参考資料1:学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議(第1回~第5回)における主な意見

(1)障害者に真に求められる学習プログラム・実施体制等

【視点1】学校から社会への移行期に特に必要となる学習の在り方

○ 障害者の生涯学習を、学校教育との接続・継続・発展として位置付け、「学校から社会への移行期」を明確化して政策立案しようとしているのは、画期的なことである。
○ 障害者は特別支援学校卒業後にすぐに社会に出る現状にあるが、18歳から20歳ぐらいの間にもう少し学ぶことができれば、社会の中でよりよく学ぶことができ、非常に変わってくるのではないか。
○ 保護者は3年間の特別支援学校高等部卒業後も、もっと学ばせたいとの思いが強い。
○ 家族が孤立化することも大きな課題なので、家族も含めて参加できる生涯学習の機会が重要。母親が本人の生涯学習に参加する際の支えになっているので、今後留意が必要。 

【視点2】生涯の各ライフステージにおいて必要となる学習の在り方

○ 学校を卒業して初めて直面することは多く、ライフステージに応じた学びが必要。ハプニングが起こる前に対処方法等をプログラムどおりに教えるわけには必ずしもいかない。同じ境遇の仲間同士で意見を出し合い、考え、少しずつ身に付けていくような学びの場が学校を終えても継続的に必要。
○ 障害当事者が社会の人たちと関わる中で、自分が何者かということを発見したり、問題意識をもったりするということも大事である。一方通行で障害のある人が学ぶということだけを考えるのではなくて、相互に学び合い自立的に生じてくるような場づくりに焦点を合わせて考えていきたい。
○ 障害の有無に関わらず働くことに意味があると思うので、地域における学びを仕事の活躍につなげられるかを意識して取り組むことが必要。
○ 特別支援学校卒業生は企業での就労開始時、比較的給料が抑えられているため、キャリアアップ、もっと技術を高めたい、資格をとりたい、会社の中でも責任を持ちたい、という意向があり、お給料が上がればモチベーションも高まるので、そのような彼らを支えるための学習の場があると良い。
○ 生涯学習の4つの柱として、learning to do(することを学ぶ)、learning to know(知ることを学ぶ)、learning to be(であることを学ぶ)、learning to live together(共に生きることを学ぶ)を押さえておきたい。特に、学習意欲(=learning to know)が重要。経験や社会における関係に基づいて意欲がわいてくる。learning to beも、社会の色々な人たちと関わることで自分が何者か発見したり問題意識をもつ。learning to live togetherでは、障害のある人が学ぶことだけを考えるのではなく、相互の学び合いが自立的に生じてくるような場づくりに焦点を当てて考えたい。

【視点1・2共通】

○ どういった場で学ぶかについては、日常の会社生活の中で習得できることも含まれている。学ぶための場所も必要だが、人と関わる力、主体性をもって物事に取り組む意欲は、日々の生活の中でも身に付けられる。日々の中で学んでそれをすぐに生かす機会があることが重要。一回ものの研修プログラムではなく、チャンスを提供する支援者の資源を持続させるための仕組みについても並行して考えていくことが必要。
○ 主体的に物事に取り組む意欲があり、目指したいとの思いがある。何ができるようになって、人や社会とどのように関わっていくのか、そこを目指した学習の方法を考える必要がある。


1. プログラムの内容

【視点1】学校から社会への移行期に特に必要となる学習の在り方

○ 障害者福祉制度の自立訓練事業等を活用し、学校から社会への移行期にある学びの場を提供する活動が、社会福祉法人、NPO法人などを中心として全国的に増加しつつある。
○ 背景として、高等部3年間に加え、もっとゆっくり、文化的で青年期にふさわしい内容を学ぶ機会かあれば、より就労面や生活面で自立につながるのではないかという願いがある。以前は特別支援学校高等部専攻科が一部その役割を果たしていたが、現在は高等部在籍者数が著しく増加し、学校での対応は困難であり、それを福祉の制度を活用して行う取組として広がってきている。
○ 学校から社会への移行支援に、「学び」を中心においている。学び活動は、1日、午前一つ(90分)、午後一つ(90分)など、障害者一人一人の多様な個性や持ち味を引き出し生かすことができるように、大枠の時間設定をしている。
○ 学校で身に付けた資質・能力を、更に維持・開発するために、作業による技能の取得や就業体験・職場実習など職業に必要なスキルや、多様な生活体験・ボランティア活動などの社会体験によるライフスキルとともに、文化・教養・スポーツなど青年期にふさわしい多様な学習内容で構成している。
○ 子どもから大人への青年期教育として、障害青年たち自ら主体的・協働的に調べ・まとめ・発表し、自分たちで学習や交流を企画するなどのスキルを身につけさせる学習によって、人と関わる力(コミュニケーション能力や社会性)を身につけ、自ら判断・行動し自立できるように支援している。
○ 就業し自立した生活を送る基盤となる力を身につけるための多様な学び活動においては、ありのままの自分が出せ、安心して学びあうことができる仲間やスタッフのもとで、満更でもない自分を発見するなど自己肯定感や自信が持てるように取り組まれている。
○ 学校から社会への移行期の学び支援は、修了後の就労率も極めて高く、就労を継続し、また、就労後の相談活動などによって生活も安定するなど、十分な効果を発揮している。いっぽう、障害青年の学びのニーズが多様化し、「学校から社会への移行期」における学び期間は、当初の2年間から、3年間、4年間と長期化する傾向にある。
○ 多様な学び活動では、ありのままの自分が出せるように配慮し、また、新しい自分の一面を発見し、自己肯定感や自信が持てるように取り組んでいる。
○ 学校から社会への移行期の学びを修了した後の就労率は極めて高く、就労を継続し、また就労後の相談活動などによって生活も安定するなど、十分な効果を発揮している。
○ 就労に対するイメージが持てない障害者が、まずは体験して学びたいと思った時に、就労を真剣に考えていないと見られたり、登録すらできないということが現状あるため、体験的な学びも受け入れられるようにする必要性がある。

【視点2】生涯の各ライフステージにおいて必要となる学習の在り方

○ 障害のある方が、自分で自分のことを決めるということが大変重要。
○ 身体障害も知的障害も発達障害の人も、自分の意思を主体的に伝えられるようになったら良い。
○ 違う感覚をもっていたり、関わり方が一般的な形式とは違ったりしている方にとって、生涯の各ライフステージといわれたときに、生活年齢や一般的な視点だけで求められてしまうと、主体的な参加が難しくなる。
○ 発達障害の者の限局的な興味、関心、こだわりを社会の中でどのように形にしていけるか、を見据えたプログラムがあると良い。一般の方と違う感覚を持っている方が生活年齢に照らして一般的な視点だけで学習内容を決められてしまうと、主体的な参加が得られるかは難しいのではないか。
○ 自分の好きなことを知るとか、できることとか、興味があるものに気付くためにも、多様な価値観をもったプログラムの企画が必要。
○ 青年学級や青年教室は生涯学習の一番土台のところにあり、そこに多くのコースがあり、必ず自分の好きな活動ができるということが大切。
○ 余暇やレクリエーションの機会を青年学級の中で与えていくということによって、外出しにくい障害者の方々が社会参加の機会を持つことにつながる。
○ 一般の方向けの内容のうち、ICT活用や危機管理の部分は特別支援学校の子供たち、卒業生、大人向けにも活用できる。
○ 重要なのは、イベントの開催回数ではなく、どのように成長したのか、参加したスタッフがどのように役立ったか、ということ。プログラム終了後の振り返りが重要。
○ ライフステージをどのように捉えるか、また、場によって学ぶスタイルや方法が異なることも踏まえ、更に論点を絞って中身を検討する必要がある。

【視点1・2共通】

 ○ 本人たちが何をしたいと考えているかを整理することがプログラムの検討に当たって必要。
 ○ 本人が集中するような講座内容を提供することがポイント。

(スポーツ関係)

○ 障害者スポーツの意義として、特に閉じこもりがちな障害者を、一歩外に踏み出す、背中を押し出す勇気を持たせる力があるのではないか。
○ スポーツについては、学校在学中にスポーツに親しむとともに、卒業後実践で学ぶことも大事ではないか。
○ 障害者スポーツが地方に浸透していないのは、障害者スポーツを行う場所、そこへ行くアクセス等の問題について地方がうまく整備されていないから。そこを解決することがこれからの課題ではないか。
○ 「学習」と言った時に、いわゆる勉強だけでなく、身体と心はつながっており、身体を動かすことによってより良い学びができると思うので、スポーツに親しむ機会の充実も図る必要がある。

2. 実施体制等

【視点1】学校から社会への移行期に特に必要となる学習の在り方

(自立訓練事業等を活用した学びの場)

○ 自立訓練と就労移行を組み合わせての4年間というのは非常に重要。就労移行はゴールが明確であり報酬も手厚いので各地で発展していった。一方、自立訓練の生活訓練を使って卒業直後にカリキュラムをもって対応するのは、まだ数が少ない印象。肯定的には考えているが、自立訓練を今回の卒業直後の学習の場に位置付け過ぎると、自立訓練の持つ意味が少し薄れるのではないかとの危惧もある。卒業直後の期間の2年が4年になっていくという流れの中、就労継続Bや生活介護のプログラムの中で学習支援が行われるべき部分もあるのではないか。これらのプログラムをどう生かしていくか。
○ 自立訓練の持つ意味と学びの関係について、離職の要因は、大半が人間関係に起因すること。地域で仲間と過ごせる居場所やサークルなどで自由に自分を出して楽しみ合い、余暇も楽しむことで仕事をがんばることができる。学びの場には支え、癒やす効果もある。
○ 福祉的進路をとった障害者の一般就労への移行が学校よりも多い。これは、離転職してもまた就職できるという、ゆとりのある進路の支援ができるようになったということ。
○ 就労支援についても、これまで学校からすぐに就労移行支援や一般就労というステップであったところ、学びが媒介となり、就業支援センターやハローワークと連携していくことで、非常に幅広く豊かに支えられるようになるのではないか。

(特別支援学校)

○ 特別支援学校本人講座を活用して、年に2回、母校に集まっての学習と交流(職場報告会等)を行っており、現役教員や市民講師が講師を務めている。卒業後、3年程度はアフターフォローとしての学びの場を学校が提供し、その後のスキルアップや就労継続支援は、企業や産業労働へつなげたい。卒業生の姿は、在校生の教育の改善にもつなげることができる。
○ 母校である特別支援学校が学びの場を提供することは、学校にとっても有益である。保護者やOB、企業や学生などが組織的に学びのスタッフとして参加できる仕組みが大切であり、それには教育委員会の支援は不可欠と言える。
○ 学校在学中に放課後デイサービス等において学習プログラムを提供し、充実した学びの時間をつくることで、学校卒業後も、余暇や趣味、日中活動のプログラムにつながることとなり望ましいのではないか。
○ 特別支援学校において、単にカリキュラムを教えることで満足してしまっていたのではないか。もっと社会に出た後のことをしっかり考えた教育をしなければならない。

【視点2】生涯の各ライフステージにおいて必要となる学習の在り方

(公民館等)

○ 基礎自治体として、少ない予算の中でも職員をそれなりに配置し、障害者向けのプログラムを組んでいくことは可能である。これをもっと拡充していかなければいけない。障害者の卒業後の生涯学習は自治体の役割である。
○ 公民館、生涯学習センター等で行われている障害者青年学級に関する課題として、希望する障害者の数が増えている上、障害は多様であり、参加している障害者が高齢化していることから、そこへの支援が必要という状況がある。何よりも、スタッフあるいはボランティアとして支える人材が確保できないのが一番の課題であり、関係団体や機関との更なる連携が必要。
○ 生涯学習の一番土台のところにあるのが青年学級や青年教室ではないか。
○ 例えば青年学級やオープンカレッジの講座を修了したら修了証を出して、それをもって別の機会に参加するなど、重層の生涯学習の構想ができれば良い。
○ 生涯学習で学べることが伝わっていない。成人期になってもこれだけ学べるということを広めていくために、ライフステージに応じた学びの内容について整理することが重要。

(特別支援学校)

○ 施設開放事業では、障害が重度でも参加できるスポーツ、ハンドサッカーなどの体験教室があり、今後参加の期待が高まっている。障害が重い卒業生には、OB会組織や父母の会など、サポートスタッフがあれば、スポーツや文化を含む学びの場として出身校が活用できる。そうした支援を強化していく必要性を強く感じる。
○ 母校である特別支援学校が学びの場を提供することは、学校にとっても有益である。保護者やOB、企業や学生などが組織的に学びのスタッフとして参加できる仕組みが大切であり、それには教育委員会の支援は不可欠と言える。(再掲)
○ この生涯学習が起爆剤になって、親の会と連携しながら学校も活性化できるといい。学校は、この生涯学習に貢献することによって、教育の充実が図れればいい。
○ 在宅の方にとって、年1,2回行われる特別支援学校の同窓会が、集いの場となっている。また、親の会や元教員が作っている青年学級に参加することで、社会とつながっている状況がある。ただし、元教師や保護者が高齢化し、活動が縮小傾向にあるという問題点がある。

(大学)

○ オープンカレッジをやってきて、場と人の確保が課題。大学を場とするのかということと、新しい支援者をどのように確保していくのかということを、今回の生涯学習の視点から見直すことが必要。
○ 大学との関わり方として、文科省の事業のCOC、COC+を活用するのがいい。この事業において大学は地域課題の解決や地域貢献することが求められており、そうした観点から大学が障害者の生涯学習に関わるやり方もある。
○ 参加者は発達していく中でプライドも非常に高まっていく。プライドが高まっていったときに、学校に戻るよりも新たな学習の場を考える必要がある。

(社会福祉法人等)

○ 福祉の目的として、その人が豊かに生きていけるようにすることが一番にくるのではないか。豊かに生きていくことによって幸せにつながっていく。「豊か」とは、自己尊厳や自己肯定感を高めることであり、その手段として、働くことや学ぶことがあるのではないか。

(NPO法人)

○ 生涯学習支援を障害者福祉サービス事業で行うことにより、安定した運営と継続駅な支援が可能となり、利用者を支える拠点として確立できた。
○ ボランティア活動をNPOの形に高めて、NPO法人に運営を任せる等、多様な実施方 法を検討していくことが必要。

【視点1・2共通】

○ 障害の程度は千差万別、保護者の考え方も様々である中で、視点1、2の内容を実施するには、何らかの資格を有する専門家が、1人1人のカルテを作成し、個人対応を含む適切な教育メニューを実施する必要がある。

 3. 特別支援教育や障害者福祉等の専門的知見を有するコーディネーター・指導者の配置、ボランティアの参画方策等

【視点1・2共通】

○ 特にコーディネーターをどのように確保するかということが今後大きな課題となる。
○ 教養のみならず余暇活動にしても、しっかりと教えることができるレベルにある人が教えるということが大事。プログラムとして実施するのであれば、講師の専門性とコミュニケーション力が必要。

(2)一般的な学習活動への障害者の参加の推進方策 ~一般的な学習機会への障害者の参加を促進するために何が必要か~

○ 障害は人にあるのではなく、環境、社会の側にあるという考え方をしており、社会にある障害を取り除いていくという方向で考えていかなければならない。
○ learning to live togetherでは、障害のある人が学ぶことだけを考えるのではなく、相互の学び合いが自立的に生じてくるような場づくりに焦点を当てて考えたい。

<一般的な学習活動への障害者の参加に係る促進要因・阻害要因を踏まえた効果的な対応策>

○ プログラム内容について、一般的な生涯学習活動に参加するための情報保障又はアクセシビリティについて、促進要因と阻害要因の検討が必要。特別支援学校の高等部では小学部・中学部と比較して視覚的支援が減ってしまうが、必要な支援があるだけで障害者が能動的に活動できることにつながる。生涯学習において必要な支援が何かを検討することが重要。
○ 障害を他人事と思わず、自分の中にある障害特性や自分の中にある可能性、リスクなどという観点で認識していかないと、社会の中で障害理解の推進は難しい。
○ 障害のある方自身のマナーとコミュニケーション能力も高めていくことが、障害のない方との双方の歩み寄りと理解を進める上で必要。障害のある方が自分の障害について説明できないと、対応したことがない健常者が対応の仕方が分からず、不安が原因でコミュニケーションがとれないということにもなる。
○ 2020年東京オリ・パラで多様な方が来られた時に第一線で車いすを押してスマートに対応できる若い人が格好いい、とそのような文化を創っていきたい。
○ 全ての障害種の方がITなどを活用し、主体的に自分の意思を伝えられるようになったらいい。
○ 障害のある方が過ごしやすい場所等をQRコードで情報を収集できるようにするといい。
○ 社会や地域とのつながり、ICFに基づく障害概念は、障害者と健常者の二項対立ではなく、自分の中にある障害リスクを見つめ、社会とのつながりを考えていくことも重要。本人たちの居場所も必要だが滞留するのではなく、目的・意欲をもって評価も行い次のステップにつなげていくことも必要。

<障害者差別解消法を踏まえた「不当な差別的取扱い」や「合理的配慮」の対応(考え方、求められる体制等)>

○ 差別解消法の理解はなかなか進んでいない状況であり、もっと抜本的に改革していく必要がある。
○ 生涯学習支援における課題として、各障害に関して、障害特性に応じた合理的配慮の体系化を踏まえた学習支援をする必要がある。障害特性の理解の捉え方として、生涯にわたって発達している存在であることを踏まえ、発達の遅れと領域間の偏りを把握し、連続性のある発達を基礎基本として考え、取り組んでいく必要がある。
○ 合理的配慮の事例集などを見ると、視覚や身体の場合には、その具体的な物の提供や、代替的な手段の提供について事例が多く書かれている。しかし、発達障害などの場合、支援者に入ってもらうとか、代替的な手段の在り方とかが少し違っていて、当事者本人がこういう理解の仕方をしているから、こういうふうに伝えればわかることが多いなどという事例が少ないという印象を受けている。
○ 既存の資源を障害者の生涯学習という視点から見直すという取組を是非していただきたい。
○ ヘルプカードのように支援を求めていることを表示している場合、それがもとでいじめられてしまったり、犯罪に巻き込まれたりすることもある。逆に、内部障害のある人は配慮が必要と見られにくく困っていることが多い。また、過剰な支援をしすぎて、結果、サポートにならなくて迷惑になってしまうということもあるので、しっかりとコミュニケーションを取っていく必要がある。
○ これを福祉でやろうとすると、介護の要素が強くなり教育・学習の要素は薄くなってしまう。訪問カレッジのような「学び」を中心に据えた取組は素晴らしい。
○ 学びの場に障害者が来やすくなるような合理的配慮が必要であり、障害の特性に応じた合理的配慮の具体例について、提供側が共通認識していくことが必要。

(3)人材の育成・確保、普及啓発~基盤の整備のためには何が必要か~

1. 人材の育成・確保

 <指導者、コーディネーター等の資質向上や確保の方策>

○ 支援体制については、特にコーディネーターの役割が、今後課題になってくる。
○ 自立訓練事業等が、「学校から社会への移行期」における学びの場としての一定の要件を満たすことができるように、全国をブロック毎に、地方公共団体担当者向けの研修や事業者等向けの各種研修を実施する必要がある。
○ 社会教育主事の育成プログラムの中で、障害者の生涯学習担当を養成し、社会教育主事として障害者の生涯学習機会を社会教育の場で提供していくことが必要。
○ 社会教育士の活用(障害のある人の学びと、生きた知識をもった人のマッチング)
○ 毎年同じプログラムをやっていると、受講生がレベルアップを希望してきたり、アレンジの要求が多くなったりしてくる。それに応えるためには、社員の特技などを生かした教えられるレベルの高い講師を派遣することが大切である。
○ 多くの事業所ではスタッフの不足が課題となっているが、例えば決まった時間にオンラインで複数の当事者に対し講義を行うというような形態であれば、企業も乗りやすいのではないか。 

<ボランティアの養成・確保の方策>

○ スタッフ、ボランティア等の人材がなかなか確保できないという課題に対し、これからは公民館、生涯学習センター単体ではなく、関係する団体・機関との更なる連携を図ることが必要である。
○ 青年学級生は年々増加するが、ボランティアの数が圧倒的に不足していることが一番の課題である。
○ 地域の若者にも事業の意図が伝われば、興味を持ってボランティアに来る若者も結構いるのではないだろうか。
○ 若年層を取り込む方策として、大学との連携がある。今までやっていなかったが、大学への発信を実践したい。
○ ピアサポートのように、特性が類似する他者との交流も社会参加のきっかけとしてはすごく踏み出しやすい。
○ アートやデザイン、IoT、Fab、テクノロジーなど、新しいことを学ぶ場を提供することで、若い世代の人が呼び込めるのではないかと考えている。
○ ボランティア不足による活動継続の困難さについては、企業が組織的に関わることでリスクが軽減される。
○ 企業の発想では、ボランティアを増やす方策として、手当をいただくことよりも、ホームページに活動の写真を顔出しで載せられることや、教育委員会や文科省から取材を受けた、あるいは副大臣が視察にきたといったことの方が広める効果はある。また、感謝状を頂くことは取組を持続可能なものとするためにはとても有益。企業側としては、外から「この会社は良いことをしている」と評価されることが重要であり、外部評価につながる方法を用意してもらえると、参加する企業が増えるのではないか。
○ 地域の方が集まる仕組みをつくれば、ボランティアという形で募集しなくても、地域全体で見守ることができるのではないか。
○ 支援者の高齢化も挙げられていたが、障害のある方々と関わる立場に一般の方をどう取り込むかがポイント。また、福祉との棲み分けをうまく整理することが必要。

2. 普及啓発

<ノウハウの提供・共有の仕組み>

○ 体系的な学習プログラムは未整備なので、様々な実践交流をしながら体系化することが必要であり、実践研究事業の委託は有効な手段。
○ 自立訓練事業等を活用した「学校から社会への移行期」における学びを修了し、巣立っていった受講生に、その後の学びにどう繋いでいくのかということが問われている。各事業所が、修了生等を対象に公開講座のような形で学びの場を提供していくことや、また、地域の公的社会教育機関等と連携し、障害者生涯学習支援地域ネットワークづくりの中核的な担い手となることが求められている。そのためには、各事業所等が自ら修了後のプログラムの開発を行い実施体制のモデル等の普及に努力する必要がある。そのための専任スタッフが必要である。ここでは、実践家や専門家を地方公共団体や事業所等に派遣して、先進的な事例やノウハウを提供する支援体制を構築する必要がある。

<障害の有無に関わらず共に学ぶ取組を普及するための方策>
○ 「バリア」という言葉が、すごく悪い意味で使われていることが気になっている。バリアというのは、護るという意味もある。プラスの意味をもった「バリア」に代わる言葉を入れて、コンセプトができると格好いい。
○ 共生社会とよく言われているが、その実現のためには、健常者が障害者を理解するということではなくて、障害を他人事と思わず、全ての人が自分の中にある特性や自分の中にある可能性、リスクなどというように認識を移行していかなければ、社会の中での障害理解を推進していくということは難しい。
○ 障害のある方自身のマナーとコミュニケーション能力も高めていかなければ、双方の歩み寄りと理解はないと思う。自分にどういった障害があって、それをどう説明すればいいのかということが分からないと、障害者に対応したことがない健常者の方も、知的障害のある方は少し怖いとか、発達障害のある方に、これは言ってはだめなのかなどといった不安が原因でコミュニケーションが取れないということもある。
○ 子どもの頃から障害のある方と一緒に過ごす機会を増やすことで、柔軟に対応する力が身につくし、解決できることが多くある。
○ 2020年東京オリンピック・パラリンピックで多様な方が来られたときに、第一線で車椅子を押してスマートに対応できる若い人が格好いいという文化を創っていきたい。

(4)推進体制の整備等 ~基盤の整備のためには何が必要か~

1. 関係者に求められる役割

○ 障害者の生涯を通じた学習の推進を全国的に展開する場合、障害者差別解消法の趣旨や、生涯学習の意義を踏まえて、施策の重要性を確立することと、それを後押しする国による制度設計や財政支援が必要。
○ 地方財政が厳しさを増す中、首長部局が、市民が主体的に自らの課題解決を考え、行動に移すよう学習することが、行政コスト削減につながるということを深く理解しなければ、重点施策として取り上げることにならない。
○ 生涯学習支援については、支援者の養成、生涯学習の場をどこにするか、プログラムの開発は誰がどこで行うか、プログラムの評価は誰がどこで行うか等の課題がある。
○ 障害者対象の事業を社会教育施策で実施するか、福祉施策として実施するか、NPO法人等に運営を任せるか等、多様な実施主体、実施方法が認められることが望ましい。
○ 多様な学び方のオプション(レパートリー)をもつため、福祉施設、情報が集まる場としての「母校」、地域の学校、就労支援機関、企業の交流による居場所の拡充が必要。                                                                                                                                                                                
○ オープンカレッジは大学という場だけで取り組むというのはなかなか難しい。どこでも学べる、誰でも学べるということを地域に少しずつ広げていくには、大学でプログラムを開発することが必要。
○ 地域支援体制をどのように作るかを考えるにあたり、行政、NPO、社福などの取組があるが、誰が統括するかが課題である。大学人に期待しているが、現状として、障害者の福祉や教育に関心のある研究者はいても、生涯学習への関心を持っている研究者は少なく、若手研究者育成していくことが必要。
○ 生涯学習は自己満足だけではない。社会の側が、当事者の学びをどのように認めていくのか、考える必要がある。
○ 学校卒業後の取組について、広く教員が知る必要があると考えるため、学習指導要領の解説に書いてしまっても良いのではないか。校長会としても手引書のようなものを考える必要がある。生涯学習をいかに学校教育の中で扱うか、真剣に考えていく必要があるのではないか。
○ 卒業後に本人や家族が生涯学習にどれだけ意識を持っているかが問われる。通園施設があるが、学校教育の中で色々な経験をして、卒業してからこんな場があるという情報が在学中に提供されることが重要。

2. 必要な体制づくり

○ 社会教育の視点で、教育機関同士の連携を図ったり、地域住民が一体となって協働したりするなど、ネットワーク型の行政を進めていくことが考えられる。大学等の教育機関とも連携することが必要。
○ 取組をどのように全国展開していくか。市町村に広げるための方法論を具体的にどのように提言したら広がっていくかを考えていかなければいけない。
○ 障害者スポーツに取り組むためには、スポーツをする場所が必要。そこに行くためのアクセス、介護等について、うまく整備されていないところが多いために、障害者がスポーツに参加できない状況にある。そのため、地方では障害者スポーツが浸透していない。学校在学中にスポーツに親しんでもらうことが大事。スポーツのもつ力というのは非常に大きいので、障害者の生涯学習の学びの中に位置付けてほしい。
○ 福祉・教育という分け方ではなく、新しい価値社会を作っていくことが必要。
○ 自治体だけでなく、企業、大学、NPO法人それぞれの役割を発揮するような連携体制を構築することが必要。
○ 学びの場について、大学、企業、法人等のどこがまとめて発信するか、誰が教えるのかをしっかり考えないと続かない。

3. 必要な方策

 <当事者のニーズの把握、相談の対応>

○ 地域の中で学びたいニーズをもっている人を見つけたり把握したりする仕組みが必要。単位としては公民館を中核とした地域がよい。
○ 市町村よりも狭い、地域毎に、知的障害者が地域の一員として集える場があればよい。
○ 情報などを得て、文化芸術活動にたどり着いた方たちが、継続して生涯学習に関わっていくための支援体制が弱いということも挙げられている。
○ 発達障害がある方の限局的な興味や関心、こだわり等を、社会の中でどのように形にしていけるのか検討いただきたい。
○ 自治体の福祉課が盲ろう者について把握し、その情報をもとに盲ろう者の社会参加を促すことが必要。

 <域内の取組の情報収集・提供等>

○ 情報を得て学習機会にたどり着いた方々が継続して関われるようにするための支援体制が弱い。
○ 障害者は文化芸術に触れる機会が少ないという声が強く上がっており、必要な情報が届きにくいという要因がある。情報アクセスの機会を得るということも非常に重要。
○ 関係者ネットワークにより、活動の拡充や課題等の情報共有が必要。

 <その他必要な方策等>

○ 障害児者の家庭について、経済的に困難な場合が多くある。家族も追い込まれている状況にあるので、障害者の生涯学習を通じて、障害者本人とともに家族も育ちあうような取組が必要。
○ 障害が重度の場合、生活介護施設の活動の範囲内に限定されてしまうこと、父母の会の活動について、保護者の高齢化により活動しにくくなっていることが課題。

(5)その他の意見

○ 「生涯学習とは何か」という合意形成がとても大事。
○ 生涯学習で大事なのは「学習意欲」である。
○ 何をもって障害者の学びと位置付けるのかということを考えた時、「文化の創造」は、よいキーワードだと思う。

お問合せ先

総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室

(総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室)