学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議(第7回) 議事録

1.日時

平成30年7月18日(水曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階 第二講堂

3.議題

  1. 主な論点ごとの意見の整理に関する審議
  2. その他

4.議事録

【宮﨑座長】
 おはようございます。定刻になりましたので,ただいまから第7回学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議を開催いたします。本日は,お忙しいところお集まりいただきまして,まことにありがとうございます。大変な暑さで,皆さん,御苦労されていると思います。本日は久しぶりに全員出席という予定になっているんですが,電車等で若干遅れていらっしゃる方があるようです。定刻ですので始めたいと思います。
 まず,事務局に人事異動がありましたので,御紹介をお願いします。

【平田障害者学習支援推進室長補佐】
 それでは,7月1日付で当室の職員に異動がございましたので,御紹介させていただきます。
 文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課障害者学習支援推進室長に着任いたしました高見でございます。

【高見障害者学習支援推進室長】
 高見です。改めましてよろしくお願いいたします。

【平田障害者学習支援推進室長補佐】
 同障害者学習支援推進室室長補佐に着任しました菅野でございます。

【菅野障害者学習支援推進室長補佐】
 菅野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

【平田障害者学習支援推進室長補佐】
 以上でございます。

【宮﨑座長】
 それでは次に,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【平田障害者学習支援推進室長補佐】
 本日の配付資料は,議事次第にございますとおり,資料1から4,参考資料1から2になります。また,委員の皆様には,ドッチファイルの中に関係資料を御用意しております。前回宮﨑座長より御指摘がありました心のバリアフリー学習推進会議のまとめについては,本年2月に最終まとめがなされており,ドッチファイルの参考資料8にございますので,参照いただければと思います。
 過不足等ございましたら,事務局まで申し付けください。
 なお,御発言に当たっては,お手元のマイクシステムのボタンを長めに押していただいて,赤いランプが点灯しましたらお名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。

【宮﨑座長】
 それでは,議題(1)の主な論点ごとの意見の整理に関する議論に入ります。
 まず初めに,本日久しぶりに津田委員に御出席いただいていますので,主な論点ごとの整理に関する御意見をまとめて発表していただきたいと思います。
 それでは,津田委員,よろしくお願いいたします。

【津田委員】
 皆さん,おはようございます。座って失礼いたします。今御紹介にあずかりました津田と申します。第3回から第6回まで随分長いこと欠席をさせていただいておりました。皆さんの御議論もうまくフォローできていないのではないかと,ちょっと引け目に感じておりましたので,頂いた御発言のまとめを使って,一つまとめの表みたいなものを作ってみました。皆さんのお手元の10枚目ぐらいのところにA3の見開きでとじていただいていますので,それも御参照いただけたらと思います。
 それから,事務局の皆さんでまとめていただいた論点について,私なりの意見も走り書きをしたメモをコピーしていただいています。これは今御覧いただいたA3の見開きの前の前の3枚がそれです。ゴシックで書かれている部分が私の意見ということになっています。これも今から15分という時間を頂きましたので,なるべく簡潔にお話をしようと思うんですけれども,うまく伝わらないところも多々あるかと思いますので,これも併せて御参照いただけましたら幸いです。
 さて,本題に入る前に,私自身がどのような思いでここの会議に出席させていただいているかということを,ごく簡単に述べさせていただこうと思います。私の専門は社会教育という領域ですので,問題意識の根底に,人々の学びを支える公共的な機能が乏しくなってきているという危機感があります。したがって,今回の障害者の生涯学習推進政策によって,人々の学びを支える機能を再び活性化させることができたらいいなという期待を持っております。
 けれども,実際には人々の学びを支えるシステムは財源の問題で縮小の一途をたどってまいりました。今回の政策も恐らく財源が豊富ということではないでしょう。特に地方自治体レベルで過剰な期待を掛けることは,難しい状況ではないかと思っております。それでも,もし財源が確保できて,障害者の生涯学習推進体制を継続的に発展させていくことができるとしたら,そこに恐らく明らかな成果というものが求められることになるのではないかと思っています。
 では,何を障害者の生涯学習推進政策の成果として理解したらよいのだろうか。これがそもそもの私の問題意識であり,疑問という部分です。個人的にはちょっと大風呂敷ですけれども,国が進めることですから,これぐらい大きなことを言ってもいいのではないかということで,こんなことが成果として表れるといいなということを,とりあえずお示ししておきます。
 それは,この政策によって人々の学びを支えるシステムが充実する,あらゆる人の学びを通して社会参加が促進され,社会参加の難しい人たちの学習について考える人たちが増えて,障害者が地域の産業の担い手としても活躍して,元気のなかったまちに活気が表れて,最終的に多様性にあふれた活力のある共生社会に近付けたら,こういう期待です。
 私自身,こういう発想の下で,2005年から「のびやかスペースあーち」という社会教育施設の開設,運営に努めてまいりました。この施設は神戸大学と神戸市との連携協定に基づいて,神戸大学が開設した地域の施設です。「子育て支援をきっかけにした共に生きるまちづくり」を目指してまいりました。この「子育て支援をきっかけにした共に生きるまちづくり」というのが合い言葉になっております。住民,行政,学生,教職員が協力し合ってプログラムを作るようになって,はや13年になります。プログラムの中には,障害児・者の活動や学びへの挑戦と,全ての人の参加と学びを両立させるようなプログラム,取組も精力的に行ってまいりました。
 あーちのプログラムの一つに,よる・あーちというものがあります。これは金曜日毎週やっております。夕方から夜に掛けて実施しております。もともと,遊ぶ,交わるという要素で成り立たせて,遊びを介した学びというところに焦点を当ててまいりました。2016年から子ども食堂,学習支援という要素が加わって,遊ぶ,交わる,食べる,学ぶという4つの要素の活動になりました。毎回60人ぐらいの人たちがそれぞれの思いを胸に集まってきます。13年もたちますから,あーちができたときに小学校1年生だった子が,近年次々と成人しております。
 障害者たちが子供の頃から通い慣れた場所で,日常生活に組み込まれた学びの場として,課題を共有する人たちに見守られながら成長していく,そういう場所になっています。様々な年齢層の人たちが関係を作っていく中で,子供たちが学習支援を受けている姿を見て,改めて学校でやり残した勉強に取り組みたくなったと,勉強道具を引っ張り出してくる青年たちも多く見られます。学生や住民の自発的な参加もたくさんあります。
 ただ,障害者の支援を匂わせるようなボランティアの募集をしているときには,いつも支援者不足に悩んでいました。それが「学習支援」とか「子ども食堂」というキーワードが入った途端に,ボランティアの数が急増しました。また保護者の学びの場にもなっています。保護者同士の学び合いはもちろんですけれども,ボランティアの住民や学生とのコミュニケーションが,保護者のエンパワーメントにつながっているという実感もあります。
 こうした実践の経験から,この会議での議論の助けになるのではないかと考えたことを述べさせていただきます。
 まず障害者の生涯学習機会のイメージとして,様々な学びが起こってくる場作り,これを目指していったらよいのではないかということです。イベント的で日常生活を離れて行う学習にももちろん意味はありますけれども,日常生活に根差した学習機会を作るという意識,これも大事だと考えております。個々人の生活課題に密接に関連し,持続的な人間関係の中で起こってくる学習が,障害者の生活を豊かにするからだと思うからです。
 あーちに来ている障害のある人たちの場合でも,多くの場合,時間を掛けて関係を深めていくことで,ようやく個々人にとって重要な学習ニーズが何であるかということが分かってきます。
 例えば1つ例を挙げますけれども,よくあるケースです。うちの子が痴漢行為をするのではないかとか,痴漢と間違えられるのではないかということを,保護者がとても心配していることが分かってくることがあります。多くの場合,言葉によって教えるという働き掛けでは太刀打ちできないような青年たちです。そういう課題が分かると,あーちの支援者たちはみんなで課題について考え,意見を出し合います。
 例えばその青年があーちで女性に物理的に接触しようということに対して,アプローチされた女性が明確な意思を伝える。嫌だとか,やめてとかいう言葉をしっかりと伝えることを取組として上げていくことがあります。そうすると,今度はよく身体的な接触を受ける女性の中で,とてもおとなしくて自分の意思をちゃんと表明できない人がクローズアップされて,彼女の問題をみんなで考えていくということになったりします。
 学習の課題や内容,それから課題解決の方法もとても個別,具体的です。そのような学習は相互行為の中にあって,発見や気付きの連続として成り立っている,そう考えております。
 もう一つ,支援者の育成,確保についての意見です。障害者のために協力してというメッセージで参加してくれる人はこれまでもいました。けれども決して多くありませんでした。それが「学習支援」とか「子ども食堂」というキーワードを挿入することによって,とてもたくさんの支援者,特に障害のある人たちと関わりがこれまでなかった人たちの参加が多く見られるようになりました。ここに一つのヒントが隠されているように思います。
 第1に,子ども食堂,学習支援という言葉は,何をすればいいのかという行為がイメージできる言葉ではないかということです。第2に,それらの言葉は支援の社会的意義がはっきりしているように感じられることです。つまり誰かのために奉仕する要因というイメージではなくて,意味のある活動を通して,支援者自身が社会参加するというイメージで,支援者の育成,確保を考えるべきだろうと思うのです。
 あーちでの実践を通して私たちは都市型中間施設という概念を作り,発展させてきました。便利な都市型生活の発展が私たちの生活を分断し,貧困化しているという問題意識の下,機能分化に応じてばらばらになった人々の生活を統合し,分断された人々をつなげる,そういう働きを持つ施設,これを概念化したものです。あーちが目指しているのは,都市型中間施設のモデル開発なのだということです。都市型中間施設の理念が実現される施設や実践が数多く表れてくるといいなと考えております。
 もう一つ,この会議の議事録などを読んでいて気になったことについてお話ししたいと思います。それは障害者が中心になって進める学習活動のお話です。知的障害者の学習実践にセルフ・アドボカシーというものがあります。自分たち自身の権利擁護をするということですけれども,そのために自分たちのこと,社会のこと,人と人との関係のことを学んでいくのです。ピープルファーストという名称で世界に広がっています。日本では本人活動とも呼ばれています。
 身体障害者の自立に向けた学習メニューとしては,自律生活プログラムというものがあります。障害者自身が作ってきた歴史を持つ学習プログラムで,具体的な生活の課題をどう乗り越えていくのかということを学んでいく内容です。障害者の生涯学習政策において,こういう本人中心の学習活動の歴史を無視してはいけないと思っております。自律的な個人を育てるためには,自律的な学習活動への着眼は必須だからです。
 生涯学習は単に学校の延長としてあるわけではありません。全ての人が人間として成長していくという前提が,生涯学習の元にあります。成人学習論という領域では,成熟に伴って学習はだんだん自己決定的になるということが言われています。
 自己決定学習という言葉もあります。この自己決定学習というのは,与えられる教育から学ぼうとする意思を支援する教育に転換していくということ,あるいは課題を与えられる教育から,生活に根差した課題をみずから発見して取り組む教育に転換していくということを外因しています。障害者の生涯学習政策がこうした学習の発展のビジョンを持っているということは重要なことだと思います。
 最後に,障害者の生涯学習支援システムについて,幾つかの論点に触れようと思います。まず地方公共団体レベルに,障害者の生涯学習及び文化芸術活動推進会議といったようなものを置くように働き掛けていくことが望ましいと思っております。御存じのとおり,先日,障害者による文化芸術活動の推進に関する法律というものが制定されました。この法律で定められているところと,障害者の生涯学習推進政策はとても近い関係にあると思っております。特に地方自治体レベルでは別々に進めていくべきものではないと考えています。
 そこで,障害者の生涯学習及び文化芸術活動推進会議というものを置いて,それを生涯学習計画とか,あるいは地域福祉計画,障害者福祉計画,そういったものにそれぞれ位置付けていくことが望ましいと考えています。そうすることによって,縦割り行政の弊害を少しでも克服するとともに,各自治体の状況に応じた独自の方策を展開することができるのではないかと思うからです。
 首都圏には多様な学習支援があります。地方によっては選択の余地がないようなところもあります。乏しい学習資源の中で,どのような担い手がどのように動くことが望ましいのかということは,地域によって異なるのではないかと思っています。様々な関連する学習支援を包摂しながら政策を遂行していくこと,これが大事なことだと考えています。学習機会の多様性を保障する仕組み,これを作るのが障害者の生涯学習推進政策の肝であると考えるからです。
 障害者の生涯学習を推進するに当たって,個々の生涯学習と学習支援との間を調整する働きを持つ支援者が,どうしても必要になってくると思っています。知的障害学生とか発達障害学生を支援する大学の仕組みの中に,メンター制度というものがあります。メンターという言葉を使うことがあります。お世話係の学生さんというイメージを持っていただけたらと思います。斜めの関係で障害者の学習をサポートする人のことで,職業生活のことで考えると,ジョブコーチに似たような存在だと思います。こういうメンター制度,メンターという存在をどういうふうに活性化していくか,あるいは制度を創設していくかということが,障害者の生涯学習を進めていくに当たっての支援者の養成というところでは,とても大事なことだと考えております。
 障害者の生涯学習政策でも,この学習支援者としての学習メンターをイメージした養成・配置をすることができればと思います。例えば社会教育士という資格というか,名称が,社会教育士の資格に絡んで検討されておるところでありますけれども,こういう資格を使ったりとか,あるいはアクセシビリティリーダーというものの養成が,特に西日本を中心とした大学で,少しずつ行われるようになってきています。こういった資格修得者を社会で活用していく方策として,学習メンターという名称なりを付して,公民館に配置するといった方策を考えていくことがよいのではないかと思っております。
 最後になりますが,大学において中等後教育の制度化も議論しておく必要があるのではないかと思っております。これはアメリカの大学と,私は韓国のナザレ大学というところと深く関わっておるのですけれども,正規の学生として知的障害のある人たちを大学に受け入れるという取組が,世界では広がっております。
 その点日本はとても後進的であると考えておるんですけれども,大学が主体となって知的障害のある学生のためのプログラムを作って,アメリカの場合はスクールボード,教育委員会と連携して,知的障害のある青年たちに大学教育の機会を提供する,そういったことも,一応議論しておく必要があると思っております。
 もちろんハードルは高いですし,制度の相当な連携が必要になってきますので,おいそれとは制度化は進んでいかないとは思っておりますけれども,障害者の生涯学習推進政策を展開する,あるいは移行教育ということを議論するのであれば,少しは議論のまないたに乗せておくことが必要ではないかと思っております。
 このアメリカの大学の場合は,thinkcollege.netというところで大量の情報が集約されておりまして,誰でも,日本からでもその情報を見ることができるようになっています。大変充実したプログラムの紹介がなされていますので,是非そういうものを参照しながら,今後10年先,20年先の障害者の生涯学習政策がどうなっていくかということも,考えていくとよいのではないかと思っております。
 このアメリカでは,先ほど申し上げました学習メンターも,そういうプログラムの中でとても活躍をしています。日本で公開講座やオープンキャンパスなどこういったものも,学習メンター的な役割を果たしている大学生たちが活躍しております。日本式の大学の関わり方としてもとてもすぐれた点があることは重々承知をしております。私自身も3年ほど,公開講座をやったことがあります。
 ただ,18歳人口の減少等で,大学教育の質的な変化も起こっていて,大学が本腰を入れて障害者の大学教育に取り組む潜在的なニーズも出てきているのではないか,今後将来的にはそういったニーズも,さらに拡大するのではないかということも念頭に置いて,大学における中等後教育の制度化ということを,とりあえず切り出させていただきたいと思います。
 短い時間にたくさんのことを盛り込み過ぎたかと思いますけれども,御清聴いただきましてありがとうございました。
 以上です。

【宮﨑座長】
 津田先生,ありがとうございました。
 続いて,菅野委員から御発表いただきたいと思います。菅野先生には第3回において,オープンカレッジ東京の取組について御説明をいただきましたが,「生涯学習支援に関する課題と提案」として,特に学習プログラムについての深掘りをした資料を作成していただいておりますので,御説明をお願いいたします。では,どうぞよろしくお願いいたします。

【菅野委員】
 それでは,今紹介いただきましたように,「生涯学習支援に関する課題と提案」というお話をさせていただきます。
 この審議会を通しまして,ヒアリングをたくさん聞きましたけれども,受けて文部科学省の方としては,視点1と視点2を挙げて,今までのヒアリングの内容をこのような資料にまとめてくださいました。
 ここで大切なのが,恐らくこの視点1,視点2,そして視点1,視点2に共通して,生涯を通じて必要な内容という,この視点なんだろうと思います。この3つの視点を成人期のライフステージに位置付けると,恐らくこういう形になるのかなと。視点1が特に学校から社会の移行期に必要な内容として,青年期から成人期へ,そして視点2が生涯学習の各ライフステージで必要な内容ということで,成人期の中でのライフステージに必要な内容がここに位置付いて,1,2に共通して生涯を通じて必要な内容というのが横軸にすっとあるのかなと考えます。
 私はここで前回お話をいたしましたけど,障害者の生涯学習支援における課題,生涯学習支援の方向性として,学齢期から生涯学習で目指すもの,学齢期からどうつなげていくかというところで一つお話をしていきました。前回提案した整理です。
 学習指導要領が新しく変わりまして,学習指導要領の方向性として,何を学ぶか,どのように学ぶか,そして何ができるようになるかという,学齢期の課題が出されております。これを成人期に当てはめた場合,成人期,何を学ぶかというのは,成人期の生活や学習方法を踏まえて,どのような内容を学ぶのかというのが一つ大きな課題になるでしょうし,成人期の生活・学習内容を踏まえて,どのような方法で学ぶのか,そして上ですけれども,成人期の知的障害者のQOLの高い生活は,どのようなことが困難なのか,どのような力を身に付ければよいのか,こういう視点で整理することができるだろう。何を学ぶか,どのように学ぶか,何ができるようになるかというのが,新しい学習指導要領と学齢期からの連続性だろうと考えます。
 具体的に提案しましたのが,何を学ぶかということに関しましては,生涯発達支援,地域生活支援の4領域というのを提案してきました。これは後でお話しします。
 どのように学ぶかということに関しましては,問題解決能力を身に付ける共同的な学習の方法というのをオープンカレッジで取り上げてきました。最終的に何ができるようになるかということで,自己決定,みずから適切に比較し,選択する,そういうものがこれから求められてくるんだろうというお話をいたしました。
 そこでの課題として,誰が提供するのか,どこで学べるのか,学習内容と方法の開発は誰がどこで行うのか,学習効果の評価は誰がどこで行うのかなという課題を挙げさせていただきまして,提案としてこのような図を提案いたしました。
 ただ,ヒアリングを受けまして,ここでまた新たな課題が出てまいりました。視点1,視点2を考えますと,まず1つ目は,成人期のライフステージですけれども,各ライフステージに必要な学習(内容)をどのように決めるのか,そして成人期のライフステージに応じて,その学習の進度を誰が,あるいはどこがどのように決めるのかという視点だろうと思います。その学習の進度をどう決めるのかということに関しましては,分かりやすい言葉でモデルと書きましたけれども,相当する考えはあるのか,習得,達成をどこが認めるのかという課題が附随して出てくるだろうという考え方です。
 上の方です。各ライフステージに必要な学習内容をどのように決めるのかということに関しましては,恐らく学習内容に偏りが起こらないような学習領域の設定が必要だろう。これは前回も提案しましたけれども,支援に際しましては連続性のある発達を基礎・基本に置いて考え,取り組む必要があるということで,領域をきちっと捉えた形で学習内容を配置することが必要なんだろうと考えました。
 これがICFと,それからアメリカ精神遅滞学会で第9版なんですけれども,知的障害が社会で制限なく活躍するための10の領域というのがありますが,そのICFの9の領域とアメリカ精神遅滞学会の10の領域を併せて整理して,この4領域ぐらいだったら,生涯にわたって地域で生活する上でも必要な学習内容の領域として位置付けることができるんじゃないかと提案してまいりました。生涯にわたるとこんなふうにそれぞれの量がそれぞれ位置付けられるだろうと思いますし,領域の偏りから考えると,学習の領域そのものは変わらないんですけれども,働くが成人期の中心になっておりまして,だんだんと働くが小さくなってという位置付けになるんだろうと。この4領域の具体的な定義,内容をこの4つの中に説明しておきました。
 文部科学省が提示してくださいました学習内容のイメージの例を,先ほどの4領域で領域分けしてみました。これが先ほどのイメージの例ですけれども,例えば視点1,特に学校から社会への移行期に必要な内容というのを領域分けしてみますと,学習領域での維持と伸長が中心で,生活の領域と作業・就労に関する領域も含まれていることが分かりました。
 それから,視点2の個人の生活に必要な知識・スキルに関して見ますと,このような色分けがされまして,自立生活領域が中心で,健康に関する学習領域もあるということが分かりました。前回までは健康は学習に入れておりましたので,一応学習というところに置いておきました。
 それから,視点2の社会生活に必要な知識・スキルを整理しますと,学習の開発と伸長が中心で,コミュニケーションと作業・就労領域があるということが分かりました。
 職業において必要な知識・スキルを整理しますと,やはり作業・就労領域が中心であるということが分かりました。
 視点1・2に共通して生涯を通じて必要な内容として,自立して生きる基盤となる力に関することに関して見ますと,コミュニケーションと作業・就労領域が中心で学習・余暇支援も関連するということが分かりました。
 最後に,人生を豊かにする上で必要なスポーツ,文化,教養に関することに関して見ますと,全てが学習・余暇に関連する領域であるということが分かりました。
 この4領域でまとめたものを全部整理しますと,このような形になりまして,まとめは先ほど言いましたとおり,視点1,視点2,視点1,視点2に共通してというまとめをここに掲げさせていただきました。
 具体的にこの4領域に先ほど挙がったものを全部整理しました。そうしますと,広く4領域にわたる内容であるということが分かりましたが,偏りがあるのかどうか,さらに量が適切かどうかに関しましては,これだけでは分からないということが当然分かりますね。各ライフステージからの検討が必要だろう。その成人期のライフステージごとに見ていかないと,どの領域が偏りがあるか,足りているか,足りていないかは分からないだろうということが分かりました。
 そこで,生涯発達支援の視点からの課題として,各ライフステージに必要な学習内容をどう決めるか,履修モデルに相当する考えを持つかという一つの課題に関しまして,何らかの解決方法を考えたいと思いました。
 これは2007年,もう10年も過ぎていますけれども,成人期の方々の実態と課題というものを調べさせていただいたときに,就労,日常生活,不調・不適応,社会的なトラブルが,各年齢段階でそれぞれ散らばった形で課題があるということが分かりまして,それを整理しますと,10代後半は,社会に出ることと,心理的にも成人期への移行期であることから生じる不適応の問題が起こっている,ここが移行期の課題だと思います。20代になると,就労に関する問題,社会的トラブルに関する問題が生じ,20代後半から30代に掛けては徐々に安定していくけれども,40代になりますと,徐々に加齢に伴う行動の問題,体力の問題が現れ,その後,50代になると,加齢が原因と考えられる日常生活に関する問題が生じ,60代になると再び,本人の体調の不調等の問題が多くなることをまとめとして整理してきました。
 それを考えますと,成人期の年齢段階別の課題への取組として,10代は体調の安定に努め,心身の健康への取組として様々な学習による維持・開発・伸長が必要になるだろう。10代の後半から20代に掛けては,就労に向けた学習と社会生活に向けての学習の伸長が課題として挙げられてくるだろう。20代というのは非常にいろんな動きがあるんですけど,30代に掛けて,自立した将来の生活の場の決定を想定しながら,コミュニケーション,余暇,就労に関する学習の開発・伸長が求められるだろう。40前後ですけれども,能力の変化が出てくるので,日常生活能力の維持と,老後の生活に向けた新たな日常生活指導の取組。そして50歳前後にまたがって,不調の予防(体調の安定に向けた心身の健康への取組),これが多分成人期の発達課題の一つの捉え方だろうと整理することができます。
 それを受けまして,年齢段階別の学習支援の考え方,生涯にわたる各ライフステージにおいて必要となる学習を見出すためにということで,一つの提案を考えました。
 丸1から丸5のプログラムです。日本語英語でなかなか通じるものではありませんけれども,丸1が移行プログラム。大体18歳から22歳ぐらいまで,卒後の社会生活・職業生活への移行期に当たる時期のプログラム。
 20代から30に掛けて,young adulthoodと書いておきましたけれども,移行後,成人期の初めに当たる継続的な学びの入門プログラムという時期として考えたらどうだろうか。
 次がmiddle adulthoodプログラムで,30代から40代の中ぐらいまで,働くことが生活の中心となり,地域での暮らしも安定した時期のプログラム。
 senior adulthoodプログラムで,40代の中ぐらいから50代の中ぐらいまで,加齢に伴う変化が生じ始める時期で,高齢期を見据えた時期のプログラムを考える必要があるのか。
 最後がold adulthoodプログラムで50代以降。働くことが中心の生活から,暮らす,学ぶ・楽しむことを中心に据えた時期のプログラムというような,幾つかの段階に分けて考えたらどうだろうかという提案です。
 その中で必要となるプログラムとして,各ライフステージに必要な学習(内容)をどのように決めるか。履修モデルに相当する考えを持つかということで,一つの考え方です。青年期の移行プログラムがあって,先ほど言いました丸2,丸3,丸4,丸5というyoung adulthoodからold adulthoodプログラムまでがありまして,自己決定に向けてというのはあえて横にずらしまして,専修プログラムという形で提案いたします。
 なぜかというと,これは新しい学習指導要領にある育成を目指す資質・能力の三つの柱という考え方がありまして,何を理解しているか,何ができるかというところが,この移行プログラムに当たるのかなと考えました。
 理解していること,できることをどう使うか,いわゆる思考力・判断力・表現力,能力の部分に関しましては能力を上げていくという捉え方,そして学びに向かう力,人間性など,どのように社会,世界と関わり,よりよい人生を送るかということで,全ての方々がこのプログラムを選ぶということではないんですけれども,普通は左側の赤の矢印のプログラムですが,中ではこの専修プログラムを選択してもいいということ,自己決定に向けてという横位置のプログラムの提案を考えました。全体像はこれです。
 最後に,どのように学ぶかということに関しまして,これは前回も提案してまいりましたけれども,障害のある方々の学習の方法に関しましては,やはり主体的・対話的で深い学び,アクティブ・ラーニングの視点がどうしても大事になるだろうということで,私たちオープンカレッジ東京で行ってきました,講義があって,スタッフによる講義の解説があって,本人たちによる演習,そこには様々な支援者が必要,演習に伴って演習の結果を発表するという,この繰り返しが恐らく,どのように学ぶかでは効果的なんではないだろうかと考えました。提案です。
 まとめに代えてということで,新たな課題としてこの2つを挙げさせていただきました。この各ライフステージに必要な学習(内容)をどのように決めるかということに関しましては,さらに履修モデルに相当する考えを持つかということに関しましては,プログラムを準備しておけば,それを選んでいくということで解決できるんではないか。
 学習の進度を誰がどのように決めるかということに関しまして,これは話し合いの中でも出てきたと思いますけれども,今の考え方だと一番近道は,個別の教育支援計画に基づいた履修――履修という言葉がいいかどうか分かりませんけれども。ただ,そのためには個別の教育支援計画作成期間の延長というのをどうしても考えなくちゃいけないだろう。習得,達成を誰が認めるかということに関しましては,学習プログラムを実施した主体が認めるという形でいいんではないだろうか。
 そうしますと,中身は書いておりませんけれども,これから研究しなくちゃいけない内容だと思いますが,先ほどの丸1から丸5のプログラムがあって,それをどこが実施するかということで,学習プログラム実施の主体というところがそれぞれ認めていくということで,進度を進めていくということで必要なんじゃないだろうかと考えました。最終的にはこの部分を今後いかに取り組んで作っていくかというところが大きな課題になるんではないかということで提案をいたします。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。お二方から御提案を頂いたわけですが,津田委員,菅野委員の御説明について,御質問,御意見がある方,多いと思いますが,新しい提案も含めて頂きましたので,ここで少し時間をとって質疑応答をしたいと思います。25分程度あるかと思います。どうぞどなたからでもお願いします。箕輪委員,どうぞ。

【箕輪委員】
 箕輪です。よろしくお願いいたします。最初にお話しいただいた津田先生のところで2つ質問があるんですけれども,資料の5ページ,スライドの5番,よる・あーちのところで,「障害支援」というキーワードから「学習」とか「食堂」という,何をするか分かりやすいキーワードが入ったら増えたと。
 とても私たちもそのとおりだなと思うので,よく障害者がいるんですけど働けますかとかいう,全然分からない状態で問い合わせが入ってきたりするので,そのときにやっぱりこういう,何ができて何をしたいのか聞き返すことがあるので,このあたりは障害者のと言われると,すごくイメージが作りにくいなと思ったんです。
 すみません,質問なんですが,ここに市民と学生が急増したと書いてあるんですけれども,この中に,例えば会社員,夕方の時間,夜の時間ということなので,どこの企業もそうなんですが,今,働き方改革をしていて,今まで例えば7時,8時まで残業していた人が,定時で5時過ぎに帰ります。ただそのまま帰るには何かやることが余りないかなと,過ごし方に課題を感じている人たちも多いと聞いていて,昨日もちょっと市役所の方と話をしていたんですが,その時間に地域貢献できる場を,公共的な場から,こういうのがありますけど参加しませんかと言っていただくと,その早く帰るようになった人たちのいい状態での居場所というのができてくるということがあったので,市の方のお話なんですが,日中のボランティアとかこういった支援というのは,非常に集まりやすい。
 昼間なら活動できるという方が多いんですけど,夜になるとやっぱりいろんな危険性があったりだとか,家のことをしなければいけないとか,そういったことがあって,なかなか集まらないので,社会人で,そもそもその時間は何か仕事をしていたけれども,やることがなくなったので手伝いますという人がいたらとてもありがたいというお話をちょうど昨日伺ったので,もし市民の中にそういうシフトをしてきた方たちがいらっしゃるのか,今後そういったところを期待しているのか,そういった場合はどういう仕組みでやっていくかというのが,この視点2で言うところの量的な拡充ですよね。
 やっぱり個人でというよりは,組織で人を確保していった方がいいかな,そういうやり方もあるかなと思ったときに,若者であればもしかしたら大学との提携で,大人で夕方から夜に向けての活動であれば企業等との提携とか,そういった形の何かお考えがあれば,お聞きしたいなと思います。
 もう一点について,これは質問なんですが,10ページ目,10枚目のスライドのところに出てきました,メンターの養成の資格の中で,すみません,私はアクセシビリティリーダーというのがどういったことをするか分からないのですが,今,重い障害のある大学生の方と採用のところで接している中で,学生時代4年間プラス2年,2年の間ずっと,仲間の学生さんに支援をされてきたために,自分でやることが全然成し遂げられないというか,代わりに書いてもらう,代わりに読んでもらう,移動を手伝ってもらっていたので,本来ならば,例えば特別支援学校であれば作業療法士さんが,自分でできるようにということをたくさん考えていただいたりとか,ITの活用とか,すごく一生懸命してくれるので,自分でできることがどんどん増えていくんですけれども,私たちが接している数名の大学生なんですが,人に全部やってもらってしまったので,本来ならば自分でできそうなことも人任せになってしまうということがあったので,このあたりの社会教育士さんとかアクセシビリティリーダーさんがどういう関わり方をするかで,この方が大学を離れたときとか,人としての支援者がたくさんあふれる中から,一般のところとか普通に地域に出たときに,何か二次的な,本当はできたはずなのにできないことがなくなることをちょっと防ぎたいなと,今考えているところなので,そのあたりをちょっとお伺いできればなと思っています。
 以上です。

【宮﨑座長】
 それでは,お願いします。

【津田委員】
 1点目なんですけれども,社会人の方たちの参加はないことはないんですけれども,組織的にということは,やったことがないことはないんですが,何日間という限定で来られるようなことはあります。余り継続的に来られるというケースはこれまでありませんでした。障害のある人たちの社会人ということも,今御質問に含まれていましたか。

【箕輪委員】
 特に障害の有無変わりなく,会社員が残業していたはずの時間をこういった活動に充てられるのではないかと。

【津田委員】
 そうですね。今後そういうことができていくといいなと思います。障害のある人たちに関して言うと,一般就労して,いわゆるアフター5に時間をもてあましてしまうとか,家に帰ってテレビ見て,飯食って寝るぐらいしかやることがないので,そこの部分がうまく,生活が充実してこないという話はとてもたくさんあって,その人たちのために何か場を設けなくちゃいけないというのは,全国で活動があります。
 神戸の場合,とてもそれが長く続いていて,活性化しています。毎週金曜日になるとものすごくたくさんの一般の人たちと障害のある人たちが1か所に集まって,思い思いのことをするんです。こういう場があって,実はあーちに出入りしている成人の人たちにも,たまにそっちに行ったりこっちに来たりという活動をしている人がいたりするんです。
 その労働と余暇との関係で,就労している障害のある成人の人たちは,余りこういう労働と余暇ってすぱっと区切ってしまうということではなくて,その労働と余暇を一体的に考えていって,何が必要かということを見るのは大事なことかなと思っています。ちょっと質問とそれましたけれども,これが1点。
 2つ目がアクセシビリティリーダーの話ですが,障害学生支援というのは,ともかく学生を雇用するお金を付けて,ちょっとしたレクチャーとか説明で,すぐに例えばノートテーキングしてくださいとか,こうなってきた部分があります。
 そういう形だと,おっしゃったようにやっぱりやり過ぎてしまう。とても優しい学生さんたちがそういうところに関わってくれるので,どうしてもやり過ぎてしまう,頼まれたことは全部やっちゃうということがあるので,その部分をもうちょっとちゃんと勉強して,支援者としては何をして何をしてはいけないかということもちゃんと理解していこうということも含めて,アクセシビリティリーダーという資格を,これは広島大学だったと思いますが,中心で始められています。
 ほかの大学もそこに乗っかって,研修会をやったりとか,授業を受けたりとか,合宿をやったりとかして,学びを進めていくんです。だから趣旨は障害のある人たちの社会参加をサポートする人たちの養成ということですので,学生のときにはそれが資格としてあるんだけれども,卒業してしまった後,社会人になったときに,それは履歴書には書けるんでしょうけれども,特にそれで活躍する場面というのは,今のところはそんなにないのではないかと思うんです。そういう人たちをこの政策の中に取り込んでいくというのは,一貫性,連続性もあっていいのではないかという発言です。

【宮﨑座長】
 よろしいですか。ほかにありますでしょうか。どうぞ,田中委員。

【田中(秀)委員】
 津田先生にお願いしたいんですけれども,この写真で作品とかいろんな準備物とか,たくさん必要だと思うんです。神戸市の公共的な建物だろうと思うんですけれども,そこは専属スペースというのは提供されているんですか。
 もう一つ,それを担当するスタッフというんですか,ここに書かれている先生の社会教育士的な方がおられるのかどうか,そういうのを2点,お願いします。

【津田委員】
 ありがとうございます。あーちのことについての説明,とてもうれしいのですけれども,ここは今移転したんですが,もともとは神戸市灘区役所が移転した関係で空きスペースができたと。そこをうまく使ってくださいということで大学に打診があって,じゃ,おもしろいことをやったろうといって始めたものなんです。ですから完全に専有しています。
 もう一つ職員の話ですけれども,職員は非常勤の職員,30時間雇用の職員を2人雇用しています。大学が精いっぱい出せる人というところで,その人たちが基本的には日中はいるんですけれども,問題は夜なんです。夜は彼ら,彼女らは帰ってしまうので,僕とか学生がその施設を管理するという形で何とかつないでいる,そういう機関です。

【宮﨑座長】
 ほかにありませんでしょうか。どうぞ,戸田委員,お願いします。

【戸田委員】
 戸田です。津田先生にお伺いしたいんですが,冒頭おっしゃっていた,何を成果とするか,アウトカム設計は重要だ,みたいなことに触れられていて,それはもう僕もとても重要だと思っているんですけれども,今回指導要領もそうなんですが,どう学ぶとか,何を学ぶのか,そういうので,僕はイメージが湧かない。私は起業家なので,なぜ学ぶとかというところが一番重要なんじゃないかなと思って,いつも物事を捉えているんです。だから,その“なぜ?”が自分で腹落ちできていないのに,どう学ぶかとか何もないだろうと思っているんです。だからこの指導要領の方向性もちょっと違和感があるんです。
 先生がおっしゃった自立的な学びとか,本人が何をしたいかという視点が結構フォーカスされていると思うんですが,それを導くためのアプローチといいますか,メンターという言葉を使われていて,実はビジネスの業界でもメンターという存在がいて,まさに僕もスタートアップに対してはメンターとして寄り添って指導したりするんですけれども,そのときもやはり,君はどうなりたいのか?とか,どういう方向性のサービスを作っていきたいのか?ということを,結構壁打ちするんです。なので,これを先生の取組ではどういうふうにやられているかとか,その辺についての方法とか,あとはお考えを聞かせていただきたいと思います。

【津田委員】
 このあーちでの取組というところで言うと,ともかく楽しいことをやっていくというところが一番ポイントです。ですから遊びが中核にあるというのはそういう意味があるんです。楽しいと,やりたいことがどんどんやっぱり出てくるわけですと。ほかの人たちが楽しいことをやっていたら,自分もそれをやってみたいとか,やっていることをもう少し発展させていきたいとか,そういったことが出てくるので,やっぱり楽しいという能動性が核心部分ではないかと思っています。
 ちょっと御質問とはそれますけれども,いわゆる先ほどお話をしたセルフ・アドボカシーというものがありまして,これは知的障害のある人たちの自立生活に向けた学びをしていくわけなんですけれども,例えばお金の計算ができない人たちに,じゃ,お金の計算の勉強をしようかと言っても,やっぱりなかなかモチベーションが上がらないんです。その場ではやったつもりになっているけれども,全然それが生活に生かされていかない。
 神戸に行ったとき,僕は初めて何か働き掛けをしようと思って,親の会と一緒に本人の会の立ち上げに関わって,それからずっと支援をしてきているんですけれども,彼らが自立的生活に近付いたかどうかよく分かりませんけれども,具体的な生活の行為の中で学んでいくということが,僕の関わっている人たちは大体押しなべて,正しい学習,成果のある学習になっていくと考えています。
 みんな阪神の試合に行きたいんです。でもどうやって,誰と行くか,どうやって待ち合わせるかということが,なかなか決まらないんです。それを決めるだけでも1日,2日要する,そういう人たちが,僕らが黙ってどういうふうに話が進んでいって,ちゃんと阪神の試合に行けるかということを見守るわけです。そういう中で彼らは学んでいくわけです。時間の感覚もそうですし,その使い方とか,お金の使い方とか,人との約束とか,そういうことをサポートすることが大事なのではないかと思っています。

【戸田委員】
 分かりました。

【宮﨑座長】
 ほかにどうでしょうか。今の津田委員の本人中心の学習についての考え方と,それから菅野委員が自己決定に向けた専修プログラムという形で整理をしようと。基本的なところは今回の学習支援の課題として出して,前回にさらに加えて問題提起をされているんですが,このあたりについて何か皆さんが。どうぞ,お願いします。

【綿貫委員】
 すみません,綿貫です。今までの既存の支援とかもそうなんですが,やはり支援者側とかがそういう何らかの意図を持って用意したプログラムとかに,単に乗っかっていくという形は避けたいなと思います。
 それは,例えば行動支援とか何かをするときに,手順表とかを提示したりすると思いますが,その手順を,支援を受ける側は見て行動しますけれども,そのとおりに行動させることが社会的には適応かもしれないけれども,やはり本人の行動をコントロールしていることになるという従来の支援の図式を,この事業でも取り入れ過ぎてしまう。自立性とか生涯学習という部分では,やはりそこがないようにしていけたらいいんじゃないかなと思うので,その部分が津田先生がおっしゃっている自己選択というか,自分で学習を選んでいくことを作っていけたらというところだと思いますし,菅野先生の方の資料の47スライド目の発表,受講生の活動と発表というところに,私はちょっと興味を持ったんですけれども,こういったプロセス,講義を受けたりとか,そのプログラムも,単に提示されるわけではなくて,やはり自分が興味を持ったこととかを,主体性を持って学習を深めていけるというところは,どんな周辺のプログラムになっていったとしても肝になるところかなと思います。

【宮﨑座長】
 それでは,松矢委員。

【松矢副座長】
 松矢でございます。今,津田委員と菅野委員はかなり重なるところがあって,津田委員の方は,どんな形で組織化していくかというところも,障害者の生涯学習及び文化芸術活動推進会議と言うけど,これは言ってみれば,今神戸で先生がやっているように,やっぱり作っていかなきゃならないですよね。上から落としてもできないので,そうですよね。そういうものをやっぱり作りながら,こういうものが教育委員会,その中でも社会教育課とか生涯学習課が核になって取り組むというふうになっていくといいなと思うんです。
 恐らく菅野委員の場合も,今,オープンカレッジ東京ということで,大学連合でやっているわけですけれども,基本的にそういうものをどう組織化していくかというのは,課題としてあるんだろうと思っています。いずれにせよ,菅野委員の場合には,学習指導要領で一応何を学ぶかで出ている。だけど,基本的に今綿貫委員が言ったように,ここではやっぱり本人が主体的に話し合って課題を発見し,理解していくという,これは津田委員も同じだと思うんです。
 どちらかというと私もやっていますので,一応分かるのはグループワーク方式なんです。リーダーは我々がやるんですけど,みんな意見を出してくると分かってきて,意外な発見をしていく。私たちは働く人の何々学,働く人の栄養学とか心理学とかやるんですけど,何が一番おもしろいですかと言うと,その年度では心理学がおもしろかったと。
 そこでは何が出ていたかというと,深い学びだったと思うんですが,人はだまされやすいと。要するに大学で必ず心理学を学ぶのは,人間の教養を身に付けるときに,人間って独特のやっぱり人間らしい心理を持っていて,その一つはうそに非常に弱いということです。そういう人間存在である。社会心理学の,うそはどんどん広がっていくというのを講義で先生が出してくれて,何がおもしろかったかというのは,だまされていいというのが分かりましたと。だまされていいんですね,ほっとしましたと言うんです。
 というのは,だまされてはいけないということを結構学校では言われるわけです。いわゆる悪徳商法ですよね。キャッチセールスにひっかからないようにと。きれいな方がいてコーヒー飲みましょうとか,あるいはハンサムな方が来てコーヒー飲みましょうといったときに,ひっかかっちゃいけませんよと,そういう話題で注意しなきゃというのをみんなやっているんです。それに対して,ああ,だまされてもいいんだというのは,人間ってみんなそういうだまされやすい動物なんだということが分かることがないと,だまされてはいけないんだということが分からないんです。
 だから大切なことは,そういう学びの深さということだと思うんです。だからやっぱりそういうカリキュラムが必要なんです。そういう砕き方,ここではメンターと言うんですか,そういう生涯学習の導き手というのが必要。それといろんな市民も入ってくるし,障害の有無に関わらない間柄で学び合うということです。その辺のところは非常にはっきりしてきていると思うんです。基本的にはどういうふうにそれを作っていくかという3番目の課題になっていくんじゃないかなと思うので,今日は非常にいい提言が2人の委員から出ているというのが感想であります。

【宮﨑座長】
 後の論点ごとの意見の整理の中で,お二方の提起についてもまた加えながら,検討していけると思います。時間的な都合もありますので,お二方の提案,意見に対しての意見交換をこれで終わりたいと思います。
 続きまして,資料3の主な論点ごとの意見の整理について,事務局から説明をお願いいたします。

【高見障害者学習支援推進室長】
 それでは,資料3-2を御覧いただきたいんですが,委員の皆様のお手元には見え消し版と溶け込み版とお配りさせていただいておりますが,見え消しの方を御覧いただければと思います。
 3ページをお開きください。前回の会議におきまして,皆様から多くの御意見を頂戴いたしました。それを踏まえて,こちらの主な意見の整理の内容をブラッシュアップしております。中でも,全体の構成に関わる御意見といたしまして,学校教育から生涯学習への円滑な接続の必要性,それから障害福祉サービスと連携協力した生涯学習を広げていくことへの期待,それから個別の教育支援計画の引き継ぎですとか,サービス等利用計画の作成,それらを生涯学習の実施に円滑につなげていくこと,また本日の御意見の中にもございましたが,本人が主体的に関わる学習の重要性といったことを頂きましたので,こういった御意見を踏まえまして,3ページにあるような形で,本会議における検討の大きな方向性を加筆しております。
 1つ目の丸ですけれども,学校卒業後の障害者の学びが継続できるように,障害者の生涯にわたる学びを一貫して支援していくことが重要であるということを示しまして,2つ目の丸では,特別支援学校等における学びと生涯にわたる学びを継続させることが重要であり,例えば,個別の教育支援計画を卒業後に引き継ぎ・活用を図る等の方法で,学校教育から継続して生涯学習に移行できるような仕組みの在り方について検討する必要があるということについて記載をしております。
 また,3つ目の丸では,学校卒業後の障害者が,障害福祉サービスを利用しながら社会生活を送る者が多いという状況を踏まえまして,生涯にわたる学びと障害福祉サービスが相互に連携した仕組みを構築することについて,検討する必要があるとしています。
 4つ目の丸では,学習の企画の段階から実施に当たりまして,障害者本人が社会の一員としてみずからの学びを作っていけるようにすることが重要であり,本人を中心とした学びの機会としていく必要があるとしております。
 最後の丸では,障害者を対象とした学びの機会と,障害のない者とともに学ぶ機会の双方を追求していくことが必要であるといたしまして,米書きに書きましたとおり,本会議における検討におきましては,視点1,視点2として学習を区分しておりますけれども,これらの段階も連続的に推移できるようにしていく必要性について触れております。こうした内容を大きな方向性として示した上で,この後の具体論に入る形としております。
 それでは,ページをおめくりいただきまして,6ページを御覧ください。こちらには,学校段階における生涯学習への意欲の向上を図る取組といたしまして,在学中から生徒に対し,地域の社会教育施設等における学習機会に関する情報提供を行うこと等の方法の例示を追記しております。
 7ページ,上から2つ目の丸ですけれども,新学習指導要領の趣旨等も踏まえと書いておりましたが,ここまで書きますと生涯学習の文脈で多少強過ぎる表現でしたので削除をしております。
 また,その下のプログラム策定に当たって留意すべき観点の最後ですけれども,学習プログラムを固定のものとして示すのではなくて,障害者の発達段階や障害特性等を踏まえて対応する必要性について追記をしております。
 一番下の丸ですけれども,個別の教育支援計画の引き継ぎ,卒業後のサービス等利用計画の作成等の障害福祉サービスの利用の流れ等に関する在学中からの情報提供等について,記載をしております。
 9ページを御覧ください。こちらにつきましては,実施体制の人材の部分でございますけれども,特別支援学校の教員経験者が生涯学習への円滑な接続を図る役割を担うことへの期待,それから移行期における学びの基盤整備は社会全体で受け止めまして,ともに学ぶ取組を推進していくことについて記載をしております。
 次に少し飛びますが,13ページを御覧ください。こちらは視点2の方の学習プログラムに関する部分でございます。ここの真ん中のあたりですけれども,ライフステージの捉え方につきましても多く御意見がございました。青年期・成人期・高齢期,こういった区分は基本としつつ,個人の発達,障害特性を考慮した捉え方について検討が必要であるとしています。
 飛ばしまして,15ページを御覧ください。こちらも真ん中のあたりですが,丸2の特別支援学校を場として,同窓会組織等が主催して学びの場を提供するというものの部分ですけれども,同窓会組織の担い手といたしまして,障害当事者が含まれるということを明確化するために,生徒OBと加筆をしております。
 そして17ページを御覧ください。ここでは生涯の各ライフステージにおける学びの実施に当たって,コーディネーターや指導者の配置に関する工夫についてまとめた部分ですが,前回の御意見を踏まえまして,民間団体の助成による人材育成の促進,それから外部講師による学習講座提供への支援について追記をいたしました。
 次に,20ページを御覧ください。こちらは一般的な学習活動への障害者の参加の推進方策ですけれども,1つ目の丸では,障害の有無に関係なく学べる「学びのユニバーサルデザイン」を目指すこと,2つ目の丸では,支援者側の配慮も必要ですが,それと同時に,当事者も能動的に自己選択,自己決定ができるように,在学中から丁寧に指導していく必要性について追記をいたしました。
 3つ目の丸でございますが,こちらは自治体の裁量で事業の在り方を決定するといった事情がございますので,記述を削除してございます。
 21ページですが,こちらは障害の有無に関わらず,ともに学べるようにするための取組に関するアイデアを,前回の会議においてたくさん頂きましたので,まとめて追記をさせていただいております。
 最後に22ページを御覧ください。2つ目の丸でございますが,学習機会を全国に量的に整備していく必要があるということを踏まえますと,持続可能な仕組みとしていく観点から,企業との連携を有効活用していくこと,また企業側のメリットと考えられる点につきましても追記をしております。
 3つ目の丸では,同じく持続可能な仕組みとするための工夫といたしまして,参加費を徴収することについても検討が必要であるとしております。
 下から2つ目の丸ですが,生涯学習の統括的な拠点といたしまして,自立支援協議会の活用を促進することについて検討する必要を記載しております。
 そして最後の丸ですが,全国の地方公共団体や民間団体のすぐれた取組について情報共有し,団体同士のネットワーク形成を図るための機会を国が設けることについて,検討する必要性について追記をいたしました。
 以上,主な論点ごとの意見の整理の修正箇所について御説明をいたしましたが,本日は先ほどの津田委員,菅野委員からの御発表内容も踏まえていただきながら,本意見の整理についてさらに御意見を頂戴したいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。実は本会議における検討については,8月に一旦これまでの議論と,それから論点整理としてまとめをしたいと思っております。そのことを踏まえて是非,今日は建設的な御意見を頂戴したいんですが,資料3-1の議論すべきポイントも参照していただきながら,それぞれの論点に関しての御意見をお願いしたいと思います。
 前回,かなり協議をしていただいた中身,それから今日の津田委員,菅野委員の御意見などの骨子はかなり入っているのかなとは思いますが,今回この検討の必要性に加えて,2の今後の目指すべき方向性が入っているわけです。このあたりも併せて,是非御議論を頂戴できればと思います。
 残された時間が50分ぐらいですので,多くの皆さんに御発言いただきたいと思いますので,お一人3分程度ぐらいで1回目についてはお願いします。山田委員,お願いします。

【山田委員】
 いよいよ中間まとめの段階になってまいりましたが,この出来上がった報告書は,障害者の方にも理解され,納得できるものにしなければならないと思っております。大変僭越ですが,自分なりにもう一度大きな構図の整理を考えてみました。参考になるかどうか分かりませんが。
 まず1つ目は,対象となる障害者の方はどんな方なのか。例えば小さい子供の頃から障害のある方,途中で障害を負った方,また,特別支援学校を卒業する方,一般校を卒業する方,そして大人の中途障害の方,こういう対象となる障害者がどんな方なのかということの整理が第1点目。それから2つ目は,何のための学習なのかという点です。3つ目は,学ぶことに対して何が障壁(ネック)となっているのか,ネックとなるものを解消するには何が必要なのか,という点です。4つ目は,どんな学習があるのか。5つ目は,何を期待するのか。
このような全体的な流れを構造の中で整理していったらいいのではないかなと思います。
 現在出されているこの素案の中には,大方これらが網羅されていると思いますが,まだ不十分な点もあるのではないかと思います。もう少し分かりやすく整理した方がいいところもあると思います。皆様にはその辺も考えていただけたらと思います。
 私としましては,特に何がネックとなっているのかというところをもう少し書いたらいいのかなということと,最後の,何を期待するのか,報告書によってどのようなことを期待するのかというあたりを,もう少し補強した方がいいかなと思います。今日もいろんな発表がありましたので,その辺も含めてもう一度自分なりにも考えてみたいと思いますが,そういった流れで全体を考えたらいいのかなと思います。

【宮﨑座長】
 ありがとうございます。ほかにどうぞ。田中委員,お願いします。

【田中(正)委員】
 育成会の田中です。私もちょっと欠席が続いておりましたので,前半にも発言をしようと思いましたが,ここで重ねてお話をさせていただければと思います。
 先ほどのお二人のお話や,今まとめたこの文章で,全体を俯瞰して非常に分かりやすくなってきたと思っています。全体の情報を個別の対応に置き換えていくということで,まとめの文章で7ページ,求められる学習プログラムのところで,「当事者のニーズや特性も踏まえ策定する」と2番目の白丸にありますけれども,それを受けて,個別の教育支援計画,さらにサービス等利用計画につなげていくというくだりがあって,これに関しては先ほどのお二人の発表も同じような視点で取り組まれていくということでしたが,課題の設定が,菅野先生の方がちょっと年齢ステージが強調され過ぎていて,そこに個別差が加わるとすると,イメージとしては年代ごとに区切るということは必要かと思うんですけれども,余りそれが強調され過ぎると,年齢の方が先行しまうかなということもあって。それは感想なんですけど。
 ここでお伝えしたいのは,核となる計画を学齢期である教育支援計画の中で,特に今,福祉サービスでは放課後等デイサービスが非常に広がっておりますので,そこで煮詰める作業がないと,その後を受けていくサービス等利用計画にはなかなか反映されにくいですし,先ほどの年齢で区切ってということで言えば,高齢期に差し掛かるところでは,障害のある方は,個別差がありますけれども,年の割には早く老化するという課題もありますので,高齢者のケアマネとの接合も必要になってきますので,そうするとますます学齢期のところでコアな情報を作っておかないと,ケアマネの方で新たに視点を見出すということはほとんど難しいと思われますので,この接合に関してはその強弱が少し分かるような文章化をしていただけるとありがたいなと。特に私自身が持っているわけではないので,事務局に委ねたいところなんですけれども,お願いできればと思っています。
 もう一つは,基盤の整備,22ページから23ページのところで,津田委員の方から最後の資料で出していだたいた文化芸術活動の推進会議です。文化芸術推進法が成立しましたので,間もなく国の方でも基盤を整備するための会議が行われて,各自治体,都道府県,市町村でも順次行われていくことになりますので,ちょっと先取りする形になるかと思いますけれども,基盤の整備のところに,この法律ができたことで期待される効果が盛り込まれるとありがたいなと思っております。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。ほかにどうですか。田中委員,お願いします。

【田中(良)委員】
 愛知の田中です。先ほどの津田委員,それから菅野委員のことにも関わるのですが,全く同感ですけれども,担い手というか,支援者といいますか,その問題に関わって,例えば9ページに,新たに赤字で「特別支援学校の教員経験者は」とあって,非常に貴重な人材だと私は思います。
 昨日も実は愛知県教育委員会の市町村特別支援教育推進者資質向上研修で,特別支援教育の生涯学習化ということを話してきたのですが,学校教員は,かつて松野文部科学大臣が最初におっしゃった,特別支援教育の生涯学習化とか学校教育から生涯学習化へということは,とりあえず目の前のことに皆さん追われているので,先の課題だろう,自分らに関係ないだろうというのが,大方の捉え方でなないかと思います。
 しかし,学習指導要領も在学中にそれにどうつなげていくかということを言っています。特に特別支援学校をはじめ学校教員の人たちにここをどう伝えていくか,これは初等中等教育局の特別支援教育課の役割に期待するところですが,私はそこをすごく大事に取り組んでいく必要があると思っています。
 と同時に,9ページに関わって,学校の教師は,やっぱり教えるということを中心にずっと長年経験を積み重ねてきます。ところが卒業して大人になる。だから180度と言ったらちょっと大げさかもしれませんが,教え子との関わり方をくるっと変えないといけないんです。それがなかなかできないです。
 施設の方は意外と早くからそういう対応ができている。つまり連続した関わりはないから,学校教育を終えた人たちを誰々さんと呼んで,先生という言い方はしていません。青年期以降の学校卒業生に対する関わりが,貴重だからといってそのままだったら,先ほど津田委員も言われたような,本人主体で自立した学習,学びに取り組んでいくことが難しい。そういう意味で,教員経験者も,教育経験を大切にしながらも,発想の転換や関わり方についての支援が必要だと思っています。
 それと,直接このことに関わらないんですが,生涯学習には多様な場での多様なプログラムあっていいと思います。例えば菅野委員が提起された4領域を長年やって見えたことには敬意を表するんですが,私自身はもっとシンプルに捉えています。学ぶ,働く,暮らす,この3つです。菅野委員の関わるというコミュニケーション,これは全てに関わる機能的な面なんです。あとは領域,場面なんです。だから領域と機能が一緒になっていると私は思っていますので,今言ったような3つで組み立てています。
 また,私自身はキャリア教育ということもそういうふうに捉えています。キャリア教育について教育現場では,就労させること,就職支援としか捉えられていないように思います。
 僕はそう思いません。キャリア教育とはあくまでも働くことを大切にしながらも学ぶこと。だから初めから生涯学ぶという,この生涯学習の視点を入れて言って来ています。これは私の意見ですけが,また御検討いただければと思います。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ほかにどうですか。松田委員,お願いします。

【松田委員】
 よろしくお願いします。今ほどの御発言とも重なるところがあるのですが,前回,特別支援学校の先生方というのは非常に重要な人材だという発言もさせていただいたところでございましたが,例えば特別支援学校の前のところにもあったんですけど,15ページの2.に,特別支援学校を場とした取組の中で,「教員が関与する場合,勤務形態を含めた教員の働き方改革への配慮が必要」である,こういった記載もございますので,これに対応したような部分で,9ページにも何らかのそういったただし書き的なものが入るとよいのかなとは感じたところでございました。
 また,別の視点からの意見でございますが,先ほどの津田委員のお話にもございましたけれども,やはり地方公共団体の行政の関わりというのは,一つ重要になってくるのかなと考えておりまして,私ども千葉県でも今年度新たに,障害者の方の生涯を通じた学びを目的とする協議会といったようなものを立ち上げる予定でございます。やはりある程度そういった部分も書き込んでおく必要はあるのかなと考えたところでございました。
 またちょっと違う視点からの話になるのですが,先ほどの津田委員の御発言の中にも入っていたんですが,例えば子ども食堂であるとかそういった部分が付いたことによって,急に参加者が増加したというお話がありました。以前にもお話ししたことがあったんですが,言葉は余りよくない言葉なのかもしれないんですが,食わず嫌いと言ったら変なんですけれども,障害を持たれた方への関わりということをこれまでやってこなかった方々に対して,巻き込んでいく必要が恐らくあるんだろうと。そうしない限りは恐らく,どうしても生涯学習という切り口にはなっていかないんじゃないのかなと考えるところでございます。
 したがいまして,そういうラベルをくっつけてあげることで,何か参加しやすい雰囲気になるということは,大変すばらしいことだなと思いましたし,是非参考にしていきたいなと思う半面,ただ,いろいろ年齢に応じた,若しくは個に応じた教育内容,生涯学習の内容ということを意識すればするほど,どうしても今まで取り組んでいなかった人たち,例えば10ページを見ますと市区町村では,公共団体としてという意味なんでしょうけれども,実際取り組んでいるのはわずか12.5%,都道府県で54.3%。実際関わっている障害者の人数と考えたときに,本当にごくごくわずかな人数でしかないのかなと考えております。
 したがいまして,こういった数をいかに増やしていくのかということが,我々教育行政に携わる者に求められているのかなとは感じるところではありますが,これまでのお話を聞いているとどうしてもハードルがどんどん高くなっている印象が,正直ございます。例えば一人一人の者に応じていろいろプログラムを作っていかなければいけないんだとなると,初めて始めるからこそ,そういう視点も必要なんだということは,もちろん重要なんだと考える一方で,まずは始めてみましょうよと考えられる,例えば公民館の方がこれを御覧になったときに,じゃ,ちょっとうちの公民館でもやってみようかなという気持ちになっていただける工夫が必要なのかなと考えます。
 具体的には,もちろんそのハードルを下げるというか,そういう部分もあるんですけれども,具体的なプログラムの中で,具体的に示しましょうということはこの中には書いてあるんですが,教育の世界ではいわゆる学習指導案というのがあるんですけれども,それに相当するようなものを,我々自身,千葉県も含めて作り上げて,それを共有していけるということ,これがハードルを下げていく,また一つの方法なのかなと考えるところでございます。
 すみません,まとまりませんが以上でございます。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。箕輪委員。

【箕輪委員】
 お配りいただいた資料をくまなく見ていないので,もしかしてもう入っているかもしれないんですが,先ほど戸田さんからも出たと思うんですが,こういう活動のプログラムを実施したことが成果にならないようにしていただく。もちろん実施すること自体が一つ始まりなんですけれども,この最初のまとめていただいた資料の3ページのところの白い丸,下の2つ目にあるように,なぜかというと,この障害のある方たちも成長し続ける,なので学ぶ機会をということが前提だと思うので,活動したことによって成長しているかどうか,そのプログラムが有効だったかというのは,やっぱり振り返る必要があると思うんです。
 学ぶということになっていると思うんですが,私たちは最近企業間で,学ぶ場は私たちも社員に対して提供しているんですが,学んだ後の成長,それが本当に成長につながったかという振り返りが弱いんじゃないかということを話しているところでして,成長していって,それを生かすところまでつながないと,学ぶ機会を提供しただけで,年に何回やりましたとか,何人集まりましたみたいなことで成果としてしまっているところが多いので,そこを今ちょっと反省しつつ,きちんと参加者の目的,なぜ何のために学ぶかということが分かっていて,それにこのプログラムは有効ですということが伝わって,それに参加した結果,本当にその人が成長したか,それが生かせるのかというところまでちゃんと責任を持ってやっていかないと,ときどき学校とかいろんな施設で余暇活動をやっているところで,ずっと同じプログラムをやっていて,毎回同じことをやっていて,成長していっているのに,その成長に合わせた内容に変化をしていっていないというのがあるので,このあたりは1つの事業所というか,活動の場所ではなく,それが成長とか目的によって地域で変わっていけばいいんだと思うんです。
 全部やろうとすることは多分不可能だと思うので,私たちはレベル1のところで,こういう目的の人のためにこういうプログラムを用意しますと。その中身はいろいろだと思うんですけれども,そういったもので。レベルアップしたいとか,違った方向性で自分が変わりたいといった場合には,この隣の地域のここの活動に参加するみたいな形。それが整理されて自己選択が本当にできるようになるといいなと思うんですけれども,そのためにも,ここに書かれているかもしれないんですが,やっぱり実施側のプログラムのPDCAを第三者も含めて見ていく。
 その参加する人たちの個人の学ぶ側の成長の記録とか,成長した結果,スタートラインが変わっていくと思うので,そこがどういうところなのかというアセスメントとか,そのあたりの記憶を残していく。多分学校の中でずっとやっていると思うんですが,そういったものが学校を卒業した後というのは弱くなって,計画だけで終わってしまう可能性があるので,そこの振り返りがとても大事かなと思っています。
 先ほど津田さんの例にあった阪神の観戦に行くという,それは生活の場面にたくさんあると思うんですが,観戦に行けたで終わってしまうことがあると思うんですが,先ほどお話があったように,その観戦に行くためのプロセスの中で,Aさん,Bさん,Cさんがどういう関わり。最初は話せなかったのに話せるようになったとか,何かそういったことで,じゃ,阪神の観戦に行けたんだから,次はユニバーサル何とかに行くとか,そういったふうに生かせていけるとか,そのあたりで自分自身もその活動に参加したことによって成長して,次に何をしたいかというところにきちんとつながるようなものを,地域で,自分のところで全部やりますと張り切られる方もとても多くなってくると思うので,そのあたりをオープンする,新しくやるのであればなおさら,その役割,どこのレベルに合わせて,どんな人の目標を達成するためにやるのかということを明確にしていただかないと,せっかく参加しても時間を過ごすだけになってしまっては,どっちにとってももったいなので,そのあたりも盛り込めたらいいなと思いました。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。津田委員,お願いします。

【津田委員】
 先ほど皆さんの多くの意見にうなずきながら,お話を伺っていたんですけれども,社会教育というところに携わる者として,先ほど田中先生もおっしゃいましたけれども,学校教育と原理が違うんだというところで,なかなか理解してもらえなくてもどかしく思うことってすごく多いです。今回出していただいているものも,学校教育の延長としてずっと読んでしまわれることをとても恐れています。
 特に,視点1,これはいいと思います。視点1は学校教育の延長なんだろうと思いますけれども,視点2も学校教育の延長オンリーで見られると,ちょっと困ったなという印象を持ちます。一番そう思われていますとすれば,どこがポイントになっちゃうかというと,恐らく視点2のタイトルじゃないかと思うんです。生涯の各ライフステージにおいて必要となる学習というと,1つは個人の成長というところに局限化されたというか,そこにしかないようなタイトルの付け方ですよね。それからライフステージに人間が分断されているというイメージを喚起してしまう。
 そういう2つの意味で,ちょっとこれは何とかならないかなということを感じておりました。例えば生涯にわたって生まれてくる課題に対応する学習とか,日々の生活から生まれてくる課題に対応する学習とか,そういう言い方ではだめなんでしょうか。ちょっとこれは質問です。社会教育というのは個の成長だけでなくて,コミュニティの成長ということも両にらみにした領域ですので,その辺のところもちょっと勘案していただけたらというところです。

【宮﨑座長】
 事務局,何かありますか。

【高見障害者学習支援推進室長】
 御指摘ありがとうございます。今頂きましたように,我々としても考えておりましたのが,障害のある方がいろんな課題に直面していったときに,こんな学びをしたいと思ったときに学べるような環境作りをしていきたいというところですので,一旦引き取らせて検討させていただくんですけれども,ライフステージに応じたというよりは,生涯にわたって生まれてくる課題に対応する学習というところも,方向性は共通しているのかなと感じました。

【宮﨑座長】
 菅野先生。

【菅野委員】
 先ほども年齢を強調し過ぎていると言われましたけれども,私も基本的には津田先生と同じ考え方なんです。ただ私の立場は,プログラムを用意するという考え方なので,プログラムを用意する考え方のときにまず横軸としては,4領域でも3領域でもいいんですけれども,考えなくちゃいけないのかなと。
 縦軸の考え方ですよね。縦軸としては,やはりライフステージ,言葉がどうかは分かりませんけれども,各年齢段階ごとに一応課題はあるので,その課題に沿った形のプログラムを用意しないと,先ほどどなたかがおっしゃっていましたけど,いわゆる実施者がやってみようかというものに,なかなか取り組めないでしょうし,参加者も,あくまでも個に合わせているとはいいながら,プログラムがあってそこに参加していくという考え方だろうと思いますので,参加してみようかという考え方がなかなか持てないので,幾つかのプログラムを準備しなくちゃいけない。
 そのときの整理の仕方が縦軸と横軸で,この時期にこれをしなくてはいけないということではないんだと思う。ですから選択ができると。準備していて,だから履修モデルと言ったんですけれども,選べるという考え方だろうと思います。基本的にはそういう考え方だと思います。
 それから,なぜ学ぶのかというのは,基本は何かというと,学ぶことの楽しさを思い続けることと,それから学び続ける楽しさを知る,これだと私は思っているんです。だから学ぶことの楽しさを知る。これはこの報告にもありますけれども,やはり学齢期からの課題は非常にある。在学中からの能動的な関わりと非常に関係があって,学び続ける,学ぶことの楽しさって何かというと,これは私も特別支援学校の高等部に結構行っていますけれども,高等部の授業時間数というのは,宮﨑先生が一番御存じだと思いますけれども,非常に少ない時間しかないわけです。
 学ぶことの楽しさも知らずに出ていくというのが,大体今の特別支援学校の高等部の姿で,とにかく使える知識を身に付けさせて出させる。科学の楽しさとか社会の仕組みの驚きという,楽しさや驚きに感動して,そして学び続けることの楽しさとか学ぶことの楽しさを知らないまま出ていくのが非常にかわいそうだ。それがきっと生涯学習で準備されているというところが大事なんだろうと思うんです。ですから,学校教育在学中にそれをいかに伝えて出してあげるか,じゃ,成人期にはそれがいかに準備されているかというところが,多分学びに関することだろうと思います。
 3つ目の評価,なかなかこれは難しくて,何を評価するのかというのは非常に難しい。もう少し研究していかないと,取り組んでいかないと,できるようになる,生かすことだけが多分課題ではない。生涯学習なので,恐らくそれだけではないんだろう。
 ただ,背景には必ず何かができるようになっていくとか,いわゆる学習指導要領でいくと,社会とどう関われるようになったか,世界とどう関われるようになったか,何ができるようになったかというところが背景にあるわけですから,そこは学校教育とは違った形での評価の仕方,これは本人に対する評価なのか,プログラムを評価していくのか,あるいは実施に対して評価していくのかというところは少し検討していかないと,学校教育のような形で成績をという形ではないし,履修をという形でも絶対ないと思いますので,この辺は研究していく必要があるのかなと思います。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。朝日委員,お願いします。

【朝日委員】
 特別支援学校を代表して参加しております朝日と申します。よろしくお願いいたします。
 特別支援学校のことがいろいろ御指摘があって,とても責任も感じていますし,これからどうやって進めていったらいいのかというのをとても悩んでおります。今回のこの検討会議に出させていただいて,生涯学習の場が,本当にすばらしくいろいろな各地区で展開されているということが分かりました。私はこの会議に出て,本当に社会で多くの障害のある卒業生たちを育てていただいている,すばらしいということがよく分かりました。
 ただこのすばらしいことを,今自分たち校長がどれだけ意識できているか。校長は東京都で言えば5,000人,6,000人ぐらいの教員を抱えておりますけれども,その教員たちにどうやって伝えていくかというのが,なかなか厳しいところであります。以前キャリア教育という言葉が入ったときに,将来のことを考えながら今の教育をやろうということをやって,キャリア教育の研究校はそうした視点でいろいろ研究していきましたけれども,目の前の今やるべきことに追われてなかなか進まないと。
 私は今年,高等部中心の学校から,幼稚部,小学部の学校に移りました。その経験が非常に生きていて,幼稚部や小学部のお父さん,お母さんたちに,将来どういう大人になってほしいのという切り口で話すと,いろいろなことが深まります。また聾学校ですので,親御さん自身が聾学校の出身であるお父さん,お母さんとも出会って,いろんなことを聞くことができます。
 このすばらしい視点をまとめていただいたんですけれども,これのすばらしさが現場の教員たちにどれだけ分かっていくのか。ぱっと見て,恐らく分からないでしょうし,これだけのすばらしい実践の,例えばドキュメンタリーの何か番組でも見た後にこれを読むと,ぐっと分かってくるんだろうなというところで,この価値のすばらしさと,これを伝えることの難しさも非常に思っています。
 ただ,今回の報告書の論点整理の中では,特別支援学校の学びが大事であること,移行プログラムが大事であること,また核となる教育支援計画が大事であること,母校としての役割ということを書いていただきました。また特別支援教育の教員の経験も重要であるということを書いていただきましたので,それをしっかりと何らかの形で校長たち,また教員たちに伝える,これを教員向けに分かりやすく伝えるものを,校長会などでも作っていかないといけないかなと思っています。
 この議論の中で以前菅野先生が,あえて生涯学習の場を特別支援から離れたところに目指すという御発言があって,私はとてもそこが印象に残っています。母校であるからといってずっとずっと母校に帰っておいでということではなく,いずれ学んだことを母校の後輩たちに伝えに帰ってくるのはいいことなんですけれども,移行期においては特別支援の役割は非常に濃いものがあると思いますが,いずれ社会の中で大きく育っていき,それが後輩たちのために何か貢献してもらえるような形になっていけばいいなと思っています。すばらしい議論をどうやって現場に伝えていくかというところで,またいろいろなお知恵を頂ければと思っております。
 以上です。

【宮﨑座長】
 先生,15ページの同窓会組織等について,「保護者,生徒OB」と,意識的に卒業生ということを込めて書いているんですけど,この紹介の仕方ってどうですか。

【朝日委員】
 生徒OB。

【宮﨑座長】
 ここはちょっと何かいい言葉があれば,整理する必要があると。朝日先生,何かありますか。

【朝日委員】
 今ぱっとは思い浮かびませんが,確かに生徒OBというのは。

【宮﨑座長】
 技術的な問題があるので,分かりやすくということで入れた中身なんですけど,これは何かいいような。

【朝日委員】
 意図としては。

【宮﨑座長】
 同窓生とか何かちょっと工夫が必要かもしれない。
 お願いします。

【高見障害者学習支援推進室長】
 すみません,こちらは意図といたしまして,特にOBを使いたいとか,生徒を使いたいというよりは,当事者が関わることを伝えたいということなので,卒業生ですとかの方がいいかもしれないので,また御相談をできればと思います。

【宮﨑座長】
 私もこれを読みながら,そこのところはちょっと修正が必要かなと思ったものですから,ちょっと御意見として。

【朝日委員】
 要するに卒業生自身がということですよね。それをうまく伝えることは私も考えてみたいと思います。

【宮﨑座長】
 お願いします。そういうトーンでいきますと,戸田委員が提案していただいたのが,今回20ページに,「学びのユニバーサルデザイン」を目指すという言葉が使われている。これは戸田委員がこの間おっしゃったことだと思うんですが,このあたりで何かコメントがあればどうぞ。

【戸田委員】
 後で拾っていただいてありがとうございますと言おうと思っていたところなのであれですけど,この言葉自体は相当古いというか,かなり昔の言葉なんですが,障害の有無に関係なく学べるような,そのメニューもそうですし,あとはしつらえも重要だろうと思って発言したことです。
 この流れで僕も発言というか,意見をちょっと言わせてもらいたいんですけれども,私と箕輪さんって毎回言っているんですけど民間なので,目的を結構重視するところがあるんです。これってやっぱり先ほど菅野委員は,学びの目的は学び続けるとか,楽しさを知るということをおっしゃっていましたけれども,我々はその先をまた求めてしまっていて,学ぶ楽しさを知るとは何だろうと。それはやっぱり結果があるからじゃないかとか,得られるものがあるからじゃないかとか,例えば自己実現,夢の実現とか,そういう目標があるから学べるんであって,それで結果が出るからまた学びが楽しくなっていくんじゃないかということを感じてしまうんです。
 その観点でというのがやっぱり,この今回の22ページです。22ページもかなり我々の発言が反映されているなと思っているんですけれども,やはり持続可能な仕組みとするためには,いわばいろんな多様な人たちによるコンテンツの提供であったり,場が必要であろうと。そうすると,我々以外は大体皆さん,教育現場とかの方たちが多いので,学びというものはという,結構哲学的な話になってくるんですけれども,やはり結果は必要とするもの。それは提供する側と,あとは受け取る側のもの。
 このことがあるので,この次の徴収する,受け取る側がお金を払うということまで書いてあるわけですが,やっぱり今回,ここへ盛り込んでいただいていますけれども,地域性というのが極めて重要なことになってきて,これは先ほどの山田委員もちょっとおっしゃっていた,ネックとか,何がハードルになるのかみたいなところは,我々からのメッセージとして地域が受け取ったときに,それはやはり地域性があっていい。地域によって形が違うとか,地域によって参画するプレーヤーも変わってくる。それは受ける側も与える側もということが極めて重要だと思うので,でもその辺が盛り込まれているので,ここをもうちょっとうまくそしゃくして,受け取った側がメッセージとして受け取れるといいのかなと感じました。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。どうぞ,田中委員。

【田中(良)委員】
 愛知の田中です。今の戸田委員の20ページに関わって,「学びのユニバーサルデザイン」を目指すというのは賛成ですけれども,実は学校教育の中で,授業のユニバーサルデザイン化というのが結構広がっています。UDといって,筑波大学附属小学校を中心に,その研究会があるとたくさんの人が集まるんです。
 個別支援ということが,我々の障害児教育の側からは強調されますが,通常学級の場合には,いわゆる障害のない子どもたちを対象とした学習プログラム,学習指導要領に基づいたものがあるので,担任は非常に困っています。
 一人一人といっても,いっぽうで通常の授業を進めていかないといけない。その子だけに目を当てているわけにいかない。支援員といっても,恒常的に配置されることはほとんどありません。そういうこともあって,UDというか,授業のユニバーサルデザイン化という一つのブーム的なものがあるんですが,それは障害児も含んで共通する土台を築く,そういうところがやっぱり通常の子供たちにとってもプラスなんだと,そこがすごく共感を呼んで,広がっている面があります。
 しかし,そう簡単に広がりません。そういう考え方を持っている人は少ないですから。やっぱりどうしても障害児には個別,ユニバーサルデザインは全体。障害児は全体の中で霞んでしまいがちです。
 また,その土台を築くというところも,必ずしもはっきりしていないです。そこに賛同して取り組んでいる人は,熱心ですが生涯学習のユニバーサルということも,このような事と共通してこないかなと思うんです。
 僕は大事な点だと思うんですが,そこをどういうふうに強調していくか。特別支援学校の先生たちは,障害児だけを対象にしていますから,意外とこういう考えはユートピアと考えがちです。そこら辺を少し工夫していただけたらなと思います。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。それじゃ,是松委員,お願いします。

【是松委員】
 是松です。私の方で2点ほどちょっと意見を述べさせていただきます。
 端的に申しまして,22ページの基盤の整備のところです。白丸の上から3つ目,やはり気になりました。学習への参加費徴収ということ。戸田委員よりその内容や意図は,確かに聞いて理解はできるんですけれども,この字面だけ見ると,障害者の学習に費用を徴収するのかということの疑義があります。
 基本的に福祉サービスも含めて,それから公共の生涯学習も含めて,障害者向けにはできるだけバリアを作らないようにということで,こういった参加費の徴収が一つバリアにならなきゃいいなという懸念があります。そういった疑義が生じるような表現をあえてする必要があるのかなという気がします。「学習への参加費を徴収し」を取り除いても,質の高い学習の提供の検討が必要ということで完結するんでないかなという気がしています。
 津田委員からありましたように,人々の学びを支える公共的な機能が劣化してきていると言われています。今ほとんどの自治体で公民館がなくなって,いわゆる社会教育センター化しております。そこでは様々ないろんな学びや講座が提供されるんですけれども,実はそういった講座って全部有料でして,いわゆる様々な人が集まって1つの講座に溶け込んでコミュニティを形成する場所ではなくなってきて,あくまでもその講座の内容に興味がある人だけが集まってきている,コミュニティのないような講座になっているというのもありますので,参加費を徴収するということが,そういう弊害にもならないとは限らないので,ちょっとここは私としては疑念が生じているところです。
 それからもう一つ下の丸になりますが,都道府県に1か所拠点を作ること,これは大賛成なんですが,実はその拠点,いわゆるセンター機能が,単なる相談の対応と学びの場の情報収集と提供だけでいいのかという気がします。生活作るんであれば,ちょっとこれはもったいないなという気がしております。例えば障害者の場合,スポーツ関係では各都道府県に障害者スポーツセンターというのがもう,幾つか作られております。東京都においても,たしか障害者スポーツセンターは2つぐらいあって,国立市にも1つ立派なものがあるんですけれども,そこに行くと本当に障害者が,障害者だけのための様々なスポーツが体験できるとなっております。
 せっかく生涯学習や芸術文化においても拠点化を図っていこうとするんであるならば,希望としては,これは財の投入が生じてしまいますけれども,そのセンターで障害者が様々な専門的なプログラムが学べる,菅野先生がおっしゃったような,ああいった体系的なプログラムをここで用意できるとか,あるいは障害者の持つ才能を発揮させるための芸術や文化活動を,そこで結構思い切りできるという拠点であればいいなと感じておりますので,この拠点の在り方についても,もう少し膨らませができればいいのかなと思った次第です。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。松矢委員,お願いします。

【松矢副座長】
 松矢です。4点ほどあるんですが,委員の方々から出たところで,私も賛同する点。
 1つは,ここは学校から社会へということがたくさん出てきていることは事実です。でも,津田委員が出されていた卒業後,僕は卒業後だけではないと思うんです。例えば社会教育とか生涯学習には,学童期,学齢期も学校外活動があるわけです。一般の子供ではこどもクラブとか,そういうのも入っているんです。
 だからそういう膨らみがあって,今回ヒアリング対象を推薦したかったんですが,実現しませんでしたけど,ぷれジョブといって,地域のボランティア,特に親御さんが中心になって,この子に何か社会で有用な活動ができないかということで,例えば1月1回でも老人ホームに行って,とても絵本が大好きで,読み手として高齢者がとても楽しいなという体験を子供が行ってできているんです。そういう活動もあるわけです。
 ぷれジョブ,要するに働く前の学齢期からいろんな体験をする活動。インターネットでぷれジョブと引くと,ばあっと全国広がりが出ていますので,そういう学校外活動。これは教員がやっているわけではないんです。教員がそういう思いがあったんです。学校外でそういう有用な子供の経験を増すものができないかと。就業体験というのは学校が仕組みますよね。そうじゃなくて,地域の方の発想で,あるいは親御さんの発想でもっと体験を増やしたい,あげたいというところから出ている,そういう草の根運動的なものがあるんです。それは生涯学習だと僕は思っているんです。
 ですからもう,子供が生まれたとき,家庭,それから保育,学校。学校は非常に機能が大きいんですけど,地域というのももう,生まれたときから地域で住んでいるわけですよね。そういう発想の中で社会教育,生涯学習はもう,子供時代から始まっていると考えるべきである。もちろん学齢期を終えて高等部段階では,福祉の施設での実習もあるし,企業での実習があって,本当に企業も関わってきますけれども,初めにもう地域で育っているというところが大切なので,そういう発想は,ここでは生涯学習なのできちっとやっておくべきだろうと僕は思っております。それが1点です。
 それから2番目は,学校の教員のことが話題になりましたけど,進路指導に当たっている先生たちは,やっぱりずっと進路指導主事でやり通している方々の専門性って非常に高いんです。OBになった後でも東京ではジョブ就労アドバイザーという形で,定年後,企業のOBも嘱託雇用で入っていますけど,一緒に進路指導の先生と職場開拓をやっておられるんです。実際に東京はもう50%近く,49.8%,今年就職していますから,2人に1人は就職している中で,卒業生のための公開講座というのにもう取り組んでいるんです。
 これはでも,学校の先生がやる場合には働き方改革に関わってしまうわけです。ですから,さっき言った地域の生涯学習のセンターができるならば,そういう中に嘱託雇用みたいな形で,OBになった先生たちが活躍することは非常にいいんではないかと思っております。そういうことで,ここでは企業OB,それから地域の市民のいろんな専門家が入ってくるということです。これはもう強調されていますので是非。
 それから3番目は,やはり非常に生涯学習の公的保障を見ると,調査でもわずかなんです。自治体の関与は非常にわずかですから,やっぱり公的保障ということをきちっとうたっていってほしいと思いますし,確かに私は大学公開講座をやっていますが,費用,聴講費をもらっています。全然そういう意味で保障がないので。その分だけいい内容をお返ししているつもりなんですが。
 でもやっぱり公的保障なので,基本的には町田とか,それから国立等でやっているように,青年教室等は無償だと思いますが,公的保障という場合には無償ということを前提とした学びの機会をたくさん作っていく。それからもちろんいろいろなメニューという点では,有償であってもいいと思いますが,やっぱり基本的に公的保障ということを入れてほしいと思っております。
 それから最後のライフステージの話がありました。私は縦軸,横軸という話を出して,一人一人の発達の私的な展開というのは,時間が掛かる人もいらっしゃるということです。そういうことは委員の方々,綿貫さんの方からも出ていますし,そういう点は大切にしていきたいと思いますが,ただ,菅野委員が出された,ずっと年齢にわたっていくと,加齢化に伴ったいろんな課題が出てくるということが事実あるんです。
 そうすると,もう東京は50%以上就職するという目標で進んでおります。特別支援教育推進計画の第二期の第一次実施計画では,28年まで55%就職と出しています。ですから半分以上の方が就職します。もちろん離職する方もいますが,今はもう既に厚生労働省の方から出された資料でも,福祉進路をとっても就職者の2倍の方が働いていますよね。そういう意味で再就職が可能だといういい時代になってきてはおりますが,今32%ですけど,だんだん増えていくと思うんです。雇用率が2.2,これから3年以内に2.3になりますので,就職率がどんどん増えていきますと,その方々の働く力というのは非常に個人差がありますので,支援の重要性もあり,企業の方の協力を頂きながらやりますが,そういった一人一人に対応した学びということがあるかと思います。
 その点では福祉でずっと支援されている方々は,福祉の中には例えば生活介護ですと,生きがい的な内容がデイサービスの中に入っていますので大分違いますけれども,やはり働く人はそれだけ,アフター5と土日をどういうふうに豊かに暮らすかという課題がありますので,そういう意味では,学校卒業後ということが強調されていいのだろうと思っています。ちょっと長くなりました。

【宮﨑座長】
 それでは最後に,山田委員,そして綿貫委員。

【山田委員】
 先ほどの是松先生の発言に対してひと言発言させていただきます。有償の参加費のことですが,私は基本的には先ほど先生がおっしゃった公的な保障がバックにあってもいいと思います。しかし,中には有償もあっていいんじゃないかと思います。例えば,(これが例えになるか分かりませんが,)障害者スポーツでブラインドサッカーなどの大会をやりますと,観客がなかなか集まらないので,なるべくなら無料でみんなに来てもらいたいと思います。しかし今日本ブラインドサッカー協会は敢えて有償にしているんです。入場料をもらうんです。それも成人の場合,1500円から4000円までの6段階のチケットがあり,かなり高い金額に設定しています。大体夕方から試合をやりますが,それでもいい試合は結構満杯になります。
 それはなぜかというと,やはり何でもかんでも無料にすると,行っても行かなくてもいいと考え,見ようとすることに対して安易な考えになってしまいます。金を払ってでも見に行こうという考え方も大事です。車いすバスケットも先日の大会で一部有料化しましたら,やはり相当の方が入るようになりました。福祉は全部無料という考えは古く,自分が目的を持って,価値を見出して金を払ってでも行く(する)ということをこれからは考える必要がありますし,そういう時代にだんだんと入ってきました。
 ですから,先ほどの先生の考え方も理解できますが,必ずしも障害者がみんながみんな金がないというわけじゃなくて,結構金をもっている方もいらっしゃるし,障害のライフステージが高くなっていくと,例えば金を出してでも英語などを習いたいとか,いろんな人もいらっしゃるわけですから,中にはそういう科目も作っていいんじゃないかなと思います。
 蛇足ですが,先ほどおっしゃった障害者スポーツセンターですが,現在全国で25か所あります。全都道府県の半分以上の数はありますが,全部の県にはないんです。でもそういったところも学習の場所として考えてもいいと思います。

【宮﨑座長】
 綿貫委員,お願いします。

【綿貫委員】
 綿貫です。根本的なことなんですけれども,障害者の学びの推進方策ということなので,障害者について一定の定義をしているということで,その定義をして事業について考えていかなければならないので,障害者というくくりがあるんですけれども,この事業に限らず,いろんな法律とかを見ていてもそうなんですが,ICFを踏襲するような記述になっているかどうかということを,ちょっと確認する必要があるかなと思いました。
 それから,津田先生の今日の話の中で,メンターの役割とか,その中でお世話役というような,分かりやすくするための表現があったんですけれども,学校の教科学習とかの習熟度に関わらないような自由度の高い学習の場面では,むしろ障害特性とか,その方の独自の認知特性とかがすぐれたものを発揮する場合とかもあるので,アクセシビリティのところではお世話役みたいなことはあるかもしれないですけれども,やっぱり学び合いの部分で,双方がすごく学び合うみたいな形のところが必要なのかなと,人材の部分では思いました。
 例えば講師とか学習機会を接合するような人材の場合には,そういった側面が強くなると思うんですけれども,ピアサポーターとか生徒OBとか学生とか,ちょっとそういう近い立場の人たちとかが入った場合には,それがすごく支援者カラーが強くなり過ぎないような立場が必要かなと思います。
 それからその人材のところで,自立性とかたくさん入れていただいたんですけれども,自立性とか主体性とかを考えていったときに,プログラムの内容のものが習得できるかどうかということだけではなくて,例えばそのプログラムとかがすごく楽しいとか,モチベーションが持ててくると,時間を守って行動できるようになったりとか,自分から身辺自立の部分がはかどったりとか,そういった変化の部分とかもあると思うので,その周辺の変化の部分というのも教育的にはすごく大切なんじゃないかなと思いました。
 あと最後に,その実施後に学びの発展の部分で,今日もお話がありましたけど,これまでのヒアリングの団体とかお聞きしていても,学びの機会が提供されて,学び始めた後に,学びが本人を中心に展開していくようなことはやはり予想されるので,箕輪委員もおっしゃっていましたけど,その発展に応じていけるような枠組みとか仕組みについても考えられるようなところを入れていく必要があるかなというのと,目的の部分で,本人視点で考えたときに,学び自体が楽しい,目的の目の前には目的がちょっと設定できないような学びの楽しさというのもあって,直前には目的を便宜的に付けることはできるかもしれないので,その部分の話だったら違うんですけれども,目的が目の前にイメージできないような学びの部分とか楽しさの部分があって,やはりゆっくりな発達の部分もあるので,それが別の機会に突然つながっていったりとか,そういう展開もあると思いますし,菅野先生が御提案してくださっているカリキュラムとかの部分で,カリキュラムがあることで一つの選択肢にこだわり過ぎない部分とか,いろんなものが見えてくるとか,いろんな経験ができるというよさもあるんですけれども,基本的に学びの終わりは本人が決めていくものなのかなとも思っているので,そこのカリキュラムとかを想定した場合には,そこのよさの部分と次の部分とかをちょっと考えていくといいかなと思います。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。それぞれの区切りごとで御意見をと思ったんですが,いろんなところに関わっているので,全体を通して皆さんから意見を頂戴しました。
 そういう意味では,各1から2,3,そして4,5とありまして,視点についての御意見等も頂戴したわけですが,もう一度改めて読み直していただいて,また今日時間内に発言し尽くせなかった点とかがあれば,事務局にメール等で御連絡をお願いできればと思います。今日の御意見は事務局で整理をしていただきますが,その中に今日十分尽くせなかったことも入れていただいて,8月9日に整理をする形をとりたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 10分ほど延長してしまって申し訳ありません。今日の会議はここまでにしたいと思います。事務局より御連絡があればお願いいたします。

【平田障害者学習支援推進室長補佐】
 お手元の参考資料1を御覧ください。本年度から新規事業として実施しています学校卒業後における障害者の学びの推進に関する実践研究事業について御説明いたします。
 本事業では,学校から社会への移行期や生涯の各ライフステージについてプログラム開発や実施体制のモデル構築を行う障害者の多様な学習活動を総合的に支援するための実践研究を実施しています。当初は14団体の採択を予定しておりましたが,本年度は全国各地から18件の団体等を採択し,学習プログラムの開発等を行っていただきます。委託先の自治体,大学,NPO等実施主体,又は対象とする障害種,事業内容については資料にございますので,御確認いただければと思います。
 次に,お手元の資料4を御覧ください。次回第8回の会議ですが,8月9日木曜日,14時から16時に開催することを予定しております。追って正式に御案内をお送りいたします。
 また,本日の配付資料につきましては,机上に置いていただけましたら,後日郵送させていただきます。
 以上でございます。

【宮﨑座長】
 それでは,本日の会議はこれにて閉会いたします。どうもありがとうございました。

―了―

お問合せ先

総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室

電話番号:03-5253-4111(内線3460)
ファクシミリ番号:03-6734-3281
メールアドレス:sst@mext.go.jp

(総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室)