図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議(第2回)議事録

1.日時

令和7年1月23日(木曜日)16時00分~18時10分

2.議題

  1. デジタル社会に対応した図書館・学校図書館の運営充実の在り方について

3.出席者

委員

秋田委員(座長)、池内委員、伊佐治委員、伊藤委員、植村委員、緒方委員、紀之定委員、小林委員、汐見委員、設楽委員、曽木委員、田井委員、高橋委員、土屋委員、手塚委員、中村委員、奈須委員(副座長)、野口委員、花田委員、堀川委員(副座長)、松木委員、松本委員

文部科学省

茂里総合教育政策局長、平野社会教育振興総括官、高木地域学習推進課長、小沢図書館・学校図書館振興室長、毛利図書館・学校図書館振興室専門官

4.議事録

【秋田座長】 皆様こんにちは。定刻となりましたので、これより図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議の第2回会議を開催いたします。
初めに、本日の出席状況や資料の確認など、事務局から御報告をお願いいたします。

【毛利図書館・学校図書館振興室専門官】 本日の配付資料は、議事次第にありますとおり、資料1から3までが本日御発表される委員の皆様の資料です。資料4が本日の会議における論点案でございます。資料5につきましては、今後の予定としてお配りしております。また、参考資料1として、第1回会議の主な発言をまとめた資料がございます。参考資料2及び3は参考資料集です。
そのほか、小林委員、設楽委員、堀川委員、松本委員より委員の皆様に配付を希望される資料がございましたので、そちらも机上に配付しております。
委員の出欠状況について御報告いたします。本日欠席の委員が1名いらっしゃいます。御欠席は林委員です。
以上、会場出席13名、オンライン出席9名となっております。
以上、よろしくお願いいたします。

【秋田座長】 ありがとうございます。本日の流れですが、本日の議題は、「デジタル社会に対応した図書館・学校図書館の運営充実の在り方について」でございます。まず3名の皆様に御発表をいただくこととしております。
まずは、植村委員より、図書館・学校図書館におけるデジタル活用の概況と今後の運営充実について、電子図書館・電子書籍サービスの導入状況を中心に御発表をいただきます。続きまして、次に池内委員より、図書館におけるデジタル活用の現状と今後の運営充実について御発表をいただきます。そして最後に、土屋委員より、学校図書館におけるデジタル活用の現状と今後の運営の充実に向けてについて御発表をいただきます。
お三方の御発表が終わりましたら、事務局より今回の会議における論点(案)を御説明いただきます。その後に御発表に関する質疑や論点案について意見交換の時間を1時間程度取りたいと思っております。
それでは、発表1ということで、まずは植村委員から御発表いただきます。植村委員、よろしくお願いいたします。

【植村委員】 よろしくお願いいたします。座長から御紹介いただきました演題で発表させていただきます。
次のページをめくってください。前半、まず、現状の報告からです。電子図書館・電子書籍サービス調査に関しては、同じく委員である野口武悟先生と電子出版制作・流通協議会で10年以上にわたって調査してきています。
一瞥してお分かりのように、いわゆる電子書籍元年という2010年あるいは2012年頃から市場が立ち上がっていって、実際電子書籍の市場は2015年から増えています。よくコミックだけだと言われますけど、文字もの電子書籍は市場が大きくないですけど、点数は非常に増えていっています。障害者差別解消法とか読書バリアフリー法というのは必ずしもきっかけにならなくて電子図書館が増えなかったというのはお分かりだと思います。ところが、これが2020年、御存じのように、コロナ禍によって一気に電子図書館サービスが急増していきます。
これは背景にもう一つ、新型コロナウイルスの対応の地方創生交付金というのがあって、これを利用した電子図書館も多かったということになります。実際、この交付金だったので、2021年、2022年にやめてしまうところがあるんじゃないかなと、調査する中で懸念していたんですが、それは現在まで一つもありません。始めたところは全てずっと続いております。
ただ、積極的に電子図書館が評価されないときにやった図書館と周りがやったのでやったという図書館のある種の体温の差というのは調査の中で浮かび上がってくるところがあります。
実際、2023年、24年は減ったんですが、減ったというのは、実は大分普及してきたことによって、町村がなかなか参加できないということです。これが次の導入率というところで見ていただければと思います。
電子図書館導入自治体、自治体率です。これは1,788の自治体でどこまで契約しましたか。御存じのように、電子図書館は自治体契約ですので、館ごとではありません。実際、もう3割を超えました。上から見ていただくと、都道府県、政令都市や特別区という人口が多いところはかなり契約率が高くて、市で大体半分近く。ところが、町とか村になると途端に減ってしまいます。実際人口率ですと65.7%なんですが、逆に言うと地域的な機会ということにおいては、まだまだ町村が弱い。
これを解決する方法が、次のスライドにありますが、やっぱり広域ですね。広域で契約する。広域連携だと思います。広域連携というのは、やはり仕事とか、あるいは、生活、教育、こういうのをある程度学びを共有している圏域でやるのがふさわしいかなと私は思っております。それがやっぱり地域の中で市が中心となって導入していただくいわゆるコンソーシアム契約ですね。これを今後広げていかないとなかなか、今、導入が始まらない町村までは進まないかな。
あと、何よりも電子図書館の有効性というのは、例えば島嶼部とか、そういう島、これなかなか建物を建てるのが大変なんですけど、電子図書館を入れていただければ島ってすぐ利用できるようになります。このメリットはとても大きいと感じております。
電子図書館のメリット、これはアンケート調査結果です。当然のことながら非来館サービスというのはコロナのときに注目されて、半年以上図書館が閉まっていても貸出しもできるということなんですが、これはなぜ伸びたかというと、実はコロナに入って既に電子図書館を入れた図書館の利用率が対前年度5倍に跳ね上がったというニュースがかなり出たんですね。そのことによって、やっと非来館貸出しのメリットが気づかれたというのがあると思います。
その上で、公共の方が、メリットというと、アンケートでは長年、文字の拡大、文字の音声読み上げ、地色の反転、オーディオブック、いわゆるアクセシビリティに対して、これは紙ではできないですから、紙のメリットということを指摘されていたところがあります。
さらに最近注目されているのが、多言語電子書籍です。実はあるサービスベンダーさんではタイトル数215万タイトル、130言語を準備しているんですね。これはもちろん契約しなければ使えないんですが。ちょっと私、感動的なシーンに立ち会ったことがありまして、スリランカの出身の子だったかな、親子でいらっしゃって、英語とかフランス語とかドイツ語の言語ってそこそこ図書って手に入るんですが、なかなかスリランカとか、そういう言語って手に入りにくいですね。それが、親子でいらっしゃって、電子図書館があるよって、これ契約している図書館で、僕が子供の頃読んだ絵本だと言ったら親子で泣き出しちゃったというシーンがあって、本当にそれで、その子は以来、電子書籍を借りていくと。何かやっぱり多分非常に不安なんかがあるときに、自分が子供の頃に読んだ本に、これ電子書籍ならではだと思うんですね、電子図書館という場でそういうのを借りてこられる。非常に注目すべきメリットかなと思っています。
まさに電子ならではのポイント。紙ではできないサービスというところが注目されたと。じゃあ、導入館における懸念は何なんだということになるんですが、これがずっと繰り返されてきているところなんですが、特に、今までになく伸びてきたところが、電子書籍サービス中止に対する不安。電子書籍サービス実施の十分な知識がない。方法が分からない。担当者の問題とか、どう説明していいか利用者に分からない。いわゆる担当者の知識不足みたいなことの不安が出てきた。懸念。あるいはこれは導入館が増えたことによる懸念かなと思っています。特に、前半、コロナ以前に積極的にやった人たちは割と状況、反対を押し切ってでもやったみたいな熱心な人たちが多いんですけど、周りがやったから、首長が、議会が、住民からの要請でとなってくると、何かちょっと後ろ向きな声が上がるなと思っています。
次、コンテンツの課題はどうかと聞くと、これも相も変わらないところが常に上がるんですね。それは何かというと、新刊のコンテンツが少ないじゃないかとか、コンテンツが高いとか、ベストセラーが提供されないとか、タイトルが少ないというのはいつも高いんですが、実はこれ見ていただくとグレーが一番減っています、最近は。ネガティブな意見がだんだん減少してきている。この辺に関して強く指摘するのではなく、むしろ、読み上げ機能が不完全ではないか、読み放題パッケージが少なくてもっと増やさなきゃいけない。これはちょっと後で読み放題パッケージのメリットをお話しします。あと、書誌情報とか十分じゃない。意見が割とネガティブからポジティブな意見に変わってきたなと。これもやっぱり電子図書館ということが知られてきたなということと、特に読書バリアフリーということでの読み上げ機能とか、学校連携における読み放題ということがしっかりと課題として指摘されてきたなと思っています。
管理メリット。これは大体分かるんですが、まず、アクセシビリティ対応ができる。これはすばらしいですね。特に今図書館が障害者差別解消法の中で対応しなくちゃいけないという状況の中、合理的配慮というのを求める中で、やはり電子書籍、電子図書館を導入するということが、アクセシビリティ対応ということが充実できる。さらに、実は貸出・返却・予約業務が自動化できる。一々、返却、延滞督促もする必要もないわけですね。夜中の零時にきっちり借り終わって、次の人が借りられる。汚破損はあり得ないですね。書架スペース問題がなくなるというようなメリットが実はここに来てやっと認知されてきたなと思います。以前ここをなかなか認知されてなかったんですが。
だからある意味では、人的労力の削減というところもありますし、何よりも、実は貸出率、紙の図書より高くなると書いてあります。これは後でもう1回言いますが、実は延滞がないですし、夜中の零時に終わると次の人が借りられるので、回転率が非常に高まるんです。これは後で数字でお見せします。
コンテンツ、さっき必ずアンケートではコンテンツ少ないと言うんですが、そんなことないんですよ。まず一般の文芸、公共図書館では割と多い図書館流通センターさん、TRC-DLですと大体今16万2,000タイトルぐらいありますかね。それと大学図書館が中心に入れている学術専門書系が多い丸善雄松堂さんのサービス、Maruzen eBook Libraryが16万くらい。これはいわゆるリフロー型とフィックス型の違いがあるので、あまりタイトルがかぶらないんですね。大体ざっくり見ると2割ぐらいしかかぶってないので、多分25万タイトルくらい、契約しさえすればあるんです、電子図書館。
これを何をもってどの口がコンテンツ少ないんだと言うんだって僕言うんですが、次に、どれくらいの契約があるか見ていただくとお分かりだと思うんですが、実は、平均して、2024年で見ていただくと、7,700タイトルが平均です。25万タイトルくらい、20万を超えるタイトルが契約できる中で、まだ7,000タイトルぐらい、実際1万超えているところがやっと3分の1まで来ました。
これを見ていただくと、2022年が契約タイトルが7,000弱で、約倍の1万4,000くらいが貸出しされているんですが、2023年が実は契約タイトルに対して貸出回転率が3.5倍、2024年は4.45倍まで回っています。
これでお分かりのように、大変電子書籍の、貸出率と言っていいかどうかちょっと微妙なところなんですけど、いわゆる回転率が非常によいです。ちなみに一般の書籍では多分蔵書に対する貸出しって2倍を行ったらいいかなと言われている。これは県立図書館には蔵書が多いところは低いですけど、いわゆる公共図書館では2倍が一つの目安かなと思っていますが、確実に電子書籍の貸出しはこうやって回転率がよいということです。
御存じのように、文部科学省のほうから「1人1台端末環境下における学校図書館の積極的な活用及び公立図書館の電子書籍貸出サービスとの連携について(事務連絡)」が出ました。この結果なんですが、実は学校連携・導入が広がりつつあります。
これはちょっと私が今日の発表のために電子図書館のサービスベンダーさんにお聞きした数字ですが、2020年に通達が出るまでは、学校と公共図書館が連携している自治体はおよそ30でしたが、現在は132まで急増しています。
さらに、OverDriveさんは、これは現状なんですが、契約しているのが60自治体のうち20自治体が既に学校連携をしております。
さらに、学校図書館だけで単独で導入しているのはどれくらいか。大体私立が多いとは思われていますけど、実際全体では57校のうち、公立の小・中・高校が契約しているのが13くらいまで上がってきています。OverDriveはやっぱり30校くらいというふうに確実に学校図書館そのものが契約する例も増えております。
これが立川市さんの例です。立川市では、当初は3,000くらいだったんだけど、小・中学校にID・パスワードを配ったら一気に1万3,000まで跳ね上がったということと、これを見ていただくと、2024年の実績は、実図書館、つまり紙の図書の蔵書分の貸出しが大体1.5倍なんですが、電子図書館は貸出しが10倍近いと。閲覧でただウェブ上で見たのを見ると30倍くらいになる。これがきっかけで実は小・中学生がたちかわ電子図書館を使った結果、図書館に来るようになったという事例は確実に立川市の図書館の人たちが報告されています。今まで来なかった小・中学生が非常に来るようになった。
もう一つ、愛知県日進市、これはクラウドファンディングでして、日進市は学校電子図書館しかやっていません。公共図書館の電子図書館はやってなくて、学校を優先したという事例であります。
もう一つ、学校連携で利用が伸びた例として、ある図書館の事例です。これ、グラフが跳ね上がりますよね。ここ、まさにこのときに、学校、小中学生にIDとパスワードを配ったんですね。学校連携前の先ほどの貸出率は5倍前後で推移しているんです。ちょっと下のほうに、見にくいですが、数字ありますけど、貸し出したユーザー数の貸出数というのを見ると5倍くらいなんですが、学校連携した途端、8倍から10倍まで跳ね上がります。つまり、小・中学生が電子図書館の貸出しを非常にしているということです。とても有効。このことで今まで本を読まなかった子たちが読み始めたとはっきり聞いています。
今後の運営充実に向けて求められること。ちょっと駆け足になっていきますが。紙と電子をどう使い分けるかということなんですが、実はある公共図書館の回答例の中で、文字の拡大、読み上げ機能がついたのは積極的に収集する。読書バリアフリー対応。
年度版のような情報の変化が激しいのは有期限ライセンスでいいじゃないかと。
文芸書のようなものは、買い切りで、長期読める。
もう一つ、児童書の選定基準で収集しないと言っている学習参考書・各種問題集、これは書き込みのおそれがないために購入可とすると。これ本当に実際よく聞く話です。大体問題集って書き込まれちゃうんですよね。これが電子図書館のメリット。
読み放題パックによる効果という、ある電子図書館の導入した方の御意見です。読み放題パックを24週、およそ半年、契約費用が半年間で43万円。読み放題というのは、何人もが読めるんですね、同時に同じ本が。学校なんかで集団読書なんかにも使えるわけです。
その結果、ベスト30の、これよくやる書籍の値段に年間で何回貸し出されたかを掛けるとどれくらいメリットがあったかってよく使われる数字をちょっと援用しているんですが、実は回転数というんですか、閲覧数がすごく高いので、実はベスト30の値段に回転数を掛けると4,300万円分になる。つまり、費用対対効果からすると100倍。仮にこれを契約したら、実際紙の本で貸し出したら1週間に1回が大体せいぜいですし、複本できないですから、200万円程度かなと。これでもいかに費用対対効果が高い。
これについてコメントは、これだけの拡散力は従来の紙の本による閲覧や貸出しでは考えられない単位であり、多くの子供に読書を進める手法として抜群の効果を期待できると書かれています。
次に、C市の御意見です。これも同じなんですが、紙書籍では到底あり得ない進度で普及・拡散しており、これほど多くの子供たちが読書にいそしんでいる実態を顧みると、読書力向上に有能に機能していると言えようということで、費用対効果の面だけに限らないと言っています。
次、今後に向けて求められること。少し時間が来ましたが。まずやっぱり電子図書館による広域連携は先ほどお話ししたとおりです。これは地域に根差すということもありますので、やはり地域にある館というのが中心になってやっていただく。
ただ、ちょっと課題としては、やっぱり利用ID・パスワードをどう共有するかということをしっかりと自治体内での役割分担は必要かなと思います。なかなか公共と学校連携の小・中学生のID・パスワードの管理ということで、それが連携を止めている事例は聞いております。
2つ目としては、まさに地域における館が読書バリアフリーの拠点になると。やっぱりリアルな対応は絶対必要です。そういう意味においては、読書バリアフリーは、電子書籍とかが、何よりも小・中学校に向けては、ディスレクシアの子たちへの対応とか、電子ならではの役割があります。
そういう意味ではコンテンツの充実と書きましたが、やっぱり一番大事なのは、良質なコンテンツを送り込む、デジタル読書を送り込むということだと思います。スマートフォンの中で、子供たちが、要するに小学校に上がる前から自分たちで利用しているときに何を見ているか分からない、ではなくて、積極的にどう有効に使ったらいいかと指導するのが僕はやっぱり学校教育であったり図書館の役割じゃないかなと思っているんですね。
そういう中では、紙の本は全然読まない、いわゆる不読者と言われている子たちのかなりの中で、実はタブレット、スマートフォンで読んでいるんですね。まさに読者です。こういう読者たちに対する朝読とか通学時間、家庭での利用を積極的に促していくということと、やっぱり実は小・中学校と高校ですと、中学までの不読率が高まる前の中学生にどうやって読書を進めて定着するか。高校になるとちょっと遅いわけですね。中高連携教育と書きました。
あともう一つは、不登校生徒と特別支援生徒。特別支援学級、学校は、お分かりのとおりですが、どれほど普通学級の中にいわゆる特別支援が必要なディスレクシア、まだ気づかないディスレクシアの子たちが多くなっていると。これは関係者でよく御存じの先生方が多いと思いますけど、そういう子たちが本当に電子書籍で読んでいるところが音声で読みながら色が変わるということで、読めるようになったという、こういう子たちもいっぱいいます。これはやっぱり電子ならではです。
もう一つ、こういうデジタル教材、デジタルアーカイブを利用した教育ノウハウがまだまだ足りない。長い年月の間で教室における紙の教科書を使う教育ノウハウ、いっぱいたまって、先生方は持っていらっしゃるんですが、やっぱり電子は足りないと思います。
そういう意味においては、学校図書館、学校図書館の電子図書館がGIGAスクールの中心に置けるようにすると。今までの読書センターではなく、情報センター、学習センターとしていかに学校図書館が役割を果たすかというのが僕は求められていると思います。
そこではやっぱり人材育成です。デジタルに強い司書教諭とデジタルに強い学校司書が組むと書きましたけど、やっぱり両方強くなきゃ駄目なんです、ここは。教員と学校司書の連携もありますけど、もう一つ、最後に人材育成について書きましたけど、やっぱり圧倒的に紙の本原理主義というのがあるんですね。紙の本を読むことが大事なのかと言うけど、紙の本を読むことだけが大事とまで解釈されているところがちょっとありまして、そこは何としても私は打ち消したいと思います。
ちなみにこれ岩崎先生や渡部先生が以前からよく調査されている、紙と電子書籍の使い分けという調査を毎年やっていらっしゃるんですが、これ実は紙書籍にとっても愛着、もっと言うと憧憬すらあるという、紙の本に愛着があるというのは、ある種の情緒的な物への愛着が強いと、大体そういう人たちは電子書籍の短所を最初にどんどんどんどん指摘する。これだから電子は駄目だみたいなことを言って結果的に利用しない。
ところが、むしろ情報としての関心が強い人たちは、こんな便利なものはないし、有効だしという機能評価をするので、長所を評価して積極的に利用する。実はこれが分かれちゃったままで、いまだどうも紙愛着どころか執着している人たちが多いんじゃないかなとちょっと思っているところがあります。現に私も図書館に回れば、やっぱり紙の本を読むことが読書ですとはっきりおっしゃる方に出会います。
ちょっと最後に1つ。アナログの能力、これ教育能力と考えていただいていいと思うんですが、皆さん方ベテランの紙の教科書を使った、ノートを使った教育能力が非常に優れた、1対して2、倍以上の能力ある方が、じゃあデジタル教科書をやったらあまり能力がないから0.4だとすると、2.4の力になったかなと思うじゃないですか。これは学際研究のときによく言われる定説なんですが、学際研究掛け算論というんですけど、2の紙の能力があっても、電子の能力が0.4だと0.8という平均以下の力しか出なくなってしまう。
だから両方の力を高めるというところに、ぜひ人材育成。この人材育成は、決して個人の、あるいはボトムアップ的なのではいかないです。やっぱこれはリーダーシップだと思います。今日のこの会議には多くの学校長会の皆さんとか、PTAとか、リーダーシップの方がいらっしゃいますけど、ぜひ上からこういうことを現場に向けて普及させていくということをしていただきたいと思います。抵抗勢力はなるたけ、あなたもちゃんと学びなさいと言っていただきたいと思うわけです。
そういう意味で最後です。コンテンツの信頼性。やはりネットは非常にあります。生成AIも注目です。でも、誰が信頼性ある品質あるギャランティーを与えるか。やっぱり図書館・電子図書館というところに役割があると思っています。図書とか、新聞とか、こういう司書、編集者がつくり上げたものというものをしっかりとデジタルの世界の中に提供していただきたいなと思います。
ちょっと長くなってすいません。御清聴ありがとうございました。以上です。

【秋田座長】 どうもありがとうございました。大変刺激的なお話をいただきました。
それでは、続きまして、次に池内委員から御発表いただきます。よろしくお願いいたします。

【池内委員】 筑波大学の池内です。どうぞよろしくお願いいたします。今の植村委員のお話を踏まえて、私は公共図書館を主に研究対象としておりますので、公共図書館における電子書籍のお話をさせていただきたいと思います。
私は実は数年前から、いわゆる電子書籍、特に電子書籍って非常に様々なタイプ、ベンダーがいらっしゃるんですけれども、日本でしたらTRCとかOverDriveさんがやっていらっしゃる。アメリカでしたらOverDrive、かなり寡占的ないわゆる電子書籍サービスのコンテンツレベルの調査をやっておりまして、それについて研究発表が行われましたので、その話と提言的なお話をさせていただきたいと思います。
今回調査したのは日本の公共図書館でいわゆる電子書籍サービスを実施している419とアメリカのライブラリーディストリクト単位で実施している579の電子書籍サービスについて調査を行いました。
次、お願いします。上が日本で下がアメリカなんですけれども、提供されているコンテンツ数、平均値と中央値を見ていただくと分かるんですけれども、日本とアメリカでは平均値で7.3倍、中央値で6.3倍の開きがあるんですね。
もう一つは、電子書籍とオーディオブックの普及です。アメリカではオーディオブックが非常に普及していて、いわゆる書籍と同じように利用されているけれども、まだまだ日本では利用されていないんですが、意外とこれいいんですよね。目による読書が難しい方ってとても多くいらっしゃるし、私なんかも、お料理作りながらとかでも聞けちゃうので、とっても実はよかったりするので今後普及していくんじゃないかと思います。
次、お願いします。これは日本だけなんですけれども、電子書籍サービスを実施している図書館において、紙の蔵書と電子で提供されているもの、これはあくまでも先ほど申し上げたTRCとかOverDriveさんの数だけをカウントしているんですけども、約150倍ぐらいですかね。まだまだ差が大きい。これはアメリカでもそうでして、150倍ほどではないんですけれども、まだまだ紙の資料のほうが当然大きいということになります。
実際どのようなものが利用されているのかということなんですけども、これ、利用の多いコンテンツを1位から15点挙げているんですが、1番は『変な家2』といって、皆さん御承知の昨年日本で一番売れた本ですね。2位以降は、見ていただくと分かるんですけども、これ多分読み放題パックで提供されているんだと思うんですけども、コナン君の歴史みたいな本がとにかくすごく利用されているんですね。
今、日本の公共図書館の電子書籍サービスをどなたが利用しているのかというのは、これ見たら一目瞭然で、子供たちなんですね。先ほど植村委員がおっしゃってくださったように、全然利用が伸びなかった電子書籍サービスが、自治体内の小・中学生にアカウントを配布した瞬間に激伸びするということがよくありまして、そういう状態になっていると。
次お願いします。これはインプレスが毎年やっている調査の結果なんですけど、電子書籍の利用。色の濃いほうが有料でも利用している、色の薄いほうが無料で利用していると。これ性差は全然ないんですね、珍しく。ところが確実にあるのは年代差なんですね。50代、60代の方、先ほどちょっと紙に固執する世代というか、電子を批判していらっしゃる世代もいらっしゃるんですけども、バランスよく紙も電子もというときに、若い方のほうがよく利用されているし、あまりデジタルで読むということに抵抗がない方が多いですね。
次見ていただきますと、その中で、要するに、学校レベルで電子書籍を契約する場合、自治体レベルで契約してそのアカウントを小・中学生の皆さんに配布する場合もあるんですけども、幾つかの自治体は、自治体全体の図書館電子書籍サービスを子供たちに向けて振り切っている場合があるんですね。これはどうしても予算が少ないということと利用が見込めるということも含めて、振り切っている。例えば宮崎市は2020年は普通に電子書籍サービスとして始められたんですけど、リモデリングをして、23年から子供電子書籍サービスということになっていらっしゃるんですけど、それは本来図書館というのはみんなのものでなくてはいけないんですけども、予算のまだ少ない状況ではこういう振り切り方もありかなと思います。
次見ていただくと、これは広島県で、いわゆる図書館利用が少ないと言われているヤングアダルト世代に向けた電子書籍サービスを提供していらっしゃるんですね。これのメリットは、電子書籍のメリット、先ほど植村委員がいろいろ言っていただいて皆さん御承知だと思うんですけども、これ何がいいかというと、例えば性の問題ですとか、メンタルの問題ですとか、なかなか物理的に本を借りるのは恥ずかしいとか抵抗があるということありますよね。実際、自動貸出機で借りても読んでいるところは見られたくないとか、そういった利用において電子書籍って実は物すごく有利なんですね。自分のお部屋の中でスマホとかタブレットで借りられて読むということもできますので、そういうふうにも使えるという意味では、なかなか使い勝手があって、こういう試みというのはいいだろうと思います。
同じくデジタルでよかったことの一つとして、昨年の能登半島沖地震の後に、別の自治体の方々が被災された自治体に対して電子書籍サービスを提供してあげるという試みが幾つかありました。御承知のとおり、東日本大震災のときに、本を送らないでくださいと、被災地の方に非常に御迷惑になるので、ということはあったんですが、もちろん読書ですとか、様々な文化的資源で心を落ち着けるということはあるんですね。そのときにデジタルってとっても役に立つということで、いろいろと利用の範囲は広いだろうと思います。
ちょっと戻っていただいて、次です。出版社ごとの電子書籍数。これは出版社ごとに何点ぐらい提供されているのかというのをカウントして上から並べたものです。TRCさんとOverDriveさんで濃淡はあるんですけれども、これを見て一目瞭然なのは、とにかく青空文庫が多いです。
実際それがどのぐらいかを次のスライドを見ていただくと分かるんですが、全体に占める青空文庫とか、PGというのはプロジェクトグーテンベルク、日本版プロジェクトグーテンベルクが青空文庫ですね。要するにパブリックドメインでネットでただで読めるものを電子書籍として提供していると。これは電子書籍サービスとして入れるというのは分かるんですね。無料もしくは非常に廉価に入れられるし、電子書籍冊数が非常に少ないので、入れてしまうというお気持ちは分かる。かつ、青空文庫って、名作もあるんですけども、実際、中を見ていただくと分かるんですけど、大半は普通の図書館で絶対これ入れないでしょうみたいな本が入っている場合があって、こういう状態は実は私は新しいサービスを始めるときに大きな期待を持って電子書籍サービスってどんな感じかなって見ている方々にとってはマイナスに働く可能性があるので、そこら辺はちゃんと選書をきちんとやるということを心がけていただいたほうがいいのかなと思います。
次、お願いします。同じことはアメリカでやったらこんな感じでして、プロジェクトグーテンベルク、もちろん全体の冊数自体が多いので比率も下がるわけですけれども、例えば、アメリカで最も電子書籍を提供しているのはロサンゼルスパブリックライブラリーでして、そこだと2万点以上、プロジェクトグーテンベルクの購入可能なタイトルがある中で、1,000冊ぐらいしか提供してないんですね。何をやっているかというと、まさに選書をきちんとやっているんですね。それは従来図書館の人にとって当たり前のことだったんですけども、なぜか電子になるとそれがぶれてしまうというのはちょっと残念だなという気がいたします。
次、お願いします。以上が全体的な特徴的なことでして、今後の運営充実のためにということで5点挙げさせていただきました。次のスライドをお願いします。まず一つ、情報資源マネジメント・ポリシーの策定ということでして、ちょっとこの二次元マップを見ていただきたいんですが、これまで物理メディアとデジタルメディアがあり、かつ図書館が収集・整理・保存する図書館資料と単にアクセスを提供するものというのがありました。これまでは収集方針とかというのは図書館資料についてのみ言及すればよくて、特に、従来、図書館ではそうしたものを策定して公表するということをやっていましたけども、なかなかデジタルのほうは解像度が低い記述になっていました。ところが、いわゆる電子書籍サービスというのは、右下、いわゆる第4象限なんですけども、アクセスを提供する。図書館が所蔵するわけではないんですね。で、デジタルメディア。タイトル、コンテンツとしては、物理メディアで図書館資料のものと同じ場合もあるわけですよね。
そうしますと、多様な情報、多様な提供メディアが存在する中で、単に物理メディアの図書館資料についてのみ収集・整理方針、廃棄方針を決めていくのではなくて、そうした様々なメディアについて統合的な情報資源マネジメント・ポリシーのようなものをきちんとつくって、今後どういうふうに対応していくのかということを公表していくということがまず一つ求められていると思うんですね。
次、お願いします。先ほどのマネジメント・ポリシーが入り口の話だとすると、今度は出口です。様々な契約があって様々なメディアがあるからといって出口も様々にしていると利用者は本当に混乱します。一時期の大学図書館もそういう感じがありましたけれども。今お見せしているスライドは、ワシントン州です。シアトルのあるワシントン州のキングカウンティというところのライブラリーカタログをお見せしているんですけれども、『The Women』というのは昨年アメリカでとてもよく読まれた本なんですね。売行きもすごくよかったですし、図書館でもよく借りられたものです。
これ見ていただくと、ちょっと見づらいんですけれども、大活字本、eブック、ダウンロードできるオーディオブック、CD、オーディオCD、あと紙の書籍、同じタイトルについて様々なメディアを一覧できるような図書館カタログを提供していると。これはもちろん業者さんがつくってくださるものなんですけれども、図書館側でこういった仕様書とか、こういったものを要望して、今後こういった、だから日本でも実は目録を引くと紙の本も電子の本も一緒に見られるカタログを提供しているところは今ないわけではないんですけど、ほとんどはそうではなくて、メディアが違うと探すツールも違うというのは、これは非常によろしくないので、こういう形にシフトしていくというのが望ましいと。
ですから、この場において、図書館側が収集・整理・保存している図書館資料であるか、あくまでも情報アクセスを提供しているだけかなんていうことは関係ないわけです、利用者の方にとっては。図書館員の方にはとても重要なんですけども、それを出口のところで見せないようにするということはとても大事かなと思います。
3番目、お願いします。これなんですけど、これは先ほど申し上げた『The Women』という本がどのように紙で所蔵され、どのように電子で提供され、どのぐらい予約され、利用されているか。また、同じくオーディオブック版のCD版とダウンロード版がどのぐらい利用されているかについて、これはアメリカで電子書籍提供数の多い図書館電子書籍サービスのシステム順に並べたもの。一番上がロサンゼルスパブリックライブラリーですね。
これ、ぱっと見ていただくと分かるんですけども、ちゃんと提供すれば明らかにデジタルのほうが利用が多いんですね。それは皆さんお分かりになっていただけると思いますけれども、図書館って日常的に利用できる人って大体自治体の中で1割ですよね。3割行けば本当にすばらしい。残りの9割の人はニーズがないわけでは決してなくて、アクセスできないから利用してないだけですよね。
ですから、紙が好き、デジタルが好き、それぞれあるかもしれませんけれども、遠くにいる人ですとか、図書館が開いている時間帯に図書館を利用できない方々というのはいっぱいいて、そういう方々にリーチするということをやれば、このようにですね。あくまでも『The Women』という本は、昨年非常に人気があった、日本でいえば『変な家2』みたいな本ですね。ですから、デジタルの提供数のほうが多くなって予約も多いですが、普通はこんなことなくて、やはり紙のほうが全体の蔵書は多いんですね。こういう一時的なアクセス、一時的な需要に対応するから一時的に多くなっているだけですけれども、紙と電子。ここで読み取るべきなのは何かというと、電子だけとか紙だけということはないんだということなんですね。両方ともちゃんと提供すればちゃんとニーズがあるし、ちゃんと皆さん利用する。それぞれ皆さんの読書嗜好とか読書のスタイルに応じて利用されるということですね。
もう一つは、次のスライドを見ていただくと。利用者調査・利用者ニーズの把握というところで、これ私、常々懸念していたところなんですけども、オンサイト、今までは、いわゆる図書館に来ていただいて、デジタルネットワークサービスがない時代は、来館者の利用行動の観察ですとか、来館者調査ですとか、カウンターで利用者の方々と応対をすることで利用者の皆さんの行動ですとか嗜好というものをある程度把握できてしまうんですね。職員の方々、そういうことをきちんと把握していらっしゃる。
ところが、オンラインだと、利用行動といっても、あくまでもデータでしか与えられませんし、潜在的なニーズなんてはっきり言ってこっちから取りにいかなければ絶対に分からないんですね。
そういう状況において、これは日本だけではなくて海外の調査でもよくあるんですけども、電子書籍サービスとかデジタルネットワークサービスについてニーズがないという調査が結構あるんですね。電子書籍について、2010年以降、ニーズがなかったことなんて一度もないんですよ。何がなかったかというと、提供されてない。コンテンツがなかっただけなんですよね。そしてメディアがまだまだこなれてなかったんですね。今、どんどんといいメディア、デジタルで表示するためのいいメディアが出てきていて、物によっては紙じゃないとなかなか表示、地図ですとか、例えば絵本なんか特にそうですね。なかなかまだメディアが追いついてないですよね。でもメディアがかなり追いついてきているスタイルの資料もありますので。ニーズがなかったわけではなくて、どうしても日常的に接している方々のニーズを重視してしまうということはあると思いますし、やはり我々、紙が好きですし、デジタルもすごく便利ですよね。
なので、それぞれ人々の利用者のニーズとか、利用、読書の仕方って変わっているので。よくあるのが、紙がすごく好きな人はデジタルをすごく批判的におっしゃったり、電子を購入すればもう紙は要らないじゃんとか極論を言っちゃったりする人がいるんですけど、先ほどのアメリカの図書館の例を見ていただければ一目瞭然なんですけど、両方ちゃんと提供すればちゃんと利用がつくし、それぞれ皆さん、ちゃんと使い分けをしていらっしゃるわけですよね。そこはとても大事だなと思います。
4番目です。これ先ほど植村委員も御指摘くださっていて本当にそのとおりだなと思ったんですね。物理的な図書館に関しては、間違いなく、図書館の空白地帯というのは今でもありますし、今後、人口が少ない地域は空白地帯、生まれてしまいます。やはり図書館にアクセスするのが難しいと。ところがこれが、図書館とか社会教育は自治体レベルで責任を持つべきものですから、当然自治体ごとにというのは分かるんですね。でも、インターネット、つまりデジタルネットワークサービスで図書館の空白地帯をつくってしまったら、もうこれは笑い話でしかないです。なぜならば、インターネットって国境がないわけですから、原理的には、その利点を何で生かさないのかということになるわけですね。そうすると、それはやはりコンソーシアムを構築する。
私はこの3年間ずっとアメリカの電子書籍サービス、OverDriveの電子書籍サービスシステムをずっと毎月データを取って観察していたんですけども、実は37システムがやめちゃったんですね。そのうち10は純粋にやめました。残りの27はコンソーシアムを自分たちで組んだり大きなコンソーシアムに相乗りすることで、より広範囲な図書館電子書籍サービスのシステムに乗っかって継続しているんですね。
そこで私、非常に注目しているのが州立図書館の役割。日本の都道府県よりもアメリカの州というのはとても自治権の強い単位ですから、州民に対する責任感も強いのかもしれませんが、これはオハイオの例ですけれども、人口10万人以下の図書館区、ライブラリーディストリクトの人たちで、要するに電子書籍サービスを利用するときに固定費とコンテンツ費、固定費用と可変費用があって、固定費の部分は州立が、ステートが見てくれるんですね。コンテンツはコンソーシアムに参加している自治体の人たちが資料費の何%かを必ず購入してくださいと。利用に際しては、自分たちの自治体の人じゃない方が利用するかもしれないけれども、小さい自治体にとってそうやって電子書籍サービスをみんなに提供する、つまり空白地帯をなくすという意味ではこのやり方はとても有効なんですね。幸いにして、日本では長野県の「デジとしょ信州」が2022年に既にこれをやっていらっしゃってですね。
今後、やはり図書館の数、今、清瀬市でしたっけ、図書館が減るというので結構問題になっていたりしますけども、都会の人たちはまだまだ恵まれていて、やっぱり人口の少ない地域って本当に図書館サービス、読書の空白地帯というのが生まれやすいんですね。これ医療の問題を考えていただくと分かるんですけど、1次医療、2次医療、3次医療がありますよね。やはり社会教育とか教育に関してもそういうことをきちっと考えて、電子で、本当に先ほども言いましたけども、空白地帯をつくっていたら本当にそれは設計ミスでしかないと思うんですね。
さらに私は都道府県を推すのは、都道府県の方々は、やはりそれぞれの県民の皆さんに対する奉仕というのが当然役割として規定されていますし、かつ図書館支援、自治体の中の市区町村に対する支援ということも規定されているので、単位として割といいのかなと。
というのは、小さい自治体同士でコンソーシアムを組んでもやっぱり人材とお金の面で非常に厳しいと思うんですね。だから、そこに都道府県さんが積極的にやっていただくのはとてもいいのかなと思います。
次お願いします。最後です。図書館は利用者の個人情報に対して非常に精緻と言ってもいいくらいきちんと対応していると思うんですね。ほかの組織に比べても非常に強くこの問題について検討されていると。
ところが、実際、電子書籍サービスとかデジタルネットワークサービスで、ベンダーさんとか外注している先の方々がそのデータをどうしているのかということについて実はよく分からないということが多いと思うんですね。これはやっぱりちょっと問題で、やはりそのデータがどう使われている、どう管理されているかということを図書館が常に意識していかないと、これからデジタルネットワークサービス、とても便利なので、メディアも増えて、コンテンツも増えていったときに、分かりません、知りませんではやっぱりよくないので、今までどおり図書館で安心して利用者の方々が利用できるようにきちんと管理をしていくということと、やはり先ほど人材育成のところでお話しいただきましたけども、どうしても外注しがちなんですけど、やはりデジタルネットワークに強い職員さんをきちんと採用したり養成したりしていくことでこうしたサービスを基礎的に提供できる基盤をつくっていくことが望ましいかなと思います。
私のほうからは以上でお話を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

【秋田座長】 池内委員、どうもありがとうございます。刺激的な御発表を2件いただきまして、続きまして、今度は土屋委員のほうから御発表をお願いいたします。

【土屋委員】 貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。杉並区立高井戸第三小学校学校司書の土屋と申します。
本日は、表題のとおり、実践事例等を発表させていただきたいと思います。1人1台端末が整備されて以降、学校図書館はその役割が変化していますが、対応は地域によって差があります。杉並区は2012年に学校司書が全校配置されましたが、学校図書館におけるICT活用は区内でも学校により様々です。これからお話しすることは、ICT活用を研究していた前任校の6年間の実践と今年度異動して1年目の勤務校の実践内容です。どちらも学校図書館にはICT機器があり、蔵書は区内一斉データで管理され、学校司書にタブレットが与えられているという環境です。
報告内容には研究データは少なく、個人的な感想を多く含むものでありますことをあらかじめ御了承ください。
1人1台端末が入って、学校図書館におけるタブレット活用場面は増えました。それは情報源として活用できるからと、その際、一斉の利用指導が行えるからです。具体的には、まず、学校図書館の蔵書検索が児童用のタブレットから直接できるようになりました。以前は図書館のパソコンの前には列ができて、時間切れでチャイムが鳴って諦める姿が見られましたが、今ではありません。今年度からは自宅でも使用できるようになり、自宅で予約したという児童の声も若干ですが、聞いています。
2つ目は、デジタル百科事典を使った調べ学習ができるようになったことです。前任校ではポプラ社の「Sagasokka!」、現在の学校ではブリタニカスクールエディションの体験版を活用しています。
3つ目は、情報リテラシーの向上を目的とする様々な利用指導が可能になったことです。インターネット上の学習コンテンツや地方の観光サイト、公共図書館のホームページなど、様々な外部の情報にアクセスして一斉指導に生かすことができています。
また、前任校では子供新聞のデジタル版も契約していました。
このうち、丸2と丸3についてもう少し具体的にお話しします。デジタル百科事典は学校図書館におけるデジタル資料としては有効でした。前任校で活用していたポプラ社の「Sagasokka!」は『総合百科事典ポプラディア』をデジタル化したオンライン事典サービスです。検索バーにキーワードを入れ、解説文や写真、グラフ、図表も含まれた項目が立ち上がります。解説文内の青字の言葉をクリックすると、さらにその言葉の項目が立ち上がるという仕組みです。項目の下には関連するキーワードが表示されていて、言葉のつながりを考えながら自分のキーワードを増やすことができます。子供はよく調べ学習のときに何を調べればいいか分からないと困っていることがあるのですが、テーマについて基礎知識がなければ何を調べてよいか分からないのはもっともなことです。そこで、テーマの概要を調べて、そこで得たキーワードをさらに自分が調べたいテーマに絞っていきます。子供の語彙を増やすことで調べ学習の質は上がります。
また、概要だけでなく、信頼できる外部サイトへのリンクもあり、さらに深く調べることもできます。
もちろん百科辞典ごとどこへでも移動できるというのが最大のメリットです。
では、紙の百科事典は必要ないかというとそうではありません。百科事典の利用指導はまず紙から始めます。『総合百科事典ポプラディア』は全部で18巻セットです。第3版に改訂されて1冊の分量は減りましたが、持ち運びには不向きです。それでも初めに大きな百科事典を使うのは、本の厚みや重さから言葉の圧倒的な量を体感してほしいからです。
この利用指導は幾つ言葉を調べられるかゲームで行いますが、子供たちが立ち上がり、全身を使って一生懸命調べます。五感を使った調べる体験を通して知識を得ることの楽しさも体験しています。1年生がわざわざ大きな図鑑を好んで借りるのも同じ理由があるのではないかと考えます。
1学期に紙の百科事典で利用指導をしてから2学期の伝統工芸を調べる時に「Sagasokka!」を使います。まずテーマの概要を捉え、更に具体的な工芸品名名品にアクセスして詳しく調べていきます。豊富な画像やリンクを活用することもでき、このとき児童はデジタル百科事典の利便性を実感しているようです。
タブレットで調べるから学校図書館を活用しなくなったという話を聞きますが、タブレットで調べる機会が増えたからこそ、児童の情報リテラシーを向上させる役割があると考えています。インターネット検索のときに検索バーに単語を入れることは知っていても、その理由を正しく答える児童は僅かです。信憑性があるサイトの見方やたくさんの項目からどうやって選べばいいかなど、児童にとって実際に利用価値が上がる内容は食いつきがいいです。実際にやってみて、失敗し、考え、学ぶという体験型の授業で児童は主体的・意欲的に学びます。授業後には家でも使おうと思うとか、自学習で使えてよかったという感想をもらいました。
一度身につけた知識は、その後、日常的に使ってスキルアップをしていきます。後に教員から教材の画像に出典がないと子供に指摘されたとうれしい報告がありました。また、今年の6年生は2学期の読書のまとめにフェイクニュースに気をつけようと思ったと書く児童が多くいました。
学校図書館は、情報活用能力の育成をサポートする場として多様な情報源を使えるように環境を整え、その使い方については丁寧に利用指導するということが重要と考えます。利用指導には学校図書館の使い方だけではなく、多様な情報メディアを体験することも含みます。図書資料もデジタル資料も、読み方や活用の仕方など、発達段階を考慮し、スモールステップで丁寧な指導が必要です。
これらを組織的・計画的に進めるために学校図書館がもっと中心となって行うことはできないだろうかと思います。現状では各担任に任されているところが多く、系統的な積み上げが難しいと思われます。
多様なメディアに触れ、効果的な使い方を学習することは、児童の選択肢を増やし、自分の目的に合わせて活用する土台をつくります。実際Googleがあればいいと言っていた6年の児童が、学習後には紙とデジタル両方を偏りなく使って調べることができるようになりました。
タブレットを使った学習時には必ず故障や充電切れの児童が数名います。タブレット操作がうまくできない子や、情報が多過ぎて途中で読むのをやめてしまう子もいます。情報源は一択ではないということは、多様な児童の現状に合わせて学習を止めず、意欲を下げずに継続することにつながります。
また、家庭環境の違いによりデジタルスキルには個人差があります。ただ使わせるだけでは経験による大きな差が出ます。学校図書館は誰もが等しく学べるように支援することも役割の一つではないかと考えます。
多様な読書を保障するために、前任校では電子書籍を契約した年もありました。継続に至らなかった理由は、率直に申しますと経済的な理由です。この辺りを公共図書館と連携できればメリットが大きいように思います。
電子書籍は、利用後、児童の自主的な活用に任せていました。夏休み後、調査したところ、児童によって利用頻度の差が大きく出てしまいました。
先日、1年生からこの本はシリーズがいっぱいあるからタブレットで読むという話を聞きました。図書費用には限りがあり、長く続くシリーズを買い続けることができません。1年生のこの児童は学校図書館で借りる本と電子書籍を使い分けていたのです。好きなシリーズの続きが読めるのは児童にとって大きなメリットです。
読書が苦手な児童にはデイジー図書を活用しています。これにより全く読書をしなかった児童も学習に参加できています。しかし、これらをどのように蔵書として登録するか、いまだ課題が残されています。
現在の学校図書館図書標準は蔵書冊数の基準を表します。しかし、この基準では蔵書構築が適正に行われているかどうかが分かりません。蔵書が更新されているかどうかも分かりません。図書標準はもちろん大事ですが、自校に合った蔵書をどう判断するかのために使っているのは全国学校図書館協議会の制定する学校図書館メディア基準です。資料を添付したのでそちらも御覧ください。
これには蔵書の配分比率がありますが、こちらを参考に自校の蔵書を構築します。
また、電子メディア数量基準数というのもありますが、本校にあるデイジー図書を含む電子メディアはまだ未登録の現状です。
図書標準に関しては、この基準を守るために適正な図書の廃棄・更新が行われていないという現状も聞いております。
学校図書館の施設・設備の在り方としては、個のニーズに合ったスペースを確保する必要性を感じます。教室で学習することが困難な児童だけでなく、個別の落ち着くスペースを好む児童が多くいます。最近は吹抜けやオープンスペースの明るく開放的な図書館がありますが、1人になれるスペースの確保も必要だと感じます。一方、4人から6人がけの大きな閲覧机は、対話的な学習や新聞、図書資料、タブレットなどを一遍に広げるときにはとても効果的で便利です。
機器に関しては、蔵書データベースや校内LANがつながり、インターネットが利用できるパソコン、学習アプリやデジタル教科書の入ったタブレット、プロジェクター機能や書画カメラのある電子黒板、プリンターがあると学習に対応することができます。
学校司書がタブレットを与えられていないという現状がありますが、図書館で教室の続きの授業を行うためにはデジタル教科書を使うことは多々あります。教員と学校司書が連携して授業を展開する学習センターとしての機能を果たすためにも、これは装備してほしいところです。
情報活用能力の育成は教科横断的に行われています。これを系統化するためには組織的な取組が必要です。前任校では特に情報担当教諭と連携していたことが大変効果的でした。司書教諭とも協働で情報活用の体系や計画を考え、それを学校図書館情報協議会という全体組織で共有していました。これにより学年を超えた情報活用能力の育成が可能になりました。
デジタル整備に関わる関係機関との連携では、自治体の学校図書館支援担当者の存在は欠かせません。杉並区は済美教育センター内にこの担当部署があり、月に1回以上の研修を企画・運営しています。研修内容はICT活用に関するものもあり、学校司書の資質向上に役立っています。
また、パスファインダーやデジタル資料を共有するフォルダを作成してもらって、学校司書が即実践に使えるようにサポートしてくれています。
学校司書同士が情報交換できる掲示板もあり、資料収集の際には役立っています。
このような学校図書館のシステムがあることが学校図書館の活性化につながっています。
以上の内容を学校図書館ガイドラインと照らし合わせるとこのような項目について議論が必要ではないかと考えます。
デジタル社会に対応する児童の育成に向けて、皆様の御研究の内容と併せてお考えいただければと存じます。
これで発表を終わります。

【秋田座長】 土屋委員、どうもありがとうございます。実際の学校の場に即した形でお話をいただきました。ありがとうございます。
それでは、意見交換に入る前に今回の会議における論点案を事前に事務局より御説明をお願いいたします。

【高木地域学習推進課長】 地域学習推進課長でございます。
資料4をご覧ください。1ページ目、前回と同じでございますけども、この会議における検討の背景、2ページ目のほうが、幾つか示しておりますけど、事務局として考えさせていただきました論点案になります。
全体の中で、I.の1.デジタル社会への対応というのが今回御議論いただきたいところでございます。
3ページでございます。こちらから新たに用意させていただいた資料でございます。図書館・学校図書館のそれぞれで現状を整理させていただいているところでございます。
まず図書館のほうでございますけれども、利用者が利用できるコンピューターの設置数93.3%、利用できる無料Wi-Fiサービスが72.1%、オンラインの閲覧目録導入率が92.2%といったところでございます。
また、電子書籍サービスでございますけれども、令和2年からが9.8%のところ、令和4年では29.4%まで伸びてきたといったところでございます。
また、情報ネットワークによる情報提供ということで、ホームページ94.4%、メールマガジン12.2%、ソーシャルメディアが40.4%といったところでございます。
右側に行きまして、学校図書館でございますけれども、児童・生徒1人当たりの学習用コンピューターの台数が令和5年度で1人当たり1.1台といったところまで伸びているところでございます。
ちょっとこちら課題があるのかなと思っていることが蔵書のデータベース化です。令和2年度の数字でございまして、若干古いデータではございますけれども、小学校80.5%、中学校79.3%、高校92.2%ということで、小・中学校でいうと約2割が蔵書のデータベース化をまだされてないといったところでございます。
電子書籍のサービス導入状況については、令和2年度の2.0%から令和4年度8.5%になっています。
電子書籍を所蔵している学校の割合、こちらは令和元年度のデータでございますけれども、小学校0.2%、中学校0.3%、高校1.4%、特別支援学校の初等部2.8%、中等部2.5%、高等部2.4%といったところでございます。
下段でございますけれども、第五次五「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」に書かせていただいているところでございます。デジタル関係でいいますと、電子書籍の充実が必要だといったこと等々が記載されているところでございます。
また、ここではちょっとすいません、ピックアップしていなくて恐縮でございますけれども、第五次五基本計画の中では、望ましい基準につきまして、ICTの急速な進展等を踏まえた見直しを検討するといったことまで記載されているところでございます。
4ページでございます。具体的な論点、検討の視点という形で整理させていただきました。1つ目が、図書館の資料・サービスの在り方でございます。図書館・学校図書館共通の事項として考えられるものとしまして、紙と電子の両方を有機的・選択的に活用できるような環境を整備する必要性とか意義でありましたり、教育的な観点なども含めた効果について御議論いただきたいなと。
特に公共図書館におきましては、様々な方、児童・生徒、高齢者、障害者、外国人、来館困難者等、多様な利用者に対しまして電子書籍などの提供の意義などについても御議論いただければなと思っているところでございます。
2つ目のポツでございますけれども、電子書籍の計画的な整備・活用に向けてどのような方策が必要か。
3つ目のポツでございますけど、その他デジタルを活用したサービスとして期待される取組といったことで、先ほど申しましたような、学校図書館においては蔵書のデータベースぐらいやってほしいなと思うところでございます。
2つ目、施設・設備の在り方でございます。こちらはちょっと学校図書館と公共図書館違うのかなという形で分けて整理させていただきました。
1つ目は学校図書館でございますけれども、今の学習指導要領で求められております個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実が目指される中で、多様な学習の展開が望ましい学校図書館の施設であったりとか空間づくりがあるのかなと。
1人1台端末が配布・整備されている状況でございますので、学校図書館においても探究的な学びがされているのかなと思っているところでございます。
その際に、やっぱりタブレット、きちんといろんなことが検索できるようなことをできるような学校図書館であってほしいんですけども、Wi-Fiの整備や高速LANの整備がなかなか追いついてない実情もあるのかなと思っておるところでございますので、その辺など、必要性なども御議論いただければなと思っています。
また、学校図書館において、様々な、本だけではなくてコンピューターや視聴覚メディアなども含めた学習・メディアセンターなども必要なのかなと、必要性がどれぐらいあるのかなと考えるところでございます。
一方、公共図書館でございますけれども、デジタル活用の推進に向けた整備充実が望ましい設備、例えばバリアフリーへの対応として公共図書館として望ましい設備などについても御議論いただければなと思っているところでございます。
3つ目が、司書教諭・学校司書・司書なども含めました人材の在り方でございます。こちらもやはり学校図書館と公共図書館、違いがあるのかなと思いましたので、分けて書かせていただいているところでございます。
まず学校図書館でございますけども、児童・生徒の情報の収集・選択・活用能力の育成等に向けまして、司書教諭と学校司書、それぞれ担うべき役割が異なっているところでございますので、それぞれが担うべき役割や、それぞれに求められる専門性、そういったことについて御議論いただければなと思っているところでございます。
2つ目が司書教諭、学校司書に対しまして求められる研修や、教育課程における学校図書館の活用に関わる内容につきまして、学校全体できちんとデジタルを踏まえた学校図書館の活用法というのを理解いただきたいと思っていますので、校長先生や、その他の教職員に共通して求められる研修とはどういったことがあるのかといったことなどを御議論いただければなと。
一方、公共図書館でございますけれども、デジタル基盤の強化や、利用者、住民の情報活用能力向上の支援策につきまして、司書が担うべき役割や、必要な専門性がどういったものなのかと。司書、もしくはその他の職員も含めまして、そういった役割、専門性に求められる研修とはどういったものかといったことの御議論が必要かなと思っています。
最後、4つ目でございますけれども、デジタル整備、資料やサービス提供、システムについて、関係機関との連携についてでございます。
学校図書館に関しますと、地域の公共図書館との連携でありましたり、学校図書館同士の連携の必要性についてはどうなのかと。
公共図書館でございますけれども、県立図書館と市町村立図書館との連携であったり、地域の大学図書館などの連携、その他様々な書店も含めた関係機関との連携についてもどういったものが必要なのかといったこと。特に、都道府県立の図書館に関しましては、市町村立図書館と求められるものが若干異なる可能性があると思いますので、期待される役割についても御議論いただければと思っているところでございます。
御参考までに参考資料1、前回の御議論について事務局で整理させていただいたものでございますので、こちらも後で御覧いただければなと思っているところでございます。
以上でございます。

【秋田座長】 高木課長、御説明をどうもありがとうございました。
それでは、ここからは意見交換とさせていただきます。今お三方の発表等をお聞きいただきまして、質疑あるいは今課長から御説明があった論点案に関する御意見等を、自由に御発言いただければと思います。お三方の御発表への御質問の場合は、意見交換の最後にまとめてお三方から御回答いただく形に今回時間の関係でさせていただきたいと思います。
それでは、御意見や御質問のある方は、お手数でございますが、全員、対面の方もオンラインの方もお手元のタブレットで挙手のアイコンを押して御発言をいただく形にできればと思いますので、どうぞ遠慮なくお願いをいたします。よろしくお願いをいたします。
いかがでしょう。資料等を出してくださっている方もおられますので、どうぞお願いいたします。
ありがとうございます。高橋健二委員からお願いをいたします。

【高橋委員】 ピントが多少ずれているところもあるかもしれませんが、御容赦ください。3名の先生方の発表は本当に興味深く聞かせていただいて、これからデジタル資料をどう扱っていくのかなど、すごく参考になりました。その中でふだん自分が考えていることをちょっと申し上げたいと思います。紙かデジタルかといったときによく議論のネタになるのが、利用統計であるとか、つくられている数であるとか、そういう面も大切ですが、もう一つの観点として、分類、NDC分類とかじゃなくて、資料の機能の視点からの分類があるような気が僕はしています。例えば僕は英語の教員なんですけど、ドリルみたいな教材は、さっきの発表でもありましたけど、書き込みしながら使っていくので、そういう教材は電子で使うと、書いて、メモを消して、また白紙からやって、前のメモも見て、というように使え、すごく良いかなと思います。同じ英語の教材でも、フレーズを覚えたいとか、暗記したいとか、何回も見てそこから学んで自分のものにしたいという教材は、どっちかというと僕は紙を使うんですね。
なので、機能みたいな部分も考えて、同じ学校なら学校、公共図書館なら公共図書館に入れるときにも、こういった資料ならば電子のほうがいいんじゃないかとか、こういった資料なら紙のほうがいいんじゃないかとか、そういった視点も考えて検討していったほうが良いんじゃないかなというのは、ふだんから思っているところです。
それから、今は静岡県立の公立図書館に勤めていますけど、もともと僕は学校の教員なので、住民の視点から図書館に人が来てもらうためには、また電子図書館、電子図書の必要性なんか知ってもらうためには、今我々が直面している大きな課題をこれなら解決できますという部分が打ち出せるといいと思うんですね。確かにアクセシビリティの問題や、特に学校は解決しなきゃいけない問題が山積しているので、優先順位をつけていくと、図書関連の案件はどうしても後回しになりがちです。でも、課題という観点でいうと、今一番社会で問題になっているのは情報リテラシーだと思うんですね。アメリカの選挙だって、日本の選挙だって、学校のいじめだって、いろんなところで、SNSや真偽が分からないような情報でみんな右往左往して問題や事件が起こっているわけです。だから、そういう状況に鑑みて、学校の図書館も公共図書館も情報センターなんですから、ちゃんとリテラシーをきちっと教えるということを主眼に入れたほうが良いんじゃないかなという気はします。
情報活用という言葉で一くくりにされていますけど、僕は特に子供に対しては、リテラシーや正しい情報の定義を整理して示すなど、情報リテラシーに特化した取組をやっていくことによって、図書館に来館してもらうという、それもひとつ大切な要素なんじゃないかなと思いました。
ちょっと雑駁ですが、以上です。

【秋田座長】 どうもありがとうございます。紙かデジタルかではなく、導入時に機能とか目的に応じてどういったものがよいかを考えて推奨していくことや、それから、情報リテラシーという、リテラシーというものをどうこれから伝えて育てていくのかというところが一番大事ではないかというお話をいただきました。ありがとうございます。
今、池内委員からお手が挙がっているかと思います。お願いいたします。

【池内委員】 今お話に出た点で、どういうものがデジタルで、どういうものが紙でというお話だと思うんですけども、デジタルメディアというのは、特にタブレットで電子書籍元年と言われた2010年以降、デジタルメディアというのは非常に多くの方々が使うことによって、かなり使いやすい、見やすいものになっているし、アプリケーションも非常に様々なものが出てくるようになっているんですけども、紙の歴史と比べると圧倒的にやっぱり短いんですね。
率直に言うと、私、紙で読むのとデジタルで読むのにどういう差があるかということについて研究室で研究もやってきましたけども、単純に文字を読むという行為に関してはほとんど差はないと思うんですね。ですが、そもそものメディアの、先ほど申し上げたように、絵本ですとか、そういったものを柔軟に表示できるデバイスがそもそもあまりないですし、そういうものを皆さんに普及させようと思ったらとてもお金がかかると。
もう一つは、書いたり触ったりするということについてはやっぱり圧倒的にまだ紙に追いついてないんですね。デジタルの文字が書けたり絵が描けたりするペンシルを使いこなすには相当の慣れが必要ですし、とても高いんですよね。
ですので、今、完全に過渡期をずっと経験している状況で、だからメディアが発達してないからデジタルは駄目もおかしいですし、メディアが発達してないのに無理にデジタルにシフトさせるのもやっぱりおかしいし、紙はやはり紙のよさがあるし、デジタルはデジタルのよさがあるので、そのよさをそのときそのとき、だから非常に流動的なんですよね。アプリケーション一つで大きくがらっと変わるかもしれませんし。
特に、私、電子書籍元年から数年間デジタルの読みと紙の読みの比較実験をやっていたんですけど、それは圧倒的に最初は紙が勝っていました。でもそれは慣れの問題やデバイスの問題、そもそもデジタルで長い文章を読んだことない方に実験させてもそれはあまり意味がなくて、ですから、現時点で言えることは、読むという行為に関してはかなり代替性があって、それでいい場合もありますけれども、特に学習においては、書いたり触れたりするということはとても大事ですよね。インタラクション、大事ですよね。その機能においてまだまだデジタルは追いついてない。ただし、だから駄目なのではなくて、今後メディアがどんどん発達して、もっと読みやすい、もっと使いやすいメディアが出てくる可能性もあるので、そこら辺を教育者の皆さんも総合的に判断されて、図書館の職員の方とインタラクションして、これはこう入れましょうとか、これはまだ早いですねという判断をするのがいいんだろうと思いますね。
ですから、これはこうしましょうじゃなくて、どういう判断をするかという準拠、枠組みのようなものを皆さんで話し合っていって現場で対応していくというのが望ましいのかなと思いました。

【秋田座長】 ありがとうございます。高橋委員の御意見にまた池内委員からお話をいただきました。今日は、人数が多く時間が限られておりますので、御発言の意図がある方はお早めに手を挙げていただけますようにお願いをいたします。
それでは、奈須委員、お願いいたします。

【奈須副座長】 よろしくお願いいたします。まず今日思ったのは、植村委員からありましたけど、これは情報なのだと。情報だと考える人はポジティブで、物だと考える人はネガティブだというのはとても面白くて、これは教育のところでいろんな話題になっていますけど、教育の畑では情報だと考えているわけですけど、逆に言うと情報を物で流通するというのはかなりナンセンスな話で、郵便や手紙というのもかなりナンセンスになってきたと私なんかは思うほうですけど、この辺りどう考えるかということだと思うんですね。
ちょっと学校の話を申し上げたいと思うんですけど、今日お話があったように、GIGA端末が入って、そういう道具を子供が使えるようになりました。それによって子供たちが電子書籍にアクセスして、あるいは使うという環境が整ってきたので、それとの関係でいろいろ普及しているということはありがたいことだと思います。
学校関係ではあまりそのことはイメージしてなくて、今デジタル教科書に関する議論が進んでいます。デジタル教科書がなかなか難しいという話の中に、やっぱり慣れていないと、今池内先生が言われたことがあって、慣れてくると使えるんですね。慣れてくると使えるということ、鶏と卵的なんだけど、そこに、今日ずっとお話しいただいたような、電子図書館とか、あるいは電子の書籍サービスというのが入ってきて、子供がそれにアクセスするようになってくると、とても互恵性があると思うんですね。教科書だけじゃなくて、読みたいものを電子で読むと。それによって読むスキルとか読む習慣が上がってくると。それによってデジタル教科書もよく使えるようになるという私は互恵性があると思っていて、とてもここはありがたいなあと思って伺っていました。
学校関係者は、あまり今日、植村先生や池内先生からお話されたことを知らないので、伝えていく必要があるなあと強く思いました。
一方で、デジタル学習基盤という言い方をこのところしていますが、これは読書だけじゃなくて、広く学習全体の基盤としてGIGA端末を使っていくという話です。目下、学習基盤というのは、授業のイメージですね。授業でデジタルを使ってやるということなんだけれども、そのときに、さっき課長からもあった探究とか調べ学習というのがこれまでとは違う桁で、ICT、デジタルを使うとできるようになるわけです。全く使える資料の空間が桁違いに広がってくると。
ただ、今、学校関係者の多くは、GIGA端末でアクセスして手に入れる情報は一般のインターネット情報のイメージが強いんですね。そこに電子書籍とか、今日お話しいただいたような電子図書サービスのイメージはあまり入ってない。土屋先生のように進めていらっしゃるところはあるんだと思うんですけど、この辺をやっぱり今後やっていかなきゃいけないなと思っています。
そうなったときに、GIGA端末を使ってデジタルにアクセスしていろんな情報を取ってきて、それで学びを進めるんだけども、そこは植村先生が言った信頼性の問題があって、信頼性が脆弱なような情報を持ってきて、子供がやってしまって、だからデジタルは駄目なんだ、ICTは駄目なんだという議論がある。一方で、紙の資料は図書館に行って、図書でやると。すると、やっぱり紙の資料の方が信頼性があるという議論になりやすい。これは誤解ですよね、カテゴリーのね。つまり、紙に信頼性があってデジタルに信頼性がないんじゃなくて、今日、植村先生の一番最後の22枚目がまさにそうですが、紙かデジタルかを超えて信頼性のあるものとそうではないもの、そうではないものが全面的にいけないわけじゃないけれども、そこの再整理を行って、子供のデジタル学習基盤、これから考えていきますが、デジタル学習基盤の構築に向かわなければいけないなということをとても思いました。
そう考えても、子供に対するこういう電子図書とか電子図書館とか書籍サービスの果たす役割、あるいはそれはもう既に整備されているんだけども、それがまだ学校とか先生方とか子供に認知が低いということはとてももったいないことで、そこをぐっと進めていくことで、デジタル学習基盤全体の利用率の向上とか、より円滑な利用とか、それから質の向上とか、情報の信頼性は何かというようなこと、そういうある種の情報活用能力とかメディアリテラシーに関する学習の大きな枠組みをそこに構築できるような気がいたしました。そこに何か学校との接続のところがあるかなと思いました。
最後に1点なんですけど、学校関係でデジタルを入れるという話になったときに、健康に害があるという話がよくあって、デジタル教科書の議論でも、それをずっと使うと目に悪いという話があるんですが、今日、先生方の話ではあまり出なかったんですけど、その辺は図書館関係ではどんなことになっているのかというのをちょっと伺えればなと思いました。
すいません、いろいろですが、ありがとうございました。

【秋田座長】 ありがとうございます。その御質問は後でということでお願いをいたします。
それでは、続きまして、設楽委員、その後、松本委員、小林委員、野口委員、堀川委員と順に御発言をいただきます。それでは、設楽委員、お願いいたします。

【設楽委員】 それでは、植村委員の御発表に対してちょっと質問させていただきたいんですけど、17枚目ですかね、のところに、情報の変化が激しい実用書年度版は有限ライセンスでという御発言でしたけど、年度版というものの中にいわゆる年鑑のようなものも入るのかどうかということをちょっとお聞きしたいです。といいますのも、学校で学習するとき、過去の統計資料等を参照するのに年鑑等を利用する場合が多々あります。しかし、年鑑は厚くて場所を取るなどで、学校図書館の保存スペースを考慮すると長期保管が難しいと思います。
だから、逐次刊行物であっても年鑑などはデジタルでの保存が望ましいと捉えています。こうした観点を考慮して逐次刊行物の保存ルールについて詳しく教えてください。
以上です。

【秋田座長】 あと、資料のほうは出されていますが、よろしいですか。

【設楽委員】 資料のほうですか。それはまた後で。

【秋田座長】 よろしいですか。二重は回らないかもしれないですか。いいですか。

【設楽委員】 はい。

【秋田座長】 ありがとうございます。それでは、続きまして、松本委員、お願いをいたします。

【松本委員】 私は資料のほうで、説明させていただきたいと思います。資料、事前に出させていただきました。そちらを御覧いただければと思います。
今日の話は大変興味深くて、植村委員の蔵書回転率の話とか、あるいは池内委員の青空文庫の比率など、大変勉強になりました。ありがとうございます。
事前に宿題として幾つかまとめさせていただきました。主に公共図書館を中心に、そして望ましい基準を少し意識してまとめさせていただきましたので、全部ではありませんが、お話をさせていただきたいと思います。
1点目は電子書籍です。今日お話があったように、公共図書館で非常に導入が進んでいるということがあったと思います。その中でも話がありましたが、通常の図書の選書と、かなり何というんですか、どういうふうに買い分けていくかということがまだ十分整理されていないように思いました。
下線を引きましたが、「望ましい基準」等をもし見直す際は、通常の図書との役割分担、今日池内委員から情報資源マネジメント・ポリシーのお話がありました。図書館資料といったときには、アクセス権の話はちょっと違う話になってしまうので、非常にいい言葉だと思いましたが、そういったものの記載というのも必要、役割分担について整理する必要があると思いますし、それから市民全体の利用の確保ですよね。デバイスであったり、それからどうやって電子書籍サイトにたどり着くかという、そういうことも支援していかないといけないということはあると思います。
あるいは、これも池内委員からありましたが、OPACを統合していくということですよね。さらには自治体間連携の推進。今日コンソーシアムの話がありました。植村委員からも広域連携の話がありました。やっぱり大きな契約主体にならないとなかなかタイトル数がそろわないということがありますので、そういったことは望ましい基準でも整理をしていく必要があるのかなと思いました。
2点目は外国語資料の提供ということで、これも植村委員からありましたが、図書で外国語の図書を収集するのはかなり困難なところがあります。それはなぜかといいますと、入手がそもそも困難であること。それから目録データを作るのが大変であること。そういったことで、日本図書館協会が多文化サービス実態調査というのをやっているんですが、なかなか資料等が、十分にあるとは言えないと。また、言語が英語に偏重しているということもあって、在日外国人の言語別人口構成なんかと比較をするとかなり乖離があるということなんですね。植村委員からもありましたが、やはり電子書籍は大きな可能性があるように思っておりまして、それを使うことでもう少し言語別の人口構成に近づくような、そうした購入ができるかもしれませんし、あるいは契約主体を都道府県の図書館などにすることでタイトル数を増やせるかもしれない。また、児童向けの資料なんかも非常に有用だと思いますので、こういったことについても望ましい基準などで何か整理があってもいいのかなと思いました。
それから3点目はデジタルアーカイブについてです。今日はデジタルアーカイブの話はありませんでしたが、やはり近年、公共図書館の中でデジタルアーカイブの構築というのは一定程度進んでいると思います。「望ましい基準」では郷土資料及び地方行政資料等の電子化という記載はあるんですけれども、やはりもう少し実態に合わせて整理をしてもいいのかなと思います。
下線を引いてあるところですが、対象を地域の文化資源全体とした上で、利用規約の明示であったり、あるいは機械可読性の担保であったり、そうしたことによって再利用可能な形でデジタルアーカイブを公開していく。その際には県立図書館などを中心とした広域的なプラットフォームの構築であったり、あるいはジャパンサーチへの接続であったり、こうしたことをしていくということは必要なのかなと思います。これは、政府のオープンデータの取組に関する方針等とも整合するものかと思います。
あと4点目。論点の3ですが、司書教諭・学校司書・司書等の人材の在り方ということで、司書養成のカリキュラムということを挙げさせていただきました。1行目の後半のほうにありますが、現在のカリキュラムのもととなった「司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目の在り方について(報告)」ですが、2009年の2月に示されたものです。大変古くてもう16年たっているということで、デジタル関連でいいますと、セキュリティー対策とか、個人情報保護とか、あるいはデジタル資料の収集・提供とか、デジタルリテラシーの支援とか、オンラインでプログラムを実施するなんていうこと、かなり海外で普及をしておりますけれども、やはりこういった資質・能力というのが現在の司書には求められると思います。
こういったことを踏まえれば、先ほどの報告の改訂、あるいは図書館法施行規則の改正、そうしたことも視野に入れていってもいいのかなと思いました。
一つ飛ばしまして、裏面のほうのICT活用のための環境とリテラシー支援、こちらを御覧いただければと思います。政府をはじめとして、社会におけるデジタル化、DXの進展の中で、情報活用能力という言葉、使われているわけですけれども、やはりメディアリテラシー、先ほど高橋委員からもありましたが、メディアリテラシーとか、あるいはデジタルリテラシーという、我々の必要とするリテラシー、いろいろあるということで、公共図書館としてICTの利用環境というのは当然整えるわけですけれども、メディア情報リテラシー、これはユネスコが提唱している概念でありますけれども、そういったものの支援プログラムの実施は必要であろうと。そのための人材育成の在り方というのも少し考えていく必要もあるのではないかと思いました。
すいません。以上です。

【秋田座長】 松本委員、どうもありがとうございます。それでは、続きまして、小林委員、お願いをいたします。

【小林委員】 昨日になって資料を入れさせていただきましたので、皆さん方のところには事前に届いていなかったかも分かりませんけども、「鳥取県立図書館」と右上に書いてある資料を御覧いただけたらと思います。
高木課長のほうから説明がありました論点に沿った形で学校図書館・公共図書館の今の鳥取県の状況ということで少しまとめさせていただいております。
まず、学校図書館のサービスの在り方のところですけども、やはりGIGAスクール、ICT活用教育が進んでいくに従って電子書籍に対する関心も高まってきているようです。県内の高校では私立の高校が1つだけ導入しているという実態ですけども、電子書籍の購入を検討している県立高校が出てきたり、あるいは市町村立図書館に電子書籍について相談する小・中学校が出始めているということで、そういう期待があるんだろうなということです。
また、公立図書館のほうでは県立図書館で今、電子書籍、デジタルアーカイブシステム、共に公開をしておりますけども、そこに書いてありますとおり、この利用にはものすごい差があります。電子書籍は今、1日50件、デジタルアーカイブは一月で今45万件ぐらいですかね。デジタルアーカイブはものすごくもの使われているのにかかわらず電子が1日50件ということで、この利用の状況について分析をしていかなきゃいけないと思っています。コンテンツの数なのか、あるいは広報が足りてないのか。いろんな原因があるかと思うんですけども、今、様々情報を集めつつ対策を立てなきゃいけないなと思っているところです。これは本当は逆の数字でもいいぐらいなんじゃないかなと思うぐらいなんですけども、まだ入れて今年が初年度ということなので、これから頑張っていかなきゃいけないかなと思っています。
というような状況の中で、先日、県内の図書館長会議がありまして、そこでまさに電子書籍のことについて、導入についての意見交換が行われましたので、まとめてみますと黒字で太字で書いてあるところのような状況です。
読書バリアフリーは、今後の書籍の電子化を考えると必要なサービスであると。必要ないと言った館長は1人もいません。全てのところが関心があると言っております。
ただし、単独では導入が難しいが、広域での導入は可能性がある。これをどう評価するかなんですけども、みんなでやりましょうということなんですけども、結局予算の確保が難しいということなんですよね。単独ではまとまったニーズが見込まれないというような意見もありますけども、基本的には予算をいかに確保していくかということに課題があるんだろうと思っています。
電子書籍、やっぱり割高感があります。当館が契約しているものでも今紙の値段の3.6倍ですか、1冊につき3.6倍なんですけども、そういうような基本的にお金のかかるサービスですし、恒常的に利用料がかかるようなサービスもあるというようなことで、その辺り、電子書籍の割高感と契約方法の仕組みがネックになっているというようなことを書いていますけども、多くの電子書籍は、期間や回数で契約するため多くの人が継続して利用することに向かないとか書いていますけども、基本的には結局はお金の問題なんですよね。お金さえあればそこは解決するわけで、ただしお金がなければ継続してサービスを提供することもできないということに課題があるということだと思っています。
次に、裏のほうですね。司書教諭・学校司書・司書等の人材の在り方のところなんですけども、ちょっと読みますが、GIGAスクール端末を利用した情報活用能力の育成には信頼性の高い情報収集の専門職である司書の能力を活用することが有効であろうと思っています。ただし、司書がデジタル技術や情報活用能力、メディアリテラシー等について指導する能力を身につけることで教員の負担軽減につながることが期待される。司書のスキルの習得と学校側が司書を活用する仕組みが有効だと思われる。ただし、そのためには、今現在いる司書の教育、学習する場面が絶対必要だと思いますので、リカレント教育が必要だと書いておりますし、さらに司書の養成課程の中にやはりそういうものをきちんと位置づけていくべきだろうと思っております。
最後に4番のデジタルの整備のところなんですけども、やっぱり学校の負担を増やさずに電子書籍を導入するのには市町村立図書館との連携や都道府県単位の契約など広域で行うことが望まれると書いてありますけども、そういう方法を探っていく必要があるかと思います。
最後の最後になんですけども、この前の館長会議の結論は、みんなで勉強しましょうということです。館長会議の中に研究会を立ち上げて、みんなで学んで、どういうベストミックスがいいのか。限られた予算の中で何をどう入れていくのがいいのかということについての検討をしていくということで鳥取県は話が出てまいりましたということで報告でございます。

【秋田座長】 小林委員、ありがとうございました。それでは、続きまして、野口委員、お願いをいたします。

【野口委員】 私からは、私の専門の読書バリアフリーの話もしたいところではありますけれども、特定電子書籍、デイジーとかの話はまた別の回にさせていただくことにしまして、学校図書館のデジタル対応というところにフォーカスして何点か意見を申し上げたいと思います。
お手元の資料4の3枚目の注で書かれているのですが、令和4年度子供の読書活動の推進等に関する調査研究のテーマが電子図書館なんです。その結果を見てみますと、公立学校において電子書籍を活用する際の課題を質問している項目があります。最も課題として多かった答えが、電子書籍導入の予算が不足しているなんです。たしか土屋委員の御発表の中でも、導入はしたけれども、継続が難しくなった、それは経済的な理由であるというお話もあったと思います。この調査で予算が不足していると答えている教育委員会は55.9%もあるんですね。
それから、2番目に多い課題が、電子書籍導入に関する知識が不足している。これが38.3%という答えでした。やはりこの辺りが、学校現場で、電子書籍、あるいは土屋委員からの御報告のありましたデータベースなどの電子情報資源を活用できる環境づくりに非常に大きく課題として存在していると思います。
まず、予算の部分に関しては、現在学校図書館の図書であるとか新聞の配備に地方財政措置があるわけなんですけれども、やはり電子情報資源の整備に関してもそういった対応をぜひ御検討いただきたいということがあります。
それから、知識が不足しているという答えが2番目に多かったわけですけれども、これに関しては昨年度の同じ子供の読書活動の推進等に関する調査研究で人材の育成に関しての調査研究を行ってっています。学校図書館を所管する教育委員会の部局が行う研修、つまり、主に司書教諭や学校司書を対象とした研修になりますけれども、その中で、デジタル社会に対応した読書活動に係る研修を行っている割合を尋ねています。その割合が都道府県や政令市で47.2%、その他の市区町村ですと28.3%という結果になっています。
土屋委員からもお話があったように、杉並区ですと、月1回、年間を通しての研修カリキュラムが組まれていて、研修の機会を用意されているということですけれども、多くの教育委員会の方々は、そもそもどういう研修をしていったらいいのかで悩んでいるケースも多いようです。なので、例えばデジタルに関してはこういう内容の研修がメニューとしてありますよというようなこと、つまり、研修のモデルを提示していくということも必要かと思います。
それから3点目です。先ほど来、メディア情報リテラシーのお話がありますけれども、これまでも情報教育、あるいは情報活用能力の育成というと、デジタルという意識が、恐らく現場の教職員の方々にも多いですし、一般的にもそう思われていると思います。そこと図書館、あるいは、デジタルと紙の図書資料のベストミックスを意識したような形での情報教育、あるいは教科「情報」の教育内容の改善を積極的に今後検討していただきたいと思っております。
あわせて、教職員の養成とか研修の中でも、ぜひ、メディア情報リテラシーの育成とか情報活用能力の育成の文脈の中に、デジタルだけではなくて、紙の図書資料も組み合わせたベストミックスの形で進めていくということを学べる機会をぜひ積極的につくっていく働きかけも国のほうからもお願いしたいと思っております。
私からは以上です。

【秋田座長】 野口委員、ありがとうございます。この後、堀川委員、続いて緒方委員にお願いしますが、ほかにも、時間の関係がございますので、ぜひ御発言の意思がある方は早めに手を挙げていただけるとありがたいです。
それでは、堀川委員、お願いいたします。

【堀川副座長】 失礼します。堀川です。まず、今回というよりは、申し訳ありませんが、第1回目に配付させていただいた堀川の資料の訂正をさせていただきます。申し訳ありません。
一部訂正しました。それはこの前配付した資料のこれの1枚目、これの一番下のところに一部訂正しましたという文字を入れてあります。今、一番下がちょっと見えませんが、表紙の一番下にあります。
それから10枚目ですが、これの3つ目の項目が、今、「小中学校等の96.6%が」と書いてあります。以前に配付させていただいたのは、全体の96.6%と書いてありました。その下、「小中学校等の」という。ここの出典とそれから注をスライドの一番下に小さい字で書いてあります。
すみません、申し訳ありませんでした。こちらの記述がちょっと間違っておりましたので、おわびいたします。
さて、それでは、今日のここのことなんですけれど、先ほど野口委員がおっしゃったのと重なる部分があります。それはまず情報活用能力と情報リテラシーという語の整理をちょっと皆さんに御意見を伺いたいなと思っているところです。図書館の望ましい基準の中に、堀川の今日の補足資料の1枚目のところですが、図書館の望ましい基準にも、それからその下の枠は学校図書館のガイドライン、これにも「情報活用能力」という言葉が見られます。このページの一番下のところなんですが、今回の現行の学習指導要領の総則には、これ小・中・高同じなんですが、2行目に学習の基盤となる資質・能力を育成していくことが必要だとして、この資質・能力の一つとして「情報活用能力」という言葉が見られます。
学習指導要領にこういうものが入ったのに伴って、次のページなんですが、解説編に情報活用能力の定義がされているんですね。それをちょっと読みますと、2ページ目の一番上です。「情報活用能力をより具体的に捉えれば、学習活動において必要に応じてコンピュータ等の情報手段を適切に用いて」というように書いてあって、コンピュータ等の情報手段というのが前提になっていると思われます。
この情報活用能力が出てきたのが、次の四角のところで、1986年に臨教審の第2次答申にこんなふうに書かれています。「社会の情報化の進展に伴い、情報活用能力(情報リテラシー)」として説明があります。
つまり、日本では情報活用能力というのが、情報リテラシー、つまりインフォメーションリテラシーの訳語として使われてきたということがお分かりだと思います。このインフォメーションリテラシーというのは、1974年にアメリカの情報産業協会の会長さんが、これからの情報産業に携わる人は、インフォメーションリテラシー、つまり、情報を使う力ですよね、リテラシー、読み書きですけれど、情報を使う力が必要だというように発言をしたところから始まった言葉で、すぐに誰にでも必要な能力だというように変わっていきますが、これを受けてアメリカの図書館協会がインフォメーションリテラシーの説明を1989年にしています。「情報リテラシーのある人とは、情報が必要であるときを認識でき、必要な情報の所在を知る能力をもち、必要とした情報を評価し、効果的に利用できる能力をもった人である」。ちょっと文章の間が空いているんですけれど、「つまり、情報リテラシーのある人とは、学び方を知っている人である」と。
現在のインフォメーションリテラシー、簡単に言えばというので、今の「情報リテラシーのある人とは」というところの1行目、2行目あたりの言葉がそのまま出ています。「情報が必要であるときを認識でき、必要な情報の所在を知り、評価する能力をもち、効果的に利用できる能力」のことをインフォメーションリテラシー、そしてまた別にデジタルリテラシーの説明もあります。これは「ICTを活用して情報を見つけ」、これは同じですが、最後の行の右側のところ、「認知的及び技術的スキルが必要とされる」と。
だからつまり、もともとは情報リテラシーというのは、コンピュータ利用が前提ではないものなので、どのメディアであっても情報を使う力が必要だと。ただ日本に導入されたときに、情報教育が進んでというか、これから力を入れるというところで、コンピュータの利用がということが前提に考えられた情報教育等の中の言葉として情報活用能力ということが使われたという、そういう経緯を考えてみると、日本では大学図書館はもともと情報リテラシーという言葉を使っています。リテラシー基準というのも、大学で国立大学の基準が出ていますけれど、でも、望ましい基準とか、それから学校図書館のガイドラインも、情報活用能力という言葉が文部科学省の中で使われていて、ということで、自分でもそれを使いましたけれど、でも、今回の学習指導要領の解説の中で、やはりコンピュータ前提の言葉のように説明をされていると、もっと図書館で幅広く、先ほどから出ている印刷も、それからデジタルも両方を使って、情報を使う力を子供たちにつけていく、子供たちにデジタルを使い分ける力を教えていくことが必要でという、そういうことを考えたときに、今のガイドラインとか、望ましい基準が「情報活用能力」という言葉をそのまま使っていいかどうかというようなことも皆様にちょっと考えていただけたらなと思って発言をさせていただきました。
それから、すみません、次のページは、学校図書館の活用教育と情報教育の違いというものを考えてみると、情報活用能力の育成と両方とも言っているんです。学校図書館でもそうは言っているんですが、使う対象とする資料や情報、あるいは教育機器の範囲が違うということで、だから両者が協力して情報教育を進めていく必要があるのではないかと。
学校図書館側の現場の方たちは、私たちは情報教育をやってきましたというようにおっしゃるんです。それから、ある中学校の司書教諭の方は、私が情報教育を統括していますというようなこともおっしゃる人もいらっしゃる。いろいろなレベルはありますが。
それで真ん中より下のところですが、学校図書館活用教育と、それから情報教育、両者がやはり連携、統合することを念頭に置いて考えていく必要があるのではないか。
例えば大阪府の教育委員会では、こんなふうに丸1から丸5の力を情報活用能力として整理して、義務教育の9年間で体系的に育むことができるようにというので、去年の3月にそういうものを出しています。
それからある小学校、公立の小学校ですが、こんなふうに統合に捉えているところもあるし、高校のSSHのプログラムの中に基礎として学校図書館の探究の時間を設けているというところもあります。
こんなふうにやっぱり、先ほど野口委員さんもおっしゃったように、両者が、情報教育、別々に進んできているのではないということを念頭に検討していただけたらなと思います。
すみません、時間が押しているところ、ありがとうございました。

【秋田座長】 どうもありがとうございます。

【堀川副座長】 すいません。駄文を4ページ、5ページつけておきましたので、後で読んでいただければ幸いです。

【秋田座長】 ありがとうございます。この後、緒方委員、それから田井委員、設楽委員、伊藤委員、そしてその後、質問に若干お答えいただいて終わりにするということで、お一人、2分程度で御発言をこの後の方はしていただきましても、ちょっと若干延びますこともあらかじめ御了解いただけましたらと思います。
それでは、緒方委員、お願いいたします。

【緒方委員】 すいません、ちょっとこの後退席しなければならないので。論点でいうと1番目の2ポツ目、電子書籍の計画的整備についてなんですが、特別支援教育の立場からいうと、校長としては、特に視覚障害に対する音声読み上げであるとか、肢体不自由に対してはカスタマイズされたインターフェースであるとか、また、聴覚障害者のための字幕・手話通訳機能等、すごく電子書籍については障害のある児童・生徒が情報や文学等にアクセスするために非常に有効だと思っています。
それを前提に、そういった電子書籍だけではなく、先ほど一般書籍とのベストミックスという話も出ましたが、それを計画的に整備・活用するというためには、いきなり教員ではなくて、今日、私も誤解していたところがあったんですが、障害者向けのコンテンツ、コンテンツ自体がまだまだ数量的に少ないんじゃないかとか、以前はそういった読み上げ機能等が全てのデバイスに適合できないような状況もあった中で、やっぱり古い情報しか校長が持ってないと、今後、学校図書館のガイドラインでは、校長が学校図書館の館長としての意識をきちんと持って、計画的に学校予算、都からもらうのではなくて、学校に与えられた自律経営推進予算をある程度電子書籍と一般書籍、図書室、学校図書館にどうかけていくのかといったところのきちんとした情報提供、正しい情報提供を教育委員会なりから、まずは校長がちゃんと理解して、それは学校経営計画にちゃんと示して、そしてそれを継続的に続けていくということが一番重要なことなんじゃないかなと思いました。
私からは以上です。

【秋田座長】 緒方委員、どうもありがとうございます。
それでは、続きまして、田井委員、お願いいたします。

【田井委員】 中学校の立場で2点申し上げます。まず第1は、学校図書館に電子書籍の導入というのはとてもやっぱり進められる、推進していくべきものだと私も認識しております。きっと必要だと思いますし、入れば本当に有用だと思っています。
ただし、そのときにぜひお願いしたいのは、導入時の設定に学校の教員のそれが業務にならないようにしていただきたいということを知っていただきたいということです。GIGA端末が入ったときも、一人一人のIDの設定を結局ICT担当の教員が行ってというようなことがあったので、電子書籍が導入される場合、ぜひ教員に負担のないような十分な措置をしていただいて導入していただきたいということを強く思います。
それから第2は、学校司書についてです。今日の資料4の3ページに説明でもありましたが、蔵書のデータベース化が100%ではないと出ていましたけれども、これも、例えば学校司書さんがいればそういうことも減っていくのかなと思いますが、ただ、学校司書さんなんですけども、法的位置づけがとても弱くて、学校図書館法では、学校司書を置くように努める。それから、学校教育法では、その他必要な職員というような位置づけでとても軽いわけですが、こうした法的位置づけみたいなものを改善していった上で、学校司書の在り方についても御議論いただきたいなという思いをいたしました。
以上です。

【秋田座長】 どうもありがとうございます。
それでは、続きまして、設楽委員、お願いいたします。

【設楽委員】 先ほどは失礼いたしました。それでは、お手元の資料の中で、特に皆さん同じようなことをおっしゃっているので、最初のところの児童・生徒の発達段階というものを考慮すると、どうしても小学校の低学年は紙の資料を中心に学習するということが必要ではないかなと考えております。これは先ほど土屋委員の発表にもありましたように、やはり読み書きの基本は五感を通して実体験するということが必要ではないかと考えておりますので、ぜひその辺のところを踏まえて考えていただければなと思います。
さらに、全ての校種で紙の本、具体物である紙の本を基本としてデジタルを補助的に使用するということからスタートしていってデジタルに慣れていくということが必要だと考えております。
そのほかについては、ちょっと時間がありませんので、後ほど資料を御覧いただければと思います。
それで、電子書籍が学校現場にこれから導入されるわけですけれども、当会、全国学校図書館協議会の学校図書館調査の結果からも教育委員会であるとかサブスクでの多様な導入形態があることが分かっておりますけれども、いずれにしても、学校ごとに紙の書籍と同様な基準で電子書籍に対応をすることは非常に難しいと今のところ考えておりますので、この辺についても議論していただければと思います。
さらに図書標準については、これまで冊数が中心でした。先ほどの御発表にもありましたように、探究型学習とか、調べ学習などを進めていく上ではどうしても蔵書の配分比率が重要になってきます。図書標準には新たに蔵書の配分比率を含めて御検討いただきたいなと考えております。
最後に、学校図書館には学校図書館図書整備等5か年計画があります。これまでは、学習・読書に必要な図書の蔵書や新聞の配備、学校司書の配置などに関する整備予算が計上されていました。それに加えて、デジタル資料の充実、これに関する項目も入れていくことによって、探究型学習の発展に寄与できるのではないかと考えています。今お話しした図書標準と整備5か年計画についてはこちらの資料にはありませんが、ぜひ機会がありましたら御検討いただければと思います。
以上です。

【秋田座長】 設楽委員、ありがとうございます。それでは、続きまして、伊藤委員、お願いいたします。

【伊藤委員】 私は小学校校長として今日本当に学びの多い機会だったなあというふうに、ありがたいなと思っております。
電子図書館について新たなことを教えていただいて、特に最初に植村委員さんのほうからあったたちかわ電子図書館で、デジタルが増えて図書館に行く子が増えたというのは、衝撃がありまして、やっぱりいろいろなアプローチで活字ですとか本に触れるという機会、小学校段階で、家庭状況が違いますので、様々なアプローチでそういうところに触れていくというチャンスということで、デジタル教科書の部分というのは大きいんだと思いました。
実は私の勤めている自治体、先週、電子図書館が導入されたばかりで、ところが、子供の利用については、Wi-Fi環境が整備されないとまだ使えないんです。来年度の終わりぐらいみたいな感じになってくるんですけれども、それで担当の方にちょっと問い合わせてみましたところ、23区というところで読み放題パックにつきましては、私の自治体では、394点のコンテンツということで、急ピッチで小学校、中学校の教員が知恵を出してどれを選ぶかという選書をやっているそうで、23区の中で少ないところは45、多いところでは915ということで、やっぱり予算の関係でこれだけ格差があっていいのかなというふうに正直思ってしまいました。
やはり現場のほうでは、デジタル田園都市構想ですかね、そちらの関係で最初の導入時には予算がちゃんとつくんだけれども、2年目以降にはつかないので、これを何とかしてもらわないと本当に困ってしまいますという声を直接伺って、本当に現場のところでちょっと差があるんだなということを考えています。
あと、新しいシステムが次々に、GIGAも含めまして導入されてくる部分での現場の戸惑い、先ほどの中学校の校長会の校長先生からもあったとおり、これ社会的な要請は避けられないんですけれども、やはりちょっとこの部分の負荷というのは現場の教員に関しては非常にかなり過重になっておるということは重ねて申したいなということ。
それからあと、デジタルとアナログのベストミックスという話があったと思うんですけども、本当にそのとおりで、そのバランスについては、現場の教員、迷いが結構ございます。教育の在り方については、ポジションによって違いますので、こちらの位置というのが、全体像が見えてなくて、本当に迷いがあるというところがありますので、やはり電子図書館というのは、そのことを考える上で、私は非常にいい議論のもとになるんじゃないかなと今日感想を持ちました。
以上でございます。

【秋田座長】 どうもありがとうございます。
それでは、続きまして、最後に曽木委員、御発言お願いいたします。

【曽木委員】 すいません。大体電子書籍のことについては、今日皆さんからお話いただいたのと重なるところが多いですけれども、やはりこれを使う図書館の職員がデジタルに強いわけではないというところ、職員は多分スマホは使えると思います。ただ、図書館システムのことが分かっているかというと、そこがやっぱり理解がそこまで深いものではないので、例えばシステムのリプレイスをやるときには結構四苦八苦してしまうとか、そういったところもやっぱりありますので、やはりそういうデジタルに強い、そういう職員をつくっていく必要があるのかなとは思っております。そういう意味では研修というところが非常に強く出てくることだと思います。
それから、学校図書館と公共図書館が連携するということについては、これは必ず児童の不読率解消の一手になります。学校図書館というのは、生徒さんはほとんど全員が学校図書館に登録をしておりますが、公共図書館で児童が登録しているのはほんの僅かです。公共図書館に行ける子供たちもそんなに多いわけではありませんので、そういう意味で、読書をする、図書館を使う、それを使って学習をする、研究をしていくというところにつなげていくためには、学校図書館と公共図書館が連携していくというのは非常に重要なところだと考えております。
ただ、ここでちょっと一つ提案だったのが、学校図書館のシステムというのもありますけども、これと公共図書館のシステムというのが全く別物で動いております。この2つが連携していくと、かなり例えば電子書籍にしても使い勝手は非常によくなると思いますし、それから紙の本でいえば、図書館で持っている蔵書の検索というものが両方で可能になるというのがあります。蔵書というのは自治体でいえば地域資源ですので、こういったものを共有して効果的・効率的に利用できるといいのではないかと思います。
これが都会の図書館だけではなくて、いわゆる過疎化が進む地域などにとっては、やはりこういった双方の蔵書検索ができるとか、それから、予約ができて、例えば、生徒さんなんかは学校で市立図書館の本が借りることができるとか、そういったシステムが、そういう例も最近始まってきているようですので、これは学校の規模にかかわらず、児童・生徒の学習がもっと深まるではないかと考えております。
ただ、現状、実際の教育行政というのは、学校教育と社会教育というのは全く別々の部局で動いておりますので、予算も別になっております。そしてどこの部署がシステムリプレイスするかということは、例えば役所の中でもなかなか共有されてないというのがありますので、気がついたらシステムリプレイスが終わっていたということになり、また5年待ちかということになったりもすることもありますので、そういうコントロールを教育委員会であるとか行政の中で共有される必要があるのではないかと思います。
そういう意味で、教育長のリーダーシップというのは本当に必要だと思いますので、こういったところも含めて、望ましい基準であるとか、そういったところにも生かせていただけるといいのかなと考えております。
以上です。

【秋田座長】 どうもありがとうございます。それでは、いろいろ御意見、御質問もございましたので、一言ずつになると思いますけれども、植村委員、池内委員、それから土屋委員のほうから何か補足があればいただけたらと思います。まず、植村委員いかがでしょうか。

【植村委員】 先ほどの設楽委員からの御質問にまずお答えします。年度版、これは回答例そのままだったので分かりにくいですけど、これは年鑑を含みません。むしろ年鑑は、今後、デジタルアーカイブのようにして、過去の年鑑も全部見えるようなシステム、実際そういうアーカイブ提供がありますので、そちらに移っていってほしい。調べ学習、探究学習をやったときに、過去からデータを重ねるというのはすごい勉強だと思いますので。そういう意味では、ここでの年度版は、実は、『このミステリーがすごい!2024』のようです。あと、『このライトノベルがすごい!2022』とか、あと、『面接の達人2024』とか、そういうのばっかりです。これは本当にその年しか有効じゃない本というのはやっぱりあって、実は意外に大学なんかも学生たちが今年度の就職の本ってすごく欲しいんですね。でも、それっ切りになっちゃうんです。こういうのは電子図書をいいんじゃないかなと思ったのがここのお話です。
あと1つだけ。やっぱり、先ほど御発言ありましたけど、1人の先生だけができるからコンピューター導入のとき先生の負担になるというのがやっぱり状況として厳しいので、みんなできなきゃいけないと思うんですよ。学校司書もみんなデジタルができるということによって、過度に誰かできる人だけに移らないようにみんながスキルアップしていくというふうにぜひ向けていただければなと思います。
以上です。

【秋田座長】 ありがとうございます。それでは、池内委員、お願いいたします。

【池内委員】 皆さん、それぞれ図書館像、違う像を描いていらっしゃるなという気がしたんですけども、デジタルネットワークに関しては、小さい学校図書館とか小さい図書館にこれまでの単体の図書館という単位で動くというのは極めて非効率で、しかも効果が見込めないわけですね。
ですので、例えば学校であれば、デジタルネットワークとGIGA端末の環境をきちんと整備して、コンテンツは公共図書館が用意してというような役割分担をデジタルネットワークに適用した。つまり、同じデジタルの資料でも自分たちの図書館で収集・整理・保存していく自分たちのコレクションにするものとアクセスを提供するもの、全く多分原理が違っていて、それを全部一つに考えてはいけなくて、それこそ都道府県でやってしまえば、都道府県に住んでいる人みんな利用できるわけですから、そういう誰と交渉して、誰と一緒にやるかということをちゃんと考えていくことが必要で、それこそ、それぞれ各学校図書館にいらっしゃる司書教諭の方々とか学校司書さんに負担が行くのではなくて、その動き方をきちんとデザインしていくということが新しいデジタルネットワークサービスとかデジタル資料では求められていて、その水準の使い分けについてビジョンを多分我々が共有していかないといけないのかなと今日皆さんの御意見を伺って思いました。
以上です。

【秋田座長】 ありがとうございます。それでは、土屋委員お願いします。

【土屋委員】 皆さんの御発言、私のほうも学ばせていただきました。ありがとうございました。
1点、健康をどう考えるかというお話が出ていましたけれども、私も研究者ではないのでデータを取っているわけではありませんが、その点に関しては、逆にどういう御研究があって、どのような影響が出ているかということをちゃんと検証した上で考えるべきかなと思います。
学校図書館の中で健康の害を及ぼされるほどデジタル的なものを見る時間というのは逆にあまりないんですね。子供たちの集中力もそんなに続きませんので、そこだけを切り取って、健康被害については分からないですけれども、1日トータルで見る時間とか、それから、教科書自体が電子化されたときにどうなるかとか、見る頻度がアップすることによってもしかしたら影響が出るかもしれないなというふうな程度にしか分からないんですが、思いました。
あともう一つは、各先生方からお話のあった情報リテラシーの育成に関してですけれども、こちらはやっぱり誰かがというよりも、学校の中の組織でやっていくためには、連携と協働だけではなくて、全体の研修というのが欠かせないと思います。私も前任校では教員全体研修をやって、例えば著作権にしろ、オンラインデータベースの利用の仕方にしろ、全教員がやっぱり研修をしました。それの上で使ったので、誰が利用しても同じように指導ができたということがあります。
以上です。

【秋田座長】 ありがとうございます。
閉会の時間を10分ほど延長してしまいましたけれども、次の議題に移りたいと思います。その次の議題は、3、その他ということでございますが、事務局から何かございますでしょうか。

【毛利図書館・学校図書館振興室専門官】 第3回会議の日程について御連絡いたします。資料5でございますが、次回は3月11日火曜日の14時から16時、会場は文科省会議室を予定しており、次回もウェブ会議を併用して行います。
以上でございます。

【秋田座長】 ありがとうございます。本日の議事はこれにて全て終了いたしましたので、第2回の会議はこれで閉会といたします。
皆様、御協力ありがとうございました。オンラインの皆様もありがとうございました。
閉会となります。
 

お問合せ先

総合教育政策局 地域学習推進課 図書館・学校図書館振興室
電話番号:03-5253-4111(内線:3484)