子供の体験活動推進に関する実務者会議(第2回) 議事要旨

1.日時

令和4年10月6日(木曜日)14時~16時

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.出席者

委員

青木委員、秋本委員、秋山委員、阿部委員、市田委員、柏崎委員、佐藤委員、多田委員、長澤委員、平野委員、松下委員、村松委員、山下委員、山本委員、湯浅委員、吉村委員

4.議事要旨

子供の体験活動推進に関する実務者会議(第2回)での主な委員の御意見は以下のとおり。


(独立行政法人国立青少年教育振興機構の発表について)

  • 近年、青少年を取り巻く環境、社会というものが大きく変化し、子供、若者の貧困問題や定住外国人の子供の教育問題等、これまでになかった問題が浮き彫りになっている。また、新型コロナウイルスの流行によって孤独、孤立、自殺などの新たな問題も起きている。
  • これまでは一施設、一個人でやれてきたが、多様な人や組織との協働によるオープンイノベーションを推進して、さらにこれからの時代の子供たちにマッチする体験を提供し、創造していかなければいけない。
  • 全国28の施設でキャンプをやっており、子供が学校から来て集団で宿泊し、自然体験とキャンプをするだけではなくて、様々な探究活動をする。ここに企業からの協力を得ることによって企業が直接学校に行かなくても子供たちの学習を促進するようなこともできるのではないかと思っている。

 
(阪急阪神ホールディングス株式会社の発表について)

  • 実際の事業現場において小学生が様々な仕事に触れるプログラム「阪急阪神ゆめ・まちチャレンジ隊」では、保護者の方へのアンケートで、毎年9割前後の方から、「普段はできない体験や学びにつながった」、「子供のチャレンジの機会になった」、「子供が身近な仕事を考える機会になった」との回答をいただいている。子供たちは、将来の夢につながったというメッセージを書いてくれる子も多い。
  • 小学校高学年向けの出張授業型プログラムである「阪急 ゆめ・まち わくわくWORKプログラム」では、授業後のアンケートで、9割を超える児童が「自分の興味のあることがたくさんの仕事につながっていることが分かった」と回答している。また、子供たちから「これからの自分の生き方を考える機会になった、新たな視点を育ててもらった」「たくさんの仕事を知り、将来のことを考えたいと思った」といった意見も多数見られた。
  • 講師を務める従業員もアンケートで、「児童たちの出会いというものが講師たちにとっても一期一会であるので熱が入る」「ふだんの業務で体験できないことを体験できる、部下への指導にも少し役に立つ」といったコメントも数多く寄せており、それぞれの講師が子供たちへの思いを持ち事業に臨んでいる様や、新たな気づきの場となっていることを感じる。
  • 小学生向けオンライン体験型学習プログラム「ゆめ・まち×スタジモ こども学びウィーク」では、実施の際にグループ会社だけではなく、沿線のNPOなどとも協働し、町で活躍する大人たちから授業を受けるというコンセプトを大切にしている。また、単に画面上で話を聞いて終わることがないように実施に当たっては、必要なものを事前郵送したり、参加者自身で用意いただくことでオンラインでもできるだけリアルな体験を提供するということを大切にしている。これにより、離れた場所にいても講師との距離はもちろん、参加者同士もより近い関係で学びを深めてもらえているのではないかと感じている。
  • 子供向けSDGsコンテンツとして「ゆめ・まち SDGsドリル」を制作。SDGs学習を行う教育現場でも御活用いただきたいと思い、トライアルとして大阪府内の公立小学校でも授業を教員と連携しながら行った。カリキュラム構成を先生方が立ててくださり、導入としてSDGsとは何かを確認しながら企業で作成した動画を視聴いただいて、最後には自分が取り組みたいSDGsの番号を選び、それを絵にするといったプログラムを御提案いただいた。タブレットも活用いただきながら6年生の児童の皆様に授業を受けていただいている。
  • 子供の教育というものは、ビジネスのようにすぐに結果が出るというものではないが、未来の社会を支える子供たちを育てていくということは民間企業にとっても事業の基盤を支える上で不可欠な長期的な投資のようなものである。
  • 遠隔地のお子さんたちが参加してくださる機会になったり、育児や介護などの問題、また、御本人の事情によりなかなか親子で外出することが難しい御家庭のお子さんでも気軽に参加することができるといったような利点もあり、こうしたオンラインのよさも併用しながら新たな取組を模索していきたい。

 
(株式会社リコーの発表について)

  • 青少年の理科離れの解消に向けてリコーグループの人材、製品、技術を活用した科学実験プログラムである「リコー サイエンスキャラバン」を全国で展開している。参加者の皆さんからは「実験が非常に楽しかった、またこういったワークショップに参加してみたい」というような声をいただいている。
  • 技術者が子供たちにインクジェット技術の紹介をし、数か月後に生徒たちが探究して自分たちの研究成果を発表し、また社員が参加してコメントを差し上げるというところで、いろいろなQ&Aを通して生徒たちの探究心を駆り立てるというようなところで役立った。
  • 探究型授業を実施して、生徒たちの発想を広げることだとか、教育現場への役立ちができることだとか、また、技術者との交流を通してキャリア教育にもお役に立てそうだと現在感じている。
  • 子供たちに農業体験あるいは共同生活を通して年間プログラムを提供する「市村自然塾・関東」の活動では、体験いただいた子供たち、それから保護者の皆さんからも非常に自主性が身についたとか、農作物というのは種まきから草取り、そして収穫を迎えるということで、全ての行程を実際に体験いただくので、やはり物を大事に扱う、粗末に扱わないということが身についたというような感想をいただいている。
  • 「市村自然塾・関東」設立の背景として、90年代の前後から子供たちの心の問題の表面化、あるいは社会で生きる力の低下というものをきっかけとして20年間進めてきたが、やはりこの両面というのは近年でもなかなか改善されていない面だと感じており、活動を継続して続けていきたいと考えている。
  • 急速な社会のデジタル化に対応できない、あるいはコロナ禍によって就労に困難を抱える若者の方が増えてきているという現状から、NPOと協働して社員、技術を活用して就労体験を提供するプログラムを実施。参加者の90%以上が非常によい体験になった、併せて40%以上の方が就労に向けた次のステップに進んだ。

 
(企業等と教育関係者とのマッチングについて)

  • 科学教育で企業の様々なコンテンツ、NPOが独自に開発したコンテンツを学校に届けるという活動をしていたが、学校一つ一つの教育委員会とコンタクトを取りながらという大変手間のかかることで、もっとスムーズに自分たちの団体の情報が学校に届けられたり、企業に届けられたらいいと思っていた。
  • マッチングのシステムについて、ポータルサイトをつくるということに加えて、それをいかにうまくマッチングしていくのか、マッチングするためのコーディネート機能といったところも非常に大きな視点になってくるかと思う。例えば、青少年教育施設が団体利用を受け入れる際に企業が提供する体験活動を例えばこの時間帯にこの場所でやることができますといったような、具体的なコーディネートという在り方もあるかと思う。子供たちが来る場所と企業が提供する体験活動を人を介して具体的に結びつけるというような、そういった視点も持ちながら今後の議論を深めていければいいと思う。ポータルサイトに、ある程度の機能を持たせることが重要だと思う。コーディネートができず、情報が掲載されているだけになっているポータルサイトは多いのではないかと思う。その他の活動を通じて感じることは、プッシュとプルの情報両方が必要だということ。プッシュ型で、こういう場所でこういうものを求めているという情報発信と、プル型で、こんなことをやりましたという報告も含めて情報収集できる両方の側面があると、動きが見えていくのではと思う。
  • 人を介さないといけないところに関しては、いろいろな人がコーディネート機能を持つことが重要であり、コーディネーター同士の連携というのが一番物事を動かすものと思う。研修などを地域ごとにやるというのもよいのではないかと思う。
  • 各地域における拠点をどのようにつくるのか。システムがそもそもないところにどうやって取り入れていくのかということができないと、モデル事業としての意味がないのではないか。
  • 実際に学校が、どのように体験活動をどういう枠でやっていくのか、学校側の例えば特別活動でやっていくのか、あるいは教科や教育課程の中の読替えによってやっていくのかといった、このようにやると学校としては取組ができるという学校側のモデルやプランといったものがあると、学校も取組がしやすくなるのではないかと思う。
  • マッチングのポータルサイトのコンテンツが非常に重要になるのではないかと思っており、小中高それぞれで、小学校の事例だとこういうふうにできる、あるいは中学校だったらこういうふうにできるというような細かなモデルを提示すると、非常に取組がしやすくなるのではないかと思う。
  • 企業側ができる体験活動についても、会議室を提供しますということも含めて、関わり方、マッチングするにはこのような協力によって子供たちの体験に寄与することができますというようなモデルがあるといいと思う。
  • ポータルサイトが運用される上で情報の正確性や最新性が担保されることが非常に重要。実際に、登録をしたら問合せがあるとか、検索サイトでも表示されるとか、活用されていることが大事。また、それを登録している方がそれを認識できるようにすることでさらに登録が増えるといった、よいサイクルが回るようにすることが非常に重要だと思う。そのためにサイトをつくるだけでなく、登録するためのサポートであったり、コーディネート機能といったものも必要になるのではないかと思う。
  • 学校側、企業側が実際にこれを使う現場を考えると、かなりエリアは限られていると思っており、ポータルサイト自体は恐らく全国ということになると思うが、実際には市町村、せいぜい広く考えても都道府県単位かと思うので、その点を踏まえて多忙な先生方のニーズを把握して使い勝手のいいものにしていただくということが必要だと思う。利便性であったり、使う方のニーズを把握するという点ではチャットボットといったものも使いながらより改善していただくような仕組みがよいかと思う。
  • 具体的な登録項目について、教科単元を明記したほうが先生方としては使いやすいということだけれども、そういったものを企業側が登録するにはそれなりの知識も必要だと思うので、ここの辺りの支援、サポートをしていただくほうがよいと思う。
  • 学校関係のほうで使わせていただく、利用させていただくとすると、やはり集団宿泊学習のような大きい規模での行事であれば学校のほうは助かると思うけれども、部活動の地域移行の流れも考えると、学校がいろいろなところで背負うというのは現実的ではないと考えており、やはりベースは地域でお願いできるのがありがたいと思う。
  • 地域移行の流れが始まり、市町村の中でも、基本的には1週間7日間のうちに平日1日、土日のうちどちらか合計2日部活動については休みを取らなければいけないというガイドラインになっているが、様々な子供たちのニーズに応じて自分の好きな活動ができるようにもう1日休みを取り始めるというような市町村が出始めている。地域のほうでそういう場を提供していただいて、マッチングがうまくいって、そこに子供たちが自ら、できれば親御さんの手がかからないような状況で参加していけるという場面ができてくるとありがたいと思う。
  • 子供たちにとっても「先生、こういう経験したよ」というのは非常に自信が持てることになるので、子供の履歴のようなものにこのリアル体験の記録が載せていけるような、そういうものも取りそろえられるとよいと思う。
  • 企業としては、自社のコンテンツを学校の学習の中でどう活用いただけるかというところをぜひ知りたい。キャリア教育の出張事業をする際、利用方法が学校によってばらつきがある。例えば職業を体験できるような施設を訪ねる前にどんな仕事があるのかを子供たちに学ばせたいからやってほしいという声があったり、2分の1成人式をやるのでその前に職業というものについて知るきっかけづくりとして行っていただきたいという声とか、一方で例えば10時間ぐらい時間をかけて、しっかり地域の職業のこととかを掘り下げるためにきっかけづくりとしてやりたいといったようないろいろなケースで使われるが、企業としても人材や時間がどうしても限られる。より有益に使っていただける学校との出会いというのはぜひ大切にしたいと思っており、その辺りがもう少し解決できる方法がないかと思う。
  • 企業側からすると、学校でどういったことが求められているか、今、どういったことに向けて先生方が時間をかけてやっているのかという、いわゆる学校のことがよく分からないというのが実態としてある。一方で恐らく学校もいろいろな企業の出張授業がある中で、これは何を学べるのかがよく分からないといったようなことが多々あると思う。そのため、もう少しお互いに知り合える、学び合える機会が定期的にあればよいと思う。
  • 学校や教育委員会から依頼をいただき、キャリア教育の先生方に体験で授業を受けていただく機会をいただいたことがあるが、そうすることで先生方も授業のイメージができて、この授業のここに使いたいといったようなことがより明確になってお申込みを頂戴したといったこともあったので、そういった交流の機会というものが生まれればまたよりよい教育が地域で連携してできるのではないかと思う。
  • 企業等と学校をつなぐというマッチングサイトと別の視点で、全国にある国立青少年教育施設を通じて学校と企業を実際に事前打合せみたいなところでつなぐという機能があるので、こういう場を使って相互に学び合うということも今後、考えられるのではないかと思う。国立の施設というのは全ての都道府県をカバーしているわけではないので、例えば公立の青少年教育施設のネットワークでそういうことができればよいとも思う。
  • マッチングということを考えたときに、最後はどういうことを学校が求めていてどういう課題があってというところを捉えるには、人対人で話し合っていく場がどこかであればいいと感じていて、それをポータルサイトでどのようにカバーし、実際の団体対団体の話合いの場でどのような話合いをしていく場を誰がコーディネートしていくのかということが課題と思う。
  • コーディネーターの方、もしくはコーディネーターのいない地域の方々が相談できる窓口というものも設けていく必要があると思う。
  • マッチングシステムの運営主体は、仕組みをうまく活用できるようなアドバイスや情報を流していくとともに、相談ができる場所として機能していくことも大切になってくると思う。また、様々な地域での事例を集めた際には運営主体から横展開を図っていくことも考えられると思う。
  • 学校の教育課程の中でどう位置づけるかは、必ずこの教科でとか、総合的な学習の時間でとか特別活動でというわけにはいかないと思う。学校のカリキュラムの中でうまく活用できるところというのはそれぞれの先生方であったり、子供たちが何を求めるのか、子供たちがどういう興味を持って学ぶかというところによってもどこの教科であるか位置づくところには課題があると思う。
  • 企業の理念であるとか、もともとのリソースということを生かした提案をいただくが、決まり過ぎていると、学校側のほうも学習指導要領の内容をしっかりと授業の中で取り入れていく中で、そこにどう組み込んでいくか、なかなか入る余地というのは難しいと思う。
  • 学校だけではなくて地域との連携というものもしっかりとこの中に位置づけて考えていく必要がある。例えば企業が提供する体験活動の中にも単元に位置づけやすいものもあればなかなか難しいものもあるし、時間的な問題もあるので、そういったものについては地域学校協働活動の中で提供していくであったり、また、子供たちの身近なところでいえば放課後子供教室といったところの位置づけもあるし、児童館、それ以外にも社会教育施設、様々な子供たちが活動する場面というのがあるので、そういったところにも視野を向けながら考えていければ、より企業が提供する体験活動というものを子供たちに届けていけるようになってくるかと思う。
  • 例えば、企業の体験にプラスして博物館でもそれに関連してその地域を知るような活動ができるというと、それとそれを二つ組み合わせてやるみたいなこともしやすくなると感じる。総合的な体験活動のポータルサイトと考えたときには、企業等の「等」の部分で、そういった情報も提供できるような仕組みがあると学校がより取り組みやすくなる可能性はあると思う。

 
(企業等の参加インセンティブについて)

  • 体験することによって将来に対する夢を持ったり、キャリア教育につながっていったりということが、実社会で活動されている企業が体験活動を提供するということの意義かと思う。

 
(教育関係者の参加を促進する仕組みについて)

  • 働き方改革でかなり研修の数を減らしていっているところもあるので、新たにまたキャリア教育でいろいろと話し合うということは難しいにしても、そういう場を設定していただいて、先生方に興味のある人とか思いがある人について参加いただくとか、参加するように促すということはできるところがあるかと思う。

 
(その他)

  • 企業がこれまで積み重ねてきたノウハウ、仕事の在り方であったり、考え方であったりというものを子供たちに伝えることによって、これまで学校とか身近なところにはない体験を通して自分たちが新たな視野を広げるということは非常に大きな意義があると思う。
  • リアル体験というと、自然体験とか職場体験、工場見学とか出前授業など、いろいろな形があると思うが、リアル体験とはかなり幅広いものと思う。ここは大きく捉えていただいたほうがよりよいと思う。
     

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総合教育政策局地域学習推進課