、地元の書店で調達できない本というのがあります。例えば、当館には、環日本海交流室というのがありまして、ロシア、中国、韓国との交流の歴史を学ぶ部屋をつくっております。それぞれの国の原書を地元の書店から手に入れるのは難しいので、東京に買い出しに行ったりもしているんですけども、それ以外の大体年間2万4,000冊程度の本を地元の書店から購入しています。それは、当館の資料費でおよそ1億円になります。これは、47都道府県の中で四、五番目に当たる予算になります。都道府県の中で人口が一番少ないけども潤沢な資料費を頂いておりまして、その金額ベースで92%ぐらいは県内の書店から購入していくことになっています。
 資料購入を考えるときに、複本問題というのがよく話題になるんですけども、鳥取県立図書館でははっきりしていまして、ベストセラーでも2冊しか買いません。それは、直接来館者向けの1冊、それから市町村に貸し出すための1冊という考え方でして、早く提供するということに価値を置くのか、それとも幅広く収集するということに価値を置くのかということを考えたときに、いろいろな考え方はあるかと思いますけども、鳥取県立図書館としては、様々な資料を提供するということのほ1が図書館の使命としては大事だろうということで、2冊しか買わないと決めているところです。
 では、次をお願いします。鳥取方式が始まった経緯ですが、現在の鳥取県立図書館は1990年に開館しております。その当時の資料を見てみると、職員が書店の閉店や売上げの減少による新刊の入荷減少などを憂慮し、県立図書館が県内書店から図書を購入することによって、書店の経営が安定すると考えたとあります。県民が身近な書店で新刊書や様々な本、情報に触れる機会を保障することにつながるということで、地元の書店から購入すことを優先したと聞いているところです。
 書店と図書館とは同じ本を扱うものですけども、それぞれの役割は違うと考えています。書店は新刊がどんどん流れていって、新しいものがそこから手に入る場所であるし、図書館というのは、その中から必要なものを長期にわたってストックし、必要なときにそれを県民に提供していくという役割ですので、それぞれがやはり重要な機能であって、それぞれがきちんと機能することで、県民に対して様々な情報提供ができるということにつながっていくのだと思っています。
 では、次をお願いします。本の選び方、購入の仕方ですが、本の現物を見て選ぶということを重視しております。俗に図書館の用語では「見計らい」という言葉で申しますけども、各書店から月に1回程度、書籍を図書館に持ってきてもらいます。その本を職員が見て、その中から必要な本を選んでいくということなのですけども、週2回火曜日と木曜日に、1年間は52週として104回、見計らいの選書をしております。県内に本支店があり、見計らいに協力していただける書店をホームページ等で募集したところ、地元の大手書店から、最近若者が1人で起業した小さな本屋さんも含めて、今年は7社に参加していただいて、見計らいを実施しています。7社が104回の見計らいの回数を分けて、分担して担当してくれているということになります。図書館は、実際に本を見て選ぶということで良い選書の実現、書店は、定期的に買ってくれる図書館に本を持っていくことができるという固定客の確保ということで、それぞれがウィン・ウィンの関係になっているのではないかと考えています。
 ただし、鳥取の書店に全ての本が来るわけではありませんので、そこを補完する仕組みとして、出版データから選書をするということも行っております。いわゆる書誌のデータ、全件MARCの中から職員が選んで、それに投票をして、投票数の多かったものについてはリスト選書で買っているということで、必要な本の確保を行っております。
 では、次をお願いします。県内の書店のない市町村の状況です。県内に書店がない市町村の数え方はいろいろあるようで、なかなか定まらないんですけども、2024年12月中国経済産業局が島根県で座談会「書店と地域の未来」を開きました。この場では、鳥取県の書店ゼロの市町村は36.8%と報告されていましたので、これをもとに計算してみると、鳥取県内は19市町村中、7市町村に書店がないのだというような状況で報告をされていたようです。つまり多くの地域で必要な本を、町の本屋で実際に見ながら手にするという環境は、もう既に失われているということです。これを誰がそれをカバーしていくのかと考えたときに、必要な図書を必要なときに手にする仕組みを実現するために、図書館がその代わりの役割を果たしていると考えられるのではないかと思っています。
 次をお願いします。では、県立図書館で入手した本を県内にどう届けていくのかということなんですけども、入手できないものは使えないものと考えられるので、きちんと届けていくということが重要だと思っています。まず届けるためには、図書館が必要です。それぞれの地域の中に図書館があるからこそ、その地域に図書が提供できるのであって、やはり図書館があるということが、すごく大事なことだと思っています。鳥取県は平成27年度に100%の設置率になりまして、全ての市町村に図書館があるからこそ、ネットワークが生きて、そこの地域の人たちに本が提供できるということにつながっています。
 市町村立図書館から県立図書館への貸出しの申込みがあれば、原則2日以内に本が届きます。基本的には翌日です。なぜ2日と言っているかというと、相手の図書館が休みのことがあるからです。相手が休んでいたら届けようがないので。基本的に午前11時までに頼んでいただいた本は、その日の午後に発送しますので、翌日にはその本が市町村立図書館に届くという物流が、ほぼ年間を通して動いております。
 また、県民は県立図書館の利用者カードがなくても市町村立図書館の利用者カードがあれば、ネット上で24時間、地元図書館への資料の取り寄せの申込みができる仕組みを実現しています。県立図書館にわざわざ来てカードを作らなければいけないというようなことは必要ないということです。さらに公立図書館だけではなくて、高等学校図書館、特別支援学校図書館、それから全ての大学図書館、専門図書館等との物流ネットワークを整備しておりまして、そういうところにも2日以内には本が届くという仕組みで、毎日本が届けられております。
 次をお願いします。では、本の購入だけではない書店との連携ということなんですけども、鳥取県内には鳥取県図書館協会というものがあります。本に関わる様々な人たちが一堂に会して、様々な事業を展開しているんですけども、設置の目的を見てみますと、「本会は、県内の公共図書館、高専、短大・大学図書館、学校図書館及び幼稚園、保育園、読書団体等」で、書店はこの中に入るのかと思いますが、「読書団体等の連絡連携のもとに図書館の発展を図り、鳥取県の文化の向上に寄与すること」ということを目的にして、様々な事業を展開しています。
 実施すべき事業の中に、読書運動の推進に関わることが挙がっており、ここを目指して一緒に事業を展開しているということです。
 具体的に言いますと、鳥取県図書館協会の団体会員として、鳥取県書店商業組合が入ってくださっていますし、その代表は、理事として事業の検討に加わっていただいています。さらに書店員の方も多数個人会員として、この協会に入っていただいて、その活動を支えていただいています。
 次のシートをお願いします。具体的にどんな事業をしているかということですが、「本・書店・図書館にまつわるエピソード大賞」を実施しています。400字ぐらいの短い文章なんですけども、ちょっと心温まる話とか、本を介してうれしかった話とか、あるいは、役に立ったこと、新しい気づきや発見、出会いにつながったとか、様々なエピソードをお持ちの方があるだろうと。そういうものを寄せてもらって、本との出会いってこんなに楽しいものですよ、いいものなんですよというようなことがメッセージとして伝わればいいなということで、公募して賞を提供することを実施しております。また、これは鳥取県教育委員会の社会教育課で実施している事業なんですけども、「中学生・高校生のポップコンテスト」というのを盛大に行っていまして、書店商業組合が推薦図書選定し、最終的には鳥取県書店商業組合特別賞という賞を提供していただき、活動を支えていただいています。
 次のシートをお願いします。エピソード大賞については、具体的にこんな話がありますよということを紹介したほうが分かりやすいかなと思いまして、昨年の大賞を取ったエピソードを資料の中で紹介しております。受賞作がホームページとか、様々なところに展示がされ、発信されていくということで、本っていいものだなというようなメッセージが伝わっていけばいいのかなということを考えて、この事業を展開しているということです。また読んでおいてください。
 次をお願いします。書店と図書館との関係について、競合関係で語られがちですけども、書店は、一般的に新刊をいち早く現物で確認し購入できる場所。図書館は、より長い期間のニーズを想定して選書し、必要な本や資料を収集・整理・保存して、必要なときに提供していく場所。共に資料・情報を県民に提供する仲間であって、社会にとってどちらもなくてはならない存在だと考えています。書店で購入する、図書館で借りるなど、その本や利用目的によって使い分けてもらえるといいなと。やはり図書館と書店はよい顧客であり、お互いによいパートナーでありたいなと考えています。
 最後のシートになりますが、取り組むべき課題ということで挙げておりますけども、やはり読者、イコール本を手に取る人、これはデジタルも含みますけども、こういう人たちがいないと書店も図書館も存在できないことは明白です。ですから、この読書をする人たちを、いかにお互いが協働して増やしていくかということが、最大の課題だと思います。小さな鳥取県といえども、必要なときに必要な情報が手に入る環境を、図書館と書店が協力して構築するということを実現していきたいと考えています。やはりそのために必要なのは、図書館と書店とのコミュニケーションということで、様々な課題をお互いが出し合って、話をし、解決していくという場があるということが一番大事なことで、そこを失わないようにしていかなければいけないなと思っているところです。
 以上でございます。

【秋田座長】  小林委員、どうも御発表ありがとうございました。
 それでは、ここからは意見交換の時間とさせていただきます。まず、お三方からの発表に対する御質問の時間をまず取らせていただき、その後に、御発表の前に事務局が御説明くださった「論点(案)」に基づいて意見を御自由にいただきたいと思っております。ですので、まずはお三方の御発表への御質問や、詳しく知りたい、ここを明確にしてもらいたい等がございましたら、対面の方もオンラインの方も、お手元のタブレット等で挙手のアイコンを押していただけますようお願いをいたします。よろしくお願いいたします。どなたへの御質問でも結構でございますので、御質問があれば、挙手いただければと思いますがいかがでございますでしょうか。松木委員、お願いいたします。

【松木委員】  それでは、私のほうから小林委員にお伺いをしたいのですが。
 先ほど、お話の中でスピードより多様性というようなお話がありました。これは、県立図書館だからできるのかもしれません。市立だと、なかなかそれは難しいかもしれませんが、現状スピードでな場合、どれぐらい新刊が発売からの納品の時間といいますか、書店様で現物を選書して、装備をしてお納めになるのに、どれぐらいの時間がかかって、図書館で貸出しされているのか。その辺が、もし平均的なものでも分かれば、教えていただきたい。

【小林委員】  本によって大分状況が変わると思うんですけども、例えば、この本が読みたいということでリクエストが来たとき、それを発注して、装備をして、提供するというのに、大体1か月から2か月ぐらいは待ってくださいという具合にアナウンスをしています。そういう状況です。
 選書についても、出たばかりの新刊のリストを見ているのではなくて、ある程度期間が置かれたもの、半月から一月ぐらい経過したリストについて選書の対象としておりますので、そこもすぐに新刊だからといって選書しているわけではないです。そういう回答でよろしいでしょうか。

【松木委員】  ありがとうございます。
 今、お話を伺って、先日、植村先生も御一緒にフランスに視察に行かせていただいて、いろんなところでお話を伺いました。やはりフランスも多様性が重要ということで、図書館があることで出版の多様性が守られる、書店においても、やはり地域の書店がちゃんとあることで、多様性が守られるというお話がありました。ですから、やはりスピードというのも大変重要だと思いますが、多様性を守るために何が今必要なのかということについては、後ほどちょっと私のほうも御報告をさせていただきたいと思います。その件がありまして、小林委員にお伺いしたわけでございます。

【秋田座長】  ありがとうございます。
 続きまして、植村委員、その後高橋委員にお願いします。植村委員、お願いいたします。

【植村委員】  小林委員への質問です。鳥取方式、本当にかねてから聞いていますし、すばらしいなと思います。全ての県が鳥取方式をやっていれば、ここでの課題はかなり解決してしまうんじゃないかと思うほどです。
 小林委員は、いろんな図書館とか県とかも訪問されて、状況を見ていると思うのですが、なぜできないとお考えですか。何が邪魔をしているのでしょうか。先ほど松本委員が指摘された障害の要素として、予算不足もあるでしょう。それも含め、鳥取方式を導入していくことに対して、何が他県では障害になっているとお思いですか。

【小林委員】  それぞれの図書館によって状況が違うと思いますので、一律にできない理由というのを挙げるのはなかなか難しいかもわからないですね。ただ1つは、対応していただける書店がないという場合が、あるかも分かりませんし、書店が多過ぎるという場合もあるかもしれないですよね。
 それは要するに、図書館とそれぞれの書店との関係性の中で、これは成立する話で、鳥取県という小さいコミュニティだから、顔が見える関係があって、その中でこういうことがやりたいんだよ。じゃあ、これだったらできるよねというようなことが、発端として始まってきたのかもしれないなと思うと、例えば、何百もある書店の中でそれを実現していくというのは、それはなかなか難しい。県となれば、それはやはり公平性は考えなきゃいけないと思いますので、全県の書店に声をかけるんですかとなると、百回しかない、それをどうやって振り分けていくのかという話になるかもしれません。
 それが原因なのか分かりませんけども、それぞれの地域によって難しさはあるんじゃないかなということを今ちょっと思いました。

【植村委員】  ありがとうございます。やはり実現するためには地域の問題・課題を、地域ごとにちゃんと見ていかなきゃいけないと理解しました。
 山梨県の取組も良い事例と聞きますけど、やはりあの規模だからできるというのがあるのかもしれません。大きいところ、小さいところはどう対応していくかの検討することが、次にやることかなと思いました。

【秋田座長】  ありがとうございます。
 それでは続きまして、高橋委員、お願いいたします。

【高橋委員】  3人の委員の皆様、発表ありがとうございました。どれも素晴らしい内容で、当館でもどうやってこれから実践していくか、考えさせられました。
 質問は、紫波町の手塚委員の発表に関してです。私も都道府県立図書館の館長会議の際、その場でいろんな発表を聞いたり、周りの館長さんと話をします。ある館長さんは、「最近の図書館は読書活動を推進する目標もあるけれども、交流とか、地域の課題解決とか、場合によってはにぎわいの創出とか地域文化の維持などが中心的になってきていて、それに使えるような本も置いてあるという運営手法も多く見受けられる。ゴリゴリの読書活動推進じゃなくなってきているよね。」と仰っていました。それが新しい方向性なのかなと思っていつも聞くんですが、紫波町では協働・連携というテーマなので、課題解決や交流の促進、文化の維持という内容の話だったんですが、読書活動推進とのバランスというのはどうお考えで、実際にどの位の力や資源の配分なのかを、お聞かせいただけますか。

【手塚委員】  ありがとうございます。読書活動とのバランスといいますと、ちょっと難しいところがあるんですけれども、読書活動が何を指すのかにもよるかと思います。やはり町の方たちが、皆さん本を読むというわけではないですし、必要なことの優先順位をつけて行っているという感じですね。もちろん、基本的なサービスというのは、ほかの図書館と全く同じように行ってはいるつもりなので、こちらの読書活動推進のほうを、ちょっとおろそかにということでもないんですけれども、やはり限られた時間と資源があるので、そこの中で、やはり何が一番今やるべきかなということの優先順位を決めているということでしかお答えができなくて申し訳ないです。

【高橋委員】  ありがとうございます。地域によってもいろいろ状況が違うと思うので、我々も考えながら取り組んでいきたいと思います。ありがとうございます。

【秋田座長】  ありがとうございます。
 それでは、質疑のほうはここまでにさせていただきまして、ここからは御発表や「論点(案)」に基づく御意見がございましたら、タブレット等で挙手アイコンを押していただけたらと思います。いかがでございますでしょうか。松木委員、お願いいたします。

【松木委員】  それでは、私のほうからも机上配布資料を2枚出しております。こちらをベースに、少し「論点(案)」と、あとはお三方からお話しいただいた中で、大変我々も書店、出版業界としてもぜひというのもありまして、具体的に今動いているところもありますので、そういったところについて御報告しながら、皆さんの御意見をいただければと思います。
 私の立場でいきますと、関係機関との連携・協働となりますと、書店、それから出版社となります。現在、こちらの1番に書いてございますように、「本の未来と読者を考える、書店・図書館等による連携協議会」というのを立ち上げて、準備を進めております。こちらは冒頭、御説明がありました文部科学省さんの「図書館・学校図書館と地域の連携協働による読書のまちづくり推進事業」に採択いただいて、今は進めているものになります。
 実際には、この前にありました対話の場にも参加させていただいておりまして、そこでかなり書店さんと図書館さんとの理解が深まって、一緒にやろうというお話が大分出てきたと思いますが、それを実際に具体的にやろうということで立ち上げたプロジェクトとなります。
 配布資料について、大きくは4つ書いてございますけども、先ほど松本委員からも御紹介いただいた書店の在庫情報を公開していくというプロジェクトを含め、書店と図書館とのシステム連携を考えていけないかと。それから、これはなかなか難しいのですが、書店さんでの図書館資料の受取、返却等によって連携を深められないか。また、図書館の司書さんがつくる図書館本大賞等はつくっていけないかと。また併せて、新しい実践事例ということを普及できないかということを考えております。
 そんな中で今後、ワーキングチームをつくって、今日のいろんな御提案等も含めて実践をしていくということをやりたいと思っておりますので、ぜひ、これからそういったところで協力いただけるという自治体様、図書館さんがあれば、ぜひ協議会のほうに御参加をいただきたい。この協議会につきましては、日図協さんと我々、JPICのほうが一緒になって庶務をさせていただきます。
 その一環として、先日、6月14日に県立長野図書館さんと長野の書店組合さんが中心となって行われた、「信州発・これからの図書館フォーラム」というところに参加をしてまいりました。そんな中でも、先ほどからもお話があったとおり、やはり書店と図書館員さんが一緒に学ぶ機会を増やしていく。それぞれに研修の機会はありますけども、なかなか一緒に学ぶ機会がないということで、先日は短い時間でしたけども、それぞれが連携の発表をしながら、お互いに理解ができたということもありました。この辺を今回の我々の連携協議会では全国で広げていきたいということで、今、お声をかけながら一緒にやっていただける図書館を募集しております。また、そこで一緒にやれる書店さんも一緒に募集をしております。遅くとも今年度中には、できれば5つぐらいの地区で一緒に勉強をして、様々な課題を理解しながら、地域ごとに何をするかということを進めていくことをやっていきたいと思います。小林委員もおっしゃったように、今、残念ながら図書館に対して書店は納品の業者になっております。しっかりと一緒に勉強することでパートナーになって、一緒に地域を支えていくということができればと考えて、今は準備を進めております。
 2枚目に「在庫情報プロジェクト」のことを書かせていただいております。これはもう先ほど御紹介があったように、地域の書店の在庫、小さい書店様であっても在庫が見られるように。それを多くの様々な検索サイトを含め、特に私がやりたいのが、やはり図書館さんのOPACにそれを実装していただくことです。長野をはじめ京都を含め、今、少しずつ広がってきております。ぜひ、今日御覧の図書館さんには、ベンダーさんにうちもやりたいと、連携したいと言っていただければ、様々進んでくると思います。書店のほうも現在、公開の準備を広げております。今年度中には、また多くの書店さんの在庫情報が公開できますので、ぜひ、こちらにつきましても1つの連携の大きな事業、そして、先ほどのお話にもあったような全国を通した連携事業ということで、ぜひ、積極的に御活用いただければと思います。
  それから、「書店活性化プラン」については、もうリストも出ておりましたので、私のほうから細かくは申し上げませんが、地域における書店と図書館と自治体の連携の在り方というのがもう明確にうたわれております。特に今回、私のほうでこれは重要だと思っておりますのは、やはり地方創生交付金などの支援主体であり、公共図書館の運営者である市町村の首長部局の参画が欠かせないということを明確に書いております。ですからこれは、あくまでも文化庁さんや文科省さんや、教育行政とか文化行政だけではなくて、地域の大きな重要なファクターとして首長さんを、図書館さんと書店さんで一緒になって説得していくというのが、連携という部分に重要なことではないかと考えておりますので、そういったところでも、ぜひ、御一緒させていただきたいと思っております。
 今回もう一つだけ、資料には書いていないのですが、先ほども申し上げましたように、今回いただいているこの「論点(案)」の2番目のところ、ここはやはり我々は非常に大事にしております。地元書店からの購入ですとか装備、こういった部分について、やはり先に進みたいというのがあります。そんな中で、先ほど、小林委員にもお伺いした納品のスピードというのが、やはりなかなかこれを阻害しております。早くお届けするというのは大事なことです。今現在、どうしても1週間から2週間で納品してくださいという図書館様が多いです。なかなかそれのためには、時間が足りないという状況があり、地元の書店では納品できないという状況もあります。
 今、MARCと言われるものは、JAPAN/MARCのほかに、私が知る限り民間MARCが2つあります。私は、その中の1つのMARCの立ち上げをやっておりましたが、はっきり申し上げて大赤字でした。今現在、それをどうするということは全く聞いておりませんけども、民間の企業がやっておりますので、万が一、1つが辞めてしまうと、もうJAPAN/MARCと、あとは民間1つしかないという状況になります。
 これは、装備も同じです。フィルムルックスというところがお辞めになって、今は本当に幾つか数えられるぐらいの装備会社しかありません。こちらもどちらかがお辞めになれば、もう多様化どころか選択肢がないという状況です。そういったことも含めて、この有識者会議の中では、そこも含め、先ほどの国の予算というのもありましたけども真剣に考えていきませんと、気がついたらもう選びようがないという状況が出てくるということを、私としてはお話をしたいと思います。
 そして、そういったものを解決するという中で、私が個人的な意見ですけども御提案したいのは、やはり新刊の貸出しを1か月後にしていただきたいというところです。多分、出版社や書店さんでは、1か月じゃあまり意味がないというかもしれませんけども、1か月あれば、JAPAN/MARCを少しいろいろと工夫していただければ使えるかもしれませんし、地域の障害者施設で装備するというところも、1か月あれば可能になる可能性もあります。様々な課題が、1か月新刊を、これも新刊の全てじゃなくていいと思います。文芸書だとか、幾つかの新刊でいいと思いますが、それを全国的にある程度、統一してやることで、様々なことが解決できる可能性があると思います。
 いずれにしても、たくさんの課題もあると思いますけども、ぜひ、有識者会議の中では、そういう具体的なところについても踏み込んで、お話を進めていただければと思います。
 以上です。

【秋田座長】  ありがとうございます。
 それでは続きまして、緒方委員、お願いいたします。

【緒方委員】  全国特別支援学校長会の緒方でございます。よろしくお願いします。今日の発表を聞いて、大変興味深く聞かせていただきました。
 「論点(案)」にもあるように、やはり関係機関等との連携・協働の促進について重要なのは、地域コミュニティへの寄与、ここの部分がキーワードになってくると思います。実は事前に頂いた参考資料の中に、「図書館と書店等の連携事例」ということで、北海道幕別町の図書館、あとは留萌図書館、これは図書の装備の工夫ということで、福祉事業所との連携によって、地元の書店から購入した図書の装備を福祉事業所において実施していると、そういった事例等も紹介されました。これは、障害者の自立と社会参加を促進する上でも、とても参考になる取組で、実は特別支援学校においても職業教育をやっています。各校でもすぐに取り組める内容であるということから、各図書館でも、このような取組を進めていただければなと考えたところです。
 このように地域コミュニティへの寄与の視点から考えると、やはり他の分野のサービス等と連携することも、極めて重要ではないかと考えます。私の家の近くの大型書店にはチェーン店のカフェスペースがあって、若者からお年寄りまで、書店の本を長時間読んでいたり、勉強したりと、複数の世代が集まる場所があります。今後、確実にデジタル化が進んで、図書館へわざわざ行かなくても、本が借りられるアクセシブルな環境整備が必ず進むと思いますが、一方で学校図書館や公共図書館は複数の世代が集まる、やはりコミュニティの中核としての役割を持続させる必要も一方であると考えます。
 例えば、私の住んでいる八王子市では、教育長の方針で夏休み中に学校で給食を希望者に提供するんですね。その際に学校図書館も開放しているようで、給食の前後に自然と学校図書館で読書する子供もいるようです。また、都内の図書館では1階にカフェがあったりとか、障害者事業所の販売コーナーもある図書館もあります。例えば、最近はやりのそのような場所で、定期的に最近話題にやっている子ども食堂のような取組を、子ども食堂を運営している団体は様々ですが場を貸し出すことで、新たな層が図書館であるとか、学校に関心を向けて利用するようになり、おのずと読書につながるのではないかと考えます。
 今後は、これまで学校及び図書館の機能の枠を超えて、他の分野のサービスや取組と協働し、地域コミュニティへ寄与することの視点を持って進めていくことが重要だと、改めて感じさせられました。ありがとうございました。
 以上です。

【秋田座長】  緒方委員、ありがとうございます。さらに新たな形の連携・協働の姿というところで、お話をいただきました。
 続きまして、土屋委員、お願いいたします。

【土屋委員】  杉並区立高井戸第三小学校の学校司書の土屋と申します。本日は、学校図書館における関係機関との連携・協働について、杉並区の事例を基にお話しさせていただきます。
 配布資料にも記載しておりますが、論点1にあります、求められる役割と必要性に関してですが、学校図書館は全ての児童が活用する学習の場として、児童と公共図書館をつなぐ役割があると考えております。実際に1年生が入学すると、公共図書館の職員に来校していただいて、バッグ配布とガイダンスを行っております。このバッグは、区内の小学生が共通の図書バッグになっています。
 また、6年生になりますと、国語の(光村図書出版)教科書で「公共図書館を活用しよう」という単元がございます。ここでは、本校は実際にタブレットで公共図書館のホームページにアクセスして、その見方を学習しております。中学生になって自ら情報を探し、公共図書館を積極的に活用することを促しています。
 児童に年度末などにアンケートを取りますと、公共図書館に行ったことがないという児童が若干名おります。各学年におりまして、低学年ほど多いんですけれども、地域の無料で誰もが使える公共図書館の存在意義を伝えることの必要性を感じております。
 また、公共図書館主催の各種イベントの作品づくりを、読書の動機づけとして学習計画に位置づけております。作品を地域の図書館に展示してもらうと、親子で足を運ぶきっかけになり地域とのつながりができます。これらの連携は、学校司書が窓口になってやることが多いです。
 次に図書館資料、サービス、施設・設備の在り方に関してですが、最も重要なのは、学校図書館の蔵書構築であると考えます。複本の負担を軽減するためにも、その学校の特徴を生かして、使える資料を必要十分にそろえていきたいところです。予算が少なくても、重要な単元から計画的にそろえると本棚の中での存在感が増していき、それが教員や児童の目に止まって利用が増えたという例もあります。どの複本を、どれだけそろえられるかというのは、ほかの図書館や書店との連携が鍵となると思います。できるだけスピーディーにスムーズに、利用につなげるにはどうすればいいかと考えます。
 それには、情報を共有するシステムと物流のシステムが必要になってきます。地域によって実情に格差があると思います。文科省ホームページに掲載されている小郡市のようにとても充実している例もありますが、杉並区では、次のようになっております。
 杉並区では、公共図書館と学校図書館は別々のシステムを利用しています。その間をつなぐのが、済美教育センターの学校支援担当です。学校で複本を集めたいと思ったときの方法は4つあります。1つ目は、学校間で依頼をかける。2つ目は、済美教育センターの蔵書を活用する。3つ目は、中央図書館の「調べ学習」の専用資料を利用する。この調べ学習の専用資料は、一般書架とは別の専用書庫のほうに保管されており、杉並区では中央図書館がこの調べ学習の専用資料を定期的に購入しています。4番目は、区立地域図書館を活用する。この4つの方法があって、ちょっと複雑なんですけれども、学校司書はタイミングや物流などの条件を基に判断して使い分けております。
 配布資料の1番と2番は、学校図書館間のシステム。学校図書館掲示板で情報収集し、済美教育センターへの配送依頼を行っています。物流は、週1回の配送です。丸3は、中央図書館の事業係へファクスで依頼をします。物流は月2回の配送です。丸4番は、学校司書が直接地域図書館に行って借りるという方法です。このとき、学校司書カードを使っていますが、このカードは年度初めに登録し、貸出しは1校につき100冊、期間は1か月、予約は30冊まですることができます。
 これだけあっても、授業と配送のタイミングが合わなかったり、貸出期間が短くて延長できなかったり、サービスコーナーが使えないなど、まだまだ課題が多いです。でも、せっかく学習利用があるのだからと、司書が時間外や休日に自ら収集し、大きなカートや自転車で運ぶことも珍しくはありません。お互いの現状を知り、改善する余地はあると思いますが、そのような場が必要です。
 最後に、「人材の在り方」ですが、まずは、今までの委員の皆様からのお話にありましたとおり、十分な人材の確保が求められると思います。さらに学校司書は、業務委託を含む様々な雇用形態があり、地域によって働き方が違うことにより連携の仕方も様々です。学校図書館の館長は校長先生でそれは共通なのですけれども、公共図書館から学校図書館へ司書が派遣されている場合は公共図書館の、業務委託の場合は会社の上司がそれぞれいるわけです。組織の内外で全てにおいてうまく連携を取るのは、司書の資質に大きく関わっていると思われます。松本先生のお話にもありましたが、関わる全ての方々が連携の意義や効果を共通理解する場があるといいなと思います。
 杉並区では、学校司書研修の第1回のオリエンテーションのときに、学校司書全員と中央図書館の事業係が対面で話をする場が持たれています。また、公共図書館との連絡会も、これは区内でも地域によって差があるんですけれども、年に一、二回あるところもあります。私も前任校では、年に一、二回の連絡会に参加していました。公共図書館と一緒に共催イベントを企画したり、複本の購入リクエストもさせていただいたりしました。
 ほかにも、専門性を生かしたレファレンスサービスの拡充もできるとよいと思います。レファレンスサービスにはスピード感を持ったやり取りが必要ですが、このときに学校図書館掲示板のような杉並区の情報システムがあると便利です。実際に杉並区の学校図書館掲示板ができてから、司書同士の情報交換が活発になり、学習資料の活用は各段に増えております。将来はこのようなシステムが、公共図書館や書店ともつながることができないかと思います。
 最後にシステムだけではなく、対面でコミュニケーションを取ることの重要性を知ったのは、今年度、全国学校図書館協議会主催の情報活用授業コンクールで受賞された、杉並区の高井戸中学校の例です。この中学校は特殊な学校で、地域図書館と学校図書館が扉1枚でつながっているんですね。生徒は、1年生のときに共通ガイダンスを受けてカードを作るそうです。資料貸借や作品展示、レファレンスもスムーズです。昼休みには、何と学校図書館に80名が来館して、うち半数の40名が公共図書館のほうへ扉1枚で行くと聞いています。司書教諭や図書担当の先生が見守りを行い、図書委員が来館数をチェックしているそうです。今後は継続的な利用ができるようなルールづくりが課題だというお話でしたが、学校司書と公共図書館司書の対面交流が活発なことで信頼関係ができて、活用が増えることは明白だと感じました。
 以上で発表を終わります。

【秋田座長】  土屋委員、ありがとうございます。
 それでは続きまして、高橋委員、その後、曽木委員とお願いします。

【高橋委員】  それでは、お願いします。まず、先ほどの松木委員の書店との連携の発表で、自治体をどう絡めるのかという話がありました。私も県庁の行政部局に3年間勤務した経験があって、行政の業界というのは縦割りなので、いきなりなじみのない部署に行って、書店と図書館の連携に関して依頼をしても難しいところがあると思っています。しかし、図書館は最近いろんなところと連携を始めていて、地域のハブみたいになりつつあります。だから図書館と書店の連携ってよく言われますが、図書館という言葉の前後に少し語句を補って、例えば、多くの機関と連携している図書館がハブとなって書店と連携みたいな発想にして、書店と図書館という一対一の関係じゃなくて、多数とつながっている図書館と書店みたいな形にすると、バックに控えるNPOとか行政機関とか教育施設とか、そういうところと連携した取組で、書店の活性化ができるんじゃないかなと思います。
 最終的には本が売れないと書店はなかなか厳しいと思います。そこで、本を買って手元に置きたい場面を創出することも可能だと考えています。例えば、調理の本は、やはり日頃から頻繁に見て、付箋をつけて、時々、小麦粉がついちゃったりして、借りた本ではちょっとまずいみたいなところがあると思います。そこで、県や市町村の健康福祉の関係機関で調理教室をやっているところに、売れそうな本を持っていって販売してみる。あるいは、講演会をやったときに、講演者の方のサインを著作本にしてもらい、著者の本を売るというのがあります。あんな感じで書籍の販売につながる可能性がある場や手法に関する情報を、図書館と書店で共有して、場合によっては図書館がハブになって書店と協働するというのもあり得ると思いました。
 それからもう一点です。今日は連携・協働ということで、いろんなところとのつながりの話ですが、どの活動も本当にすばらしいと感じました。ただ、読書活動に関する連携は、大きな目標として機能の充実とか、読書環境の醸成という言葉がよく出てきて、その言葉のイメージから、どうしても本の活用とか、こういうふうに広報しましょうとか、こういう活動をしましょうとか、物質面や行動面に焦点が当たっていると思っています。機能の充実とか読書環境の醸成に関しては、人間の意識や興味・関心を向上させるみたいな、そういう精神面に働きかけるのも、教育的視点から大切だと思っています。
 例えば、運動は大切だと思っている人は、きつくても頑張って筋トレをやるわけです。同様に地域住民が心理学とか脳神経学の側面から情報を得て、読書をするとこういう良い面があるよというような、読書の意義や価値を理解していれば、スマホで楽にいろんな情報が手に入る昨今でも、それとは別に、読書のにも納得して粘り強く取り組んでいくんじゃないかなと考えています。
 さきほどの発表で、各種機関の特性を生かしてとありましたが、例えば大学とか病院とか、認知症に関しては老人介護施設とか、そういうところで音読したらこういう効用があった等の情報があると思うので、そういう具体的な情報も含めて読書の意義とか、価値をを広く知らせていくというのも、機能の充実や、環境の醸成に含まれてくるのでは、と思っています。
 毎回申し上げていますが、SNS等のアルゴリズムによって、人間の行動や心情がかなり影響を受け始めています。やはり人間の考え方や感じ方に訴求していくような取組が必要なのではないと、私は強く思っています。
 例えば望ましい基準の3等に、読書の価値や意義に関して積極的に情報発信するみたいな、そういう具体的な記述があれば、その方向に意識が行くと思うんですが、今のところは、人間の思考や意識や価値観などに焦点を当てた読書推進活動は多くないと思っているので、特に若年層に対してそこがこれから補強されていくことを願っています。
 以上です。

【秋田座長】  ありがとうございます。高橋委員から、読書の意義や価値をもっと周知・共有していく必要性をお話しいただきました。
 続きまして、曽木委員、お願いいたします。その後、植村委員、設楽委員とお願いします。

【曽木委員】  日本図書館協会の曽木でございます。若干繰り返しになるところで、今日は皆さんの中から話題が出てこなかったところもありましたので、その辺についてお話をさせていただければと思います。
  図書館側の地域にとって人と情報をつなぐハブであるということは、もう繰り返しになりますけども、地域住民の方にとって一番近いところにいるのが公共図書館であって、いわゆる本格的に読書を始める児童・生徒さんたちにとっては、最も身近なところは、やはりこれは学校図書館でございます。
 ここのところが、読書の場でもありますけども、学習の場でもあり、そして情報を得る場でもあるということ、これについては繰り返し皆さんもおっしゃっていることであって、これは個人の知識を高めるとかそういったことだけではなくて、個人の方と今まで知らなかった資料とをつなぐとか、それから、情報をほかから得るとか、そういったところができるのが地域の図書館であり、生徒さんたちにとっては学校図書館であろうかと思います。
 それから、学校図書館というのが、地域コミュニティに寄与したいとしても、それがしたくてもできないというのが、現状ではあろうかと思います。松本先生のお話にもありましたが、1人職場というところが非常に多い、1人で何校も持っているといったところもありますので、1週間に1回しか司書さんが行かないとか、そういった状況でコミュニティに寄与できるのかといった情報もありますし、周りの保護者の方とか、ボランティアなどにも来ていただけるとしても、それを受け入れることが学校図書館は、今はなかなかできないという状態がありますので、それは文科省の調査であるとか、日本図書館協会での学校図書館の調査なども公表しておりますが、そういった状況の中でも、厳しい状態だというところ、ここについては、やはり改善していかない限り、学校図書館にこれを期待するというのは、なかなか厳しいところであろうかなと思っております。
 それから、都道府県立図書館につきましては、先ほど、鳥取県の小林さんの例を聞いて、選書の仕方については、私体験はございますけども、都道府県立図書館が非常に素早い支援をしているということに、驚いております。
 ただ、都道府県立図書館というのが、やはり市町村立図書館のバックアップということをしていただくということが、本来は大きな機能であったかとは思いますが都道府県立図書館も非常に厳しい状況があります。鳥取県立はできたとしても、ほかの県立ではなかなかそこまでできないというところもあると聞いておりますし、資料購入費が、鳥取よりも半分以下のところもありますので、県立がまず資料購入であるとか、しっかり買って、保存をして、そしてそこに市町村立がアクセスできるといったことを果たしていっていただきたいと考えております。
  それから、今日はなかなか話題にならなかったのが、非常時のときの図書館の在り方です。災害が起こったときこその図書館であると考えております。図書館というのは、情報提供機関としての役割を果たさなくてはいけないところにもなります。実際には、図書館が避難所になったりとか、図書館で働く司書の方たちが、自治体の職員の場合、復旧支援に回って、図書館を開けるどころではないといった状態にもなることもありますが、やはり非常時こその図書館であるとは思っています。それは、非常時によって情報を得ることが、1回遮断されてしまうということになりますので、それが図書館に行けば情報が得られる。おそらく、一番早い情報を得られるのが新聞というのがあります。図書館で新聞を収集しているということは、地域住民の方が新しい情報をそこで見ることができるということができますが、図書館が閉鎖されるということになってしまうと、それもできないということもあります。
 能登の地震のときには、図書館も大きな被害が起きました。そして、新聞の販売所の方たちも大きな被害を受けて、新聞自体の保管というのも非常に難しかったのですが、ここは新聞社の方と、それから県立図書館とも協力していただいて、後からでも情報を得ることができるようにするということもしましたし、それから、あとこれは県立ではなかったと思いますが、子供たちの学びがそこで中断したということもありましたので、電子書籍を広域利用で使わせていただいたという例もありました。こういったことの間を取り持つのが、やはり図書館であると思いますので、地域住民の支援をするということの役割を果たすためにも、こういった非常時の図書館の在り方というのは、考えていかなくてはいけないのではないかと思っております。
 それから、学校図書館につきましては、地域コミュニティに寄与するというのがありますが、一番身近なところだと、子供たちの今は「子ども司書」というのがあります。ちょっと前だと「職業体験」で来ておりましたが、地域の図書館の仕事を理解して、子供たち自体に図書館に親しみを持ってもらう。そして、引いては読書とか学習とかをしてもらう場にしてもらう取組が必要になってきますので、委員会活動とか学習の内容などに応じて、地域社会と連携する場面などもありますので、両者協力していただきたいと思います。
 ただ、先ほどのいろいろとシステムの連携とかもありましたけども、まず、学校図書館資料のデータベース化というのが非常に求められているところもありますので、これはやっていかなくてはいけないことではないかなと思います。
 それから、資料の収集については先ほどもありましたが、前から過度な複本とずっと言われ続けておりますけども、もはや過度な複本を買うほどの予算は図書館にはそれほどございませんので、幅広くどうやって収集していくかということが、図書館の中では、皆さんの課題として持っていらっしゃるところだと思います。鳥取県立が2冊ということになっていましたけども、やはりちょっとおおむね見たところでも、複本で持つということは、やはり図書館の皆さんが限られた予算の中で、どうやって資料を集めていくかということになると、要求にどんどん従っていくということだけではありません。図書館の選書というのは、いわゆる要求論ということは非常に大事なポイントではありますけども、それだけではなくて、公共性であるとか資料の価値、それから図書館が本来持っている蔵書を保管するという目的であるとか、それから潜在的な欲求を引き出すという大事な役割がございますので、こういうものを含めて、収集方針を決めていくということが必要になってきます。これが紙の書籍なのか、電子書籍なのか、そこのところについては、やはり読者であるとか、利用者の状況をやはり考えるということが必要になってくると思います。
 特に公立図書館というのは、地域住民の状況を司書がやはり把握しておかなくてはいけません。こうあるべきという、あるべき論だけで収集方針を決めてしまうんじゃなくて、例えば、半径1キロメートル、2キロメートルぐらいの間の住民の方がどういう状況なのか。例えば高齢者が多いとか、意外に子供が多かったとか、そういった状態の中で、どのように蔵書構成を考えていくかということを、そのためには、司書がまず地域を知るということ、図書館の中だけにいるのではなくて、もっとどんどん外へ出ていって地域の状況を見るというのが必要だと思います。
 先ほどの紫波町の発表にもありましたけども、やはり地域を知って、どういうことができるかという課題を見つけて、その解決策を考えるというためには、やはり外へどんどん出ていかないと地域連携ということは難しかろうと考えております。
 それから、研修のこともずっと言われておりますけども、司書の資格があれば全て完結するということでもありません。ですので、それは本当の初めの一歩でありますので、絵本専門士とか、いろんな資格も必要だと思います。研修は自分のためのスキルアップだけではなくて、次の世代へつなぐとか、いわゆる地域に還元するということも考えた上で受けることもありますので、そういった意味で、研修でも続けていただきたいと思っております。
 中途半端ですが会議終了時間が迫っていますので終わります。

【秋田座長】  ありがとうございます。
 続きまして、植村委員、その後、設楽委員、小林委員で、今回は1回止めさせていただきます。
 植村委員、お願いいたします。

【植村委員】  先ほどの土屋委員のお話を聞いていて思うのは、今回のテーマである地域連携において、学校図書館が中心となってやっていくことの困難さ、です。やはり、市町村立図書館が、その市内における学校図書館と連携を取った場をつくっていかなきゃ無理ではないでしょうか。学校図書館ができない理由は、先ほど、曽木委員からもありましたけれども、学校司書の配置が少ないということに加え、何よりも学校は子供たちの安全のために、簡単に外にオープンになってはいけない場です。今までやっているのは、保護者の方や、保護者OBがそのままやっていくという事例が多いと思います。
 離島の読書調査に行くと、保護者として読み聞かせボランティアをやっていた方が、子供たちが卒業しても、その後も関わっている事例をみます。それは割と閉じた地域や狭い環境だと自然に始まっていくと思いますが、それを継続させるためには、公共図書館が主体的にネットワークをつくって、地域にいる前回話題にした読者アドバイザーや、絵本専門士たちを登録しながら、学校と連携して、しっかり安全な環境を守りながら、送り込むみたいなことをしていく必要があります。
 どうつくるかっていうことになると、冒頭説明がありました資料1を見て、ちょっとがっかりというか、びっくりします。「望ましい基準」にも「ガイドライン」にも「基本計画」にもしっかり「連携に努める・図る」と書いてあるじゃないですか。それでも、この連携協力の数字の低さは何なんのでしょうか。当たり前ですが、書いておくだけで、実行しなければ駄目なわけです。十分議論して、必要と落とし込まれた言葉だけではなく、どう実行するか、どのように具体化するのか議論しておかなくてはいけないと思いました。
 また、これはここの論点と少しずれるかもしれませんが、書店と図書館連携で今、問題になっている装備についてです。公共図書館の皆さんにぜひ聞きたいのですが、装備って全部の本に本当に必要なんでしょうか。大学図書館は、もともとカバーをかけていませんでした。ただ、芸術とかアートの本は、あった方が良いですし、最近はカバーをテープだけで貼っているという例が多いようです。大学図書館の図書の利用回数から考えるとこれで十分です。公共図書館の中で絵本とか貸出回数の多い本は必要だと思いますが、利用から考えて、そこに何か濃淡をつけてよいのじゃないでしょうか。
 それともう一つ、やはり装備は標準化すべきです。とにかく背ラベルの位置から、蔵書印の位置から、バーコードの位置から、全部と言っていいくらい図書館ごとに違うんですよ。これを完璧にやっていくには、やはり図書館ごとに確認してやらなきゃいけないのです。こんなのはもう標準化しちゃえばいいじゃないかと思います。また、この時代にエコでもないビニールのカバーをかけるというのも、見直す時期じゃないかなと思っています。話題として提供しておきたいと思いました。
 というところが、取りあえず私の意見です。

【秋田座長】  どうもありがとうございます。
 それでは続きまして、設楽委員、机上配布資料も出ております。お願いいたします。

【設楽委員】  それでは、「論点(案)」に対して3点に絞ってお話しいたします。
 まず、地域住民の要望に対応するために、学校図書館はどんな役割を果たすかについてです。御承知のようにこれまで学校は、チーム学校として地域の力をお借りしています。これからは、地域の方の力をお借りするだけではなくて、児童・生徒が学ぶことを主体としつつ、地域の人たちも子供たちと一緒に学ぶことで、互いに学んでいくという学び合いの地域社会の実現を目指すことが必要ではないかと考えています。
 例えば、学校では学習指導要領にある「主体的・対話的で深い学び」であるとか、令和の日本型学校教育にある「自立した学習者」を育むために、自分で立てた基準であるとか、価値観に基づいて行動できる自律性と、自らの力で互いに学び合うことができる、主体的に課題を解決しようとする自立性が欠かせません。こうした自律性や自立性を育んでいるのは御承知のとおりだと思います。特に自らの力で主体的に課題を解決するためには、多様な情報を的確に読み解いたり、多面的に比較・検討したりできる批判的思考力、それと、自らの考えを分かりやすく伝える表現力の涵養が欠かせません。
  このような自律性や自立性により、自立した学習者としての生涯にわたって互いに学び合うことを続けることが必要だと思います。知のよりどころとしての図書館、それから学校図書館が、互いに学び合うという観点から、もう一度見直してみると、地域の方の力も活用して、互いに向上していくのではないかと考えました。
 2つ目として、児童及び生徒、教員の利用に供しながら、地域社会と連携をする必要性や意義についてです。御承知のように、日本は少子高齢化・グローバル化に直面しています。こうした中で学校では、社会に開かれた教育課程の実現ということに向けて、チームとして学校経営の実現であるとか、教員の資質・能力の向上というものを通して、学校と地域の連携・協力が課題だと捉えています。教育は学校だけではなく地域の人々や保護者が協力して、児童・生徒の学びを互いに支援できる基盤の整備が必要だと思います。
 さらに、児童・生徒を含む地域全体の人々が互いに何ができるかを考え、地域全体で学び合える社会を目指す必要があります。無書店であるとか公共図書館がない地域なども含めて、全国各地にくまなく存在する学校図書館、これが地域の学びを支援する拠点として活用できる可能性があるのではないかと思います。
 最後に研修の必要性について考えたいと思います。司書教諭や学校司書の研修については、学校図書館整備推進会議が、毎年学校図書館整備施策に関するアンケートを実施しています。2024年度は、研修の項目で学校図書館担当者、図書主任や司書教諭等が151市区町村(13.8%)で年に複数回研修を実施しています。平均回数は3.1回でした。また、学校司書の研修は329市区町村(42.2%)で年に複数回実施していました。平均回数は5.2回でした。学校司書への研修機会は以前と比べて増加しているものの、研修内容の充実が課題です。研修を担当する部署は404市区町村(66.8%)が教育委員会、132市区町村(21.8%)が公共図書館との結果から、公共図書館と連携した研修体制が課題だと捉えています。
 また、学校司書は読み聞かせや館内掲示、それから展示等にも欠かせませんが、児童・生徒の読書力であるとか、興味・関心などを考慮した読書案内ができる技量が必要であり、公共図書館との継続的な連携ができる専門的な研修の機会が課題だと捉えています。
  一方、司書教諭は、カリキュラム・マネジメントに対応した学びに関する指導体系表などを整備する過程で、図書館担当者、学校司書、公共図書館司書などとの間で役割分担を明確にすることが課題だと考えます。例えば、読書推進や学びに関する学校の現状を公共図書館と共有することなどです。こうすることで互いの立場を尊重して連携・協力ができ、適切な資料を必要な時期に、必要な量を提供できるようになるはずです。こうしたことが実現できる定期的な研修の機会が、ぜひ必要だと考えます。
 以上です。

【秋田座長】  設楽委員、ありがとうございます。
 それでは、小林委員、お願いいたします。

【小林委員】  本日は発表の日だったので、そっちに専念しようと思っていたんですけども、都道府県立図書館の役割ということがあって、都道府県立図書館に勤めている者として、考えていることをお話しさせていただきたいと思います。
 1つは、やはり市町村立図書館の設置ということに、もっと気持ちが行かなきゃいけないんじゃないかなと思うんです。先ほど、植村委員の中でも、市町村がなくてどうやってそれを展開していくんだという話がありましたけども、そこに関与できるのは、やはり都道府県立図書館なんじゃないかと。望ましい基準の中にも書かれていますけども、そこをサポートしていくんだということは書いてあるのですが、じゃあ今、本気でそれが日本中で展開されているかどうかということですよね。やはり100%の設置率があって、県のサービスが初めて全県に届けられるということを考えると、そこにもっと注力していかなきゃいけないんじゃないかなと思います。
 それからもう一つ、物流のサポートだけじゃなくて、やはり人のサポートということも、もっと意識しなきゃいけないんじゃないか。既存のサービスの充実ということと、新しいサービスの開発ですね。それが横展開していって、全県に広がっていくということについて、我々はもっと気をつけていかなきゃいけない。
 例えば児童サービスは、ものすごく大事なサービスです。ただ、それを担っている市町村の職員の待遇は決して恵まれていないし、会計年度職員だけの図書館だってあるわけです。そういうところの人たちが何かを相談したいと思ったときに、都道府県立図書館にノウハウがあるか、ちゃんと提供できるものがあるか、あるいは一緒に事業を展開できるか。あるいは、先ほどの紫波町の発表にありましたけども、地域課題に対して図書館がどう貢献するかとなったときに、やっぱり市町村が一歩踏み出そうとしてもなかなか難しいというときに、県が一緒になって踏み出しましょうよとか、あるいは、一歩先に出ていきましょうとか。だったら自分たちがノウハウをためて一緒にやっていけるよみたいな、先陣を切ってやれるような都道府県立図書館の在り方とか、そういうようなことを考えたときに、既存のサービスの充実。あるいは、新しいサービスの開発・展開。そういうようなことも、都道府県立には求められるんじゃないかなと思います。
 それから、プラットフォーマーとしての図書館ですね。先ほどの先生の発表の中にも信州の例があって、電子の図書館の事例が挙げられていましたけども、プラットフォーマーというのはもっといろいろあって、例えば、デジタルアーカイブのプラットフォームとか、ひょっとすると図書館システムの統合というようなこともあるかも分かりません。
 そうやって考えていくと、図書館DXをどうやって考えていくのかということにもつながるかと思うんですけども、やはりそこは都道府県立が先陣を切って、いろんなアイデアを出して、あるいは考える場をつくって意見集約していくという必要があるんじゃないかなと思います。
 最後に、先ほど曽木委員のほうからありましたけども、災害対応ですね。大規模災害がこれから起こるであろうというときに、都道府県立図書館に何ができるのか。あるいは、都道府県立図書館がひょっとしたら被災してしまったら、何もできないかもしれないんですけども、そのときにじゃあ図書館界として、どうやってそれに対応していくのかということについては、やはり考えていかなきゃいけないと思います。
 紫波町の例で、地域の課題に対して図書館がどう対応していくのかということを連携でやっていくんだという話がありましたけども、災害は地域の最大の課題ですよね。そのときに図書館が役に立つのか立たないのか。あるいは、立とうとするのかということは、あらかじめやはり考えておかないと、いざというときに何もできなかったというようなことになってしまってはいけないなと思っておりまして、あらかじめどういう役割ができるのかということについて、せめて都道府県立図書館が場を設けて、そういうことが検討できるような仕掛けをしていくことが必要なんじゃないかなと思います。
 以上です。

【秋田座長】  小林委員、どうもありがとうございました。
 本日は、お時間の関係で全員の皆さんに御発言いただくことはできませんでしたので、発言ができなかった方がおられましたら、事務局までメールでお送りください。いただいた御意見を含めて、第5回会議における主な意見として取りまとめ、次回の参考資料とさせていただきたいと思います。
 次の議題は、「その他」ということでございますが、事務局のほうから何かございますでしょうか。

【稲田図書館・学校図書館振興室専門官】  資料5を御覧ください。第6回及び第7回の会議日程につきまして、御連絡をさせていただきます。
 第6回は9月2日火曜日、10時から12時を予定しております。第7回は10月7日火曜日、14時から16時を予定しております。いずれも会場は文部科学省会議室を予定しており、ウェブ会議を併用して行います。
 以上でございます。

【秋田座長】  ありがとうございます。
 第5回会議はこれで閉会といたしたいと思います。8月はございませんので、良い夏をお過ごしくださいませ。
 これで、対面の方もオンラインの方もありがとうございました。

お問合せ先

総合教育政策局 地域学習推進課 図書館・学校図書館振興室
電話番号:03-5253-4111(内線:3484)