令和7年5月22日(木曜日)16時00分~18時00分
秋田委員(座長)、池内委員、伊佐治委員、伊藤委員、植村委員、紀之定委員、小林委員、汐見委員、設楽委員、曽木委員、田井委員、高橋委員、土屋委員、手塚委員、中村委員、奈須委員(副座長)、野口委員、花田委員、林委員、堀川委員(副座長)、松木委員、松本委員
茂里総合教育政策局長、堀野社会教育振興総括官、髙田地域学習推進課長、田中図書館・学校図書館振興室長、稲田図書館・学校図書館振興室専門官
伊藤国立青少年教育振興機構理事、石川国立青少年教育振興機構教育事業部事業企画課企画係長兼読書推進係長
【秋田座長】 皆様、こんにちは。定刻となりましたので、これより、図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議の第4回を開催いたします。
本日の流れでございますが、本日の議題は、「デジタル社会への対応、多様な人々のための読書環境の整備に係るこれまでの主な意見のまとめ」及び「読書推進人材の活躍機会の拡大」についてでございます。
まず、事務局より「デジタル社会への対応、多様な人々のための読書環境の整備に係るこれまでの主な意見のまとめ」について御説明をいただきます。そして事務局の説明が終わりましたら、質疑や意見交換の時間を約20分程度取りたいと思っております。その後、次の議題でございます「読書推進人材の活躍機会の拡大」について事務局より「論点(案)」を説明いただきます。
さらにその後、2名の方に御発表をいただくこととしております。初めに独立行政法人国立青少年教育振興機構の理事の伊藤様より、読書推進人材の在り方について、絵本専門士将来ビジョンを基に御発表いただきます。次に、松木委員より、読書アドバイザーの活用から見た読書推進人材の在り方について御発表をいただきます。そして、お二方の御発表が終わりましたら、御発表に関する質疑や論点案について意見交換の時間を40分ほど取りたいと考えております。
それでは、まず、「デジタル社会への対応、多様な人々のための読書環境の整備に係るこれまでの主な意見のまとめ」につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【田中図書館・学校図書館振興室長】 御説明いたします。資料1「デジタル社会への対応、多様な人々のための読書環境の整備に係るこれまでの主な意見のまとめ」を御覧ください。
こちらは、第2回及び第3回の有識者会議におきまして御議論いただいた内容であり、この論点は非常に重要なポイントにつき、この場で改めて主な意見を共有させていただければと思っております。
まず、「(1)図書館資料、サービス、施設・設備の在り方」についてです。この中で電子書籍等の資料の充実という観点では、電子書籍は非来館貸出サービス、文字拡大、音声読み上げや多言語対応等の読書バリアフリーの観点からも有用性が高いこと。
また、電子書籍等の利用や図書館・学校図書館のDXを進められていくことが求められていることや、紙の資料もデジタル資料も発達段階に応じて多様なメディアを体験する利用指導等を組織的・計画的に行うことが重要であること。
さらには、公立図書館や学校図書館におけるアクセシブルな書籍及び電子書籍の充実、円滑な利用のための支援の充実等が必要であること。一方で、アクセシブルな書籍等の所蔵情報や職員の配置等に課題が見られること。
読書バリアフリーのニーズが高まっており、読書バリアフリーへの対応は特別支援学校だけではなく全ての学校図書館において必要であること、その際、アクセシブルな書籍等による支援ができることが今後重要であること。
外国語図書は入手困難であること、言語が英語に偏重しているなどの課題があること。日本語指導が必要な子供たちに対してやさしい日本語や多言語資料へのアクセスを確保するため、紙の資料に加えて、デジタル資料も含めて利用できる環境の充実が重要であるとの意見をいただきました。
次に、「多様な資料の収集方針と活用」につきましては、多様なメディアがある中で、様々なメディアの収集・整理方針、廃棄方針の策定・公表が求められること。
デジタル資料の収集等にも有効な基準の整備が必要であること。
紙書籍と電子書籍の役割分担を検討する必要があること。またその際、いずれにおいても信頼性が高い情報を収集してデジタル学習基盤の構築をすることが重要であること。
資料の内容や特性に合わせて、紙書籍と電子書籍を選択しながら選書するとよいということ。
「情報活用能力」という言葉がコンピューターの利用を前提とした言葉として用いられるのか、「情報リテラシー」はコンピューターの利用が前提ではなく、紙の資料もデジタル資料も両方使う力、また、デジタルを使い分ける力を教えていくことが必要であるとの御意見をいただきました。
続きまして、「多様な利用者に対するサービスの充実」という観点では、ICT機器の利用環境の整備が必要なこと、また、外国籍の子供と保護者等の多様な住民の図書館利用を促進する仕組みづくりが必要なことに触れていただきました。
次に、「施設・設備の工夫」についてですが、多様な読書・学習媒体に触れる環境づくりや多様な来館者に分かりやすい館内表示の工夫なども重要であること。障害種別に合わせて、複数の障害に対応する各種資料の充実、施設の表示や設備の配置等、環境整備の促進が重要である点について御指摘をいただきました。
次に、「(2)司書教諭・学校司書・司書等の人材の在り方」についてです。ここでは、職員の雇用形態にかかわらず、研修を受講できる体制づくりに努めること。館長を含めた研修受講の重要性が必要である。また、オンライン研修による人材養成・育成の促進も有効であること。
個人情報保護、デジタル資料の収集・提供、デジタルリテラシー等に関する資質・能力を持つ司書の養成等が必要であること。紙書籍と電子書籍を組み合わせた利活用を学ぶ研修機会もあるとよいこと。
図書館において、障害者サービス担当職員の配置を促進することが必要であること。図書館に担当職員がいない現状があること。アウトリーチサービス、広報が重要であること。特定書籍・特定電子書籍等の製作に関わる人材の確保・育成に向けた取組の一層の充実も必要であることについて御意見をいただきました。
続きまして、「(3)関係機関との連携」です。ここでは電子図書館サービスの共同利用、コンソーシアムや都道府県等の広域連携による提供も有用である点について御意見をいただきました。
最後に「(4)その他」として、学校図書館の予算をどのように充てる必要があるかを学校経営計画の中に示していくことも重要である点。
また、電子図書館を活用する際に最も多く挙げられた課題は、電子図書館導入の予算が不足していること。
さらに、電子図書館サービスの導入後の継続的な費用が課題であり、地域格差が生じている点について御指摘いただきました。
ここまで大変貴重な御意見を賜り、感謝申し上げます。今後の取りまとめの視点としてしっかりと受け止めさせていただきます。
本日も含め、まだまだ重要なテーマがございますので、引き続き御検討のほどよろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
【秋田座長】 田中室長、御説明をどうもありがとうございました。
それでは、これから意見交換の時間とさせていただきます。先ほど事務局から御説明がありました意見のまとめにつきまして、御質問や御意見など御自由に御発言いただければと思います。
恐縮でございますが、御発言のある委員は、対面の方もオンラインの方もお手元のタブレットで挙手のアイコンを押していただきますようお願いをいたします。
【高橋委員】 よろしいでしょうか。
【秋田座長】 お願いいたします。
【高橋委員】 ここまでの議論をまとめていただき、本当にありがとうございました。要点がすごくよくまとまっていて、自分の頭の整理にもなりました。私は図書館長という立場上、紙媒体と電子媒体のことはいつも考えながら日頃の業務をしていますが、つい最近読んだ書籍『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』の中で、生徒のコメントですごく核心を突いている言葉があったので、ちょっと御紹介させていただきます。「本は私を減速させ考えさせ、インターネットは私を加速させる」というコメントです。
今日のこのまとめの中でも、例えば2ページにある紙書籍と電子書籍の役割分担とか、資料の内容とか特性に合わせてと書いてありますが、紙や電子のツールとしての有用性という視点から分類するケースが多いと思います。しかし、今この子が言っているように、自己形成とか、自分の資質・能力の視点から、こういう部分では電子のほう、こういう部分では紙の本というような説明もちゃんとしないと、子供たち自身も納得して使い分けしないと思うんですよね。こっちを使うとこういう良い部分があるとか、こっちを使うとこういう点で自分の役に立つとか。序論の部分でいいので、そういうこともちゃんと示さないと、教員も、生徒も、利用者の方も、図書館職員もそうですけど、納得感を伴った電子と紙の使い分けは進んでいかないのかなと思ったので、そのコメントだけ御紹介したいと思います。
まとめていただき、本当にありがとうございます。以上です。
【秋田座長】 高橋委員、貴重な御意見をありがとうございます。やはり何のための使い分けであるのかというところを明確にこの案の中に書き込むべきであるという御意見をありがとうございます。
それでは、続きまして、堀川委員、お願いをいたします。ごめんなさい、先に小林委員でした。失礼いたしました。
【小林委員】 まとめをありがとうございました。まとめの中のものと重なる部分があるかも分かりませんが、ちょっとデジタルのことについて、ぜひお話しさせていただきたいと思って発言させていただきます。県内の図書館長からの聞き取りは、全ての図書館の館長が電子書籍の導入には前向きであるんですけども、ほとんどの市町村が導入を躊躇していると。その原因はやっぱり価格なんですね。方策の中で広域の契約というようなことも示されているんですけども、なかなかハードルが高いところがあると。それはベンダーさんの考え方にもよるんですけども。
そもそも現在の学校図書館や公共図書館の契約の在り方というのが適正なのかということについてもやっぱり考えていかなきゃいけないと思っています。もちろん先行投資されて新しい道を切り開いてこられたベンダーの皆さんの努力というのは、企業努力ですばらしく、それが今の普及につながってきているということは間違いないと思うんですけども、やっぱりあまりにも選択肢がない、自由度がないという契約内容の中で、限られた企業が寡占的に提供しているという今の状況の中で、本当にサービスが適正に行われているのかということについてはやっぱり考えていかなきゃいけないと思っております。
少し高いと感じるような価格設定の中で、それをコンテンツの使用料を払うことに加えてプラットフォームの使用料も継続的に払っていかなきゃいけないというような今の支払いの構造とか、そういうようなことについてもまた検討されていく側面があるようにも思いますし、経済産業省等では電子書籍の利用拡大のための調査研究ということが行われていると。
そういうことと併せて、より多くの出版社が電子書籍に参入するということ、あるいはより多くの良質なコンテンツが広く利用されるということを目指していく中で、図書館もどういう提供の仕方が理想なのかということを考えていく必要があるんじゃないかということを思います。
少なくとも今のままのビジネスモデルで学校図書館や公共図書館へ普及するということであれば、相当の支援がないと全国一律でそれが広がっていくということはなかなか難しいんじゃないかなと思いますので、あるいは義務教育を支える教育環境を整えるという観点から、業界団体等への市場の拡大と利用の促進ということをセットにしたような働きかけがやっぱり必要なんじゃないかなということを思います。
そういう面で、実効性のある手だてが何らかの形で行われるということが求められるんじゃないかなと思いましたので、今までのところと重なる部分もありますけども、発言させていただきました。
【秋田座長】 小林委員、ありがとうございます。価格の問題と、それから、これから契約やそれから拡大の在り方について議論をしていく必要があろうかと思います。ありがとうございます。
それでは、続きまして、堀川委員、お願いいたします。
【堀川副座長】 ありがとうございます。3ページの「(2)司書教諭・学校司書・司書等の人材の在り方」のところなんですが、質問ということではなくて、追加でお願いしたいことがあります。それは司書教諭を11学級以下の学校にも発令を促していただきたいということです。昨日あるところの研修会に行きましたら、学校司書の研修会でしたけれど、本当に一生懸命やっているんです。ただ、図書館の時間に、それは国語の時間から捻出した特別な時間で、共通に使えるための時間なんですけれど、そこでは国語から抽出したからといって国語のことしかできないと、教えてはいけないとほかの先生方から言われてしまったと。それに対して本当は司書教諭がきちんと説明をしなければというか、全校に向けて、学校図書館の機能とか、図書の時間でもこういうように教科の基礎的な力になるものをここで共通に教えましょうというような説明をしなければいけないところなんですが、司書教諭が現在いないとか、あるいは力がないと、研修が足りないという現状があります。
ぜひ11学級以下の学校にも司書教諭発令をということ、それから司書教諭の発令について教育委員会発令を推奨していただければと思います。今、学校長発令と教育委員会発令とどちらでもいいということになっていますので、学校の現場にとってはやっぱり教育委員会発令のほうが重みがあるということです。
そして、もう一つ、実際に司書教諭の発令というのを複数発令している学校が幾つか見られます。それは複数というのは、小学校でしたらば、低学年、中学年、高学年という3人の司書教諭を、発令というよりは、係として置いておくと。そうすると司書教諭の仕事も軽減されますし、それから3人の司書教諭あるいは2人の司書教諭が協力し合うことで司書教諭の養成にもつながってきます。ぜひこうした複数発令とか、教育委員会発令について文章にしていただけるとありがたいです。よろしくお願いします。
【秋田座長】 堀川委員、ありがとうございます。発令の在り方について、11学級以下の問題と、それからあと複数発令、教育委員会発令についての御意見をいただきました。
それでは、続きまして、紀之定委員、お願いします。
【紀之定委員】 失礼します。またちょっと電子図書のほうに戻ってしまいます。最近のことなんですけれども、勤務校で、朝の読書で学級文庫を設置したりとかしているんですけども、やはり不読率というのがちょっと増えてきまして、何とかいろいろな本を手に取ってもらいたい、読書環境を整えたいという気持ちもあって、電子書籍を導入したいということで、今年の2月に公立図書館に相談したところ、町の教育委員会と相談してくれまして、この6月からやっと電子図書を朝の読書で導入することができるようになったんです。それは非常にうれしいなと思ったんですけれども、でも、自分の町だけであって、隣の市のほうはまだ導入できない状況のようなので、何だか残念だなという気持ちもあるんですけど、やはりそれが県や府全体など、広い範囲で活用できるようになったらいいのになと感じているところです。
また、電子書籍を導入して、生徒の本を読む様子や状況など、報告できればなと思っております。以上です。
【秋田座長】 紀之定委員、ありがとうございます。今、実際に電子書籍を図書を入れたことと、それから自治体間の格差というような問題についてお話をいただきまして、ありがとうございます。
それでは、続きまして、植村委員、お願いをいたします。
【植村委員】 植村です。まず、おまとめの中で、紙と電子、双方の優位性を活かして利用していくという形でまとめていただいてよかったと思っています。昨今、マスメディアで紙のほうが教育に良いという論調の記事が見受けられます。そのような方向に行くことを強く懸念をしております。紙のよさとデジタルのよさというのが双方にありますので、その両方をうまく使える、未来に子供たちを育てていくということの観点で議論が進めばいいなと思いました。
もう一つ、今ほどの御発言にありましたが、公共図書館とか学校図書館に電子書籍が入ってきたときに、電子書籍を授業利用できますか?という問合せがすごくあります。私のところにも来ていますし、各自治体の電子図書館Q&Aなどのサイトを読みますと、電子図書館で契約したものを授業利用していいでしょうか、プロジェクター表示していいでしょうかという問合せがあります。これにはグレーなところがありまして、回答を見ても大分ばらばらな気がします。電子図書館事業者にも学校図書館への普及とあわせて授業活用を促したいという意向も聞いております。今後、整理していくべきと思いますし、それには何かのガイドライン等を作るとよいと考えます。ぜひ学校図書館や公共図書館に入った電子書籍を授業で利活用できるように合意形成し、必要ならば契約を整えるなど、準備できればよいと思っています。
私からは以上です。
【秋田座長】 植村委員、ありがとうございます。電子書籍の授業利用ということについてのルールとか明確化の必要性を御指摘いただきました。ありがとうございます。
それでは、続きまして、松木委員、お願いをいたします。
【松木委員】 それでは、ちょっと話がまたあちこちと恐縮なんですが、3ページの先ほどの「(2)司書教諭・学校司書・司書等の人材の在り方」というところにつきまして、ひとつお話を聞いていただければと思います。
1行目に館長を含めた研修受講の重要性を明文化するということですが、今回は学校図書館と公共図書館両方に対してのお話かと思います。この館長という部分については、学校長、校長も含めての館長ということでよろしいでしょうか。実際、首長が替われば大きく変わる部分もあります。やっぱり校長が替われば、校長のお考えが変われば、大きく変わりますので、専門外なので現在学校長にどのような図書館長としての研修がされているかがよく分かっていない中で恐縮ですけども、ぜひ館長というところでは学校長も含めた研修の重要性ということで補足なり確認をいただければと思います。
【秋田座長】 ありがとうございます。松木委員からは校長も館長としての研修を含めて行うことの必要性をお話しいただきました。
ほかにはございませんでしょうか。
ありがとうございます。特に今、お手が挙がっていないようですので、こちらに関しましては本日はここまでとさせていただきまして、次の議題のほうにそれでは進めさせていただきたいと思います。
次は、「読書推進人材の活躍機会の拡大について」でございます。まず、今回の会議における「論点(案)」について事務局より御説明をお願いいたします。
【田中図書館・学校図書館振興室長】 御説明いたします。お手元の資料2を御覧ください。こちらに本有識者会議の論点(案)としてまとめております。本日の議題は2ページ目の赤囲み「読書推進人材(絵本専門士、認定絵本士、朗読指導者、読書アドバイザー)の活用」です。
さらに1枚おめくりいただきまして、特に読書推進人材の方々の現状ですが、資格取得者が着実に増えながらも取得後の活躍の場の拡大に若干課題があるのではないかという点となります。概要として、絵本専門士については、絵本に関する高度な知識、技能及び感性を備えた絵本の専門家ということで、平成26年度に創設された制度で、現在、認定者は637名となっております。
一方、JPIC読書アドバイザーについては、令和6年時点で31期ということで、会員数は現在600名ということになっております。これらの資格を有する読書推進人材については、令和5年に策定された「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」においても基本的な方向性が示されております。
また、書店活性化の観点からもこれらの読書推進人材は期待されている一方で、先ほども触れましたとおり、活用機会に係る課題という点も挙げられているところです。
さらに、1枚おめくりいただきまして、その現状ということを踏まえ、本日の論点と検討の視点は大きく4点です。
1点目、読書推進人材に期待される役割について。図書館・学校図書館が、読書活動に関する専門的知識を有する者からの助言を得ながら子供の読書活動を推進する環境を整備する必要性や意義、教育的な観点等から見た効果。地域のまちづくり推進において読書推進人材に期待される役割。その他、図書館・学校図書館において読書推進人材に期待する役割。
2点目です。読書推進人材の活躍機会の拡大に向けた課題と方策等。読書推進人材が、図書館・学校図書館等における読書活動へ参画する上での課題。また、図書館や学校図書館が、読書推進人材を読書活動に参加させる際の課題と対応策。
3点目です。人材育成強化に向けた課題、期待される取組。読書推進人材の確保に向けた課題。また、読書推進人材の専門性強化に向けた課題。
4点目でございます。地域における多様な読書推進人材の連携促進の必要性等ということで、読書推進人材が子供の読書活動の推進を図る民間団体やボランティアとの情報交流等を通じ、相互ネットワークを構築する必要性など。図書館・学校図書館と読書人材との役割分担となっております。
本日はこのような観点から御議論をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
【秋田座長】 御説明をどうもありがとうございました。
それでは、ここから発表に入りたいと思います。まず、国立青少年教育振興機構理事の伊藤様から御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
【伊藤理事】 御紹介いただきました国立青少年教育振興機構の理事をしております伊藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
先ほど話も出てきましたけれども、読書推進人材ということで、私ども、絵本専門士の育成を担当してございます。それで資料3に基づきまして私どもの取組について御説明を申し上げますけれども、絵本専門士、皆さん御存じだと思いますので、1枚飛ばしていただきまして、めくっていただいて、絵本専門士の活動事例を参考までに載せてございます。それで絵本専門士の資格を持っておられるとともに、図書館ですとか学校図書館で御勤務、御活躍されておられる方の事例を載せてございます。
上が公共図書館の司書として勤務されている方の事例でございまして、中身を見ていきますと、いろんな場面で読み聞かせを行っているとともに、いろんな方々に対する絵本の講座を実施しているということで、絵本の活用を推進していただいている方になります。
その下のところは学校図書館の司書で活躍されておられる方です。絵本というと子供を対象として考えがちなんですけども、この方は、1番目のポツのところですけども、高齢者や大人の方々への読み聞かせも実施をしていただいているということで、対象者の幅を広げるような活動もしていただいてございます。
そういうことで、いろんな方々がそれぞれ活躍をしていただいておるんですけれども、これまで10年間、我々、絵本専門士の養成に取り組んできましたけども、10年たってみてちょっと振り返ってみたときにどのような状況なのかというのが次の3ページ以降でまとめてございます。
10年間で637名を養成してきたわけでございまして、その方々がどういう職業なのかということを見ていきますと、一番やっぱり大きく割合を占めているのが図書館関係者ということで、23%ということになります。以降、いろんな職業がございますけども、大くくりで申し上げますと、やはり子供に関わる職業の方々が絵本専門士の資格を取っておられるということになります。
1枚めくっていただきまして4ページでございます。637名を養成してきたわけでございますが、じゃあ、地域分布がどうなっているかということを見ていきますと、実は東京で講座をやっているものですから、どうしても東京圏に集中をしておりまして、45%の方が1都3県に在住をしておられます。
人口比で見ますと、大体1都3県で30%ですので、非常にバランスが悪くなっていて、その分、全国各地に絵本専門士の方々がなかなか存在しないという地域偏在性が見られるというのが、課題として受け止めているというところでございます。
あわせて、どうしてもやはり講座を受講する上で、東京で実施しておるものですから、どうしても費用負担が結構かかるというところがございまして、そうするとやっぱり絵本専門士の資格取得者の年齢がどうしても高くなってきてしまうというところで、若い世代をどういうふうに絵本専門士として養成し、活躍していただくのか、これも課題になってございます。
現状と課題ということで、1枚めくっていただきまして、6ページに簡単にまとめてございます。特に2つ目のところが大きな課題なんですけれども、どうしても絵本専門士が偏在してございますので、絵本専門士の方が少ない地域については、どうしても個人で活動をしていかなければいけないということになってしまっていて、なかなかいろんな連携が取りにくいという実態がございます。これは絵本専門士同士の連携も取りづらいですし、また、絵本専門士が活躍できるようないろんなイベントですとか、いろんな関係団体と連携を取って実施していく必要があるんですけども、そういった横の連携というのがなかなか出にくいという状況が非常に大きな課題になってございます。
また、いろんな知識・スキルというのはしっかりアップデートしていく必要があると思いますけども、例えば著作権の状況ですとか、そういった諸々の状況については、講座を受けた後については自分でやらなきゃいけないという状況になっていて、やはりここはリカレント教育が必要じゃないかというのも課題になってございます。
それで、絵本専門士に加えまして、認定絵本士というものがございます。これ先ほどの文科省からの資料の中にも書かれておりましたけども、こちらにつきましては、高等教育機関で教員と同じような形で養成講座を開設していただいて、一定の単位を修得していただいた場合に認定絵本士となるということでございまして、絵本専門士と認定絵本士の関係を申し上げますと、認定絵本士が一定程度の実務経験、これ3年という形で取り扱ってございますけども、3年間、認定絵本士として絵本の関係の業務を実施していただいた場合、認定を受けて絵本専門士になるというシステムがございます。
そういうシステムがあるんですが、実態としてどういう養成の状況になっているかということでございますが、人数は、次の資料の9ページに4,906名となってございまして、その上の資料のところで養成講座を開設していただいている大学、短大、専門学校を図で記載をしてございます。
従来、順調に受講生が伸びてきたんですけれども、直近、令和6年度ですけれども、徐々に伸び率が鈍化しているんじゃないかということになっておりまして、実際この講座を開設していただいている学部・学科の分野を見ますと、どうしても保育が多いというところがございますので、なかなか学生募集に苦慮しているところもございますので、認定絵本士の養成講座の定員充足率が一部では低い大学が見られるというところで、講座の受講生確保が課題になっているというのがございます。
そういった課題を踏まえまして、我々として今後10年間を見据えてどういう取組をしていくのかということをまとめたのが次の10ページの資料になります。大きく3つ柱を立てておりまして、1つ目が活動の充実ということで、地域の偏在性ということを申し上げましたけれども、できる限り絵本専門士同士のネットワークを構築していくとともに、いろんな関係団体とも連携をすることによって絵本専門士の活躍の場を増やしていこう、活動の充実につなげていこうと、これが1つ目の柱でございます。
次に、一定程度、10年間で養成してきましたけれども、やはりまだまだ地域のバランスからすると悪いものですから、さらに養成を進めていきたいということで、地域バランスも考えて養成していく。東京だけで養成講座を実施するというのは非常に厳しいところがございますので、東京圏とは別の地域での新たな養成講座ということで、これを開設していきたいと。これは別の地域と書いてありますけど、イメージとしては、関西圏、できれば大阪で実施をしていければと考えてございます。
あわせて、先ほど来いろいろ議論ありましたけれども、やはり時代にマッチしたような形の知識・技能を育成していく必要がありますので、併せてカリキュラム再編もやっていく必要があるだろうと思っています。
認定絵本士の受講生の確保ということを課題として申し上げましたけども、ここはやはり現役の学生さんを対象にして講座を開設すると、就職に有利という観点からいろんな講座を取っていただけるんですが、そもそも保育の学生さんが少ないということもあるものですから、社会人で子供を対象にした職業に就いておられる方で、やはり子供に対して絵本を使う必要のある職業の方にできれば受講していただければということで、社会人の積極的な受入れ。これをやっていくためにはやはりオンラインということも考えていかなければいけないだろうということで、そういった取組も進めていこうという形で、養成の充実ということを柱として立てております。
最後に、活動の充実を支えるためには、やっぱりいろんな仕組みを考えていかなければいけないんですけども、ネットワークをつくっていくためには、やはり絵本専門士の団体をつくって、いろんな団体とのマッチングをうまくやっていかなければいけないだろうと思っています。現状は、絵本専門士を使いたいという、そういう声があったときには、我々事務局のほうにお声をかけていただいて、そこでマッチングをやっているんですけれども、将来的には、絵本専門士の団体をつくった後は、絵本専門士の団体と図書館ですとか、出版とか、そういったいろんなところ、イベントをやっていただけるようなところと相互でマッチングをやっていただければより活動が広がっていくんじゃないかと考えてございます。
ですので、3番のところで、そういった活動を支える仕組みの構築、当然認知度を向上させるためのブランディングを含めて、ロゴマークをつくろうとしていますけども、そういったことも含めて進めていければと考えてございます。
最後、11ページは、今まで説明してきたことを1枚にまとめた資料を再掲という形で載せさせていただいてございまして、私ども、絵本専門士、引き続き養成を進めていくとともに、やはり活躍の場をしっかりつくっていく。そのためには、やはり図書館も含めたいろんな場と、いろんな方々と連携を進めていく必要があろうと思っておりますので、そういった観点から皆様方の御協力、御支援いただければ幸いだなと思ってございますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
簡単ではございますが、以上で説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【秋田座長】 伊藤理事、御説明をありがとうございました。御発表いただきました。
それでは、続きまして、次に松木委員から御発表いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【松木委員】 それでは、お手元の資料4、字が小さくて恐縮なんですが、ポイントを絞って御説明をさせていただきます。資料の概要、意義につきましては、お読みいただければと思います。
JPICという、これは一般財団、民間の団体でございますが、読書アドバイザーという形でやっていらっしゃる方たくさんおられると思いますが、我々はあくまでもJPIC読書アドバイザーという形でやらせていただいております。
平成5年3月に第1期をさせていただきました。おかげさまで1,200名という形で御応募をいただきまして、とてもリアルでそれだけの方々に対してできないということで、100名という形で開始をさせていただいております。
第1期が修了しまして、その後第2期をもう1回、同じ月にやるというぐらいに大変好調な滑り出しをさせていただいて、大変皆様の読書に関する意識が高いということを大変よく分かりました。
以降、第4期は東京・大阪でやらせていただいたり、また第6期は50名に絞ってやってみたりと、いろいろ試行錯誤しながら現在は100名という定員をもってやらせていただいております。
今まで、第32期を今日オープンしまして、今募集をかけたところですけども、おかげさまで一度も100名を割ることなく、大体倍近くお申込みいただいて、大変恐縮なんですが、そこから100名に絞らせていただいているという状況です。
本が好き、読書が好きという共通項を持つ方々が、年齢、性別、地域、職業を問わずに集まる。それも実際に集まってというのが我々の大きなポイントだと思っております。学びの場というのもありますけども、やはり交流の場ということで、そこでお互いに意見を交わし合うということが大事ということを考えております。
過去にはウェブということもやりました。もちろんコロナ禍ではウェブの対応をいたしましたが、やはり現在は、毎期、スクーリングをしっかりさせていただいております。
現在、4回、8日間、2日ずつやりますので、1年かけてやらせていただいております。
31期の講義の内容が次についてございます。32期も少し講師の方々を替えてやらせていただいておりますが、31期はこのようになっております。有識者会議に御出席の方にも長年講師をお願いしております。
御覧いただきますように、ただ、読書、読み聞かせということではなく、出版の基本的に全てに対してのアプローチをさせていただくことになります。編集から印刷、そして流通、古書、図書館もさせていただきますし、読書推進ということも含めて様々な勉強をしていただくということを目標とさせていただいております。
講義内容が充実しているということで、大変面白かったというお話を受講生からは伺うことが大変多くあります。
次の3ページが、先ほどの絵本専門士の御説明と同じように、私どももやはり職業や年齢、地域は近いものがございます。どうしても40代、50代、60代、お子様の手が離れた女性の方が多いというのが現状であります。
そして特に多いのが図書館司書の方、司書を持っているので、じゃあJPIC読書アドバイザーも取ってみようかということで来られる方々が非常に多くあります。その中でも最近はやっぱり大学生の方が取られるということも増えてきております。
地域別も、先ほどのお話と同じように、東京で26.5%というところになりますが、おかげさまで北海道から沖縄まで皆様来ていただいているという状況ではあります。本当に大変ありがたいことだと思っております。
次のページで、活動の事例ですが、これが課題とも関係いたしますけども、基本的に先ほどと同じ個人の活動になります。特に我々は一般財団で民間ですので、5万8,000円という受講料を自分で払い、遠い方は交通費を払い、宿泊費を払いという形で来られます。読書推進人材ということで言っていただいて本当にありがたいんですけども、やはりそれを強制することがなかなか難しい。あなた方は読書推進人材ですからこういうことをしてくださいということを言うことがなかなか難しいというのがありまして、把握・管理をしっかりとしているものではありませんし、そういうことをしていいかどうかということも悩んでおります。
ただ、先ほども御紹介いただきました、有志がJRACという読書アドバイザークラブをつくっておりまして、現在600名、この方々は日常的に活動されております。
ただ、これは、私どもとしても、公認をして、そこに資金を提供しているわけではありません。皆様が自分たちで会費を払いながらやっておられます。サポートはもちろんさせていただいておりますけれども、そこに対しても何らか強制をしてやるということはなかなか難しいという状況です。
もちろん我々からのいろんな依頼に対しては非常に積極的に取り組んでいただいております。私どものほうでは幾つかの事務局で様々な審査をやる必要があります。その第1次審査、第2次審査等には必ずJPIC読書アドバイザーの方々に御参加いただいているという状況であります。
活躍に向けた課題、先ほども申し上げました自費での資格取得というところで現在3,000名が卒業生としておりますけども、30年やっておりますので、既に御連絡先がなくなっている、もしくは現在のようにメールというものがありませんので、現状は本当に活動している方々同士がつながっているという中で、JPICのほうでその方々を全て把握できていないという状況があります。
もちろん同じ期の修了生同士はずっと何十年も一緒に活動されたり、また同じ地区でも活動をずっとされている方々は本当に地域に根差してやっておられますが、私どもがしっかりとそれをサポートできてない、イコール把握ができてないというのが現状かと思っております。
最後のページになりますけども、人材育成に対する課題ですが、1年かけて様々な勉強をしていただきます。先ほどの絵本専門士の方と同じですけども、読書推進とか出版界は本当に状況が大きく変わっていますので、やはり定期的に学び直しをしていただくという必要はありますが、先ほども言いましたように、じゃあ、また自費で来てくださいということはなかなか難しいという状況があります。
現在いろいろと考えましたが、テキストを電子化いたしました。そうしませんと、印刷したものがなくなると学び直したいという卒業生にテキストも渡せないという状況がありましたので、電子化することでオンデマンド印刷する、もしくは電子で見ていただくことでリスキリングにも対応できるようにはしております。
ただ、やっぱりそれでも不足はしておりますので、現在は書店員様も含めて「eラーニング」の開発を進めております。そこに読書アドバイザー養成講座の講義も一部取り込みながら何かできないかとは考えております。
いずれにしましても、一度、何かのきっかけ、それが今回のようなものかもしれませんが、きっかけを持ってもう一度、JPIC読書アドバイザーの卒業生をつなぎ直して、何らかのネットワーク、それから絵本専門士さんや認定絵本士さんともつながっていくということができればありがたいと思っております。
そのためにどのようなきっかけを持てるかというところでは、勝手ではありますけども、民間のものではありますが、文部科学省推奨とか、そういった名前でもいただければ、それをもう一度皆さんに御連絡して、一度登録をし直していただくようなこともできないかと考えております。
いずれにしましても、本当に読書推進人材として有用な方々がたくさんおられますが、民間という部分での動きのできない部分もありますので、その辺について何か御意見をいただければありがたいと思います。
以上です。
【秋田座長】 松木委員、どうもありがとうございました。
それでは、これからは意見交換の時間とさせていただきます。まずはお二方からの御発表に対する御質問の時間を、先に質問だけさせていただき、その後、御発表やそれから論点案に基づく御意見についても御自由に御発表をいただければと考えております。
まずは、お二方の御発表への御質問というところで、お手元のタブレットからアイコンを押していただけますでしょうか。いかがでございますでしょうか。
ありがとうございます。植村委員、お願いをいたします。
【植村委員】 ありがとうございます。絵本専門士にしろ、読書アドバイザーにしろ、今ほどの発表を聞くと、2割を超えた人たちが実は図書館関係者、司書、学校司書の方だということが分かりました。また絵本専門士として活躍している事例が司書の方であるならば、職場の理解が必要かと思いますが、自分の勤め先の図書館で活動していることもあると受け取りました。それでは図書館の知識がない、司書資格がない人の絵本専門士なり読書アドバイザーなりが、活躍の場を図書館に求めていくには、図書館側としてはどのような対応なり、準備をしてもらったらよいでしょうか。希望とか要望があれば教えていただきたいと思います。
【秋田座長】 どうもありがとうございます。それでは、せっかくですので、この点につきまして、伊藤理事と松木委員からそれぞれ御発言いただければと思います。
伊藤理事、お願いします。
【伊藤理事】 御質問ありがとうございます。やはり図書館と関係がない絵本専門士にとってみれば、図書館でどういう読み聞かせのイベントがあるのかどうかというところの情報をまずは入手しないと絵本専門士からのアプローチというのはなかなか難しいのではないかと思います。
ですので、その辺りの情報共有をうまく、これもマッチングなんですけども、マッチングをどういうふうにうまくやれるのかというのが1つの大きな論点になってくるのではなかろうかと考えております。
あわせて、絵本専門士というのは専門性が高いということは、絵本専門士という資格を御存じの方は理解をしていただいているんですけれども、なかなか一般の方にはまだ知名度がないということもありまして、絵本専門士が実施をするイベントだとか、そういうアナウンスの仕方、広報の仕方、プロモーション、こういったところも必要になってくるのかなと思っておりまして、我々、先ほどロゴマークというふうにお話ししましたけども、絵本専門士が読み聞かせをやるイベントですというようなアナウンスを図書館でもやっていただけると、そうすると絵本専門士の認知度が高まり、ブランディング化につながっていき、また、それがひいては活躍の場の確保につながっていくのかなと思っておりますので、なかなか図書館側の絵本専門士の認知度ってどれぐらいなのかちょっと私も存じ上げませんけれど、やはりそういったところを情報共有しながら、うまくマッチングしていくようなシステムをうまく作っていくというのが1つの大きな改善策ではないかなと思ってございます。
以上です。
【秋田座長】 ありがとうございます。それでは、松木委員、いかがでしょうか。
【松木委員】 本当に今御指摘のとおりで、どうしてもやっぱり学校図書館、それから公共図書館、やっぱり司書という資格を持っているということが大きなポイントになろうかと思います。どうしてもそうすると司書の資格を持っていない読書アドバイザーはボランティアの1名、それも個人ではなく文庫の会の中の1名ということで、なかなか読書アドバイザーとして勉強したことが十分に生かされない。もちろんそこに専門性のある方がそこから先にはなかなか受け入れていただけないという現状はあるかもしれませんが、もし許されるのであれば、ボランティアではあるんですけど、もう一つ先の連携ができないか。もちろん貸出し、返却をするわけにいかないんですけども、何らかの棚の一緒にメンテナンスだったり選書だったりを御一緒させていただくとか、少しそういったことを考えていただけるような図書館や学校図書館があれば、JPIC読書アドバイザーですと言えば、そういうところまで一緒にお話をしていただけるように、もちろんそうなれば我々ももう一度ちゃんとしたリカレント教育をしなきゃいけないかもしれませんけども、そういったところまで少し見ていただけるともっと活躍ができるのではないかと思います。
【秋田座長】 ありがとうございます。植村委員、よろしゅうございますでしょうか。
【植村委員】 ありがとうございます。
【秋田座長】 それでは、ほかに御質問はございますでしょうか。
特に御質問がなければ、自由に御意見を、今のお二人の御発表とそれからその前にございました案なども踏まえて御意見を自由にいただけたらと思います。どなたからでも結構です。
【秋田座長】 高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】 よく自分が分からない分野の話だったので非常に興味深く聞かせていただきました。
質問が2つあるんですけど、絵本専門士のほうの質問で、活動の例として、学校の図書館司書、大阪の方が、幼稚園とか高齢者とか大人の方々へということなんですけど、幼稚園とか公共図書館とか高齢者は大体こういう場でこういうことなさるんだろうなと想像できるんですけど、大人の方々への絵本の読み聞かせというところがちょっと自分では想像できないので、ちょっと具体的な事例がお分かりでしたらお話ししていただきたいのが1点と、それから、読書アドバイザーのほうですけども、御存じのとおり、公共図書館というのは会計年度任用職員の方が結構多く働いていらして、時々何らかの事情で欠員がぱっと出たときに、人どうするみたいな話になったりもするんですけど、そういうときに、この資格ありますよというのをどこか登録しておけば、この人に聞けばやってもらえるみたいな、何かそういう取組とか、そういう事例みたいなのがあるのかというのをちょっと教えてほしいんですが。
【秋田座長】 ありがとうございます。高橋委員からのまずこれは御質問でございますので、それぞれ御回答いただければと思います。
それでは、伊藤理事、いかがでしょうか。
【伊藤理事】 すいません。具体的にちょっと大人を対象にした読み聞かせってどういうふうにやっているのか、これ以上詳細な情報があるわけではないんですけれども、私が聞いている限りでは、親子だけではなくて大人だけを対象にした読み聞かせをやっていて、大人も小さい頃に読んだ絵本の記憶が残っているわけで、そういったものも思い出しながら、絵本の読み聞かせを聞いたり、場合によっては体験するということで効果があるという話を聞いたことがありまして、恐らく事例としては数がそんなに多くないんだろうなとは思いますけれども、子供を対象にしたというイベントというイメージが強いんですが、必ずしもそうではなくて、成人、高齢者も含めて、絵本というのは意義があるということで、そういった取組も幅を広げて実施していければなと思います。
すいません、あまり答えになっていなくて恐縮です。
【秋田座長】 ありがとうございました。
【高橋委員】 前、NHKの朝の番組で、大人の方に絵本が今ブームになっていて、大人の方ってお金を持っているので、今おっしゃったような昔読んだものを、シリーズだったら箱買いしてやっている人がいるとかというので、そういう人がいるのであれば、そういう文化背景みたいなのを使ってうまくやっていけば何かニーズがあるのかなあなんて思ったりして、聞きました。すいません。ありがとうございます。
【伊藤理事】 ありがとうございます。多分おっしゃるとおり、そういう事例があるので、これは恐らく絵本専門士だけで活動しているとそういったニーズにたどり着けなくて、例えば子供の頃に読んだ絵本をリニューアルして、また出版するとなれば、書店ですとか、あと出版社とも連動しながら、イベントを実施していく。そこの中に絵本専門士が関わっていくというような活躍の場の広げ方だろうと思いますので、いずれにしてもやはり関係団体との連携、マッチング、これが大事になってくるかなと思います。
【秋田座長】 ありがとうございます。それでは、松木委員、いかがでございますでしょうか。
【松木委員】 今お話しいただいたところが十分にできてないというのが先ほどのお話の中にも出ていましたが、実際に読み聞かせをやりたいという場合に、私どものほうにお問合せいただいて、その地区の読書アドバイザーをお探ししておつなぎするということはやっておりますが、就職の支援まではしてないという状況がございます。そういったニーズがあるのであれば、先ほどのようにちゃんとつなぎ直した上で、もちろんもう既に就労されている方もたくさんおられますので、ぴったりいくかどうかは分かりませんけども、何かできることがあれば考えてはいきたいと思います。
以上です。
【秋田座長】 ありがとうございます。
【高橋委員】 学校だと、今、御存じのとおり、非常勤講師の数がすごく足りなくて、校長協会とか教育委員会で教科毎のリストを作成している場合があって、いざ欠員が出たときに、この人に連絡をとってみようという簡便な人材バンクのように活用するケースもあります。各地域でニーズが多くないにしろ、そういう情報があると、いざとなったときに図書館側も助かるかもしれないと思いました。
以上です。
【秋田座長】 ありがとうございます。人材バンク的なものが活用できて、マッチングがうまくできればと思います。
それでは、これから御意見ということで、野口委員からお願いいたします。
【野口委員】 野口です。ここまでの御意見とかやり取りを伺っていて、図書館と書店の連携も重要な課題になっていますので、絵本専門士であるとか、JPIC読書アドバイザーなどがそういった連携に関わって、地域の読書活動、一緒に盛り上げていくような活躍の可能性を秘めていると感じました。
私からは情報提供ということで、委員の皆様には机上配付の資料を準備していただいておりますので、そちらを御覧ください。「読書バリアフリーサポーター養成講座」を御紹介したいと思います。
こちらの講座ですけれども、公益財団法人文字・活字文化推進機構が昨年度から始めた事業でして、そのモデルになっているものが、まさに御発表いただきました絵本専門士とか、JPIC読書アドバイザーの養成講座などです。この講座は、現在、読書バリアフリーのニーズが非常に高まっている一方で、読書バリアフリーについて体系的・系統的に学べる機会が十分に整備されているとは言い難い状況がある中で、図書館の司書の皆さん方、書店や出版社で勤務されている方、さらには、ボランティアの方であるとか、読書バリアフリーに関心のある方々に受講していただける機会を作ろうということで始まったものになります。
全部で4日程ありまして、全国から受講していただけるように、4日程のうち最終日程以外はオンラインで受講することが可能になっております。
最終日程だけは、サポートの方法等を扱うということもありまして、会場に参加をしていただくという形で開いております。
受講料につきましては、昨年度は助成を得たことで無料で開講しております。今年度の第2期受講生の募集も既に始まっているのですけれども、今年度につきましても無料で開講することになっております。
第1期は、大変多くの方々に関心を持っていただきまして、200人近い方に応募いただきました。全員に受講していただきたかったのですが、講師の関係であるとか、あるいは最終日の会場の関係等もございまして、30人ちょっとに受講者を絞らせていただきました。
資料の2枚目のほうには第1期のカリキュラムが掲載されています。
第1回目が概論的な話、2回目、3回目は図書館の種類ごとの取組状況であるとか、出版社、書店での取組についての内容、そして最終回は対面でサポート方法について当事者のお話なども伺いながら学ぶ。このような内容で開講をしております。
今後に向けてなんですけれども、講座の修了生には、図書館に限らず、地域のいろんなところで読書バリアフリーの推進を支え広げていただきたいと思っています。やはり活躍の場を広げていくことが大切になってくるかなと考えております。また修了した人たち同士の横のつながりを今後、2期、3期と続けていったときに、どう確保していくのかも今から検討を始めている状況です。
私からは以上になります。
【秋田座長】 野口委員、どうもありがとうございます。読書バリアフリーの人材について、サポーターの講座についてお話しいただきました。
それでは、続きまして、紀之定委員、お願いいたします。
【紀之定委員】 先ほどの絵本専門士将来ビジョンのところで活躍の場をということをおっしゃっていて、そのときに思ったんですけども、今勤務している地域では以前、保育所、幼稚園、小学校、中学校のほうに文庫連の方々が一年に一度おはなしキャラバンとして読み聞かせに来てくださっていました。でも希望が多過ぎて、中学校のほうは来てくれないということになって随分経つのですけれども、来て下さっているときは、ろうそくを立ててお話の世界に集中でき、読み聞かせだけではなくてブックトークやストーリーテリング等、また学校司書さんとは違う専門性を感じ、子どもたちは楽しみにしていました。しばらく教室のほうにその本を置いてくださり、生徒のほうも、その本を手に取ってまねて読み聞かせしたりとか、いろいろな本を手に取り集まったりしていました。そういったことも思い出して学校のほうに来ていただければなと感じたりしました。
また、来てくださることが少なくなってから、代わりに図書委員が読み聞かせとかをしているんですけれども、地域の介護施設のほうに図書委員が読み聞かせに出かけたりしました。介護施設の方々がすごく喜んでくれて、一緒に昔話をしたり、童謡を中学生に教えてくれたりとか、そうして地域の方々と本を介して触れ合う時間を過ごしたんですけれども、そういうこともまたもしできればと思ったりしました。
以上です。
【秋田座長】 紀之定委員、どうもありがとうございます。学校の具体的体験をお話しいただきました。
それでは、植村委員、お願いいたします。
【植村委員】 植村です。読書アドバイザー養成講座に講師として関わらせていただいていますが、読者を育てていくことは重要な仕事だと思います。野口先生と共同研究で、離島のように読書環境の厳しいところの調査に行っております。ある島で町立図書館と学校図書館が非常によく連携していて、子供たちの保護者の方が10年たってもボランティアとして学校図書館で読み聞かせをしていました。何で機能しているのか調べてみると、小さな島ですが学校司書が常勤なんですね。町としても熱心に取り組んでいました。ボランティアが活躍できる環境というのは、学校司書がしっかり常勤でいるということが前提だと思うところです。
今回の読書推進人材をいかに活用するかというと、司書教諭・学校司書・司書の配置充実というのがあってうまくいくのだと思います。一方、現場で司書がすごく忙しく、読書活動を行えないようなときに、読書推進人材を代替とさせていくようなことにはなっていただきたくないと思います。現場で都合よく捉えて、絵本専門士がいるのなら学校司書がいないときに代わりに行ってもらおうか、みたいな事態になりかねないという懸念を持ちました。ここはぜひ司書・司書教諭・学校司書を充実して、だからこそ読書推進人材が活かせるのだという視点で今後進めていただきたいと思います。
【秋田座長】 ありがとうございます。とても重要な点を挙げていただきました。やっぱり専任の司書であったり、それから司書教諭や学校司書が活躍して読書推進人材を生かしていくということの必要性をお話しいただきました。
それでは、続きまして、小林委員、お願いをいたします。
【小林委員】 今の植村委員の意見と大きく重なると思うんですけども、重ねてお話しさせてもらいたいと思いますが、やっぱりこれまでの公的サービス、学校図書館や公共図書館等がやってきたサービスが十分に及ばない部分といいますか、館外であったりとか、校外であったりとか、そういうところで読書推進を進めていくというアウトリーチの部分では非常に連携していくということが有効に働くんじゃないかなと思います。
また、学校の中、あるいは公共図書館の中で活躍の場をつくっていくということになりますと、先ほどマッチングという話もありましたけども、そこに絵を描く人間がやっぱりいなきゃいけないと思います。学校全体の中で読書推進をどう進めていくのか、地域全体の中で読書推進をどう進めていくのかという絵を描くのはやはり学校図書館の司書教諭であったり、公共図書館の司書であったりであるべきであろうと思いますので、活躍の場を求めていくということになると、またそれが逆にそういう本来あるべきところにきちんとした人員が配置される。そこに処遇がちゃんと認められていて、活躍する場がある。さらにそれをサポートしていただく読書推進の人材の方々がいるという、そういう環境が整った中でうまくマッチングが進んでいくんだろうなと思いますので、重ねてになりますけども、同じような意見ですが、発言させてもらいます。
【秋田座長】 小林委員、ありがとうございます。きちんとした配置と処遇があって、その専任が絵を描いてデザインしながらうまく活用は、いろんなリソースを使えるようにという御意見でございました。
ほかにはいかがでございますでしょうか。
設楽委員のほうから資料が出ております。
【設楽委員】 それでは、私のほうから本日の論点案の中で、学校図書館に関する部分についてお話しさせていただきます。お手元にあります設楽の配布資料「図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議(第4回)」をご覧ください。最初の「読書推進人材に期待される役割」では、教育的な観点から見た効果についてお話しさせていただきます。
令和の日本型学校教育が目指す個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図るには、互いに学びあう学習活動ができる「自立した学習者」と言葉や文章を的確に読み解く力を備えた「自立した読者」の育成が大切だと捉えました。そのためには、教育課程を具現化する教師、読書活動の専門的知識を有する者、そういう人たちが協働で働ける、環境の整備が課題だと捉えています。
2つ目の「地域まちづくり推進において読書推進人材に期待される役割」としては、幼年期の子どもたちには、読書の楽しさや喜び・充実感などを一人一人の発達段階であるとか興味や関心に対応して、読み聞かせであるとか、適切な図書、適書を推薦できるような人材が必要だと考えています。
加えて、小学校高学年以上の子供に対しては、知る喜びであるとか知識への探究心などを駆り立てるような、そういう支援ができる人材も必要だと捉えています。
次の、「その他図書館・学校図書館において読書推進人材に期待する役割」としては、繰り返しになりますが、知る喜びと学ぶ楽しさ、これは読書推進の基本だと捉えています。図書館での読書推進は、生涯学習の視点による豊かな情操であるとか健全な教養を育成すると捉えることができます。加えて、学校図書館では教育課程の展開に寄与するということが強く求められています。教育課程の展開では、読書の楽しさや喜びに加えて、読解力であるとか、語彙力・表現力の向上、そして、さらに情報をうのみにせずに各自の批判的思考力の涵養を目指すことができる読書推進人材が必要だと考えております。
次に、「読書推進人材の活躍の機会の拡大に向けた課題と方策等」についてです。生涯学習社会では、やはり一人一人が読書を通じて喜びであるとか楽しさの世界を満喫できるように読書に関する専門家の養成が喫緊の課題だと捉えています。学校では、読書の喜びや楽しさに加えて、先ほども申し上げたとおり、言葉であるとか文章の内容を論理的に読み解くための読解力・語彙力の指導と、自らの考えを明確に伝えることができる表現力などの指導、そして多様な情報をうのみにしない批判的思考力の涵養、こういうものが欠かせないと捉えています。
このように読書の喜びや楽しさを基盤として、批判的思考力を育むための手だてが課題だと捉えております。
更に、「図書館や学校図書館が読書推進人材を読書活動に参加させる際の課題と対応策」は、多くの学校では読み聞かせなどのボランティア組織があります。先ほどもボランティアの大切さが示されていましたが、地域の人材活用に際して、やはり個人情報の保護が大きな課題です。学校で知り得た情報を口外しないなどのルールを明確にすることによって、その後のトラブルを回避するための方策が重要だと捉えております。その点も踏まえてボランティア組織をつくっていくということが大切だと思います。
最後に、「地域における多様な読書推進人材の連携促進」についてです。読書推進には幼年期からの読書に親しむ活動が効果的であるということは御承知のとおりです。読み聞かせなどを中心とした読書の楽しみを味わわせる活動が欠かせません。このとき、児童の実態を踏まえて、学校側の要請に応えた活動ができるようなコーディネーター役の人材育成が大切だと考えております。こうしたコーディネーターにより、その役割分担を明確にすることが読書推進活動を効果的に進められるのではないかと考えています。
【秋田座長】 ありがとうございます。設楽委員から学校図書館に関連して、論点について、それぞれについて御意見を賜りました。
ほかにはいかがでございますでしょうか。
高橋委員、お願いをいたします。
【高橋委員】 今、設楽先生のお話を聞いていて、私はもともと高校の教員なので、学校のことを考えました。今のお話の中で、まず発達段階をしっかり押さえようという話や知る喜びや未知への探求心であるとか、そういったことは本当に同感です。しかし、とかくそういうことになると、学校も図書館も文科省も、何かを提示しようとか、何かを与えようとか、サプライ・アンド・ディマンドと言いますけど、サプライのほうに目が行ってしまいがちです。人間って本当に喜びを知るのはディマンドのほうで、自分が要求したものにぴったり合うものを自分で発見すると、この上ない喜びが出てくると思うんですよね。だから、サプライの視点から、これどうですか、あれどうですか、こういうのいいですよねというのと同時に、利用者側、つまり生徒のディマンド力を高めるような取組もできないのかなというのは昔から思っています。例えば、4月になると学校図書館で学校図書館ガイダンスといって、国語の時間などを使って、クラス毎にどんどんどんどん進めていくことが多いと思います。そこで何をやるかというと、使い方とか、注意事項とか、どんな本があるかというのを説明したり、実際に見て回ったりします。それはツールとして図書館を使うということに関する情報のサプライですよね。使い方とか、ツールとして与えられるものの説明をしているわけですけど、例えばその後で、「じゃあ、本は類別で並んでいるので、自分で今から自由に書棚を見て廻って、あまり考え過ぎずこれ面白そうだなというのを手に取って見てみよう。」と指示してみてはどうでしょう。ひょっとしたら自分はこんな領域の本が好きな人間なんだということが発見できるかもしれないということを伝え、ふだんは見ないような部類の本でも、手に取って見たら面白かったみたいな発見が仮にあったとすれば、自分はこういう人間なんだという、セルフエスティームや自己理解や成長につながっていくと思うんですね。
だから、図書館をツールとして使うのはもちろんですけど、自己形成とか成長のプロセスを担う場として使うみたいな、何かそういう視点もあっていいのかなあと普段から思っています。
日頃我々は意識せずにスマホを見て自分で情報を調べているつもりですけど、あれはアルゴリズムで、この人はこのような情報が好きだなというのをどんどん提供されています。僕はスポティファイで音楽を聞いているんですけど、やっぱりあれもアルゴリズムで、この人はこういうの好きなんだなというのが、あなたのためのミックスリストという形で出てきます。そういうサプライ、サプライ、サプライで圧倒されているみたいな生活を送っているので、ちょっと立ち止まって、減速して、自分ってどういう人間なんだろうというようなところを振り返るような視点で、読書活動とか、読書指導ができていくといいかなというのは最近特に思っています。
以上です。
【秋田座長】 高橋委員、ありがとうございます。大人の側からのサプライという、何を子供のための推進として与えようかという発展だけではなくて、もう一度学習者とか生徒側からの要求というか、読みたいというところでの要求にどう応えていくのか、そのためにはそれをどう喚起していくのか、自己成長のためにどうやっていくのかというようなところの大きな問いを投げかけていただきました。そういう意味では本当は大人側の議論だけじゃなくて、児童・生徒側は何を読書に求めているのかということは一度聞いてみたいと思うところではございます。
ほかにはいかがでございますでしょうか。奈須副座長、お願いします。
【奈須副座長】 ありがとうございます。今ほどの設楽先生の御議論とか、冒頭の紀之定先生の御指摘を伺っていると、結局、図書館を通して、司書の先生とか、司書教諭の先生とか、あるいは今日話題になった読書推進人材のサポートを得て、子供たちが読書に親しみとか、読書の喜びとか、さらにそこから知る喜びとか学ぶ喜びというところに行くという話、あるいは読解力とか、情報を批判的に見るとかという話。
ただ、そういう話を巡っては、図書館とか読書というだけじゃなくて、国語科の主要な任務ですよね。紀之定先生が冒頭に言われた、国語の時間と図書というのがやっぱり有機的に結びついて、そこで司書もそうだし、司書教諭もそうだし、今日のもう一つ外側にいる推進人材の皆さんの活躍の場というのを考えていかなきゃいけないだろうと思うんですね。
だから、どうもこれ日本の教育課程全体が常にそうなんだけど、教科の学習が何か閉じてしまって、いろんなものに対して、これは今日の話題だけじゃなくてほかの教科でもよくあることだと思うんですけど、教科書をベースに閉じてしまっていて、いろんな可能性があるのに、そこが開かれて行きにくいということがあるんだろうと思うんですけど、とりわけ、今日のこの言語とか、読書とか、情報と付き合うということを考えると、国語科の教育課程とか指導というのが、学校図書館という場を利用して、教師以外の多様な人材とか専門性を持つスタッフとの関係で鍛えられていくということがすごく大事。要するに、チームとして、言語とか読書とかに関わる学びをサポートするチームとして動くということが多分すごく大事です。これ、司書とか司書教諭をめぐる議論ではもう既にやられてきたことだと思うんですけど、さらに今日は外側の話ですね。外側でそういうことをやってくださる可能性のある、しかも多様でカラフルな民間も含めた人材が今存在しているということだけども、それが学校ベースの教育課程にはなかなか入ってこないし視野にも入っていないと。そこをどうつなぐかという話だと思うんですよね。
だから、1つの可能性としては、それ多分先進事例はあると思うんですね。教育課程、国語科だけじゃなくて、広い意味での言語として。これは指導要領でも、言語活動の充実ということを前から言ってきましたし、今は総則のところに学習の基盤となる教科等横断的な資質・能力として、言語能力と情報活用能力が2つ並んでいるわけですから、これまさに図書館や学校図書館、あるいはそれに関わる専門をお持ちの皆さんが強力にサポートしてくれる、教師がみんなできるわけではないので。そこのスキームを何かの形でこういうところで打ち出していけないかなあと、むしろ学校の教育課程に関わる立場として今日とても思っていました。やっていただいたほうがいいなと。そういうことを図書館・学校図書館のご関係の皆さんから御提案いただいて、どんどんいい意味で踏み込んでいただいたほうがいいなと。
だから、結局そういうことが視野に入ってないので、結果的にガードしちゃっている。ガードしているから、みなさんもそこに踏み込んでいけない。司書や司書教諭の方は学校の中の方なのでまだしも、今日の話は、もう一つ外部にいる人たちなので、それは自分から手を挙げて踏み込むということはもちろんできなくて、呼んでくれるのを待っているということですよね。だから、そこを教育課程の少し周辺部分の図書館の話としてやっていくのでは、やはり足りなくてというか、活躍の場をこれ以上拡大はなかなか難しくて、教育課程、具体的には国語科を中心にした言語教育、先ほど設楽先生がおっしゃったような、こういう課題を担っていく1つの場として図書館・学校図書館というのを位置づけるような議論が必要なのかなと思いますし、そういう好事例を打ち出していくということはしたらいいんじゃないのかなと。そうすると、こんなことができるんだったらやってみようという学校や、あるいはそれに向かって、司書教諭が校長に働きかけたり教育委員会に働きかけたりしていろんな動きがいろんな地域で出てくる、そういう動きが出るとまた活性化する、何かそういうきっかけづくりとしての情報発信があるといいなと。多分これは秋田先生がお詳しいんだと思いますけど、あると思うんですよね、きっとね。そんなこと思っていました。
【秋田座長】 ありがとうございます。教育課程の側から、今度はその教育課程とそれをサポートする人材をどう組み込むようなチームをつくって、それをデザインしていくのかというようなところが学校のほうで必要になりますでしょうし、もう一方で社会教育士とか社会教育のほうでも絵本専門士などはそこのまちづくりに関わるような図柄を文科省のほうが今委託で動き出していると思いますので、そういう両面で生涯学び続けるというところをどうサポートするのかという議論が必要になるのかなと今伺っていて思いました。ありがとうございます。
それでは、松木委員、お願いいたします。
【松木委員】 今副座長がおっしゃったとおりかと思います。今、私どもと御一緒している団体のほうで、各地域の学校さんと相談しながら読書の時間というのを取らせていただいて、国語の時間を少しいただきながら、やらせていただいております。結構いろんなところでやってほしいというお話もいただいて、かなり大変だということで、あちこち飛び回っておられますが、そんなところからもし今後拡大されるようであれば、読書アドバイザーをその中で、講師といいますか、そういったところに一緒にできないかというようなお話もいただいています。なかなか厳しい教育課程の中に入れていくのは難しいんでしょうけど、これは出版界の代表、代表ではないですね、出版界から出ている人間として言わせていただくと、ぜひ読書の時間をつくっていただくことで、様々な部分で、書店においても図書館においても読者が育っていくという部分においては、ぜひこれは御検討いただきたいというところは、どちらに向かって言えばいいか分かりませんけども、今お話を伺って本当にそのとおりだなと思いました。
以上です。
【奈須副座長】 国語科の中にある枠をつくるという発想はあまりよくないと思っているんですよ。そうすると結局また国語科の中が分断するだけなので、そうじゃなくて、設楽先生の今日の御提案が本当にそうなんだけど、読書というのは本を読むことだけじゃなくて、そこから知識だとか、学ぶだとか、知るだとか、自分を広げるだとかということにつながってくると。それはまさに国語科の任務だと思いますし、そういった国語科の任務全体に、どこかの場所ではなくて全体に薄く関わってくるような、逆に言うと、学校図書館や読書推進に関わる専門家の皆さんがどんな貢献ができるのかというのを国語科のカリキュラム全体の中でもう一度見直したほうがいいんだと個人的には思いますね。そういった議論を国語科でしているのかな。
だから、結局、国語科の全体の教育課程の中で図書、読書というのが1つの領域になっているからかえってまずいんだと思います。領域にしていただければ、そこの中で私たちは考えるということで、御専門の立場では考えやすいんだと思うんだけど、するとその枠の中でしか考えられないので、設楽先生が書いたような絵には広がっていかないですよね。何かその辺が、日本の教育だと全部とにかく縦割りになっちゃっているんですよ。教科も縦割りになっているし、教科の中の領域も縦割りになっている。そこを外に向かって横断的にというか、子供の能力というのはそういうものだという認識で教育課程の議論はしているので、学校図書館の任務というのも、図書の時間、読書の時間ということだけではなくてという踏み込み方を、もう既にやっていらっしゃると思うんですけど、もっとそれを一般的にみんながそう思うように戦略的にしていくにはどうすればいいかということがまた考えられればいいなと思って申し上げました。
【秋田座長】 ありがとうございます。この辺りをまた議論できるといいなと思います。どうしても読書の時間を設けるというだけだと、時数の奪い合いということが起こるので、そうじゃなくて、広く、いろいろな言語力の育成であったり、そんなところとつながるのかなと思います。ありがとうございます。
堀川委員、お願いいたします。
【堀川副座長】 学校図書館の立場からは、奈須先生がおっしゃったとおりなんですね。学習指導要領が教科別になっていますので、縦割りで、だから学校図書館のことについてなかなか触れられないというか、資料、情報を蓄積しましょうとか使いましょうというのはあるんですが、じゃあそれは誰が準備をして、誰が提供して、どのように関わることができるのかというのがなかなか見えないんです。でも、学校図書館の現場では教科横断的な視点を持っているというのが学校図書館ですので、それはどの学年にも、そしてどの教科にも資料を提供しますので、教科横断的、俯瞰的、あるいは子供たちの発達段階的な視点を持っているんです。なかなか伝わらないんですが。
それで、言語活動だけではなくて、教科の学びを豊かにするとか、例えばリーフレットを作るという授業の中で、学校司書がリーフレットを、いろんな観光のものもありますし、行政の報告書とかPRとかっていろんなリーフレットがあります。それを学校司書が集めて、授業の中で使う。先生に相談をして集めるんですが、それを提供して、子供たちがグループごとにそのリーフレットを使って、このリーフレットの分析をするんですね。字の大きさはどうかとか、色はどうかとか、レイアウトはどうかとか、写真を使っているとか、イラストかというような、そうした気づきを班の中でまず発表して、それから班ごとにクラス全体でそれを共有して、そうしたリーフレットってどういうものがいいのかというか、どういうものがあるのかという分析をした後で、自分で調べたことをリーフレットにまとめるというような活動をすると、それをしなかった、分析をしなかったときと比べて全然雲泥の差でいいものができる。
そうしたリーフレットを集めるというのは先生方が一人一人やっていてはとても大変なので、そうしたものを、材料を集める資料を提供するのが学校図書館、学校司書なんですね。もちろんそうした授業を展開できますよとか、こういうところで資料や情報を使いますよということを司書教諭が先生方にいろいろ情報提供して、そして今までもこういうことができましたよなど。先ほど奈須先生が国語の教科書の中でとおっしゃいましたけど、今、情報というところがありますね。それができる前から、司書教諭は、何年生の何の教科のどの時間にこういう資料が使えるとか、情報スキルはこういうスキルをここで教えることができると。小学校6年間、中学校3年間を通して、初歩の段階からだんだんに細かくスキルを教えていく。それをやはり計画的、発達段階的な、そうした学校全体の情報活用の指導の年間計画をつくる。それを今一生懸命やっているところなんですが、なかなか司書教諭の研修がというか、司書教諭がいらっしゃらないところもあって、全国で一斉にやっているというわけではまだないんですが、そうした学校図書館の機能をきちんと伝えることができるといいなと思っています。
話がちょっと違いますけど、学校図書館の手引が、そのための手引が作られるといいなとは思っていますけれど、学校図書館のそうした動きがなかなか伝わりにくい状況で、今日聞いていただけたのがよかったと思いますが、これからも検討をお願いいたします。
【秋田座長】 ありがとうございます。だんだん学校図書館にもデジタル化が進むところが起こってくるでしょうから、その辺りと兼ね合わせながら、司書教諭や学校司書の方がそういうデジタルの学習基盤ともつながって、いろいろ理解をして推進をしていただけるとまたよろしいのではないかとも思います。
ほかには御意見はいかがでございますでしょうか。今日はこの辺りで御意見よろしゅうございますでしょうか。
そうしましたら、もしもう少し後で気づいたというようなことがございましたら、事務局までメールで追加の意見がございましたらお送りいただけましたらと思います。
それでは、今日は、もう一つ、議題のその他というのがございまして、曽木議員より議事録の修正に関する御依頼がございました。このことにつきまして曽木議員のほうから御説明をお願いをいたします。オンラインだと思います。
【曽木委員】 曽木でございます。遅れて参加で申し訳ございません。
前回、第3回会議におきまして、私の発言の中で、最後にちょっとつけた形になったんですが、「全ての県立学校には学校司書の配置をお願い」しますということを申し上げました。このことについて、「県立学校」というものはいわゆる「高校」のことを言うのであって、こういったところで小中学校を問題にするのであれば、「公立学校」と言うべきであり、議事録の訂正をお願いしてほしいという意見が寄せられました。
第3回におきましては、テーマが読書バリアフリーでございましたので、公共図書館での障害者サービスの実態や、読書に障害のある児童や生徒さんたちに対する、学校や学校図書館での課題について意見を申し上げました。その中で「県立学校に」とあえて最後に言ったのは、県立の特別支援学校、こちらのほうが当日の緒方委員のご発表にもありましたが、学校司書の配置というのがやはり少ないということでもあり、それが学校図書館の運営に大きな支障を来しているということでしたので、全ての県立学校に配置をお願いしたいというのが私の発言の意図でございます。
公立の小中学校への司書の配置を求めるということは重要なことですし、配置されていないという今の現実が、普通学級の中にいる障害のあるお子さんへの対応まで及ばないということは重々承知しております。
であるからこそ、私からの発言の中では、前段で学校司書であるとか司書教諭の方たちに対する読書バリアフリーとか、障害のある児童・生徒への支援に関する研修について意見を申し上げました。発言の最後に付け加えた意味としましては、繰り返しになりますが、県立の特別支援学校ということを対象に考えたものでございます。
ただ、この「全ての県立学校に」という発言が混乱を招くということでありましたら、議事録については「全ての学校に」という言葉に訂正させていただけないかと考えております。
訂正につきましては、既に公表されておりますのでどのような取り扱いとなるか、こちらにつきましては、座長にお任せをし、御判断に従いたいと思います。御迷惑をおかけして大変申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。
【秋田座長】 曽木委員、御説明をどうもありがとうございます。
皆様いかがでございますでしょうか。いろいろ傍聴してくださる方から御意見がございまして、しかも議事録は一応チェックしてホームページに上げます。1回上げたものを今回は修正するというようなことになるものですから、通常の議事録の確認のところでは当然いろんな修正をしていただくことができるんですけれども、ちょっと時間的なラグがございましたので、このような形でとても丁寧に曽木議員が御発言の意図も御説明をくださいまして、このような形で修正をということでございますので、よろしゅうございますでしょうか。
それでは、委員の皆様が異議なしということで御同意いただきましたので、これで事務局のほうで御対応をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
今後も、曽木議員の発言だけではなくて、できれば議事録修正のところで加除いただけるといいんですが、1回上げてしまいますと、なかなかそれをさらに修正というのは難しくなります。このような手順で今後も進めたいと思いますので、御了解ください。
それでは、そのほかに事務局のほうから何かございますでしょうか。
【稲田図書館・学校図書館振興室専門官】 第5回会議の日程につきまして御連絡をさせてください。資料5に基づきまして説明させていただきます。
次回は、7月17日、木曜日、13時から15時を予定してございます。会場は文部科学省会議室を予定しており、次回もウェブ会議を併用して行わせていただきたいと思っております。
以上でございます。
【秋田座長】 御説明ありがとうございます。
それでは、本日の議事は全て終了いたしましたので、第4回目の会議はこれで閉会といたしたいと思います。
お二方の発表の方、また皆様、対面、オンライン、御参加どうもありがとうございました。これにて閉会といたします。
ありがとうございます。
総合教育政策局 地域学習推進課 図書館・学校図書館振興室
電話番号:03-5253-4111(内線:3484)