学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議(第9回) 議事録

1.日時

平成30年9月18日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 「障害者の多様な学習活動を総合的に支援するための実践研究」事業受託団体ヒアリング
  2. その他

4.議事録

【宮﨑座長】
 それでは,定刻になりましたので,ただいまから第9回学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議を開催いたします。本日は,お忙しいところお集まりいただき,誠にありがとうございます。
 まず,事務局より配布資料の御確認をお願いいたします。

【菅野障害者学習支援推進室長補佐】
 本日の配布資料の方を確認させていただきます。議事次第にございますとおり,資料の1番シリーズが,資料の1-1から1-8までございます。それから,資料の2番は,資料の2-1と資料の2-2とございます。その後に,資料の3が1枚紙で入ってございます。その後ろは参考資料で,参考資料は本日,参考資料1から3になります。
 また,今,障がい児・者の学びを保障する会の方からパンフレットを追加で頂戴いたしておりますので,お手元の方に配布をさせていただいております。
 また,委員の皆様に取りまとめに当たりまして御協力を頂きました論点整理につきましては,参考資料の1,2として配布をさせていただいております。この参考資料1,2の論点整理につきましては,9月の11日から10月の5日までの期間,パブリックコメントにかけているという状況でございます。
 また,委員の皆様には,机上配布資料として,本日の会議において御確認,御議論いただきたいポイント例として,1枚,資料をお付けしております。ヒアリングの際,御参考として,どうぞ御活用いただければと思います。
 また,このほか,ドッチファイルの中に関係資料を御用意しておりますので,適宜御参照いただければと思います。
 過不足等ございましたら,事務局の方までお申し付けください。

【宮﨑座長】
 委員の皆様におかれましては,論点整理をまとめるまでに御協力を頂きました。ありがとうございました。先ほどありましたように,参考資料1,2として付けてありますので,御確認をお願いいたします。
 本日から後半戦の議論をさせていただきます。まず本日は,全国各地の多様な主体によって実施されております取組の実態把握として,文部科学省において実施している実践研究の受託団体のヒアリングを行います。
 それでは,議題1の「障害者の多様な学習活動を総合的に支援するための実践研究」事業受託団体ヒアリングに入ります。
 最初に,本日御出席のヒアリングの方々を事務局から御紹介いただきます。お願いします。

【菅野障害者学習支援推進室長補佐】
 それでは,本日御出席のヒアリング者の皆様を御紹介させていただきます。
 最初に,国立大学法人長崎大学のお取組につきまして,長崎大学医学部保健学科・田中悟郎教授でございます。

【田中氏】
 田中と申します。よろしくお願いいたします。

【菅野障害者学習支援推進室長補佐】
 ピアサポートみなと・副代表,冨永遼子様です。

【冨永氏】
 よろしくお願いします。

【菅野障害者学習支援推進室長補佐】
 続きまして,NPO法人障がい児・者の学びを保障する会・代表理事の大森梓様です。

【大森氏】
 よろしくお願いします。

【菅野障害者学習支援推進室長補佐】
 理事の栗林満様です。

【栗林氏】
 よろしくお願いします。

【菅野障害者学習支援推進室長補佐】
 ヒアリング者の皆様,本日はお忙しい中,ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮﨑座長】
 それでは最初に,長崎大学の取組についてお伺いをしたいと思います。田中先生,冨永さん,どうぞよろしくお願いいたします。

【田中氏】
 ただいま御紹介いただきました長崎大学の田中と申します。本日はこのような機会を与えていただきまして,本当にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 長崎大学医学部保健学科は,看護学専攻,理学療法学専攻,作業療法学専攻,三つの専攻がございまして,看護師,保健師,助産師,理学療法士,作業療法士の教育・研究・養成を行っているところでございます。
 その中で,私自身は作業療法士として作業療法士の養成に関わっておりまして,その中でも精神障害のリハビリテーションを専門にしております。臨床では精神科病院で精神科のデイケアに携わっておりまして,保健関係では,保健所で引きこもりの方とか鬱病のリワークとか当事者の集いというのに携わっております。福祉の面では,諫早市の方で地域活動支援センターの3型の理事長をしております。最後に,ピアサポートみなとというボランティア活動も行っておりまして,今回の事業におきましては,このみなとの活動が大きく影響しているというところで,後でまた冨永さんの方からも御紹介させていただければと思っております。
 それでは,資料の1-1を御覧ください。私の専門が精神障害のリハビリテーションということで,最近の動向ですけれども,1番としまして,WHOが2013年にメンタルヘルスアクションプランというのを出しまして,そこで大きな目標の一つに,「地域における包括的ケアの提供」というのを掲げております。
 その実現のために,偏見及び差別を軽減するということと,最も大事だなと思った点は,ケアにおいては,障害を持たれる方々を対等な協力者とみなして,共にケアに取り組んでいくという,こういうことをアクションプランの中に明記してございます。
 (2)です。厚生労働省は平成29年度から,精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの推進事業というのを新規に始めているわけですけれども,この事業の中に「ピアサポーターの養成」というのを挙げております。要は,当事者の方が御自分の体験を生かして,別な当事者の方を支援しようというものでございます。
 ところが,都道府県のピアサポーター養成の実施状況というのは,わずか52.3%という状況でありまして,独自に行われているプログラムの効果という検証も,十分に行われてはいないという状況です。
 ちなみに長崎県では,現在,佐世保市の方でピアサポーターの養成というのを行っているんですけれども,県独自にやっているというわけではございませんで,佐世保市が独自にやっているというところです。
 3番です。精神保健福祉に関する法律も,近年,様々変化をし続けているわけですけれども,そのとき絶えず言われているのが,これまで精神障害者の人権がかなり軽んじられてきたというところもありまして,本当に当事者本人の改革になっているのかどうかというのが問われ続けているのかと思っております。
 新たな試みとしましては,丸の1番として,御存じの委員の先生方もいらっしゃるかと思うんですけれども,北海道に「浦河べてるの家」という,社会福祉法人というか,当事者グループがございまして,そこで始まった当事者研究という試みというのは,とてもすばらしいものがあるなと思っております。当事者の方が御自分の具合が悪くなるようなパターンを自ら研究していこうという試みで,そういう発表の機会も全国的にも増えていっているというところです。
 このように,当事者の視点を重視した新たな学問領域も近年誕生しておりまして,ピアサポーターというのは,そういう実践をしていく重要な人材とも言えるかと思っております。
 もう一つは,そういう当事者の方々が専門職と一緒に新たなサービスを創造していこうという試みが,海外で,特にイギリスで起こっておりまして,そのキーワードとして,「コ・プロダクション」という言葉,日本語訳,まだ確定はしていないんですけれども,「共同創造」と訳されている研究者もいらっしゃるんですけれども,一緒に新たなサービスを作っていこうという試みで,これで日本の精神保健福祉は本当の改革ができるのではないかということが,専門雑誌にも投稿され始めているところでございます。
 (4)です。それでは,本当にピアサポートというのが,セルフスティグマというか,リカバリーの推進に有効なのかという仮説というか,これは大きな私自身の研究テーマ,課題でもございます。
 下に書いておりますのが,WHOも言っておりますけれども,スティグマの軽減,偏見の軽減というのが大事だというところですけれども,日頃接している当事者の方々に伺うと,いや,自分たちも自分たちに対して偏見を持っているよねと言って,病気だからこれができないかとか,薬を飲んでいるから自分は駄目だとか,自分で自分の行動を制限していることも結構あるかとおっしゃる方がたくさんいらっしゃるんですけれども,それがセルフスティグマとお考えいただければと思うんですけれども,でも,そのセルフスティグマが行動面に引き起こすものとして最も私たちが気を付けないといけないのが,自殺につながりやすいと。
 これを防ぐためにどうすればいいかというところで,いろいろ考えていって,ピアサポートみなとでも私自身も学んでいるところですけれども,仲間同士で互いに,今の自分たちの困っていること,弱みとかうれしかったこと,そういうのを自由に語れる場所というのが必要なのかと思っているところです。それが一つ,対処行動というくくりになるのかと思いますし,今回の学習プログラムが,そういう対処行動向上に少しでも寄与することができればと考えているところです。
 2番目としまして,リカバリーカレッジということが,現在,イギリスの方で普及し始めているわけですけれども,もともとはアメリカのリカバリー教育センターというところから始まっているところですけれども,イギリスにおきましては国民保険サービスの一つとして国家予算で運営されているというところで,イギリス全体では,今,80か所ぐらいリカバリーカレッジというのがあるというところですけれども,日本でも三鷹市のリカバリーカレッジとか立川市のリカバリーカレッジというのが実践されているという現状でございます。
 その内容は2ページ目の方を御覧いただければと思うんですけれども,カレッジですから治療の場ではございません。治療的アプローチではなくて,主体的に学ぶことで回復を目指すというところになります。
 一番大事な理念というのは,先ほど申し上げましたけれども,当事者と専門職で一緒にプログラムの企画・実施を行っているというコ・プロダクションモデルでやっているというところです。あとは誰でも参加できるというところで,スタッフでも自由に参加できるというところがイギリスで実践されているという現状みたいです。
 もう一つ海外のリカバリーカレッジの中で面白いなと思っているのが,若年層,15,6歳から20代中盤,5,6歳までを対象にしたディスカバリーカレッジというのも行っていまして,御自分の良さを発見しようという大きな目標の下でやられているというところです。
 こう考えてみますと,今回の学校から社会への移行期における学習プログラム,移行プログラムと,生涯の各ライフステージにおける学習プログラム,生涯プログラムというのを二つ,長崎大学は取り組もうとしているんですけれども,その移行プログラムというのはディスカバリーカレッジに相当して,生涯プログラムというのがリカバリーカレッジに相当するものかと思って,いろいろ資料を集めて実践していこうと考えているところでございます。
 では,そのリカバリーカレッジの効果については,(3),最近の論文を拝見しますと,イギリスでも,国家予算削減というか,大きな問題になっているというところで,できるだけ医療費の削減を医療のサービスでもやってもらいたいという国策もあって,こういうリカバリーカレッジというのも始まっているというところですけれども,明らかにリカバリーカレッジ参加前後で医療費削減の効果があったという報告が,最近出されたイギリスの論文の中には見られたというところでございます。
 それでは,それを踏まえまして,私たち長崎大学の事業の御報告をさせていただきます。実施主体は私どもの医学部保健学科が実施主体になりまして,連携協議会の構成員は9名,ピアサポートみなとの代表と副代表,今日,一緒に来ていただきましたけれども,冨永遼子さんになっていただいて,できるだけ当事者主体の協議会になればと考えているところです。あとは県の教育長,県の発達障害者支援センター,障害者職業センター,労働局,子供・女性・障害者支援センターと,発達支援親の会の会長と,大村市の社協の面々で構成されています。コーディネーターはNPO法人,これは「のぞみ共同作業所」,地域活動支援センターの3型に位置付けられるんですけれども,ちょうど保健学科の卒業生で修士修了した卒業生が,コーディネーターとしてその役を受けていただけるというところで,彼にお願いしているところです。
 資料としましては,先ほどのリカバリーカレッジのところでは,資料の1-2に一つ,リカバリーカレッジの,これはノッティンガムのリカバリーカレッジの学生募集要項みたいな冊子がございまして,その表紙がこのような形になります。キーワードとしては,中央部に書かれているHopeとかControlとか,参加の機会を増やしていこうということでOpportunityという言葉が使われたりしております。
 資料の1-3が,私たちが3月,年度末に提出させていただいた概要図でございます。これはよろしいとして,資料の1-4がピアサポートみなとというところで,これは平成22年4月に活動を開始しまして,ですからもう8年で,私自身が関わり始めたのがその1年後,平成23年から関わり始めて,ボランティアとして関わっているんですけれども,当事者,御家族,一般の住民の方,ボランティアの方,学生さん,誰でも参加できるという場になっておりまして,現在,平均17,8名ぐらい毎回参加して,自分たちの悩みを語り合う場という形になっています。私自身もたくさんのことを学んでいる大変貴重な場であるかと思っているところです。
 これにつきましては,冨永さんの方からも御説明をしていただければと思います。

【冨永氏】
 ピアサポートみなと副代表の冨永と申します。ピアサポートみなとは,月に1回,福祉センターに集まって,2時間ぐらいですけれども,話をするというボランティアで,特に何か行動を起こして何か誰かにしてあげるとかじゃなくて,お互い話し合うことで,ボランティアという形をとっています。
 最初は精神の障害の方をメインに集まってしていたんですけれども,最近は身体障害者の方とか,あと精神障害者の家族の方とか当事者や市民の方で精神障害者を知りたいとかいう方もよく来られていて,家族の方も熱心に来られています。代表と共同代表も当事者の方で,委員も結構当事者の方が集まっています。

【田中氏】
 続きまして,資料1-5が,これはみなとの活動の一環として,自分たちの困っていることを研究しようという,先ほどのべてるの家がやっている当事者研究も参考にしながら,今回御提示させていただいたテーマは,お金の管理と体調不良の研究というところで,みんなで自分たちの言葉で,決して専門用語を使わず,自分たちの言葉で自分たちの困っていることを言い換えようという試みにもなっているかと思っています。
 資料の1-6,これは先日9月8日に行いましたピアサポートみなと主催の交流会というところで,最近発達障害のことが話題になっているということで,あと,みなとの共同代表も発達障害をお持ちの方がいらっしゃいますので,その方の体験発表を中心に,発達障害をテーマに語り合ったというところでした。
 以上のような経過で,資料の1-7が,この間行いましたキックオフシンポジウムとなっています。当事者の方に参加していただいて,シンポジウムを行ったということです。
 それでは,私の方からは以上で,続いて資料1-8を御覧ください。冨永さんの方から御説明をさせていただければと思います。

【冨永氏】
 私は当事者の方の人間ですけれども,長崎県の大村市に住んでいます。今,仕事は,障害者の就労支援B型事業所「太陽工房」というところの生活支援員をしています。社会福祉士とか精神保健福祉士も持っているんですけれども,統合失調症とか自閉症スペクトラムの診断を受けていて,結構入院とかもして,過去6回入院したので,当事者の方の立場になるのかとは思います。
 大村市にある当事者会で「おおむら麦の会」というのがあって,月に1回集まってミーティングをしたり,時にはドライブに行ったりとかする活動もやっています。先ほど田中先生が紹介されたピアサポートみなとの副代表でもあります。みなとでは,先ほども言いましたけれども,ミーティングとか語り合いとか,ざっくばらんに語れる会なので,仕事が休みのときに,よく行ってから,みんなと語って楽しく過ごしています。
 あと,NPO法人「ウエスレヤン・コミュニティカレッジ」というところの「風の舎」というところにも時々行って,そこでも語り合いをしています。ウエスレヤン・コミュニティカレッジでは,ベてるの家みたいないろいろな人が出入りして,いろいろな人がわいわいがやがや話すということをしていて,いろいろな活動をしているんですけれども,一番みなとの活動が長いかという感じですね。
 私の個人的な体験にはなるんですけれども,発症から今までの経過というのがあって,初めて高校1年生のときに精神科を受診したんですけれども,不安がすごく強くて,早く病院に連れていってもらいたいと思っていたんですけれども,行ったら行ったで,薬をもらったりして,自分は一体どうなるんだろうと思って,すごく不安でした。そのときは希死念慮があったので,死にたい気持ちが強くてリストカットをしてしまったりして,すごくつらい時期でした。入院をしたんですけれども,その入院が半年以上かかって,高校の卒業も危ぶまれて,学校に行きたいなと思っていても,鬱状態がひどくて行けない,退院してからも布団から出られなくて,将来が見えなくて,早く学校に行きたいのに布団から出られなくて,すごく自分が苦しかったです。自分を責めていました。
 大学とか出てからすぐ,障害者の就労移行支援施設に入ったんですけれども,それと同じ時期ぐらいにピアサポートみなとが始まって,私もそこに入って,そこで仲間と出会って,働きたいという気持ちがすごく強かったんですけれども,仲間と今はゆっくり語れているので,そういう今もいいなと思いました。今,ピアサポートみなとで共同代表をやっている方も,たくさん希望を下さって,どんなに障害が重くても,夢は諦めなくていいと。夢見るだけならいいじゃん,タダだよみたいな感じで教えてくれて。
 みなとで一番うれしかったのが,テーマが自殺だったんですけれども,自殺についていろいろな話をしていて,余りお話をしないある女の子が,突然ぽつりと,ここのみなとでは自殺をする人がいないでほしいなみたいなことを言われて,ああ本当にそうだなと思って,時々自分の抑鬱状態がひどくなって自殺を考えたりしていたんですけれども,そんなに言ってくれる人がいるなら自殺しない方がいいなと思って,一人でもそう思ってくれている人がいるなら生きてみようと思って今に至って,今は全然自殺しようとか思わないんですけれども,時々そういう時期になったりします。
 就労移行支援に行っていたところに,先輩のPSWさんから,あなたは自信を持って生きなさいと言われて,それで胸を張って生きていていいんだと言われて,自分の発達障害のこととかをすごく責めていたんですけれども,生まれつきだったので,けれども,それでもちゃんと頑張っているから,それでもいいから生きなさいと言われて,ちゃんと前向いて生きていけるなと思って,私は私のままでいいなと思いました。
 そして,4年前に就労継続支援B型の太陽工房と出会って,ちょうどその頃,太陽工房はA型はあったんですけれども,A型の利用者になろうかと思って面接を受けていたんですけれども,面接も落ちてしまって,いろいろ厳しいことを言われたんですけれども,その後,管理者の方から電話がかかってきて,ここでスタッフとして働いてみませんかと言われて,社会福祉士を持っていたので,それで働けるんじゃないかという可能性を見いだしてもらえて,そしたらここでピアスタッフとして働かせてくださいということで,4年前から私は太陽工房で働いています。
 そこで,精神の方とかもいるんですけれども,もちろん身体障害者とか知的障害者の方もいらっしゃって,ピアスタッフという形ではあるけれども,自分の障害に関係なく支援したりとかしているんですけれども,自分が至らないところがあって,逆に利用者の方に教えてもらったり助けてもらったりすることもいっぱいあるんですけれども,今,ピアスタッフとしてもう4年たったので,希望を持って生きていこうと思っています。
 ピアスタッフとして働いているということは,利用者とか職員の立場は余り関係ないなと思っていて,対等な関係だなと思って接しています。精神の方だけじゃなくて,ほかの障害の方とも分かち合えることができて,すごく充実した仕事をしています。
 仕事で苦労していることの対策ですけれども,発達障害の方,結構聞いたらあるあるですけれども,耳で聞いたことが全然頭に入らないので,目に訴えるということをいろいろしているんですけれども,一番が,口頭で言われたことが全く頭に入らないということがあるんですけれども,対策としては,言われたことはすぐメモに取って,メモができるようにノートとペンをずっと持ち歩いています。
 もう一つが,ADHDの気もあるみたいで,不注意がすごくひどいんですけれども,職場に理解ある管理者の方がいるので,いろいろ自分でやってみなさいと言われたので,いろいろすごくあっちこっち注意力散漫になってしまうので,職場の作業場とか事務処理するときのデスクには,注意書きをたくさん貼っています。目で見ると少し良くなるみたいで,大分失敗は減ったんですけれども,それでも失敗はするんですけれども,何回も見てやって,繰り返して失敗がなくなったら,その注意書きを外していくようにしています。
 それとあと二つ,パニックになって何も手につかないことがあって,もう自分,今もそうですけれども,頭の中が真っ白になって何も考えられなくなるということがあるんですけれども,そのときはほかの職員に声を掛けて作業場を離れて,自販機に行ってコーヒーを飲んでから,深呼吸をしてからまた作業場に戻って,10分後には元に戻って,また仕事に戻るということができています。
 2ページ目ですね。四つ目で,初めてのことがなかなか習得できないというのがあって,それは,よく独りでするなと言われるんですけれども,最初は独りでしないので,もう一人の職員とペアでさせてもらったりして,でも,そのときもメモを取って,何回も読み返してイメージトレーニングして覚えてから利用者さんに教えるという作業をしています。
 そういう対策を4年掛かってやっと自分でするようになって,ほかの人の協力もあってすることになって,それで少しずつ失敗が減っていったんですけれども,それによって私は変化することがすごく怖くて,変わりたくないと言って泣きじゃくったこともあるんですけれども,今は変わらないとやっていけないなと思って,自分自身変化して,それに気付いて,ああ,もう変化してもいいなと,変化が嫌じゃなくなったんですね。変わってもいいんだなと思って納得して,そういう自分も受け入れてから,人はいつでも変われると思って,それだったら自分の障害もうまく付き合っていければやっていけるんじゃないかと思っています。今も変わっていっているんじゃないかと思います。
 夢としては,太陽工房の看板スタッフになることかと思って,ピアスタッフかピアスタッフじゃないかというのはこの際どうでもいいなんて思っています。以上です。ありがとうございました。

【田中氏】
 以上でございます。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。それでは,ただいまの長崎大学の御説明について,御質問,御意見のある方はどなたからでもどうぞ。15分程度ぐらい時間があるかと思います。
 なお,本日の会議において御確認,御議論を頂きたいポイント例として,机上配布をしてあります中身も参考にしながら,どうぞお願いいたします。
 それでは,どうぞ。どなたでも。

【津田委員】
 神戸から参りました津田と申します。お話,とても興味深く聞かせていただきました。いろいろな意味で刺激を頂いたと思います。障害者の生涯学習を推進するという観点から,どのように生涯学習のプログラムであるということを説明するかということについての質問をさせていただきたいと思います。
 田中先生のレジュメの2ページ目の内容で一番冒頭のところに,治療的アプローチではなく,主体的に学ぶことでリカバリーを目指す実践と。このリカバリーという言葉の意味がセラピーとどのように関係付けられているかということを,まず一つ目,考えさせられたわけですけれども,教育って,割と医療にも従属するというか,医療目的で教育が使われるということはよくあることで,どちらかというと教育の方が社会的資源の配分が少なくて,医療の方が多いという現状からすると,医療で完結させればいいじゃないかという意見ってすぐに出てくるんじゃないか。それをあえてこれは生涯学習だということを言うためには,もうちょっとレトリックが必要かというのが率直な感想です。
 冨永さんのお話は,どちらかというと医療のお話というよりも,リカバリーの話というよりも,成長の話と伺ったんですね。その辺に生涯学習であるということのレゾンデートルがあるような気がするんです。医療も,伺っているところによると,個別の治療を求めるだけではなくて,エコロジカルな視点も随分広がってきていると伺っておりまして,そうすると,エコロジカルな視点ということを考えていくと,例えばべてるの家でも,まちづくりと治療ということが一体化しているところにとてもユニークな面白さがあるんじゃないかと思うんですけれども,個の治療だけではなくて,もう少しエコロジカルな観点で見たときの,あえて言えば社会変革的な視点というものをどのように打ち出せるかというところは,私自身は一つ大きな観点ではないかと思っているんです。
 リカバリーの意味と,二つ目の,もう一つ,今のこの話のつながりで伺いたいのは,田中先生のプリント1枚目の表にあるところのパブリックスティグマですね。ここの部分の修正というか,これに対して働き掛けていくという取組がどのようにして行われ得るのかというところが,一つ,私自身は関心というか,ポイントになってくるのではないかと思っておるものですから,この部分についてどんな取組をされているかということを伺わせていただきたいと思います。

【宮﨑座長】
 それではお願いします。

【田中氏】
 御質問ありがとうございます。最初に,2番目のパブリックスティグマの軽減に向けてどう実践を行っているかというところで,これは一般住民向けに対しましては,まずは正しい知識を持っていただくということと,当事者の方々と質の良い触れ合い体験を持っていただくということが大事かと思って実践しているところです。これは自分自身の研究でも,そのような結果が得られているというところです。
 最初のリカバリーの意味というか,医療でやってしまうと,どうしても対象となる方というのは患者さんで,こちらは治療者という,治療者が患者さんに治療を行うという関係性でしかないわけですけれども,教育モデルでやると,相手は生徒さんあるいは学生さんで,こちら教育者という形にもなるんですけれども,でも,そこは互いに学び合うというフラットな関係で実践を行っていくというところが,大きく違うところかと思っているところです。
 リカバリーの意味合いというのが,たとえ障害を持ちながらであっても自分らしい生活ができることということで,これはお一人お一人違うことにもなるのかと思うんですけれども,リカバリーの意味で,冨永さん,いかがでしょうか。

【冨永氏】
 治療的なものと言われたら,何か受ける感じがして,私は選んでもいないのに勝手に治療を受けさせられているみたいな感じですけれども,リカバリーだったら,自分が変わりたいとか,こうしたい,ああしたいと思ったことを自分から発信していって,それを助けてあげるよみたいな感じで補助してもらって,自分のしたい思いを伝えられるところが治療とは違うかと思います。

【宮﨑座長】
 津田先生,それでいいですか。パブリックスティグマについての方向性みたいなことはどうですか。

【田中氏】
 これは学生教育もそうですけれども,保健学科に入ってくる学生さんも,当初は精神障害と聞くと,何か暗いとか怖いとか,余り関わりたくないなと思っている学生さんが多いんですけれども,きちんと教育をするということを通じて,あるいは保健学科の1年生には,冨永さんたちも来ていただいて講義をしていただくんですよ。その講義がとてもいいということで,その講義を聴いて自分のイメージが大きく変わったという感想なんかも頂きますので,できるだけ当事者の方に来ていただいて講義をしていただくという機会が,スティグマを減らすという意味合いでも大切かと思っています。以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。ほかにございますか。どうぞ。

【田中(良)委員】
 愛知の田中です。よろしくお願いします。田中先生の発表資料2ページですね。今後の予定のところに,2.として,学校から社会への移行期における学習プログラム(移行プログラム)では,目標が「仲間と出会い,自分の特性を知る」となっています。実は私のところも,今度の実践研究事業の委託を受けていまして,専らここの移行期に視点を当てています。知的障害と発達障害の青年たちで,ちょうど高等部を卒業してきた人たちが対象です。
 感想ですが,精神障害とか発達障害のある人たちの移行期のプログラムはこれからということなんでしょうけれども,ここでは、障害の特性に視点を当てていらっしゃいます。一般に,特別支援学校では,障害認知ということにかなり力を入れていますけれども,ここでの精神障害の人たちは中途障害ですから,学校時代には、そういう機会はなかったわけで、その分ここでは、自らの障害を受容することを目的としたプログラムになっているかと思います。その後、生涯の各ライフステージに移っていくと思いますが,この移行期のプログラムの期間とか終了について,今の時点でどのように考えられていらっしゃるかということをお聞きしたいと思います。
 以上です。

【田中氏】
 御質問ありがとうございます。今回の事業の中では,5回,プログラムを実践する予定にしておりまして,5回終わった時点で終了という形にはなるんですけれども,大事にしたいなと思うのは,ピアサポーターの体験談も,今,みなとの方々5名,冨永さんも入っているんですけれども,5名来ていただいて体験を御発表していただこうと思っていまして,あと2回,3回,4回,5回も,みなとの関係者5名の方に来ていただきまして,ピアコーチというか,ピアトレーナーというか,という形で参加していただいて,触れ合いを続けていただければと思っているところです。
 今回,申込みをいただいた方が11名ということで,18歳から29歳までの方,高校卒業してすぐと,あと現在大学在学中の方もいらっしゃるんですけれども,そういう方々に,冨永さんたち30代,40代,ちょっとした先輩という形で御助言いただけると,その人たちの障害があっても,このような生き方というか,一つのモデルとして見ていただいて,御自分の将来を考えていただければと思っている次第です。
 今回の5回の中では,そういうきっかけ作りで,あとは定期的にやっているみなとの定例会なんかにも参加していただいてもいいですし,そういう社会資源を御紹介して終わるという形に,今回のプログラムの中では想定しているところでございます。

【宮﨑座長】
 よろしいですか。

【松矢副座長】
 私は知的障害の方の専門ですが,知的障害でもピアサポートというのが,国際障害者年の本人参加・自己決定ということで行っていました。しかし,こういう一種のグループワークですよね。そこには知的障害をよく分かった支援者が入ることで,お互いの会話を活発にして,振り返りをしながら認識を深めていくという,グループワーク方式が一番いい。そこにピアサポートができそうな,そういう先輩の方々が入って盛り上げていくというようなですね。
 この現在の,今日,資料で頂いたピアサポーターの考え方の中で,そういうPSWとか,そういう専門家が,もちろん対等な立場だけれども,ピアコーチといいますか,トレーナーと一緒にやるということで考えているのか,それとも,ピアコーチ,トレーナーそのものが中心になってグループワークを展開していくのか,その辺のところですね。
 つまり,ここでは生涯学習の人材養成ということがあるので,PSWにもトレーニングしていくということも必要じゃないかと。要するにピアコーチとかトレーナーと併せてね。その辺のところはどのようにお考えでしょうか。

【田中氏】
 リカバリーカレッジのコ・プロダクションの思想・考えを,できるだけ実践の中に採り入れたいなと思っていまして,私たち専門職,OT,PSWと,冨永さんたち当事者の方,一緒になってコーチできればと思っている次第です。
 これは7,8年,みなとの中で一緒にやってきて,当初は私自身も,ついついこちらのペースで急ぎ過ぎていたところもあったんですよ。今現在の代表の方から自分たちのペースに合わせてくださいということも言われましたし,ピアカウンセリングの講習会なんかに私自身が参加させていただいたときは,田中のやり方は断定的過ぎると言われたりですね。そういう新たな学びもたくさん頂いていますので,一緒の対等の立場で専門職と当事者の方が運営していくというところを実践していければと思っている次第です。

【松矢副座長】
 分かりました。

【宮﨑座長】
 それじゃ,綿貫さんで終了したいと思います。お願いします。

【綿貫委員】
 お時間の少ないところをすみません。東京都自閉症協会の綿貫と申します。資料の1枚目の方でありましたピアサポートの事業の方でモデル事業になっていた世田谷区受託事業「みつけばルーム」というのを我々は運営しているんですが,今,長崎大学とこちらの取組の方を拝見している中で,自分自身のことを知るというために,疾患や障害の心理教育とか障害認知のことを前提としたプログラムという内容を拝見しておりまして,実際に当事者の中でも発達障害のことを知りたいと,うちの東京都自閉症協会の方にも発達障害の話がしたいということで来たりとか,その延長で,二次障害として精神疾患の話であったりとか,そういったことが中心的に出ることもあるんですが,私自身,発達障害の当事者ですが,私において言えば,余り自分自身のことを障害の概念に,そこを前提として当てはめていくやり方といいますか,障害に自分自身のアイデンティティーを求め過ぎるということに,私は否定的な考え方を持っていまして,一時的にはそういうことが過程として必要だということもあると思います。
 私も大学,大学院で心理学とか特別支援教育の知識を使って自分自身のことを整理したので,そういった過程が必要だということは分かっているんですが,そこで終了という形であったりとか,障害概念でそこに当てはめて自分を説明していったりすることのリスクといいますか,そういったことも思っているので,これ以降のというか,どんな流れの中でこういったプログラムを考えられているのかということもお聞きしたいですし,あと,冨永さんに質問ですが,ピアスタッフだからできたことといいますか,一般の支援者と違うピアスタッフとして,ピアスタッフだからこそこういうことができたんじゃないかということがありましたら,教えていただけましたらと思います。

【宮﨑座長】
 お願いします。

【田中氏】
 御質問ありがとうございます。ICFの障害概念に押し込めようとは思っていませんで,できるだけ整理に役立てていただければということと,あとは御自分の強みに気付いていただければという支援ができればいいなと思って,そういう実践がやっていければなと思っているところです。
 冨永さん,いかがでしょうか。

【冨永氏】
 さっき言われていた障害がアイデンティティーになるみたいなことですけれども,私たちはそんなことはほとんどなくて,話をしているうちに,自分の障害ばかり話しているんじゃなくて,日常の様々なことを話して,これが苦手だよねとか,これが楽しいよねみたいなことを言って,私たちは特に,障害者だからこれができないとか,障害者だからこうだよねという話は全然しないで,むしろ明るくやっている感じです。
 ピアスタッフだからできたことというのは,今,精神の方だけで月に1回集まる会をしていて,それは全然強制じゃないんですけれども,太陽工房の事業所の中で,精神の手帳を持っている方限定でやっているんですけれども,お菓子を食べながら茶話会をするというのを月に1回やっているんですけれども,その中で,精神の人特有の悩みとかがあって,どうしても眠れない人が多かったりするんですけれども,それについて話をしていて,こうすれば眠れるねとか,睡眠薬を使えば眠れるけれども,それ以外にもっといい方法はないかとかいうのを当事者間で話し合ったりしている会を運営しているんですけれども,そこで,自分自身が眠れなかったりするとか,御飯をたべなくなったとか,そういう問題行動を起こしたりすることをカミングアウトすることで,あなたもそうだねみたいな感じで利用者の方と分かち合うことができる。それはピアスタッフだからこそできたんじゃないかと思います。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。時間の関係で,長崎大学の事業報告についてはこれまでとしたいと思います。ありがとうございました。
 続きまして,NPO法人障がい児・者の学びを保障する会の取組について,お伺いしたいと思います。それでは,大森さん,栗林さん,どうぞよろしくお願いいたします。

【大森氏】
 皆さん,初めまして。本日は貴重な機会を頂きまして,誠にありがとうございます。私はNPO法人障がい児・者の学びを保障する会・代表理事の大森と申します。よろしくお願いいたします。隣に座っておりますのは理事の栗林です。後ろにも3名ほど法人から出席をさせていただいております。
 当会が今回御報告をさせていただきます実践研究は,「社会(地域・福祉・企業の連携システム)が支える,学校教育終了後から生涯にわたる継続的な学びの実践研究事業~コミュニケーション経験を基盤とする生活・就労支援プログラムの構築~」というタイトルで,非常に長いタイトルで恐縮でございますが,中間報告としてお話をさせていただきたいと思います。
 本事業は,当会がNPO法人を資格取得する以前に活動しておりました任意団体「ままのがっこ」という活動の一部において行ってきた、知的障がいのある子を持つ保護者や支援者を対象にした進路勉強会、特例子会社を対象とするアンケート調査等からエビデンスを得て,就労とコミュニケーションをテーマに企画をしております。
 配布させていただいております資料2-2にあります進路勉強会というタイトルの資料が、平成28年に実施した際の実際の資料となっています。練馬区に在住していますが,区立中学校の特別支援学級に在籍中,知的障害学級の固定学級ですが,在籍している方というのが必ずしも知的障害を持っている方ばかりではないという状況にありながら、その進路状況というのは,特別支援学校がほとんどの進学先になっているというところで,もっと当事者レベルで進路学先を開拓していけないかという思いで,様々な調査を重ねて情報共有をしたという機会になります。
 その中で,後でゆっくりご覧いただければと思いますが,ページで言いますと19ページ、スライドで言うと38になりますが、特例子会社へのアンケート調査の結果から、就労の現場では,異性間・同性間・上下関係等の対人関係ですとか金銭管理等が大きなトラブルとなって表面化している、また就労を継続する妨げとなっているということが,読み取れると思います。
 また,企業が障害者にどういったことを期待しているかという調査におきましても,学校教育が提供している学習内容とは少しミスマッチを起こしているのではないか,ということが推測されます。
ということで、学校教育から就労という社会へ移行するにあたっての課題ともいえる、それらをフォローする場が必要になってくるのではないかというところを活動の中で見いだし、当事業の背景にもなっております。
 また,もう一つ大きな柱としてあるのが、コミュニケーションです。社会の中で人が生きていくとき,他者と関わることというのは大前提になるかと思うのですが,コミュニケーション能力というのはその中では欠くことができない力であるにもかかわらず、その力を培う機会というのはとても少ないと現状にあると思います。学校教育やその時期の生活空間が,かなり限定的な環境にあることが多いのではないかと考えると,コミュニケーション力を育む機会が欠如していると言えると同時に,地域住民にとっても日常レベルで障害者と出会う機会というのは少なくなっている、双方で関わり合いながら地域社会の受容性を育む機会というのも同時に少ないということが言えるかと思います。
 補足ですが、資料にもあります通り進路勉強会に参加した保護者からは,多様な進路選択,高等部卒業後以降,多様な選択肢の中で進路を決定できることを望む声が多くありました。これは今回の生涯学習というところの分野に直接関係はないかとは思いますが、ひとつの情報としてお伝えできればと思っております。
始めは保護者だけで行ってきた活動でしたが、元特別支援学校や特別支援学級の教員,また大学の研究者や弁護士ともこうした課題意識を共有するようになり、昨年NPO法人の設立にいたりました。
 前置きが大分長くなりましたが,以上のお話しした背景から,当事業のプログラムやその実施においては、自立した生活を目標とした就労,又は就労を見据えているというところも含めて,直接的あるいは間接的に必要な力を共に育むことを目的としています。
 また,他者との偶発的,自然な出会いによって,自然な形で学ぶ機会を作る等、自分たちが生きる地域社会の中で,リアルにそういう関わり合いということの機会を通してコミュニケーション能力を培っていくと同時に,地域社会の受容性の向上というところも踏まえていきたいと考えています。
 ポイントとしては,コミュニケーションを核とした内容の構築と,既存のスタイルにとらわれない実験的な環境作り,そして当事者ベースでの検討となります。
 具体的なプログラムと実施スタイルになります。10のテーマを設けました。クローズド講座とオープン講座の,大きく分けて二つのタイプに分けています。クローズド講座は知的障害のある高等部生から社会人を対象にした講座で,就労する上で根幹となる物事の考え方や意義を学んでいきたいなと思っています。それからオープン講座ですが,こちらはどなたでも参加することができる講座です。障害者健常者というくくりのない中で、グループワークやディスカッションを行いながら,プログラムからの学び、及び、コミュニケーションからの学びという相乗的な効果を作り出したいなと思っています。
 また、講座の実施スタイルも、内部スタッフのみで行う、外部から専門家を招へいして行う、練馬区の既存学習講座も活用し区と協働で行う等、多様なスタイルで実験的に実施していきたいと思っています。
 現在までに、プログラムの実施状況ですが、8月18日からオリエンテーションがスタートし,既に全27講座中6講座が終了しています。まだスタートしたばかりで,6講座のまとめ等もまだそんなにできていない状況ではありますが、左側がクローズド講座,右側がオープン講座ということで,このような2週間に1度ぐらいのペースでそれぞれの講座を実施していく予定でおります。
別事業になりますが、I-LDK事業という昨年度より既にスタートしている練馬区との協働プロジェクトとの連動による効果も狙っております。これは、最長3年間のプロジェクトになりますが,地域で暮らす人々の居場所であると同時に、多様な人の出会いの中で自分の世界を広げていける場所として、固定の拠点を設けて場づくりをするプロジェクトです。
 計画では11月頃オープン予定ということで,今,プロジェクトを進めているところです。日常生活レベルでの自然発生的なコミュニケーションの機会として,通年にわたって固定されたスペースを設けながら,障害のある方がそれぞれに好きなことを過ごす場としての活用とともに,地域住民に向けてもオープンな場として開放しながら,自然発生的な関わり合いの機会を作っていきたいと考えています。
 当会による研究事業の概要図をお示ししました。既に先ほどお話をしましたI-LDK事業との関連で,練馬区の協働推進課とは連携が図れている状況です。その既存の関係性を有効に活用しながら,本事業で恐らく関わり合いが広がっていくのではないかという見通しも含めて,練馬区の各所管課との連携協議会の構成をお示しているところです。
 具体的に連携協議会の方のワーキンググループについて,その構成をお伝えしていきます。先ほどお話ししたように,連携協議会の中に,既に練馬区の4課の担当が入る予定になっております。また,大学やワーキンググループの座長や当会とコーディネーターが,連携協議会の構成員として事業の進行管理をしてまいります。ワーキンググループについてですが,こちらの方は後ほど御覧いただければと思います。
 ページをめくりまして,11枚目,連携協議会とワーキンググループの役割というところで,ワーキンググループは,当会が実施したプログラムのまとめについて報告を受けて,プログラムを多角的に検証するワーキングチームになっています。プログラムの内容,相関関係,実施方法,そして環境整備等,様々な視点から検証していきます。その検証した結果を連携協議会の方に提案をし,連携協議会が次回の講座とプログラム等に反映をするとともに,次年度に向けてのプランづくりに生かしていくという関係性で,それぞれの役割を担っています。
 また,コーディネーターの役割についてですが、実は既にこのような生涯学習として位置付けられるような取組が,練馬区の中にも幾つかあります。例えば青年学級ですが、障害の程度による4学級が,月に1回程度,日曜日にプログラムを実施しています。料理とか絵画とか,主に余暇に近いような位置付けで実施しているということを担当の方がおっしゃっていましたが,課題もあるようで高齢化の傾向にあることや,キャパをオーバーしているような実態もあるということで,新しい方のニーズにはなかなか応えられない現状があるということでした。
 また,練馬区のいわゆる地活では,不定期にてプログラムを実施しています。例えば料理とかメイクとか演劇のようなものを,プログラムとして展開をしています。あとは,都立の特別支援学校,近くで言うと練馬特別支援学校さんなんかは,本人講座として,校庭を開放しながら,卒業後も,そういった学校を活用しながら学習を進めていけるような機会を作っていらっしゃるということを伺っています。
 そういう取組をまずは私たちが知っていくということがとても大切だと考え,それをコーディネーターの役割として置いています。その中で、例えば教育と福祉とか福祉と就労のように切り離さずにをうまくつないでいく役割をどのように担っていけるのかというところを,コーディネーターが今年度はいろいろな方々の情報を得ながら構築できたらいいなと考えています。
 ここからは,実際に実施をしていった内容を写真で見ながらお伝えしていきたいと思いますが,参加者として知的障害のある方5名と書いてありますが,5名中4名は既に,先ほどお話したI-LDK事業の方でかなり関わり合いを持っている,関係性ができている方になります。また,それに加えて,練馬区の職員や福祉施設の職員と,また保護者とスタッフが中央の写真に写っているかと思いますけれども,そういった中でオリエンテーションを実施しました。簡単に名札を作って,自己紹介を交えて,真ん中の方にお菓子とかジュースが見えていますが,お菓子とかを食べながらリラックスした雰囲気の中で自己紹介をした後に,今後実施していく講座について内容を説明する機会を設けています。参加した方の声だと,お菓子を食べてみんなで楽しく話せるというのはとても楽しくて,また参加したいという声があがっていました。
 続いてです。「生活をつくる」というテーマのクローズ講座になります。ディスカッションを通して,生活って何だろうというところ、彼らがどのように生活というものを捉えているかということを,雰囲気を作りながらお話を重ねて,引き出していきます。黒板に書いてある部分ですね,一番下にあるところが面白いのですが,生活に必要なものを話していったときに,電気,ガスと来て,水道と来るかと思いきや,スマホとかWi-Fiと言っていて,彼らが今生活に必要なアイテムというのは本人的にはそういうところが大事だなんていうことを知りながら,私たちがディスカッションを通して知りたいのは、一般的な知識とか正解ということではなくて,彼らの感覚であり、まずはこれをしっかり捉えることが重要であろうと。捉えた上で,どうそれを学びにしていくかということが非常に重要なのではないかということを考えています。
 これは2回目,3回目という三日間連続の講座になっています。対象も,夏休みの平日の期間でしたので,主に18歳,19歳という,高等部の2年生とか3年生の方たちが参加していますが,基本的にはディスカッションを多く採り入れています。1回目のディスカッションで生活の体験としてお料理をしていこうということになり,料理の献立を話し合って決め,2回目はその準備としてレシピや必要な材料と,それに関わるお金について実地調査をしたという内容になります。
 3回目になりますが,こちらは買物をして調理をしていくという内容になります。時間の中でお伝えし切れない部分というのがあって残念ですけれども,3回の講座でこのプログラムを完結するというところで,後フォローができないという,そういうイベント的な性質は成功体験で終わるということは必須のようなところもありまして、例えば、実際にレジを通すときに予算をオーバーしてしまって,その予算オーバーした分どうしようと、そういうときに,この材料を抜こうとかという,そういう体験までもできると本当は良かったんですけれども,なかなかそういうことも時間の関係とかでできないところもあり,スタッフがこっそり500円を予備で持っていくとかしながら、一定のコントロール下のもとで実施をした形です。すごく良かったなと思っているのが,ボランティアとして参加した大学生に終わった後に話を聞いていますが,彼が知的障害者と関わるときに,実際に何か支援をしたと言えるところというのは,ニラのテープを切るときに包丁を外から手前にして切っていたから,それを外に向けてやった方がいいよと言ったことぐらいで,あとはそんなに何を支援してあげたらいいんだろうという程度で関わっていたということを話してくれたことです。
 知的障害者といっても,当然いろいろな人がいるわけなので,一律にこういう支援が必要ということをあらかじめ伝えながらボランティアを募るというのは難しいと思うんですけれども,ボランティアをするにあたってはそういうところに大きな不安を感じていたようで,ただ,実際に関わってみるとそんなこともなかったという感想を持ったというところを伺えて良かったです。
 ある青年の変化というお話で,一日目はスマホをいじったり、かなりうつむいたりして,どうやって参加したらいいのか分からない様子。手を挙げても,すごく消極的な手の挙げ方だったりするんですけれども,二日目三日目と講座を実施していくにつれて,三日目には,お母さん、私はお母さんと呼ばれているんですけれども,俺はこれからの講座全部参加しますと言って帰っていきました。1回目のときはとても不安がって,この先は分からない,あしたは来るか分からないみたいなことを言っていた彼も,この三日間でとても自信を付けたようで,また,自分が安心できる場所ということを確認ができたというのかななんて感じています。
 こちらはオープン講座の様子になりますが,オープン講座は,「ゆるゆる体操」の上のところが,参加者のところが間違っていますが,2歳から70歳ぐらいの幅広い年齢層の方々が23名集まって,ゆるゆる体操を体験しました。子供が自由に動き回っても何も否定をされない場というところから,かなりの安心感を得られるという効果がとてもあったのではないかと感じています。
 右側の下の3列,本気で寝てしまっている子が続出するという。その場の雰囲気にのまれてとてもリラックスしているということ,ありのままを体で表現しているのではないかと思いますが,左の始める直前の画像と「振り返り」と書いてある右の後の画像では、背筋がぴんとしている緊張感がほぐれて、ゆったりとしているのが分かるかと思います。講座として、そうした効果があったのかと感じています。
 オープン講座はエピソードから健常者の意識がどう変わるかというところも定性指標として集めていきたいのですが,障害者に対する支援というところの意識が変わったのではないかというのを感じたエピソードがあって,一番下の左から3番目の写真になるのですが,最後の振り返りで知的障害のある方が感想を述べたとき,少し言葉に詰まってしまうシーンがありました。眼鏡を掛けている方は区の職員ですね。ユニバーサルデザインなどの福祉のまちづくり関係の所管課の方ですけれども,その方が,言葉に詰まった当事者の代弁をしようとしたのですが、その知的障害の方は,私がしゃべるからいいと断るエピソードがあったのです。うまくしゃべれない彼女を支援しようとした結果,代わってしゃべってあげようとする行動になった。でも、当事者は自分の言葉で伝えたかったわけで、本当に必要な支援とは何なのかという点で、意識の変化があったのではないかと私は考えています。
 私たちは実践の積み上げも少ない中ですが、学ぶ機会をつくっていくにあたり大切ではないかと考えることをまとめました。一つは当事者が情報をしっかりキャッチできるということが非常に重要じゃないかと思っています。今回,先ほどお配りしたようなチラシを,特別支援学校や特別支援学級の全生徒向けに配布をしたり,練馬区の公共施設120か所に,例えば生涯学習センターとか児童館とか公民館,障害者福祉施設とか,いろいろなところに配布をしたりしたのですが,実際,今まで参加してきた方の中で,このチラシを見たことがあるという人はいませんでした。こちらが一方的な感覚では当事者にうまく届いていないという現状をしっかりと捉えて,配布先とか配布方法,それから,チラシという紙ベースのものだと伝わりづらければ,それ以外の方法等も含めて検証していく必要があるだろうと考えています。
 それから,参加費,今回はすべて無料になっていますが,交通費がかかると参加しづらいという声もあります。かなり所得が低い方にとっては,交通費さえもかなり経済的なバリアになっていることを認識していく必要があります。また、学びとなる機会が仮に多様にあったとしても,自らが主体的に学び取ろうと思うに至るまでのレディネスをしっかり育んでいかないと,機会を作ったところでも、なかなか当事者の学びというところにまでは至らないのではないかと考えています。
 まだスライドの中身が大分残っているのですが,時間なので,ここで一度終了とさせていただきます。ありがとうございました。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。それでは,ただいまの御説明について,御質問,御意見のある方は,どなたからでもどうぞお願いいたします。20分ぐらいとりたいと思います。
 津田先生,どうぞ。

【津田委員】
 いいですか。またトップバッターを切らせていただきます。神戸から参りました津田と申します。
 以前からとてもすごいことをやっているなと見せていただいていましたけれども,これだけのことを市民の自発性に基づいてやっているというのは相当なことだと思うんです。その辺からのお話を伺いたいと思うんですけれども,お話を伺っていると,お母さんたちの活動から始まって,そこに共感をした専門家の人たちが支援をするようになってできたところが,組織の構造としての核になっているのかと伺いましたけれども,それで正しいでしょうかということですね。この組織がどういう社会的な支援を受けていることによって,活動がうまく推進できているのか。もちろん文科省からの支援もそうだと思いますけれども,そこをもう少し一歩踏み込んで伺いたいということ。
 それから,そういう市民の自発的な活動が全国的に広がっていくというのが,この政策の核心一つになっているんじゃないかと個人的に思っているんですけれども,そのときに,どういう組織であれば,このような形で活動が生み出されていくのか。そういう組織を作ったときに,どういう支援があると良いと思うかという,現状と未来というか,この二つのことについて,お話を伺いたいと思います。

【宮﨑座長】
 お願いいたします。

【大森氏】
 ありがとうございます。では,次のスライドで御説明をさせていただきますが,オープン講座のゆるゆる体操についてです。講座の実施工程と経費というところで御説明ができたらいいなと思うのですが,スタッフが4名,うち一人が記録として,外部講師を1名招へいした場合,そしてそれに掛かる会場と消耗品費ということで,実際にこのぐらいの金額が掛かっています。準備・打合せは1時間と2時間を1回ずつ,そして当日は4時間です。そして振り返りが1時間とした場合,スタッフの人件費は,交通費も含めて4万円,そして外部講師が1万6,100円です。会場が1万6,000円,消耗品が3,500円とした場合,総額7万5,600円の内訳として,練馬区が会場提供,今回は全ての会場において提供していただいておりますので,1万6,000円は練馬区が負担しているとして、3万6,500円の黄色の部分は今回の研究事業費で賄っております。
 グレーの部分,こちらは当会が負担をしているというところになりますが,先ほど組織の成り立ちというところでお話がありましたけれども,保護者の願いと,そしてそれに賛同してくださった元学校教員の方々などの思いがあるから,こうした運営というのが実際のところはできているわけですけれども,これを一般的に普及しやすいような運営体制に持っていくというところは,かなり大きい課題だなと感じているところです。
 ただ,具体案もなく思っているところでいうと,本当の共生社会というのは,一人一人が,障害があってもなくても,大人でも子供でも,誰でも一人一人が社会で役割を担っているという意識の下で作られている社会だと考えるときに,例えば権利保障として今回生涯学習の機会が作られたとしても,なかなかそういう共生というところには至らないのではないかと、私は一保護者として,そのように考えています。障害者は常に支援・配慮される対象であるとか,権利として学ぶ機会が保障されようとしているということでは,意識的なバリアを本当の意味で取るのは難しいのかと思うので、障害者が学ぶということが,どう社会につながって,どう社会に生きてくるのかということをしっかりと見据えて,この事業を取り組んでいかなくてはならないなと考えています。
 今までにない新たな社会的な役割を,障害者がこうした学びを通して担うようになるんだという,未来社会への投資という感覚で社会の中に位置付けができると,恐らく企業も,企業に参画を是非していただきたいと私は思っているのですが,法定雇用が法律で設定されているから、CSRの向上ということで障害者を雇用するということではなくて,戦力として是非うちに来てほしいと思えるぐらいの意識で雇用することを目指したいです。学びの機会づくりがそういった新たな社会的な価値を創造するようになれば,当事者にも十分な賃金が支払えわれることになり,交通費,参加費がかかっても,社会のあらゆる学びの機会にも参加しやすくなっていくのではないかと,そのような展望を持ちながら,この事業に当たっているというところです。

【宮﨑座長】
 よろしいですか。ほかに。
 戸田さん,お願いします。

【戸田委員】
 戸田です。プレゼン,ありがとうございました。僕らも似たような取組をさせてもらっているので,共感したところです。一番共感したところが,先ほどおっしゃっていて,僕も質問しようと思ったところと同じですけれども,権利保障によるとかシステムじゃなくて,なぜ学ぶかが重要だからやるんだというところというのは極めて重要な考え方であると思っていまして,私もそこは共感しています。
 これは質問じゃなくて意見になるかもしれないんですけれども,ここに書かれてある企業のCSRですね。参画すると。これも余り良くないなと思っていて,なので,企業は社会的にそこに存在している限り果たしていると思っているので,そうではなくて,おっしゃったように,戦略的にこの人材が欲しいというところで採用していくというのは,我々の山梨で取り組んでいる取組も,似たような取組をしています。
 その中でおっしゃっていたように,僕らも気を付けているのが,出口側の企業との対話をかなり重要視しておりまして,産業界とかそういう団体とのしっかりとした座組を整えていくと,向こうも余り情報がしっかり届いていないところがあるので,今,皆さんがやられている取組の延長線上にしっかり就労があるというところであれば,そこを示していくと理解が得られますし,かつ,彼らが活躍して実際に働けて自立していく賃金とかも獲得できるというのは,我々の実践として分かっているところでもあるので,そんなところは近いですし,情報交換していけたらなと思いました。
 とりあえず,今は以上です。

【大森氏】
 ありがとうございます。

【宮﨑座長】
 どうぞ,松矢先生。

【松矢副座長】
 とても感銘しながら聞いていたんですが,練馬区には伝統的に親の会があるんですが,もう本当,みずみずしい活動が始まったなという感じで,文科省が,このプロジェクトといいますか,始めたという意義は,そういうところにあるかという気がしております。
 私は東京都の特別支援教育には非常に長く付き合っているんです。そういう意味で,いろいろな委員会にも参加している。こちらの宮﨑先生もそうですが,御一緒にいろいろな仕事をしたんですけれども,現在,東京都の企業就労率は49.8%,二人に一人は就職できるようになりました。法律が非常に生きていて,協力してくれる企業も非常に多いです。そして,このままで行くと,少子化社会の進行ということで,常用労働者の人口はどんどん減ります。そうすると法定雇用率が上がっていくんですね。そういう計算方式です。
 だから,今,2%から2.2%になりましたけれども,計算式に入れたら3%行っているものですから,3年以内に3%にする。ですから,今度は5年後の見直しのときにはもっと上がるかもしれない。だからどんどん上がっていきます。3%ぐらい行っちゃうんじゃないかと僕は企業の方々に言っています。企業の方々は真っ青ですね。どうしようかと。それだけ特別支援学校等への育成への期待が大きいですね。
 当然,少子化社会ですから,障害あるなしにかかわらず,婦人ももっと働いてもらわないと社会保障費が賄えないですから,婦人もどんどん働くし,今,厚生労働省も,高齢者の,要するに65歳定年以上,もう70歳が目的ですよね。働いてもらわないと,もう維持できないわけです。だから全員参加で働く。だから僕は,障害者が活躍する時代が来たと。そういうことですね。
 それから,就職して,福祉作業所もそうですけれども,とにかく福祉作業所から働く世界,移行もあります。今,そういう状況です。企業はどんどん主体的に働きたい人は採りたいという気持ちになっていますので,そうすると,その方々が社会に参加して,一生涯,65,あるいは,もうどんどん健康は環境によって進んでいきますので,70歳だって働ける障害者が出てくるだろうと思うんですね。それを可能にするのは生涯学習だと,僕,思っているんです。スポーツ,文化,全部含めてね。芸術活動含めて。
 ですから,そういう意味で,とてもいいプログラムですね。ですが,今,実践研究の助成があるからできるんです。でも,このように国がお金をたくさん出してくれれば,あちこちにそういう自発的な市民,あるいは障害をお持ちの親御さん,分かる親御さんが,どんどん運動を起こすんじゃないか。今,育成会は駄目ですよ。若い親御さんは参加しない。みずみずしさがなくなっちゃったのね。僕,育成会の理事をやって,評議員をね。その私がこう言っちゃおかしいんですけれども,本当に今,力を失っているんです。
 ですから,この生涯学習を考えるというところで,大いに期待していると。今日は意見というよりも,すごく期待していますという私の意見を表明して終わりにします。

【宮﨑座長】
 田中さん,何か言いたいことがあるんじゃないですか。

【田中(正)委員】
 せっかくお振りいただきましたので。今,会としては,松矢先生おっしゃるとおりの現状ですので,会のただいま現在の一番の目標は,次世代に向けて会を活性化していくということになりますので,そういう意味でも,先生も御指摘ありましたように,生涯学習については非常に期待が強いところですね。
 今日,2団体からお示しいただいたような,卒業したて,そして社会参加で,更なる学びの場で,そこに一つのゴールとして社会参加の具体的な形としての就労があるというのは,非常に分かりやすい図式ですし,今日午後も,雇用の水増しの件で,表現は違う,国の方では言っているようですけれども,分かりやすく言うと,十分な対応をしてこなかったことについて,週末にまた閣議の方で検証委員会ができたものにヒアリングに臨んでほしいということですので,そこでの発言としては,今までのフレームに対して雇用枠があることに十分に届かなかったので,履けない人に下駄履いてもらって状況を作っていたということを改めるには,本人が活躍できる環境の職場を,公務員の場であっても作るべきではないかと。若干時間がかかるとは思うんですけれども,そのためには,今日お話しいただいたようなことがステップになっていくんだろうと思っております。
 一方で,今日はそういうことでしたので,この後,幾つかのプレゼンの中では,余暇的なものをもっと学びと位置付けてほしいということもありますので,今日の要素の中にもそういったこともありましたので,分かりやすく提示すると,企業の受皿も変えて,社会環境も変えてと,非常にアグレッシブになっていくんだと思うんですけれども,個人の状況からすると,居場所があって,仲間づくりで,そこで楽しいことがあればいいというようなことも要素としては示していただきましたので,委員としてはそこも整理していければいいなと思って聞かせていただきまして,育成会については御心配のとおりですけれども,組織として頑張って維持していかなければいけない点もありますので,引き続き座長,副座長にも御指導いただければと思っております。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【宮﨑座長】
 どうもありがとうございました。NPO法人障がい児・者の学びを保障する会の御発表,本当にありがとうございました。
 それでは,ここからは,全体を通じた質疑,意見の時間としたいと思います。あと25分程度ございます。前回まで検討してきました論点整理を今後報告書にしていくということに当たって,本日,ヒアリングで伺っての参考となった観点など,もう既にお話を頂いていることもありますが,お気付きになった点を,これからは自由に意見交換をしていく場にしたいと思います。どなたからでも結構でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 皆さんも是非参加していただければと思います。大森さん,どうぞ。

【大森氏】
 続けてとなりますが、今度は,私が有識者の皆さんにお伺いしたいなと思うことがあります。今までこの事業の話をいろいろな方にしていくときに,事業の目的にも書いてある知的障害のある方が自立した生活をするという言葉について、どのようにお伝えしたら良いかと考えることがあります。是非皆さんに,知的障害者が自立して生活をするということを具体的にどのようにイメージをされているかというのを,お一人ずつ伺いたいです。これは,本当に全然違うのです。学校の教員たちも一人一人違う。すごく驚いたんですけれども,学級目標に自立と掲げられているにもかかわらず,自立って何ですかと伺ったときに,イメージされていることがばらばら過ぎて,いったい息子はどこに向かっていくんだろうと,その当時,保護者としてすごく考えたのです。
 なので,是非伺わせていただきたいと思っているのと,もう一つ。これは東京都に限定してしまうお話になるかと思うのですが,昨年の2月に東京都の特別支援教育推進計画の第2期が策定されたかと思います。ここでは政策目標として,知的障害のある特別支援学校の高等部は,平成27年には41.2%だった就労率を,平成38年に55%にすると政策目標として掲げられています。このときに,説明会等にも参加をさせていただいて,いろいろとお話をさせていただいたり,その前の段階で,教育庁の特別支援教育課長や主任指導主事の方ともお話をさせていただいたりする機会を持ったのです。
 そのときは,実際に学校教育でどうにかできないか。例えば専攻科を設置するとか,何かそういう教育的な視点での取組というのが今後できないだろうかというところが話の趣旨だったのですが,当会はこの3年間,補助金を頂きながら社会につなげていくという取組の中で,来年度は生活訓練事業という障害福祉サービス事業の一つを活用したいと思っています。
 その場合,先ほどお話しした計画にある企業就労率というところに関係するのではないかと考えていて、当会が実施するような障害福祉サービス事業の生活訓練事業に高等部を卒業して通所するということが,学校教育の現場として,どのように見えるのかを伺いたいです。例えば、それが福祉就労として捉えられ、企業就労率を上げていくことに逆行するようなことにならないのか、私たちは,方向としては同じかと思うのですが,学校側からどのように見えるのかというのを,是非伺ってみたいなと思っています。
 話が分かりづらいかと思うのですが,伝わりましたでしょうか。学校教育の現場にいらっしゃる方,是非御回答いただけたら有り難いです。よろしくお願いします。

【宮﨑座長】
 どうしますか。
 いいですか。お願いします。

【朝日委員】
 大塚ろう学校の校長をしている朝日という者ですけれども,去年までは永福学園の校長でしたので,企業就労とか,そういった点では非常に関心が高いところです。
 おととい,用事があって,前任校の近くを歩いていたら,二人の卒業生に会って,ちょうど離職をしているんだと。君たちどうするんだという話をして,今,就労支援の方に行こうと思っているとか,障害者基礎年金の取り方を勉強しようと思っているとか,そういう話で,彼らなりに卒業した後にいろいろ悩んでいるという現実を見たところでございます。
 企業就労を41から55に上げるということは,一つは,障害が軽度の生徒が,当然自分の持っている能力を高めて就職をするということ,これはもっと奨励されるべきですけれども,そういう取組の中で,中度,比較的障害が重たい子供も企業就労する可能性がまだまだあるのではないかということへのチャレンジだと思っています。
 東京都の特別支援教育推進計画の1期ができて13年ぐらいたつ中で,学校も変わりました。本当に社会を見据えて,技術だけではなく,心構えであるとか,まだまだ課題は多いですけれども,教育の中身は変わったと思っていますが,私は企業の方々が非常に変わってきたなと思っています。卒業した後,前任校は10年近くたった,その人たちのモチベーションをどうやって高めるか。なかなか昇給ができないところをどうやるかということで,企業の中でいろいろな役割を考えたり,いろいろな資格を取らせてくださったりということで,非常に優れた企業の方たちの姿を見て,本当にすばらしいなと思っています。
 ある企業さんは,軽度の子たちを入れながらも,愛の手帳2度の子をチャレンジで受け入れてみて,そういう新しい仕事を開発してくださっている企業があるということは,まだまだ可能性はあるんだなということで,決して福祉就労をマイナスということではなく,まだまだ可能性があるということです。
 逆に,企業就労100%を目指した就業技術科というところも,私,5年間いて100パーは行かなかったです。どうしても最後の五,六人,5%前後の子たちは,それこそメンタルな病気を抱えたりとか,いろいろ家庭的にも,あるいは行動のコントロールとか難しくて,福祉の力をかりなくてはいけないということがありました。でも,それはそれで子供たちの現実なので,そこのところできちっと向き合って,チャンスがあれば企業の道へのステップになればと思っています。
 企業に入って,そこでも育てていただきながら社会貢献するという,働きがいがあるというところで,55という数がどういう意味を持つかはそれぞれだとは思うんですけれども,まだまだ教育の中身が変わることで,また企業様の方が変わることで,活躍する場所というのがあるかと思います。とはいえ,おととい会った二人のように,まだ1年半ぐらいで離職をするような子たちも何人かいるところなので,もっともっと考えなくてはいけないかと思っています。
 関連して,先ほどの大森さんの発表もすごいなと思ったんですけれども,この全体の中で,この生涯学習の議論の中で,生涯学習って学校の延長なのかどうかというところが私の中ではすごく一つの関心がありまして,例えば独り暮らしを勉強することとか,みそラーメンやギョウザをみんなで作るということは,非常にいい取組だと思うんですけれども,これ,学校でもやってきた勉強ですね。でも,学校ってどうしても,将来のイメージをしながら,要するに現実ではないところで,言葉が悪いかもしれませんが,おままごとのような,そういう学習だったので,現実社会に出てみたら,独りでギョウザ作ったり,みそラーメン作ったりということができないから,こういうところがぴったりはまると思うんですね。
 でも,こういう活動はとても大事ですけれども,どちらかというと,学校と社会の中間点のようなものだと思うんです。ほかのいろいろな団体の取組の中で,知的障害も含め,障害のある方たちが学びというところに,学校ではないところの学びというのかな,それこそ芸術だったり,自分の加齢とどう向き合ったりとか,あるいは全く違う学問にチャレンジをするとか,それこそ会社の中の人間関係の対応であるとか,二十歳なら二十歳,25なら25,40だったら40の学習課題にどうやって対応できるかというところは,学校から少し離れたところで,いろいろな方たちが議論していってほしいかと思っています。
 私は,同窓会組織と親の会が,もう少しこの辺の学校でできなかった部分がきちんとやりながら,そして,いずれ年齢に応じた学習課題が,本当に民間の方と学ぶ機会があればいいかと思っています。以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。自立については松矢先生に一言言っていただいて,全体に整理したいと思います。

【松矢副座長】
 いろいろな人がいろいろ言うと思うんですが,私は,本人が望む生き方を本人らしく実現していくことだと思うんですね。そのためには,当然,本人の気持ちを周りが理解しなきゃいけないということです。そして,その年齢や,あるいは環境によって,親から離れて生活したいということがあれば,グループホームが選べるような,そういう地域の住まいの環境ですよね。こういうことを整えていかなければ自立できませんよね。そのように考えています。
 僕は大学の教員やった後,附属の生徒たちが共同作業所,今は社会福祉法人ですけれども,そこの利用者になっているということから,役員をやってほしいということで,ずっとやってきました。そういう中で,今,理事長をやっているんですね。生活訓練とB型のセットした「バオバブ」という作業所,それから最近は,どんどん加齢化が進んでいきますので,障害が加齢化すると重くなってきますよね。というのは,バオバブの一つの特色は地域貢献ということで,廃品回収をやってきたんです。団地の5階まで上がるって大変ですよね。だんだんそういうことで,生活介護も必要だねということで,生活介護。
 でも,生活介護といっても,午前中は企業とかいろいろな形で委託された簡易作業をします。午後が生きがい的な活動をするんです。体作りも含めて,リズムとか音楽とか,絵を描いたり,書道したり。それは毎日元気良く通うということができるためには,そういう生きがい的なメニューがなければいけないことです。そういう一つ一つの中で,本人が本人らしく生きていくというのが自立だと思っています。
 今度は男女二つのグループホームを作りました。今までは1棟だったんですけれども,その世話人の方も高齢になったので,3棟をこの10月から直営でやります。夜勤でしっかりと職員が休めて,夜の健康とか翌日の働く力とか活動する力を作っていただくために,職員も確保する。大変苦しい人材不足で大変でしたけれども,そうやって環境を整備しなければ,自立的な生き方はできません。ということをセットにして僕はいつも考えています。当然ですよね。教育とか福祉を考える場合に,本人の権利,生きがい,それをきちっと保障するには環境を作っていかなきゃいけないということです。
 そういう点では日本はまだまだ遅れていると思うんですね。今日は精神障害の方々の報告が最初でしたけれども,一つだけ言っておきたいのは,日本って先進国という中では一番遅れている国です。なぜ遅れたのかと考えるんです。もともと雇用促進法という割当制度という,ヨーロッパだけです。アメリカはやりません。イギリスはやっていましたけれども,アメリカ型にしちゃいました。要するに差別禁止ということでね。でも,ヨーロッパは割当制度です。
 それは,ヨーロッパは戦争の舞台になって,市民も巻き込まれてしまうという戦争を何度もやってきた。特に第一次世界大戦から戦争の容貌が変わっちゃったんですね。市民も亡くなる方もけがをする方もいますから,障害者を,要するに国を立て直す,敗戦国も勝利国も,もうぼろぼろですね。ですから,みんなが働くために,割当制度で法律をつくりました。始まったのが第一次世界大戦です。
 まず,ドイツ。ドイツはとてもそういう反戦・民主主義の志向が強かったですね。敗戦国です。隣のフランスは勝った国ですけれども,一緒にほぼ同時に,ドイツの方が早いんですが,そのときに,戦争で一番多い障害者は精神障害者です。戦争の後遺症です。だから,働く力を失った方々も全部対象にして割当制度が始まったんです。
 日本は違います。身体障害者の雇用促進法というのは1971年から,促進法だったのを,納付金で義務付ける,つまり割当制度で義務付けたわけですね。それが1971年です。そのときには身体障害者から。その次は,親の会,その当時はみずみずしかった育成会は,どうして差別するんですかと食い下がったんですよ。そのとき僕が,若いから,誰も教育ばかりやっているので,雇用就労やれと言って,育成会の推薦でそっちにしたんですけれども,そこから始まって,知的障害が先でした。身体障害者とみなしてっておかしいんですけれども,働いている人は身体障害者とみなすと言ってから,10年後に雇用義務化が図られました。精神障害者がみなすになってから10年以上たって,ようやく昨年から雇用義務化になったんですね。で,ようやくヨーロッパの割当制度に追い付いたという段階です。
 そのぐらいに精神障害者に対する差別・偏見が強かったということですね。だからそれを取り戻すために,今日の最初の報告はとても重要なので,本人ですよね。御本人の方々が積極的に,これは発達障害についてもそうですが,意見を述べていくということです。そういう力を奪われてしまった,親も遠慮しなきゃならないという状況が,日本は長く続いたということですよね。それを変えたいと思っています。
 それからあと,5.5%,これは私が設定したわけでも何でもないんだけれども,さっき申し上げたように,全体として少子化が進んでいますから,法定雇用率は上がってきます。ですから,もうこれ,学校教育とても大切ですよね。それから生涯学習も大切です。実際に統計を厚生労働省,毎年とっていますけれども,学校から直接就職する人は,就職した人の中で4割です。6割の人は福祉から雇用へ向かっています。
 数年前に,これは育成会のあれで,働く人たちの自分たちの集まりを厚生労働省が企画してやる,その開催の長になりましたけれども,そのプログラムに参加した働く本人の人たち,370名か60名のアンケートをとりました。そこでも同じように,特別支援学校を卒業して就職した約4割です。つまり6割は福祉からです。つまり離職も,それから転職も可という時代になったんだということです。ゆっくり巣立っていいんです。でも,学校は中等教育で終わります。
 今,知的障害者は,大学進学する場合にも,みなすカリキュラムじゃありませんので,知的障害だけのカリキュラムですから,厳密で言うと受けられないんですよ。そこは一つ大きな問題で,何とかぶち破りたいと思っているんですけれども,そういう中で,一応中等教育で終わっていくということですね。だけど,学びと職業的な力も含めては終わりません。そこから始まるとむしろ考えているんです。
 これから民法が変わって,18歳で成人になりますよね。そういう時代ですので,学校教育の役割はとても大きいと,そのように考えております。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。朝日委員,それから松矢先生から,大森さんに対する回答もしていただいたと思います。松矢先生の講義も終わりました。長かったんですけれども。
 時間がなくなってしまいましたので,ヒアリングはここまでにしたいと思います。今日は二つの団体のヒアリング,ありがとうございました。また,皆様,御出席ありがとうございました。改めてお礼を申し上げたいと思います。
 最後に,事務局より事務連絡をお願いいたします。

【菅野障害者学習支援推進室長補佐】
 それでは,事務局より事務連絡をいたします。資料3を御覧ください。資料3,今後の進め方ということでございまして,その中にパブリックコメントの情報をお入れしてございます。その下に,次回第10回の会議日程を入れてございます。次回第10回は,10月の3日水曜日,14時45分から18時に開催することを予定しております。追って正式に御連絡をお送りいたします。
 また,その後の会議日程につきましては,資料3,その下に書かせていただいておりますので,御参照ください。
 また,本日の配布資料につきましては,机上に置いていただけましたら,後日郵送をさせていただきます。
 事務連絡は以上でございます。

【宮﨑座長】
 それでは,本日の会議はこれにて閉会します。
 なお,次回からの日程等は御確認いただいて,是非出席方お願いしたいと思います。
 それでは,本日の会議はこれで終わります。ありがとうございました。

―了―

お問合せ先

総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室

電話番号:03-5253-4111(内線3460)
ファクシミリ番号:03-6734-3791
メールアドレス:sst@mext.go.jp

(総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室)