令和6年12月17日(火曜日)16時00分~18時00分
秋田委員(議題1で座長に就任)、池内委員、伊佐治委員、伊藤委員、植村委員、緒方委員、紀之定委員、小林委員、汐見委員、設楽委員、曽木委員、田井委員、高橋委員、土屋委員、手塚委員、中村委員、奈須委員(議題1で副座長に就任)、野口委員、花田委員、林委員、堀川委員(議題1で副座長に就任)、松木委員、松本委員
茂里総合教育政策局長、平野社会教育振興総括官、高木地域学習推進課長、小沢図書館・学校図書館振興室長、毛利図書館・学校図書館振興室専門官
【毛利図書館・学校図書館振興室専門官】 定刻となりましたので、これより図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議の第1回目の会議を開催いたします。
座長選任までの間は、事務局が議事を進行させていただきます。私は、事務局の文部科学省総合教育政策局地域学習推進課図書館・学校図書館振興室の毛利と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
また、本会議の公開の取扱いにつきましては、図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議設置要綱に基づき、原則として公開ということで会議を進めさせていただきます。
本日御出席の委員の皆様の御紹介につきましては、後ほど順に自己紹介と御発言をいただくこととしておりますので、恐れ入りますが、ここでの御紹介は省略させていただきます。
資料1の2枚目の委員名簿、机上にも座席表と名簿を配付しておりますので、御覧ください。また、文部科学省の出席者につきましては、総合教育政策局長の茂里毅、社会教育振興総括官の平野誠、そのほかの事務局職員につきましては、机上の座席表と名簿を御覧ください。
初めに、文部科学省、茂里総合教育政策局長より御挨拶申し上げます。
【茂里総合教育政策局長】 総合教育政策局長の茂里でございます。
本日は、この暮れも差し迫ったこのタイミングでお集まりいただき、またオンラインで御参加いただいていることに対しまして、改めて御礼を申し上げたいと思います。また、この会議の委員をお引受けいただいたことにつきまして、立ち返って御礼を申し上げたいと思います。
今、政府ではちょうど予算案について各省で折衝が行われております。なかなかばたばたする中でありますが、どうしても、この会議を師走で立ち上げたかったという、我々の気持ちもお酌み取りいただきながら御参加いただいたことに、重ねて御礼申し上げたいと思います。
今さら申し上げるまでもなく、近年、いろんな形で図書館を取り巻く状況が変わっております。例えばデジタル社会や、バリアフリーへの対応などが強く求められると同時に、子供たちの個性や価値観も多様化しておりまして、そういった中で地域の図書館、また学校図書館が今後どうあるべきかということを我々行政としてもしっかり捉えた上で施策を進めていきたいと思ってございます。お集まりいただきました専門の方々からの御意見を賜りながら、それを踏まえてしっかり形にしていきたいと思います。形というのは、制度的なものもありますし、予算的なものもあろうかと思っています。そうしたことを踏まえ、文部科学省としても全力で取り組んでまいりたいと思います。今後の御議論、何とぞよろしくお願い申し上げます。
私からの挨拶は以上でございます。
【毛利図書館・学校図書館振興室専門官】 それでは次に、議題1、会議の設置について御説明いたします。
お手元の資料1を御覧ください。
初めに、会議の設置の趣旨につきましては、1の設置の趣旨にございますが、前段で掲げておりますような社会の変化、例えばデジタル化等を踏まえまして、図書館・学校図書館がより一層積極的な役割を果たすことが求められておりまして、後段にございますように、今日の図書館・学校図書館の課題を把握、分析し、運営の充実に向けた検討を行う会議として設置するものでございます。
2の検討事項につきましては、主に資料のとおりではございますが、具体的な論点につきましては、後ほどの議事で改めて事務局より御説明をさせていただきます。
3の実施方法でございますが、委員は別紙に記載の皆様に御承認をいただいております。また、(2)でございますが、会議の座長につきましては、局長、事務局のほうから指名をいたしまして、副座長は座長が指名をいたします。また、(3)のとおり、座長が出席できない場合には副座長が代理をするという場合がございます。(4)は協力者のことについての定めでございます。(5)有識者会議でございますが、原則として公開といたします。有識者会議において非公開とすることが適当であると認めるときは、議事の全部または一部を非公開とすることができるとしております。(6)は資料の公開についてでございますが、原則として公表でございまして、有識者会議を非公開とすることとされた案件については、座長が有識者会議に諮った上で資料を非公開とすることができるとしております。こちらの資料につきましては、お時間があるときにまた御確認いただければと思います。
また、続きまして、お手元の資料2を御覧ください。
こちら、運営規則についてでございますが、1のとおり、議事の公開につきましては、会議の円滑な実施に影響が生じるものとして、本有識者会議において非公開とすることが適当であると認める案件を検討する場合を除き、原則として公開としております。また、2の(1)にございますとおり、本有識者会議の議事録を作成し公開いたします。ただし、公開とすることにより、公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれ、そのほか正当な理由があると座長が認めるときは、議事録の全部または一部を非公開とすることができるとさせていただきます。また、(2)のとおり議事録の全部または一部を非公開する場合には、非公開とした部分について、議事要旨、議事録より簡単なものでございますが、議事要旨を作成し公開いたします。そのほかにつきましては、お手元の資料3、4について御確認をお願いいたします。
続きまして、本会議の座長の選任に移らせていただきます。
先ほど御確認いただきました設置要綱に従いまして、総合教育政策局長の指名により、座長につきましては、子供の読書活動を含め、学校教育学等を御専門とされ、また国で設置をいたしました子供の読書活動推進に関する有識者会議でも座長をお務めいただきました秋田先生にお願いをしたいと思っております。秋田座長、一言御挨拶をお願いできますでしょうか。
【秋田座長】 ありがとうございます。ただいま御指名をいただきました学習院大学の秋田喜代美でございます。私、第四次、第五次の子ども読書推進計画の策定の座長をさせていただきました。そのような関係もありまして、今回引き受けさせていただきました。書店がどんどん減っていく中で、図書館の役割は大変大きくなっており、地域の図書館と学校図書館の皆様、有識者の皆様が一堂に会して議論ができる場でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
【毛利図書館・学校図書館振興室専門官】 ありがとうございます。
それでは、今後の議事進行は秋田座長にお願いしたいと思います。
【秋田座長】 それでは、次に、私のほうがやむを得ず欠席する場合に備えて、副座長を決めさせていただきたいと思います。副座長につきましては、奈須委員と堀川委員のお二人にお願いをしたいと考えております。よろしければ、奈須委員、それから堀川委員から一言ずつ御挨拶をお願いいたします。
【奈須副座長】 ただいま御指名をいただきました上智大学の奈須でございます。
図書館・学校図書館についての専門ということは特にございませんが、今、中教審の教育課程部会のほうを部会長という立場でお預かりしております。学校の置かれている状況、あるいは子供たちの学び・育ちをめぐる状況については、いろんな課題があります。それとの関係の中で、図書館・学校図書館にどういうふうなことをお願いしたいか、期待したいかというような角度で参画をさせていただきたいと思いますし、また、ここでの議論を教育課程部会等に持ち帰って、学校全体あるいはカリキュラム全体のデザインに生かしていきたい、何かそういうパイプ役のようなことができればありがたいなと思ってございます。よろしくお願いいたします。
【秋田座長】 ありがとうございます。それでは、続きまして、堀川委員、お願いいたします。
【堀川副座長】 堀川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
これまでに、公共図書館の児童サービスや、それから学校図書館について学んできました。こういう両者が合同の会議に参加させていただくというのは大変ありがたく思っております。それからまた、副座長としてここに座らせていただいたことに感謝しております。秋田先生と、それから奈須先生には、先ほどおっしゃったように、パイプ役というか、この図書館のことをもっと教育課程部会等の会議のほうで強力に押していただければ大変ありがたく思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】 ありがとうございます。
それでは、続きまして、議題2、図書館・学校図書館の運営の充実方策についてに入らせていただきたいと思います。
まずは、事務局より、検討の背景となる議論につきまして、その動向を御説明いただきまして、その後、堀川副座長より御発表いただきます。御説明、御発表について御質問がございましたら、後ほど、意見交換のところで御発言やお尋ねをいただきますようお願いをいたします。
それでは、事務局より御説明をお願いいたします。高木課長、よろしくお願いいたします。
【高木地域学習推進課長】 地域学習推進課長の高木でございます。
資料3を御覧ください。
本有識者会議の論点案といった形で示させていただいているところでございます。
社会情勢等の変化といったことで、人口減少社会やデジタル化、グローバル化が進んでいるところでございます。また、学校や社会の複雑化、困難化といったことも踏まえて、さらには共生社会や、「こどもまんなか」社会の実現に向けた対応が必要になっている状況でございます。
読書に特化しまして、現状・課題という形で整理させていただいていますが、そういった急激に変化する時代、必要とされる資質能力といった観点で読解力、思考力、表現力等を養う読書活動の推進というのは不可欠であるとともに、図書館数自体は増加しております。また、学校図書館の整備も充実している中で、地域ごとに見てみますと格差も発生していることがございます。また、不読率の問題でございますけども、子供、成人ともに上昇傾向にあります。さらには、読書バリアフリー法が令和元年に成立しております。そういったことも踏まえた読書環境の整備が必要な状況でございます。
そういったことと、先ほど秋田座長からもありましたが、第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が昨年閣議決定しております。先ほど申したような不読率の低減も含めた基本的な方針や、連携・協力としまして、多様な子供の読書活動推進には、学校図書館や図書館だけでなく、様々な機関や人々の連携協力が不可欠であり、学校図書館の図書館間の連携・協力の強化も極めて重要な状況になっているところでございます。
また、図書館・学校図書館の取組の促進といった観点から言いますと、ICTの急速な発展であったり、読書バリアフリー法の制定も踏まえて、図書館の望ましい基準、学校図書館ガイドライン等については、必要な見直しを検討する必要があるとまとめているところでございます。
また、右側でございます。昨年6月に第4期「教育振興基本計画」も閣議決定しておるところでございますけれども、2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成であったり、日本社会に根差したウェルビーイングの向上といった形で総括的な基本方針を示しているところでございます。その中で、社会教育を通じた持続的な地域コミュニティの基盤形成が必要ではないかといったことでありましたり、教育DXの推進といった観点から図書館も取り上げられているところでございます。
こういった社会の変化を踏まえて、家庭、地域、学校などが、連携・協力によりまして、社会全体で読書環境を充実しなければならないといったことが大きな問題意識として考えているところでございます。
2ページ目でございます。
具体的な論点の案を幾つか示させていただきました。
上段に書いてありますⅠでございますけれども、社会変化等を踏まえた図書館・学校図書館の運営充実の在り方ということで、1つ目、デジタル社会への対応でございます。ICT化の促進でありましたり、GIGAスクール構想などの進展も踏まえまして、図書館・学校図書館の意義を高めるような効果的なデジタルの活用の在り方でありましたり、そのための必要な資料の収集、施設・設備の在り方、司書教諭、学校司書、司書などの人材の役割や専門性の向上といったことも御議論いただく必要があるかと考えているところでございます。
2つ目が、多様な人々の読書活動、読書環境の整備でございまして、読書バリアフリーへの対応に向けて求められる事項としまして、読書バリアフリー法の施行を踏まえた対応が必要であること、具体的にはアクセシブルな書籍や、そういったものの円滑な利用のための支援サービスでありましたり、人材をどうするのか、社会的包摂の観点から、障害者、外国人、高齢者といった方々の多様な人々の読書環境の充実について、求められる事項についても御議論いただく必要があると思っているところでございます。
3つ目としまして、これからの子供の学びを支える読書環境の充実でございまして、学習指導要領に基づく「個別最適な学び」、「協働的な学び」の一体的な充実でありましたり、主体的・対話的な深い学びの実現のために、どのように図書館・学校図書館が進めていくのか、資料、サービス、施設・設備、人材の在り方等を御議論いただく必要があるかと考えているところでございます。
2つ目の大きな観点としまして、Ⅱでございますけれども、図書館・学校図書館の運営上の諸課題でございまして、1つ目が、関係機関との連携・協働の促進でございます。地域コミュニティへの寄与のための図書館・学校図書館に求められる役割や、資料、サービス、施設・設備、人材の在り方でありましたり、地域の多様な機関との連携・協働による読書環境の充実があるところでございます。図書館と関係機関との関係でいうと書店の問題があるかと思っているところでございます。過度な複本でありましたり、新刊貸出し時期、地元書店からの書籍購入等や装備費の負担問題に関します現状分析も、ここで盛り込む必要があるか、含めて検討いただく必要があるかと考えているところでございます。
2つ目が、今後の図書館・学校図書館に求められる人材の育成でございます。今までのことを踏まえまして、必要な組織体制、館長や校長、司書教諭、学校司書、図書館司書に求められる資質向上、研修の在り方でありましたり、処遇の在り方等も含めて関わるかと考えております。さらには、そういったインナーの専門職だけではなくて、周りにいる読書を推進するような人材、例えば絵本専門士や認定絵本士といった方々の活用についても、ここで御議論いただく必要があるかといったところでございます。
その他、またこういったことを含めて、図書館・学校図書館の評価に求められる内容でありましたり、留意すべき事項、著作権法もありますので、そういったことにも御対応いただくこともあるかと考えているところでございます。
また、参考資料3を用意させていただいております。
1枚物のポンチ絵、「図書館・学校図書館と地域の連携協働による読書のまちづくり推進事業」といった内容でございまして、今国会で御審議いただいています補正予算案の中で、0.5億円計上させていただいているところでございます。図書館・学校図書館を中心に、書店さんをはじめとしました様々な地域の機関でありましたり、絵本専門士をはじめとしましたいろいろな人材の方が一体となって、まち全体で読書を推進する、そのための協議会を設置して運営していく、改善していくといったことに関しまして、6か所600万円ずつのモデル事業も計上しているところでございます。
私からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【秋田座長】 高木課長、御説明をどうもありがとうございました。
それでは次に、堀川副座長より、御発表をお願いしたいと思います。堀川副座長は、第五次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画の検討に向けて設置されました、子供の読書活動推進に関する有識者会議でも副座長を務めていただきました。また、文部科学省の学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議の座長を務めておられました。こうした各種の委員をこれまでお務めになられたお立場から、第五次計画等の御紹介も含めて、図書館・学校図書館の運営の充実に向けてということで御発表いただきたいと思います。
それでは、堀川委員、お願いをいたします。
【堀川副座長】 ありがとうございます。
それでは、図書館・学校図書館の運営の充実に向けてというタイトルで、主に公共図書館と学校図書館の連携について、約20分話をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
スライドの2のほうに、話の内容はこのとおりです。
それでは、まず、スライドの3のほうで、まず、読書の概念ということを確認させていただきたいと思います。
委員の皆様方には、もう何を今さらというようにお思いでしょうが、読書環境や読書活動などというときに、読書についてどのようにイメージされるでしょうか。2004年の文化審議会の答申にはこのように書かれています。左側のほうです。ここで言う読書とは、文学作品を読むことに限らず、自然科学・社会科学関係の本や新聞・雑誌を読んだり、何かを調べるために関係する本を読んだりすることなども含めたものであると。現行の学習指導要領の国語科には、小中高ともその情報の扱い方に関する事項というものが新設されました。以前から、調べ読みとか、あるいは情報読みなどの言葉もありました。
それからスライドの右側のほうですが、OECDのPISAの問題に見られるように、読む力というのは、文書、つまりテキストを読むだけではなくて、非連続型テキスト、グラフや図表など、これらを読む力も必要とされますし、それからデジタルリテラシーというときには、デジタル資料を読むのに加えて、デジタル機器の操作が必要なことが指摘されています。私たちがこれから検討する子供の読書環境の充実というときには、このような読書あるいは図書館の役割を含んでいるものだということを改めて述べさせていただきます。
スライド4のほうに行きますが、さて、今年の2月から5月にオンデマンドで文部科学省の学校図書館担当指導主事会議というものがありました。その中で堀川も話をさせていただきましたが、事前に自治体の学校図書館活性化の状況についてアンケート調査をいたしました。このアンケートは、各自治体の学校図書館の整備・活用を推進するための施策や工夫、課題についての調査結果を共有して、参考にしてもらうということを目的としたもので、47都道府県と20政令指定都市の計67教育委員会にアンケートをメール送付して、100%の回答を得たものです。
この下のほうに回答数について書いてありますが、今回はちょっと関係ありませんので、説明を省略させていただきます。
スライドの5のほうに移ります。
アンケートの質問は、この(1)から(4)までです。(1)と(2)について、下の①から⑥の項目を選択して記述をするというものです。スライド6を見ていただきますと、この棒グラフがアンケートの結果ですが、特に力を入れている取組と、特に課題となっていることについて、①から⑥を選択した自治体の数が出ています。黄色が都道府県、緑色が政令指定都市です。御覧のように、図書の整備、左側ですが、一番回答が多くて、特に力を入れていることでもあり、特に課題になっていることでもあります。左と右の棒グラフのパターンは似通っていますが、学校図書館におけるICTの活用、左から2番目の棒のところですが、この項目が特に課題となっていることとして目立っています。
この調査の実施から既に1年近く経過していますので、変化はあると思いますが、やはり昨年の段階ではICTの活用が大きく課題となっていました。
そして注目していただきたいのが、司書教諭の全校発令です。一番低い棒のところですが、特に力を入れている課題、取組と、特に課題となっていることの両方においてこれを選択した自治体数が少なく、そして政令指定都市では特に課題にも挙げられていないということです。
それでは、すみません、この資料から離れて、皆様のお手元のファイルの参考資料集の中の後ろのほう、関係データというところの中の56から59ページに、第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の概要があります。こちらを御覧いただけますでしょうか。先ほども御説明がありましたように、秋田先生が座長で作ってくださった子ども読書推進計画なんですが、56ページが趣旨と現状、57ページが基本方針、58ページが推進方策の共通事項、そして59ページに図書館と学校等の推進方策が左右に分かれて書かれています。
これらをさらに簡略化して、スライドの7に戻っていただきたいんですが、このスライドの7の真ん中と右側が、先ほどの概要の59ページの内容を領域だけ抜き出したものです。ピンクの線で囲ったように、公共図書館、図書館と書いてありますが、公共図書館にも学校図書館にも同様な3つの領域が設定されています。同じ子供を対象にしていますので、当然といえば当然なんですが、両者について、共通にここで考え、そしてすり合わせることが必要でもあり、効果的でもあると思います。それで、このような両者合同の会議が立ち上がったということだと思います。
それでも、子供たちが公共図書館と学校図書館を利用する時間は異なります。次のスライドを見せていただけますでしょうか。
子供の生活時間を考えますと、公共図書館より学校図書館のほうが利用できる時間は長いんです。しかし、左の列のほうの予算や人員、あるいは資料の規模や種類、イベントや研修等の企画や実施やネットワークや他機関との連携等、こうした項目については、学校図書館は公共図書館にはかないません。それで、主に公共図書館から学校、あるいは学校図書館を支援するというような図式になっているのが現状だと思います。
それで、また飛んで申し訳ないんですが、この資料の13ページ、スライドでいうと13になるんでしょうか。公共図書館の学校支援例と書いてある資料を、皆さん、堀川のこの資料の最後のほうです。最後から3枚目を見ていただけますでしょうか。
ここに、現在行われている都道府県立図書館や市町村立図書館の公共図書館の学校の、あるいは学校図書館の支援例を表にしてみました。左側のほうに支援のタイプを6つに分けてみました。地域によって、あるいは公共図書館や学校図書館の事情によって、それぞれ様々な支援がなされています。最初の図書館の整備運営のところでは、地域によっては、公共図書館が学校図書館の選書や分類を実際にやっているという地域もまだ、まだと言っていいんでしょうか、あります。それから、資料の提供は、右側の支援のほうでは、物流のネットワークを構築したり、あるいは特に調べ学習用の資料や地域資料やブックトークのキット等の貸出しをしています。ブックトークのキットというのは、ブックトークのシナリオと本がセットになっているものです。こうした資料や図書館側で学校が必要とする本をセットにしてクラス人数分貸し出したりしています。御覧のように、世界遺産とか福祉とか食育とか、テーマは工夫されています。ただ、実際にその需要と供給が、学校との需要と供給がうまくマッチしているか、あるいは提供する時期の問題もあると思います。いろいろなフィードバックが必要になってきています。また、特に電子図書としては、ここでは挙げていませんが、子供たちが学校で読んだ本の続きを読みたいとか、同じ作者の本を読みたいといったときに、公共図書館の電子書籍を借り出すというような例もよく見られるようになってきています。また、特に県立図書館では、県下の市町村立図書館の状況を視野に入れて資料提供をしています。
次の、サービスやプログラムの提供のところでは、児童生徒向けとか教職員向け、学校向け、それぞれに工夫が見られます。右側の列の3つ目に、各種研修会というのがあります。そこの中の出前講座というのは、主に県立図書館が開催する場合が多いと思います。ここには書きませんでしたけれど、県立図書館がスクールサービスデーという、休館の月曜日に中高生が県立図書館を使って探究的な学びができるようにしているところもあります。それから次の項目に、学校訪問というのが書いてありますが、ブックトークとかお話し会等とありますが、そのほかに、教員を退職した方に依頼して、読書指導員とか学校図書館指導員として訪問してもらうという例もあります。
それから、資料・情報の作成・提供のところでは、やはりここも児童生徒向け、教職員向け、学校及び学校図書館向けに多くいろいろ工夫されています。しかも、印刷物よりもウェブ上で提供されるというものが多くなってきました。それから、この資料・情報の作成として、児童生徒向けの地域資料や、あるいはデジタルコンテンツを作成するところが目立ってきました。
それから次は、交流・協働ですが、ここのところがどんどん膨らんできてほしいところで、担当者の連絡会や勉強会などがよく見られます。あと、ここに書いてあるこういうような項目が行われています。
そして、最後の学校図書館支援に特化したセンターを設けているところもあります。こうしたセンターは、地域全体の学校図書館をつないで底上げを図ることができます。公共図書館に併設されていて、学校図書館支援用の資料の予算とか倉庫を特別に持っているところもありますし、それからまた、教育委員会に学校図書館支援センターが置かれているところもあります。
次に、14ページ、次のページですが、御覧いただけますでしょうか。
これは、鳥取県立図書館に設置されている学校図書館支援センターのウェブページです。県レベルで学校図書館支援センターを設けているのは鳥取県だけです。支援センターのページから学校・先生のためのお役立ちメニューの部分を抜粋しました。最初に、「学校図書館を活用した年間指導計画」作成のための資料が挙げられています。これはすごいと思うんですが、皆さん、どうお考えでしょうか。
そのほかのどんな情報やサービスが提供されているかというのは、ずっと御覧いただければありがたいです。
鳥取県では、学校図書館活用教育推進ビジョンというものを作成していますけれど、このページにも、それから今のビジョンの名称にも、学校図書館活用教育という言葉が使われています。学校図書館の整備ではないところに注目していただけるでしょうか。
そして、15ページは白山市の学校図書館支援センターの具体的な業務内容というところのページを引用させていただきました。
ずっと見ていただくと、こういうことをやっていらっしゃるんだなと。6番目に、各データの集約があります。これは支援センターならではの業務だと思います。それから7番の市立図書館との連携のところで、最初に学校展示がありますが、なるほどと思って興味深く拝見いたしました。
さて、それでは、また資料が飛んで申し訳ないんですが、スライドの9に戻りたいと思います。9ページですか。あちこち飛んで申し訳ありません。
これは、先ほどスライドの7で見ていただいた、3つの領域を取り上げて、どんな取組があるのかを示したものです。表の左寄りが公共図書館、右寄りが学校図書館の取組ですが、もちろん共通のものもたくさんあります。まず、多様な子供たちの読書機会の確保には、例えばこのような項目があります。特に3行目の学校教育法附則第9条の規定の本というのは、特別支援学校では児童生徒の状態によって教科書以外の本を教科書として利用できるということがありますので、この9条の本としてどのようなものがあるかというのを特別支援学校で展示しているという例が見られます。
あと、すみません、残りの2つの領域については、こんなものもあるということで御覧いただければと思います。
こうした取組を行うに当たって、検討しなければならない問題もあります。
次のスライドをお願いします。
これは私見ですけれど、例えばこのような点が挙げられます。学校図書館については、最初に見ていただきましたように、図書をはじめとした整備の問題があります。また、校長が学校図書館長だと認識していない校長も多いです。しかし、学校図書館ガイドラインに明記されたことで、市議会での議員の発言により校長を館長として任命するという自治体も見られます。だから、やはり公の文書に明記することの重要性をひしひしと感じています。
それから、司書教諭の発令です。先日ある小学校に、ここはICTの活用が盛んなところで、公開授業を見に行きましたが、たまたま出会った2人の先生に司書教諭のことをお伺いしましたけれど、司書教諭が何かということを御存じありませんでした。という状態で、学校図書館協議会の今年の6月の調査では、司書教諭の活動時間は小中高とも75%から80%が確保できていないという結果も出ています。スライドの右側のほうの学校司書の配置も自治体によって大きな差があります。ここに書いてあるこの数値、配置の数値ですが、この中には複数校兼務で週に1回行っていないとか、ひどいと月に1回しか勤務していないというような学校もあります。それでも学校司書は配置しているという調査結果になっています。
それから、特別支援学校では、図書を置くスペースがないというところも多くて、廊下に置いた書棚だけで学校図書館という場合もあります。学校司書の配置もかなり低いです。
それから次の、学校図書館の図書整備5か年計画は、1993年度から実施されていて、既に30年たっています。ここにはありませんが、図書標準を達成した学校は、2020年度の調査で、小学校71.2%、中学校で61.1%です。これが予算化されたのが2021年度で57%という、こうした学校図書館図書整備等5か年計画という整備の段階ですが、鳥取県のように活用を目指す段階に、いつになったら進めるでしょうかというところです。
スライド11に行きたいと思います。
学校司書の配置のところでも述べていますが、研修が不十分で、特にICTの研修が不十分です。それからまた、学校司書のモデルカリキュラムが2016年に定められましたけれど、これを検証して普及改善する手だてがなされていません。それから、学校図書館図書標準も電子書籍をどう扱うのか、それからクラスの少人数化に伴って学級数が増えた場合、標準冊数が高く設定されてしまうのではないかという不安を抱えている自治体もあります。
それから、次の司書教諭が11学級以下の学校での発令率が低いという。それだけじゃなくて、先ほども申しましたように、学校の中で司書教諭について知らない方々が多い。これは、司書教諭が2003年4月に12学級以上の学校に発令されるに当たって作成されるはずだった「学校図書館の手引」が出されていないんです。司書教諭の役割について、きちんとした説明がなされた文書がないということが、とても大きな原因になっていると思います。それからまた、2014年に学校司書が法制化されたために、学校図書館は学校司書に任せておけばよいという風潮もあります。
スライド12のほうに行きます。
公共図書館についてまとめました。時間が押して申し訳ありません。多様な子供たちの中で、例えば、少年院などの矯正施設、あるいは病院にいる子供たち、そうしたニーズに対応することもまだ十分ではありません。
それから次の、子供の参加もいろいろと工夫されていますので、事例情報が共有できればいいと思います。
それから、児童生徒向けの電子書籍やデジタルコンテンツの精選や充実が必要だと思いますし、右側のほうの2つ目の丸のデジタルコンテンツが、授業でどのように使えるかという解説や、あるいは指導案などを、学校の先生方と一緒に連携して作成することも少しずつできるようになればいいなと思っています。そして自治体では、子供読書に特化したウェブページを作成しているところばかりではありません。しかも、読書が限定された概念であることも多く、学校図書館や情報リテラシーというものを含んでいるウェブページはまだ少ないと言わざるを得ません。
最後に、図書館の「望ましい基準」と「学校図書館ガイドライン」に、情報活用能力という言葉が出てきますけれど、情報リテラシーという言葉との整理も必要になってくるかなとも思っています。以上、気がついた点を述べさせていただきましたが、皆様には御異論もおありだと思います。今後、それぞれの会で活発な皆様の御意見を頂戴できればありがたく存じます。
御清聴ありがとうございました。
【秋田座長】 堀川副座長、どうも誠にありがとうございました。総合的、包括的に、今、何が課題かということをお話しいただきました。
それでは、これから、意見交換の時間とさせていただきます。お名前や現在の御所属やお取組、今後に向けた御意見等を、先ほどの御説明に係る御質問、それから自由に、ただしお一人3分程度で、本当に短くて恐縮でございますが、お願いしたいと思います。原則としては、先ほどの委員名簿の順とさせていただきますが、途中退出をされる委員に関しましては、最初に繰り上げて御発言をいただきまして、順に委員にお話しいただいて、最後に副座長から座長のほうでまとめてまいりたいと思います。
それでは、まず、オンラインの汐見委員のほうから御発言をお願いできますでしょうか。
【汐見委員】 よろしくお願いします。すいません、子供のお迎えの時間があって、最後のほう、退出するかもしれないので、申し訳ないですが、最初に時間をいただきました。
主に10代向けのライト文芸のジャンルで執筆活動をしております汐見夏衛と申します。
委員の皆さんの名簿を見て、本当に場違いな、自分の名前が非常に場違いな感じがして、全く恐縮しているんですけれども、専業作家になる前に、7年間ほど愛知県の県立高校の国語の教員をしておりました。そういうこともあってお声かけいただいたのかなと思うんですけれども、本当に図書館に関しては、運営のほうは全く不勉強でして、ただ利用者としてずっとこれまで、図書館、いろんな形で利用させていただいてきただけですので、今回の資料も事前にいただいたものを拝見したんですが、全く知らない、分からないことばかりで、本当にお役に立てるんだろうかと不安に思っております。
今回お声かけいただいたときに、自分に何かお役に立てることがあるのかなと思ったんですけれども、自分が作家として出版した書籍を読んでくださった読者の方からのお声で、学校の図書館で本を見つけて、図書館で紹介してもらって本を見つけて読んでくださった、手に取ってくださったという方ですとか、朝読書の本を公立の図書館で探していて、たまたま目に入って手に取ってくださったというような、図書館がきっかけで拙作に出会ってくださったという読者様の声が非常に多くて、自分がそもそも国語の教員になったのも、読書に対する拒否感が強い子が非常に多いなというのを元から感じていて、少しでもハードルを下げたいなというか、本を日常的に読む子が増えたらいいなという思いで国語の教員になりましたし、今執筆している書籍も、基本的には自分がイメージしているのは小学校五、六年生ぐらいから中学生ぐらいの、あまりふだん本を読まない子が、初めて手に取って最後まで読み切れるような、読書への入り口になるような作品を心がけて書いてきたというのもあって、非常に今回の本を読まない子が増えている、不読率が増えていてそれを何とか向上させたいという方針が、自分にとってもとても興味を引かれる部分でありましたし、自分に何かできることがあるなら、少しお話を聞かせていただきたいなと思ってお引き受けしました。
すいません、何も申し上げることがなく自己紹介ぐらいしかすることがないので、これぐらいでも大丈夫でしょうか。
【秋田座長】 ありがとうございます。ぜひ、これからも作家のお立場からいろいろまた御意見をいただけたらと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【汐見委員】 よろしくお願いします。
【秋田座長】 それでは、続きまして、対面で御参加でございます池内委員からお願いいたします。
【池内委員】 筑波大学の池内と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
学校図書館と公共図書館を一体的に政策的な議論をできる場というのはこれまでなかったと思いますので、実りのある議論をして、すばらしい成果を上げられればなと思っております。
私自身は、主に公共図書館を対象とした研究をやっておりまして、公共図書館に関しては、先ほども堀川先生が御紹介くださった望ましい基準が出てからもう12年もたっていて、その前の有識者会議はもっと前なんです。ですから、図書館の世界では非常に陳腐化してしまっている、この12年間で、コロナ禍の時期を含めて、人々の情報活動は極めて多様化して複雑化していて、こういうものだという予断を許さないような状況になっていると思うんです。先ほど読書の概念について、堀川先生が触れてくださいましたけれども、本当に音を聞くのが読書であったり、点字を触るのが読書であったり、あるいはタブレットをいじるのが読書であったり、読書の在り方そのもの、あと内容も本当に多様化しているので、そうした多様な読書というものをきちっと捉えて、かつ政策的な提言で終わらずに、いろんな日本中、津々浦々まで実効的に作用するような提言みたいなものが最終的に出ればとてもいいかなと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】 ありがとうございます。それでは、続きまして、伊佐治委員、お願いをいたします。
【伊佐治委員】 初めまして、松本市教育委員会で教育長をしております伊佐治裕子と申します。
教育長をして4年目になりますが、私は行政職出身の教育長で、松本市役所に38年間勤務しましたが、最初の14年間は公共図書館の図書館司書ということで司書を務めておりました。そのようなこともあって、今回お声かけをいただいたと思うんですけれども、本日、堀川先生のお話も伺いまして、公共図書館とそれから学校図書館を結ぶ会議は初めてということで、意義深い会議に出させていただいたんだなということを実感いたしました。
私が図書館員だった時代は、皆さん、御存じでしょうか、日本図書館協会が出版した『市民の図書館』というのを、日野市立図書館の活動を描いた、『市民の図書館』をバイブルとして、とにかく貸出しを中心にやるんだということですとか、それから児童サービスということに努めてまいりました。ですので、私の図書館司書としての知識というのは本当に化石に近いと思うんですが、でも、今でも共通するのは児童サービスだと思うんです。子供たちに、幼い頃に周りに本があるということは、これはいつの時代も変わらない大切なことだと思うんです。それを、公共図書館と学校図書館、今まで縦割りで分断されていた部分がありますので、これを結んでいくというのが今本当に大切なときに来ていると思います。
あと、私のような基礎自治体の状況で言いますと、学校の施設が、1970年代前後に建てられた学校施設がもう建て替えの時期をこれから迎えてきます。松本市も第1号の中学校の建て替えにこれから基本設計に入っていきますが、先日アンケートを子供たちですとか先生に取りましたら、意外だったのは、図書館をもっと幅広い情報を提供してくれるスペースとして学校の真ん中に置いてほしいという御意見がすごくあって、私はうれしかったんです。それを、予算には限りがあるんですけれども、施設のハードの面で実現していくということが、もしかするとソフトの司書の育成も大事なんですが、ハードの面で、実は解決していくことが結構あるかもしれないなと思いまして、今回の話し合いの中に、そういった、これからどこの自治体も建て替えを迎えると思うので、学校図書館のあるべきハードの姿ということも勉強できればいいなと思います。
以上です。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。それでは、続きまして、オンラインの伊藤委員、お願いをいたします。
【伊藤委員】 遅くなって恐縮でございます。練馬区立田柄小学校で小学校の校長をしております伊藤雄一と申します。学校行事のほうで遅くなってしまいました。申し訳ございません。
私は、全国連合小学校校長会という、小学校の校長の集まりのところで、全国の校長先生方と一緒に調査をしております教育環境整備等委員会で取りまとめ役をやっているということで、この立場を仰せつかっているというふうに認識しております。こちらの委員会では、様々な調査を全国連合小学校長会ではしておるのですが、教育環境整備の中で、学校図書館の整備状況についてという項目を毎年調査をしている、そんな関係から、こちらのほうで出ているというふうに認識しております。
先ほど堀川先生から御提案のあった調査の結果とはまた別に、私どもも、各都道府県のほうで調査、校長先生対象に各家庭、全国の校長先生対象に調査をしております。その中で、例えば学校図書館で従事する職員については、校長の回答なんですけども、約80%が非常勤を含めているというような調査結果が出ております。ただ、先ほどの委員のお話のように、それが月どれぐらいなのかというところまでは調査しておりませんので、各都道府県の校長先生方にも、さらに聞いていく必要があるなというふうに認識した次第です。
また、図書購入費などについても調査しておりまして、こちらについては、どちらかというと横ばい、むしろちょっと減額の自治体、学校のほうもあるというようなことがあります。また、デジタル図書というところなども、今後ちょっと課題になってくるなというふうに認識しております。それは委員としての、また調査の部分での状況の説明になるんですけど、私自身、小学校の校長として、学校図書館、子供たちにとって好きな場所なんです、小学生にとって。居心地のいい場所であってほしいなというふうに思っておりまして、いろいろな、固定化したんじゃなくて、季節に合わせたりとか時期に合わせた環境を整えたり、そんなことを意識してやらせていただいています。また、公共図書館、区立図書館などと連携して、いろんなイベントなども実施できるように、ここ数年なってきているというところも、ありがたいことだなと思っております。
以上でございます。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。それでは、続きまして、植村委員からお願いいたします。
【植村委員】 専修大学の植村です。
専門は出版学ですが、中でも電子出版について研究しております。電子出版とは割と早い段階から関わっておりまして、CD-ROMが登場した1980年代の頃からです。当時、前職でCD-ROM音声辞書を用いた英語学習システムというのを開発して、全く売れなかったという経験をしております。このとき以後、電子書籍の教育利用に関心を持って、電子書籍の普及のための国際標準化のマネジャーや、国立国会図書館の電子書籍納本の制度化について10年ほど関わってきました。最近では、電子書籍のポテンシャルを生かす領域として、視覚障害者の皆さん方が読書を楽しめるアクセシブルな電子書籍の研究や普及活動にも携わっております。また、この電子書籍の普及に伴って電子図書館の調査も続けてきております。この後、御発言される野口先生と一緒に、こういう本(『電子図書館・電子書籍サービス調査報告2023』)を10年以上にわたって、毎年編集してきております。学校図書館における電子書籍とか電子教材の扱いというのも、そういう意味では関心領域になっています。さらに、現在、日本図書館協会の常務理事という立場も仰せつかっていますので、公共図書館との関わりの仕事も増えています。
長くこういうことに関わってきて思うのは、紙の書籍が電子書籍に全部置き換わるわけがないし、また、置き換わってもいけないと思っていますが、一方で、図書館とか学校関係者が一般に捉えている以上に、教育における電子書籍のポテンシャルは高いと思います。若い人ほど上手に活用できる可能性が高い。「読書とは紙の本を読むことだ」という、ある種の呪縛みたいのからは大分自由になったかなと思いますが、実際、図書館関係者、学校関係者の皆さんに会うと、あいかわらず根強い意見をお持ちの方がいます。もちろん、初等教育における紙の本というのはすごく重要ですが、小学校上級、中学・高校にいくに従って、紙の本を読んだことがないという、いわゆる不読者の中で、小説投稿サイトをがんがん読んでいる児童・生徒に幾らでも出会います。ということは、不読者に紙の本を読めと勧めるよりも、デジタルで読むことを勧めた方が、読書に親しむ敷居が低いんじゃないでしょうか。むしろ新たな読書推進活動としてデジタル読書を捉えてよいのではないとも思っています。
あと、デジタル読書と考えたときに、短いLINEなんかの文章ばっかり読んでいることもちょっと心配なところです。先ほど堀川先生から御紹介いただいたOECDのPISA調査の読解力について、ディスプレイ上で長文を読むことに慣れていないのではないかと考えられる点があります。あれはCBTですから、ディスプレイで長文を読む機会が、これまで少ないので、これからは積極的に教育に取り込んでいってよいのではないかと思っています。
今回の検討事項では、2番の読書バリアフリー法の制定とかICTの急速などうんぬんとありますけど、この辺が私の関心領域かと思っています。デジタルネットワーク社会ですので、図書館が地域社会に貢献するためにはどのようにあるべきか、また、GIGAスクール構想の下で学校図書館がどのような役割を果たすのか、果たすためにどのように変革しなくてはいけないのかということだと思います。委員の皆さん方と一緒に考えていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。それでは、続きまして、オンラインで緒方委員、お願いいたします。
【緒方委員】 全国特別支援学校長会の緒方でございます。よろしくお願いします。
これまで学校図書館及び読書活動に関する取組としては、東京都教育委員会に在任中に、都の読書活動推進計画に基づいて、特に特別支援学校、特別支援学校の学校の図書館の状況というと、かなり各校差が大きい状況があります。そういった中で先進的な学校の取組を全都の特別支援学校へ紹介するなどしてまいりました。現在は、校長という立場で、教育委員会の指定を受けた読書活動推進研究会の副会長として、先生方に、特別支援学校における学校図書館の状況や環境整備に関する工夫、及び蔵書の選定等の課題について、研究活動を支えているところでございます。
本会議においては、先ほど課長から論点の中で示された、社会変化等を踏まえた学校図書館の運営充実の在り方、特に多様な人々のための読書環境の整備における、特に障害のある方の立場に立った環境整備等について、お役に立つことができればなというふうに考えております。
現在、特別支援教育をしようとする児童生徒数の数が増加傾向にございます。また、読書バリアフリー法の施行により、主に視覚障害者への電子書籍の提供などの充実した部分も見られますが、まだまだ他の障害種別については、十分な対応が各学校できていないかなというような感想を持っているところです。
さらに、現在、文部科学省では、インクルーシブ教育システムの充実を図るために、インクルーシブな学校運営及び学校運営モデル事業が展開されようとしています。こういったインクルーシブな新たな学校及び運営モデルとを関連させた学校図書の整備等を、今会議体においても、将来的な課題となってくると思いますので、検討していただければというふうに考えているところでございます。
今後ともよろしくお願いします。
以上でございます。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。それでは、続きまして、オンラインの紀之定委員、お願いいたします。
【紀之定委員】 失礼します。大阪の熊取町立熊取北中学校の紀之定と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
学校では、国語科の教員として、そして司書教諭として勤務しております。校務分掌のほうは、図書館教育と学力向上を担当しております。自分の学校の様子と取り組んでいることなどをちょっとお話ししたいと思います。
読書活動と調べ学習についてについて御紹介したいと思うんですが、まずは、図書委員による読み聞かせなんですけれども、1学期は上級生が下級生の教室に行って選んだ本を読み聞かせて、下級生は大変喜んで感謝の気持ちもいっぱいで、恩返しをしたいということで、2学期は下級生が上級生の教室に行って読み聞かせを行うというドラマ的な取組があったりします。また、地域の介護施設にも読み聞かせに行ったりすることがありまして、そこでは絵本を懐かしく見つめる御老人の姿もあって、また、読み聞かせのお返しに中学生に童歌を教えてくださったりということもありました。さらに、オンラインで、近隣の小学校と読み聞かせ交流をしています。それがきっかけで、小学生は今度は保育所に読み聞かせに行くという、そういったことも聞いたりしています。また、本校の生徒がよく進学する高校、公立高校の図書委員会とも交流をするということもあって、いろいろ教えてもらうということもありました。
また、町立の中学校が熊取町には3校あるんですけれども、その3校の図書委員が40人ほど集まって交流して、お互いの学校での活動を紹介し合ったりなぞという、そういう交流というのもありました。
朝の読書についてなんですけれども、本校では1年間を通して取り組んでいまして、朝の読書を基に校内ビブリオバトル大会などを実施して、自分の好きな本の魅力とか、感動したことを自分の言葉で語りかけるという、そういったことをしております。クラスの友達はどんな本を読んでいるのかなと興味を持って聞き、また、バトラーの思いを真剣に聞き合うとか、みんなの生き生きした表情があって、クラスの輪がつながっていくなというふうな、そんな感じています。各クラスのチャンプ本を図書館に置いておくと、どんどんそのチャンプ本を借りに来て予約が入るほどに、その時期は本の貸し借りが非常に盛んに行われるということもありました。大阪府の、校内のチャンプ本が、府の中高生ビブリオバトル大会に出場するという、そういったことも取り組んでおります。
もう一つ、図書館活用とのICT活用の授業づくりなんですけれども、図書館教育部では本と資料をじっくり向き合って、つながりを深め合って、仲間とのつながりを感じられるような授業づくりを応援していくという図書館教育部なんですけれども、政府のエンパワーメント、図書館を活用した授業づくりの取組があって、本校もモデル校として取り組んでおりました言語能力の向上を目指した取組なんですけれども、それに加えて、GIGA構想でタブレット端末も活用して取り組むということになってきています。図書館の資料もタブレットの端末の資料も、両方を用途に応じて活用していきたいというとこら辺を、また時間がございましたらいつかお話しさせていただきたいと思います。
電子書籍とかも、そろそろ出てきているんですけれども、クラスでも何名か興味を持ってしているんですけれども、中には、実物のほうにはつくり手の意図を感じることができて、著者の思いを感じ取れるような気がするから、やっぱり本が好きで本で調べたいとか、本が好きだという生徒もおりましてというところです。ウェブ上で多様な資料を使いたいという子には、そういったいろいろなサポートをしていきたいなというふうに考えているところです。
分類についてなんですけども、3類の自然科学なんですけれども、調べ学習でも防災とかSDGsとか福祉とかLGBTQとか戦争と暮らしとか、生きることに直結したテーマが多くありますので、3類の自然科学の割合がもう少し多くてもいいのではないのかなというふうな感想を最近感じております。
今日のところはこれぐらいなんですけど、すいません。また、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。よろしくお願いします。それでは、小林委員、お願いをいたします。
【小林委員】 鳥取県立図書館の小林と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
3月までは県立図書館の館長をしておりましたけども、4月から司書主幹という役職で勤務しております。
私の本会議に関わる立場を御説明しますと、先ほど堀川先生から御紹介していただいたように、鳥取県立図書館内に通称学校図書館支援センターというものを置いております。本日この場に呼んでいただいている理由の1つは、そこにあるかなと思っているところです。
鳥取県立図書館には2名の教諭が勤務しております。1人は高等学校の教諭で、職名は学校図書館支援員、そして併任で高等学校の指導主事を兼務しております。もう1人は小学校の教諭で、職名は同じく学校図書館支援員、併任で小中学校課の指導主事を兼務しています。GIGAスクール構想がスタートしてICT活用教育、探求学習等が授業に取り入れられるようになり、教育の手法が大きく変化していると感じています。その変化の中で、学校図書館がそれに対応する形で進化できているのか、あるいは、これから進化できるのかということが最大の関心事です。GIGAスクールがスタートした時点で、県内の市町村教育委員会を回って状況の確認や意見交換をしたことがあります。その際に分かったことは、司書にタブレットが支給されていないとか、生徒や学校に発行されているソフト利用のためのアカウントが司書には発行されていないとか、あるいはICT活用教育に対する研修の機会がないとか、様々な状況があることが分かりました。この有識者会議も、教育の変化に対応していくためにガイドラインや望ましい基準の見直しを行うということだと承知をしておりますけども、文言を変えたり基準を変えるだけでは現場の環境改善につながっていかないのではという危惧も感じております。会議の議論の結果をいかに現場の環境改善につなげていくのかという議論も期待したいと思っています。
また、県立図書館の館長をした経験から、図書館をめぐる様々な環境が変化していく中で、都道府県立図書館の果たすべき役割というものが大きくなっているのではという感じがしています。例えば、大規模災害時における都道府県立図書館が果たすべき役割とか、読書バリアフリーを実現するための牽引役としての都道府県立図書館とか、あるいはデジタルアーカイブシステムとか電子書籍の導入など、デジタルシフトの進展のプラットフォームを構築する、そういう期待がされている都道府県立図書館の役割とか、様々な役割があるんじゃないかなと。現在の基準でも、市町村立図書館と都道府県立図書館に求められる役割は違うものとして示されているわけですけども、この部分がより強調される状況になっていると強く感じています。都道府県立図書館がそれぞれの地域の図書館力を向上させていくことに寄与するためには、どういう役割を担えばいいのか、司書はどういうスキルを身につけていけばいいのか、そういう視点で議論ができたらと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】 どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます。それでは、続きまして、設楽委員、お願いします。あと14人で、1人3分でぎりぎりという状況がございまして、よろしくお願いいたします。
【設楽委員】 全国学校図書館協議会の顧問の設楽です。同時に、学校図書館整備推進会議の代表もしております。
整備推進会議は、1996年に学校図書館の整備充実とその振興を図ることを目的に発足して、現在では、出版流通関係団体28団体が加盟している団体です。整備推進会議では、学校図書館の整備充実を図るために必要な研究活動、それから情報交換、広報活動、調査活動などを行っています。さらに、国及び地方公共団体が学校図書館の整備充実のために短期または中期長期の施策を実施できるような、そういう提言も行っています。ちょうど昨年が、学校図書館法公布70周年ということで、記念事業をいたしました。内容としては、シンポジウム、学校司書の社会的地位向上を目指して、それから活字文化議員連盟、学校図書館議員連盟との合同総会、そして学校図書館法公布70周年記念式典をちょうど8月8日の公布された日に行いました。さらに、シンポジウム、読書バリアフリーと学校図書館の役割、文化講演として「生成AI『チャットGPT』と学校の教育・図書館の未来を考える」も開催しました。
さらに、今年は、学校図書館法の改正から10年目ということで、新しく「図書館改革プロジェクト」というものを立ち上げて、それで活動を進めたいというふうに考えています。どんな内容かといいますと、1点目は、先ほど出ておりました学校図書館ガイドラインや、学校図書館図書標準の内容をもっと豊富にしていくことです。2点目は、紙の教科書を基本として、デジタルは補助的に使用するというような観点で、学校の教育課程に読書教育や、図書館教育をどうやって盛り込んでいくなどです。
3点目は、学校図書館図書整備等5か年計画がありますが、この次期計画の策定に当たって、学校司書の配置であるとか学習資料、それから読書資料、新聞資料、デジタル資料の拡充などについて、探究学習の発展に必要な財政措置が行えるかどうかというようなことについても検討していきたいと考えております。
4点目は、特別支援学校の学校図書館の充実、そしてアクセシブルな書籍、学習用具の紹介等についても進めていきたいなというふうに考えております。
5点目は、学校司書、図書館司書の専門知識の技術向上を図るために、研修活動とか研究会を実施していきたいなというふうに考えております。
最後の6点目は、地域書店の存続振興のために、小規模書店が入札業務等で参加できる、そういう環境整備を整えたいというように考えております。学校図書館整備推進会議の活動と有識者会議での議論をリンクしていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いします。
【秋田座長】 ありがとうございます。よろしくお願いします。それでは、曽木委員、お願いいたします。
【曽木委員】 日本図書館協会の曽木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
現在、日本図書館協会では、常務理事兼総務部長ということで仕事をさせていただいております。昨年は、こちらの書店図書館等関係者における対話の場の委員もさせていただいておりました。日本図書館協会では、研修事業委員会や、認定司書事業委員会というのがありますが、こちらのほうの委員も何期か務めさせていただいておりました。現職は昨年の6月からということになりますけども、その前の仕事は、私は千葉県の浦安市立図書館の司書をしておりました。長く現場におりまして、最後の5年間は、管理職として副館長、館長ということで務めさせていただいております。浦安市の図書館というのは、いわゆる軸のところに、市民の読みたい、知りたい、学びたいというところをかなえるということで、いつでもどこでも誰にでもというスローガンを立てて図書館サービスをやっておりまして、いわゆる公共図書館として当たり前にやってほしいよねといったサービスを、割と早いうちから取り組んできた図書館で、これを特別なものとしてではなくて、これは当たり前と、これが普通の図書館であるといった形をモデルをつくるという、結果的にはモデルをつくったような形になりますけども、そういったことを普通にやっていた普通の図書館であるかなと思います。
図書館でいたときには、やはり今の利用者ももちろん大事なんですけども、将来の利用者というところも先まで見据えて、蔵書の質であるとか、それから何より図書館を決めるのは職員でありますので、職員の質というところを非常に重視をしておりました。ですから、研修などにも非常に力を入れていたと思います。これが全国的に広がっていただけると、いろんな意味でいいのかなと思います。先ほど、先々のことまでと言っていましたが、割と早いうちから学校図書館との連携であるとか児童サービス、障害者サービス、バリアフリーについても取り組んでいましたので、多分今いる人たちは当たり前だよねというふうに思っているところではあるかと思います。
ただ、いろいろな図書館を取り巻く環境であるとか、それから制度というものがこの10年で大きく変わってしまいました。そういったことで、私がいた図書館で当たり前にやっていたことが、なかなかそこに取り組めないといった図書館も非常に全国的に多いということは、今知るところであって、ここは何とかしなくてはいけないところであろうかと思います。ただ、こうした過去のことをしがみついた図書館が、それがいいことではなくて、これから新しいことをどんどんやっぱり入れていくという将来を考える図書館であってほしいということもありますけども、やはりそのためには、それは何より人が大事であるということ、司書のスキル、それから人の配置・処遇であるとかそういった制度的なところも全て非常に大事なことだと考えております。
日本図書館協会の中では、非常にこういった職員のことについても重く受け止めておりますので、これについても、様々取り組んでいるところでございます。
望ましい基準については、12年ぶりの改定を目指すというところで、現場図書館の方は非常にこれに期待しているところが多いと聞いております。今回の会議も、今日も傍聴したい方、いろんな方たちから傍聴するよという声も聞いておりますので、これは期待が大きいところですので、ぜひ我々が議論を尽くして、いい結果を残していただければいいかなというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】 よろしくお願いいたします。それでは、続きまして、オンラインで田井委員、お願いいたします。
【田井委員】 皆さん、こんにちは。私は、東京都目黒区立第十一中学校で校長をしております田井と申します。本日は、全日本中学校校長会の総務部副部長として参加させていただいております。
今回の会議を通じまして、中学校の実情等をお伝えしながら、図書館・学校図書館ですが、特に学校図書館の充実に少しでもお役に立てればというふうに思っております。
本日は時間が3分ということですので、3点お話ししたいと思います。
第1ですけれども、やはり蔵書の充実の必要性を感じております。地方の学校にお邪魔する機会があったんですけれども、古い本が大変多くて、東京とは違う実情を見まして、蔵書に関する予算の充実や、地域の図書館との連携強化の在り方など、ここでお話がする機会があればいいなと思っています。
第2は、人的配置の充実です。学校図書館に専門の人員が配置されると、学校図書館の活用が加速することを実感しております。本校では、図書館支援員という会計年度任用職員が配置されているんですが、その方でも、学校の図書館の活用が大きく進みました。ですから、学校司書、東京は学校司書の配置が低いですけれども、中学校は、図書館・学校図書館に専門的に関わる人員のことについて意見が述べられればなというふうに思っています。
3点目は、学校図書館の設備の整備の方向性についてお話が、意見を述べられる機会があればいいなと思っております。令和4年3月30日に文部科学省のほうで、新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方についての最終報告でもイメージ図が出ていましたけれども、ラーニングコモンズの役割を持たせるとか、それから、教室以外の子供たちが安心していられるような施設であるようにするとか、そういったことについても意見が言えばというふうに思っております。伊佐治委員が少しお話をされていましたけれども、図書館を真ん中にということでしたけども、個人的には、本校は改築を控えておりまして、本校の改築にも今日の会議が役に立てばいいなというふうに思っております。
いずれにいたしましても、中学校の実情等をお伝えしながら、学校図書館の充実に少しでもお役に立てればというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】 ありがとうございます。それでは、続きまして、オンラインで高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】 皆さん、こんにちは。私、前職が、静岡県立三島北高校の校長で、その学校が昔から探究学習で図書館もよく使っていて、今年度文部科学大臣表彰を受けたという連絡があって教職員一同喜んでおりました。今年4月から公立図書館に勤務しているんですが、学校の図書館と公共図書館の両方に関わってきたので、こういった会議に参加できるというのは本当に光栄だと思っています。
私は、平成22年度から3年間、今の県立図書館でレファレンス業務を担当していたことがあって、図書館復帰が12年ぶりです。4月からいろんな会議に出てきて勉強させていただいているんですけど、今日もいろんな委員の方からの意見や、堀川先生の話の中にもありましたように、活字離れとかそういうことが話題になっています。とかくそうなると、子供をどうするかという話に主になっていくんですが、それはそれですごい大切なんですが、高校生とか小学生もそうだと思うんですけど、子供は大人の姿を見て日々暮らしています。やっぱり子供のところだけ切り離して議論して、大人が、「あなた、本読みなさいよ」と言っているそばから自分はスマホを操作しているようじゃ、読書率は上がっていかないかなというふうに思っています。そんな状況の中で、公共図書館と、それから学校の図書館を包括的に捉えて、その運営を考えていくという会議があるというのは、本当にすばらしいことだなと思って参加しています。
静岡県立中央図書館は、令和10年度に新館移転を控えていて、様々なサービスを検討しているところです。そんな中で学校支援をどうするかという話もあるんですけど、先ほど小林委員からも話がありましたが、鳥取は先駆的に取り組まれているということが分かりました。そういったこのタイミングでこの会議に参加できるというのは本当にありがたいことだなと思っています。会議に参加しながら、自分でもいろいろ勉強していきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。
以上です。
【秋田座長】 ありがとうございます。それでは、続きまして、対面で土屋委員、お願いいたします。
【土屋委員】 東京都杉並区にあります高井戸第三小学校の学校司書をしております土屋と申します。よろしくお願いいたします。
杉並区は1校専任会計年度の職員で学校司書をしております。このたびは、初めてこのような会議に参加させていただくことになりました。思いも寄らないことに驚きましたが、理由を考えてみますと、以下のことが考えられるかと思います。
私が昨年度まで勤務していた桃井第三小学校は、杉並区のICT活用推進校でした。10年以上前からICTを活用した主体的、対話的で深い学びについて研究が今でも続いています。着任した当時、タブレットを使いこなす高学年の児童に感心しましたが、同時に教員からインターネットを使った調べ学習が効果的に行われていないという悩みを聞きました。学校図書館は、情報活用能力の育成をサポートできると思った私は、参考図書やインターネット情報の利用指導を行い、調べ学習を支援してまいりました。全ての児童にタブレットが配付されることになりました2020年度、全校での体系的な情報活用能力の育成が喫緊の課題と考えた情報担当教諭との考えが一致しまして、その後は連携協力して、発達段階に合った、計画的な情報活用の育成に力を入れてきたという次第です。
例えば、参考図書の図鑑や辞典を活用できるようになった後にデジタル百科辞典やインターネット検索の仕方を学ぶといった内容です。スモールステップでスキルアップしながら繰り返し指導することで、児童が自ら紙かデジタルか選択して意欲的に調べる様子に変化を実感することができました。それでも課題はあります。読みの苦手な児童は、情報の読み取りも苦手であるということです。読書が土台となるのですが、継続的な読書活動の時間というのも、学校の中で、授業の中でなかなか取ることができませんでした。そもそも学習意欲の低い児童には丁寧な寄り添いが必要になってきます。読みの苦手な児童への手だての1つとして、デイジー図書の活用も行っておりました。これらの多様な児童の実態を踏まえた経験を基に、子供たちがこれからの社会を生き抜いていくためにどのような力をどうつけていけばよいか、有識者の皆様に学びながら、役割を果たしていけたらなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
【秋田座長】 よろしくお願いいたします。それでは、続きまして、手塚委員、お願いをいたします。
【手塚委員】 紫波町図書館で主任司書をしております手塚美希と申します。
紫波町というのは岩手県にありまして、農業主体の3万人の規模の小さな町で、紫波町図書館は官民の連携によるオガールプロジェクトという仕組みの中で、町で初めての本格的な図書館としてオープンして今年で12年を迎えました。
当館は、開館後もそのプロジェクトの担当部署である企画課に属していることもありまして、図書館単独ではなくて、地域へ司書が飛び出していって、町の方々の声を聞きながら課題を発見して、情報と人、人と人をつないでいくという活動を行っています。
そういった運営をしていく中で、地域の中でも、情報格差があったり、あとは情報リテラシーに、そもそも大人も対応するのが難しいというのが現状だと思っております。学校図書館ですとか、子供の読書環境ももちろん大切なんですけれども、財政状況も厳しい地方の自治体の社会教育を担う公共図書館も、その両輪として一体的に考えていけたらと思っております。また、私自身なんですけれども、非正規職員として、浦安市立図書館、秋田市立中央図書館、秋田県立図書館、そして今の紫波町図書館と勤務してきたこともありまして、その立場からも何かお役に立てればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】 よろしくお願いいたします。それでは、続きまして、オンラインで中村委員、お願いいたします。
【中村委員】 皆さん、こんにちは。全国高等学校PTA連合会の中村と申します。よろしくお願いいたします。
私は今、現役の高校生の保護者としてPTA活動に参加させていただいているんですけども、子供が3人おりまして、一番下の子が今現状まだ高校生でおります。PTA活動も、ちょうど上の長女のときから、3人おるので長女のときから携わらせていただいていて、石川県なんですけれども、石川県の1つの高校でPTAの会長をさせていただいて、2年前に御縁があって石川県の県連の会長と、今年は全国にまた御縁がありまして、今、全国のPTAの理事等をさせていただいています。現状、私は立ち位置的には子供の保護者、高校生の保護者として、いろいろ子供たちに聞いてみたんですけれども、あと姿を見ていると、漫画とか雑誌に関してはほぼほぼ携帯かiPad、デジタルで読んでいるのが今現状です。図書館に関しては、やはり聞いていると必要で、見ていると、そこで雑誌とか漫画を読むというより、うちの子は、そこで勉強したり、テスト勉強をしたり、あとは、小説とかその辺を借りてきて読んでいるのが現状です。あとは、気に入った本とかがあれば、デジタルはデジタルで読んでいるんですけども、雑誌ではないですね、小説とかその辺は、1度デジタルで読んで気に入ったものは紙媒体でもう1回読んで残しておきたいということで、そういう活用の仕方をしています。
これからもいろんな高校生たちと会うことがあるので、いろいろな現状とか、もっともっといろんな意見があると思うので、情報提供はさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【秋田座長】 よろしくお願いいたします。それでは、対面で野口委員、お願いいたします。
【野口委員】 皆さん、こんにちは。専修大学の野口と申します。
私は、読書バリアフリーとか、先ほど植村委員からもありましたけれども、電子図書館のサービスとか、そういったところを中心に、学校図書館から公共図書館までまたがった形で、これまで研究を進めてまいりました。また、研究室の学生とは、LLブックを製作するというような取組なども、ここ10年くらい続けてきております。それから、全国公共図書館協議会で読書バリアフリーの実態調査に携わったりとか、あと日本図書館協会でも障害者サービス委員会の委員とか、認知症バリアフリー図書館特別検討チームの委員などを務めております。それから、設楽委員の後を継いで、現在、公益社団法人全国学校図書館協議会の理事長を務めております。
私の関心事は、デジタルの部分は植村委員もおっしゃっていたので、読書バリアフリーというか、多様な人々へのサービスという観点で言いますと、学校図書館に関して言いますと、支援学校はもちろんなんです。これはほかの委員のお話からもあったとおりなんですが、それに加えて、堀川委員もおっしゃっていたように、通常のクラスの中で学んでいる支援が必要な子たちが、小中高校の学校図書館でアクセシブルな書籍等を利用できる環境をどう充実を図っていくかという観点が非常に重要になってくると思うんです。その際に、障害のある子だけではなくて、日本語指導が必要な子供たちも増えてきておりますので、やさしい日本語であるとか、多言語の資料へのアクセス、これはもちろん紙ベースだけではなくて、デジタルも含めて、やはり利用できる環境をどう充実していくのかということが重要になってくると思うんです。堀川委員も御提案されていたように、学校図書館図書標準、電子書籍の扱いということも、もちろん私も重要だと思っているんですが、プラスしてアクセシブルな書籍等の扱いということも、その図書標準の中でどう検討していくのかという観点も非常に重要ではないかなというふうに思っています。
それから、公共図書館に関して言いますと、今、認知症バリアフリーの視点というのは非常に重要になってきております。実際、高齢化率が29.3%という中で、認知症の方々が安心して利用できる公共図書館をどう環境づくりしていくのか。つまり、認知症バリアフリー、読書バリアフリーというと視覚障害者等の皆さんへの環境づくりで、それはもちろん重要なんですけれども、それにプラスして、認知症バリアフリーの視点ということも重要になってきますので、特に今年の1月に認知症基本法が施行になっておりますよね。基本理念で教育を含めた総合的な取組として進めていくんだということがうたわれておりますので、特に社会教育、生涯学習の拠点である公共図書館が、そこにどう寄与していくのか、そういった観点も含めての議論ができたらいいなというふうに思っております。
私からは以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】 よろしくお願いします。それでは、オンラインで花田委員、お願いをいたします。
【花田委員】 神奈川県教育委員会教育長の花田と申します。よろしくお願いします。
今お話を聞いていて、皆さんそれぞれ専門の分野で、本当に知見高く御意見をされているのを感心して拝見しておりました。私の立場からすると、今回の有識者会議の究極の目標は何だろうと考えたときに、これは当初、文科省の皆さんからお話がありましたけれども、全ての人にとって読書機会をしっかり確保していこうよ、その結果、不読率を下げていって、国民全体の知の力を高めていこうよということだろうと思います。我々が若いときの読書環境と今の読書環境は全く違います。昔は、仕事帰りとか友達との待ち合わせに駅前の本屋さんで時間を潰す、そういったときに本と出会うということがありましたけれども、今、本屋も都市化した神奈川県でさえどんどんなくなっていって、本を手に取る機会というのが圧倒的になくなっている。電車の中で文庫本を読む人はほとんどいない、みんなスマホを見ている。そういった状況の中で、どうやって読書活動を進めていくのか、これはすごく重たい課題だと思っています。
そうした中で、学校図書館、学校教育としての学校図書館、それから社会教育としての公共図書館について、連携方策、それからハード、そこで働く人の処遇、蔵書の充実、そういった視点で今まで議論がございましたけれども、私も従前、県の生涯学習課長をやっておりまして、ちょうど県立図書館の建て替えを担当させていただきました。そのときに、これからの図書館というのは、本さえあればいいという旧来型ではなくて、やはりほっとする場所、ゆっくり過ごせる場所、それが必要なんだよといって、それで別の部局へ出て教育長に戻ってきましたら、コーヒーショップつきの図書館ができておりました。そこの中には、猿田彦珈琲というのが入っているんですけれども、コーヒーが売れて、そのコーヒーを飲みながら本を読むという、ほっとできるスペースとして県立図書館が機能しているという状況です。
一方、学校図書館も、一部の委員の皆様からお話ありましたけれども、今不登校ぎみの子供とか課題を抱える子供の居場所になっている、居場所として学校図書館に着目しているということがあります。学校司書の皆さんも非常に頑張っていますけれども、そういった単に本を読む場所だけではない機能をどう付加していくのか、その辺についても議論をいただければ幸いだと思います。
私からは以上です。ありがとうございます。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。それでは、続きまして、対面で林委員、お願いいたします。
【林委員】 都立八王子拓真高校校長の林と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
自己紹介も兼ねてということですので、本校、20年弱の学校なんですが、昼夜間3部制の定時制の学校です。朝から晩まで授業があって放課後がない学校で、トー横キッズみたいな学校です。課題は集中しています。オーバードーズの子がいたりとか不登校の子もいますし、ADHDの子は100人単位で恐らくいるだろうという学校なんです。なんですけども、図書館を1つの居場所として捉えていまして、司書の方は会計年度任用職員ということになっているのでなかなか正規職員にならないんですが、司書教諭をつけていますので、そこと連携しながら、あるいは保健相談部という特別の分署を持って、そこが中心になって、学校の図書館の中で月1回イベントを開いて、そこのときは飲食もオーケーと。あとはテントがあったり、簡易的なテントです。あと『週刊少年ジャンプ』を置いてあったりとか、これは1週間遅れで置いているんですが、ということで、学校に来てもらうということだとか、やっぱ居心地のいい場所、図書館は居心地がとてもいい場所なんです。ということで、安心して過ごせる場所の提供として図書館も1つの核として考えています。居場所づくり自体はほかにもたくさん、アニマルセラピー等もやったりとかやってはいるところなんですが、そういうことで取組をしているところです。
ただ、高校段階よりももう少し幼い段階から活字に触れている機会が重要なんだろうなとは、常々思ってはおります。先ほどお話もありましたとおり、デジタルを使う時間がありますから、そうすると、寝る時間を削るか、どこかほかの時間を削るしかないとなると、あんまり活字を読むのは優先度が高くはないかなと。調べ学習も、下手すると、検索してつまみ食いしておしまいということになりかねない。それをどうやって本当の知の力につけていくのか。読書をする、あるいはデジタルに触れるというのは一体何のために行うのかという目標と手段がちょっとごっちゃになっちゃっているところも現場ではありがちなので、その辺を整理しながら、図書館をさらに活性化していくこと。調べ学習にしても、活字から調べることは余計な知識、後から考えると余計じゃないですけども、いろんな知識を幅広く触れることができますので、そういったことをどういう仕組みでできるかなということは考えていければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】 よろしくお願いいたします。それでは、続きまして、松木委員、お願いいたします。
【松木委員】 御指名いただきました。私は、一般財団法人出版文化産業振興財団、JPICというところに勤めております。この財団は、読書アドバイザーという養成講座がございまして、1年間かけて出版のことを学んでいただくという形で、今年卒業しますと、3,000名が全国で様々な出版活動に携わっております。
一方、先ほどからもお話ございました、書店がどんどんなくなっていくという中で、私どもの使命としましては、それを何とか伝えていきながら政策にも入れていただくような活動もしております。今日も、お昼は議連をやっておりまして、その中でも様々な御提言をさせていただきました。
今回は、図書館と学校図書館の運営の充実に関する有識者会議ということになりますが、この運営の充実には書店と出版社も必ず必要だということを多分私はずっと言い続ける役割だと思っております。やはり書店がなくなり出版社がなくなれば、しっかりとした本が出てきませんし、もちろん納めることもできませんので、この4者が一緒にやるということが大事だということをお伝えさせていただきたいと思っております。そのためには、先ほどもお話がありました望ましい基準をどのように変えていくのかは、図書館の司書の方だけではなくて、書店も出版社も期待をしております。そこに向けてどのような方向性が見せられるかを一緒に考えさせていただければと思います。
また、今日の議連の中でも、フランス大使館の方にお越しいただいてフランスの文化政策について御発言いただきました。その前段として、私のほうから、フランスの文化政策に対する1人当たりの歳出金額と日本の比較をお出ししましたところ、10分の1ということです。アメリカと日本は非常に近いですが、アメリカは寄附の文化がありますけれども、日本はないので、本当に日本の文化政策にかかっているお金というのは非常に少ないというのがあります。今回の有識者会議で、政策の提言をしていくということになるんでしょうけども、私はやはり解決するには予算を増やすしかないと思っております。様々な予算をしっかりと増やすということを、有識者会議の中ではっきりとお伝えをして、それが日本に必要だということを多くの方に分かっていただけるような、何かお手伝いができればというふうに思っております。
以上です。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。それでは、続きまして、松本委員、お願いをいたします。
【松本委員】 慶應義塾大学の松本直樹と申します。
慶應義塾大学には、文学部に図書館情報学専攻というのがございます。そこで図書館情報学の研究、あるいは教育に携わっております。これまで、公共図書館の制度であったり、経営やサービスに関心を持って研究をしてまいりました。最近では、指定管理者制度をめぐる議論でありましたり、あるいは図書館職員の認定制度、さらには県立図書館の協力支援の在り方、こういったことについて研究をしてまいりました。
今後の議論との関係で、図書館の設置及び運営上の望ましい基準について少し話をさせていただきたいと思います。近年の図書館をめぐる環境というのは、これまで話がありましたように、大きく変化をしていると言えると思います。貸出し点数を見てみますと、随分前に減少に転じていると。マクロの数値で見たときにはですね。そういったことに、ある意味象徴的に現れていると思うんですけれども、人口減少であったり、あるいは人口構成の変化であったり、メディア利用の変化であったり、そうしたものは図書館サービスに非常に大きな影響を与えていると思います。どこまで有識者会議でこの基準についての議論を広げるかというのはちょっと分からないんですけれども、やはり新しい基準づくりにおいて、私自身も非常に期待しておりますし、先ほど曽木委員からもありましたように、図書館界といいましょうか、公共図書館界ですか、非常に期待している部分ではあります。やはり今後10年先、あるいは15年先を見据えた議論をできればなというふうに思います。
また同時に、今後の図書館の方向性を示すような希望の持てる基準にもしていきたいと、そういった議論をしていきたいというふうにも思っております。非正規職員の増加など、図書館は非常に厳しい状況にあるということは間違いありませんが、そうした中でも、全国の公共図書館の底上げができるような、そして市民にとって真に必要とされるような、そういった図書館となるような基準づくりが、基準づくりの議論ができればなというふうに思っております。
以上です。どうもありがとうございます。
【秋田座長】 ありがとうございます。それでは、今度は副座長に、お願いします。私が皆様に3分とお伝えしたので、とても協力いただいたので、若干長めでも大丈夫かもしれません。お願いいたします。奈須委員、お願いいたします。
【奈須副座長】 学校をめぐる状況の中で、今回の会議の図書館・学校図書館ととても関連があるものとして、デジタル学習基盤ということがあります。GIGA端末の導入もあって、今後学校の学習環境というのは、デジタル学習基盤ということをベースに、学校の在り方、カリキュラムの在り方、教室環境の在り方、授業の在り方、教師の仕事の在り方というのをかなり抜本的に問い直して再構築するということに進むだろうと思います。
その中で、デジタル教科書の導入も段階的に進んでまいります。これはかなり影響があると思います。子供たちが、デジタルの教科書を基に授業を受ける、学んでいくということで、そういう経験が、先ほどのデジタル書籍のようなことですよね、その利用の1つの大きな契機になるだろうと思っています。
一方で、デジタル学習基盤というのは、デジタルに置き換えるということでは全くなくて、この間、いろいろ培われてきた広い意味のアナログ、アナログは紙だけではなくて、広い意味でのアナログの学びの環境、そこでの学びの経験とデジタルの学びの経験、学びの環境というのをどういうふうに有機的に接合してつくっていくのかという問いの中で議論が進んでいます。その中で、図書館・学校図書館の在り方というのが考えられるととてもいいなと、まず思っています。
もう一つ、実は個人的に思っているのは、図書だけではなくて図書館という場の在り方、先ほど花田教育長からもありましたが、場の意味もあるかと思います。先般、NHKの「ドキュメント72時間」という番組で金沢市の図書館が出ていて、とっても面白かったです。いろんな人がいろんな目的、いろんな思いで図書館を訪れ、そこで居場所ということもありますし、自分の今の気持ちが癒やされたりとか、いろんな要求が充足されたりとかいう、図書館を運営されている方にとっても思いがけないようないろんな使い方、使われ方がしていて、本当にいろんな人を支えている場なんだなということをとても感じました。
面白かったのは、こういう本を借りに来たと言いながら全く違う本を借りて帰る人がいるという。これはとても大事なことだと思っていて、本と出会うという言い方をしますよね。何かの本を探しに来たんだけど、棚をぐるっと見ているうちに、本が光っていたとか、手に取ってくれと言ったとかよく言いますけど、出会いですよね。まさに出会い。偶然の出会いを必然化するという営みだと思うんですが、そしてその出会った本によってその人の人生が変わるなんていうことがある。多分図書館というのはそういう場だと思うんです。本屋もまさにそうですよね。待ち合わせで何となく棚を眺めていたらいい本に出会うなんていうこと、これはコンピューター検索ではちょっと起きない。ネット検索は極めて目的的で効率的で、多くの的確な情報を得ることができますけど、偶然出会うとか、そういうことは本当にないです。逆に、フィルターバブルであるとかエコーチェンバーというようなことが言われて、自分に都合がいい、自分の関心事のものばっかり集まってきて、そうではないものとかえって出会えなくなっているというのがネット環境の問題だということが最近言われていますけど、図書館は真逆ですよね。そういう開かれた世界というのが図書館の魅力かなというのを個人的にいつも思っていますけれども、そういうものがどうしても子供にとってとても大事だと思うんです。子供は、食べたことのないものは食べたいとは言わない。だから、これまでの経験で探しに行ったら、これまでの経験とは違うものと出会うという、とても豊かな場所が図書館や学校図書館、学校というのは常に合目的でリニアであるわけですが、学校図書館はそうではない、多分数少ない場所だと思うんです。そういう可能性として、私自身は図書館というのを魅力的に感じるし、そう考えたときに、それが学校の真ん中に置かれると伊佐治教育長はおっしゃった。すると、図書館に行く目的じゃないのに歩いていったら出会うとか、とてもいいなと思うんですけど、学校というのは近代の効率であるとか目的であるとか合理性であるとかというようなことを目指してずっとやってきたんですけど、図書館は、そういう部分もあるんですけど、そうではない部分が随分あって、それがどんどんデジタル化が進んでいく中で、面白い要因として学校の中に根付くんじゃないかななんていうこといつも思っております。
またいろんなことを教わりながら、一緒に深められたらなと思います。よろしくお願いします。
【秋田座長】 ありがとうございます。奈須副座長は、デジタル基盤のほうの委員でもおられますので、その視点からもまた今後御意見をいただければと思っております。堀川副座長、お願いします。
【堀川副座長】 すみません。先ほども長く話をさせていただきました。
1つだけ。今、奈須先生が、場というようにおっしゃってくださって、とてもありがたいというか、学校図書館においても公共図書館においても、そういう大切な場ではあるんですが、現実には、学校図書館がまだ場になっていないところもたくさんあります。学校司書の方たちの切実な思いを聞いてみると、本当に資質向上とそれから処遇の問題が、どちらが先かというか、どちらを整えればうまくいくのかという、卵が先か鶏が先かというような状況も、まだ全国にはたくさんあって、そういう方たちのことも視野に入れてというか、思いの中に入れて議論が進められていければいいなというように思います。
以上です。
【秋田座長】 ありがとうございます。皆様から本当に貴重な御意見をいただきまして、いろいろな御視点から、うなずきながら聞かせていただいておりました。
私個人としましては、本当に学校図書館とか公共図書館ということが、今子供にとってとても重要だと考えます。学力学習状況調査というのが毎年やられるわけですが、私が毎年追っかけている項目というのが、家庭の蔵書が25冊以下の子供たちというのが約3割なんですが、この二、三年で1%ぐらいずつは増えているんです。つまり、もう小中学生の家庭の3分の1には、自分の本ではなくて親も含めて本がないという、そのモデルがない。どこで子供が本と出会えるのかといえば、学校や学校図書館やその地域の図書館です。書店も4分の1の自治体ではもうないわけですから、そういうような状況の中で、その在り方というのがすごく重要だなと思っております。
私自身は、研究者としては、ずっと3歳児からとか小学校1年生からの長期縦断で、ベネッセさんと学校とか生活の調査をずっとしているんですけれども、読書のほうの担当などをさせていただいて、これは第五次の計画のときにもお話しさせていただいたんですけれども、既に小1で不読者というのがかなり、15%とか2割弱います。そして、それはずっとほぼ復帰することなく中学校と続いて、その差はずっと続くわけです。その前が大事だというふうにも思っているんですけれども、私はブックスタートの立ち上げというのを2000年にさせていただいて、それから応援しているんです。けれども、二、三歳をピークにして、御家庭での本を読む機会というのは減っているというような中で、実は昨年、文部科学省のほうでは初めて認定こども園、保育園、幼稚園を含めて、学校から公立図書館もいろんな調査をさせていただいて唖然としたのは、実は、幼稚園の教諭だけは新任のときに1回研修があるんですが、それ以外では公的に絵本や読書の研修は乳幼児施設では1度もないというようなことがあります。そういう中で、やっぱり人材の育成ということが極めて重要だと考えます。昨年、野口先生と調査委託の研究会で御一緒させていただいたんですけれども、デジタルとか、それからバリアフリーとか障害についての研修を公立図書館、学校図書館の御担当者がどれぐらい受けているかというのも、必ずしもこの2点では非常に不十分だという結果も出ております。そういう意味でも人材育成ということが重要かなというふうに思っているところであります。
私は、今、絵本専門士委員会の委員長というのを独立行政法人国立青少年教育振興機構のほうでさせていただいています。絵本というのを乳幼児のものと考えず、本当に生涯、高齢者まで含めて、また、紙の本という中だけではなくて、デジタルもですけど、絵本というのも特定のジャンルとしてとても意味があって、奥も深い、小学生、中学生、高校生でも喜ぶようなものがあるんじゃないかと思っております。私は、大学生でも、絵本を見るとすごく選ぶとかということでわくわくしたりしています。そういう様々な本との出会いのきっかけが様々な場でできるといいなと思います。
堅い話だけではなくて、今朝、1限という大学で講義をしていて、教育方法技術というのを担当しているんですが、そこで教育方法技術のビブリオバトルというのを、必ず大学でビブリオバトルを私は入れているんですけれども、大学生が生き生きとして自分の本を五、六人で持ってきて紹介して、チャンプ本を決めていくわけなんですけれども、機会があれば、どんな年齢の人でも本と出会うとわくわくする、そういう空間を大事にしていきたい、そのために、そしてそれが、そういうことをすると大学図書館とか公立図書館とつながったりするわけで、そういう図書館の活用ということをどう考えていったらいいのか、そういう場を大人がどうつないでいけるのか。地域の中で、いろいろな人たちのネットワークということを考えていくことが必要だろうと思っています。
最後に、もう1点でございます。
私は、こども家庭庁のほうのこども家庭審議会の会長をいたしております。こども基本法ができました。先日、ある県の指導主事会で、こども基本法の研修を受けたことある人いますかと言ったら、1人しか手が挙がらなくて、その県は大丈夫だろうかと思ったということがありますが、こども基本法は、子供の学び育つ権利、それから読む権利ということも保障していくということが重要でありますし、子供が参加するということが大事だと考えております。第五次の子ども読書の計画のときにも、ある自治体で子供の声を聞いていただきましたが、この会議でも、大人がこれからの子供や読書の在り方を考えるだけではなくて、当事者である子供の声もぜひどこかで聞いていくというような機会を設けながら、様々な世代が一緒になって、これからの地域の公立図書館、学校図書館の在り方を一緒に、それこそ様々な御関係者と伺えたらいいなと考えているというところでございますので、どうぞこれからよろしくお願いいたします。
5分前のはずが、ちょっと私がしゃべり過ぎまして、あと二、三分ですが、そろそろ本日の閉会の時間も迫ってきております。
次の議題に移りたいと思います。
次の議題3、その他ということですが、事務局から何かございますでしょうか。
【毛利図書館・学校図書館振興室専門官】 第2回会議の日程について御連絡いたします。
お手元の資料5を御覧ください。
次回、第2回は1月23日木曜日、16時から18時を予定しております。また、次回もウェブ会議を併用して行います。文部科学省内の会議室で開催する予定としております。
以上でございます。
【秋田座長】 本日の議事はこれで全て終了いたしましたので、第1回の会議はこれで閉会といたします。本当に皆様、3分間を遵守に御協力いただきまして、ありがとうございます。また今後もよろしくお願いいたします。閉会です。ありがとうございました。オンラインの皆様も、ありがとうございました。
総合教育政策局 地域学習推進課 図書館・学校図書館振興室
電話番号:03-5253-4111(内線:3484)