子供の体験活動推進に関する実務者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

令和4年11月4日(金曜日)10時~12時

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.出席者

委員

青木委員、秋本委員、秋山委員、市田委員、柏崎委員、佐藤委員、多田委員、夏苅委員、平野委員、村松委員、山下委員、山本委員、湯浅委員、吉村委員

4.議事要旨

子供の体験活動推進に関する実務者会議(第3回)での主な委員の御意見は以下のとおり。
 

武蔵野市教育委員会の発表について

○​都市化や少子化により、自然と直接触れ合う、様々な体験の機会が乏しくなってきていること、こうした直接体験の減少や、間接体験や疑似体験の急速な増加が体験のバランスの不安定さを生み出し、子供たちの豊かな人間形成になからず影響を及ぼしているということ、無感動、無関心であったり、夢や希望を持てなかったり、学校や学年、学級など集団の一員としての意識が不足したりしているといった課題の解決に向け、子供たちの成長の糧となり、生きる力を育む活動の場として、長期宿泊体験活動として「セカンドスクール」を実施している。

○学校での生活を「ファーストスクール」と考え、それに対するものとして、全小学校の5年生と全中学校の1年生を対象とした「セカンドスクール」(小学校5年生が5泊6日、中学校1年生が4泊5日)、全小学校の4年生を対象とした「プレセカンドスクール」(2泊3日)で構成されている。

○事業の実施にあたっては、各校が教育課程に位置付け、今後も持続可能な「セカンドスクール」を実施していくため、これまで「自然体験」、「長期宿泊」、「協働・交流」の3つの要素で構成していたが、それを捉え直し、「セカンドスクール」の活動内容を、「自然体験活動」、「よりよい人間関係の形成を育む活動」、「当該学年にふさわしい特色ある活動」の3つの視点に整理した。

○また、「セカンドスクール」で育む資質・能力を、自然を愛する心、課題解決能力・情報活用能力、人間関係形成・社会参画・自己実現とし、各学年の発達段階に応じた活動内容を設定し、課題解決を図る学習を展開することを、小から中へのつながりを踏まえて体系化した。

○セカンドスクールを体験した子供たちの感想から、自然の大切さや命のつながりといったことに気づき、本物を経験することの大切さ、探究していこうという姿勢が養われていることが考察され、生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度や環境教育の観点において、セカンドスクールが有効であると言える。そのほかにも、長期の宿泊体験を通して、生活の自立に向けた自身の成長を実感し、子供同士の共同作業や現地の方々との交流を通して豊かな人間関係や他者と関わる力が育まれていることが、子供たちの感想から読み取れる。

○持続可能な事業にしていくためには、解決しなければならない課題が2つある。1つは、持続可能な実施地の確保である。宿の方の高齢化が進む一方で、児童・生徒数が増加の状況にある。それに伴い、分宿できる宿数がある実施地の選定が必要となり、自治体や学校の情報収集だけでは難しいところがある。次に、生活指導員の確保である。宿ごとに、教員ではなく生活指導員が子どもたちの指導に当たる。児童生徒数が増加し、児童数の多い学校だと12宿に2名ずつの指導員を配置するため24名の生活指導員が必要となる。現在は、教員を志望する大学生を中心に依頼しているが、以前に比べ大学での履修が厳しくなり、1週間程度の引率を引き受ける学生も少なくなっている。NPOや企業と人材の連携ができるとよいと考えている。

○長期宿泊体験活動の可能性は次の3点と考えている。子供たちを、「自立心を育て『主体的な学び手』に」、「直接体験を経て『自ら考える学び手』に」、「自律と協同『共に探究する学び手』に」、といった学び手にしていくことで、通常の学校生活での学習や生活に大きな影響を与えてくれると考えている。

○費用については、事業全体として約1億円の事業として実施しており、食費や体験料の一部を保護者負担として、1泊2,500円お願いしている。事業のうち、3分の1程度を国の補助により実施しているが、かなりの部分を市の一般財源のほうで負担している。

○長期宿泊体験活動の見直しを行い、カリキュラムマネジメントの観点からも、各教科で位置づけられるものは各教科で位置づけること、そうした活動を内容として位置づけること、さらに、特別活動の学校行事、宿泊的行事であり、よりよい人間関係の形成というところが大きく寄与するため、特別活動で取るように現在指導している。

北九州市教育委員会の発表について

○​子供の数は年々減少傾向にあり、また全国的な流れでもあるが、教員の数も減少してきている。そのような中で、子供の学習支援、教員の業務負担軽減、保護者の支援といった視点で設立されたのが、北九州の企業人による小学校応援団である。

○能動的・内発的な学習意欲が中学校になると徐々に低下していること、また学力は小中ともに全国平均を下回っていること、小学校時代はその後の人間形成の基礎がつくられる時期であり、このような時期にこそ学習意欲や規範意識の維持向上を図り強い心を育む必要があるということを踏まえ、対象を小学校教育に定め、平成23年に小学校応援団が発足した。

○小学校応援団の取組は、児童支援、教職員支援、保護者支援の三つの柱に沿って行われている。参加企業に対しては、可能な範囲での協力をしていただくというスタンスでおり、近年では、社会貢献という側面で参加していただく企業も増えている。

○小学校応援団の事務局が主体となり、年度当初に小学校に対し、ガイドブックやホームページでテーマを提示し、それを見た小学校が申込みを行い、企業人が講師として出かけるという流れで実施している。個別の要望については、小学校応援団事務局が間に入り、企業との調整を図っている。

○小学校がこういった形で行ってほしいということを小学校応援団の事務局に相談し、実現しているオリジナルの出前授業もある。

○近年、若年教員が増え、学校においても研修をどのように仕組むか苦慮しているところもあり、教職員を対象とした研修において、御協力いただいている実績もある。

○子供との接し方が難しいとおっしゃる保護者が年々増えてきていることに対する保護者支援として、PTAの研修での協力実績もある。

○出前授業を受けて、学校や子供たちからは、学校の中ではできない体験を学校の中に持ち込んでいただいて実際に体験でき、学校のほうも大変ありがたいという感想が寄せられている。

○コーディネートの苦労はそこまでないと聞く。実際に小学校と企業の間に入るコーディネーターが、小学校に直接足を運んで、小学校が実際何に困っているのかというところをしっかり聞き、それを持ち帰って小学校応援団の事務局で検討することを繰り返してつながっていっている。

○年1回行っている教育委員会と北九州活性化協議会、小学校応援団との会議では、前年度の成果や、学校に対するアンケートにおいて、困難を覚えていることなどについて話し合っている。

○費用については、毎年750万円の予算を組んでいるが、市のほうで負担しているのはそのうちの550万円。その550万の半分は、国から地方創生関係で出ている予算を充てているところ。

○教育課程上、どの時間に事業を充てるかについては、学校において判断している。

企業等と教育関係者とのマッチングについて

○実際にマッチングする件数や体験者数を増やすことが最も重要である。アプローチとして、送り手側、受け手側と二つがあると思うが、学校側では、リアル体験を通じてどのような資質や能力を伸ばしたいのか、先生方から、こういうふうにしたいという目標を提示していただけるとありがたい。ただ、企業も、先生方がさせたい体験と完全に一致する体験が必ずしもあるとは限らないので、経験豊富なコーディネーターがマッチングしていくことが重要である。

○コーディネーターには、地元の中学校・高校の校長先生OBの方や、企業の管理職のOBの方、また場所によっては、森林組合OBであったり、産学官の現場を知る方などの人材が必要だと考える。

○最初に取組を始めるときは、学校側も企業側もキープレーヤーになる方を見つけて、まずは点からスタートし、そこから横展開を図ることが有効である。さらに組織的に産学官が連携をしていくことが、継続する上では必要である。

○例えば小学校の低学年のときには、こういう活動を済ませておくといいといったことを、どういった世代に、どういった質の、どういった内容の体験をするといいのかということを学校教育側で提示すると、マッチングも、ポータルサイトも、うまくいくのではないか。伴って、学校単位の活動が向くテーマや、個人や家庭でも選べるもの、御近所、地域、親子で参加するのが向くものなど、そういった区別ができていくと、非常に見やすくなっていくのではないか。

○企業や青少年団体、学校教育の現場の方々がリアルに集まるフォーラムのような場があるとよいと思う。直接的な事例の報告などを、オンラインだけではなく、人と人がつながることがポイントだと思うので、様々な分野のフォーラムや、コーディネーター同士や、地域別、近隣ブロックのフォーラムなど、直接的な対話ができ、リアルな声をやり取りできるような機会の場が必要である。直接対話のできるフォーラムの開催といったキーワードを入れてもらうとよいのではないか。

○コーディネーターの役割は大きいが、ポータルサイトを活用し、学校から直接企業に働きかけるというマッチングもあり得るのではないか。

○個人や家庭で参加したいといった場合に、例えば不登校のお子さんなどのサードプレースにつながると思うので、ポータルサイトのブラッシュアップが大事なポイントである。

企業等の参加インセンティブについて

○SDGs活動等の社会貢献など、単に企業側からの無償での提供ということではなく、企業側のブランドイメージ向上や、事業的なメリットがあると、様々な企業が参加しやすくなると考える。例えば、教育機関への入札案件の仕様に体験活動の協力を条件とするなど、メリット等もあれば、事業貢献という面でも進めやすくなるのではないか。

教育関係者の参加を促進する仕組みについて

○企業や青少年団体等の関係者を評価する仕組みと同様に、学校や教職員側にも評価する仕組みがあったほうがいいのではないかと思う。学校側のニーズを掘り起こすための仕組みも両輪として用意したほうが、体験活動の推進になるのではないか。

○ポータルサイトの周知について、各教育委員会に周知依頼の文書を送っていただいたら周知が進むのではないか。

○都道府県の教育委員会からという流れだけではなくて、教育長会といった団体を通じて周知を行うこともできるのではないか。

○脳科学的な視点といった裏づけがあると、学校の教員たちも信頼を置いて、セレクトし、子供たちに提供しようとなるのではないか。

その他

○体験活動に参加した子供たちからよく以下のような言葉を聞く。

  • 普段できない活動ができてよかった。(この言葉の中には、一つは、新しい活動、目新しい活動という意味の他に、例えば、料理などをふだん作らない子にとっては料理を作ることが日常にはない活動であり、非日常の体験ができてよかったという意味。もう一つが、活動のメインプログラム、コアな部分が体験活動の全てではなく、例えば1日の流れの中での全般的な活動が体験活動になっていてよかったという意味が含まれる。)
  • 思いっ切り遊んだ、楽しかった。(この声にもいろいろな要素が入っており、例えば、子供たちが自由に動ける時間、あるいは、自分で時間を選択したり、限界までやってみようと思えるような、子供たちの成長の度合いや、それぞれのペースに合わせて実施することが大事である。なるべく子供たちの自発性、自主性、選択によって実施することが思いっ切り遊んだという言葉の表れになっている。)
  • 新しい友達ができた、仲間ができたという声もある。人と何かを一緒に行う体験も非常に重要である。グループで何かができたという達成感や、仲間を見ながら自分もできたという喜び、仲間の役に立てたという連帯感、貢献感というようなことも、新しい友達ができたというところに表れている。また、友達ではないが、異年代のグループリーダーと仲よくなれたという声もよく聞かれ、異なる年代との交流は非常に大切である。
  • 肯定的な言葉以外に、わくわくした、どきどきしたという言葉も聞く。高揚感であったり、未知に対する不安、冒険感などが子供たちにとって原動力になっていると感じる。
  • 物事がなかなかうまくできない、仲間とけんかした、嫌だなと思うことや、思うようにできなかったということも場面としては多くあるが、次にこうしたらうまくできると思うとか、次こうしたいといった、ポジティブな意見に変えていくことが大事であり、各活動の中でのいわゆる振り返りの部分が非常に大切である。

○保護者から聞く声として、以下のような声がある。

  • 子供から参加したいという声があって参加させた。
  • 体験活動をみんなで行うことによって、社会性を高めてくれることを期待している。
  • 青少年教育団体が行う体験活動に参加することにより、学校とは違う友達ができることもよい。
  • 体験活動を通して、自信や自己肯定感を伸ばしてほしい。
  • 社会貢献として、清掃活動とか募金活動といった活動に参加してほしい。

○「長期自然体験活動を経験した青少年のその後の姿」(平成30年2月(独)国立青少年教育振興機構)では、以下のような体験活動の効果的な面が見られる。

  • 過去に、長期で無人島体験をした人とそうでない人を比較すると、前者のほうが、それぞれの自尊感情や、共生感、意欲・関心などの資質能力に関わる点数が高いという傾向が見られた。
  • 活動に参加した子供たちの保護者やスタッフからは、無人島体験が終わった後は、子供たちにすごく前向きな姿勢が見られるようになったとか、自信を持つようになったという意見が見られた。
  • 誰かに頼ったりするのではなく、自分からどう行動すればいいかというようなことを考えるようになったとか、大学のワンダーフォーゲル部に所属をして、いろんなところに行き、旅行に行くといったことを積極的にやるようになったとか、進路についても、保育の道に進みたいとか、留学をしたいとか、食事づくりが楽しかったから水産系のところに進みたいといった、体験から得た学び・経験というものが、自分の考え方とか将来の方向性につながっているのではないかという言葉が見られた。
  • 今後、無人島での体験を生かして、そこで学んだことを教えたり伝えたりしていきたいと答えている参加者が多かった。例えば、自分が保育に将来進むので、自然体験を保育の中に取り入れていきたいとか、自然のすばらしさを伝えていきたいとか、学校現場で子供たちの生きる力に役立てたいなど、一つの体験というものが、そのときの学びから将来の資質能力につながっていることもあれば、考え方とか、将来の進路とか、または将来の仕事の中で生かしていきたいといったようなところにもつながっているということが、この調査の結果から分かった。

○体験の質を高めるためには、指導者の確保、質の向上も重要である。内容の提供の仕方によっては成果が得られない場合もあるので、子供たちにどのような内容の体験をどのように提供するかが重要である。

○最近、教育委員会から、図書館や地域コミュニティーの場における、学びの場や体験を増やしていきたいという話を伺っている。

○幼児教育では、遊びや環境を通じて子供の学びを支えていくことが大事になってくるが、小学校に上がってから、そのような経験が極端に減ってしまい、子供たちが体験の中から学んで身につけた力を発揮できる場が少なくなっている。小学校に進んだ際に、これまでの幼児期での学びを十分発揮できる機会をつくっていく必要がある。

○学校教育と青少年教育の両輪の中で、子供たちのリアル体験を支えていくイメージができると、企業側も、学校への支援や、地域コミュニティーへの支援といった関係性が見えてくると思う。

○ポータルサイトが、学校教育という場だけでなく、生涯学習、さらには保護者も含めた中で発展できればよい。


 

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