図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議(第3回)議事録

1.日時

令和7年3月11日(火曜日)14時00分~16時00分

2.議題

  1. 多様な人々のための読書環境の整備について

3.出席者

委員

秋田委員(座長)、池内委員、伊佐治委員、伊藤委員、植村委員、緒方委員、紀之定委員、小林委員、汐見委員、設楽委員、曽木委員、田井委員、高橋委員、土屋委員、手塚委員、中村委員、奈須委員(副座長)、野口委員、堀川委員(副座長)、松木委員、松本委員

文部科学省

茂里総合教育政策局長、平野社会教育振興総括官、高木地域学習推進課長、小沢図書館・学校図書館振興室長、毛利図書館・学校図書館振興室専門官

4.議事録

【秋田座長】  定刻となりましたので、これより、図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議の第3回の会議を開催いたします。
 本日の流れでございますが、本日の議題は「多様な人々のための読書環境の整備」でございます。
 まず、事務局より今回の会議における論点(案)を御説明いただきます。
 その後、2名の皆様に御発言をいただくことにしております。まず、野口委員より、図書館・学校図書館における読書バリアフリーの推進に向けて、公共図書館と学校図書館における読書バリアフリーの現状と課題を中心に御発表をいただきます。そして続きまして、次に緒方委員より、特別支援学校における学校図書館の取組と今後の運営充実に向けてについて御発表をいただきます。
 お二人方の御発表が終わりましたら、御発表に関する質問や論点(案)についての意見交換の時間を1時間ほど取りたいと思っております。
 それでは、今回の会議における論点(案)を事務局より御説明をお願いいたします。
 
【高木地域学習推進課長】  資料1を御覧ください。資料1の1枚目は検討の背景で、前回お示ししたものと同じものでございます。
 2ページ目は、論点(案)として事務局で考えさせていただいたものでございます。前回が1ポツのデジタル社会への対応でございまして、今回は赤囲みにさせていただいております2ポツ、「多様な人々のための読書環境の整備」でございます。
 1ページ飛ばしまして、4ページ目を御覧ください。多様な人々の読書環境の整備の中で、現在の「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」で、どんな記載がされているのかを整理させていただいているところでございます。公立図書館の市町村立図書館の規定ですけれども、こちらは都道府県立図書館にも準用されている規定でございます。施設設備としまして、特に配慮の必要とする者が図書館施設を円滑に利用できるよう、傾斜路や対面朗読室の施設の整備、拡大読書器等の資料の利用に必要な機器の整備、点字及び外国語による表示の充実等を努めるとともに、児童・青少年の利用促進のための専用スペースの確保に努めるものとするとあります。
 図書館サービスの規定の中で、利用者に対応したサービスということで児童・青少年に対するサービス、高齢者に対するサービス、障害者に対するサービス等がありまして、例えばウの障害者に対するサービスにおきましては点字資料、大活字本、録音資料などの整備・提供や、図書館資料等の代読サービス実施などが規定されているところでございます。
 戻りまして、3ページ目、公共図書館における現状を整理させていただきました。望ましい基準に書かれているものを主にピックアップさせていただきましたが、例えばスロープに関しては63.1%の図書館で整備されているところです。対面朗読室は27.7%、拡大読書器・拡大鏡のいずれかを所有している図書館が54.0%、点字による案内が34.9%、外国人のための案内が13.6%といった状況です。
 資料の状況で見ますと、大活字本は8割弱、79.5%ですけれども、点字図書等ですと半分ぐらい、51.2%。録音図書に至りますと4分の1以下、23.1%です。サービスの状況としては、対面朗読サービスの実施体制がある図書館が34.2%、点字・録音資料の郵送の貸出しの実施体制が35.7%ということで、いずれも3割強、3分の1強といったところでございます。
 下段でございます。そういった施設設備があった上で障害者サービスを担当する職員の配置状況を調査から確認したところ、都道府県立図書館でも47館中、無回答が2館あるんですけれども、4館が1人も配置しておりませんと、8.5%の県立図書館が障害者サービスを担当するような職員の配置がないと。市町村立図書館になると増えまして、31.6%と伸びてしまうところでございます。
 職員の資質向上のための研修がどうなっているかが下段でございますけれども、都道府県立図書館で研修を実施している図書館が91.2%あるのですけれども、うち、障害者サービスに係る研修を実施していますという図書館が59.6%ということで、全館から考えると5割強ぐらいといったところでございます。
 市町村立図書館に関しますと、研修を実施している図書館が3割強ぐらい、3分の1強ぐらいところで、うち障害者サービスに係る研修実施が35.5%なので、全体の中では障害者サービスに係る研修を実施している図書館は1割強といった状況でございます。
 続きまして、5ページでございます。学校図書館による現状を整理させていただきました。学校図書館は「学校図書館ガイドライン」、下の水色のところに記載させていただいているところでございます。児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた様々な形態の図書館資料を充実するように努めることが望ましいといったことで、例示としまして、点字図書、音声図書や電子図書等の整備も有効であるといったことでございます。
 現状がどうかということで、令和元年度時点での調査結果ではございますけれども、電子書籍は、どちらかというと、どこの学校種でも低調です。特別支援学校がほかの学校種より若干多いのかなといった程度でございます。点字図書になりますと小学校が若干多いのかなというところですけれども、ほかの学校種は2割弱といった状況であります。
 その他、外国語の図書を見てみると、小中高、大体7割前後ぐらいですけれども、特別支援学校が2割強といったところで数字が低いのかなといったところでございます。
 続きまして、6ページでございます。学校司書の配置状況でございます。学校図書館法に基づきまして、学校司書の配置に努力義務を課しているところでございます。こちらは令和5年度に新たな調査もしておりますので、令和2年度と5年度の比較という形でさせていただいているところでございますが、今、各学校種ともに7割前後ぐらいといった状況ですけれども、特別支援学校での学校司書の配置状況では、もう少し頑張らないといけないといった状況でございます。
 7ページが、司書教諭の発令状況でございます。学校図書館法に基づきまして、12学級以上の学校に関しましては司書教諭を置かなければいけない形になっているところでございます。12学級以上は各学校種とも9割以上、100%近く発令している一方、11学級以下の小規模の学校になりますと2割から3割強といった状況でございます。
 8ページでございます。障害のある子供に対する研修の実施状況でございまして、こちら、都道府県、政令指定市・中核市、その他の市区町村といった形で分けさせていただいていますけれども、正直、活発に資質向上のための研修が行われているとは言い難い状況かなと思っております。
 9ページでございます。令和元年度に公布されました読書バリアフリー法の概要でございまして、令和2年度から第一期の読書バリアフリー基本計画が進んでおります。次のページ、10ページでございますけれども、来年度から第二期計画がスタートするということで、今、案という形でオープンになっているものがございます。その中で施策の方向性の中で1ポツ、「視覚障害者等による図書館の利用に関する体制の整備」(9条関係)ですとか、8ポツ、「製作人材・図書館サービスの人材の育成等」(17条関係)といったところが公共図書館や学校図書館に関わるところでございます。
 11ページでございますけれども、一昨年に閣議決定しております第五次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画から抜粋したものでございますけれども、そういった多様な方々により御利用いただけるように望ましい基準の見直しの検討や、学校図書館ガイドラインの見直しの検討等が記載されているところでございます。
 こういった状況を踏まえまして、12ページでございます。今回の論点と検討の視点の案という形で、事務局で整理させていただきました。1、2、3と分けさせていただいているところでございまして、1つ目が図書館の資料、サービス、施設・設備の在り方でございます。読書バリアフリー法及び次期計画を踏まえましてアクセシブルな書籍の提供、電子書籍等の普及・充実に必要な方策、対応すべき課題等を整理する必要があるのかなと思っております。公共図書館に関しますと、望ましい基準の中にアクセシブルな書籍や電子書籍の充実などを明示する必要性があるのではないかといったことや、学校図書館は第2回の議論でありましたとおり、紙と電子書籍の両方の整備が必要であることや、特にアクセシブルな電子書籍等の整備が必要といったところで、学校図書館ガイドラインについての在り方も検討しなければいけないといったところでございます。
 2つ目のポツでございます。読書バリアフリー第二期計画などを踏まえ、視覚障害者などの円滑な利用のために充実が求められる支援や留意すべき事項としまして、第二期計画の中では対面朗読や郵送貸出し等のサービスや、様々な施設設備のことが記載されております。2行目でございますけど、アクセシブルな書籍等の紹介コーナーや専門職員の配置明示も公共図書館に関しては求められているところでございます。
 最後のポツでございますけれども、児童・青少年、様々な方々の多様な利用者に対する資料、サービス、施設・設備の在り方について、近年の社会変化等も踏まえて配慮事項を考えなければいけないのかなと思っております。
 施設・設備に加えまして、2ポツ目が人材の話です。司書教諭、学校司書、司書等の人材の在り方といったところでございまして、先ほどのデータでもお示ししましたけれども、特別支援学校における学校司書の配置状況といったことが大きな課題と思っています。第二期読書バリアフリー計画の案を踏まえ、公立図書館などにおきましては専門的なことができる職員の配置の状況を明示しなければいけないのといったことや、子どもの読書推進計画も含めまして、アクセシブルな書籍や電子書籍等の整備等、また、司書、司書教諭、学校司書などに求められるスキル・研修等についても考えなければいけないと思っているところでございます。
 3つ目のポツでございますけれども、公立図書館などにおけるアクセシブルな電子データ製作などに携わる点字等をつくる方々について、人材の計画的な確保や、ボランティア等の外部人材との協働の必要性等についても必要と思っています。
 様々な機関との連携が3つ目のポツでございます。学校図書館に関しますと、学校図書館間の連携や、地域の公共図書館との連携。公共図書館のほうが様々な資源、ノウハウがありますので、そういったこと等の共有といったこと。公共図書館に関しますと、県立図書館と市町村立図書館との連携や、地域の大学図書館との関係、点字図書館との関係なども考えていくのかなと。特に市町村立図書館が、なかなかそういった多様なサービスを対応し切れていない部分が見受けられますので、都道府県立図書館の支援が期待される役割としてあるのではないかと思っております。
 私からは以上でございます。
 
【秋田座長】  高木課長、御説明をありがとうございました。
 それでは、これから発表に入ります。まず、野口委員から御発表をいただきます。よろしくお願いいたします。
 
【野口委員】  委員の皆様、よろしくお願いいたします。では、私からは公共図書館と学校図書館における読書バリアフリーの現状と課題ということで発表をいたします。
 では、めくっていただきまして、1ポツのところは、先ほど既に事務局から御説明いただいたこととダブりますので、この辺は手短にいきたいと思います。まず、公立図書館等の基準であります図書館の設置及び運営上の望ましい基準に記載があるということは先ほど御説明がありました。
 次のページお願いします。こちらも続きですね。
 では、次のページをお願いします。2016年の4月に施行されまして、昨年の4月、改正施行になりました障害者差別解消法ということで、現在、公立、私立問わず、図書館においても障害者の合理的な配慮が提供義務となっているところも大きな法的な規定と思います。
 次、お願いします。こちらも先ほど御説明いただいたとおりですが、学校図書館ガイドラインにも図書館資料の種類としてアクセシブルな書籍等の整備が有効である旨、それから特別支援学校においては、ボランティアの協力が重要な役割を果たしている旨が記載されているところですね。
 では次、お願いします。それから著作権法の規定、こちらも非常に重要でして、特に図書館において、点訳者であるとか音訳者の方の協力を得まして製作をする点字図書であるとか、DAISY図書などの製作の根拠規定となっているというところになります。これは公衆送信も可能でして、サピエ図書館であるとか、国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービスを活用することで全国共有も可能ですけれども、こちらは後ほど御紹介するように、これらを活用する図書館が少ないのが実情ですので、その辺りも課題と思います。
 それから読書バリアフリー法、先ほど御説明があったとおりです。基本計画の話も御説明のとおりで、子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画も先ほどお話があったとおりです。
 次、お願いします。読書バリアフリーのニーズが今、高まっています。こちらは今、画面に映していただいているのが在宅の身体障害の方の人数、割合になりますけれども、増加傾向にあります。言い換えますと、読書バリアフリーのニーズが高まっているということが言えるかと思います。
 次のページをお願いします。学校現場、こちら文部科学省の資料ですけれども、2013年と23年、10年で対比しますと2倍に支援教育を受けている児童生徒の人数、割合が増加しているということですね。支援学校もちろんなのですけれども、小学校、中学校の支援学級、それから通級指導で学んでいる児童生徒の伸び率が高いことが分かります。言い換えますと、学校図書館における読書バリアフリーの対応は支援学校だけではなくて、全ての学校図書館で必要であることが言えるかと思います。
 次、お願いします。その全ての学校図書館で対応が必要であることに関しましては、通常の学級で学んでいる支援ニーズのある児童生徒も割合として高くて、学習面、行動面で著しい困難を示している児童生徒の割合が小学校、中学校で8.8%ということになっております。こちらも10年前にも同じ調査があるのですが、それよりもやはり増加をしていることになります。
 次、お願いします。では、公共図書館における視覚障害者等へのサービスの現状がどうなっているかということで、私も関わりまして調査を行いました、全国公共図書館協議会の2021年度の調査結果から御紹介をしたいと思います。まず、職員数に関しては先ほどデータの御紹介があったとおりなのですけれども、市区町村の図書館ですと3割で0人となっています。ここでいう0人というのは専任だけではなくて兼任で障害者サービスを担当している人も含めてということですので、この0人という図書館は全く障害者サービスを担当する職員がいない状況になります。これは課題の一つと言えると思います。
 次、お願いします。では、研修を受ける機会があるのか。こちらも先ほどデータの御紹介がありましたけれども、市区町村の図書館ですと研修を受ける機会がない、受講実績がない図書館が5割に近い状況もありますので、研修体制の充実というところも課題の一つになっているかと思います。
 次、お願いします。続きまして、予算です。0円の市区町村立図書館というのが先ほど職員配置の割合よりもさらに高い状況でして、6割近い全国の市区町村の図書館で障害者サービスに関しての予算が取れていません。この辺の財政的な部分での支援も強く求められている現状かなと思います。
 次、お願いします。続きまして、アクセシブルな書籍等の整備状況です。資料の種類によってかなりばらつきがあります。真ん中よりちょっと下、大活字本、LLブック、点字つき絵本などは所蔵率が高いのですけれども、これらは市販の出版されているタイトルが比較的ある種類と言えます。出版社との協力というのでしょうか、出版社の皆さんのお力が、こういったアクセシブルな書籍等の整備には非常に有効であることが、まず一つ言えるだろうと思います。
 一方で、先ほど著作権法の規定に基づいて各図書館で点訳、音訳等をして製作する資料、これが真ん中より上の種類になりますけれども、こちらについての整備率が非常に低い状態となっております。こちらの製作支援も課題というところが言えるかと思います。
 ただ、この点に関しては、それぞれの図書館で単独で作るというよりも、先ほど言いました公衆送信の規定などをうまく活用して、サピエ図書館や国会図書館の送信サービスの活用によって全国で共有することを積極的に行っていくことが有効なアプローチかなとも思います。
 次、お願いします。このアクセシブルな書籍等の所蔵率の変化を幾つかピックアップして抜き出しました。2017年に関しては、国立国会図書館が行った調査データになります。見ていただくと、ほとんどの種類であまり変化がないですけれども、その中でもマルチメディアDAISY図書、LLブック、手話・字幕入り映像資料の伸び率が比較的大きいかなというところですね。
 では次、お願いします。例えば、LLブックは2017年と21年で対比をしますと所蔵率自体は2倍に伸びているのですけれども、しかしながら1館当たりの所蔵タイトル数を御覧いただきますとほとんどない状況です。出版が少しずつ広がってきていると言っても、タイトル数自体が豊富にあるわけではないので、この辺りを今後どう伸ばしていくのか、出版界との協力というのはこの辺でも重要になってくる部分があるかなと思います。
 一方で、大活字本については全国95%の公立図書館で所蔵しているのですけれども、タイトル数も比較的多いんですね。これは取り組む出版社が広がってきていることの反映かなと思います。
 次、お願いします。先ほど御紹介しましたけれども、著作権法の規定に基づいて、各図書館でボランティアの方の力もお借りしながら製作をする点字図書であるとかDAISY図書のデータについては、全国で共有できるわけですけれども、その仕組みであるサピエ図書館や国会図書館の送信サービスのいずれも該当しない、つまり活用していない割合が市区町村立の図書館ですと8割を超える状況にあります。この辺りは積極的に活用していくための支援も求められるところかなと思います。
 次、お願いします。実際の点字図書館と公立図書館の連携も重要になるのですが、こちらにつきましても、特に連携していませんという割合が市区町村の図書館ですと7割を超えている状況にあります。オンラインベースでの連携も重要ですし、リアルな点字図書館等との連携も今後促進していく必要があるのではないかと思います。
 次、お願いします。続きまして、読書支援機器あるいは読書支援用具、読書補助具とも言いますけれども、こちらについても整備状況は種類によってかなりばらつきがあるのですが、傾向としましては都道府県立図書館のほうが整備率が高い。言い換えますと各都道府県内の市町村に都道府県立図書館が様々整備しているものを一つのモデルとして、こういうものが有効ですよということを、ぜひ市町村の図書館に発信していっていただけると効果的なのではないかなと思います。
 次、お願いします。主なサービスの状況ですね。こちらもばらつきが多いですけれども、比較的割合として高いのが特別支援学校、支援学級へのサービスということで、それから点字録音資料等の郵送サービス、そして対面朗読サービスと、この辺りが比較的割合としては高いということです。とはいえ、まだまだ全ての図書館で取り組んでいるわけではありません。
 次、お願いします。このうち対面朗読サービスの状況ですけれども、市町村の図書館ですと取り組んでいないところが66.6%ということで、7割近い図書館で取り組んでいない状況があります。また一方で、取り組んでいる3割の図書館でも利用実績がないところが4割あるということです。つまり実施体制を整えていても利用実績に結びついていない、実施と実績の乖離が非常に大きいところも課題になっております。この背景としては、図書館が取り組んでいるサービスが当事者の方々に十分に知られていない、つまり周知広報に非常に大きな課題を抱えていることのあらわれでもあるかと思います。
 では次、お願いします。この広報のところですけれども、特に図書館の中でポスターを掲げたりとか、利用案内とかを御用意してくださっている図書館が多いですけれども、なかなかふだん図書館に足を運ばない視覚障害者等の方々からしてみると、図書館がどういう障害者サービスをしているかというのを知る機会に、それだけだと十分になっていないのが現状です。そういう中で、例えば眼科医会であるとか、ロービジョンケアなどと連携をしていくことが非常に重要になってくるかと思います。この辺、まだ非常に実施割合が低いところではありますが。
 では次、お願いします。図書館の方々に、どの辺が課題になっているのかということを自由記述で聞いたものをまとめたものですけれども、予算や職員配置というのは先ほどのデータからもお分かりになるかと思うのですが、それよりも若干高いのが職員の専門性とか、それから周知広報です。これをどう促進していくか、充実するかというところに課題意識を抱えている図書館が多いことが確認できるかと思います。
 では次、お願いします。学校図書館の現状は、この後の緒方委員の御報告もありますので飛ばしながらいきますが、学校司書、特に支援学校での学校司書配置が非常に低いのが課題と言えるかと思います。
 次、お願いします。研修の実施状況あるいは受講状況というのも低いというのも、先ほど御紹介のあったとおりになります。この辺りの充実も必要ということですね。
 次、お願いします。アクセシブルな資料の所蔵状況ですけれども、こちらも支援学校はもちろんですが、小中高校でどう充実を図っていくかということも必要になってきます。
 次、お願いします。アクセシブルな資料もそうですけど、そもそも支援学校では図書標準の達成率が低いところも非常に大きな課題になっています。この辺りの支援というのも重要になってくるかなと思います。
 次、お願いします。こうした資料の所蔵状況等を補う連携というところも実は支援学校が4割ぐらいでして、中でもアクセシブルな資料の取り寄せ割合というのは非常に低い状況にあります。支援学校においてもサピエ図書館とか、国会図書館の送信サービスをうまく活用していただくといいのかなと思うところですが、御存じない学校がまだ多い状況があります。
 次、お願いします。
 ここは飛ばしていただいて、次、お願いします。
 支援学校は、図書室が学級数の増加などの影響で一時的になくなっているケースというのもありまして、この辺りも非常に大きな課題になっていると思います。特別支援学校の設置基準では図書室は設置義務になっていますし、もちろん学校図書館法でも設置義務ですけれども、教室が足りない中でやりくりがうまくいってないケースもあるということですね。
 次、お願いします。残りのところは障害者以外の方々のニーズというのを簡単に御紹介して締めくくりたいと思います。まず、高齢者ですけれども、今、日本の高齢化率は非常に高くて世界で最も高い割合になっています。29.3%、WHOの区分で言いますと超高齢社会という区分にあります。
 次、お願いします。今後いずれ4割近くまで高齢化率が上がっていくだろうという予測も出てきている状況ですね。
 次、お願いします。そういった中で認知症、あるいは軽度認知障害の方の割合も増加傾向にある状況です。近年、図書館においても認知症バリアフリーの取組というのが進められておりまして、日本図書館協会においても特別検討チームを立ち上げています。それから認知症基本法も制定されまして、教育も含めた各関連分野における総合的な取組が求められているということです。
 次、お願いします。そういった中で、日本図書館協会と日本認知症官民協議会では『認知症バリアフリー社会実現のための手引き(図書館編)』を作成しております。ただ、認知症バリアフリーの取組はまだまだ実践の蓄積と共有がこれからの段階ですので、この辺りも課題かなと思います。
 次、お願いします。最後に、外国ルーツのある方の状況ですけれども、こちらも増加傾向ということです。国・地域別に見ますと中国語が第1言語の方が最も多いですが、近年、ベトナム語であるとかフィリピノ語であるとか、それからブラジル、ポルトガル語、ネパール語等の言語のニーズが今、高くなってきているところです。
 次、お願いします。このことは学校現場、学校図書館においても同様でして、15年で外国籍の児童生徒は2倍に増加をしている状況にあります。学校図書館の現場でも多文化サービス的な視点のニーズが高まっています。
 では次、お願いします。外国語の図書の整備状況です。データが多少古いのですが、日本図書館協会の調べです。英語の図書が多いですけれども、それ以外の言語がなかなか少ないというのは、一般書も児童書も似た状況です。
 次のスライドをお願いします。学校図書館の外国語の資料は、トータルな所蔵率は先ほども御紹介があったとおり、比較的高いですけれども、恐らく英語が中心であると思われます。また、外国ルーツの方にはやさしい日本語による資料情報の提供も有効ですけれども、こちらについては実態調査がないので、どういう現状かというところが十分明らかになっていない現状があります。
 次、お願いします。なかなか多言語の資料を紙ベースで購入して整備するところにハードルもありますので、そういった中で静岡県の浜松の電子図書館では11言語の電子書籍を提供することをやっています。こういった多言語対応というところもICT活用の可能性が非常に大きいかなと思います。
 次、お願いします。実際、図書館の方々も電子書籍、電子図書館サービスにはこういった多言語対応であるとか、それから音声読み上げであるとか、アクセシビリティの対応への期待というのは非常に高く、これは視覚障害者等に限らず、先ほど御紹介しました高齢者であるとか、それから外国ルーツの方にも非常に有効な機能であると思います。
 最後のスライドになります。多文化サービスに関しましても、抱えている課題は障害者サービスとほぼほぼ似ています。職員の配置であるとか、専門性の部分であるとか、連携、この辺りが課題であるところは共通していると思います。
 ということで、ちょっと駆け足になりましたけれども私の報告は以上となります。ありがとうございました。
 
【秋田座長】  野口委員、御発表をどうもありがとうございました。
 それでは続きまして、オンラインで緒方委員から御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
 
【緒方委員】  東京都立永福学園の緒方です。よろしくお願いします。私ども、特別支援学校における状況、及び東京都を中心とした取組等に関しての紹介と今後の運営の充実に向けて紹介していきたいと思います。
 次、お願いします。この表は、小中学校と特別支援学校の学校図書館の概況の比較です。これだけでは十分に分からないと思うのですけれども、学校司書、図書購入費、蔵書数、それと貸出し冊数であるとか専用部屋の面積等を2024年の文科省の調査で比較してみました。ここでは特別支援学校の規模、児童生徒数の関係もあるので一概には比較しがたいところもありますが、図書購入費であるとか蔵書数、貸出し冊数及び部屋の広さ等に差がある状況が示されています。一番右側の赤字の部分が本校の状況です。今現在、図書購入費を確保して、学校図書館図書標準に示されている蔵書数の充実等、現在、図っているところでございます。
 次、お願いします。実際、皆さん、特別支援学校の中に入って学校図書館の様子を御覧になった方は少ないかと思います。あくまでもこれは全国の標準というわけではありませんが、本校の学校図書館の様子です。本校は知的障害教育部門、それと肢体不自由教育部門、2つの教育部門の併置校です。児童生徒数が450名、この図書館の面積については90平米ということで、約一般の教室の1.5倍ということで、やや狭い状況にあります。そのために右上の写真のように各校、先ほどもありましたが、全く学校図書館の部屋が確保できてない学校もありますが、本校では今、廊下の脇などのスペースを確保しながら図書コーナーなどをほかにも設けて、特に肢体不自由のお子さんが階をまたいで書籍を借りに行くというところではハンデがありますので、各階にこういったスペースを設けている状況であります。
 また、左側の写真、大型絵本などもそろえているというところ。あと、右下の写真については、これ、学校図書館内の書棚の様子ですけれども、見て分かるように知的障害のある高等部の生徒に関しては特に不便ではないですけれども、肢体不自由の児童生徒、特に車椅子を使用している方については高さ的に不便な状況が生じているところがございます。
 次、お願いします。この2枚の写真、実は3年前、着任したときの4月の様子、整備前後の様子を示したものです。着任したときは左の写真の状況でした。肢体不自由のある児童生徒は、もうこの図書館自体に入ることができない。また、蔵書も公立の図書館から寄附みたいな形で古い本を寄贈していただいたものばかりで古くて、また子供の関心が高まらないような、そういった内容の本が多くありました。そこで蔵書の入替えと同時に環境整備をして、現在は先ほどお見せしたような右の写真のような状況にあります。
 ただし、上の表を御覧になっていただければ分かるように、バリアフリーについてはまだまだ課題があります。知的障害と肢体不自由併置校ですので、本来だったら別々のスペースが確保できればいいのですが、同じになってしまうとどちらかに支障が出てきてしまう。また、蔵書数についても整備前は1万点ほどありましたが、これは全部新しい本に入れ替えている途中でして、図書標準の中では約8,000冊そろえなければいけないのですが今は2,700冊で、まだまだ今後、充実を図っていかなければいけない状況にございます。
 次、お願いします。そういった中ではもう本校における成果と課題としては、成果としては読書活動であるとか、児童生徒への読書指導の場としての読書センターとしての機能が充実し、先ほど紹介したように貸出し件数が3年間で30倍になっているところが挙げられます。ただ、課題としては、児童生徒の学習活動を支援したり、児童生徒や教職員の情報ニーズに対応したりするなどの、学習センター及び情報センターとしての機能充実を図ることが課題になっています。そのためには利用しやすく便利な図書、特に今後は電子図書等の充実だと考えております。
 次、お願いします。これは参考ですけれども、本校の隣の学校の都立光明学園、ここは肢体不自由と病弱の学校です。光明学園では、このような充実した施設設備の中で、出張での読み聞かせやPOPコンテストなど様々な取組が行われています。面積としても460平米と通常の教室の8教室分が確保されています。
 あと、見えるかどうか分からないのですが下の床のところに黒い丸い模様があると思うのですが、これ、実は空調の吹き出し口です。床から冷暖房の空気が出るようになっているため、このように天井が高い空間でも快適な温度が保たれるような設備になっています。
 次、お願いします。また、光明学園は先ほど話したように肢体不自由または病弱の部門からなる併置校ですので、全ての生徒が本を見やすい、手に取りやすい高さや照明なども工夫されているところです。このように特別支援学校においては、学校により施設設備等に関しての状況は大きく異なりますが、それぞれの学校で実は限られたスペース、廊下などに図書コーナーを設けたりするなどして、限られたスペースを有効活用しようとする取組が現在、東京都の中では進められているところでございます。
 次、お願いします。
 
【毛利図書館・学校図書館振興室専門官】  御発表中ではございますが、本日、東日本大震災発生14年となる3月11日における弔意を表しまして、震災の発生時刻である午後2時46分に黙祷をささげたいと思います。声かけに合わせて黙祷をお願いいたします。
(黙祷)
【毛利図書館・学校図書館振興室専門官】  黙祷を終わります。
 
【緒方委員】  それでは説明を続けさせていただきます。このように光明学園のような図書館ができるまでには、実は他校においても様々な取組がなされ、それらの取組をまとめ、全校に広めるなどの学校図書館の充実を図るための事業が、東京都教育委員会や、また、公共の図書館との連携において実施されてきたことが大きく影響しています。
 そのことについて少し触れさせていただきます。先ほども情報提供あった内容とかぶるところがありますが、例えば1点目、教育委員会において東京都子供読書活動推進計画に基づき、事業が平成29年度から現在に至るまで実施されております。具体的には研究推進校を指定して、その実践や学校図書館の整備のためのロードマップなどを報告書にまとめて、広く特別支援学校等に周知しました。この29年からの1年目のときに私も教育庁におりまして、野口先生の協力を得ながらこの事業を進めて始めたところでございます。
 次に、また全都の特別支援学校向けの共通の図書管理システムが令和5年に全校に導入されました。ここで一気にデジタル化というか、貸出しシステムの効率化が進んだところです。
さらに、一つの学校では蔵書数の充実を図ることが予算的にも困難なこともあることから、令和6年1月から特別支援学校間での図書の賃借ができるようになりました。互いの蔵書を有効活用することが進められていますが、実際には最終的にゆうパック等でのやり取りになるので、なかなか活用が進んでいない状況もございます。
さらに最新の取組では、試行ですけれども、都立の図書館から特別支援学校向けの貸出し事業が実施されており、来年度からは全ての都立特別支援学校を対象に実施する予定になっています。
  次、お願いします。ただし、教育委員会の事業や公共の図書館の事業だけでは、現場の学校はなかなか動かない現状もあります。先ほど紹介しましたが、現に本校でも3年前までは全く活用されていない状況でした。そこで学校図書館や読書活動推進に熱心な校長が教育委員会認定の研究会を立ち上げて、単に報告書を出して各学校の主体的な実践に委ねるのではなく、研究成果を進めようと賛同する校長と連携して定期的に研究会を開催し、教育委員会事業の研究推進校の取組を改めて紹介したり、会場校の学校図書館の課題について協議するなどの活動をしたりしています。結果、この表にあるように、参加校や参加者数も増えて、各学校へ情報等持ち帰って各学校の実践の充実に資するような活動になっています。このように教育委員会、都立図書館の事業で終わることなく、現場の校長が連携して、その事業成果を広めていく実践が重要であると改めて感じるところです。
  次、お願いします。最後、これはあくまでも特別支援学校における読書バリアフリーについてということですが、先ほど事務局の資料1であるとか、野口先生の資料とかなり重複するところがございます。まず、施設・設備の整備に関してはスライドにあるように、障害種別により便利、また不便さは異なるため、複数の障害に対応する環境整備を促進させることが重要だと考えています。例えば、視覚障害であれば点字であるとか拡大読書機等はありますが、特に色覚異常の方への表示等の色への配慮、また、病弱等に関しては一番下、感染予防の対策等も、これは学校図書館だけではないですけれども、そういった配慮が必要であり、ユニバーサルデザイン化を進めていく必要があると考えております。
 最後です。人的支援ということで、これ、ボランティアのことも先ほど出てきました。司書教諭だけでは取組に限界があることから、各障害のある児童生徒に対応できる学校司書の配置促進、これを進めていただきたいと思っています。小中学校での学校図書館ボランティアの養成講座なども様々な自治体で行われている状況ですが、特別支援学校、特に障害のある児童生徒への対応も含めた、そういった外部人材の養成等については今後進めていく必要があるのではないかと思いますし、障害者に対するサービスについては今後、小中高等学校においても、インクルーシブ教育システムを推進する上では重要になってくるのではないかと考えるところでございます。
 私からは以上です。
   次、お願いします。次に各種資料等の整備活用の促進ということで、3点、障害種別に対応した各種資料の整備ということで、こちら、LLブックから電子図書等、様々な資料を今後そろえていくことが必要だろうと。ただし、前回もありましたが、紙の書籍等も含めてベストマッチングのそういった資料の整備が必要だろうと。あと、先ほども紹介しましたが学校間における蔵書の有効活用、さらには公共図書館との学校との連携、これは今後、今、東京都においては試行的な実施ですが、この発展的な取組に期待をするところでございます。
【秋田座長】  緒方委員、ご発表をどうもありがとうございました。それでは、ここからは意見の交換の時間とさせていただきたいと思います。
 まず、お二方からの発表に対する質疑の時間をとります。まず、内容に関する質疑をいただき、その後に各委員の御発表や御意見に関して、また前回のテーマでございましたデジタル社会に対応した図書館・学校図書館に関する追加の御意見などを自由に御発言いただくという2段階でさせていただきたいと思います。
 まずは、野口委員、緒方委員の今回の御発表への御質問がございましたら、オンラインの方も対面の方も恐縮でございますが、お手元のタブレット等で挙手のアイコンを押していただきまして御質問をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 ありがとうございます。それでは高橋健二委員、お願いをいたします。
 
【高橋委員】  野口先生、緒方先生、今日は本当にありがとうございました。具体的な事例やデータに基づく話で、大変勉強になりました。
 緒方先生にお聞きしたいですけど、私、何をやるにしても人がすごく重要かなと思っていて、先ほどお一人の校長先生が、最初にイニシアティブを取られて、いろんな校長先生をまとめていったというお話がありましたが、その校長先生って、もともと図書館に関わりのある方なのか、国語の先生なのか、都教委で社会教育を担当していたのか、それとも全く自発的なことなのかということが、一つ興味があります。
 それを受けて各学校で読書バリアフリーを実践するときに、緒方先生の学校は書棚一つ見てもすごくドラスティックに変わったと思いました。実践を進めていくときに校長から働きかけて図書館を動かすのか、それとも、こういうふうにやろうよと言って司書の方が動いてきて図書館側から動くのか、それとも両者が話し合って進めていくのか。そこら辺のトップダウンなのか、ボトムアップなのか、インタラクティブなのかという、実際のプロセスを教えていただきたいです。
 
【秋田座長】  ありがとうございます。緒方委員、いかがでしょうか。
 
【緒方委員】  ありがとうございます。中心的に進めていいただいた校長先生というのは学校図書館について関心があったという方で、特にそこの専門家ということではありませんでした。ただ、いろんな図書館を見学しているうちにかなり詳しい情報をお持ちで、またリーダーシップがすごく強くて、特に教育委員会の事業、6校ほど研究推進校を指定するのですが、もうその研究推進校の校長と連携してどんどん、要するに単なる教育委員会から成果物として一つ報告書を配っただけでは動かないだろうと。とにかく校長が連携してどんどん会場を変えて研究推進校の取組などを具体的に紹介していこう、プラス、その会場校の課題について指摘するのではなくて、こうしたらいいだろうというような、そういったアドバイス的なところのやり取りをする中で大分活発になってきた背景があります。
 もともと私も教育委員会にいて、この平成29年度については関わっていたので、実際に報告書等も見させていただきましたが、学校に行くとその報告書が全く読まれてない状況です。そういった中では東京都においても子供読書活動推進計画に基づいて学校としても取り組まなきゃいけないと校長が申しておりました。学校経営計画に示して、これはガイドライン等にも示されており、かつ、きちんと予算を立てて、着任したばっかりだったので補正予算を組んで半年で、それでトップダウンでやったということです。
 以上ですが、よろしいでしょうか。
 
【高橋委員】  よく分かりました。ありがとうございました。
 
【秋田座長】  どうもありがとうございます。ほかに、お二方の御発表に対する御質問等はよろしいでしょうか。
 それでは、この後は本日のテーマ、それから前回のテーマに関連しましての御発言をいただきたいと思いますので、挙手をお願いいたします。毎回終わりの15分ぐらいになって急に手が挙がると困りますので、ぜひとも発言をする意思のある方は終了30分前までには必ず挙げていただきますようお願いいたします。
 ありがとうございます。それでは池内委員、お願いいたします。
 
【池内委員】  筑波大学の池内です。御発表ありがとうございました。統計データ、調査データを拝見するとアクセシブルな資料等々、読書バリアフリーを完全に実現するにはまだまだ道半ばかなという気がいたします。
 図書館の資料、野口委員が御発表くださった中でアクセシブルな書籍等の所蔵率というところが挙げられていましたけれども、これは図書館が収集整理、保存する物理的な図書館資料と、デジタルネットワーク上にある電子データ的な資料とでは、個別の図書館がやるべきところと、そうではなくて例えばサピエ図書館、視覚障害者の方々に対する資料でしたらサピエ図書館とか、より大きなシステムの中で対応していくべきものというのが多分、個別の図書館の方々にきちんと分かるように政策資料を記述していく必要があると思います。
 マルチメディアDAISYですとか点字データについて、個別の図書館が一生懸命お金をかけてやっていても極めて非効率なわけで、インターネット上ってとにかく物理的な制限がないわけですから、障害者サービスだけではないのですけれども一般の資料も含めて、どのレベルで収集するのか、どのレベルで協力し合うのかというようなことも、今回の望ましい基準等々の政策資料にきちんと記述していただいたほうがいいかなと思いました。これが1点です。
 もう1点は、これはあまり重要なことでないのかもしれませんけど、前回の図書館の望ましい基準が出たときに、非常にいい政策資料になっていたのですが、障害者サービスのところで代読サービスというのが結構論点になっていました。それまで対面朗読というようなことを公共図書館界では非常に熱心に実施してきたと。ところがその対面朗読という表現を使わないで代読サービスという表現が急に出てきて、図書館界全体でそれがどういうものかと理解するために日本図書館協会さんが資料を出したりされていたので、そうしたターミノロジーというのですかね。極めていろんな形の障害があり、様々な資料が存在している状況において、皆さんがきちんと理解できるレベルで政策発信していく必要があると思いますので、どういうサービスなのか、どういう資料なのか、それは誰がどのレベルで責任を持つべきなのかというようなことをきちんと今回の新しい政策資料では記述していただけるといいかなと思いました。
 以上です。
 
【秋田座長】  池内委員、ありがとうございます。
 それでは続きまして、小林委員、お願いをいたします。
 
【小林委員】  それでは鳥取県の状況等をお話ししたいと思いますが、右上に鳥取県立図書館と書いてある資料を御覧いただけますでしょうか。よろしいでしょうか。
 鳥取県では読書バリアフリー法に基づく県の計画を令和3年3月に全国に先駆けて策定し、各種事業に取り組んでいます。その取組を進めていく中で、様々な課題が見えてきたということで御紹介させていただきたいと思いますが、まず、これも発表の中でも出てきましたけれども、(1)支援の必要な方への情報が届いてないと、図書館がいろんなことをやっても、それが届いてないような実情があって、ここをどういう具合に工夫していくのかというのはずっと課題だと思っています。当事者団体の皆様方を通じて広めていくとか、いろんな工夫をしていく必要があるのではないかと思っております。
 それから環境整備のところですが、(1)のイ、あるいは(2)のところですけれども、参考1の令和5年度の蔵書統計のところを御覧いただきたいと思います。国会図書館と鳥取県立図書館の蔵書を比べておりますが、これ、全く違う数字なんですよね。これ、地方の図書館がそこを充実させて1個1個で勝負するって、なかなか難しいなという状況が分かると思いますし、それは先ほどの池内委員の御指摘も全くそのとおりだと思っております。
 そこの中で何をしていくのかと考えたときに、サピエ図書館の普及であるとか、あるいは国立国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービスの普及とか、そういうことをしていく必要があるのだろうなと。そこを丁寧にやっていきますと今、サピエが鳥取で19市町村分の8が入っており、あるいは国会図書館のデータ送信サービスについては、特別支援学校は8校中7校が今、登録をしているような状況になってきています。そういう話になってくると、今度はそれが登録することが課題ではなくて、それをどう活用していくかというところに今、課題が移ってきているようなことが今の状況になっています。
 あるいは参考の2のところの数字を見ていただけたらと思いますけれども、特別支援学校に対する働きかけというのは様々やってきておりますけれども、鳥取県は全ての学校に司書教諭の発令がされておりますし、あるいは全ての県立の特別支援学校には司書、学校司書が配置になっております。
 そういう状況の中で図書館から支援を行っていくと、例えば毎日県立図書館が、本が届けられる仕組みをつくるとか、あるいは先ほども研究会の話がありましたけれども、鳥取県特別支援学校図書館教育研究会が立ち上がって研究を進めていくとか、あるいは特別支援学校を卒業した子供たちが特別支援学校のときにはすごく手厚いサービスを受けているけれども、卒業した途端にそれがなくなってしまうことがないように、卒業する子供たちを対象にした図書館活用セミナー、公共図書館でちゃんと、そういうようなものを使えるんだよというようなメッセージを送るような活動とか、そういうようなことをしていきますと、平成17年からずっと利用が伸びている状況が分かると思います。
 平成17年には206冊だったものが、1万6,984冊ですか、というような数字まで伸びていっているということですので、まさに環境を整備することによって様々な利用が伸びていくことの関連性が見ていただけるものだと思っております。
 あと、時間のことがありますのであまり詳しくは言いませんが、読んでいただけたらと思いますけれども、最後の(3)の図書館の施設・サービスというところで見ていただけたらと思います。2枚目の真ん中あたりですけれども。先ほど野口先生の御発表の中にも、認知症の方々に対する図書館のサービスをどうやって行っていくのかというお話がありましたけれども、鳥取県立図書館では当事者の方に図書館においでいただいて、認知症の患者の皆さんの本人ミーティングというのをやって、実際、図書館の利用にどういう課題があるのかというようなことを直接お伺いして、それを事業に反映するようなことをやりました。
 その中で出てきたのは、図書館の施設がどこにどういう具合にあるのかということについてなかなか分かりにくいので、床に、ありますよね、病院なんかで動線が。ここに行ったら、ここに簡単にたどり着きますよ、みたいなのがあるのですけれども。そういうようなものがあると、トイレがどこにあるとか、あるいは総合受付がどこにあるのかということが分かりやすいので、もしできるなら、そういうことしてほしいという要望がありまして。
 実はこの3月、貼りました。さすがに線を作るってなかなか難しいので、何て言いますかね、四角のシールを床に大きく貼っている形のものですけれども、カウンターはこっちですよというようなことが分かりやすいようなものをして、少しでも使っていただきやすいような環境ということでやりました。なかなか、ほかの図書館でまだ見たことがないので画期的なんじゃないかなと思っています。
 例えば2枚目のところにつけていますけど、こういうやつですね。見ていただけますかね。エレベーターはこっちですよとか、トイレはこっちですよ、こういうようなものを貼って、認知症の方にも不便なく使っていただくような工夫というのをしているところです。
 あと資料については、また読んでいただけたらと思いますので、以上です。
 
【秋田座長】  ありがとうございます。小林委員、どうもありがとうございます。鳥取の状況について御意見を頂戴いたしました。
 それでは、続きまして高橋委員、お願いをいたします。
 
【高橋委員】  何度もすみません。2点、意見があります。先生方のお話や今日の資料を見ていますと、前回作った望ましい基準から何年か経って、いろんな種類のバリアフリー関連の資料が出てきていると思います。「アクセシブルな書籍及び電子書籍」という言葉で括られていると思うのですが、それが特に望ましい基準の中では、そのような関連の資料に関する記述がないので、例えば、第3の運営の基本や、図書館の施設設備等のどこかの項目に「アクセシブルな書籍及び電子書籍」という記述をきちっと入れたほうがいいのではないかというのが一つ目の意見です。そうしないと支援を受ける側もする側も、そのような資料があることを知らないことが多いので、書くことで知らしめるというか、周知を図るというか、そういうことが大切かなと思います。
 それからもう1点ですけど、私は学校にも勤めていたり、以前も図書館に勤めていたりしてすごく感じるのですけど、学校だと例えば会計年度の非常勤教職員、図書館だと会計年度の非常勤職員の方がたくさん働いていらして、特に図書館業界ってそういう方が多く勤めていらっしゃる感覚があります。先ほど野口先生の話でも研修への参加率が低いという話があって、研修をより充実させるというのは、もちろんそれはそうですけど、その研修の参加率が低いもう一つの理由というのは、会計年度職員の方は研修に行きにくいという面があります。所属長が出張命令を出しにくい。
 学校司書に関しては、鳥取県は全校に配置しているそうで羨ましいのですが、静岡県は県が司書を配置している公立高校がほぼないので、結局、PTAのお金で学校司書を雇用している学校がほとんどです。そうすると県立図書館や社会教育課でいくら充実した内容の研修をやっても、校長が出張命令を出せないんですよね。そうするとどうなっているかというと、本当に熱心な人は年休を取って休んで自費で交通費を払って、ひどいときには資料代も自腹を切っているという、そういう実態があります。だからそのような業界特有の会計年度職員の方々がたくさんいることにも配慮したような研修実施を推進しないと、体制が変わっていかないと思います。
 そのときに、例えば条例を変えるとか条件を変えるとかは難しいと思うので、オンライン研修が有効だと感じています。オンライン研修だったら勤務する図書館や学校で受けられます。オンライン研修を使っていろんな研修をしっかりやって、そこにちゃんと会計年度の方も出られるように、例えば、これも望ましい基準の職員の研修のところに、「館長は雇用の形態にかかわらず職員が研修を受講できる体制づくりに努めるべきである」とか、そういう記述があれば、校長や館長も動きやすい。
 急に予算をつけたり、高額な物品を購入したりは難しいんですけど、記述しておくだけで、校長や館長は、ああ、そうか、じゃ、参加してくださいと言うことが可能となり、大変いいと思います。
 ちなみに当館で昨年、点字ボランティアのオンライン研修をやりました。そうしたら例年よりも参加者がとても多くて、どうしてかと思って担当者と話したら、やっぱり、オンライン研修の成果でした。ボランティアの方って自費で交通費を負担しないと研修に来られないんですよ。だけど、オンラインだったら容易に参加できます。コロナで学んだオンラインの有用性というのをこういう分野でどんどん使って、それを館長や校長が後押しするような体制にすればお金もかからないし、人の条件も変わらないし、すごくいいと思うのですけど、そういうのも盛り込めないかなと思っています。
 以上です。
 
【秋田座長】  高橋委員、どうもありがとうございます。大変貴重な、何を盛り込むかというところでの御意見を頂きました。ほかにはいかがでごしょうか。
 設楽委員、お願いいたします。
 
【設楽委員】  それでは、お手元の資料、図書館・学校図書館に関する有識者会議第3回をご覧ください。まず、野口委員の御発表にもありましたように、全国の公立の小中学校の普通学級に通っている児童生徒の約8.8%が発達障害の可能性があるということになります。これは2022年の12月13日の読売新聞の記事を引用したわけですが、全国の児童生徒数は約952万4,000人いるということが学校基本調査で分かっています。その8.8%というと約83万8,000人になるわけです。これは同年度の特別支援学校の小中高等学部の児童生徒数、14万9,000人より、はるかに普通学級に通っている子供たちのほうが多いと推察できるわけです。この普通学級に通っている子供たちに対して、アクセシブルな支援ができるということがこれから重要ではないかなと考えています。
 特に、小学校の低学年の子供たちは、なかなか発達障害というのは分かりにくい部分もありますが、小学校低学年のときから、的確な支援をしていくことによって新たな読字障害を克服できるのではないかなと考えています。
 このことについては、できれば図書標準にきちっと明記できれば一番いいかと思いますが、なかなかそれは難しい部分もありますので、そうですね、そのほか学校図書館ガイドラインのような適切なものがあれば、そちらにでも記述してもらえばいいと思います。
 それから、2つ目のバリアフリー法の目的の部分ですが、このことについては、特別支援学校の図書館の充実は、全ての学校図書館にこのバリアフリー法の精神を具現化してほしいと思います。どういう本がアクセシブルであるかということすら分からない場合もあります。アクセシブルな本を具体的に明示した支援が必要ではないかと考えております。
 資料の裏面を御覧ください。もう一つは小学校の学校図書館の平均蔵書冊数は約9,800冊です。これは2024年度の学校図書館調査で出ています。ところが幼稚園とか保育所、こども園などから小学校に入学したばかりの子供たちは、いきなり9,800冊も本があるとどの本を読んでいいか分からないという、小1ショックがあって、どの本を選んで良いか迷ってしまい、なかなか読書に親しめないことがあります。
 これもできればということですが、幼稚園であるとか保育所、こども園など、その段階で少しでも多くの本を実際に子供たちが体験できるようなものを整備することが大切だと思います。小学校に入学していきなり学校図書館に9,000冊、1万冊近くの本があっても、自分はこういう本を読みたいと手に取ることができる、こういう環境が必要だと思います。こうすることで早い時期に本に親しむ、子供たちを育むことによって、読書バリアフリー法にも貢献できるのではないかなと思います。
 それから、その次、司書教諭・学校司書・司書等の在り方についてですが、これも特別支援学校の司書は令和5年度公立学校における学校司書の配置状況に関する調査によると、これも野口委員の御発表にもあったと思いますが、小学部16.9%、中学部17.0%、高等部が17.4%です。特別支援学校の図書標準の達成率も、野口委員の御発表にもありましたように小学部では15.5%、中学部では3.6%と非常に低い状況にあります。
 このことについては、学校図書館法の教育課程の展開に寄与するということや児童生徒の健全な教養を育成するという目的を達成するために子供たちが最後までじっくり本を読み解く、そういう自立した読者であるとか、互いに学び合う学習ができる、調べ学習や探究活動ができる自立した学習者など、こういう子供たちを育む必要があるのではないかと捉えています。
 加えて特別支援学校においても、当面は小学校71.2%、中学校61.1%に準じた図書標準の達成を目指すべきだと思います。このことは、特別支援学校も特別支援学校でない学校と同じような図書標準を達成するということが大切だと捉えています。さらに、学校司書についても、小学校72.0%、中学校71.4%、それから高等学校は71.6%、これも特別支援学校もほかの学校と同じようなレベルまで引き上げるという意味で数字を出しました。こういうことをすることによって障害の種類であるとか程度に応じて、自立した読者であるとか、自立した学習者が育成できるのではないかと考えております。
 その次の読書バリアフリー法、子どもの読書基本計画等を踏まえたアクセシブルな書籍については、子供の発達段階であるとか障害の種類、程度に応じた読書指導であるとか学習指導というのは、学級担任であるとか教科担任が担当していますが、個別最適な学びであるとか、それから協働的な学び、こういうものを充実していくためには主体的、対話的で深い学び、これに向けた授業改善につながるために、専門的な視点でのカリキュラム・マネジメントであるとか、それから学校図書館活用計画、こういうことがきちっと作成できる司書教諭の養成であるとか、それから教育課程に即して必要な資料であるとかメディアの活用方法、こういうものを支援できる学校司書の養成、これが喫緊の課題だと捉えています。
 最後に、学校図書館は他の図書館よりもかなり規模が小さくて、専門的な知識のある人材も不足しています。こういう状況の中で教育課程に対応した資料であるとか情報など、こういうものを適宜支援してもらえる、公共図書館との連携、サービス等が受けられる体制が必要だと考えております。
 ということで、お手元の資料を読んでいただければ分かると思いますが、ぜひとも普通学級の子供たちの中にも特別な支援が必要な子供たちがたくさんいることと、そういうことを普通学級の子供たちもアクセシブルな書籍を手にとって、そして自分が読字障害であるなどをいち早く理解できる体制を整えてほしいと考えております。よろしくお願いします。
 
【秋田座長】  設楽委員、どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして松本委員、お願いをいたします。資料を出してくださっています。
 
【松本委員】  これまでの議論の中で高橋委員から雇用条件であったり、あるいは任用条件であったり、そうしたものにかかわらず研修を受けられるようにというのは非常にすばらしいことではないかなと思いますので、ぜひ、そうしたふうになっていただきたいと思いますし、あと、研修の内容に応じてオンラインであったり、あるいはオンデマンドであったり、様々な実施形態がありますので、そうしたものをうまく組み合わせるような、そうしたことも非常に重要ではないかなと思いました。
 また、池内委員からの代読サービスと対面朗読の話がありました。これは議論が必要なのかなと、整理が必要なのかなと思っております。
 では、資料を御覧ください。私は、こちらの資料に沿ってお話をしたいと思うんですが、読書バリアフリーというか、そちらと少し離れたことについてお話をしたいと思います。特に望ましい基準の規定の関係からお話をしたいと思います。
 本日のテーマでいうと、1の図書館資料、サービス、施設・設備の在り方というところで、児童・青少年、こうした人々の多様な利用者に対する資料等の在り方について、近年の社会変化等を踏まえた配慮事項、これがテーマでございましたので、この観点から3点ほどお話をしたいと思います。
  1点目は、施設入所者等に対するサービスということです。図書館利用に障害のある人々というのは多様に存在します。入院患者であったり、あるいは施設入所者というのはその一例であります。こうしたことについて望ましい基準の規定が必要ではないか、特に公立図書館、病院、高齢者施設であったり、あるいは矯正施設、そうしたところへの資料提供であったり各種プログラムを実態として実施しておりますので、そうした観点から、望ましい基準に規定が必要ではないか。
 IFLA-UNESCO公共図書館宣言というのがございます。そこでも特別なサービスと資料が提供されなければいけない、そうした人たちとして入院患者、あるいは受刑者が記述されておりますし、あるいは少年院法が2014年に改正されましたが、「少年院の長は書籍等の整備に努め」といったような、こうした規定も新たに設けられておりますので、こうしたことが必要ではないかというのが1点目です。
 2点目は多文化サービスということで、現行の望ましい基準を見ますと、多文化サービスについては利用案内の作成・頒布と、それから資料整備・提供がうたわれております。ただ、近年のヨーロッパ等では移民等の増加に伴いまして、図書館が資料提供にとどまらないコミュニティー参加の場、学習の拠点になっています。具体的なプログラムとしては移民を対象とした言語カフェとか、読書サークルとか、宿題支援等が挙げられます。これは、裏面にありますが、吉田右子先生、筑波大学の先生の著書などにもこうしたことが紹介されているものであります。
 日本においても今後言語的、文化的背景の異なる人々の増加が予想されますので、望ましい基準において、資料提供にとどまらない、その場所を生かした各種プログラム等を規定することが必要ではないかというのが2点目でございます。
 3点目は高齢者サービスということで、これも野口委員から話がありました。現行の望ましい基準の高齢者に対するサービスというのは、どちらかというと障害者サービス類似のサービスが載っている状況があります。しかしながら、高齢者であっても元気な高齢者もいるわけです。一例として下に体力テストの合計点、各年代の推移を載せておりますけれども、非常に体力、高齢者も向上していることがあります。日本でも様々な取組がありまして、例えば八王子千人塾塾生の会というのは、みんなでいろんなことを学び合うということを図書館でやっていたりしているんですね。そうした観点から、望ましい基準も現行の文言、これはもちろん必要なんですけれども、高齢者一般も視野に入れたサービスの規定が必要ではないかと思いました。
 私からは以上です。
 
【秋田座長】  松本委員、御意見ありがとうございます。
 それでは続きまして、曽木委員、お願いをいたします。
 
【曽木委員】  日本図書館協会の曽木でございます。今日いろいろお話を伺って重複するところもあったり、そもそも論を言わせていただくことになるかもしれないですが、まず、望ましい基準というものの利用者に対応したサービスのところが、障害者であるとか高齢者という形で、そこの対象を決めたものになっていますけれども、こういった読書バリアフリーであるとか、本日のテーマが多様な人々のためのということを考える上では、何らかの理由で読書や情報入手に困難のある者ということに変えていただきたいところがあります。
 誰もが使える図書館にすることを目指すというのがこういった計画、指針の目標になりますので、それは明示していかなくてはならないと考えております。具体的には障害者サービス用の資料の充実であるとか、サピエ図書館、みなサーチなど国会図書館などのシステムを活用した資料情報の入手と提供、それから郵送貸出しであるとか職員による宅配サービス、施設、学校へのサービスなどサービス方法の拡充、それから障害者サービスを担当する職員の配置とその育成、これはもう明文化していただきたいと思います。
 先ほどの御発表にもありましたとおり、障害者サービス担当が誰もいないという、それではもう、いつまでたっても障害者サービスを図書館が実施することにはなりませんので、もう全ての図書館に必ず担当の方を置いていただきたいことは明文化したほうがよろしいかなと思っております。
 いろんな電子書籍のアクセシブルな配信サービスなどについては、まだ発展途上であるところもありますので、これについて望ましい基準に入れるかどうかというところは検討の余地があるとは思っております。
 それから時間もございませんので、何より申し上げたいのは人材の在り方というところになります。研修につきましては、先ほど、研修を行っているところもありますけれども、その中で障害者サービスの研修を行っているところが多くはないこともありました。ただ、都道府県立図書館ではやっていただいておりますし、日本図書館協会でも障害者サービスに特化した研修を行っておりますけれども、これを地元で開催していただくことは非常に大事なことだと思いますので、ぜひ教育委員会などでも取り組んでいただきたいと思っております。
 何より障害者サービスというのが、実はいろんな先進例もあります。鳥取県立図書館であったり、ほかにももう30年、40年と取り組んでいるところがある自治体もたくさんありますけれども、利用が思うように伸びないというのは、先ほど知らない人もいるということもありましたが、本当にこれは障害のある方は知らないです。障害者として市で把握している人数の中で、どれほど図書館の障害者サービスを受けているかというと、ほんの0.1%、例えば1,000人いたとしても100人いるかいないか、100人なんてとんでもない、まだまだ50人、60人の世界というのが実際のところではありますので、これは障害者の方に知っていただくことがまずは大事だと思いますが、なかなかその機会というのはありませんので、これはそういった障害のある方、読書に支障のある方の周りにいる人たちに訴えかけていくことが非常に大事なことではないかなと思っていますから、まず、そこから始めるということを考えていくべきだと思っています。
 図書館も「私たちはこんなことをやっています」と待っているだけではなくて、そういった周りの方たち、ボランティアだとか団体とか、そういったところにもアプローチすることが必要だと思います。
 そういう意味で最近、障害者用の資料など並べている、りんごの棚というのがありますけれども、これは全ての方々にこういった資料の体験していただく展示の棚になりますので、こういうものを推進していくといいのかなと思っています。
 それからあと、学校図書館につきましては、司書の方たちが非常に大変な努力をされていることもありますけれども、先ほど緒方委員からお話がありましたように非常にリーダーシップのある校長先生というのが鍵だと思います。教職員の方にどれだけこういったことをやらなきゃいけないかという理解があるかどうか、ここが一つの鍵になると思います。研修をされてないのではないかという問題提起の場にもなりますので、学校司書だけではなくて教職員の方の研修の際にもこういう障害者サービス、障害のある子供、もしくは今、設楽委員からもありましたけれども、普通学級の中にいる支援の必要な子供たちへの支援ということを、そういう教職員の方たちにもお伝えすることが必要ではないかなとは思っております。
 その上で学校司書、それから司書教諭の方たちにはスキルを含めて支援のサービスの在り方であるとか、その資料に関する整備についても、研修が必要であろうかと思います。なかなか研修に参加する機会がないという今、そういった、司書もそうですし、学校司書の方もそうですが、なかなか今のお立場から難しいところもありますので、オンラインというのも一つの手だとありますけど、少しでも研修に参加することを何かで義務化というか、明文化していただくと、大分ここで所属のところの取組方は違ってくると思いますので、ぜひこれはお願いしたいと思います。
 それから、これだけは。全ての県立学校には学校司書の配置をお願いしたいと思っております。
 私からは以上です。
 
【秋田座長】  曽木委員、どうもありがとうございます。
 それでは続きまして、植村委員、お願いをいたします。
 
【植村委員】  植村です。今ほど、曽木委員が発言されたことと同意見ですが、私も、研修の重要性を徹底させていくことだと思いました。野口委員の発表で、研修実施がなしという比率の低さにちょっと驚きました。その意味では高橋委員が指摘されたように、研修を積極的に受けるようにすると明記するべきだと思います。もっと言うと、館長自ら研修を受けることと踏み込むくらいがいいと思います。
 何よりも学校図書館の館長は校長先生です。ヒアリングしていく中で感じるのは取組に対する温度差の違いです。校長先生がその辺に対してあまり理解がないという声が聞こえてきますので、そこに対してしっかりと外圧じゃないですけど促していただきたいなと思います。
 あともう一つ、野口委員の資料24枚目に予算がない、職員の配置、専門性がないとありました。電子図書館の普及のときも全く一緒で、やらない理由付けになっていて、アンケート項目に「やる気がない」と入れたいくらいです。熱心な校長先生が動かした事例があるように、いかにやる気を動かしていくかです。
 これは、23ページにある、広報が図書館の外に出てっていかない問題と根は同じです。図書館に来る人たちは別に電子図書館に関心ない人が多いし、図書館に来られる人は、障害に対する認識が低いのはやむを得ないところがあります。図書館の中だけで広報しているのは楽ですが必要としている人に届かないわけで、その担当者として意識が低いと思います。だから自治体が積極的にここを伸ばしていかなければいけません。
 最終的に電子図書館が普及したのもコロナであったということでお分かりのように、外圧が来ないと内発的に動かないです。それは外圧が来たときによかったのは、財務がそこで納得した。結局、電子図書館もこの障害サービスも、予算は提案しているけど、いつも財務が動きませんというのが言い訳になっているのです。だから財務、つまり自治体全体に理解させていくことが重要です。何よりも障害者差別解消法と読書バリアフリー法は、国と地方自治体の責務ですから、書き方としては自治体をしっかり動かすような、言うなら図書館と学校図書館の人たちを応援するような、外から向けた書き方って重要かなと思ったところです。
 以上です。
 
【秋田座長】  植村委員、ありがとうございます。
 それでは続きまして、伊藤委員、お願いをいたします。オンラインになります。お願いします。
 
【伊藤委員】  ありがとうございます。本日、多様な人々のための読書環境整備ということで、たくさん新しいお話を伺って大変勉強になって、毎回学びが多いわけですけれども、先ほどから意識の高い校長先生とか、校長という名前が出るたびにこの中で小学校の校長は私だけですので、ずっとどきどきしながら非常に胸が痛い思いをしながら聞いておりました。
 その中でたくさん御提案があったのですけれども、私自身、小学校の校長の仲間、また教員の中でアクセシブルな書籍って言われているかもしれないですけれども、点字図書とか拡大教科書、DAISY教科書などについては小学校の教員もぱっと分かるのですけれども、アクセシブルな書籍って言われて、どれだけの教員が分かるのか。あとまた、設楽委員から小1ショックという言葉も、私自身、多分話題になっていない、小1プロブレムは話題になりますが、そういった温度差を今日お話の中で感じた次第です。
 私、全国連合小学校長会であり教育環境整備等委員会でして、的が外れるかもしれないですが、新しい時代の学びを実現し、児童の多様な実態に対応した教育環境等の整備の調査をする担当しております。その中で、本当に読書のバリアフリーではなくて実際のバリアフリーについて、こんな調査の結果が今年、出ています。昇降口、玄関から教室までのバリアフリー化、国の基準では令和8年度までに100%達成する目標がされているのですけれども、全国の都道府県、抽出校にはなりますが全く達成が難しい、段差の解消が難しいパーセンテージが34.8%でございます。実際の方針と現場の温度差が、合理的な配慮の進むというところで、なかなか難しい実態があるのかなという話を今日のお話の中で感じて、今日の学びを生かしていかなければいけないなと思いました。
 お話の中で幾つか興味深く考えたところがございます。それは外国籍児童の急増について、最初の御提案のお話の中で、多言語対応ということで日本語の分からない子供たちが小学校の現場でも急増している、東京都というところだけかもしれませんが、本当に急増しておりまして、その中でデジタル書籍の可能性がますます高まっているのではないかなと、こういったところにアクセスできることは大変大きいかなと思います。
 それから私の自治体でもDAISY教科書、これを児童の端末、タブレットPCで使用しやすくなり、読み書きに苦心する児童が安心して学習している様子が本当に日常的になっていることも注目があるかなと思っています。
 それから私自身、また別の話になりますが、多様な人々のためにということで、学校の図書室ということを考えたときに、本日のお話の中では障害のある方々のお話が多かったと思うのですが、実際に学校の図書室だったら安心して過ごすことができるとか、図書室が居心地のよい場所であるということ、また、学校というのは様々な活動をするということで、施設が例えば多目的室のような、いろいろな教育活動に使える部屋がない学校も多いときに、この図書室の机などを動かして例えば保護者会をやるとか、学年の学習に使うなどという例がございます。そういった意味でも多様な読書環境の整備というところで、私自身が思い浮かんだイメージとして紹介させていただきます。
 以上でございます。ありがとうございます。
 
【秋田座長】  伊藤委員、ありがとうございます。小学校の校長先生のお立場から御発言をいただきました。
 ほかにはいかがでございましょうか。
 次の手が挙がるまで、私の方で、参考資料を出させて、机上配付させていただいておりますので、多少御紹介をさせていただきたいと思います。これは絵本専門士という資格を持った人の中には、ボランティアで公立図書館に行かれる方もあれば、専門の司書の方もおられ、学校図書館等で関わっていらっしゃる方から、実際にバリアフリーの多様な子供たちに特別支援学校の教員として関わっておられる方など、いろいろな方がおられます。
 その中で、バリアフリーについて絵本専門士が御自身の活動から考える課題は何かということで伺ったところ、LINEグループで伺って全国いろいろなところからのお声が上がってきております。今日、今まで委員の先生方が言ってくださったものと近いところもあると思いますが、少し概要を、お話を1ページ目のところを中心にしたいと思います。
 読書バリアフリーとしていろいろ便利な支援ツールはあるけれども、道具はあっても絵本を読んでくれるという、そういうものはありませんという声です。
 また、音声DAISYにしても音声のみで、絵本を読んでくれるというような、絵の部分というものはないのだという御意見であり、そこに先ほどから職員配置の問題などが出ていましたが、人的な支援が不可欠なのではないかというようなことであります。また、学校にお勤めの方からは、学校によって、今日もすばらしい学校もあれば、学校間差が大変に大きいということであります。デジタル教科書を導入している学校はごく僅かであることなどが挙げられるようなことで、ICT機器においても学校でのみ使用されている場合もあれば、それから文字を読むアプリを入れる権限がないなどで実際には使用できないとか、それぞれの自治体の実情による差があり、また、教員の習熟度も様々であるので対応ができないこともあり、ICTに関しても実際には故障対応などの支援員がいないので、非常に時間がかかっているというようなことです。
 また、絵本は幼児のものと思われがちであるが、絵で視覚的に理解し、文章を聴覚的に理解する総合的な読書ツールであるけれども、特別な支援が必要な発達段階にある子にとっては、どの年齢においてもこれが最適なツールの一つなのではないだろうかというような御意見も寄せられました。
 また、多様ということで外国籍の話、先ほど野口委員からもございましたが、公共図書館での外国語絵本とか書籍化の活用が実際には進んでいないと感じているということです。特に外国にルーツのつながる子供たちや親のために図書館を利用する、そういう促す仕組みが必要だとの意見もあります。
 先ほどから準備されていても、それが使えるように外国籍の方とか、障害の場合もそうですが、周知広報がなされていないので、先ほど曽木委員のお話にありましたが、実際に準備されていても、それが利用できることを知っている方が少ないようなこともあるということでございます。外国語の絵本の蔵書や、その大きさに質に大きな差がある。子育て中の外国から来た方の生活範囲に、気軽に母語でもできるようなことが必要ではないかとのことです。
 また、繰り返しこの14人の方の意見にもあったのが、障害者サービスの担当専門がいないという人の問題でございます。読書バリアフリーを広めるのはアウトリーチを、サービスを含めて広報とかメディアの力が、先ほど外圧という話もございましたけれども、中だけではなくて、それをいかに外の一般の方にも広げていくかということが重要ではないかということでございます。
 また、読者バリアフリーは、どんな子に、どんな人にでも大事というようなことは言えるのだけれども、実際の対応はピンポイントでいろいろ準備をしていかないと、あまりにも広いと様々提案は出るけれども、それも違ってくるのではないか、もう少しピンポイント的にいろんな対応していくことも必要ではないかというような意見もありました。
 また、皆様が言っておられるのと同じで研修ですね。サービス提供者側の体系的な知識とか、特にバリアフリーについては技術を学ぶ機会がまだ少ない、同じ不安を抱えているような人が一緒に学習できるような、そういう機会が増えていくといいと思っているとのことです。
 読書バリアフリーに限らず、特別支援教育や療育に関して、先ほどもお話がありましたけれども、そういった場所への配慮も必要なのではないかということを挙げさせていただいております。また、先ほどもお話が出ましたけれども、「りんごの棚」というか、りんごコーナーというようなことについて、もっとそれを拡張していくことが必要ではないかといった御意見ですとか、特別支援や地域、家庭での必要性など様々、十四、五ページになりますので、ここで全てを御紹介はできませんけれども、生の実際に実感を持っていらっしゃる方のお声を御紹介させていただきました。
 ほかに、若干だけ時間がございますが。
 ありがとうございます。では、手塚委員、お願いをいたします。
 
【手塚委員】  紫波町図書館の手塚です。町の図書館として、もしかしたら当町だけのお話になってしまうかもしれないのですが、思うところをお話しします。
 先ほども鳥取の小林さんからもお話ありましたけれども、認知症の本人ミーティングというのがとても効果的だなと感じました。町の図書館として、恥ずかしながらまだ障害者サービスですとか、多文化サービスにほとんど手をつけられていないところがありまして、その打開策として関連部署、行政の中の担当部署に、まずはどのようなニーズがあるかとか、どのような人がいるかなど相談に行ったことがあります。
 そうしたら、実は全てを把握し切れていない。例えば対象者の方たちに届けたいけれども把握できていないので、難しく感じている、一緒にできることがあったら一緒に協力したいというお話だったんですね。
 もちろん図書館間の連携も、専門の機関もそうなんですけれども、まずは担当の行政機関ですとか、そういった専門の機関と連携して当事者の方のニーズを把握していくのが、まずは大事かなと感じています。
 同じニーズの把握ということから行くと、先ほど学校司書の配置は7割ということで数字が挙がっていました。当町の実情を言いますと、学校図書コーディネーターという名前で7校の小・中学校に対して3人が週に一度、4時間だけ勤務している状態ですね。そうなると1校あたり、その時間で棚を整理するだけで終わってしまうことが多い実情があります。その方たちは町として「学校司書」として報告しておりますので、7割の学校司書に含まれています。学校経営の中にも学校図書館やその方たちはもちろん入っておりません。学校の計画、運営計画などの中に学校司書の役割を位置づけて、子どもたちと実際に接している学校司書が、読書の支援が必要な生徒のニーズの把握するですとか、そういったものも大切な役割として担っていけるようになればいいのではないかと思いました。
 以上です。
 
【秋田座長】  手塚委員、どうもありがとうございます。
 それでは、そろそろ本日の閉会の時間も迫ってきておりますので、次の議題に移らせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、次の議題3、その他ということですが、事務局から何かございますか。
 
【毛利図書館・学校図書館振興室専門官】  第4回会議の日程について御連絡いたします。資料4を御覧ください。次回は5月22日木曜日、16時から18時を予定しております。会場は文部科学省会議室を予定しており、次回もウェブ会議を併用して行います。
 以上でございます。
 
【秋田座長】  ありがとうございます。次回は5月になるということでございます。今日、もし時間の関係で御発言したかったけれども、ちょっと時間を見て挙手されなかったなどの方がおられましたら、後ほどメールにて事務局に御意見等をお送りくださいましたら、そのときは御意見も含めて第3回における委員からの主な意見という形でまとめさせていただきたいと思います。今日御発言が対面、オンラインともになかったけれどもというような方も、必要があれば次、5月まで時間が空きますので、今日のことについて必要があれば御意見をお送りください。
 それでは、本日の議事は全て終了いたしましたので、第3回の会議は皆様の御協力もありまして時間内に終わりましたので、これで閉会とさせていただきたいと思います。
 改めて野口委員、緒方委員、ありがとうございます。それでは、終わりにしたいと思います。
 オンラインの皆様も、どうもありがとうございました。
 

お問合せ先

総合教育政策局 地域学習推進課 図書館・学校図書館振興室
電話番号:03-5253-4111(内線:3484)