学校安全の推進に関する有識者会議(第2回)議事録

1.日時

令和5年2月24日(金曜日)16時00分~17時30分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 「第3次学校安全の推進に関する計画」を踏まえて優先的に取り組むべき課題について
  2. 「学校事故対応に関する指針」の見直しについて
  3. その他

4.議事録

【渡邉座長】 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第2回学校安全の推進に関する有識者会議を開催いたします。
本日も委員の皆様におかれましては、御多忙のところお集まりいただきありがとうございます。
それでは、まず、事務局から配付資料と本日の出席委員の確認をお願いいたします。
【林補佐】 事務局の林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、私のほうから、まず配付資料の確認でございます。本日の配付資料は、配付資料の1と2。1のほうは『「第3次学校安全の推進に関する計画」を踏まえて優先的に取り組むべき課題について』という横長の資料でございます。資料の2のほうが、これは縦長の資料で、「『学校事故対応に関する指針』の見直しについて」、この2点が本日の会議の主要な資料になります。
これに関しまして、参考資料1、2、3、それぞれ御用意しています。参考資料1が3次計画の概要、参考資料2がその本文になります。参考資料3が、議事の2に関わります事故対応指針に関する本体が参考資料3として添付しております。
お手元にそろっておりますでしょうか。
不足等ありましたら事務局のほうに挙手ボタン等でお知らせいただければと思います。
また、本日の出席予定の委員ですが、今日は欠席の予定はないんですが、ちょっと遅れていらっしゃる先生が、神内先生ですかね。木間先生と神内先生がちょっと遅れての御参加ということですが、予定では全員出席ということで承っております。
事務局からは以上でございます。
【渡邉座長】 配付資料についてはよろしいでしょうか。
何かありましたら、挙手機能、あるいはチャットでもよろしいかと思いますので、お知らせください。
さて、本日の会議では、前回御欠席の大木委員、嵯峨委員が出席されております。お二方から、今回が初回になりますので、議事に入る前に、恐れ入りますけれど、自己紹介と学校安全に関する御自身のお考えについてお一言ずつ、大体2分ぐらいですかね、御発言をお願いできればと思います。
五十音順で、まず大木委員、続いて嵯峨委員の順番でお願いしたいと思います。
それでは、大木委員、お願いいたします。
【大木委員】 ありがとうございます。慶應義塾大学環境情報学部の大木と申します。よろしくお願いします。
前回の委員会のときは、おそらく卒業論文と修士論文と博士論文の審査が佳境でして,欠席させていただきました。大変申し訳ございません。
短く自己紹介です.私自身は理学部の地球物理学の地震学で博士号を修めておりますが、今、慶應大学で卒論や修論の学生たちのテーマは、専ら防災教育です.学生たちとともに、現場の先生方とともに,いろいろ学ばせていただいています。
問題意識というほどのことでもないんですけれども、大地震のように,起きるか起きないか分からない未来の不確実な事象に対して、これだけを目的として教育していくのはすごく難しいことです.ところが,防災教育や防災訓練を通して、学校運営や学級運営、教職員のチームビルディングとする、そのように防災教育を捉えられた組織は非常にいい成果を出しています.本委員会のテーマも,このような視点から考えていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
【渡邉座長】 ありがとうございました。
それでは、嵯峨委員からもお願いいたします。
【嵯峨委員】 藤華学院の私立の女子校を運営しております嵯峨と申します。あと幼稚園が附属でついておりますけれども。前回は急用があったものでちょっと失礼させていただいたんですけれども、やはり学校教育の中の安全といいますと頭に浮かぶのは、やっぱり震災のことがすごく頭に残っておるのと、それと、近年はやはり天候不順というか、気候の変動の大きさで、ちょっと今までにないようなことも多々起きてきていると思います。
それから、この間もあったんですけども、世の中のひずみというか、いろんなことが変わってきて、この間も大規模にいろんな学校に脅迫状みたいなのをファクスで流してきて、振り込め30万円みたいなことを言ってくるような、ちょっと今までになかったような、要するに、学校の安全を守るということが広範囲になってきてしまっていて、対応するのもなかなか難しい世の中になってきているのかなと感じております。
そういった中で、こういう会議の中で、少しでも何か一歩進めればと思っております。
以上です。
【渡邉座長】 ありがとうございました。
本日は、委員全員が御出席だと先ほど御説明ありましたけれど、改めまして、本日の会議では闊達な御意見をお願いしたいと思います。
それでは、議事に入りたいと思います。
本日の1つ目の議事は、「『第3次学校安全の推進に関する計画』を踏まえて優先的に取り組むべき課題について」ということです。前回の議論を踏まえまして事務局が資料を用意しましたので、御説明お願いします。
【林補佐】 事務局でございます。それでは、資料について説明させていただきたいと思います。
この議事に関する資料といたしましては、冒頭御案内しましたように資料の1番でございます。それに関連いたしまして、これ、「第3次学校安全の推進に関する計画」を踏まえていますので、その計画自体の概要、参考資料1と、その本文が参考資料2でございます。
先に参考資料1の計画の概要を御覧いただきたいと思うんですが、概要の下のほう、1枚目の下のほうに5つの推進方策というものが示されています。2枚目にその推進方策を細かく分けた具体的な個別の取組が列記されているわけですが、この5つの推進方策に、3次計画、1つの推進方策を取りまとめていただきました。
この会議におきましては、この有識者会議におきましては、この推進方策、5つの推進方策に基づきまして、これをさらに具体的にその中から優先的に取り組むべき事項について、より具体化させて、それを実際の施策であったりとか、事業であったりとか、取組に落とし込んでいくということを専門家の皆様から御知見をいただきつつ、取りまとめていくことができればと考えておる次第でございます。
この5つの推進方策と連動する形で、資料1番のほう、便宜的にAからEまで項目に記号を振らせていただきました。これ、優先順位というわけではなくて、便宜的なものでございます。5つの事業ということで、ある程度具体性を持たせた形で抽出させていただいた次第です。
なお、本日の議事にもありますように、学校事故対応の指針の見直しに関しましてはこれらとは別に検討するということで、それ以外の事項で具体性を持たせて抽出させていただいた次第です。
では、資料の1番のほうに入っていきたいと思います。
まず、Aが「危機管理マニュアル等の見直し・実効性を高める方策について」でございます。
基本的に資料のつくりといたしましては、前回御議論いただいた委員の方々から発言をいただいた内容、議事録を事務局のほうで拝見いたしまして、それを個別に箇条書のような形にして、それを整理・分類をして、それぞれの推進方策から具体性を持った形で抽出したものと結びつけた資料にしています。
まず、このマニュアルに関しましては、第1回の発言概要といたしましては、御覧のように、各学校で作成されているものの、情報が古かったり、内容面に課題があるといった指摘。
また、危機管理マニュアルに基づいて実施はされているものの、そこからサイクルに、PDCAのサイクルにつながっていないという御指摘。
そして、地域全体で連携協働していく中で、危機管理マニュアルや学校安全計画も含めて、例えばコミュニティースクールとか、その活動の一環として効果的な見直しを検討していくことができるのではないかという御指摘をいただいています。
1点目、「危機管理マニュアル等の見直し・実効性を高める方策について」でございます。
同様に、前回の議論を踏まえて抽出させていただいた2点目の事項といたしましては、「学校安全を推進するための組織体制の在り方について」でございます。1回目の議論におきましては、学校安全に係る知識や専門性、求められる基本的なレベルが上がってきていることから、例えば教員養成であるとか、教職員の研修をより充実させていくべきであるという御意見をいただいています。
また、学校経営の中核にも学校安全を位置づけて、管理職、校長自らこの研修に参加し、指導していく、そして学校安全を担う中核教員を育てて組織として体制をつくっていくことが重要であるという御指摘いただいています。
3点目の「学校における安全教育の取組のさらなる充実について」という事項でございます。第1回の会議におきましては、震災後に生まれた子供たち、震災から時間がたってくると、また震災そのもののイマジネーションがない中で、質を伴った防災教育をどう担保していくのかということに課題があるのではないかという御指摘や、また、よい実践事例をいかに共有していくのかという点での課題について御指摘をいただいています。
4点目でございます。「学校における安全点検の在り方について」です。法令上、学校においては安全点検を実施するということになっているわけなんですが、実際に学校現場で行われている安全点検そのものは、必ずしも専門性を有していない教職員が安全点検を行っていることから十分ではないのではないかという指摘をいただいています。
そうしたことから、どのような視点で、何を対象に、どのような基準で判断していくのかといったことを明らかにして、点検そのものの在り方を見直していくべきではないかという点で、具体的な事項として抽出させていただきました。
Eについては、やや、そのほかの事項に比べて抽象度が高いのですが、「学校事故の予防に向けたデータの活用と施策の検証について」ということでございまして、第1回の会議における関連発言を引用させていただきますと、スポーツ振興センター、JSCですね、こちらの災害共済給付の事業で膨大なデータの蓄積がございますので、こうしたデータを活用して学校の事故予防につなげられないかという御指摘。マクロデータだけでなく個別のデータとこれを組み合わせることで、さらにそれを専門性を持った分析をすることで、科学的にこれを予防に役立てることができるのではないかという御指摘。さらに、実効性のある対策、取組をしていくというところでは、データの活用と予防策が介入したときの介入の効果、これを評価する仕組みも重要であるという御指摘をいただいています。
これを学校事故の予防に向けたデータの活用、科学的な手法であるとか、AI等を使ったテーマになるかと思いますが、5つ目のテーマ、5つ目の事項として抽出させていただきました。
以上、事務局といたしましては、前回の議論を踏まえてこの5つを具体性を持った形で抽出をさせていただきましたが、テーマ設定も含めて、また継続的に今回も御議論を幅広くいただければな、御意見いただければなと思います。
事務局からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【渡邉座長】 ありがとうございました。今御説明ありましたけれど、「第3次学校安全の推進に関する計画」を踏まえて優先的に取り組むべき課題について、今回も引き続き議論していきたいと思っております。今、御説明ありましたように、第3次計画では取り組むべき推進方策を5つの柱でまとめていただきました。このカテゴリーを基礎として、前回の議論を踏まえ、さらに具体化し、今後、実行していくべき個別の取組5点を案として提示しております。これをたたき台としまして、それぞれに何か付け足す必要があるのではないかとか、あるいは修正が必要ではないかというようなことがございましたら御意見をいただきたいと思います。
大体30分ぐらい時間を取っておりますので、忌憚のない御意見をいただきたいと思います。御意見のある方は挙手をお願いいたします。いかがでしょう。
どの点でもよろしいです。A、B、C、D、E、どれでもよろしいですよ。いかがでしょうか。
それでは、桐淵委員、お願いいたします。
【桐淵委員】 質問のようにもなりますけれども、よろしいでしょうか。「『学校事故対応に関する指針』に基づく詳細調査報告書」というものが令和2年3月に文部科学省から出されています。
これは詳細調査を行った事故の事例について集約して整理していただいているものですが、これを読んでいくと、前回の会議で山中委員がおっしゃったとおり、似たような事故が学校では繰り返されているということがわかります。例えば、頸椎を傷めたりするようなプールの飛び込み事故。これは過去にもかなりあって、私が中学校で教員やっている時代にも、事故を受けて飛び込み台を、全部工事をして外したりしたこともありました。要するに、飛び込むには浅過ぎるのです、学校のプールというのは。そういうかなり以前に施設の改修も含めた対策をやっていながら、また似たような事故が起こっている。
それから、サッカーゴールにぶら下がって倒れて亡くなっている事故も、似た事例が過去にもあります。 柔道では、頭部外傷だと思いますが、これも柔道連盟のほうで、体格差が大きい場合とか初心者の場合には事故が起こりやすいから危険だということで手引なども出されている例です。
こういう「プリベンタブル」というか、対策をしていれば防げたかもしれない事故が繰り返し起きているという現状からして、調査報告書の横断整理の後、全国の学校に具体的な対策の再確認、徹底というような通知なり働きかけを文部科学省として行ってきたのかどうかということを、私が知らないだけかもしれませんが、取った対策についてお聞きしたいと思います。

【渡邉座長】 それでは、お願いします。
【林補佐】 今、横断整理の資料を御紹介いただきました。ありがとうございました。
事務局からお答えしたいと思います。
もちろん横断整理の資料を取りまとめて、それを周知しておりますし、その翌年になります令和3年の5月になりますが、学校事故対応の指針になりますが、その最終チについては、通知を発出しています。
そのほかの取組といたしましては、今年度からそれを1回から2回にしたんですが、教育委員会の学校安全担当者向けの会議、これを開催いたしまして、重要事項の連絡と併せて、今回、こういう事案に関しましては類似の事案が発生していますのでという注意喚起を図っております。
そのほか、学校安全の全領域をカバーしますので、もちろん災害安全も含めて、交通安全も含めてですが、研修会なども開催しておりますので、そうした形で、ただ対象者が、どうしても現場の先生にダイレクトにということではなくて、教育委員会の学校安全担当者を介して学校現場に対して呼びかけていく、注意を呼びかけていくというようなスタイルになっています。
そのほか、学習指導要領と連動しておりますが、安全資料などもその都度改訂して周知を図っているところですが、ただ、それに関しまして、まだ周知や啓発が十分でないのではないかというような御指摘があるとするならば、それは甘んじざるを得ないのかなと感じています。
いずれにいたしましても、年間を通じて、取組に関しましては、先ほど申し上げたようなことをやってきているということでございます。
【桐淵委員】 ありがとうございます。続けて、私の意見としては、前回の会議でも申し上げましたように、システムとして、これは教員にとっての専門性の重要な柱だと位置づけていただきたいと思います。要するに何百名もの未成人、未成年の子供、人たちが集まる場所で働くというのは、その子供たちの命を守る、安全を守るということが、教員の専門性の非常に大きな柱だという考えで、教員免許を取るときに、必ずこれを必修にして、具体的に事例が積み重なってきているので、どうすればどういう事故が起こるのかを免許を取る際に必ず勉強しなきゃいけないという制度にすべきだということと、現職の教員の全国的な標準的な研修内容にきちんとこれを位置づけるということと、具体的には、事故が起こったら即応体制で、例えばあなたの学校のゴールポストはきちんと固定されていますかというような具体的な注意喚起を定期的に全国の学校に呼びかけていくという具体的な策、要するにシステムとしてきちんと教育体制を整備していくことプラス、明日の事故を防ぐという視点で、文部科学省から指令のような形で発する、「指令」と言ったら語弊がありますが、ぜひ防げるものは防ぎたいというところを具体策としても出していただきたいと思います。

【林補佐】 事務局から1点よろしいでしょうか。御指摘ありがとうございました。最後にいただいた速報体制に関しましては、これ、我々も何とかしなければならないなと課題意識を感じています。
あと、申しますと、年明けぐらいからですかね、脅迫のファクスが全国に流れたというのがありまして、結局、あれも流れてから、文科省として、これは警察と連携して各学校設置者で対応していただいたので、何か大ごとにするようなことはなかったんですが、いたずらでしたので、ただ、よくインターネット上のシステムの例えばウイルスの被害が出ているとか、マルウエアの被害が出ているものは、クローズドの閉じたコミュニティーの中では注意喚起をし合うような、速報性を持って注意喚起をし合うような取組がなされているということも私どもとしては承知しているので、文科省のホームページとは別に学校安全のポータルサイトを開設していますので、より速報性の高い注意喚起の仕方というのは一つ課題として我々取り組んでいかなければならないなということを感じています。
今の御指摘を踏まえまして、御紹介というか、今の検討状況でございます。
【桐淵委員】 ありがとうございます。最後に、例えばゴールポストの固定が緩んでいたら、子供たちもそれに気づいて、「先生危ないですよ」と注意し合うような、リスクコミュニケーションがとれている、そういう学校風土にしていきたいですね。
私は一次救命処置、市民が行うBLSを中心に、ASUKAモデルの普及に努めていますが、人が倒れたときにどうしたらいいんだろう、救急隊が来るまでの数分間の間。それを子供たちに教えて、先生も、子供も、それから周囲の大人もみんな当たり前のように分担して救命処置に取り組めるような社会、学校にしていきたいと思っていいます。「安全」そのものがやっぱりそういう性質のものだと思います。子供でも気づいて、先生に声をかけるくらいの学校安全に対する風土をつくっていきたいと、時間はかかるでしょうが、そのように思います。

【渡邉座長】 ありがとうございました。では、次に藤田委員、お願いします。
【藤田委員】 大阪教育大学の藤田です。私は先ほどの資料1のDの安全点検の件についてですが、校内における安全点検の実施について、3次計画で子供の視点というのを入れるということと、当然地域の関係機関であったりPTAの視点を入れるというふうなことが述べられているわけですが、実際うちの大阪教育大学の附属池田中学及び附属池田高等学校では、今回のGIGAスクール構想との関係で、1人1台タブレットがあるので、そこに校内の地図をインストールして、子供たち全員にヒヤリハットに気づいたときに、その場所を登録してもらって、そしてそれに対する対応とか改善についての提案を書き込んでもらうという活動を実践してもらっています。それに併せて、当然そのデータを教員も共有して、教員もそれぞれの視点で気づいたヒヤリハットを登録をするし、また、PTAの活動の中で保護者が学校に来たときにタブレットの中で保護者視点で記入してもらうと、そういった中で、登録されたいわゆるヒヤリハットの状況というものが、やはり子供目線と教員目線と保護者目線の違い、また、地域での関係機関として警察、消防、また防災士等の協力者等に来ていただいたときにも登録してもらうという取り組みを展開していただいております。
そこでどのような違いがあるのかということを踏まえながら、その違いを基にして教員の研修に活かしたり、また、子供たちの安全教育教材として、いわゆる安全教育の生活安全領域のけがの防止という観点の中で授業展開をしていくというふうな形での活用ができています。そういうことを考えると、現在、私も関わっている「セーフティプロモーションスクール」の小学校でも、子供たち目線での安全点検という形で実践している学校もかなり増えているようですが、それを紙媒体だけではなくて、タブレット等を活用して情報共有しながら、それぞれの視点で多様性に基づいた安全点検のさらなる充実と、また子供たち目線での、例えば上級生から下級生への指導であったり、そういった意識づけというものも可能かと思いますので、今後の安全点検の在り方ということを含め、多様な機材やデジタル教材を活用していろんな視点を導入した安全点検や安全教育の展開ということについて国として検討を進めるという形で記載いただければと感じております。
以上でございます。
【渡邉座長】 ありがとうございました。
それでは、次は首藤委員、お願いします。
【首藤委員】 ありがとうございます。社会安全研究所の首藤でございます。
私からはBの学校安全を推進するための組織体制の在り方のところで一言申し上げたいと思います。
第3次計画の策定には私も委員として参加させていただいて、そのときの議論を思い起こしますと、組織体制については、かなり(私も含め)多くの委員から学校安全の中核を担う教職員というものを、もっと「中核を担う教職員」という表現以上に、例えば学校安全主任とか、そういった形で明確に位置づけたほうがいいという御意見が多数出たように記憶しております。
私は、自分自身としてもそれはとても大事だと思っておりまして、その意味でも、Bの組織体制の在り方のところで、優先すべき事項として、しっかり役割として学校安全を担う方を位置づけるというようなことをぜひ入れていただきたいと思います。
以上でございます。
【渡邉座長】 ありがとうございました。それでは、北村委員、お願いします。
【北村委員】 産業技術総合研究所の北村です。5つの問題点に整理をしていただいてありがとうございます。
私のほうからは、ちょっと全体の今後の進め方にも関わるところかなと思うんですけども、今回整理していただいた5点というのは、恐らくばらばらにやってしまうとよくなくて、全体がすごく密接に関係し合っているものだと思うので、ばらばらにやらないほうがいいなと思っています。
なので、うまく学校という1つのシステムの中で、人がいたり、教員がいたり、役割がいろいろあるという中で、この5つがどこをどう見ているものなのかというのをちょっと整理をしていただけると、お互いの関係性が整理できて、片方だけではすごく議論進んでいるけど、こっちでは全然議論ができてないみたいな、隙間が出てしまうとか、片手落ちになるみたいなことが防げるのかなと思いました。
例えばなんですけれども、Dの安全点検のところで、教職員というのが専門家じゃないので、無理のない形でやるような仕組みもつくる必要がありますよというようなことが前回の第1回の会議のところの発言として出ていますけども、これ自体は、例えばAの管理マニュアルとかのところも、ひょっとすると一部分は、教職員だけで見ていても抜けてしまうところなんかも出てくる可能性があるので、そういう、うまく学校だけではなくて、外部の専門家等も連携しながらやっていくような仕組みもできると、よりこれよくなっていく可能性があるので、お互いうまく、関係性があるので、そんな形でちょっと広げられるといいかなと思いました。
そういう意味では、Bの学校を推進するための組織体制というところも、今、第1回の発言内容とかで見ると、学校の中での体制をどうつくるかという話に見えてしまうんですけども、多分学校の中だけでやろうとするとやれることがある程度限られてしまう面もあると思うので、学校以外というか、周囲の専門家だったりとか、地域のリソースとうまく連携してやっていくような話も含めて検討できるといいのかなと思いましたので、A、B、Cに関しては、それぞれ取り組む範囲とか、ほかの項目との関係性なんかも整理していただけると、今後の議論する内容とかポイントが明確になっていくのではないかなと思いました。
以上です。
【渡邉座長】 ありがとうございました。それでは、山中委員、お願いします。
【山中委員】 小児科医の山中と申します。Aから5つのポイントとちょっとずれているかもしれないんですけども、実は前回の文科省の安全関連の会議で、平成28年の3月に安全管理の指針を出したんですね。そのとき私も委員をさせていただいたんですが、その後、その同時期に、保育管理下の事故でも同じような検討会があって、保育管理下の安全マニュアルもできました。
ところが、保育管理下に関しては、その後すぐに、保育事故の検討の有識者会議を設置して死亡事故が起こった場合には必ず市町村で検証委員会をつくって、検討報告書を国に上げるということになし、今まで50編ぐらい検討報告書が上がっているんですね。私もその有識者会議に出ているんですけども、どれも40ページぐらいの厚い報告書が出て、いろんな検討がされています。
同じ時期に、学校管理下の安全のためのガイドラインをつくったんですけども、その後、現場からの検討報告書は出ていないように思うんですね。
保育管理下では検討報告書が出て、有識者会議の場で検討しています。保育管理下の事故では、1年間の死亡統計、30日以上の医療機関受診を必要と下例の報告数も出ています。大体6月頃に報告が出ます。最近では、年間の保育管理下の死亡は、五、六例で、30日以上の医療機関受診例は年間に二千数百例、この8割は骨折です。保育管理下では定期的にデータが出ているので、同じ時期に、学校管理下でもいろいろ検討したのに、学校管理下の報告が出ていないのは、保育管理下の報告システムと、学校管理下の報告システムが違うのではないかと思います。保育管理下のように義務づけられたシステムになっていないのはなぜかなと思いました。今回の5つの指針とはちょっと違うんですけれども、保育管理下の報告システムと何が違うのかなと思っており、うまく報告が上がってこないあたり教えていただければと思っております。
以上です。
【渡邉座長】 今の点について、文科省からお願いします。
【林補佐】 山中委員、御指摘ありがとうございました。恐れ入りますが、今日の議事の2のほうでも取り扱わせていただくテーマかなと考えておりまして、議事の2を先取りしていただけるような発言だったかなと思います。
資料2の3ページのほうに関連する記述がございますので、後ほど御覧いただきたいんですが、端的にシステムの違いはあろうかと思います。いみじくも山中委員おっしゃったように、保育事故に関しましては、義務として、死亡ないし30日以上の重傷事故に関しましては上がってくるというのが、システムとして、平成27年以降、確立しています。
一方で、学校事故対応の指針については、事案が起きたときには基礎調査を行い、それが言ってしまえば現場の判断によって詳細調査に移行すると。その詳細調査に移行したものを報告をいただくと。その中でも、報告が必要なもの、報告がなかったものも含めてですが、ございます。
つまり、詳細調査に移るかどうかという判断そのものは現場に委ねられているというところもあるので、その点で、自動的に上がってくるものと、現場サイドでの裁量ですね。例えば学校においては小学校以上になりますと、通学中の交通事故というものもございます。これに関しましては、なかなか学校管理下なのかどうかというところが判断が難しいところもありまして、そういったものについては、文科省として把握していく中で、やはり質が異なってくるものも、学校管理下の事故と、またその性質の違いがある事故もございますので、そうした中で、現場サイドでのその辺りの判断の違いというものがあるのかと思います。
そういったものを関係なく自動的に上がっていくようなシステムになっているというのが保育事故のほうなのかなということで、上がってきたシステムの違いは、この辺りの数字の違いにも如実に出ているのではないかと私ども捉えております。
以上です。
【山中委員】 ありがとうございました。
【渡邉座長】 それでは、小川委員、お願いします。
【小川委員】 小川です。よろしくお願いします。私はAの危機管理の見直しのところについて簡単に追加で申し上げたいことがあります。
危機管理マニュアルを効果的に見直して実効性あるものにしていくためには、全てのマニュアルを見直するのはとても大変なので、とにかく訓練や点検とセットにするというのが一番効率的だと思います。
そのときに大事なのは、多くの学校がそうかもしれませんが、訓練はやったらやりっ放しで終わってしまうケースが多くて、振り返る時間を設定してない。訓練をやった後、30分でもいいし、1時間でもいいから、振り返りをして、その場で気づいたことを、付箋でもいいから、先生方に書いていただいて、誰か担当の方がその場で見直していく、アップデートしていくというふうにしていけば、短時間で効率的に実効性ある形で見直せるかなと思います。
そのときに子供も一緒に参加したらどうかなと思います。子供の委員会活動の一環として、児童生徒も、訓練が終わった後、子供の視点から、これはどうなのかという意見も言っていただくといいと思います。
大学で学校安全の授業を担当しているんですけども、学生に、中学や高校の避難訓練は、どうだったのかという話を聞くと、疑問に思いながら避難訓練をしていたということをよく言うんですね。火災避難訓練で火元に向かって逃げていたように思ったとか、いろいろ疑問を思いながら訓練に参加していたという話をよく聞きますので、やっぱり訓練が終わった後、子供たちのほうからも、委員会活動の一環として見直しに参加するのがいいかなと思います。その点、Aのところに付け加えていただいたらと思いました。
以上です。
【渡邉座長】 ありがとうございました。それでは、平塚委員、お願いします。
【平塚委員】 平塚です。よろしくお願いします。
幾つかあるのですが、まずAの危機管理マニュアル等の見直しについてです。先ほど話のあった文科省からのいろいろな通知は、確かに学校現場に来ています。何かあった後ですね。ただそれは、受け取る側がやっぱり「自分事」として捉えないと、多分いろんな通知が来たところで、生かされないということがあると思います。それをどうしていくかということで、先ほど学校安全に関する中核教員を育てるという、それは非常にいい視点だと思うのですが、学校現場の中で、学校安全や防災に割かれる人材というのが、実際のところ、例えば校内研究や生徒指導は上位になるけれども、学校安全や防災が後回しになっているという現状はあると思います。その辺りの意識改革は図っていかなければいけないと思っていますし、あとは学校によっては、例えば宮城県なんかも、防災担当、それから防災主任や防災主幹教諭というのは、各学校に配置するように位置づけられてはいるのですが、要は1人職では苦しくなるんですね。そこをやっぱりチームとしてやれるようにする。学校にそういう組織がないのであれば、例えば生徒指導担当、安全担当など、その学校にある校務分掌を利用して、チームにするというような、働きかけをしていくということが大事なのかなと。チームとして学校安全について考えていくという組織体制が必要なのかなと思っています。
それから、マニュアルが見直してもどうしても古いというような話があるのですが、例えば桐淵先生から出たASUKAモデルですが、消防でいうと救命救急講習などは毎年必ずアップデートされていて、ASUKAモデルも普通に救命救急講習の中に出てきていたりします。学校のものがなかなかアップデートできていないということは、多分そういうことが日常的に起きていないということなんですね。起きなければ、やっぱり変わっていかなければということにはならないわけです。
この間、山中先生の講演を拝聴して、大変私は感銘を受けたのですが、あの中で「変えたいもの」「変えられるもの」「変えられないもの」たしかそういう分類があったと思うのですが、起きるいろな事故や災害というのは、「変えられないもの」とすると、絶対起きるかもしれないという前提で、それに向けた対策を考えていかなければいけないのですが、多分学校現場では、当事者意識というか自分事として捉えていないというところがあって、そこが浸透していかない要因かなと思っています。
まだいろいろありますが、以上です。
【渡邉座長】 それでは、大木委員、お願いします。
【大木委員】 ありがとうございます。既に何人かの先生方がおっしゃったように、全部にまたがることが一番重要なんだろうなと思っていて、中教審の委員会のときも、日常に潜むような事故と、私が専ら対象にしている低頻度大災害、多くの人はほとんど一生味わうことなく終わるけれども、起きてしまったら大災害になるという、ここの共通点というか、それは何だろうというのを常々考えてきたんですけども、ちょうどたまたまそういった研究事例が今年度の修士論文で出たので、ちょっと御紹介したいなと思います。
要は何かというと、安全文化を持つということがやっぱり最優先にあると聞いて、安全文化というのは何かというと、いついかなる場合でも誰もが安全を最優先に考えた行動を取るということなんですが、この安全文化というのが意識しないと醸成されない。安全文化をどんなにうたっていても、例えば具体的にヒヤリハットを集める。集めるというのは、仕組みをつくるじゃなくて、おせっかいだったとしてもありがとうと言える。言ってくれてありがとう、気づいているよと言える、用心深くておせっかいさんがいっぱいいて、それに対してありがとうと言えるという職場環境になっているかとか、そういうことが、そういう職場環境をつくるということが安全文化を醸成するということだと思うんですけども、それをやると、日常に潜む事故は当然未然に防げるんですが、実はそういう組織で災害時の訓練をやったときに、そんなにいい成果が出なかったんですね。
ですけども、何が変わったかというと、安全文化が醸成されているチームは、リベンジでもう1回やったときの成長率がどこよりも大きかったんですね。つまり、安全文化が、日常的なヒヤリハットみたいなことを集めるような環境が用意されているところは、それで低頻度大災害に立ち向かえるわけではないんだけれども、低頻度大災害の訓練を工夫して少しリアリティーをみんなが共有できるようになると、安全文化がもともとあるところは、物すごい伸び率、成長率で低頻度大災害にも対峙できるという、そういうようなことが分かってきたので、そうすると、いずれの事故とか、あらゆる学校安全の分野にもまたがって言えるのかなと思ってちょっとコメントさせていただきました。
【渡邉座長】 ありがとうございました。
時間もちょっと少なくなってきましたけど、私のほうからちょっと1つだけ。あんまり出てこなかったんですけど、最後のEのデータの活用なんですけれど、今、スポーツ振興センター、災害共済給付のデータというのがございますけど、4月から災害共済給付はこども家庭庁のほうに移行します。そうしますと、これまでと同じような扱いになるのかどうかがちょっとまだ分からないんですけれど、データが活用できるのかどうかということも少し気になるところがあります。
また、御存じのように、中高では部活動が地域に少しずつ移管されていくというようなことがあります。そうしますと、学校の管理下ではなくなるので、例えば運動部であればスポーツ安全保険などを使うというようなことが出ているんですけれど、そうしますとそういう子供たちの地区の状況というのが前よりも把握しにくくなるのかなというのが少し危惧されています。
また、これまでの災害共済給付は、黙っていても入っているみたいな形だったわけですけれど、例えばスポーツ安全保険みたいなものになると、個々で加入するということになりますので、中には入ってないところも出てくる可能性もありますよね。そうすると担当の行政、学校が管轄じゃなくなってくるような状況の中で、どのようにデータを活用するか、また、それを実態がどのように把握するかということもこれから考えていかなければいけないということなんじゃないかなと思っています。
以上です。
時間が、なくなってしまいましたので、この点につきましては、皆さんのほうからまた御意見とか御質問がございましたらメールでお願いしたいと思います。皆さんの御意見を事務局のほうでお預かりして、次回の会議に向けた資料に入れたいと思っております。
それでは、次の議事に入りたいと思います。議事の2は、「学校事故対応に関する指針」の見直しということですが、これも前回の会議からの継続となります。事務局のほうから資料の御説明をお願いいたします。
【林補佐】 事務局でございます。資料を御用意しておりますので、お手元にお願いします。資料の2と参考資料の3でございます。主に資料の2のほうを御覧いただければと思います。
これまでも議事の中で学校事故対応の指針に関するコメントをいただいておりましたが、こちらは、学校における事故の発生を未然に防ぐとともに、学校の管理下で発生した事故に対して、学校及び学校の設置者が適切な対応を図るために、文科省に設けられた有識者会議において検討を行った結果、平成28年3月に取りまとめたものでございます。
指針のポイントは、資料2の1ページ目の真ん中の四角囲みでお示ししたとおりでございます。実際に事故が起きたときの流れに沿って記載しておりまして、特に事案が起きたときの基礎調査を、基本調査を行った上で、判断し、詳細調査に移行するといったあたりに記述、厚めになっております。適宜、参考資料3を御覧いただければと思います。
これに関しましては、昨年3月に閣議決定されました「第3次学校安全の推進に関する計画」の中で課題として指摘されてございます。その記述について抜粋して記載してございますので、御覧いただければと思います。
特に下線部です。「事故対応指針に沿った児童生徒の死亡事故等の発生に関する国への報告について、引き続き徹底を求めるとともに、学校管理下において発生した事故等の検証や再発防止に関する実効性を高めるため、事故対応指針の内容の改訂その他の必要な措置について、早期に検討を開始する」ということで、先ほど議事1で取り扱いました便宜的に5つに具体的な取組に抽出させていただいたものとは別に、1つ議事を御用意させていただいて、検討を個別にいただいているところでございます。
2ページ目以降は、前回もお時間を少し取っていただいて御議論いただいたんですが、その内容を、議事録を少し概要にいたしまして箇条書にした上で、内容を3つのカテゴリーに分類して掲載したものです。基本的に議事録の内容、議事概要をカテゴリーに便宜的に分けたという性質の資料でございます。
主にそのカテゴリーは、内容に係るもの、指針の内容に係るものは2ページ目、3ページ目がその運用に係るもの、これら両方に係る、あるいはこれらの内容面、運用面とはまた違った次元のものについては、3ということで、その他の4ページ目に記載しております分類にさせていただいている次第です。
内容面からいきたいと思います。2ページです。第1回目の会議でいただいた御意見といたしましては、御覧のとおりちょっと記述が長くなってしまっていて恐縮なんですが、児童生徒のもともとの既往の問題があったりとか、あるいは保護者のほうが望まないような場合もあるということで、対象の事故は何かを整理していく必要があるということ。
また、基礎調査に関しまして、学校レベルでまだ十分認識というものが定着していないのではないか。マニュアルのようなもの、基礎調査をどうするのかということも示していく必要があるのではないかということ。
3点目といたしましては、学識経験者の内容、専門性もより具体的に踏み込んだ記述が必要ではないかといった御指摘でした。
また、調査委員会の専門家とは何かということで、そもそも学校安全の専門家というのはいないのであって、だから、それぞれが関わる専門の人たちが科学的に関わっていくような調査委員会の仕組みが必要なのではないかという御意見もありました。
特に私学への対応については留意が必要であると。事故対応指針が主に国公立の学校を想定してつくられていたということもありまして、事情が違うので、別の手当てが必要ではないかというような御指摘がございました。
最後の点ですが、被害児童生徒の保護者への支援も必要な点です。第3次計画の中でも事故対応支援コーディネーターというものが位置づけられましたが、これが果たして機能しているのかということもここの指針の見直しに当たっては検討すべきであるという御指摘いただいています。
内容面については以上です。
続きまして、運用面についてです。議事1のほうで山中先生からも御指摘がありました保育事故との違いは1点目にあります。保育事故のほうは、政府で一元的に取りまとめられるという、自動的に上がってくるような仕組みになっています。
一方で、学校事故対応指針につきましては、これは言わば任意による、さらに現場に判断を委ねている任意の協力になりますので、その辺りのシステムの違い、これをどう課題として整理するのかと、対応していくのかということが1点目でございます。
また、周知がまだ十分ではないという御指摘もいただいています。
さらに3点目でありますが、国によるヒアリングを実施して、その要請にちゃんと応じてもらうようなことも必要ではないかということ。
また、内容面の話にもちょっと関わってきましたが、私立についてはやはり別段の検討が必要なのではないかという御指摘。
4点目ですが、一般の職員の間では事故対応指針を知らない者が多いのではないかという御指摘もありました。ですので、こういったものも教員養成段階に必須科目として位置づける必要があるのではないかという御指摘をいただいています。
運用面に関して最後のポイントですが、JSCの日本スポーツ振興センターのデータがございますので、これらをうまく活用することで、プッシュ型でこれは調査すべきという情報を出すとか、データに連動した取組によって報告を求めるということの実効性を高めることができるのではないかという御指摘をいただいています。
これら運用面、内容面に該当しないその他ということで、こちら事務局のほうで整理をさせていただいたテーマとして3つございます。
まず1つ目ですが、調査委員会の設置についてです。指針の中では学校設置者ごと、学校ごとで置くことになっているんですが、これは設置者の規模によっては設置そのものが難しい面、当然ございますので、そうした点も踏まえますと、例えば国において一元的に、ある程度の規模のところに一元的に置いたほうが調査の質が保たれるのではないかという御指摘。
2点目は、データの取扱いです。ミクロデータとマクロデータをうまく組み合わせるということで、交通事故に関してはそういった取組進んでいるんですが、生かせるのではないかという御指摘です。
データの分析については、専門性が非常に高いものになりますので、外部の専門機関と連携したりして、研究者に加わっていただくなどの専門性を確保する必要もあるのではないかという御指摘もいただいています。
以上、前回の議論をこちらのほうで分類をいたしました。この分類が違うのではないかという御指摘も含めて、また、そのほか論点として不足の点等、また追加すべき点等ございましたら、忌憚ない御意見頂戴できればと思います。
事務局からの説明は以上でございます。
【渡邉座長】 ありがとうございました。こちらの議事の2につきましても30分程度の時間を取っておりますので、皆様から御意見をお願いしたいと思います。今回の委員の皆さんの中には、前回、事故対応指針をつくるときの委員の方もいらっしゃると思いますので、前回も御意見いただきましたけど、今回も御意見いただければと思います。
いかがでしょう。御意見のある方、挙手ボタンを押してください。
それでは、平塚委員、お願いします。
【平塚委員】 文部科学省に質問ということになるのかと思いますが、やっぱり重大事故等があった場合に、国がリーダーシップを発揮して事故調査委員会等を設置したほうがいいと思うのですが、実際どうなんでしょうか。東日本大地震のときも、結局大川小事故もそうですが、現地の教育委員会にうかがいを立てて、それから動くような動きがあったと思うんですね。その辺り、国がリーダーシップを発揮できる環境にあるのかどうかということを、ちょっとお聞きしたかったのですが。
【林補佐】 御指摘ありがとうございます。大変難しいテーマかなと思います。やっぱり国で一元的に委員会を設置すべきじゃないかという御意見をよくいただくんですが、学校教育において難しいのが、事故が起きたときの、当局側と申しますか、学校側と保護者側の2つの立場があると、文科省の調査というと、どうしても学校側に寄り添った形になってしまうのではないかという御指摘、これはいただいています。
よく引き合いに出されますのは、鉄道事故だとか運輸関係の事故については、民間事業者ですので、公的な機関が第三者的な立場でニュートラルに調査することができるのではないかと思いますが、教育に関してはなかなか難しいところは、教育の世界そのものが行政法の世界ですので、行政行為における事故というものについて、文科省でということになりますと、やや当局側に寄り添ってしまうのではないかという点の指摘が一番難しいのかなと思います。
ただ、それぞれの設置者ごとというのは、やはり、規模も大小ありますし、また現場の多忙な状況なども踏まえますと、ある程度の規模のところで集約する形で、かつ第三者性も担保しながら調査組織を置くという点に関しては、これはひとつ検討の余地はあろうかなと感じております。
ちょっと歯切れのいい回答ではないんですが、よろしいでしょうか。
【平塚委員】 仕組みについてはよく分かりました。ということは、それで、結局、末端に任せるのはいいのだけれども、大川小事故もそうですが、それこそ、教育長がいない、(対応について)無知な市教委が主導することになって、本当にひどい対応でした。それで後手になって対応が遅れてしまったという経緯があるので、いち早くそういう組織を立ち上げられるような、そういうことができたらいいなと思っています。
以上です。
【渡邉座長】 ありがとうございました。今、文科省からご説明がありましたが、この事故対応指針もそれを受けてつくったという経緯があるということもちょっと知っておいていただければと思います。
次は、では、桐淵委員、お願いします。
【桐淵委員】 今の先生の御意見にもありましたけれども、学校で行う調査も、それから、設置者である教育委員会が行う調査も、先ほどの御担当者の回答にあるとおり行政側の調査ですので、それは文部科学省がやっても本質的には同じことですよね。だから、第三者性をいかに担保するかという問題であって、国で標準的に対応できるシステムをつくることが難しい理由にはならないと思います。教育委員会がやっても同じことですから。それでも三者性を保ちながら、やはりきちんと分析して、再発を防ぐための努力としては必要なのではないかと思います。
そこで、先ほど山中先生からもありましたが、保育事故では一元的な情報の集約ができて、学校事故ではそれができてないという、難しい課題はあるのでしょうが、それと今のこと、調査委員会の件をCDRという厚労省を中心に行っている子供の事故に対する調査と連動させて、法的にちょっとレベルを上げられないでしょうか。つまり法制度でとして整えられないかということです。
私の記憶が間違っていなければ、JSC(日本スポーツ振興センター)のデータだと、国公私学全部合わせて、年間の死亡事故は50件前後まで抑えてきてい現在ると思います。1980年代初頭では年間300件ぐらい、そのうち半分ぐらいは突然死でした。今は突然死を年間30件以内に抑えていますので、全体でおそらく5,60件に抑えてきている。これは死亡見舞金の給付件数だから、事故が起こった年度にカウントしているかどうかは分かりません。翌年度にカウントしているかもしれませんが。
今、日本の学校ではそこまで死亡事故を抑えてきている。交通事故は除いていると思いますが、この件数で、国でシステムをつくって、ちょっと制度のレベルを上げて、CDRの発想でこの事故は防げなかったのかどうなのかということの調査委員会を設置することはできませんか。保育事故のように自動的に集約されるシステムとタイアップして。制度上も改善していかなければいけないし、必要な規則もつくらなければいけないと思いますが、教員養成制度の充実なども併せて総合的に策を検討できないかという、そういう意見です。

【渡邉座長】 これについては文科省のほうから何かございますか。御意見として……。
【林補佐】 承りたいと思います。CDRの発想でということですが、やはり大きな組織をつくるということになりますと、大きなテーマでございますので、しっかりと御意見として承りたいと思います。
【桐淵委員】 時間をかけてでもぜひ検討してください。
【林補佐】 ありがとうございます。
【渡邉座長】 それでは、小川委員、お願いします。
【小川委員】 よろしくお願いします。調査の質だとか、対応策をどう提案していくかということを考えていったときに、学校を取り囲む何とも言えない文化みたいなのがあって、いつも疑問に思うことがあります。科学的なアプローチというのがやっぱり求められるんですが、学校で何かあったとき、必ず個人の使命感とか、精神論で片づける傾向がすごく多くて、何かあったら、関係者を集めて、管理者集めて、研修を行って、周知徹底すると。で、また同じことが起きる。この繰り返しじゃないかなと。最近学校や教育委員会の方々と付き合っていて、それをすごく感じます。
学校事故だけじゃなくて、学校には様々な案件が起きます。例えば、個人情報の漏えいです。USBメモリにデータを入れて紛失するとか、事務職員が会計処理を不正に扱ってお金を私的に流用するとか、何度も何度も同じことが繰り返される。そのたびに関係者を集めて周知徹底だと言って、使命感とか服務規程という形で対応しようとするんですけども、また同じことが起きる。特に学校安全の場合はヒューマンエラーという形で起きますので、産業安全の世界だとヒューマンエラーは起きるものだという前提のもとでシステムを考えていくので、そういう考え方に基づいて、調査のやり方だとか、失敗だとか、アウトプットの対応策を考える必要があると思います。
例えばフェールセーフシステムという考え方をするので、誰かが間違った判断をしたとしても、誰かがそれを補うような形にする。相互で監視するとか、相互で確認をするというふうなシステムにしたり、そもそもある判断ができないようにする。間違った判断をして、それを実行しようとしても、それが実行されないようにするとか、そういうふうにシステムを考える必要があると思います。
データもクラウドになってきたので、USBメモリで持ち帰るということをしなくてもできるようになったので、最近、個人情報の漏えいが、大分減ってきたのと同じように、やはりシステムそのものを変えていく必要があるかなと思います。
幼稚園のバスの問題でも、センサーをつければいいというものでなくて、センサーをつけてもセンサーが壊れる場合もあるし、センサーがちゃんと作動しているかどうか点検をする必要もあるし、そう考えるとやっぱりヒューマンエラーが関わってくる。やはり二重三重に防止するために、1人だけじゃなくて2人で相互で確認をし、なおかつもしそれが漏れたとしても、センターが検知してくれるというふうに二重三重にシステムをつくっていくという発想がないと、なかなか同じ案件が繰り返されるという問題は解決しないのかなと思います。
そういう視点で調査をしたりアウトプットの対応策を考える必要があるかなと思いました。文化というか、考え方を少し変えていくようなアプローチも一方で必要かなと思いました。
以上です。
【渡邉座長】 ありがとうございました。それでは、藤田委員、お願いします。
【藤田委員】 私は附属池田小学校事件の遺族の方々との対応等も含めながら、前の事故対応指針の委員会にも参加させていただいたわけですが、そういった中で、今でも話に出てくるのに、いわゆる事故発生直後の対応の在り方という中で、今回、指針の中でも、いわゆる学校設置者の報告というのがあったと。設置者への報告というもの自体が、要は現場にとってはいわゆる混乱した学校の状況の中で、被害を受けた家庭、児童、保護者等へ手厚く学校関係者が対応するためには人材の確保が必要であって、そういった中で、教育委員会等への要請を行うことによって、まず人員を確保した上で、そして被害を受けた家庭であったり、また、当然在籍している子供たち、被害がなかった子供たちへの対応というのは当たっていかなきゃいけない。という中で、いわゆる学校事故後の学校の組織制度の充実という観点で設置者への報告というものが位置づけられているということの了解というのが必要なんだろうと感じました。
あと、それから、前回の事故対応指針の中で、基本的にいわゆる被害を受けた児童生徒の家庭支援というのがあるわけですが、池小事件なんかでもそうです。現在でもやっぱり当時の現場にいた教職員で、やはりかなり深刻な被害を受けている教員等も残っていると。そういった中で、いわゆる事故対応指針そのものにおいても、当該校の教員への支援、また、相互の対策、対応という中で、バーンアウトであったり、また責任感によってというふうな中で、それを他の教員がどう支え合っていくのかというふうな観点も含めて、学校の設置者含めての組織という、いわゆる教員の職員への支援ということも入れた対応指針というのが充実される必要があるんじゃないかと。
2点、意見を申し上げたいと思います。以上でございます。
【渡邉座長】 ありがとうございました。
それでは、神内委員、お願いします。
【神内委員】 よろしくお願いします。少しちょっと立場が、私、微妙なので、今回研究者として参加させていただいているんですけど、弁護士と教員両方やっているので、現場での意見とそれから法的な意見でちょっと気になることはいろいろあるんですが、1つが、調査機関の話なんですけれども、やっぱり現場、調査するとき負担かかるのは事実なので、今、例えばいじめの実態調査もそうなんですけれども、学校事故の対応指針のほうにも、中立性とかを保つために、構成員を中立性保つために、いろいろと調査する人ですよね、それを職能団体からいろいろと推薦してもらったりとかいう話はあるんですけど、いじめのほうも、職能団体から推薦しなくなってきているんですね。というのは、すごい負担かかるんですよ、やっぱり調査の。なので、そういった意味で、現実、かなり厳しくなってきているので、それもあって、ある程度一元化した組織をつくっていったほうがいいんじゃないかというのが、これも現実的な話かなということになると、やっぱり何を調査するかというところもすごく負担があって、原因を解明するためにという話はあるんですけども、そうだとしたらやっぱり誰かの責任を追及したりとか、結果的にやっぱり最終的には裁判で使われる資料をつくるわけですよね。そうなったときに、やっぱりすごく負担が大きいんですよね、何をつくるかというのは。そういった現実もあるので、こういった調査機関をつくるときというのはそれなりに慎重に議論したほうがいいのかなというのはすごく思うところです。
一応、個人的には参照できるかなと思って考えているのは、医療事故調査のときの、医療事故の場合は調査支援センターというのをつくっているので、そこが結構わりかし第三者的に、医療事故が起きたときに、調査したりとかするんですよね。まず院内調査やって、次センター調査というのが基本の流れなんですけども、どうしてもやっぱり遺族の方と見解が違っていたりとかすることよくあるので、そういったときにやっぱり中立的にそういったセンターが調査したりとか、あるいはまず人員の確保ですよね。調査員の確保とかも推薦とかもしたりとか、そういった形もやっているので、そういうのがもし学校事故でもあったらかなり使えるのかなという意味で、医療事故調査の組織ですね、それを少し参考になればなとは思いました。
あと、事故対応指針についてもなんですけれども、こちらのほうも、この間の会議のところでも、やっぱり周知の徹底とか、研修していって、現場の教員がちゃんとそれを理解していく部分が必要だというふうな、そういうお話は確かにあるんですけども、私も教員という立場で、やっぱりああいった事故対応指針とか、無数の資料が送られてくるわけですけども、そうはいってもやっぱり読めないんですよね、なかなか。読む時間もないし、読む内容も難しい。
例えば、この間も、生徒指導提要というのが文科省のほうから出していただいたんですけども、すごく立派な、本当にいいものなんですけども、300ページもあるんですよね。なので、それを読めるかって、それは読まなければならないと思うんですけども、ただ、それはちょっと現実として、つくられた方の思いは分かるんですけども、やっぱりそれはできるかどうか難しいところなので、やっぱりそれは周知して研修したらそれで済む話なのかって、やっぱりそういうことではないと思うので、やっぱりできるだけ、分量もある程度現実的なものにしていくというのと、あと、やっぱり例えばなんですけども、これが本当に危機管理の面から適切かどうかという記述もあって、例えば今の事故対応指針だと、何か重大事故が起きたときに、原則として3日以内に教職員に全部聞き取りを済ませなさいというような形で書かれたんですね。そうすると、3日というのがすごく独り歩きすることになっちゃうと思うんですよね。というのは、多分、本当にそういった事故が起きたときって、3日間って本当に修羅場なんですよね。そんな聞き取りをやって、何かやって、そんな冷静に動いているって、そんな状況じゃないですし、警察とかも入るので、そうすると、例えば警察から聞き取りを受けて、また次に調査委員会からも聞き取り受けて、何回も聞き取り受けてという形になったりすることもあるし、そうすると、すごい負担もあるし、その中で、子供たちも教職員もかなりのきついメンタルの中でやっていかなきゃならないので、そういった状況ですよね。
それが現在の事故対応指針から想像できるかというと、少しそこはやっぱり見えないところが、私も思うので、学校安全としてのマニュアルとしてはいいと思うんですけれども、危機管理のマニュアルとしてあの事故対応指針が使えるかどうかというとちょっとどうかなというのはちょっと思うので、その辺り、いろいろと、疑問だけ申し上げて申し訳ないんですけども、ちょっとお伝えいたしました。
以上です。
【渡邉座長】 ありがとうございました。今のお話ですと、事故対応指針の話と危機管理マニュアルの見直しガイドラインがちょっと混乱していたようになっていたと思いますが。
【神内委員】 危機管理マニュアルは、そのものを学校でつくるという形。あれも実は現実的なものをつくったほうがいいとは思うんですけども、学校事故指針のほうも調査の流れを書いてあるんですね、要するに指針も。それは起きた後で何をするかどうかって調査のやり方を書いているんですけれども、あれ、一種の危機管理の1つ、一環なんですよね。起きたとき何をすればいいかということが書いてあるので。それが現実的かどうかという意味で今お伝えした形なんですけどね。

【渡邉座長】 それでは、嵯峨委員、お願いします。
【嵯峨委員】 よろしくお願いします。ここに書いてある第1回目のときに出ていたお話のようなんですけども、私立学校などがきちんと対応できてないという話を聞くというのがあるんですが、まず1つに、私立学校といっても、大学法人の何万人というところから町の小さな幼稚園まであるので、ちょっとこれを一緒くたにしてしまうのはかなり乱暴なのかなという話と、やはり小さい規模のところでなかなかきちんと全部対応するというのはかなり難しいことであるのかな。例えば先ほどの幼稚園のバスの事故に関しましても、やはりあっては、大きさじゃなくて、あってはいけないんですけれども、やはり大規模な幼稚園のほうが、確かに子供の数が多くて目が届かない可能性もありますが、とはいえ一方で、人手がありますので、二重三重のチェックというのは確かにしやすいはずだと思います。
これは自分の幼稚園と事故の起きた保育園なんかのことを現場で聞いても、大きい私どもの幼稚園にするとちょっとあれは考えられないというような形なので、私立学校と一くくりにしても、いろんな大きさ、また内容、事情があると思うので、なかなか難しいところではあるのかなということが1点と、実は私どもの学校でも大事故につながりかねないような柔道部のことが1回ありまして、これについて、担当していたと先生も呼んで、弁護士も挟んでいろんなことをやったときに、1つちょっと驚いたのが、熱心にやっているというのはいいんですけれども、本人にそういう意識が極めて薄い、昔式の考え方みたいなことが多くて、私どもとしては、事故が起こる前にやるべきこととしては、その後すぐ夏休みを挟んだときに弁護士の先生にも来ていただいて、研修会を開いて、こういうケースはこういうケースになりますよとか、そういうのをやはり徹底しておいたほうが、何か起きたときでも、なるべく起きないほうがいいに決まっているんですけれども、そういうことも事前にしといたほうがいいんじゃないかというのが体験上ありましたので、意見として言わさせていただきました。
【渡邉座長】 ありがとうございました。それでは、首藤委員、お願いします。
【首藤委員】 ありがとうございます。社会安全研究所の首藤でございます。
先ほど来、委員会の調査体制のところで、例えば国がある程度一元化できないかというお話がいろいろ出ておりまして、私も実際、現実の問題を考えて、各学校で基本調査をして、その後学校設置者がというより、もう少し集中的にそれをやる機関があったほうがいいなというような思いは持ち合わせております。
先ほど事務局の方が、運輸安全委員会は対象が民間なのでちょっと違うけれども、文科省は行政機関として学校側に位置づけられてしまうのでということをおっしゃられましたけれども、運輸安全委員会は決してそういう位置づけではなくて、運輸安全委員会の調査は、例えば管制官のような同じ国交省の1部門も調査対象にしていたりしますので、恐らく100%中立な第三者機関というものは、今、どうやっても設置はできない。そんなことは多分今後も難しいのではないかと私自身は考えております。
その意味では、比較的当事者に近い学校現場であるとか学校設置者よりは、よほど文部科学省のほうが遠い立場なので、第三者性は高まると思いますので、先ほどの事務局のお返事は私も違和感を持ちました。
ただ一方で、じゃあ、一元的に例えば死亡事故を調査することが果たして可能かというと、先ほどたしか年間の死亡事故数が50件ぐらいとおっしゃられましたけれども、私の記憶する範囲では、運輸安全委員会で航空部会が取り扱う航空部門の事故、インシデントだけで年間せいぜい数件しか起こっていなくて、それでも事故調査官がたしか航空部門だけで十数名か20名ぐらいいて、それでも人手が足りないというような状況でした。
それを踏まえると、年間50件の事故調査をするのに一体どれだけの手が必要かとなると、国が一元的にそれを組織化するというのは相当ハードルが高いなと感じております。
ですので、死亡事故など一律というよりは、何かランクを区切って、こういったレベルであれば、国が一元的に扱うとか、それ以外は例えば設置者が都道府県単位ぐらいの寄り合い所帯のような形で調査委員会を設けるとか、何か少し工夫をした仕組みでないと現実的には調査体制を構築するのは非常に難しいかなと思いました。
以上でございます。
【渡邉座長】 ありがとうございました。北村委員、お願いします。
【北村委員】 産業技術総合研究所の北村です。私も今、最後首藤さんがおっしゃられたことに関連をする部分はあるんですけども、恐らく多分年間50件というのを全部調査するというのはかなりの仕事になって難しいと思うので、私も何かで切り分ける必要があるなと思っていて、恐らく年間50件というものの中には、もともとの既往とか、そういうのがあって起きているものというので、ある意味、予防が直接的には難しいものも含まれているので、そういうのは例えばちょっと外すとか、あとは、どうしても予防策が立てにくいもの、今の時点ではなかなか立てにくいものというのもあると思うので、そういうのを事前にちょっと選定した上で集中的に取り組むような必要があるかなと思っています。
あとは、過去に取り組んだ調査からある程度原因が分かるようなものに関してはちょっと置いておいて、新しく出てきたようなタイプのものとか、ちょっと原因が現時点ではすぐ分からないようなものを集中的に取り組むとか、少しそういう選定するための整理のフローというか、というものをつくれるといいかなと思いました。
もう一つは、また別の話にちょっとなってしまうんですけども、そもそも事故が起きた後の調査で原因が分かったりとか、対策が分かったりというののちょっと後の話にも関連してしまうんですけども、何らかこうあって、よく事故であるのは、何か設備とか関係した事故の場合には、その設備に関して点検をしなさいという通達がよく出されるということが起きるかなと思うんですけど、あれが点検をしなさいというところで終わっていて、その後どうなったのかとか、それが具体的に予防にどう改善されたのかというのが正直なところあんまりはっきりしていないなと思っていて、何となく大きな事故が起きるとその瞬間にそれがばっとやられて、あとは何か風化しちゃうというか、どうなったかよく分からないまんま、また次同じ事故が起きるということが繰り返されているような気がしています。
例えば2年前ぐらいに起きた、東北のほうで起きた防球ネット、木製の防球ネットが転倒してお子さんが亡くなるというのがありましたけど、あのときに一斉点検しろということで通達が出て、全国で千か所とか、そういうリスクのあるところ見つかりましたというのがあったかなと思うんですけど、あれがその後どうなったのかというのが、私がちょっと把握できてないだけかもしれないですけど、あまりはっきりもしてないですし、点検の仕方なんかもちょっと関わってしまいますけど、点検の仕方とかもあんまりはっきりしないままになっていますし、どういうパターンのどういうものがあって、それに対してどういう予防策をやる必要があるかとか、どういう点検をしていく必要があるかというところまで含めてやって、継続的にそれがどうなったのかというモニタリングというか、みたいなものをやらないと、すごくたくさんの現場の方とかの努力をかけてやった調査が、その瞬間だけ使われて、後、風化して終わりというのだと、非常にもったいなくて、次のほかの事故を防ぐことにつながらないのが非常にもったいないなという気がするので、調査した結果をどう扱うか、どう広めて効果的にやっていくかというところも含めて検討していく必要があるかなと思いました。
以上です。
【渡邉座長】 ありがとうございました。先ほどから災害共済給付の死亡見舞金の件数の話が出ていましたけれど、年間、支給した件数が50件程度ですね。発生件数じゃなくて支給した件数ですけど。あの中には実は不慮の事故じゃないものも含まれています。ですので、全部が調査対象になるわけでは、要するに事故対応指針の対応になるというわけではありませんので、その辺も考慮しておく必要があると思います。
災害共済給付に関しては、もしかしたらJSCの方に来ていただいて少しお話を伺うということも必要なのかなということもありますので、またそれもちょっと考えていただければと思います。
それでは、山中委員、お願いします。
【山中委員】 今、国の体制について、多分御存じかもしれないんですけど、子供たちの死亡検証が十分行われていないということで、チャイルド・デス・レビュー、子供が亡くなった場合に死亡の検証をするシステム、そのパイロットスタディが厚労省の母子保健課の管理の下、動いています。これは死亡例すべてを検証するシステムですので、学校現場であれ、交通事故であれ、病気であれ、検証が行われます。まだ幾つかの県でパイロット的に始まったばかりなんですが、ゆくゆく全国で行われると思います。はは、チャイルド・デス・レビュー、日本語にすると「予防のための子供の死亡検証制度」です。これが動き始めると、学校現場の死亡例もその中に入りますので、少し体制が変わるのではないかと思っています。
これがうまく動くようになりますと、あとは70万件、80万件も起こっている、いわゆる一般的なけが、この予防のための体制が必要ではないかと思っています。
令和5年4月から、厚労省の母子保健課は全部こども家庭庁に移りますし、CDRも、日本スポーツ振興センターの災害共済給付も、こども家庭庁に移りますので、そこで死亡例の検証が行われるようになると、今までとは体制が変わるのではないかと思っています。
以上です。
【渡邉座長】 ありがとうございました。
いろいろ御意見いただきましたけれど、委員の皆さんの御意見をいただくとともに、もう一つは、事故対応指針ができた後に、それがうまく運用されているのか、あるいは、そこで何か新しい課題が出ているかというような、少しそういうエビデンスをちゃんと捉えてから、改訂するなり、そういった方向に行くのかなと思います。
印象だけではなくて、要するに明確な、こういうふうな状況だということがもし分かれば、そういったところも調べていく必要があるかなと思います。例えば令和2年には詳細調査報告書の横断整理、これが文科省から出ていますので、そこでは死亡事故の報告書を整理したものが出ていますけど、そういったものもエビデンスの1つだと思うんですけど、そういったものをやっぱり見てから、関係者の方にちょっとお話伺うのも1つの方法としてあるんだと思いますけれど、そういったことも踏まえて改訂に向けていければというふうに個人的に私は思っておりますので、そこもちょっと文科省のほうで考えていただければと思います。
時間になりましたので、今回の議事は、よろしいですか、よろしければ、これで一応議事を終了させていただきます。
今回いただきました皆さんの御意見をまた整理した上で次回以降にお示しするという予定になっております。
それでは、議事の2のほうは終了しまして、議事の3、これも事務局のほうから御説明お願いします。
【林補佐】 事務局でございます。
その他につきましては、資料はございません。口頭の説明のみということで失礼いたします。内容といたしましては、今後の予定でございます。既にメールでお知らせしておりますとおり、今年度、可能であれば、3月、年度末は大変お忙しい中と思うんですが、もう一度会議を開催させていただきたいと考えておりますので、御協力のほど、日程調整の御協力のほどよろしくお願いいたします。
また、年度末が迫ってきましたということで、形式的に皆様の任期は3月で一旦終了ということになっておりますが、規定上なっておりますが、4月以降も引き続きまして学校安全の推進のためにお力添えをいただければと考えております。
お手数ではございますが、手続ございますので、こちらに関しましても御協力のほど重ねてどうぞよろしくお願い申し上げます。
事務局からは以上でございます。
【渡邉座長】 ありがとうございました。
それでは、第2回学校安全の推進に関する有識者会議は以上とさせていただきます。
委員の皆様におかれまして、本日は御多忙のところ、御出席ありがとうございました。
お疲れさまでした。

―― 了 ――

 

(総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課)