学校安全の推進に関する有識者会議(第1回)議事録

1.日時

令和4年12月23日(金曜日)16時00分~17時30分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 座長の選任等について
  2. 当面の検討事項について
  3. その他

4.議事録

【小川委員】
東北工業大学の小川です。専門は心理学です。心理学の観点から学校安全の研究を行っております。
2点ほど申し上げたいと思います。現場の先生方を対象とした学校安全研修の講師を担当することがございますで、その中でグループ討議をしておりますとやはり色々課題があるな、ということはわかります。1つ目は危機管理マニュアルをどう見直していくかというところが一つ課題かなというふうに思っております。どこの学校もマニュアルはほぼ100%はお持ちではあるんですがそれを定期的に活用して実際の地震や火災、不審者侵入を想定した避難訓練、学校施設の安全点検を行ってみて、その上でマニュアルを見直していくというそのサイクルがなかなかないな、ということに気づきました。実際やってみたらマニュアルの構成や課題を理解できると思いますし、また見直しの視点という課題が残っているということも理解できるかと思うんですがそこのところのサイクルがうまくいってないなというふうに思いました。
2点目は、やはり教育の充実というところで、試行錯誤は進んでいるかと思います。子供主体での安全教育を進めていくというのがかなり浸透してきたかなというふうに思っております。ただ良い教育事例はあるんですがそこで終わってしまっていて、他の先生方にもその方法が共有できるような仕組みがあればいいなというふうに思っております。

【北村委員】
産業技術総合研究所の北村と申します。私は今、人工知能研究センターというところにいますけれども、バックグラウンドはどちらかというと人間工学がベースで、センサーだったりとか工学技術を使って子供の事故予防をどうしていくかということを研究をしております。
第3次の安全計画を作るときにも関わらせいただいたんですけれども、その時にも申し上げたんですけれどもやっぱり実効性のある対策をしていくというところではデータの活用という点と、実際に何らかの予防策が介入した時の効果評価の仕組みづくりが非常に大事かなと思っております。データ活用の方に関しましては、例えば第三次計画の推進方策の5番の中にもありように、スポーツ振興センターの災害給付のデータですね。あのような日本全国の学校全体のサーベランスのデータがあるというのは、国際的に見ても非常に
稀で貴重なデータなので、あれを活用して予防につなげていく仕組みづくりが大事かなと思っています。現状も分析をして何らかの啓発とか情報提供とかそういうものはされているかとは思うんですけども、それだけだとやっぱり実効性のある予防策介入になってないなというのを感じておりますので実際に介入をして効果検証をしていくような仕組みづくりが大事かなと思っています。それを進める上ではやはりあの日本全国でいきなり始めるのではなくてまあモデル校とかモデル地域を決めてしっかり効果のあるものをどういう対策がいいのかという検証をして、かつやるからには予算がないと回らないということ。学校に全部やらせるって言っても無理なので予算もつけた上で分析から介入して効果検証までやって、良かったもの全国に広めるというようなそういう仕組み作りが大事ではないかなと思っております。

【桐淵委員】
桐淵と申します。私は元さいたま市の教育長でありまして、その在任時に起こった小学校6年生桐田明日香さんの突然死への事対応に関する教訓から、ご両親と協力して事故対策のためのASUKAモデルというテキストを作りました。また、「救命教育」と言いますけれども、人が倒れた時にどうすればいいのかを教える教育を研究し、ASUKAモデルとともにその普及活動に取り組んでいます。
私からこの会議で提言したいことは、私自身が中学校の教員でしたが、第三次計画の推進方策の1の中で教員要請養成における学校安全の学修の充実が打ち出されました。これは大変重要なことであり、その完全な実施を図るべきだということです。と申しますのは、私が教員になった頃も含め、救命処置については保健体育の免許を取る人、これは子どもたちに救命処置を教えるためです。それから養護教諭の免許を取る人以外は救命処置はもちろん学校安全、事故防止に関することを全く教わらずに就職する。教職免許法の規定上そうなっていたのですが、これを改善する必要があると非常に強く思っているからです。
その理由の一つは、医学が進歩したのこととAEDを市民が使えるようになったことで、「救命のパラダイムシフト」が起こっているということです。昔は、人が倒れている時には「素人は触るな」が常識でしたが、今は全く逆で、プロが来るまで、救急隊が到着するまでにきちんと救命処置をみんなができるようになれば、救える命がたくさんあることが分かってきました。ところが教員養成の体制や教職員研修の中身などがそれに追いついていない。学校の危機管理体制も意識もまだまだ追いついてない。文部科学省もかなり強く呼びかけていますが、まだ不十分です。
もう一つの理由として、大川小学校の判決が非常に重要な意味を持っていると思います。私たちの時代の教員の感覚だと、大学で全く学んでいないので、あの判決文にあるような、教員は安全確保義務に関しては地域住民の平均的な知識や経験よりもはるかに高いレベルのものを持たなければいけない、というようなことはとても厳しいと感じました。
それはつまり、そうした能力を育てるための学期学修も教育も何もしていないのが現状なので、これを突破するためには、できれば法律も改正して、命にかかわるような事故の防止がもちろん核にありますが、事故防止全体についての能力を教員の専門性に格上げする、つまり科目も必要で、それを履修しないと教員免許は取れないというレベルに引き上げるべきだと思います。何百人ものお子さんを預かる職場で働くわけですから、それはもう教職の専門性の一つとしてきちんと位置づけて法改正などにも取り組むべきだと思っています。
最後に、喫緊の課題としては、救命処置に関する指導については各大学がまだまだ十分な力を持ってないので、消防庁や日本赤十字社などとも連携して、教員免許取得を目指す学生全員が救命実習を受けられる体制を、ぜひ呼びかけて整えてほしいと思います。

【首藤委員】
社会安全研究所の首藤と申します。よろしくお願いいたします。私は大学時代に心理学を勉強しまして、それ以来、事故や災害時の人間の心理と行動ですとか、あるいは事故を引き起こすヒューマンエラーについて調査研究に携わってまいりました。その関係で国の運輸安全委員会(航空事故など調査委員会)などの委員を務めたり、あと現在は消費者安全委員会の委員も拝命して事故調査分析等に関わらせていただいております。学校安全との関わりは、大川小学校事故検証委員会の事務局をさせていただいたことをきっかけに大きく関わらせていただくことになりました。
最近では文部科学省の事業として各学校園の危機管理マニュアルの見直しのお手伝いなどを具体的にやらせていただいているんですけれども、そのあたりで感じることは、やはり先ほど小川先生もおっしゃられましたけれども、危機管理マニュアルは一応できてはいるものの、ちょっとはてな?と思われるような内容のものあるいはだいぶ情報が古いまま整合が取れていないようなものや、大きく欠落しているような部分があるようなものがあります。まだまだしっかり見直していくべきマニュアルが数多いなというふうに感じておりまして、それを学校の教職員の力だけではなくて、学校を支援して見直しを進めていく仕組みが何を作る必要があるかなというふうに思っております。おそらく公立の小中学校や高校とかの場合ですと、教育委員会が見直しの支援をする大きな役割を果たすんだろうと思いますが、教育委員会の方々にそもそもあまりノウハウがないということも大きな課題と思っておりまして、そこをなんとか改善する。あるいは私立の学校園ですとそもそもそういった教育委員会のように設置者側がしっかりと見るということもなかなか難しいので、そういったところをどうやって支援していくかということがとても大事かなというふうに思っております。
加えて、学校現場で行われている安全点検も事故を防止する上で非常に大切だと思うのですが、どのような視点で何を対象にどのような基準をもって判断していくのかというようなことがはっきりとしないまま、あまり専門的知見がない教職員が様々な設備や機器の点検まで担っているという現状は非常に難しいものがあるかなと思っております。やはり教育の専門家で子供さんの行動とかに詳しい教職員がやるべき点検と、設備や機器の技術的な面などについて詳しい専門家がやる点検など、点検の主体と内容をしっかりと分類して、無理のない形で安全点検ができるような仕組みも構築する必要があるというふうに考えております。

【平塚委員】
宮城県の東松島市立矢本第一中学校の校長をしております平塚真一郎と申します。東松島市は東日本大震災の最大被災地宮城県、その中でも特に被害の大きかった石巻地域にある学校です。私自身は学校に関わるという立場、それから震災の折に大川小学校で長女を亡くした学校事故遺族という立場で、全国で防災に関するお話をさせてもらっています。ここにいらっしゃる首藤さんにも大変お世話になりました。
教員と学校事故遺族という両方の立場からいろいろお話できればと思っています。それで、いろいろなところで話をしていて感じることをいくつか挙げたいと思います。
1つは、本校も被災地にあるのですが、やはり震災後生まれた子供たちや当時の記憶のない子供たちが多い中で、実は被災地でも、震災はもう身近ではなくなっているという現状があります。それから被災地に対して、未だ災害が起きていないところを未災地という言い方をするのですが、未災地で感じるのはやはり、災害イマジネーションがない中でいろいろな防災教育が行われているのだけれども、それがどうも質が伴っていないという現状があります。そこをどうにかしていかなきゃいけないなと思っています。それから安全教育に関して、やはりその地域差や学校差は当然あります。この後お話しされる、藤田先生から提案されるSPSの考え方と仕組み作りというのは、非常に大事な視点なのかなと思っています。
それから防災についてですが、学校はいろいろやることがたくさんあって、どうしても後回しになりがちです。それはやはり正解がなく、何が正しいかが分からない曖昧さというのもあるのかなと思っています。先ほど北村先生がおっしゃったような、効果検証ということですが、どこに行っても、果たして今やっていることがどのぐらい効果があるのかということを測るものがないということを皆さんおっしゃいます。その辺もちょっと考えていかなければいけないかなと思っていました。
最後になりますが、震災に関して、震災教訓のことなのですが、どうも震災がたまたま学校があった時間に起きたものだから、学校や先生方がいろいろ機能するということが前提で話は進んでいるのですが、教員がいない時間帯で学校が避難所機能を持つ時にどうするのかということは、地域、自治体を含めて考えていかなければいけないということです。それからもう一つだけ、そもそも論ですが、命の大切さという点で、「そもそも命って大切なんですか?」などという疑問を挙げる学生がいたりします。それってやっぱり、「自助」をもっとしっかりやらないといけないわけで、学校ってどうしても特別活動等となじむ「共助」の方を一生懸命やっている学校がいっぱいあるのですが、本来は「自助」をまずしっかりやるというところを大事にしていかなければいけないと感じております。

【藤田委員】
大阪教育大学の藤田と申します。私は現在大阪教育大学の方で学校安全教育の授業を担当しておりますが、21年前に23名の児童教職員が殺傷された附属池田小学校で事件6年目から4年間学校長を併任いたしまして、同校における学校安全の再構築に従事させていただきました。その中で、例えば安全教育のデジタル教材の開発を行いますとともに、先ほど平塚先生にもご紹介いただきましたが、セーフティプロモーションスクール(SPS)という独自の学校安全推進の取り組みを創設して、現在国の支援いただきながら普及に努めているところでございます。このSPSの活動を進めていく中で現場の校長先生等から、こういった活動をすることのメリットは一体何なんだろうかっていうことがよく話題に出てくるわけですが、学校の安全を推進するということのメリットのエビデンスをこれから明確にしていくための取り組みが必要なんだろうというふうに思っております。そのための何らかのスタンダードのようなものを構築していくか調査研究が必要ではないかというふうに考えております。また、この学校におけるその安全推進の活動として、先ほどから話が出ております「危機管理マニュアルの見直し」であったり「学校安全計画の策定」において教員だけが主体的に担っていく、そういった中でそれを推進していくための見直し作業が教員の負担増につながるということもやはり懸念されるところですが、今後は今回の第3次推進計画にありますように地域全体で連携協働していく中で学校の危機管理マニュアルやまた安全計画についていわゆるコミュニティスクールの学校運営協議会やまたその活動の一環としての学校安全委員会の活動の中でより効果的なマニュアルの見直しまた学校安全計画の策定の方向性について検討していく必要があるんじゃないかというふうに考えているところです。

【山中委員】
山中です。小児科医の山中と申します。学校関係に関しては、平成28年の委員会があった時に参加させていただきました。私は、子どもたちの事故全般の予防について30数年取り組んでおります。先ほど北村委員からもお話がありましたように我が国では災害共済給付制度という制度で、小中高に関しましてはほぼ100%、子どもたちの情報が取れる状態になっております。日本スポーツ振興センターが出しているデータを見ますと、就学前の子どもたちの災害共済給付の給付率は2%ですね。小学校ですと5%、中学になりますと10%、そして高校が8%というデータが出ています。そして経年変化を見てみますと全く変わらないんですね、就修学前も毎年同じですね、変わっても0.01とかですね、下2桁が変わる程度で全く同じことが起こっているんです。そして件数は、昨年度は多分85万件でしたけど、それまでほぼ100万件というのデータが出ていまして、そのうちの9割以上は負傷、怪我なんですね。毎年膨大な数のデータが出ており、しかも同じデータが毎年出ているということは、残念ながら学校現場の安全対策は不十分であるということがわかると思うんです。
今までこの貴重なデータの細かい分析がされていなかったことは非常に残念だと思います。これは話が飛びますけれども、いろいろな事故がありますが、交通事故と労働災害に関しましては我が国には良いシステムがあり、きちんと効果が出ています。例えば、交通事故は年間に35万件ぐらいのデータを得られます。警察官が現場に行ってデータを取って、それを交通事故総合分析センターに送って、そこで分析をする。1月の初めには、昨年度の24時間以内の死亡数は2610人とか、毎年、確実に数が減っているんですね。それはきちんとした対策を取っているからです。労働災害もきちっとしたデータをとっています。学校は、子どもたちの生活時間の半分以上を占めています。学校現場のデータもあるわけですね。先ほどからお話がありますように、介入をして評価するという作業をしなければいけない。交通事故は年間35万件を分析するセンターがありますので、子供たちの学校管理下の事故を予防するためには、学校事故総合分析センターのようなものを作って、毎年きちっと分析を行って、その中から重傷だった事例を取り出して対策を考えて、それを現場に導入して評価するというシステムがないと、この膨大な数の怪我はなくならないんではないかと思っています。
疫学的には、ほぼ100%のデータが得られている情報をうまく活用して、その効果を示すような、そういう仕掛けが必要ではないかと思っています。
日本スポーツ振興センターの一部のデータを見せていただいて、少しずつ介入につなげられるような活動をしたいと思ってます。ので、私は、起きた時とか、起こった後ではなく。起こる前の予防についてのシステムを作りたいと思って活動しておりますので、よろしくお願いいたします。

【渡邊座長】
ここで私の方もちょっと一言お話ししたいと思います。
私はこの学校の仕事ですね特に文科省の様々な取り組みについても20年以上多くかかわってまいりました。それで私の方からはですね、第三次計画の推進方策の4にありますヒヤリハット事例の活用ということでちょっと話したいと思います。先ほど、山中委員からお話がありましたように、学校で起きている事故は同じ事故が繰り返し起きている状況があるわけですね。そういったことは過去の教訓というものを活かせばかなり予防できるのではないかというところがあるわけです。例えば他の学校の事例を参考にするとか、ご自身の学校の中で起きたことであっても、例えば大きな事項が起きればそれに対する取り組みはするでしょうけれど、いわゆる「ヒヤリハット」、つまり起きたんだけど大した被害が出なかった、あるいは被害がなかったってことに関しては良かったね、で終わってしまうっていうことが多々あると思うんですね。今日参考資料の子供の送迎バスへの置き去りっていうのは、今回この事故が発生したことで様々な報道機関が調査に入っています。いくつかのマスコミから情報をいただいたんですけれど、学校でバスに置き去りにして被害が出なかった事例が、いくつも出てきたわけです。それで有効な対策を取ればいいと思うんですけれど、本当にこの事故が誰もケガ人がいなくて良かったね、で終わってしまいますと、次に今度は重大事故になってしまうということも考えるわけですね。まあ、これだけではなく学校の中で起きているそういうヒヤリハット事例というものを共有し有効な対策を作っていくっていうことがやはり必要になってくるかと思います。これは今回の送迎バスのだけではなくてすべてにおいて同じことが言えるわけですね。ですから、そういったことを活用するとともにやっぱり先生方・教職員の意識、危機管理意識を高めていただくということで、これまでも様々な研修を行ったり、現在もやっておりますけれども、そういったことの充実と、それと桐淵委員からあったように教員養成段階でいうことそういったこともできるだけ進めていければというふうに考えております。

【桐淵委員】
一つは質問というか確認ですが、現在、厚生労働省が「チャイルド・デス・レビュー(CDR)」という、子どもの死亡事故の死因を分析する取り組みを始めていると思いますが、その取り組みと、この学校安全の取り組みとの関連はどのように整理されているのかについて教えていただければと思います。
それともう一つ、山中委員からお話があった学校事故に関する研究センターの設置というのはすごく重要だと思います。そこで明らかになった教訓を、先ほど言った教員養成段階で専門性としてきちんと教育していくことと、そして現職の先生たちに対しては、初任者研修などの「法定研修」の中にスタンダードな内容として事故防止を入れていく。このようにセンターで研究して明らかになった対策が、即その関係者に徹底されていくようなシステムを作っていくとよいと思います。

【事務局】
CDRとの連携につきましてご質問いただきました。
大変恐れ入りますがこれまでも委員の中からも活用ありましたようにまたそれは第三次計画の中でも打ち出されておりますように、その文科省所管のスポーツ振興センターの方で蓄積されているデータの分析をどうしていくのかということが、まさにこの会議の一つのテーマとして皆さんにもお諮りしたい事項ですし、まさにこれから取り組んでいきたいと考えているテーマでございます。その過程において、まさに今後、CDRとの連携をしっかり把握していきたい、とこのように考えているところでございます。
まさにこれからということでご理解いただければと思います。よろしくお願いします。

【山中委員】
山中です。CDRはその設置の時からちょっと絡んでおりますので、ちょっと現状をお話したいと思います。簡単に言いますと、子どもたちがいろいろな場で死亡しても、なかなか原因がわからないということで社会問題になりまして、子供の死因を究明して、次の予防につなげるためのシステムがCDRです。CDRは約3年前に我が国ではモデル事業として始まったんですね。アメリカなどでは1980年代の終わりから始まっていますし2000年代に入って色々な国が法制化を行って、子供が死亡した場合にはその検証を行うようなシステムが動いています。
我が国でも3年前に始まったんですが、残念ながらモデル事業として県単位で最初に7つ、そして現在11ぐらいの県で死亡した事例を集めて、検証委員会を設置し、そこで死亡原因を検討する。死因を検討するのはほぼ医療機関なんですけども、このチャイルドデスレビューは、どうしたら次の子供の予防を死亡予防できるかということを検討する場なんですね。ですから、誰かの責任を追求することではありません。いろんな関係者が集まって、どうしたら死亡を予防できただろうかという検討をして、提案をする場なんですね。今まで法律でも死因究明の法律がありしたけど、これは病的なことだけの検討で、死亡した時点の時間までで検討が止まってしまうんです。CDRというのは、今後どうしたらいいのか、死んだ時点から始まって、未来の予防につなげるための検討なんですね。CDRの場には、いろいろな職種の人が集まる必要があるんですが、残念ながら現在の法的な制約のもとでは、警察からの情報がほとんど入らないんですね。3年前からモデル事業が始まったので、厚労省からは報告があるべきなんですけれども、それらの検証報告は出ていません。外国では、法律で警察情報をCDRの検証の場に出すことを国で決めているんですが、我が国はそのシステムがまだ動いていないため、うまくいっていないのです。今度、こども家庭庁ができて、どういう対応になるのかわかりませんけれども、現在のところは、ほとんど動きがありません。現在、CDRの研究班もできて色々活動しているんですけども、この法的な裏付けがない状況下件で警察の資料をもらえないためにやや頓挫状態となっています。
学校現場の子どもの死亡も、いずれはCDRに加えられると思いますが、CDRの体制ができるまでには4~5年の時間がかかるように思っています。日本小児科学会では独自に死亡検証をやっておりますけれども、やはり警察のデータが手に入らない。警察は死亡事故が起きますと、捜査権がありますので、現場に行って詳しく調査し、完璧な調書を作っています。厚い調書で、非常に貴重なデータが山ほど入ってるんですが、なかなかそれが得られない。裁判が終わってしまえば、なんとかそのデータにアクセスできるんですけども、その捜査・裁判が終わるまでは、その情報は見られないという制約があります。今後変わるのではないかと思いますけれども、現時点のCDRは残念ながら期待したような状況になっていないというのが現状です。

【神内委員】
よろしくお願いします。はじめまして、神内と申します。自己紹介なんですけれども、うまく紹介すること難しい仕事で、本業は弁護士なんですが教員もやっておりまして、中高一貫校の教員と、あと今回の会議の肩書なんですけども大学の准教授をしています。ですので学校現場に居ながら法的な問題とか色々接して研究につなげているっていうそんな感じの活動やってるんですけども、今回の会議の方で現場での実際の経験から、どんなふうな学校安全に考えられるかどうかでご意見を申し上げていけたらなと思っています。よろしくお願いします。
関心事項としてはやはり法律家なので事故的な話にはなってしまうんですけれども、教員の目線からするとちょっと、学校現場ではリスクが高い教育活動であるのはあったりとか建物や設備ですけどもそれに欠陥というものが統計でも結構それなりにあるっていうのはもう分かっているので、そういったところをどうやって改善していけばいいかなということは考えています。あと、例えば教職員のとか児童生徒の保険の加入とかですね。そういったところとか事故対応になってしまうんですけども調査委員会を敷地する時とかでも結構大変なのでそういう調査組織とかそういうものの常設化とか、そういったことにも色々個人的には関心を持っていまして、そういうものが実現できていければいったらなというふうに思っております。よろしくお願いします。

【木間委員】
私は現場の葛飾区立東京の葛飾区立柴又小学校で校長しております。また全国学校安全教育研究会の会長させていただいておりまして、この研究会は小学校中学校幼稚園の現場の校長管理職や先生たちが加わってどう学校安全を安全教育をどう子どもたちに進めていくかということを研究している研究会で、もう46年以上続いている研究会でございます。そういう中で今回この会議に入れていただいて、今後進めていくにあたりましてやはり学校現場におりまして学校安全の安全教育をどうあの学校の中に気づけるかといった時にやっぱり学校長の役割が大きいというふうに感じております。やはりあの私自身この研究会にも入っておりますし会長でもありましたので、私の学校ではやっぱり学校経営や経営方針の中に学校安全教育安全教育を位置づけて組織的に進めているところがありますが、やはり校長自身がそのような意識を持ちませんと、普段の避難訓練であるとか普通に安全点検をするといった方たちだけの安全指導安全教育が行われておりますけれども、学校の中で子どもたちに自らの危険を回避する能力とかそういうものを育てるのには十分ではないかなというふうに思っております。私自身はこの第三次計画を進めるにあたっては学校長の研修会になりをしていくことが必要かというふうにも思っておりますし、やはりあの教員の中に中核教員を育ててその中核教員と校長とともにこう進めていく体制をつけていくことが学校の中に位置づけていく、位置づいていくことになるかなと思っております。今考えていることを述べさせていただきました。

【山中委員】
先ほどお示しになりました、平成28年3月に出されたもの(学校事故対応指針)は私も一緒に参加させていただいたものです。同時期に、就学前の保育事故に関しても同じような指針が出ました。保育事故の方は、検証の有識者会議を設置して、死亡事例が国に報告された場合には検討会を開いて検討しているんですね。平成28年に学校事故でも指針を作った後に、検討する委員会ができるのかなと思っていました。メディアの人から、学校現場でかなりの数の死亡例があるのに、検証報告書は数件しか国に上がっていないという話を聞きました。保育事故の方は何か決まりを作ってそういうシステムにしたのかもしれません。学校事故の方は、そういうシステムがないために現場から報告書が上がってこないのかなと思いました。保育事故の情報が国に上がるシステムと、学校管理下の事故が国に上がるシステムに何らかの違いがあるのかなと思っています。もしお分かりになることがあれば教えていただければと思います。以上です。

【事務局】
システムの違いについてでございます。詳細につきましてはすいませんちょっと確認が十分でないところはありますが、確かにシステムの違いはございます。平成27年度以降だったと思いますが、いわゆる認定こども園が制度として位置づけられて以降は就学前の子供の事故については内閣府に一元的に情報が集約されるようになっておりますが、小学校以上の事案に関しましては、文科学省の方のこの指針がそのシステムということになっております。課題として指摘されておりますのは、その指針そのものはあるんですが、その実効性、そもそもその周知されているのか認知されているのかという点からでございます。
システムという点で言いますと、実はこれは法的の根拠はあるわけではなく、あくまで指導指針ということで任意による教育と協力とを求めているという建付けになっておりますので、あくまで指導指針という形でお願いをしているものでございます。そうした中でそれを周知し協力をどうやって求めていくのか、これも一つの課題かなこのように考えている次第でございます。

【桐淵委員】
引き続きお願いいたします。私もあのこの指針作成に関わった人間として、内容的には文言の整理や、もう少しわかりやすくするなどという課題はあると思いますが、むしろその運用、周知徹底の方が課題かなという気がします。
「指針」ではあるにしても、再度全国の都道府県や政令市あるいは市町村教育委員会、学校の設置者宛に、重大事項を防ぐ上でも必要なことなので、きちんと指針に沿った対応をお願いしたいということを通知なりで正式に依頼してはどうでしょうか。それから報道等があった場合に、この指針に沿った対応がなされてない場合、そのヒアリング、事情を聞かせてくださいという風な形で行政機関が努力するということも必要ではないかと思います。
特に私立の学校などがきちんと対応できていないという話も聞きますので、やっぱり文書できちんと依頼するのと聞き取りをするというふうな姿勢が重要なのではないかと思います。
また、私は亡くなった桐田明日香さんのお母さんと一緒に救命教育に関する講演活動をやっておりますが、一般の教職員の方ではこの指針のことを知らない人が多いです。こんなにいいものができていても知らない人がすごく多くて、私たちの話を聞いて非常に衝撃を受けたという反応がすごく大きいので、文書だけでなくて、繰り返しになりますが、現職の教職員研修の中にきちんとこうした内容を標準化していくこと。そして教員養成段階で、事故防止については必須科目としてきちんと全員に教えていくというシステムを作り、時間がかかってもじっくり育てていくこと、それによって効果が現れるのではないかと思います。

【藤田委員】
私もこの事故対応指針の時は実際の調査研究の担当させていただきまして、被害を受けられた方の関係者等の直接ペアリング等も参加させていただいたわけですが、そういった中でやはりその起こった事項についての内容としていわゆるその死亡事故等が起こった際のその子供の元々の既往の問題があることや、またその亡くなったお子さんの保護者の方がどのような意向を持っておられるのかということでやはりその詳細な調査というものを望まれない場合もあります。また交通事故等の場合も、当然またあの学校管理下といってもまた状況が変わってまいりますので、そのあたり今後は事故対応の報告を求める対象の事故っていうことについてある程度その整理していく必要があるんじゃないかなというふうには感じておりました。

【首藤委員】
はい私からは2点申し上げたいと思います。
1点目は、学校事故対応指針で基礎調査は学校が担うということになっているんですけれども、学校現場の先生方がそのやり方をおそらくご存じないと思います。もちろん学校事故対応指針そのものを知らないということもその手前にありますけども、もしご存知だったとしても実際にどうやって何をやったらいいのかっていうこと自体がまだあまりご存じないのかなと思っておりまして、学校で行う基礎調査のやり方について少しわかりやすいマニュアルのようなものを作るということも一つ案としてあるかなというふうに思います。
もう1点は、なかなか報告が上がってこないということが問題だということのようなんですけれども、ちょっとそこが私自身はあまり理解ができないのが、先ほどでは他の先生方が日本では災害給付の仕組があって怪我をされたり死亡されたりという学校管理下の全てのデータが集まっている箇所があるという話です。そうであれば、そこに集まった事故等の事例のうち調査すべき対象のものについてはプッシュ型で「これは調査すべきです」というふうに情報を出すこともできるのではないかなという気がいたしました。もちろん個人情報の取り扱いの範囲とかがあるので容易ではないかもしれませんが、何か一方で情報が集まってくる仕組みがあるのであれば、それと連動させることを考えればしっかりと報告が上がるのではないかなというふうに思いました。以上でございます。

【北村委員】
私が少し気になったのは、この詳細調査の方に関してなんですけれどもこちらで学識経験者や専門家などで調査委員会を構成するということだったんですけども、ここの何というか専門家の職種というか専門性のあたりまで踏み込んで書かれていないので、場合によっては原因究明であったりとか予防策を検討するのに十分ではない専門性の方しか集まらないでやってる場合の実はあるんではないかなというのはすごく気になりました。
例えばなんですけどもその施設とか設備系の関連したような事故であればそういった施設設備であるとか製品とかそういうのに詳しい方でないと具体的な原因究明もできないですし予防策も検討できないですし、逆に言うとそこがちゃんとできれば同じような構造でものがないかとかっていうのをそこから知識化をして全国に広めて緊急的に点検をして同じような構造で同じような危険性を持ったものがあるんであればそれについてはもう対策をして構造的にちゃんと対策をするとか設計を変えるとかっていうようなことをやると、かなりの数はその設備で起きる死亡とか重傷の事故っていうのは防げるんではないかなと思いました。この専門性の部分についてもやはりもう少しこういう専門家の構成とする、というのは、事例ごとに変わると思うのでなかなか難しいかもしれないですけども、もう少し言及があってもいいのかなと思いました。

【神内委員】
2点あるんですけれども、1つは学校で事故が起きた時とかに、重大な事故ほど「事件か事故かの判断」が難しくて、事件であれば警察が動くので、初期対応が警察の方で捜査がされうるので、学校の方で事故として調査するっていう場面が出てこない場合もあるんですね。その辺りの判断が結構難しかったりするんですけれども、もう一点はですねあの私立学校なんか特にそうなんですけれども、あのいじめの調査でもそうなんですが、公立学校は基本的に自治体の予算でそういったこういった調査委員会というのを開いてでその費用も出せるんですけれども、私学はかなり財政的な負担とかそういうのも出てくるんですね。そういうのもあるのでなかなかこういった形で躊躇していくこともあります。あとは先ほど北村先生がおっしゃってたように、実際に集まった調査委員会のメンバーもやっぱりいろんな人がいらしててまあ能力にもいろいろ差がありますし、そういった意味でこう調査の調査能力のそういうのもかなり差が出てくるので、学校がそれぞれ調査委員会を組織してやっていくっていうのは負担も大きいうえに、結果的に出てくるそのまあ報告書もいろんな出来栄のものがあるので、個人的にはこういったいじめのいじめの調査もそうですけど常設で国の方で一元化していって調査していった方が全部情報がまとまりやすいし、調査能力も一定以上必ず担保されるしそういった方が将来的な望ましいんじゃないかと思います。これは個人的に意見なんですけども、やっぱり学校単位でこういった調査を行うのはかなり負担が大きいので、結果的にそれ【専門家による調査機関を置くこと)で事故の解明につながればいいんですけれども、まあそれほど効果が出るのか、ちょっと私こういうのは現場にいてちょっと疑問なとこもあるのでそういう意味でご意見を申し上げました。

【小川委員】
私が大学で何を勉強したかというと産業心理学・交通心理学であり、事故統計データとか事故事例の研究をずっとやってきたんですけども、そこで私の恩師海外の先生方から教わったのは、ミクロデータとマクロデータをうまく組み合わせて分析をしていく必要があるということでした。今、議論になっている一件一件の重大事故の詳細なデータが欲しいっていうのは、ミクロデータだと思うんですね。データを出せる出せないといういろんな問題があるんですけども仮説を立てたりこういう風に対策を決めればこの事故を防げるだろうとか対策に関する様々なヒントや示唆が得られるということでミクロデータの分析はすごく大事だなと思います。要するにケーススタディを進めるということ。
それからもう1つはマクロデータっていうのを逐次蓄積していくことで(交通事故の場合は警察が事故調査をしますのでまずマクロデータを集めて交通事故総合分析センターのデータベースに入っていく)マクロでザーッと全体が見られるので、どんな事故が今増えているのか、なぜ起きているのかなど様々な検討ができます。ミクロ分析で出てきた対策案について仮説を立てていくので、それをまたマクロで検証していくというようにミクロとマクロのデータを組み合わせていって科学的に進めていく必要があるかなと思います。
そういう分析を合理的に科学的に進めていくことを先生方に求めるのは難しいなというふうに思っております。やはり先生方は教育の専門家なので子供たちに対する関心があって先生方の専門性はそこにあると思うんですね。教育者として子供たちと向き合うというところに専門性があるので、今申し上げたような科学的な数値データとして分析する、合理的に見ていくということを先生方に求めるのは難しいなっていうふうに思っています。やっぱり第三者が関わっていく必要があるかなと。私も北村委員がご指摘されたところで、調査委員会の専門家って誰なんだ?というところはやはり詰めていく必要があるかなと思います。学校安全の専門家って正直いないですよね。それぞれがかかわる専門の人たちが科学的に関わっていくような調査委員会の仕組みっていうのは必要かなというふうに思いました。以上です。

【渡邊座長】
私からも一言。先ほど、桐淵委員や陣内委員からちょっとお話ありましたけど、私学なんですね。これまでの学校安全の議論では、私学はどうするかというところが実は十分議論できなかったかなって前回(第三次計画の際)は時間がなかったということもあるかと思うので、どちらかといえばやっぱり国公立を想定した対応というところがありました。実際に私は私学の事故検証にも入ったことあるんですけれど、なかなか難しい部分があって色々問題が出てきたのもありますので、ちょっと国公立とは違った対応についてはもうちょっときちっと考えていかなければならないと思いました。
それとあの皆さんのご意見だと、調査の話が上がってまいりましたけど、実はもう一つの柱が被害児童生徒の保護者の支援なんですね。それをこの前(第三次計画の際)これを考えあの話し合った中の一つの大きな柱だったんですけれど、その支援の一つとして、コーディネートというものが入りました。しかし、このコーディネートというのは果たして機能しているのか、実際に置かれているのかが、よくわからないんですね。ですからもし事故対応方針の見直し図るんであれば、そこのところを実際どうなんだろうかというようなことも見ていかないと、ただそのまま見直して使っていくっているわけにも行かないと思いますので、被害児童生徒とその保護者への支援が十分でできたのかどうか、課題はなかったのかっていうことも見ていく必要があるのではないかなというふうに思っております。
これについてはまた今後いろいろ議論していきたいと思っております。

―― 了 ――

 

(総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課)